説明

スプールバルブ

【課題】 バルブ動作時、バルブスプールとスプール穴との隙間に夾雑物が入り込むことを防止でき、併せて、流体クッション効果により異音の発生を防止することができるシフトアクチュエータを提供すること。
【解決手段】 バルブボディ50a,50aのスプール穴50b,50bにストローク可能に配置されたたバルブスプール50c,50cを備え、バルブ動作時、前記バルブスプール50c,50cの両端部に形成された流体室50d,50dのうち一方の流体室に充填されているドレーン流体を排出するスプールバルブにおいて、前記両流体室50d,50dに接続される作動流体回路に、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、前記スプール穴50b,50bと前記バルブスプール50c,50cとの隙間に連通する閉回路C1を形成するワンウェイボール50e,50eを設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ動作時、バルブスプールの端部に形成された流体室に充填されているドレーン流体を排出するスプールバルブの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧制御弁として用いられるスプールバルブとしては、バルブボディのスプール穴にストローク可能に配置されたバルブスプールを備え、バルブ動作時、バルブスプールの端部に形成された流体室に充填されているドレーン流体を排出するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−293701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のスプールバルブにあっては、バルブスプールとスプール穴との隙間に夾雑物が入り込む(特に、バルブ作動によって負圧が発生する側は夾雑物が侵入しやすい。)構成となっていたため、噛み込んだ夾雑物をバルブ動作に伴って擦ることよるバルブスプールの摩耗や、噛み込んだ夾雑物がバルブ動作抵抗となりスティックが発生してしまう、という問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バルブ動作時、バルブスプールとスプール穴との隙間に夾雑物が入り込むことを防止でき、併せて、流体クッション効果により異音の発生を防止することができるスプールバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、バルブボディのスプール穴にストローク可能に配置されたバルブスプールを備え、
バルブ動作時、前記バルブスプールの端部に形成された流体室に充填されているドレーン流体を排出するスプールバルブにおいて、
前記流体室に接続される作動流体回路に、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、前記スプール穴と前記バルブスプールとの隙間に連通する閉回路を形成する流路遮断構造を設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明のスプールバルブにあっては、バルブ動作時、流体室に接続される作動流体回路に設定された流路遮断構造により、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて閉回路が形成されると、この閉回路により加圧されたドレーン流体が、スプール穴とバルブスプールとの隙間を経過して外部へ排出される。
すなわち、スプール穴とバルブスプールとの隙間に夾雑物が侵入したとしても、閉回路により加圧されたドレーン流体により押し流され、ドレーン流体と共に夾雑物もスプール穴とバルブスプールとの隙間を経過して外部へ排出される。
また、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて閉回路が形成されると、閉回路内のドレーン流体圧力が高まり、バルブスプールのストローク速度が低下する。
このため、例えば、バルブスプール端面とスプール穴端面とが突き当たるフルストローク域では、圧力が高まったドレーン流体そのものが、あたかも衝撃力を受け止めて緩和するクッションの役目をなすという流体クッション効果を示す。
この結果、バルブ動作時、バルブスプールとスプール穴との隙間に夾雑物が入り込むことを防止でき、併せて、流体クッション効果により異音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のスプールバルブを実施するための最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のスプールバルブを有するシフトアクチュエータを適用したツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションを示すスケルトン図である。
【0009】
[変速機入力部および軸の構成]
以下、実施例1のスプールバルブを有するシフトアクチュエータを適用したツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションにおける変速機入力部および軸の構成について説明する。
ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションは、図1に示すように、変速機入力部に、複数の変速段のうち奇数変速段グループの選択時に締結される第1クラッチCAと、複数の変速段のうち偶数変速段グループの選択時に締結される第2クラッチCBと、を備えている。そして、トランスミッションケース1と、駆動入力軸2と、トーショナルダンパ3と、オイルポンプ4と、第1変速機入力軸5と、第2変速機入力軸6と、を備えている。
【0010】
前記第1クラッチCAは、奇数変速段(第1速、第3速、第5速、後退)用であり、第2クラッチCBは、偶数変速段(第2速、第4速、第6速)用である。
両クラッチCA,CBのドライブ側は、トーショナルダンパ3を介し、エンジン等の動力源からの回転駆動力を入力する駆動入力軸2に連結される。
【0011】
第1クラッチCAのドリブン側は、奇数変速段の選択による締結時、エンジン等の動力源からの回転駆動力を第1変速機入力軸5に入力する。
第2クラッチCBのドリブン側は、偶数変速段の選択による締結時、エンジン等の動力源からの回転駆動力を第2変速機入力軸6に入力する。
【0012】
前記オイルポンプ4は、エンジンEにより常時作動し、このオイルポンプ4からの吐出油を油圧源とし、両クラッチCA,CBの締結・開放制御と、シフトアクチュエータによる変速段選択制御と、を実行し、余剰の油を潤滑油として必要部位に対する潤滑を行う。
【0013】
前記第2変速機入力軸6は中空軸とし、前記第1変速機入力軸5は中実軸とし、第1変速機入力軸5に対し、フロント側ニードルベアリング7及びリヤ側ニードルベアリング8を介し、同心状態で第2変速機入力軸6を回転自在に支持する。
【0014】
前記第2変速機入力軸6は、トランスミッションケース1の前壁1aに対しボールベアリング9により回転自在に支持する。前記第1変速機入力軸5は、第2変速機入力軸6の後端から突出させ、突出した第1変速機入力軸5の後端部5aを、トランスミッションケース1の中間壁1bを貫通すると共に、中間壁1bに対しボールベアリング10により回転自在に支持する。
【0015】
前記第1変速機入力軸5の後端部5aは、同軸上に変速機出力軸11を設け、この変速機出力軸11を、テーパーローラベアリング12およびアキシャルベアリング13によりトランスミッションケース1の後端壁1cに回転自在に支持すると共に、ニードルベアリング14を介して第1変速機入力軸5の後端部5aに回転自在に支持する。
【0016】
前記第1変速機入力軸5、第2変速機入力軸6、および変速機出力軸11に対し、平行配置によりカウンターシャフト15を設け、これをローラベアリング16,17,18を介し、トランスミッションケース1の前端壁1a、中間壁1b、および後端壁1cに回転自在に支持する。
【0017】
[変速機構の構成]
次に、実施例1のスプールバルブを有するシフトアクチュエータを適用したツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションにおける変速機構の構成について説明する。
ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションは、図1に示すように、変速機構として、同期噛合機構を有し、歯数比の異なる複数のギヤ対により前進6速・後退1速を達成する常時噛み合い式のギヤトレーンを備えている。
【0018】
前記カウンターシャフト15の後端には、パークギヤ69及びカウンターギヤ19を一体に設け、前記変速機出力軸11には、出力歯車20を設け、カウンターギヤ19と出力歯車20を互いに噛合させてカウンターシャフト15を変速機出力軸11に駆動結合する。なお、カウンターギヤ19と出力歯車20により、第5速歯車組G5を構成する。
【0019】
前記第1変速機入力軸5の後端部5aとカウンターシャフト15との間には、奇数変速段グループ(第1速、第3速、後退)の歯車組、つまり、フロント側から順に、第1速歯車組G1、後退歯車組GR、および第3速歯車組G3を配置する。
【0020】
前記第1速歯車組G1は、第1変速機入力軸5の後端部5aに設けた第1速入力歯車21と、カウンターシャフト15上に設けた第1速出力歯車22と、を互いに噛み合わせて構成する。
【0021】
前記後退歯車組GRは、第1変速機入力軸5の後端部5aに設けた後退入力歯車23と、カウンターシャフト15上に設けた後退出力歯車24と、両歯車23,24に噛み合うリバースアイドラギヤ25と、により構成する。なお、リバースアイドラギヤ25は、トランスミッションケース1の中間壁1bから突設したリバースアイドラシャフト25aに対し回転可能に支持されている。
【0022】
前記第3速歯車組G3は、第1変速機入力軸5の後端部5aに設けた第3速入力歯車26と、カウンターシャフト15上に設けた第3速出力歯車27と、を互いに噛み合わせて構成する。
【0023】
前記第1速歯車組G1と後退歯車組GRとの間のカウンターシャフト15上には、1−R同期噛合機構28を設ける。そして、1−R同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを、図示の中立位置から左方向にストロークさせ、クラッチギヤ28bにスプライン嵌合させることで、第1速出力歯車22をカウンターシャフト15に駆動結合し、第1速を選択可能とする。また、1−R同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを、図示の中立位置から右方向にストロークさせ、クラッチギヤ28cにスプライン嵌合させることで、後退出力歯車24をカウンターシャフト15に駆動結合し、後退速を選択可能とする。
【0024】
前記第3速歯車組G3と出力歯車20との間の第1変速機入力軸5の後端部5a上には、3−5同期噛合機構29を設ける。そして、3−5同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを、図示の中立位置から左方向にストロークさせ、クラッチギヤ29bにスプライン嵌合させることで、第3速入力歯車26を第1変速機入力軸5に駆動結合し、第3速を選択可能とする。また、3−5同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを、図示の中立位置から右方向にストロークさせ、クラッチギヤ29cにスプライン嵌合させることで、第1変速機入力軸5と出力歯車20とを直結し、第5速を選択可能とする。
【0025】
前記第2変速機入力軸6とカウンターシャフト15との間には、偶数変速段グループ(第2速、第4速、第6速)の歯車組、つまり、フロント側から順に、第6速歯車組G6、第2速歯車組G2、および第4速歯車組G4を配置する。
【0026】
前記第6速歯車組G6は、第2変速機入力軸6に設けた第6速入力歯車30と、カウンターシャフト15上に設けた第6速出力歯車31と、を互いに噛み合わせて構成する。
【0027】
前記第2速歯車組G2は、第2変速機入力軸6に設けた第2速入力歯車32と、カウンターシャフト15上に設けた第2速出力歯車33と、を互いに噛み合わせて構成する。
【0028】
前記第4速歯車組G4は、第2変速機入力軸6に設けた第4速入力歯車34と、カウンターシャフト15上に設けた第4速出力歯車35と、を互いに噛み合わせて構成する。
【0029】
前記第6速歯車組G6の側部のカウンターシャフト15上には、6−N同期噛合機構37を設ける。そして、6−N同期噛合機構37のカップリングスリーブ37aを、図示の中立位置から左方向にストロークさせ、クラッチギヤ37bにスプライン嵌合させることで、第6速出力歯車31をカウンターシャフト15に駆動結合し、第6速を選択可能とする。
【0030】
前記第2速歯車組G2と第4速歯車組G4との間のカウンターシャフト15上には、2−4同期噛合機構38を設ける。そして、2−4同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを、図示の中立位置から左方向にストロークさせ、クラッチギヤ38bにスプライン嵌合させることで、第2速出力歯車33をカウンターシャフト15に駆動結合し、第2速を選択可能とする。また、2−4同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを、図示の中立位置から右方向にストロークさせ、クラッチギヤ38cにスプライン嵌合させることで、第4速出力歯車35をカウンターシャフト15に駆動結合し、第4速を選択可能とする。
【0031】
[変速油圧制御系および電子制御系の構成]
図2は実施例1のスプールバルブを有するシフトアクチュエータを適用したツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションにおける変速油圧制御系および電子制御系を示す制御系統図である。
ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションは、変速油圧制御系および電子制御系として、図2に示すように、3−5シフトフォーク41と、1−Rシフトフォーク42と、6−Nシフトフォーク43と、2−4シフトフォーク44と、第1コントロールバルブユニット45と、第2コントロールバルブユニット46と、自動MTコントローラ47と、を備えている。
【0032】
前記3−5シフトフォーク41は、前記3−5同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aに係合し、第1シフトロッド48に固定されている。この第1シフトロッド48は、トランスミッションケース1の前端壁1aと中間壁1bに対し軸方向に移動可能に支持される。そして、第1シフトロッド48に3−5シフトブラケット49を固定し、この3−5シフトブラケット49の端部は、3−5シフトアクチュエータ50のスプール連結軸部に遊装支持される。つまり、前記3−5シフトフォーク41は、3−5シフトアクチュエータ50のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第3速選択時)または右方向(第5速選択時)にストロークする。
【0033】
前記1−Rシフトフォーク42は、1−R同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aに係合し、第2シフトロッド51に軸方向にストローク可能に設けられる。この第2シフトロッド51は、トランスミッションケース1の前端壁1aと中間壁1bに対し軸方向の固定状態で設けられる。そして、1−Rシフトフォーク42のブラケット円筒部42aに一体形成されたブラケット腕部42bの端部は、1−Rシフトアクチュエータ52のスプール連結軸部に遊装支持される。つまり、前記1−Rシフトフォーク42は、1−Rシフトアクチュエータ52のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第1速選択時)または右方向(後退速選択時)にストロークする。
【0034】
前記6−Nシフトフォーク43は、6−N同期噛合機構37のカップリングスリーブ37aに係合し、トランスミッションケース1に対し軸方向固定の第2シフトロッド51に軸方向にストローク可能に設けられる。そして、6−Nシフトフォーク43のブラケット円筒部43aに一体形成されたブラケット腕部43bの端部は、6−Nシフトアクチュエータ53のスプール連結軸部に遊装支持される。つまり、前記6−Nシフトフォーク43は、6−Nシフトアクチュエータ53のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第6速選択時)にストロークする。
【0035】
前記2−4シフトフォーク44は、2−4同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aに係合し、トランスミッションケース1に対し軸方向固定の第2シフトロッド51に軸方向にストローク可能に設けられる。そして、2−4シフトフォーク44のブラケット円筒部44aに一体形成されたブラケット腕部44bの端部は、2−4シフトアクチュエータ54のスプール連結軸部に遊装支持される。つまり、前記2−4シフトフォーク44は、2−4シフトアクチュエータ54のスプール動作にしたがって、図示の中立位置から左方向(第2速選択時)または右方向(第4速選択時)にストロークする。
【0036】
前記第1コントロールバルブユニット45は、図2に示すように、第1バルブボディ81に、オイルポンプ4からの吐出油に基づいてライン圧PLを調圧するライン圧ソレノイドバルブ70と、前記シフトアクチュエータ50,51,52,53へのアクチュエータ作動圧を作り出すアクチュエータ油圧コントロールバルブ59からの偶数変速段圧Peに基づいて第1クラッチCAへのクラッチ制御圧を作り出す第1クラッチ圧ソレノイドバルブ71と、奇数変速段圧Poに基づいて第2クラッチCBへのクラッチ制御圧を作り出す第2クラッチ圧ソレノイドバルブ72と、を有して構成される。
そして、前記オイルポンプ4とライン圧ソレノイドバルブ70とは、ポンプ圧油路73により連結されている。
前記ライン圧ソレノイドバルブ70とアクチュエータ油圧コントロールバルブ59とは、ライン圧油路74により連結されている。
前記第1クラッチ圧ソレノイドバルブ71とアクチュエータ油圧コントロールバルブ59とは、偶数変速段圧油路75により連結されている。
前記第2クラッチ圧ソレノイドバルブ72とアクチュエータ油圧コントロールバルブ59とは、奇数変速段圧油路76により連結されている。
前記第1クラッチ圧ソレノイドバルブ71と第1クラッチCAのクラッチ油室とは、第1クラッチ圧油路77により連結されている。なお、第1クラッチ圧油路77には、図外の第1クラッチ圧センサが設けられている。
前記第2クラッチ圧ソレノイドバルブ72と第2クラッチCBのクラッチ油室とは、第2クラッチ圧油路78により連結されている。なお、第2クラッチ圧油路78には、図外の第2クラッチ圧センサが設けられている。
【0037】
前記第2コントロールバルブユニット46は、図2に示すように、第2バルブボディ82に、3−5シフトアクチュエータ50と、1−Rシフトアクチュエータ52と、6−Nシフトアクチュエータ53と、2−4シフトアクチュエータ54と、3−5シフト位置センサ55と、1−Rシフト位置センサ56と、6−Nシフト位置センサ57と、2−4シフト位置センサ58と、アクチュエータ油圧コントロールバルブ59(シフト制御用コントロールバルブ)と、を一体に有するユニットである。
【0038】
前記アクチュエータ油圧コントロールバルブ59は、第1コントロールバルブユニット45にて調圧されたライン圧PLに基づき、偶数変速段圧Peと奇数変速段圧Poを作り出し、さらに、選択された変速段に応じて各シフトアクチュエータ50,52,53,54への各変速圧油路にアクチュエータ作動圧を供給する。
【0039】
前記自動MTコントローラ47は、車速センサ60、アクセル開度センサ61、レンジ位置センサ62、他のセンサ・スイッチ63から情報を入力し、前記第1コントロールバルブユニット45の各バルブソレノイドに対しクラッチ締結制御指令(ライン圧制御指令も含む。)を出力すると共に、前記アクチュエータ油圧コントロールバルブ59の各バルブソレノイドに対し変速段選択の制御指令を出力する。
【0040】
[コントロールバルブユニットの配置構成]
次に、第1コントロールバルブユニット45と、第2コントロールバルブユニット46と、の配置構成について説明する。
まず、実施例1では、図1および図2に示すように、トランスミッションケース1に、変速時に油圧作動する変速要素への制御油圧を作り出す油圧コントロールバルブを備えたツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションにおいて、前記油圧コントロールバルブのうち、変速機入力部に設けられた両クラッチCA,CBを制御するクラッチ制御用コントロールバルブ70,71,72を選別し、前記選別したクラッチ制御用コントロールバルブ70,71,72を、前記クラッチCA,CBの近接位置に配置している。
【0041】
前記クラッチ制御用コントロールバルブ70,71,72は、図1に示すように、前記変速機入力部に設けられた両クラッチCA,CBの側部であって、該両クラッチCA,CBとは同じ高さ以上の位置に配置している。
【0042】
前記油圧コントロールバルブのバルブボディを、前記クラッチ制御用コントロールバルブ70,71,72を収める第1バルブボディ81と、変速機構の変速比を制御するアクチュエータ油圧コントロールバルブ59を収める第2バルブボディ82と、に分割し、前記クラッチ制御用コントロールバルブ70,71,72と第1バルブボディ81により第1コントロールバルブユニット45を構成し、前記アクチュエータ油圧コントロールバルブ59と第2バルブボディ82により第2コントロールバルブユニット46を構成し、前記トランスミッションケース1の異なる位置に、前記第1コントロールバルブユニット45と前記第2コントロールバルブユニット46とを配置している。
【0043】
具体的なバルブユニット配置は、図1に示すように、前記トランスミッションケース1を、変速機入力部に設けられたオイルポンプ4と両クラッチCA,CBを収めるクラッチケース部1dと、ギヤトレーンを収める第1変速機構ケース部1eおよび第2変速機構ケース部1fと、に分割し、前記第1コントロールバルブユニット45を、前記クラッチケース部1dの側部位置に配置し、前記第2コントロールバルブユニット46を、前記両変速機構ケース部1e,1fの底部位置に配置している。
【0044】
[シフトアクチュエータの構成]
次に、実施例1のスプールバルブを有するシフトアクチュエータの構成について図3に基づき説明する。
図3は実施例1のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系の構成を示す概略図である。
ここでは、3−5シフトアクチュエータ50を例にとって説明するが、他の1−Rシフトアクチュエータ52、6−Nシフトアクチュエータ53、2−4シフトアクチュエータ54も同様の構成を備えている。
【0045】
実施例1のスプールバルブは、図3に示すように、バルブボディ50a,50aのスプール穴50b,50bにストローク可能に配置されたたバルブスプール50c,50cを備え、バルブ動作時、前記バルブスプール50c,50cの両端部に形成された流体室50d,50dのうち一方の流体室に充填されているドレーン流体を排出する。
【0046】
そして、前記両流体室50d,50dに接続される作動流体回路に、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、前記スプール穴50b,50bと前記バルブスプール50c,50cとの隙間に連通する閉回路C1を形成するワンウェイボール50e,50e(流路遮断構造)を設定している。
【0047】
前記ワンウェイボール50e,50eは、バルブスプール50c,50cのストローク量が、図3に示すニュートラル位置以上ストロークした後、前記スプール穴50b,50bと前記バルブスプール50c,50cとの隙間に連通する閉回路を形成する設定とされている。
【0048】
前記バルブスプール50c,50cは、図3に示すように、バルブボディ50a,50aのスプール穴50b,50bにストローク可能に配置されると共に3−5シフトフォーク41が連結され、前記流体室50d,50dは、前記バルブスプール50c,50cの両端面位置に形成され、シフト時、前記両流体室50d,50dのうち一方の流体室に加圧流体を供給し、他方の流体室に充填されているドレーン流体を排出することで、バルブスプール50c,50cに連結されている3−5シフトフォーク41をシフト方向に動作させる3−5シフトアクチュエータ50に有する。
【0049】
実施例1のスプールバルブの構成を詳しく説明すると、図3に示すように、前記バルブスプール50c,50cを、大径スプール部50c1,50c1と、小径スプール部50c2,50c2と、スプール段差面50c3,50c3と、を有する段付きバルブスプールとしている。
そして、前記スプール穴50b,50bを、大径スプール穴50b1,50b1と、小径スプール穴50b2,50b2と、ボディ段差面50b3,50b3と、を有する段付きバルブスプール穴としている。
【0050】
前記流体室50d,50dとして、小径スプール部50c2,50c2の端面と小径スプール穴50b2,50b2により囲まれた第1流体室50d1,50d1と、小径スプール部50c2,50c2の周面とスプール段差面50c3,50c3とボディ段差面50b3,50b3と大径スプール穴50b1,50b1により囲まれた第2流体室50d2,50d2と、を形成している。
【0051】
前記作動流体回路は、前記第1流体室50d1,50d1の端面位置に連結した主回路50f,50fと、前記第2流体室50d2,50d2のボディ段差面位置と前記主回路50f,50fとに連結した副回路50g,50gと、前記副回路50g,50gの途中位置に設定し、第2流体室50d2,50d2から主回路50f,50fへの流れを遮断するワンウェイボール50e,50eと、を有する。
【0052】
そして、前記小径スプール部50c2,50c2と小径スプール穴50b2,50b2との第1隙間t1より、前記大径スプール部50c1,50c1と大径スプール穴50b1,50b1との第2隙間t2を大きく設定している(図5参照)。
【0053】
前記3−5シフトフォーク41は、3−5シフトアクチュエータ50からの入力は無くともチェック力によりその位置が保持される。すなわち、図3に示すように、チェックスプリング91により付勢されたチェックボール90は、第2シフトロッド51に形成された3速位置ボール穴92とニュートラル位置ボール穴93と5速位置ボール穴94とのうち、何れかの穴に付勢嵌合している。
【0054】
次に、作用を説明する。
マニュアルトランスミッション(手動変速機)は、構造が簡単で効率が良いという利点があるが、運転者が全て変速操作しなければならない。そこで、この手動変速機の利点を残して、変速操作を自動化する機構を追加したものが、自動マニュアルトランスミッションと呼ばれるものである。
この自動マニュアルトランスミッションの課題は、変速時、一旦クラッチを切って変速させるため、自動変速時にトルクが途切れることによる違和感が残ることである。この問題を解消するには、トルクのとぎれを無くすことが必要となる。通常の手動変速機は、クラッチが1組であるが、それにクラッチをもう1組追加し、2組のクラッチを繋ぎ替えてトルクの途切れを無くしたものがツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションである。
このツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションでは、隣り合う変速段への変速時、まず、アクチュエータ油圧コントロールバルブ59において、クラッチ掛け替え制御に先行し、開放されているクラッチの変速段グループの中から次の変速段を選択し、選択された変速段を得る方向にシフトフォークを動作させるシフトアクチュエータへの変速油圧を作り出し、次いで、クラッチ制御用コントロールバルブ70,71,72において、第1クラッチCAと第2クラッチCBの掛け替え制御油圧を作り出し、トルクのとぎれを無くした変速を行う。以下、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションでの変速作用を説明する。
【0055】
[変速作用]
中立位置(Nレンジ)や駐車位置(Pレンジ)の選択時には、クラッチCA,CBの双方を開放しておき、かつ、シフトアクチュエータ50,52,53,54は、全て図2に示す中立位置にしておく。つまり、同期噛合機構28,29,37,38のカップリングスリーブ28a,29a,37a,38aを全て中立位置に維持し、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションが動力伝達を行わないようにする。
【0056】
動力伝達を希望するDレンジやRレンジやマニュアルモード(=ドライバ操作による手動変速モード)の選択時には、基本的に、以下の手順にしたがって変速が行われる。
第1速時には、1−Rシフトアクチュエータ52を図3の左方向に動作させる制御を行うことで、同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを図2の左方向に移動させて歯車22をカウンターシャフト15に駆動結合し、その後、第1クラッチCAを締結する。
これにより、第1クラッチCAからの駆動入力が、第1変速機入力軸5→第1速歯車組G1→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を介して変速機出力軸11により軸方向に出力され、第1速の動力伝達が行われる。
【0057】
第1速から第2速へのアップシフトに際しては、2−4シフトアクチュエータ54を図3の左方向に動作させる制御を行うことで、同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを図2の左方向に移動させて歯車33をカウンターシャフト15に駆動結合し、その後、第1クラッチCAを開放すると共に第2クラッチCBを締結すること(クラッチの掛け替え)により第1速から第2速へのアップシフトを行う。
これにより、第2クラッチCBからの駆動入力が、第2変速機入力軸6→第2速歯車組G2→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を介して変速機出力軸11により軸方向に出力され、第2速の動力伝達が行われる。
【0058】
第2速から第3速へのアップシフトに際しては、3−5シフトアクチュエータ50を図3の左方向に動作させる制御を行うことで、同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを図2の左方向に移動させて歯車26を第1変速機入力軸5に駆動結合し、その後、第2クラッチCBを開放すると共に第1クラッチCAを締結すること(クラッチの掛け替え)により第1速から第2速へのアップシフトを行う。
これにより、第1クラッチCAからの駆動入力が、第1変速機入力軸5→第3速歯車組G3→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を介して変速機出力軸11により軸方向に出力され、第3速の動力伝達が行われる。
【0059】
第3速から第4速へのアップシフトに際しては、2−4シフトアクチュエータ54を図3の右方向に動作させる制御を行うことで、同期噛合機構38のカップリングスリーブ38aを図2の右方向に移動させて歯車35をカウンターシャフト15に駆動結合し、その後、第1クラッチCAを開放すると共に第2クラッチCBを締結すること(クラッチの掛け替え)により第3速から第4速へのアップシフトを行う。
これにより、第2クラッチCBからの駆動入力が、第2変速機入力軸6→第4速歯車組G4→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を介して変速機出力軸11により軸方向に出力され、第4速の動力伝達が行われる。
【0060】
第4速から第5速へのアップシフトに際しては、3−5シフトアクチュエータ50を図3の右方向に動作させる制御を行うことで、同期噛合機構29のカップリングスリーブ29aを図2の右方向に移動させて第1変速機入力軸5を変速機出力軸11に直結し、その後、第2クラッチCBを開放すると共に第1クラッチCAを締結すること(クラッチの掛け替え)により第4速から第5速へのアップシフトを行う。
これにより、第1クラッチCAからの駆動入力が、第1変速機入力軸5→第3速歯車組G3→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を介して変速機出力軸11により軸方向に出力され、第5速(変速比1)の動力伝達が行われる。
【0061】
第5速から第6速へのアップシフトに際しては、6−Nシフトアクチュエータ53を図3の左方向に動作させる制御を行うことで、同期噛合機構37のカップリングスリーブ37aを図2の左方向に移動させて歯車31をカウンターシャフト15に駆動結合し、その後、第1クラッチCAを開放すると共に第2クラッチCBを締結すること(クラッチの掛け替え)により第5速から第6速へのアップシフトを行う。
これにより、第2クラッチCBからの駆動入力が、第2変速機入力軸6→第6速歯車組G6→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を介して変速機出力軸11により軸方向に出力され、第6速の動力伝達が行われる。なお、第6速から順次第1速へとダウンシフトさせるに際しても、上記アップシフトとは逆の制御を行う。
【0062】
Rレンジ選択時には、1−Rシフトアクチュエータ52を図3の右方向に動作させる制御を行うことで、同期噛合機構28のカップリングスリーブ28aを図2の右方向に移動させて歯車24をカウンターシャフト15に駆動結合し、その後、第1クラッチCAを締結する。
これにより、第1クラッチCAからの駆動入力が、第1変速機入力軸5→後退速歯車組GR→カウンターシャフト15→出力歯車組19,20を介して変速機出力軸11により軸方向に出力され、後退速の動力伝達が行われる。
【0063】
[スプールバルブによるバルブ動作]
従来、シフトアクチュエータとして用いられるスプールバルブとしては、図4に示すように、バルブボディのスプール穴にストローク可能に配置されたバルブスプールを備え、バルブ動作時、バルブスプールの端部に形成された流体室に充填されているドレーン流体を排出するものが知られている。
【0064】
しかし、図4に示すスプールバルブにあっては、バルブスプールとスプール穴との隙間に夾雑物が入り込む構成となっていたため、噛み込んだ夾雑物をバルブ動作に伴って擦ることよるバルブスプールの摩耗や、噛み込んだ夾雑物がバルブ動作抵抗となりスティックが発生してしまう。特に、本出願人が先に特願2005−225380号にて提案したように、シフト位置を検出するため、バルブスプールに磁石が埋め込まれた構成を持つものは、金属粉や金属屑等を磁気吸着するため、よりバルブスプールとスプール穴との隙間に夾雑物が入り込み易い。
【0065】
これに対し、実施例1のスプールバルブでは、バルブ動作時、バルブスプールとスプール穴との隙間に夾雑物が入り込むことを防止でき、併せて、流体クッション効果により異音の発生を防止することができるようにした。
【0066】
すなわち、ドレーン回路からそのまま排出されていたドレーン流体を、バルブスプールとスプール穴との隙間を介して排出すると、ドレーン流体そのものが、夾雑物を流れに乗せて排出する除去媒体となる点に着目し、流体室50dに接続される作動流体回路に、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間に連通する閉回路C1を形成するワンウェイボール50eを設定した構成を採用した。
【0067】
したがって、ワンウェイボール50eの作動により閉回路C1が形成されると、この閉回路C1により加圧されたドレーン流体が、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間t2を経過して外部へ排出される。
このため、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間t2に夾雑物が侵入したとしても、閉回路C1により加圧されたドレーン流体により押し流され、ドレーン流体と共に夾雑物もスプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間t2を経過して外部へ排出される。
また、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて閉回路C1が形成されると、閉回路C1内のドレーン流体圧力が高まり、バルブスプール50cのストローク速度が低下する。
このため、例えば、バルブスプール端面とスプール穴端面とが突き当たるフルストローク域では、圧力が高まったドレーン流体そのものが、あたかも衝撃力を受け止めて緩和するクッションの役目をなすという流体クッション効果を示す。
この結果、バルブ動作時、バルブスプール50cとスプール穴50bとの隙間に夾雑物が入り込むことを防止でき、併せて、流体クッション効果により異音の発生を防止することができる。
【0068】
[3−5シフトアクチュエータによるシフト動作]
バルブ動作の一例として、3−5シフトアクチュエータ50による5速から3速へのシフト動作について説明する。
【0069】
まず、5速が選択されている時、3−5シフトアクチュエータ50のバルブスプール50c,50cは、図3に示すニュートラル位置よりも右側の位置にあり、3−5シフトフォーク41は、チェックボール90と5速位置ボール穴94との付勢嵌合により、5速選択位置が保持されている。つまり、流体室50d,50dと主回路50f,50fと副回路50g,50gには、作動流体(油)が大気圧レベルで充填されているだけである。
【0070】
この5速選択状態で、3速への変速指令が出力されると、図3の右側の主回路50fから変速油圧が供給され、図3の右側のバルブスプール50cのうち、小径スプール部50c2の端面には、主回路50f→第1流体室50d1を介して変速油圧が作用し、スプール段差面50c3には、主回路50f→副回路50g→ワンウェイボール50e→副回路50g→第2流体室50d2を介して変速油圧が作用する。
【0071】
したがって、図3の右側のバルブスプール50cの端面には、受圧面積に変速油圧を掛け合わせた油圧力が発生し、この油圧力によりバルブスプール50c,50cは、図3の右端位置(5速位置)から図3に示すニューラル位置までストロークする。
この右端位置(5速位置)からニューラル位置までのストローク領域においては、図3の左側のバルブスプール50cが、図示位置よりも右側位置であり、左側のバルブスプール50cの端部に形成された第1流体室50d1と第2流体室50d2とが連通状態にあるため、両流体室50d1,50d2に充填されていた作動流体は、排出抵抗の小さい主回路50fを介して速やかに排出される。
【0072】
そして、バルブスプール50c,50cが、図3に示すニューラル位置までストロークすると、図3の左側のバルブスプール50cの端面部に形成された小径スプール部50c2により第1流体室50d1と第2流体室50d2との連通を遮断し、第2流体室50d2とワンウェイボール50eまでの副回路50gにより閉回路C1が形成される。
したがって、バルブスプール50c,50cが、ニュートラル位置から左端位置(3速位置)までストロークする領域においては、図5に示すように、閉回路C1内のドレーン流体圧力が高まり、閉回路C1内の作動流体が、大径スプール穴50b1と大径スプール部50c1との第2隙間t2(>第1隙間t1)を介して排出されることになる。
【0073】
このため、大径スプール穴50b1と大径スプール部50c1との第2隙間t2に夾雑物が侵入したとしても、閉回路C1により加圧されたドレーン流体により押し流され、ドレーン流体と共に夾雑物も大径スプール穴50b1と大径スプール部50c1との第2隙間t2を経過して外部へ排出される。
また、第2隙間t2がドレーン流体にとって排出抵抗となり、ドレーン流体の排出量が制限されて閉回路C1内のドレーン流体圧力が高まり、バルブスプール50c,50cのストローク速度が低下し、バルブスプール端面とスプール穴端面とが突き当たるストローク域において、流体クッション効果が発揮される。
【0074】
上記のように、実施例1の3−5シフトアクチュエータ50に有するスプールバルブでは、ワンウェイボール50e,50eを、バルブスプール50c,50cのストローク量が、ニュートラル位置以上ストロークした後、大径スプール穴50b1と大径スプール部50c1との第2隙間t2に連通する閉回路C1を形成する設定とした。
例えば、バルブスプールの全ストローク域でドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、スプール穴とバルブスプールとの隙間に連通する閉回路を形成するようにした場合、ストロークの開始から終了までの領域にて排出抵抗によるストローク速度の低下影響を受け、遅いバルブスプールのストローク動作により変速レスポンスが低下する。
これに対し、実施例1では、ニュートラル位置以上ストロークした後、大径スプール穴50b1と大径スプール部50c1との第2隙間t2に連通する閉回路C1を形成する設定としたため、ニュートラル位置までは速やかなストローク動作が確保され、変速レスポンスの低下を小さく抑えることができる。
【0075】
次に、効果を説明する。
実施例1のスプールバルブにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0076】
(1) バルブボディ50a,50aのスプール穴50b,50bにストローク可能に配置されたたバルブスプール50c,50cを備え、バルブ動作時、前記バルブスプール50c,50cの両端部に形成された流体室50d,50dのうち一方の流体室に充填されているドレーン流体を排出するスプールバルブにおいて、前記両流体室50d,50dに接続される作動流体回路に、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、前記スプール穴50b,50bと前記バルブスプール50c,50cとの隙間に連通する閉回路C1を形成するワンウェイボール50e,50eを設定したため、バルブ動作時、バルブスプール50c,50cとスプール穴50b,50bとの隙間に夾雑物が入り込むことを防止でき、併せて、流体クッション効果により異音の発生を防止することができる。
【0077】
(2) 前記ワンウェイボール50e,50eは、バルブスプール50c,50cのストローク量が、ニュートラル位置以上ストロークした後、前記スプール穴50b,50bと前記バルブスプール50c,50cとの隙間に連通する閉回路C1を形成する設定としたため、ニュートラル位置までは速やかなストローク動作が確保され、変速レスポンスの低下を小さく抑えることができる。
【0078】
(3) 前記バルブスプール50c,50cは、バルブボディ50a,50aのスプール穴50b,50bにストローク可能に配置されると共に3−5シフトフォーク41が連結され、前記流体室50d,50dは、前記バルブスプール50c,50cの両端面位置に形成され、シフト時、前記両流体室50d,50dのうち一方の流体室に加圧流体を供給し、他方の流体室に充填されているドレーン流体を排出することで、バルブスプール50c,50cに連結されている3−5シフトフォーク41をシフト方向に動作させる3−5シフトアクチュエータ50に有するため、スプールバルブによるシフト動作が、夾雑物の噛み込みによりスティック動作となったり動作不良となるような不具合の発生を確実に防止することができる。
【0079】
(4) 前記3−5シフトアクチュエータ50を有する変速機は、複数の変速段のうち奇数変速段グループの選択時に締結される第1クラッチCAと、複数の変速段のうち偶数変速段グループの選択時に締結される第2クラッチCBと、同期噛合機構を有し、歯数比の異なる複数のギヤ対により複数の変速段を達成する常時噛み合い式のギヤトレーンと、を備え、隣り合う変速段への変速時、前記第1クラッチCAと前記第2クラッチCBの掛け替え制御に先行し、開放されているクラッチの変速段グループの中から次の変速段を選択し、アクチュエータ油圧コントロールバルブ59により作り出された変速油圧により選択された変速段を得る方向にシフトフォーク41を動作させるツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションであるため、変速時に円滑なシフト動作を確保することができると共に、自動変速モードでのシフト動作時、流体クッション効果により乗員に違和感を与える異音の発生を防止することができる。
【0080】
(5) 前記バルブスプール50c,50cを、大径スプール部50c1,50c1と小径スプール部50c2,50c2とスプール段差面50c3,50c3を有する段付きバルブスプールとし、前記スプール穴50b,50bを、大径スプール穴50b1,50b1と小径スプール穴50b2,50b2とボディ段差面50b3,50b3を有する段付きバルブスプール穴とし、前記流体室50d,50dとして、小径スプール部50c2,50c2の端面と小径スプール穴50b2,50b2により囲まれた第1流体室50d1,50d1と、小径スプール部50c2,50c2の周面とスプール段差面50c3,50c3とボディ段差面50b3,50b3と大径スプール穴50b1,50b1により囲まれた第2流体室50d2,50d2と、を形成し、前記作動流体回路は、前記第1流体室50d1,50d1の端面位置に連結した主回路50f,50fと、前記第2流体室50d2,50d2のボディ段差面位置と前記主回路50f,50fとに連結した副回路50g,50gと、前記副回路50g,50gの途中位置に設定し、第2流体室50d2,50d2から主回路50f,50fへの流れを遮断するワンウェイボール50e,50eと、を有し、前記小径スプール部50c2,50c2と小径スプール穴50b2,50b2との第1隙間t1より、前記大径スプール部50c1,50c1と大径スプール穴50b1,50b1との第2隙間t2を大きく設定したため、シフト動作時、変速レスポンスの低下を小さく抑えながらも、バルブスプール50c,50cとスプール穴50b,50bとの第2隙間t2への夾雑物の入り込み防止と、流体クッション効果による異音発生の防止と、を確実に達成することができる。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、実施例1に比べ、夾雑物の入り込み防止と流体クッション効果が作用するストローク領域をよりストローク終端側に設定した例である。
なお、実施例2のスプールバルブを有するシフトアクチュエータが適用されたツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッション及び変速油圧制御系および電子制御系を示す制御系統図は、図1及び図2に示す実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0082】
次に、実施例2のスプールバルブを有するシフトアクチュエータの構成について図6に基づき説明する。
図6は実施例2のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系の構成を示す概略図である。
ここでは、3−5シフトアクチュエータ50を例にとって説明するが、他の1−Rシフトアクチュエータ52、6−Nシフトアクチュエータ53、2−4シフトアクチュエータ54も同様の構成を備えている。
【0083】
前記スプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50は、図6に示すように、バルブボディ50a,50aに形成されたスプール穴50b,50bと、該スプール穴50b,50bにストローク可能に配置されたバルブスプール50c,50cと、該バルブスプール50c,50cの両端面位置に形成された流体室50d,50dと、を備えている。
【0084】
そして、前記流体室50d,50dに接続された作動流体回路は、前記流体室50d,50dの端面位置に連結した主回路50f,50fと、前記流体室50d,50dの側面途中位置と前記主回路50f,50fとに連結した副回路50g,50gと、前記主回路50f,50fのうち副回路接続位置より流体室50d,50d側の位置に設定し、流体室50d,50dから主回路50f,50fへの流れを遮断するワンウェイボール50e,50eと、を有する。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
次に、作用を説明する。
バルブ動作の一例として、3−5シフトアクチュエータ50による5速から3速へのシフト動作について説明する。
【0086】
まず、5速が選択されている時、3−5シフトアクチュエータ50のバルブスプール50c,50cは、図6に示すニュートラル位置よりも右側の位置にあり、3−5シフトフォーク41は、チェックボール90と5速位置ボール穴94との付勢嵌合により、5速選択位置が保持されている。つまり、流体室50d,50dと主回路50f,50fと副回路50g,50gには、作動流体(油)が大気圧レベルで充填されているだけである。
【0087】
この5速選択状態で、3速への変速指令が出力されると、図6の右側の主回路50fから変速油圧が供給され、図6の右側のバルブスプール50cの端面には、主回路50f→ワンウェイボール50e→主回路50f→流体室50dを介して変速油圧が作用すると共に、主回路50f→副回路50g→流体室50dを介して変速油圧が作用する。
【0088】
したがって、図6の右側のバルブスプール50cの端面には、受圧面積に変速油圧を掛け合わせた油圧力が発生し、この油圧力によりバルブスプール50c,50cは、図6の右端位置(5速位置)から図6に示すニューラル位置までストロークし、さらに、ニューラル位置を超え、図7に示すように、左側のバルブスプール50cが副回路50gを塞ぐ位置まで左側にストロークする。
この右端位置(5速位置)から図7に示す左側のバルブスプール50cが副回路50gを塞ぐ位置までのストローク領域においては、左側のバルブスプール50cによる副回路50gの遮断が無いため、左側の両流体室50dに充填されていた作動流体は、排出抵抗の小さい副回路50gを介して速やかに排出される。
【0089】
そして、バルブスプール50c,50cのうち、左側のバルブスプール50cが副回路50gを塞ぐ位置から左端位置(3速位置)までストロークする領域においては、図7に示すように、流体室50dとワンウェイボール50eにより遮断された主回路50fとにより閉回路C2が形成される。
したがって、バルブスプール50c,50cが、副回路50gを塞ぐ位置から左端位置(3速位置)までストロークする領域においては、図7に示すように、閉回路C2内のドレーン流体圧力が高まり、閉回路C2内の作動流体が、副回路50gを介する経路と、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間を介する経路と、の2経路により排出されることになる。
【0090】
このため、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間に夾雑物が侵入したとしても、閉回路C2により加圧されたドレーン流体により押し流され、ドレーン流体と共に夾雑物もスプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間を経過して外部へ排出される。
また、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間がドレーン流体にとって排出抵抗となり、ドレーン流体の排出量が制限されて閉回路C2内のドレーン流体圧力が高まり、バルブスプール50c,50cのストローク速度が低下し、バルブスプール端面とスプール穴端面とが突き当たるストローク域において、流体クッション効果が発揮される。
【0091】
上記のように、実施例2のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50では、ワンウェイボール50e,50eを、バルブスプール50c,50cのうち、排出側のバルブスプール50cが副回路50gを塞ぐ位置以上ストロークした後、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間に連通する閉回路C2を形成する設定とした。
このため、ニュートラル位置以上ストロークした後に閉回路を形成する設定とした実施例1に比べ、速やかなストローク動作が確保されるストローク量が拡大し、変速レスポンスの低下をより小さく抑えることができる。
【0092】
次に、効果を説明する。
実施例2のスプールバルブにあっては、実施例1の(1),(2),(3),(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0093】
(6) 前記作動流体回路は、前記流体室50d,50dの端面位置に連結した主回路50f,50fと、前記流体室50d,50dの側面途中位置と前記主回路50f,50fとに連結した副回路50g,50gと、前記主回路50f,50fのうち副回路接続位置より流体室50d,50d側の位置に設定し、流体室50d,50dから主回路50f,50fへの流れを遮断するワンウェイボール50e,50eと、を有するため、シフト動作時、変速レスポンスの低下を実施例1より小さく抑えながらも、バルブスプール50c,50cとスプール穴50b,50bとの隙間への夾雑物の入り込み防止と、流体クッション効果による異音発生の防止と、を確実に達成することができる。
【実施例3】
【0094】
実施例3は、実施例1,2に比べ簡単な作動流体回路により構成した例である。
なお、実施例3のスプールバルブを有するシフトアクチュエータが適用されたツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッション及び変速油圧制御系および電子制御系を示す制御系統図は、図1及び図2に示す実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0095】
次に、実施例3のスプールバルブを有するシフトアクチュエータの構成について図8に基づき説明する。
図8は実施例3のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系の構成を示す概略図である。
ここでは、3−5シフトアクチュエータ50を例にとって説明するが、他の1−Rシフトアクチュエータ52、6−Nシフトアクチュエータ53、2−4シフトアクチュエータ54も同様の構成を備えている。
【0096】
前記スプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50は、図8に示すように、バルブボディ50a,50aに形成されたスプール穴50b,50bと、該スプール穴50b,50bにストローク可能に配置されたバルブスプール50c,50cと、該バルブスプール50c,50cの両端面位置に形成された流体室50d,50dと、を備えている。
【0097】
そして、前記流体室50d,50dに接続された作動流体回路は、前記流体室50d,50dの端面位置に連結した主回路50f,50fと、前記主回路50f,50fの途中位置に設定し、流体室50d,50dから主回路50f,50fへの流れを遮断するワンウェイボール50e,50eと、を有する。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0098】
次に、作用を説明する。
バルブ動作の一例として、3−5シフトアクチュエータ50による5速から3速へのシフト動作について説明する。
【0099】
まず、5速が選択されている時、3−5シフトアクチュエータ50のバルブスプール50c,50cは、図8に示すニュートラル位置よりも右側の位置にあり、3−5シフトフォーク41は、チェックボール90と5速位置ボール穴94との付勢嵌合により、5速選択位置が保持されている。つまり、流体室50d,50dと主回路50f,50fと副回路50g,50gには、作動流体(油)が大気圧レベルで充填されているだけである。
【0100】
この5速選択状態で、3速への変速指令が出力されると、図8の右側の主回路50fから変速油圧が供給され、図8の右側のバルブスプール50cの端面には、主回路50f→ワンウェイボール50e→主回路50f→流体室50dを介して変速油圧が作用する。
【0101】
したがって、図8の右側のバルブスプール50cの端面には、受圧面積に変速油圧を掛け合わせた油圧力が発生し、この油圧力によりバルブスプール50c,50cは、図8の右端位置(5速位置)から左側にストロークする。
この右端位置(5速位置)から左端位置(3速位置)までのストローク領域においては、左側のバルブスプール50cの主回路50fに設定されたワンウェイボール50eにより主回路50fが遮断される。
【0102】
つまり、図8の左側のバルブスプール50cの端面に形成された流体室50dに充填されたドレーン流体を排出するストローク領域においては、図8に示すように、流体室50dとワンウェイボール50eにより遮断された主回路50fとにより閉回路C3が形成される。
【0103】
したがって、バルブスプール50c,50cが、右端位置(5速位置)から左端位置(3速位置)までストロークする領域においては、図8に示すように、閉回路C3内のドレーン流体圧力が高まり、閉回路C3内の作動流体が、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間を介して排出されることになる。なお、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間は、変速レスポンスが低下しないように、実験結果等に基づいて最適値に設定される。
【0104】
このため、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間に夾雑物が侵入したとしても、閉回路C3により加圧されたドレーン流体により押し流され、ドレーン流体と共に夾雑物もスプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間を経過して外部へ排出される。
また、スプール穴50bとバルブスプール50cとの隙間がドレーン流体にとって排出抵抗となり、ドレーン流体の排出量が制限されて閉回路C3内のドレーン流体圧力が高まり、バルブスプール50c,50cのストローク速度が低下し、バルブスプール端面とスプール穴端面とが突き当たるストローク域において、流体クッション効果が発揮される。
【0105】
次に、効果を説明する。
実施例3のスプールバルブにあっては、実施例1の(1),(2),(3),(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0106】
(7) 前記作動流体回路は、前記流体室50d,50dの端面位置に連結した主回路50f,50fと、前記主回路50f,50fの途中位置に設定し、流体室50d,50dから主回路50f,50fへの流れを遮断するワンウェイボール50e,50eと、を有するため、簡単な構成としながら、シフト動作時、バルブスプール50c,50cとスプール穴50b,50bとの隙間への夾雑物の入り込み防止と、流体クッション効果による異音発生の防止と、を確実に達成することができる。
【0107】
以上、本発明のシフトアクチュエータを実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0108】
実施例1〜3では、流路遮断構造として、回路に固定設定されたワンウェイボールを用い、スプールとスプール穴との位置関係の変化を利用したメカ制御により、閉回路を形成する例を示したが、例えば、流路遮断構造を、外部から流路遮断を制御可能な構造とし、バルブ動作時に、電子制御により、閉回路を形成する制御指令を出力するようにしても良い。
要するに、流体室に接続される作動流体回路に、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、スプール穴とバルブスプールとの隙間に連通する閉回路を形成する流路遮断構造を設定したものであれば本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
実施例1〜3では、ツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションに適用したシフトアクチュエータに有するスプールバルブの例を示したが、自動変速機のコントロールバルブユニットに設けられるスプールバルブ等に適用しても勿論良い。要するに、バルブボディのスプール穴にストローク可能に配置されたバルブスプールを備え、バルブ動作時、バルブスプールの端部に形成された流体室に充填されているドレーン流体を排出するスプールバルブには適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例1のスプールバルブを有するシフトアクチュエータが適用されたツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションを示すスケルトン図である。
【図2】実施例1のスプールバルブを有するシフトアクチュエータが適用されたツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションにおける変速油圧制御系および電子制御系を示す制御系統図である。
【図3】実施例1のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系の構成を示す概略図である。
【図4】従来のスプールバルブを有するシフトアクチュエータを備えたシフト操作系におけるドレーン流体の排出作用を示す作用説明図である。
【図5】実施例1のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系におけるドレーン流体の排出作用を示す作用説明図である。
【図6】実施例2のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系の構成を示す概略図である。
【図7】実施例2のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系におけるドレーン流体の排出作用を示す作用説明図である。
【図8】実施例3のスプールバルブを有する3−5シフトアクチュエータ50を備えた3−5シフト操作系の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0111】
CA 第1クラッチ
CB 第2クラッチ
G1 第1速歯車組
G2 第2速歯車組
G3 第3速歯車組
G4 第4速歯車組
G5 第5速歯車組
G6 第6速歯車組
GR 後退歯車組
1 トランスミッションケース
2 駆動入力軸
4 オイルポンプ
5 第1変速機入力軸
6 第2変速機入力軸
11 変速機出力軸
15 カウンターシャフト
41,42,43,44 シフトフォーク(シフト操作部材)
45 第1コントロールバルブユニット
46 第2コントロールバルブユニット
50,52,53,54 シフトアクチュエータ
59 アクチュエータ油圧コントロールバルブ(シフト制御用コントロールバルブ)
50a バルブボディ
50b スプール穴
50c バルブスプール
50d 流体室
50e ワンウェイボール(流路遮断構造)
50f 主回路
50g 副回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボディのスプール穴にストローク可能に配置されたバルブスプールを備え、
バルブ動作時、前記バルブスプールの端部に形成された流体室に充填されているドレーン流体を排出するスプールバルブにおいて、
前記流体室に接続される作動流体回路に、ドレーン流体が排出されるスプールストローク領域にて、前記スプール穴と前記バルブスプールとの隙間に連通する閉回路を形成する流路遮断構造を設定したことを特徴とするスプールバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載されたスプールバルブにおいて、
前記流路遮断構造は、バルブスプールのストローク量が所定量以上ストロークした後、前記スプール穴と前記バルブスプールとの隙間に連通する閉回路を形成する設定としたことを特徴とするスプールバルブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたスプールバルブにおいて、
前記バルブスプールは、バルブボディのスプール穴にストローク可能に配置されると共にシフト操作部材が連結され、
前記流体室は、前記バルブスプールの両端面位置に形成され、
シフト時、前記両流体室のうち一方の流体室に加圧流体を供給し、他方の流体室に充填されているドレーン流体を排出することで、バルブスプールに連結されているシフト操作部材をシフト方向に動作させるシフトアクチュエータに有することを特徴とするスプールバルブ。
【請求項4】
請求項3に記載されたスプールバルブにおいて、
前記シフトアクチュエータを有する変速機は、複数の変速段のうち奇数変速段グループの選択時に締結される第1クラッチと、複数の変速段のうち偶数変速段グループの選択時に締結される第2クラッチと、同期噛合機構を有し、歯数比の異なる複数のギヤ対により複数の変速段を達成する常時噛み合い式のギヤトレーンと、を備え、
隣り合う変速段への変速時、前記第1クラッチと前記第2クラッチの掛け替え制御に先行し、開放されているクラッチの変速段グループの中から次の変速段を選択し、シフト制御用コントロールバルブにより作り出された変速油圧により選択された変速段を得る方向にシフトフォークを動作させるツインクラッチ式自動マニュアルトランスミッションであることを特徴とするスプールバルブ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載されたスプールバルブにおいて、
前記バルブスプールを、大径スプール部と小径スプール部とスプール段差面を有する段付きバルブスプールとし、
前記スプール穴を、大径スプール穴と小径スプール穴とボディ段差面を有する段付きバルブスプール穴とし、
前記流体室として、小径スプール部の端面と小径スプール穴により囲まれた第1流体室と、小径スプール部の周面とスプール段差面とボディ段差面と大径スプール穴により囲まれた第2流体室と、を形成し、
前記作動流体回路は、前記第1流体室の端面位置に連結した主回路と、前記第2流体室のボディ段差面位置と前記主回路とに連結した副回路と、前記副回路の途中位置に設定し、第2流体室から主回路への流れを遮断するワンウェイボールと、を有し、
前記小径スプール部と小径スプール穴との第1隙間より、前記大径スプール部と大径スプール穴との第2隙間を大きく設定したことを特徴とするスプールバルブ。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載されたスプールバルブにおいて、
前記作動流体回路は、前記流体室の端面位置に連結した主回路と、前記流体室の側面途中位置と前記主回路とに連結した副回路と、前記主回路のうち副回路接続位置より流体室側の位置に設定し、流体室から主回路への流れを遮断するワンウェイボールと、を有することを特徴とするスプールバルブ。
【請求項7】
請求項1,3,4の何れか1項に記載されたスプールバルブにおいて、
前記作動流体回路は、前記流体室の端面位置に連結した主回路と、前記主回路の途中位置に設定し、流体室から主回路への流れを遮断するワンウェイボールと、を有することを特徴とするスプールバルブ。
【請求項8】
バルブボディのスプール穴にストローク可能に配置されたバルブスプールを備え、
バルブ動作時、前記バルブスプールの端部に形成された流体室に充填されているドレーン流体を排出するスプールバルブにおいて、
前記ドレーン流体が排出されるスプールストローク時、流体室に接続される作動流体回路に閉回路を形成し、該閉回路により加圧されたドレーン流体を、前記スプール穴と前記バルブスプールとの隙間を経過して外部へ排出することを特徴とするスプールバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−292095(P2007−292095A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117442(P2006−117442)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】