説明

スペクトラム拡散クロック生成装置

【課題】生成されたスペクトラム拡散クロックを、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしても用いることのできるスペクトラム拡散クロック生成装置の提供。
【解決手段】SSC源クロック発生回路3,基準クロック発生回路5が発生するSSC源クロック,基準クロックは、16bitカウンタ7,9に入力されて、そのクロック数がカウンタ値cnt1,cnt2として計数される。カウンタ値cnt1,cnt2は、比較回路10に入力され、カウンタ値cnt1がカウンタ値cnt2よりも1以上大きくなると、比較回路10は比較結果cmpとしてLレベルの信号を出力する。すると、パルス生成回路21がLレベルの矩形パルス(間引き要求pls_cg)を出力し、AND回路31によりその間引き要求pls_cgとSSC源クロックとの論理積が計算されることによって、SSC源クロックが1クロック分間引かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などに用いられる、周波数が変調されるスペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器等のシステム設計で問題になる電磁波妨害雑音(EMI)を低減するために、周波数が一定の周期で変調されるスペクトラム拡散クロック(Spread Spectrum Clock)が用いられている。スペクトラム拡散クロックは、周波数が一定の周期で変調されることにより、EMIを低減するものである。
【0003】
また、この種のスペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成装置では、変調ONのときのスペクトラム拡散クロックのクロック数を計数した計数値と変調OFFのときのスペクトラム拡散クロック(すなわち基準クロック)のクロック数を計数した計数値とを比較し、両者が一致しているか否かに基づいてその装置が正常に動作しているか否かを判断することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−78617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、スキャナ等の画像読取装置における画像を読み取るタイミングやFAX等の通信機器の通信タイミングなどを制御する各要素はクロック数に基づいて、それぞれ制御されている。従来では、一定の周波数である基準クロックのクロック数に基づいて、各要素が制御されるが、その場合、EMIが生じるという問題があった。また、スペクトラム拡散クロックのクロック数に基づいて各要素を制御しようとすると、スペクトラム拡散クロックは、時間に応じて周波数が変調されてクロック数が一定に定まらないため、読み取りや通信などの各種タイミングを制御するカウンタのクロックとして使用することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、生成されたスペクトラム拡散クロックを、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしても用いることのできるスペクトラム拡散クロック生成装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達するためになされた本発明のスペクトラム拡散クロック生成装置は、周波数が変調されるスペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成手段と、周波数が一定の基準クロックを生成する基準クロック生成手段と、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロック数を計数するスペクトラム拡散クロック計数手段と、上記基準クロック生成手段が生成した基準クロックのクロック数を計数する基準クロック計数手段と、上記スペクトラム拡散クロック計数手段が計数したクロック数と上記基準クロック計数手段が計数したクロック数とを比較し、上記各クロック数の差が予め設定された許容範囲内にあるか否かを判断する比較手段と、上記比較手段の比較結果に基づき、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えた場合、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くか若しくはクロックパルスを追加することにより、上記各クロック数の差を上記許容範囲内に収める補正手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明のスペクトラム拡散クロック生成装置では、スペクトラム拡散クロック生成手段が生成した周波数の変調を伴うスペクトラム拡散クロックのクロック数を、スペクトラム拡散クロック計数手段が計数する。また、基準クロック生成手段が生成した周波数一定の基準クロックのクロック数を基準クロック計数手段が計数する。
【0009】
そして、比較手段は、上記スペクトラム拡散クロック計数手段が計数したクロック数と上記基準クロック計数手段が計数したクロック数とを比較し、上記各クロック数の差が予め設定された許容範囲内にあるか否かを判断する。すると、補正手段は、上記比較手段の比較結果に基づき、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えた場合、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くか若しくはクロックパルスを追加することにより、上記各クロック数の差を上記許容範囲内に収める。このため、本発明では、スペクトラム拡散クロックのクロック数と基準クロックのクロック数との差が上記許容範囲に収まるように、スペクトラム拡散クロックを補正することができ、生成されたスペクトラム拡散クロックを、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしても用いることができる。
【0010】
なお、本発明は以下の構成に限定されるものではないが、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックの周波数の下限が、上記基準クロック生成手段が生成する基準クロックの周波数以上で、上記補正手段は、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えた場合、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引いてもよい。
【0011】
スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックの周波数の下限が基準クロック生成手段が生成する基準クロックの周波数以上である場合、スペクトラム拡散クロックのクロック数が基準クロックのクロック数を上回ることによって、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超える。従って、この場合、上記補正手段は、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えたときに、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くことによって上記各クロック数の差が上記許容範囲に収まるようにすることができる。
【0012】
また、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックの周波数の上限が、上記基準クロック生成手段が生成する基準クロックの周波数以下で、上記補正手段は、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えた場合、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを追加してもよい。
【0013】
スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックの周波数の上限が基準クロック生成手段が生成する基準クロックの周波数以下である場合、スペクトラム拡散クロックのクロック数が基準クロックのクロック数を下回ることによって、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超える。従って、この場合、上記補正手段は、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えたときに、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを追加することによって上記各クロック数の差が上記許容範囲に収まるようにすることができる。
【0014】
また、上記比較手段によって比較される上記各クロック数の差が減少するように、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックを一定割合で逓倍し、またはそのスペクトラム拡散クロックを一定割合で分周し、または上記スペクトラム拡散クロック計数手段が計数したクロック数を定数倍し、またはそのクロック数を定数で除し、または上記基準クロック生成手段が生成する基準クロックを一定割合で逓倍し、またはその基準クロックを一定割合で分周し、または上記基準クロック計数手段が計数したクロック数を定数倍し、またはそのクロック数を定数で除する調整手段を、更に備えてもよい。
【0015】
スペクトラム拡散クロックのクロック数と基準クロックのクロック数との差が極めて大きいと、補正手段が間引くまたは追加するクロックパルスの数も極めて大きくなり、有効に利用可能なスペクトラム拡散クロックが得られない可能性がある。これに対して、上記のように、スペクトラム拡散クロックを一定割合で逓倍し、またはそのスペクトラム拡散クロックを一定割合で分周し、または上記スペクトラム拡散クロック計数手段が計数したクロック数を定数倍し、またはそのクロック数を定数で除し、または上記基準クロックを一定割合で逓倍し、またはその基準クロックを一定割合で分周し、または上記基準クロック計数手段が計数したクロック数を定数倍し、またはそのクロック数を定数で除することによって、調整手段が上記各クロック数の差を減少させる場合、スペクトラム拡散クロックのクロック数と基準クロックのクロック数との差が極めて大きくても、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとして有効に利用可能なスペクトラム拡散クロックを得ることができる。
【0016】
また、上記許容範囲は、上記各クロック数の差が±1未満の範囲であってもよい。その場合、不要輻射スペクトラムのピーク値を減少させてノイズの発生を抑制する効果は維持したまま、基準クロックをそのまま使用している場合と同様に、上記スペクトラム拡散クロックを各種タイミングを制御するカウンタのクロックとして利用することができる。
【0017】
また、上記目的を達するためになされた本発明のスペクトラム拡散クロック生成装置は、一定の変調周期で周波数が変調されるスペクトラム拡散クロックを、その変調周期の基準となる原点信号と共に生成するスペクトラム拡散クロック生成手段と、上記原点信号が生成されてから上記スペクトラム拡散クロックの周波数が予め設定された許容範囲を超えて増加または減少するまでのタイミングを記憶する記憶手段と、上記原点信号が生成されてから上記記憶手段に記憶されたタイミングとなったとき、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くかまたはクロックパルスを追加する補正手段と、を備えたことを特徴とするものであってもよい。
【0018】
このように構成された本発明のスペクトラム拡散クロック生成装置では、スペクトラム拡散クロック生成手段によって原点信号が生成されてからそのスペクトラム拡散クロック生成手段によって生成されるスペクトラム拡散クロックの周波数が予め設定された許容範囲を超えて増加または減少するまでのタイミングを、記憶手段が記憶している。そして、補正手段は、上記原点信号が生成されてから上記記憶手段に記憶されたタイミングとなったとき、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くかまたはクロックパルスを追加する。
【0019】
すなわち、スペクトラム拡散クロックの周波数が上記許容範囲を超えて増加するタイミングを上記記憶手段が記憶している場合は、上記補正手段はそのタイミングで上記スペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引き、スペクトラム拡散クロックの周波数が上記許容範囲を超えて減少するタイミングを上記記憶手段が記憶している場合は、上記補正手段はそのタイミングで上記スペクトラム拡散クロックのクロックパルスを追加する。
【0020】
従って、本発明では、周波数が上記許容範囲に収まるようにスペクトラム拡散クロックを補正することができ、そのスペクトラム拡散クロックは時間の測定等の用途にも良好に適合する。なお、上記原点信号が生成されてから上記タイミングとなったか否かの判断は、上記原点信号が生成されてからの上記スペクトラム拡散クロックのクロック数に基づいて行ってもよく、上記原点信号が生成されてからの経過時間に基づいて行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用されたスペクトラム拡散クロック生成装置の構成を概略的に表すブロック図である。
【図2】そのスペクトラム拡散クロック生成装置で用いられるSSC源クロック及び上記スペクトラム拡散クロック生成装置の効果を表す説明図である。
【図3】そのスペクトラム拡散クロック生成装置における各信号の変化を例示するタイムチャートである。
【図4】上記スペクトラム拡散クロック生成装置の変形例の構成を概略的に表すブロック図である。
【図5】本発明が適用された他のスペクトラム拡散クロック生成装置の構成を概略的に表すブロック図である。
【図6】そのスペクトラム拡散クロック生成装置における各信号の変化を例示するタイムチャートである。
【図7】本発明が適用された更に他のスペクトラム拡散クロック生成装置の構成を概略的に表すブロック図である。
【図8】そのスペクトラム拡散クロック生成装置における各信号の変化、間引きテーブルの一例、及びその間引きテーブルの作成方法を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[スペクトラム拡散クロック生成装置の構成]
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用されたスペクトラム拡散クロック生成装置1の構成を概略的に表すブロック図である。図1に示すように、スペクトラム拡散クロック生成装置1は、スペクトラム拡散クロックの一例としてのSSC源クロックを発生するSSC源クロック発生回路3(スペクトラム拡散クロック生成手段の一例)と、基準クロックを発生する基準クロック発生回路5(基準クロック生成手段の一例)とを備えている。
【0023】
SSC源クロック発生回路3が発生するSSC源クロックはスペクトラム拡散クロック計数手段の一例としての16bitカウンタ7に入力されて、そのクロック数がカウンタ値cnt1として計数される。また、基準クロック発生回路5が発生する基準クロックは基準クロック計数手段の一例としての16bitカウンタ9に入力されてそのクロック数がカウンタ値cnt2として計数される。なお、図2(A)に実線で示すように、SSC源クロックは90MHz〜110MHz間を一定の変調周期で変調され、基準クロックの周波数は、SSC源クロックの下限の周波数、すなわち90MHzの一定周波数である。
【0024】
図1に戻って、16bitカウンタ7,9によって計数され16bitの2進数として出力されるカウンタ値cnt1,cnt2は、比較手段の一例としての比較回路10に入力され、ここでカウンタ値cnt1とcnt2とが1以上ずれたタイミングが検出される。すなわち、比較回路10は、次のような4つのフリップフロップ11,12,13,14と、16個のXOR回路17と、NOR回路19とを備えている。
【0025】
フリップフロップ11,12は、SSC源クロックの立ち上がりに同期したタイミングで、16bitカウンタ7が出力するカウンタ値cnt1を16bitのデータとして通過させる。このため、フリップフロップ12からは、カウンタ値cnt1がSSC源クロックの2クロック分遅れたタイミングでカウンタ値sync_cnt1として出力される。また、フリップフロップ13,14は、SSC源クロックの立ち上がりに同期したタイミングで、16bitカウンタ9が出力するカウンタ値cnt2を16bitのデータとして通過させる。このため、フリップフロップ14からは、カウンタ値cnt2がSSC源クロックの2クロック分遅れたタイミングでカウンタ値sync_cnt2として出力される。
【0026】
そして、上記カウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2を構成する各ビットのデータは、16個のXOR回路17にそれぞれ入力され、各XOR回路17の出力はそれぞれNOR回路19に入力される。NOR回路19の出力は、比較結果cmpとして比較回路10から出力される。このため、カウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2の値が一致しているときは、比較回路10は比較結果cmpとしてHレベルの信号を、カウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2の値が食い違っているときは、比較回路10は比較結果cmpとしてLレベルの信号を、それぞれ出力する。
【0027】
比較回路10のNOR回路19が出力する比較結果cmpは、パルス生成回路21に入力される。このパルス生成回路21は、通常はHレベルの信号を出力しており、比較結果cmpがHレベルからLレベルに変化するとLレベルの矩形パルス(以下、間引き要求pls_cgともいう)をSSC源クロックの1クロック分の期間に亘って出力し、その後SSC源クロックの2クロック分の期間は比較結果cmpの値に関わらず出力をHレベルに維持する。
【0028】
この間引き要求pls_cgは、SSC源クロックを計数する16bitカウンタ7にカウンタ停止信号として入力されると共に、間引き回路30(補正手段の一例)に設けられたAND回路31にも入力される。間引き回路30のAND回路31には、SSC源クロック発生回路3が発生したSSC源クロックも入力されている。
【0029】
このため、Lレベルの矩形パルスとしての間引き要求pls_cgと重なるタイミングで発生されたクロックパルスが間引かれたSSC源クロックが、AND回路31から、間引き回路30の出力として出力される。このように間引きがなされたSSC源クロック(以下、SSC間引きクロックともいう)は、次のように、基準クロックとのクロック数のズレが1未満に抑制され、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしても用いることができる。
【0030】
[スペクトラム拡散クロック生成装置の動作]
図3は、上記各信号の変化を一例を挙げて説明するタイムチャートである。図3に示すように、SSC源クロックは16bitカウンタ7によりカウンタ値cnt1として計数され、基準クロックは16bitカウンタ9によりカウンタ値cnt2として計数される。また、フリップフロップ11,12を介して出力されるカウンタ値sync_cnt1は、カウンタ値cnt1よりもSSC源クロックの2クロック分遅れたタイミングで増加し、フリップフロップ13,14を介して出力されるカウンタ値sync_cnt2はカウンタ値cnt2よりもSSC源クロックの2クロック分遅れたタイミングで増加する。
【0031】
前述のように、基準クロックは90MHzで発生されるのに対して、SSC源クロックは90〜110MHzで変調されている。このため、図3の例では、cnt1=03となったタイミングでカウンタ値sync_cnt1は01となるのに対して、カウンタ値sync_cnt2は00のままである。このため、前述のように、cnt1=03となったタイミングで比較結果cmpがLレベルとなり、SSC源クロックの1クロック分の長さを有するLレベルの矩形パルスとしての間引き要求pls_cgが出力される。すると、この間引き要求pls_cgとSSC源クロックとの論理積であるSSC間引きクロックは、カウンタ値cnt1が03である期間のクロックパルス(1クロック分)が間引かれたものとなる。
【0032】
また、Lレベルの矩形パルスとしての間引き要求pls_cgが出力されると、それがカウンタ停止信号として16bitカウンタ7に入力されるため、図3に矢印Aで示すように、カウンタ値cnt1の加算が1クロック分停止される。同様に、カウンタ値sync_cnt1の加算もその2クロック後に1クロック分停止される。こうして、カウンタ値sync_cnt1の加算が停止されると、カウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2の値が一致し、比較結果cmpもHレベルに戻る。
【0033】
なお、前述のように、Lレベルの間引き要求pls_cgはSSC源クロックの1クロック分の期間でのみ出力され、その後SSC源クロックの2クロック分の期間は比較結果cmpの値に関わらず出力をHレベルに維持される。このため、間引き要求pls_cgは次にカウンタ値cnt1が07となってカウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2の値が食い違うまで発生しない。以下、カウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2の値が1つ食い違う毎に、すなわち、図3の例ではカウンタ値cnt1が07,0C,…となる毎に、前述のようにSSC源クロックが1クロック分間引かれる。このため、基準クロックとSSC間引きクロックとは1クロック分以上ずれることがなく、そのSSC間引きクロックは各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしても用いることができる。
【0034】
[本発明の他の実施の形態]
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、基準クロックの周波数がSSC源クロックの周波数の下限と一致しているが、基準クロックの周波数がSSC源クロックの周波数の下限よりも大幅に低い場合は、SSC源クロックを間引く処理が頻繁に実行され、SSC間引きクロックは効率の悪いものとなってしまう。そこで、そのような場合、例えば図4に概略的に示すように、前述の16bitカウンタ7と比較回路10との間に調整手段の一例としての除算器41を設けてもよい。この場合、16bitカウンタ7にて計数されたSSC源クロックのカウンタ値cnt1を、予め設定された定数で除算器41にて除算し、除算後のカウンタ値を前述のカウンタ値cnt1の代わりに比較回路10のフリップフロップ11(図1参照)に入力することができる。
【0035】
従って、この場合、比較回路10のフリップフロップ11,13にそれぞれ入力されるカウンタ値の相違を抑制することができる。従って、SSC源クロックに対する間引きの頻度を抑制しつつ、その間引き後のSSC間引きクロックを各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしてより有効に用いることができる。
【0036】
なお、この場合、除算器41に設定する上記定数は、基準クロックの周波数がSSC源クロックの周波数の下限と一致している場合と同様の間引きが行われるように、すなわち、最終的に出力されるSSC間引きクロックの波形が、基準クロックの周波数がSSC源クロックの周波数の下限と一致している場合と同様になるように設定するのが望ましいが、その状態から若干ずれていてもよい。また、SSC源クロック発生回路3と16bitカウンタ7との間に調整手段の一例としての分周回路を設けても、基準クロック発生回路5と16bitカウンタ9との間にPLL等の逓倍回路(調整手段の一例)を設けても、16bitカウンタ9と比較回路10との間に調整手段の一例としての乗算器を設けても、同様の効果が生じる。
【0037】
また、上記各実施の形態では、SSC源クロックの周波数の少なくとも平均値が基準クロックの周波数よりも高い場合を想定し、SSC源クロックからクロックパルスを間引く場合を説明したが、SSC源クロックの周波数の少なくとも平均値が基準クロックの周波数よりも低い場合、次のようにSSC源クロックにクロックパルスを追加してもよい。図5は、そのような実施の形態に対応したスペクトラム拡散クロック生成装置101の構成を概略的に表すブロック図である。なお、図5において、図1のスペクトラム拡散クロック生成装置1と同様に構成された部分には、図1で用いたものと同様の符号を付して構成の詳細な説明を省略する。
【0038】
図5に示すように、このスペクトラム拡散クロック生成装置101は、SSC源クロック発生回路3,基準クロック発生回路5からパルス生成回路121に至る構成はスペクトラム拡散クロック生成装置1と同様である。パルス生成回路121は、前述のパルス生成回路21における間引き要求pls_cgと同様にLレベルの矩形パルスを発生して16bitカウンタ7にカウンタ加算信号として入力する。また、パルス生成回路121は、SSC源クロックと重ならないタイミングで短いHレベルのクロックパルスを追加クロックadd_clkとして出力する。この追加クロックadd_clkは、SSC源クロックの最も短いクロックパルスよりも更に短く、かつ、カウンタのクロック等として使用した場合に1クロックとして計数されるのに十分な長さを有している。
【0039】
この追加クロックadd_clkは、加算回路130(補正手段の一例)に設けられたOR回路131に入力され、そのOR回路131にはSSC源クロック発生回路3が発生したSSC源クロックも入力される。このため、加算回路130のOR回路131からは、SSC源クロックに追加クロックadd_clkが付け加えられたクロックがSSC加算クロックとして出力される。このSSC加算クロックは、次のように、基準クロックとのクロック数のズレが1未満に抑制され、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしても用いることができる。
【0040】
ここで、SSC源クロックは前述のように90MHz〜110MHz間を一定の変調周期で変調され、基準クロックは、SSC源クロックの上限の周波数、すなわち110MHzの一定周波数で発生されるものとする。すると、スペクトラム拡散クロック生成装置101の動作は次のようなものとなる。
【0041】
図6は、スペクトラム拡散クロック生成装置101における各信号の変化を一例を挙げて説明するタイムチャートである。図6に示すように、図3の例と同様に、SSC源クロックを計数したカウンタ値cnt1及び基準クロックを計数したカウンタ値cnt2に対して、フリップフロップ11〜14を介して出力されるカウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2はSSC源クロックの2クロック分遅れたタイミングで増加する。
【0042】
図6の例では、cnt1=07となったタイミングでカウンタ値sync_cnt1は05となるのに対して、カウンタ値sync_cnt2は06である。このため、cnt1=07となったタイミングで比較結果cmpがLレベルとなり、追加クロックadd_clkが前述のタイミングで出力される。すると、この追加クロックadd_clkとSSC源クロックとの論理和としてのSSC加算クロックは、cnt1=09の期間に発生したSSC源クロックのクロックパルスとcnt1=0Aの期間に発生したSSC源クロックのクロックパルスとの間に追加クロックadd_clkを追加したものとなる。
【0043】
また、比較結果cmpがLレベルとなると、パルス生成回路121は、前述の間引き要求pls_cgと同様のカウンタ加算信号を6bitカウンタ7に入力する。このため、カウンタ値cnt1は、次のSSC源クロックの立ち上がりに同期して07から09へ一気に2つ増加する。同様に、カウンタ値sync_cnt1もその2クロック後に2つ増加する。すると、カウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2の値が一致し、比較結果cmpもHレベルに戻る。なお、前述の間引き要求pls_cgと同様に、カウンタ加算信号もSSC源クロックの1クロック分の期間でのみ出力され、その後SSC源クロックの2クロック分の期間は比較結果cmpの値に関わらず出力をHレベルに維持される。このため、追加クロックadd_clk及びカウンタ加算信号は次にカウンタ値sync_cnt1,sync_cnt2の値が食い違うまで発生しない。
【0044】
このように、スペクトラム拡散クロック生成装置101を用いれば、SSC源クロックの周波数の少なくとも平均値が基準クロックの周波数よりも低い場合にも、基準クロックとSSC加算クロックとは1クロック分以上ずれることがない。従って、このSSC加算クロックは、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしても用いることができる。また、スペクトラム拡散クロック生成装置1とスペクトラム拡散クロック生成装置101とを組み合わせることにより、SSC源クロックのクロックパルスを間引く処理も新たにクロックパルスを追加する処理も両方実行可能にしてもよいことはいうまでもない。
【0045】
なお、図2(A)には、スペクトラム拡散クロック生成装置1または101にて生成されたSSC間引きクロック及びSSC加算クロックも併せて記載したので参照されたい。図2(A)に示すように、SSC間引きクロックは、前述の基準クロックの90MHz近傍を微小に変動しながらもほぼその基準クロックと同様の周波数となる。また、SSC加算クロックは、前述の基準クロックの110MHz近傍を微小に変動しながらもほぼその基準クロックと同様の周波数となる。
【0046】
図2(B)は、SSC源クロックの周波数の変化と上記SSC間引きクロック及びSSC加算クロックの変化との関係を模式的に表す説明図である。図2(B)の左端に示すように、SSC源クロックの周波数が高い(例えば110MHz近傍)ときには、SSC間引きクロックは一部のクロックパルスが間引かれるが、SSC加算クロックにはクロックパルスの追加がなされない。逆に、図2(B)の右端に示すように、SSC源クロックの周波数が低い(例えば90MHz近傍)ときには、SSC加算クロックにはクロックパルスの追加がなされるが、SSC間引きクロックにはクロックパルスの間引きがなされない。また、図2(B)の中央に示すように、SSC源クロックが中程度の周波数のときは、SSC間引きクロックにはクロックパルスの間引きが、SSC加算クロックにはクロックパルスの追加が、それぞれ実行される。
【0047】
なお、スペクトラム拡散クロック生成装置101においても、基準クロックの周波数がSSC源クロックの周波数の上限よりも大幅に高い場合は、図4の場合とは逆に、16bitカウンタ7と比較回路10との間に調整手段の一例としての乗算器を設けてもよく、SSC源クロック発生回路3と16bitカウンタ7との間にPLL等の逓倍回路(調整手段の一例)を設けてもよく、基準クロック発生回路5と16bitカウンタ9との間に調整手段の一例としての分周回路を設けてもよく、16bitカウンタ9と比較回路10との間に調整手段の一例としての除算器を設けてもよい。
【0048】
また、スペクトラム拡散クロック生成手段として、変調周期が一定でかつその変調周期の基準となる原点信号も生成可能なものを使用すれば、基準クロックを使用せずにスペクトラム拡散クロックを補正することができる。図7(A)は、そのようなスペクトラム拡散クロック生成装置201の構成を概略的に表すブロック図である。
【0049】
このスペクトラム拡散クロック生成装置201は、一定の変調周期で変調されるスペクトラム拡散クロックの一例としてのSSC源クロックを発生すると共に、そのSSC源クロックの変調周期の基準となる原点信号を出力可能に構成されたSSC源クロック発生回路203を有している。SSC源クロック発生回路203が発生したSSC源クロックはスペクトラム拡散クロック生成装置1と同様の間引き回路30に設けられたAND回路31に入力される。
【0050】
また、上記SSC源クロックは、間引き条件生成回路250に設けられたカウンタ251のCLK端子にも入力され、そのカウンタ251のRESET端子には、SSC源クロック発生回路203から上記原点信号が入力される。このため、カウンタ251は、原点信号が発生されてからのSSC源クロックのクロック数を計数する。間引き条件生成回路250は、更に、次に示すような間引きテーブルを記憶したROM253(記憶手段の一例)を備えており、その間引きテーブルとカウンタ251にて上記クロック数を計数したカウンタ値とを比較することによって、前述のパルス生成回路21と同様の間引き要求をAND回路31に入力する。
【0051】
図8(B)はROM253に記憶された間引きテーブルの一例を表す説明図であり、図8(A),(C)は、その間引きテーブルの作成方法を表す説明図である。なお、この例では、SSC源クロックは95MHz〜105MHzの間を一定周期で変調されるものとする。
【0052】
そのSSC源クロックに対して、95MHzの基準クロック(仮想のものであってもよい)を想定すると、原点信号が発生してからのクロック数と、基準クロックによる経過時間,SSC源クロックによる経過時間,及び両経過時間の差分は、図8(A)に示すように変化する。図8(A)に示すように、上記差分は、11クロック目になると11.0nsに広がり、基準クロックの1クロック分(10.5ns)を超える。そこで、図8(C)に示すように、SSC源クロックの11クロック目の立ち上がりに同期して前述の間引き要求を出力して、SSC源クロックの12クロック目を間引いて13クロック目を12クロック目とするのである。すると、図8(A)に示すように、12クロック目以降は再び差分が縮まる。
【0053】
図8(B)に例示する間引きテーブルには、上記11クロック目に対応するアドレス「0B」に対してデータ「0」が設定され、他のアドレスにはデータ「1」が設定されている。このため、カウンタ251のカウンタ値に対応する間引きテーブルのデータが「0」となったときに間引き条件生成回路250が間引き要求を出力すれば、図8(C)に例示するようなSSC間引きクロックが間引き回路30から出力される。このようにして出力されたSSC間引きクロックも、前述のSSC間引きクロックと同様、各種タイミングを制御するカウンタのクロックとしてより有効に用いることができる。
【0054】
なお、図8では、SSC源クロックの変調周期のごく一部を示しているが、SSC源クロックの周波数が高い期間では上記のような間引き要求の出力頻度が高くなり、SSC源クロックの周波数が低い期間では上記のような間引き要求の出力頻度が低くなる。また、本実施の形態では、基準クロックによる経過時間の累積値とSSC源クロックによる経過時間の累積値とを比較しているが、1クロックに対する基準クロックによる経過時間とSSC源クロックによる経過時間とを比較して両者の差分が大きいときに間引き要求を出力してもよい。また更に、クロックパルスを追加する形態も、図5の実施の形態と同様に考えることができる。
【0055】
更に、間引き条件生成回路250としては、予め上記間引きテーブルを備えていない形態も考えることができる。例えば、図7(B)に示す間引き条件生成回路250のように、カウンタ251のカウンタ値を数学的計算処理部255に入力して、その数学的計算処理部255による計算によって上記のように間引き要求を出力してもよい。
【0056】
また更に、上記各実施の形態では、デジタルデータに対する処理によって間引き要求または追加クロックを出力したが、16bitカウンタ7,9により計数されたカウンタ値をD/A変換してコンパレータ等によって比較してもよい。すなわち、比較回路10等の比較手段は、アナログ回路によっても構成することができる。また、上記各実施の形態では、SSC間引きクロックまたはSSC加算クロックのクロック数と基準クロックのクロック数との差分を±1未満に抑制したが、±2未満,±3未満等に抑制してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,101,201…スペクトラム拡散クロック生成装置
3,203…SSC源クロック発生回路 5…基準クロック発生回路
7,9…16bitカウンタ 10…比較回路
11,12,13,14…フリップフロップ 17…XOR回路
19…NOR回路 21,121…パルス生成回路
30…間引き回路 31…AND回路
41…除算器 130…加算回路
131…OR回路 250…間引き条件生成回路
251…カウンタ 255…数学的計算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が変調されるスペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成手段と、
周波数が一定の基準クロックを生成する基準クロック生成手段と、
上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロック数を計数するスペクトラム拡散クロック計数手段と、
上記基準クロック生成手段が生成した基準クロックのクロック数を計数する基準クロック計数手段と、
上記スペクトラム拡散クロック計数手段が計数したクロック数と上記基準クロック計数手段が計数したクロック数とを比較し、上記各クロック数の差が予め設定された許容範囲内にあるか否かを判断する比較手段と、
上記比較手段の比較結果に基づき、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えた場合、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くか若しくはクロックパルスを追加することにより、上記各クロック数の差を上記許容範囲内に収める補正手段と、
を備えたことを特徴とするスペクトラム拡散クロック生成装置。
【請求項2】
上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックの周波数の下限が、上記基準クロック生成手段が生成する基準クロックの周波数以上で、
上記補正手段は、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えた場合、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くことを特徴とする請求項1記載のスペクトラム拡散クロック生成装置。
【請求項3】
上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックの周波数の上限が、上記基準クロック生成手段が生成する基準クロックの周波数以下で、
上記補正手段は、上記各クロック数の差が上記許容範囲を超えた場合、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを追加することを特徴とする請求項1記載のスペクトラム拡散クロック生成装置。
【請求項4】
上記比較手段によって比較される上記各クロック数の差が減少するように、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成するスペクトラム拡散クロックを一定割合で逓倍し、またはそのスペクトラム拡散クロックを一定割合で分周し、または上記スペクトラム拡散クロック計数手段が計数したクロック数を定数倍し、またはそのクロック数を定数で除し、または上記基準クロック生成手段が生成する基準クロックを一定割合で逓倍し、またはその基準クロックを一定割合で分周し、または上記基準クロック計数手段が計数したクロック数を定数倍し、またはそのクロック数を定数で除する調整手段を、
更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスペクトラム拡散クロック生成装置。
【請求項5】
上記許容範囲は、上記各クロック数の差が±1未満の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスペクトラム拡散クロック生成装置。
【請求項6】
一定の変調周期で周波数が変調されるスペクトラム拡散クロックを、その変調周期の基準となる原点信号と共に生成するスペクトラム拡散クロック生成手段と、
上記原点信号が生成されてから上記スペクトラム拡散クロックの周波数が予め設定された許容範囲を超えて増加または減少するまでのタイミングを記憶する記憶手段と、
上記原点信号が生成されてから上記記憶手段に記憶されたタイミングとなったとき、上記スペクトラム拡散クロック生成手段が生成したスペクトラム拡散クロックのクロックパルスを間引くかまたはクロックパルスを追加する補正手段と、
を備えたことを特徴とするスペクトラム拡散クロック生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−55118(P2011−55118A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200500(P2009−200500)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】