説明

ステレオカメラの光軸調整方法

【課題】レンズの光軸位置と撮像素子の中心位置とを容易に合わせることができるステレオカメラの光軸調整方法を提供する。
【解決手段】基準となるレンズ13Aを有する基準鏡筒13をステレオカメラボディ12に形成された基準となる2つの穴12a,12bの一方に挿入させる。次に、基準となるレンズ13Aの光軸上に配置されたスポット光源11からスポット光を出射させ、スポット光源11の軌跡を一点に固定する。その後、鏡筒13に代えてレンズを有する第1鏡筒を穴12aに挿入させ、レンズの光軸がレンズ13Aの光軸の位置と一致するように第1鏡筒の位置を調整する。次に、穴12bに挿入された第2鏡筒のレンズの光軸がレンズ13Aの光軸の位置と一致するように第2鏡筒の位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はステレオカメラの光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のレンズとこの一対のレンズに対応する一対の撮像素子(CCD、CMOSセンサ等)とを有するステレオカメラ装置が知られている。左右の撮像素子の画像信号を基に像のずれ量を検出し、被測定物の形状や被測定物までの距離を計測する。
【特許文献1】特開平5−157557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ステレオカメラ装置では視野を広くとるために通常広角レンズ、魚眼レンズ等のレンズが使用される。
【0004】
しかし、レンズの光軸位置とCCD、CMOS等の撮像素子の中心位置とを合わせることは非常に難しい。レンズの光軸位置と撮像素子の中心位置とのずれは被測定物の形状や被測定物までの距離を計測した際の計測誤差となる。
【0005】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はレンズの光軸位置と撮像素子の中心位置とを容易に合わせることができるステレオカメラの光軸調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、基準となるレンズを有する鏡筒をステレオカメラボディに形成された2つの穴の一方に挿入させる第1工程と、この第1工程の後、前記基準となるレンズの光軸上に配置されたスポット光源からスポット光を出射させ、そのスポット光源の像が点になるように前記鏡筒の位置を決め、点の状態の前記スポット光源像を記録する第2工程と、前記第2工程の後、前記鏡筒に代えて第1レンズを有する第1鏡筒を前記2つの穴の一方に挿入させ、表示手段上に前記スポット光源の像を表示させて、そのスポット光源像が前記第2工程で記録された前記スポット光源像の位置と一致するように前記第1鏡筒の位置を調整する第3工程と、前記第3工程の後、前記第1鏡筒に代えて第2レンズを有する第2鏡筒を前記光軸上に配置させ、前記表示手段上に前記スポット光源の像を表示させて、そのスポット光源像が前記第2工程で記録された前記スポット光源像の位置と一致するように前記第2鏡筒の位置を調整する第4工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によればレンズの光軸位置と撮像素子の中心位置とを容易に合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1(a)はこの発明の一実施形態に係るステレオカメラ装置のブロック図、図1(b)はテストチャートのパターンの一例を示す図である。
【0010】
このステレオカメラ装置はステレオカメラ6と画像取込メモリ7,8と画像重ね合わせ処理部9と画像モニタ10とを備える。
【0011】
ステレオカメラ6は一対のレンズ2A,3Aとこの一対のレンズ(第1レンズ、第2レンズ)2A,3Aに対応する一対のCCD(Charge Coupled Device)4,5とを有する。一対のレンズ2A,3Aはそれぞれ鏡筒(第1鏡筒、第2鏡筒)2,3に保持され、鏡筒2,3はステレオカメラボディ12内に収容されている。
【0012】
CCD4はレンズ2Aの光軸上に配置され、CCD5はレンズ3Aの光軸上に配置されている。例えばスクリーン1上に描かれたテストチャート(図1(b)参照)を撮像した像が、CCD4,5によって光の強弱に応じた画像信号(画像データ)として出力される。
【0013】
画像取込メモリ7にはCCD4から出力されたスクリーン1のテストチャートに対応する1フレーム分の画像信号が取り込まれる。
【0014】
画像取込メモリ8にはCCD5から出力されたスクリーン1のテストチャートに対応する1フレーム分の画像信号が取り込まれる。
【0015】
画像重ね合わせ処理部9は例えば画像取込メモリ7から出力された画像信号に対して各種の信号処理を行い、ステレオカメラ6からテストチャートまでの距離を算出するとともに、CCD4又はCCD5で撮像された像を画像モニタ10に表示させる。
【0016】
次に、上記ステレオカメラ装置の光軸調整方法を説明する。
【0017】
図2(a)は光軸調整装置のブロック図、図2(b)はスポット光源の一例を示す図であり、図1と共通する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0018】
まず、ステレオカメラボディ12に形成された基準となる穴12a,12bのうちの穴12aにレンズ13Aを保持する基準鏡筒(レンズ13Aの中心位置とCCD4との中心位置とが合っている鏡筒)13が挿入される(第1工程)。
【0019】
ステレオカメラ6のCCD4が配置される位置には小型カメラ(カメラ)14が配置されている。小型カメラ14はステレオカメラボディ12に固定されている。小型カメラ14によって取得された画像が画像モニタ15に表示される。
【0020】
レンズ13Aの光軸上にはスポット光源11が配置されている。小型カメラ14の受光面はレンズ13Aの焦点位置に配置されている。
【0021】
基準鏡筒13を例えば手で回転させると、画像モニタ15に光軸上に配置されたスポット光源11の発光部の像が点Pに固定されて表示される。像の位置(基準位置)を画像モニタ15の画面上にペン等で記録する(第2工程)。
【0022】
次に、基準鏡筒13を穴12aから外す。
【0023】
図3(a)は光軸調整装置のブロック図、図3(b)はスポット光源の一例を示す図であり、図1、2と共通する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0024】
図3を用いて一方の鏡筒2のレンズ光軸の調整を説明する。
【0025】
ステレオカメラボディ12の穴12a,12bにそれぞれレンズ2A,3Aを保持する鏡筒2,3が挿入される。
【0026】
レンズ2Aの光軸上にはスポット光源11が配置されている。
【0027】
画像モニタ15上にスポット光源11の像を表示させて、そのスポット光源像が第2工程で作成されたスポット光源像の位置と一致するように第1鏡筒2に対応する後述する光軸調整機構16を用いて第1鏡筒2の位置を調整する(第3工程)。
【0028】
次に、他方の鏡筒3の中心軸を小型カメラ14の光軸上に移動させる。
【0029】
図4(a)は光軸調整装置のブロック図、図4(b)はスポット光源の一例を示す図であり、図1、2と共通する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図4を用いて他方の鏡筒3のレンズ光軸の調整を説明する。
【0031】
画像モニタ15上にスポット光源の像を表示させて、そのスポット光源像が第2工程で作成されたスポット光源像の位置と一致するように第2鏡筒3に対応する後述する光軸調整機構16を用いて第2鏡筒3の位置を調整する(第4工程)。
【0032】
その結果、両レンズ2A,3Aの光軸が互いに平行になる。
【0033】
次に、光軸調整機構を説明する。
【0034】
図5(a)はステレオカメラの断面を示す概念図、図5(b)は図5(a)のA−A線に沿う断面を示す概念図である。
【0035】
図5では、ステレオカメラボディ12から小型カメラ14が取り外され、小型カメラ14があった位置にCCD4,5が固定されている。CCD4,5はそれぞれ基板26,27に装着され、基板26,27はビス18によってステレオカメラボディ12に固定されている。なお、ステレオカメラボディ12の上面はカバー25によって覆われている。
【0036】
また、ステレオカメラボディ12には各鏡筒2,3に対応する2つの光軸調整機構16が設けられている。光軸調整機構16は3本の調整ねじ16aで構成されている。調整ねじ16aは鏡筒2,3の中心軸に対して進退して鏡筒2,3を移動させる。
【0037】
調整ねじ16aはステレオカメラボディ12に周方向へ等間隔(120度間隔)に形成されたねじ孔22aにそれぞれ螺合している。調整ねじ16aを締めたり緩めたりすることによってレンズ2A,3Aの光軸の位置を調整し、スポット光源11の発光部の像の軌跡を画像モニタ15上の基準位置に一致させることができる。
【0038】
また、例えば鏡筒2をステレオカメラボディ12にねじ結合される保持枠(図示せず)に保持させ、保持枠を光軸方向へ移動させることによってレンズ2Aの焦点の位置を調整する。
【0039】
同様に、鏡筒3をステレオカメラボディ12にねじ結合される保持枠(図示せず)に保持させ、保持枠を光軸方向へ移動させることによってレンズ3Aの焦点の位置を調整する。
【0040】
その結果、ステレオカメラ6の光軸位置及び焦点位置の調整が完了する。
【0041】
この実施形態によれば、レンズ2A,3Aの光軸位置とCCD4,5の中心位置とを容易に合わせることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では撮像素子としてCCDを用いたが、CCDに代えてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1(a)はこの発明の一実施形態に係るステレオカメラ装置のブロック図、図1(b)はテストチャートのパターンの一例を示す図である。
【図2】図2(a)は光軸調整装置のブロック図、図2(b)はスポット光源の一例を示す図である。
【図3】図3(a)は光軸調整装置のブロック図、図3(b)はスポット光源の一例を示す図である。
【図4】図4(a)は光軸調整装置のブロック図、図4(b)はスポット光源の一例を示す図である。
【図5】図5(a)はステレオカメラの断面を示す概念図、図5(b)は図5(a)のA−A線に沿う断面を示す概念図である。
【符号の説明】
【0044】
2:鏡筒(第1鏡筒),3:鏡筒(第2鏡筒)、2A:レンズ(第1レンズ)、3A:レンズ(第2レンズ)、6:ステレオカメラ、11:スポット光源(光源)、12:ステレオカメラボディ、12a,12b:穴、13:基準鏡筒、13A:レンズ、14:小型カメラ(カメラ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となるレンズを有する鏡筒をステレオカメラボディに形成された2つの穴の一方に挿入させる第1工程と、
この第1工程の後、前記基準となるレンズの光軸上に配置されたスポット光源からスポット光を出射させ、そのスポット光源の像が点になるように前記鏡筒の位置を決め、点の状態の前記スポット光源像を記録する第2工程と、
前記第2工程の後、前記鏡筒に代えて第1レンズを有する第1鏡筒を前記2つの穴の一方に挿入させ、表示手段上に前記スポット光源の像を表示させて、そのスポット光源像が前記第2工程で記録された前記スポット光源像の位置と一致するように前記第1鏡筒の位置を調整する第3工程と、
前記第3工程の後、前記第1鏡筒に代えて第2レンズを有する第2鏡筒を前記光軸上に配置させ、前記表示手段上に前記スポット光源の像を表示させて、そのスポット光源像が前記第2工程で記録された前記スポット光源像の位置と一致するように前記第2鏡筒の位置を調整する第4工程と
を含むことを特徴とするステレオカメラの光軸調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−51580(P2008−51580A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226208(P2006−226208)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】