説明

スパイラル型のインダクタ及び半導体装置

【課題】インダクタ上に形成する導電性接着材によるインダクタのL値の変動のばらつきを抑えることを目的としている。
【解決手段】本発明のスパイラル型のインダクタ10は、半導体基板20上に螺旋状に形成したスパイラルコイル30と、前記半導体基板20上に形成し、前記スパイラルコイル30の両端と電気的に接続する一対の端子と、前記半導体基板20上の前記一対の端子を露出させて、前記スパイラルコイル30の保護層36上の全面を覆う遮蔽層40と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にWCSP構造を応用したスパイラル型のインダクタ及び半導体装置に関し、インダクタのL値の特性変動に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年半導体チップの回路形成面上に樹脂層を形成し、その上に配線を形成し、配線上に外部端子を形成したウエハレベルチップサイズパッケージ(WCSP)と呼ばれるパッケージが開発され、半導体デバイスの小型化・低背化に利用されている。
【0003】
図7に従来技術に係るWCSP構造100を製造するための基本工程について示す。WCSP構造100を製造するための基本工程は、まず(1)Si等の半導体基板102上にSiOやSiN等で保護膜104(パッシベーション膜)を積層し、(2)保護膜104の上にポリイミド等の絶縁樹脂層106をパターニングし、(3)絶縁樹脂層106上にTiW等を材料としたスパッタリングによりシード層108を積層し、(4)シード層108上にCu等を材料としたスパッタリングにより配線の基層110を積層し、(5)配線114の配置に対応した位置において配線114を形成するためのメッキレジスト112をパターニングし、(6)Cu等を材料として配線の基層110上に電界メッキにより配線114を積層し、(7)メッキレジスト112を剥離して配線の基層110の露出した部分をエッチングにより除去し、(8)シード層108の露出した部分をエッチングにより除去し、(9)ポリイミド樹脂等を用いた絶縁樹脂層116(ソルダーレジスト層)を積層する。なお1層目の上に2層目を積層する場合は、(9)のソルダーレジスト層上において(3)から(9)までの工程を繰り返せばよい。
【0004】
図8に従来技術に係るWCSP構造100の一例を示す。WCSP構造100は半導体チップ118の回路形成面120上に積層され、回路形成面120上の電極122を再配置して半導体チップ118を実装する実装基板(不図示)上の電極(不図示)との電気的接続を行うものである。WCSP構造100は半導体チップ118の回路形成面120において、SiOやSiN等で形成され電極122を露出するようにパターニングされたパッシベーション層124、ポリイミド等で形成され電極122を露出するようにパターニングされた1層目の絶縁層126、Cu等の材料を用いてスパッタリング等により形成し回路形成面120上の電極122と接続する1層目の配線128、ポリイミド等で形成され1層目の配線の一部を露出するようにパターニングされた2層目の絶縁層130、1層目の配線128と電気的に接続し回路形成面120上の電極122の再配置を行う2層目の配線132、の順に積層される。またフェースダウンボンディングを行う場合は、2層目の配線132上の適当な位置に半田ボール134を接続し、また必要に応じて2層目の配線132を樹脂封止するためのソルダーレジスト層138を積層している。
【0005】
ここで、2層目の絶縁層130を形成する場合は、1層目の配線128の一部を露出させるようにパターニングし、2層目の絶縁層130に凹部130aを形成する。そして2層目の配線132を形成すると同時に、凹部130aの内壁に形成され1層目の配線128及び2層目の配線132に接続する貫通配線136を形成している。
【0006】
このような構成を有することにより、回路形成面120上の電極122は、1層目の配線128、貫通配線136、2層目の配線132(半田ボール134)を介して、実装基板上の電極(不図示)の配置に対応した再配置を行いつつ実装基板上の電極(不図示)と電気的に接続することができる。
【0007】
このようなWCSP構造の技術を応用して基板上にインダクタを形成した受動素子チップがある。特許文献1にはスパイラル型のインダクタの構造の半導体装置が開示されている。特許文献1の半導体装置は、IC素子の回路形成面に絶縁層を形成し、その上にスパイラル状のアンテナを形成している。アンテナの外側端部に入出力端子を形成し、内側の端部は開放させている。
【0008】
前述のインダクタを形成した受動素子チップに弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子を実装する場合、発振器の小型化及びSAW素子の振動特性を良くする要請のため、図9に示すようなスパイラル型のインダクタ200上にSAW素子202を実装している。このときSAW素子202の実装に用いる接着材204として量産性に適し、実装の信頼性の高いAgペーストを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−108496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記図9に示すような接着材204にAgペーストを用いてSAW素子を実装する場合、Agペーストを塗布手段によってインダクタ200上の実装箇所にペーストを射出手段のノズルから射出させて塗布している。このためAgペーストは複数のスポット状に塗布され、Agペーストの塗布量及び塗布箇所が一定せず、接着材の形成にばらつきが生じていた。Agペーストは導電性、すなわち金属性を有しているためコンデンサの磁界を遮断する。インダクタ200上に塗布した導電性接着材の形成のばらつき又は形成箇所によってインダクタの磁界を遮断する状態が変化することになり、インダクタのL値が変動してしまうという問題があった。
【0011】
そこで上記従来技術の問題点を解決するため、本発明のスパイラル型のインダクタ及び半導体装置は、導電性接着材によるL値の変動、特にインダクタ上に形成する導電性接着材によるインダクタのL値の特性変動のばらつきを抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]半導体基板上にパターンを螺旋状に形成したスパイラルコイルと、前記半導体基板上に形成し、前記スパイラルコイルの両端と電気的に接続する一対の端子と、前記半導体基板上の前記一対の端子上を露出させて、前記スパイラルコイル上に形成した保護層の全面を覆う遮蔽層と、を備えたことを特徴とするスパイラル型のインダクタ。
【0013】
従来のようなSAW素子の実装箇所となるインダクタの一部に導電性接着材となるAgペーストを塗布する構成では、Agペーストの塗布場所、塗布量による接着材形成のばらつきにより、インダクタの磁界を遮蔽する状態が変化してインダクタのL値が変動することがある。この変動値を予測することは困難であった。上記構成のようにインダクタの保護膜上全体に遮蔽層を形成することにより、インダクタのL値の特性変動のばらつきが一定となり、L値の予測が可能となる。従って、このL値の変動を予め予測してインダクタを設計することができる。またスパイラルコイルを用いることによりインダクタを薄型化することができる。
【0014】
[適用例2]前記遮蔽層は、Agペーストであることを特徴とする適用例1に記載のスパイラル型のインダクタ。
上記構成により、Agペーストは保護層上に印刷又は塗布して形成することができる。従ってインダクタのL値の特性変動のばらつきを一定にすることが可能な遮蔽層を容易に形成することができる。Agペーストによる遮蔽層はウエハ状態又は個片化された状態でも形成することができる。またAgペーストを導電性接着材としてインダクタ上の任意の位置にSAW素子を実装することができる。
【0015】
[適用例3]前記遮蔽層は、磁性材料であることを特徴とする適用例1に記載のスパイラル型のインダクタ。
上記構成により、遮蔽層に磁性材料を用いているので、スパイラルコイルの磁界が磁性材料の遮蔽層に回り込み、導電性接着材の影響を受けることがなくなる。従ってインダクタのL値の特性変動のばらつきを一定にすることができる。またスパイラルコイルの保護層上に磁性材料の遮蔽層を形成して距離を置くことにより、容量結合を抑えることができるため、容量結合に起因する自己共振周波数の低下を抑えることができる。従って自己共振周波数を増加させてインダクタとしての特性を向上させることができる。
【0016】
[適用例4]前記遮蔽層は、前記保護層の全面を覆う磁性材料と、前記磁性材料上に形成するAgペーストからなることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル型のインダクタ。
上記構成により、磁性材料を用いた遮蔽層によるインダクタのL値の特性変動のばらつきを一定にすることができる。またスパイラルコイルの保護層上に磁性材料の遮蔽層を形成して距離を置くことにより、容量結合を抑えることができるため、容量結合に起因する自己共振周波数の低下を抑えることができる。従って自己共振周波数を増加させてインダクタとしての特性を向上させることができる効果を備えると共に、遮蔽層の任意の位置にAgペーストを接着材としてSAW素子を実装することができる。
【0017】
[適用例5]前記スパイラルコイルは、前記端子間のパターンを二重のスパイラル状に形成し、前記パターンの外側に前記一対の端子を形成したことを特徴とする適用例1ないし適用例4のいずれか1項に記載のスパイラル型のインダクタ。
上記構成により、一対の端子はパターンの外側に形成されてスパイラルコイル内に端子が無いため、スパイラルコイル内の端子を避けながら遮蔽層を形成する必要がなく、スパイラルコイル上に遮蔽層を容易に形成することができる。またスパイラルコイル上の任意の位置にSAW素子を実装することができ実装の自由度が拡大する。
【0018】
[適用例6]パッケージの実装基板上に実装するIC素子と、前記IC素子の回路形成面に実装する適用例1ないし適用例5のいずれか1例に記載のスパイラル型のインダクタと、前記スパイラル型のインダクタの前記遮蔽層の上に実装するSAW素子と、を備えたことを特徴とする半導体装置。
上記構成により、上記スパイラル型のインダクタの特性を備えると共に、小型化及び低背化した半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のスパイラル型のインダクタの説明図であり、(1)は平面図であり、(2)は(1)のA−A’断面図である。
【図2】磁性材料を用いた遮蔽層を形成したスパイラル型のインダクタの説明図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法の説明図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法の変形例の説明図である。
【図5】本発明の半導体装置の平面図である。
【図6】本発明のスパイラル型のインダクタの変形例の説明図である。
【図7】従来技術に係るWCSP構造を製造するための基本工程を示す模式図である。
【図8】従来技術に係るWCSP構造を示す模式図である。
【図9】従来のインダクタ上にSAW素子を実装した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のスパイラル型のインダクタ及び半導体装置の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は本発明のスパイラル型のインダクタの構成外略図であり、(1)は平面図であり、(2)は(1)のA−A’断面図である。図示のように本発明のスパイラル型のインダクタ10(以下、単にインダクタ10という。)は、半導体基板20上に螺旋状に形成したスパイラルコイル30と、前記半導体基板20上に形成し、前記スパイラルコイル30の両端と電気的に接続する一対の端子と、前記半導体基板20上の前記一対の端子(中心電極及び外部電極)上を露出させて、前記スパイラルコイル30の保護膜上の全面を覆う遮蔽層40と、を主な基本構成としている。
【0021】
半導体基板20は、Si、ガラス、石英、水晶などで形成されたベアな板材が用いられる。半導体基板20は回路形成面にSiOやSiN等でパッシベーション膜(不図示)が形成され、前記パッシベーション膜上にポリイミド等で形成された絶縁層22が形成され、そして前記絶縁層22上にスパイラル型のインダクタ10が形成される。なお集積回路を有する半導体基板においては、集積回路の電極が形成された回路形成面にSiOやSiN等でパッシベーション膜が形成され、パッシベーション膜上にポリイミド等で形成された絶縁層が形成され、この絶縁層上にスパイラル型のインダクタが形成される。
【0022】
半導体基板20は、インダクタ10の配列単位ごとにダイシングして個片化されて半導体チップとなり、インダクタ10は半導体チップと一体化して形成される。なお本実施形態においては回路形成面に形成された電極、実装基板に接続する配線等は従来技術で述べたWCSP構造の場合と同様なので、説明および図面での記載を省略する。
【0023】
インダクタ10を構成するスパイラルコイル30は絶縁層22上に形成され、すなわち上述のパッシベーション膜(不図示)及び絶縁層22を介して半導体基板20上に平面状であってスパイラル(螺旋)状に形成され、インダクタンスを発生させるものである。スパイラルコイル30のパターンは、スパイラルコイル30の中心端部に形成された中心電極32、スパイラルコイル30の外周端部と接続した外部電極34と一体に形成される。これらは主に材料としてCu、Au、Ag、Ti、W、Tiw、TiN、Ni等の導電性材料の単体又は複合材料により、単層又は複合層に形成される。またスパイラルコイル30は、矩形、多角形(円形、楕円でもよい)の渦巻き形状のパターンを有しており、その中心端部には中心電極32が形成され、また外周端部から延出した外部電極34が形成されている。外部電極34は、スパイラルコイル30の外側、すなわち半導体基板20上のスパイラルコイル30と平面視して重ならない任意の位置に配置される。
【0024】
スパイラルコイル30は、ポリイミド樹脂などにより保護層36で表面を覆うように形成し、パターンを保護している。保護層36は中心電極32及び外部電極34をマスクした後、ソルダーレジスト層を塗布して形成される。あるいは、スパイラルコイル30上の全面に形成した後、外部電極34及び中心電極32上の保護層36を削除して露出させるようにしてもよい。
【0025】
保護層36の表面には、さらに遮蔽層40が形成されている。遮蔽層40は、保護層36と同様に中心電極32及び外部電極34を除き、インダクタ10のスパイラルコイル30上の全面を覆うように形成している。このため半導体基板20上の電極部分(一対の端子)は被膜せずに露出している。遮蔽層40は金属材料であり、Agペーストを用いることができる。Agペーストによる遮蔽層40は、スクリーン印刷、インクジェット又は塗布により保護層36上に形成することができる。
【0026】
Agペーストを塗布する場合には、インダクタ10を形成したウエハをインダクタ10の配列単位で個片化し、半導体装置のIC素子上に実装した状態で射出手段により塗布して形成することができる。このとき中心電極32及び外部電極34の電極上を除いて塗布している。また個片化する前のウエハの状態で中心電極32又は外部電極34をマスキングしてAgペーストを印刷した後、焼成して形成することもできる。
【0027】
一方、スクリーン印刷、インクジェットにより遮蔽層40を形成する場合には、個片化する前のウエハの状態で、中心電極32又は外部電極34をマスキングしてAgペーストをスクリーン印刷で一括印刷した後、焼成して硬化させ形成することができる。
【0028】
なお遮蔽層40は、Agペーストのほかに磁性材料を用いることもできる。磁性材料は、ポリイミド系の樹脂に磁性粉を混ぜて、有機溶剤で溶かしたものを用いることができる。従って磁性材料による遮蔽層は、ペースト状でありAgペーストと同様にスクリーン印刷、インクジェット又は塗布により保護層36上に形成することができる。
【0029】
図2は磁性材料を用いた遮蔽層を形成したスパイラル型のインダクタの説明図である。遮蔽層を印刷により保護層上に形成した場合、焼成して硬化させているため、接着材としてインダクタ上にSAW素子を実装することができない。そこで、図示のように印刷により遮蔽層40を形成した後、SAW素子50の実装箇所に、接着材としてAgペースト42を塗布してSAW素子50を実装させている。
【0030】
また磁性材料を用いた遮蔽層40は、スパイラルコイル30から発生する磁界が磁性材料を用いた遮蔽層40により回り込み(図中の矢印)、SAW素子50を実装する際に用いる導電性接着材となるAgペースト42の影響を受けることが無くなる。これによりAgペーストの塗布のばらつきによるL値の特性変動のばらつきを抑えることができる。
【0031】
またスパイラルコイルの保護層上に磁性材料の遮蔽層を形成して距離を置くことにより、容量結合を抑えることができるため、容量結合に起因する自己共振周波数の低下を抑えることができる。従って自己共振周波数を増加させてインダクタとしての特性を向上させることができる。
【0032】
上記構成によるスパイラル型のインダクタを用いた半導体装置の製造方法について以下説明する。図3は本発明の半導体装置の製造方法の説明図である。
スパイラル型のインダクタ10は、従来技術で説明したWCSP構造の工法に従って形成することができる。すなわちSi等のウエハ上にSiOやSiN等でパッシベーション膜を積層し、パッシベーション膜の上にポリイミド等の絶縁樹脂層をパターニングし、絶縁樹脂層上にTiW等を材料としたスパッタリングによりシード層を積層し、シード層上にCu等を材料としたスパッタリングにより配線の基層を積層する。次にスパイラルコイル30のパターンの配置に対応した位置においてパターンを形成するためのメッキレジストをパターニングし、Cu等を材料として配線の基層上に電界メッキによりパターンを積層し、メッキレジストを剥離して配線の基層の露出した部分をエッチングにより除去し、シード層の露出した部分をエッチングにより除去する。最後にポリイミド樹脂等を用いた保護層をウエハ上の外部電極及び中心電極を除き、スパイラルコイルの全面を覆おうように積層する。
【0033】
このようにウエハ上に複数形成したスパイラル型のインダクタを配列単位ごとにダイシングして個片化する。また半導体装置60は、図3(1)に示すように、予めパッケージの実装基板62上の接続電極(不図示)とIC素子70の実装端子(不図示)を電気的に接続させて実装基板62上にIC素子70を実装させている。そしてIC素子70上にスパイラル型のインダクタ10を実装する。なおIC素子70は少なくともSAW素子50を駆動させる発振回路を備えた半導体集積回路である。
【0034】
図3(2)に示すようにインダクタ10のスパイラルコイル30の保護層36上にAgペースト又は磁性材料を塗布して遮蔽層40を形成する。Agペースト又は磁性材料による遮蔽層40は、射出手段(ディスペンサー)80のノズル先端から保護層36面へスポット状に射出させて形成させる。このとき中心電極32及び外部電極34上に被膜しないように形成している。
【0035】
次に図3(3)に示すようにAgペーストを塗布した後、SAW素子50をインダクタ10上に実装する。図5は本発明の半導体装置の平面図である。図5に示すように、SAW素子50はインダクタ10を平面視して一対の端子(中心電極32及び外部電極34)と重ならない位置に実装している。SAW素子50を実装した後、焼成処理を行い、遮蔽層40を硬化させる。なおSAW素子50は、一例として水晶、リチウムタンタレート、リチウムニオベートなどの圧電材料からなる矩形基板の上面中央に1対の交差指電極からなるIDTが形成され、その長手方向両側に格子状の反射器が形成されている。各交差指電極にはそのバスバーに連続して前記基板の長手方向辺縁近傍に一対のボンディングパッドが形成されているものである。
【0036】
図3(4)に示すようにSAW素子50とインダクタ10間及びインダクタ10とIC素子70間をワイヤボンディングによる電気的な接続を行う。具体的にSAW素子50とインダクタ10の中心電極32及び外部電極34との接続はアルミワイヤ82を使用し、その先端部を電極面にウェッジツールで加圧しながら超音波振動を加えて接合するウェッジボンディング法により行っている。またインダクタ10とIC素子との接続はAu線によるボンディングを行っている。
【0037】
図3(5)に示すように実装基板62の開口部を蓋体84で気密に封止する。蓋体84は一例として材質にコバールを用いて、窒素雰囲気下でシームリング(不図示)を介してシーム溶接により接合封止している。これによりパッケージ内にIC素子70及びSAW素子50を備え、スパイラル型のインダクタ10の遮蔽層40の上にSAW素子50を実装した半導体装置60が得られる。
【0038】
次にスパイラル型のインダクタを用いた半導体装置の製造方法の変形例について以下説明する。図4は本発明の半導体装置の製造方法の変形例の説明図である。
変形例の半導体装置の製造方法は、遮蔽層をスクリーン印刷、インクジェットによりウエハ上に形成している。
【0039】
具体的にウエハ上に形成するインダクタ10は、前述のインダクタ10の製造方法と同様の方法により行う(図4(1))。
次にインダクタ10の保護層36上に遮蔽層40を形成する(図4(2))。遮蔽層40は、スクリーン印刷、インクジェットにより一括に印刷して形成することができる。遮蔽層40を印刷した後、焼成処理を行って遮蔽層40を硬化させる。なおこのとき中心電極32及び外部電極34上にはマスキングして、遮蔽層40が被膜されないようにしている。このように印刷による遮蔽層40の場合、ウエハ上で一括形成することができる。
【0040】
次にウエハ上に複数形成したスパイラル型のインダクタを配列単位ごとにダイシングして個片化する。また半導体装置は、図3(1)と同様に予めパッケージの実装基板62上の接続電極(不図示)とIC素子70の実装端子(不図示)を電気的に接続させて実装基板62上にIC素子70を実装させている。そしてIC素子70上にスパイラル型のインダクタ10を実装する(図4(3))。
【0041】
図4(4)に示すようにSAW素子50の実装箇所となるスパイラルコイル30上にAgペースト42を塗布した後、SAW素子50をインダクタ10上に実装する。SAW素子50を実装した後、焼成処理を行い、Agペースト42を硬化させる。
【0042】
次に図3(4)と同様にSAW素子50とインダクタ10間及びインダクタ10とIC素子70間をワイヤボンディングによる電気的な接続を行う(図4(5))。
【0043】
最後に図3(5)と同様に実装基板62の開口部を蓋体84で気密に封止する。蓋体84は一例として材質にコバールを用いて、窒素雰囲気下でシームリング(不図示)を介してシーム溶接により接合封止している。これによりパッケージ内にIC素子70及びSAW素子50を備え、スパイラル型のインダクタ10の遮蔽層40の上にSAW素子50を実装した半導体装置60が得られる図4(6)
【0044】
次に本発明のスパイラル型のインダクタの変形例について説明する。図6は本発明のスパイラル型のインダクタの変形例の説明図である。図示のように変形例のスパイラル型のインダクタ10Aは、図1に示すインダクタ10とコイルの形状が異なっている。具体的にスパイラルコイル30Aは、一対の端子35A、35B間のパターンを二重のスパイラル状に形成し、外側に前記一対の端子35A、35Bを形成した構成である。そして保護層36をスパイラルコイル30A上に形成している(図中の点線で囲まれた範囲)。このときスパイラルコイル30Aの両端に接続する一対の電極35A、35Bはコイルの外側に形成されるため、保護層36の形成を一工程で容易に行なうことができる。さらに保護層36上に形成する遮蔽層40についても、同様に一工程で形成することができる(図中の点線で囲まれた範囲)。
【0045】
上記構成による本発明のスパイラル型のインダクタによれば、インダクタの保護膜上全体に遮蔽膜を形成することにより、インダクタのL値の特性変動のばらつきが一定となり、L値の予測が可能となる。従ってこのL値の変動を予め予測してインダクタを設計することができる。またスパイラルコイルを用いることによりインダクタを薄型化することができる。
【0046】
また遮蔽層にはAgペーストを用いることにより、保護層上に印刷又は塗布して形成することができる。従ってインダクタのL値の特性変動のばらつきを一定にすることが可能な遮蔽層を容易に形成することができる。Agペーストによる遮蔽層はウエハ状態又は個片化された状態でも形成することができる。またAgペーストを導電性接着材としてインダクタ上の任意の位置にSAW素子を実装することができる。
【0047】
また遮蔽層に磁性材料を用いているので、スパイラルコイルの磁界が磁性材料の遮蔽層に回り込み、導電性接着材の影響を受けることがなくなる。従ってインダクタのL値の特性変動のばらつきを一定にすることができる。またスパイラルコイルの保護層上に磁性材料の遮蔽層を形成して距離を置くことにより、容量結合を抑えることができるため、容量結合に起因する自己共振周波数の低下を抑えることができる。従って自己共振周波数を増加させてインダクタとしての特性を向上させることができる。
【0048】
前記遮蔽層は、前記保護層の全面を覆う磁性材料と、前記磁性材料上に形成するAgペーストから構成することにより、磁性材料を用いた遮蔽層によるインダクタのL値の特性変動のばらつきを一定にすることができる。また容量結合を抑えて、自己共振周波数を増加させてインダクタとしての特性を向上させることができる効果を備えると共に、遮蔽層の任意の位置にAgペーストを接着材としてSAW素子を実装することができる。
【0049】
スパイラルコイルは、前記端子間のパターンを二重のスパイラル状に形成し、前記パターンの外側に前記一対の端子を形成した構成により、一対の端子はパターンの外側に形成されてスパイラルコイル内に端子が無いため、スパイラルコイル内の端子を避けながら遮蔽層を形成する必要がなく、スパイラルコイル上に遮蔽層を容易に形成することができる。またスパイラルコイル上の任意の位置にSAW素子を実装することができ実装の自由度が拡大する。
【0050】
また上記構成による本発明の半導体装置によれば、上記スパイラル型のインダクタの特性を備えると共に、小型化及び低背化した半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
10、10A………スパイラル型のインダクタ、20………半導体基板、22………絶縁層、30、30A………スパイラルコイル、32………中心電極、34………外部電極、36………保護層、40………遮蔽層、42………Agペースト、50………SAW素子、60………半導体装置、62………実装基板、70………IC素子、80………射出手段、82………アルミワイヤ、84………蓋体、100………WCSP構造、102………半導体基板、104………保護膜、106………絶縁樹脂層、108………シード層、110………配線の基層、112………メッキレジスト、114………配線、116………絶縁樹脂層、118………半導体チップ、120………回路形成面、122………電極、124………パッシベーション層、126………1層目の絶縁層、128………1層目の配線、130………2層目の絶縁層、132………2層目の配線、134………半田ボール、136………貫通配線、138………ソルダーレジスト層、200………スパイラル型のインダクタ、202………SAW素子、204………接着材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にパターンを螺旋状に形成したスパイラルコイルと、
前記半導体基板上に形成し、前記スパイラルコイルの両端と電気的に接続する一対の端子と、
前記半導体基板上の前記一対の端子を露出させて、前記スパイラルコイル上に形成した保護層の全面を覆う遮蔽層と、
を備えたことを特徴とするスパイラル型のインダクタ。
【請求項2】
前記遮蔽層は、Agペーストであることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル型のインダクタ。
【請求項3】
前記遮蔽層は、磁性材料であることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル型のインダクタ。
【請求項4】
前記遮蔽層は、前記保護層の全面を覆う磁性材料と、前記磁性材料上に形成するAgペーストからなることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル型のインダクタ。
【請求項5】
前記スパイラルコイルは、前記一対の端子間のパターンを二重のスパイラル状に形成し、前記パターンの外側に前記一対の端子を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスパイラル型のインダクタ。
【請求項6】
パッケージの実装基板上に実装するIC素子と、
前記IC素子の回路形成面に実装する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のスパイラル型のインダクタと、
前記スパイラル型のインダクタの前記遮蔽層の上に実装するSAW素子と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−222686(P2011−222686A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89279(P2010−89279)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】