説明

スポット位置測定方法および計測装置

【課題】光学系を変更することなく、撮像画像内のスポット中心の位置を確認できるようにする。
【解決手段】膜厚サンプル35を、例えば、X方向に位置をずらして、複数の位置でそれぞれ撮像するとともに、各位置でのスポット光に基づいて膜厚をそれぞれ計測し、撮像した画像を処理して、画像の中心Pと膜厚サンプル35の中心P1との中心位置の差を算出し、この中心位置の差に対する膜厚の変化に基づいて、画像の中心Pに対するスポット光のX方向のずれ量を求め、同様に、画像の中心Pに対するスポット光のY方向のずれ量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚計測などの計測用のスポット光の位置を測定する方法およびそれを用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膜厚計測では、計測対象物の微小領域からの反射光に基づいて膜厚の計測を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3944693号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる膜厚計測では、計測対象物の微小領域からのスポット光に基づいて膜厚を計測するのであるが、数ミクロン程度のサイズのスポット光の中心と計測対象物を撮像した画像の中心とは、機械的精度などの要因によって完全には一致しておらず、このため、従来では、装置の組立時に、撮像した画像におけるスポット光の位置を確認し、画像中心とスポット光の中心であるスポット中心とのずれ量を計測し、オフセット値として設定している。
【0005】
従来のスポット中心の確認は、図8に示すように、計測対象物、例えば、基板2で反射された反射光が、対物レンズ12、レンズ16,18、ビームスプリッタ−26、レンズ22、スリット27、受光端25および光ファイバ24を介して導かれる分光器の位置に、光源37を配置し、本来とは逆の方向から光を導入にして基板2にスポット光を照射し、それをカメラ14で撮像することによって、撮像画像内におけるスポット光の位置を確認し、図9に示すように、撮像した画像の中心Pと光スポット中心P2とのX,Y方向のずれ量をオフセット値として設定している。
【0006】
実際の膜厚の測定では、このオフセット値に基づいて、基板の微小な計測領域が、画像の中心Pではなく、スポット中心P2に一致するように調整して膜厚の計測を行っている。
【0007】
このスポット中心P2の位置は、経時変化などによって数ミクロン単位でずれることが考えられ、スポットサイズが小さい場合には、そのずれが問題となり、定期的にスポット位置を確認してオフセット値を修正する必要がある。
【0008】
上述のように、装置の組立時には、本来と逆方向から光を導入してスポット位置を確認することもできるが、組立後の実際の装置では、光の導入位置には、分光器が設置されているので、上述のようにしてスポット位置を確認するのは困難である。
【0009】
光学系を工夫し、スポット中心の確認時には、光を導入できるように切り換える機構を設けることも考えられるが、それでは、光学系が複雑となり、また、そのような機構の追加が、却ってスポット中心をずらす要因になる虞もある。
【0010】
本発明は、上述のような課題に鑑みて為されたものであって、光学系を変更することなく、画像内におけるスポット中心の位置を確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明のスポット位置測定方法は、計測対象物からのスポット光に基づいて、前記計測対象物の膜厚を計測する計測装置における前記スポット光の位置を測定する方法であって、予め準備した膜厚サンプルの位置を相対的にずらして、複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記膜厚サンプルの膜厚をそれぞれ計測する第1のステップと、前記複数の各位置でそれぞれ撮像した撮像画像内の膜厚サンプルの位置と前記各位置で計測される膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像内の前記スポット光の位置を求める第2のステップとを含んでいる。
【0012】
膜厚サンプルは、膜厚を計測できるとともに、画像処理によって位置を認識できるものであるのが好ましい。
【0013】
「膜厚サンプルの位置を相対的にずらして」とは、膜厚サンプル自体の位置をずらしてもよいし、膜厚サンプルの撮像等を行う計測用のヘッドの位置をずらしてもよいし、あるいは、両者をずらしてもよいことをいう。
【0014】
膜厚サンプルの位置を相対的にずらして、複数の位置で膜厚を計測するので、膜厚計測用のスポット光の位置に、前記膜厚サンプルがないときには、膜厚は計測されないが、スポット光の位置に、膜厚サンプルが入ると、膜厚が計測され始め、更に、スポット光の位置から膜厚サンプルが外れると、膜厚の計測は終了することになる。したがって、複数の位置でそれぞれ計測される膜厚の変化からスポット光と膜厚サンプルとの位置関係を把握することができる。
【0015】
一方、複数の位置でそれぞれ撮像した撮像画像を処理することによって、各撮像画像内の膜厚サンプルの位置を把握することができる。
【0016】
本発明のスポット位置測定方法によると、複数の位置での膜厚サンプルの膜厚の計測によって、スポット光と膜厚サンプルとの位置関係を把握できる一方、前記複数の位置で撮像した画像の画像処理によって撮像画像内における膜厚サンプルの位置を把握できるので、膜厚サンプルの位置を対応させることによって、撮像画像内におけるスポット光の位置を求めることができる。
【0017】
(2)本発明のスポット位置測定方法の他の実施形態では、前記第1のステップは、前記膜厚サンプルの位置を、第1の方向に相対的にずらして、複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記膜厚サンプルの膜厚をそれぞれ計測するステップと、前記膜厚サンプルの位置を、前記第1の方向に直交する第2の方向に相対的にずらして、複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記膜厚サンプルの膜厚をそれぞれ計測するステップとを含み、前記第2のステップでは、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第1の方向および前記第2の方向のずれ量を求めるものであり、前記膜厚サンプルは、前記第1の方向に延びる平行な対向辺および前記第2の方向に延びる平行な対向辺を有する多角形状に形成された膜を有している。
【0018】
前記第1の方向および第2の方向は、X,Y直交座標系のX方向およびY方向であるのが好ましい。
【0019】
膜厚サンプルは、正四角形、正六角形、正八角形などの偶数の正多角形状に膜が形成されているのが好ましい。
【0020】
この膜厚サンプルは、平行な対向辺を有する多角形状に膜が形成されている、すなわち、平行な対向辺間に膜が形成されているので、平行な対向辺間に形成された膜が、スポット光を横切るように位置をずらして膜厚を計測することによって、その膜厚変化に基づいて、平行な対向辺間に形成された膜の中心、すなわち、膜厚サンプルの中心が、スポット光を通過する位置を把握することができる。
【0021】
膜厚サンプルを、第1の方向、例えば、X方向に相対的にずらして、複数の位置で膜厚サンプルの膜厚をそれぞれ計測することによって、スポット光を、膜厚サンプルのX方向の中心が通過する位置を把握することができる。
【0022】
一方、膜厚サンプルを、X方向に相対的にずらして、複数の位置で撮像した画像を画像処理して膜厚サンプルのX方向の中心を把握できるので、膜厚サンプルの前記中心が、撮像画像の中心にあるときの位置を把握することができる。
【0023】
このようにX方向に沿う複数の位置での膜厚サンプルの膜厚計測によって、スポット光が、膜厚サンプルのX方向の中心にある位置を把握することができる一方、前記X方向に沿う複数の位置での撮像画像を画像処理することによって、膜厚サンプルのX方向の中心が、撮像画像の中心にあるときの位置を把握することができるので、膜厚サンプルのX方向の中心を対応させることによって、撮像画像の中心に対するスポット光のX方向の位置を求めることができる。
【0024】
同様に、撮像画像の中心に対するスポット光のY方向の位置を求めることができる。
【0025】
以上のようにして、この実施形態によると、撮像画像の中心に対するスポット光の第1の方向および第2の方向のずれ量として、撮像画像内のスポット光の位置を求めることができる。
【0026】
(3)本発明のスポット位置測定方法の一つの実施形態では、前記第1のステップでは、前記第1の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像および前記第2の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像を処理して、撮像画像の中心と膜厚サンプルの中心との前記第1の方向に沿う中心位置の差および前記第2の方向に沿う中心位置の差を計測し、前記第2のステップでは、前記第1の方向に沿う中心位置の差と前記第1の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第1の方向のずれ量を求めるとともに、前記第2の方向に沿う中心位置の差と前記第2の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第2の方向のずれ量を求めるようにしている。
【0027】
この実施形態では、撮像画像の中心と膜厚サンプルの中心との前記第1の方向に沿う中心位置の差および前記第2の方向に沿う中心位置の差を計測するので、その差が「0」になる位置、すなわち、膜厚サンプルを、第1の方向に相対的にずらしたときに、撮像画像の中心と膜厚サンプルの第1の方向の中心とが一致する位置、および、膜厚サンプルを、第2の方向に相対的にずらしたときに、撮像画像の中心と膜厚サンプルの第2の方向の中心とが一致する位置を把握できることになる。
【0028】
一方、第1の方向に沿う複数の位置での膜厚サンプルの膜厚計測によって、スポット光が、膜厚サンプルの第1の方向の中心にある位置、および、スポット光が、膜厚サンプルの第2の方向の中心にある位置を把握することができる。
【0029】
したがって、画像処理によって得られる膜厚サンプルの第1の方向の中心および第2の方向の中心と、膜厚計測によって得られる膜厚サンプルの第1の方向の中心および第2の方向の中心とを対応させることによって、撮像画像の中心に対するスポット光の第1の方向および第2の方向のずれ量を求めてスポット光の位置を特定することができる。
【0030】
(4)本発明の計測装置は、計測対象物の膜厚を計測する計測装置であって、前記計測対象物を撮像する撮像手段と、前記計測対象物からのスポット光を分光する分光手段と、前記撮像手段からの撮像画像を処理する画像処理手段と、前記分光手段の出力に基づいて、膜厚を演算する演算手段と、前記撮像手段で撮像される画像内の前記スポット光の位置を測定する測定手段とを備え、前記撮像手段は、予め準備した膜厚サンプルを、相対的に位置をずらした複数の位置でそれぞれ撮像するものであり、前記分光手段は、前記複数の位置での前記膜厚サンプルからのスポット光を分光するものであり、前記画像処理手段は、前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像を処理して、撮像画像内の膜厚サンプルの位置を求めるものであり、前記演算手段は、前記複数の位置での前記膜厚サンプルの膜厚を演算するものであり、前記測定手段は、前記画像処理手段で求めた撮像画像内の膜厚サンプルの位置と、前記演算手段で演算した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像内の前記スポット光の位置を測定するものである。
【0031】
本発明の計測装置によると、複数の位置での膜厚サンプルの膜厚の計測によって、スポット光と膜厚サンプルとの位置関係を把握できるとともに、前記複数の位置で撮像した画像の画像処理によって撮像画像内における膜厚サンプルの位置を把握できるので、膜厚サンプルの位置を対応させることによって、撮像画像内におけるスポット光の位置を求めることができる。
【0032】
(5)本発明の計測装置の他の実施形態では、前記撮像手段は、前記膜厚サンプルの位置を、第1の方向に相対的にずらした複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記第1の方向に直交する第2の方向に相対的にずらした複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するものであり、前記分光手段は、前記第1の方向に沿う前記複数の位置での前記膜厚サンプルからのスポット光を分光するとともに、前記第2の方向に沿う前記複数の位置での前記膜厚サンプルからのスポット光を分光するものであり、前記画像処理手段は、前記第1の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像および前記第2の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像を処理して、撮像画像の中心と膜厚サンプルの中心との前記第1の方向に沿う中心位置の差および前記第2の方向に沿う中心位置の差を求めるものであり、前記演算手段は、前記第1の方向に沿う前記複数の位置での前記膜厚サンプルの膜厚を演算するとともに、前記第2の方向に沿う前記複数の位置での膜厚サンプルの膜厚を演算するものであり、前記測定手段は、前記第1の方向に沿う中心位置の差と前記第1の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第1の方向のずれ量を測定するとともに、前記第2の方向に沿う中心位置の差と前記第2の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第2の方向のずれ量を測定するものであり、前記膜厚サンプルは、前記第1の方向に延びる平行な対向辺および前記第2の方向に延びる平行な対向辺を有する多角形状に形成された膜を有している。
【0033】
この実施形態によると、撮像画像の中心に対するスポット光の第1の方向および第2の方向のずれ量を求めてスポット光の位置を特定することができる。
【0034】
(6)本発明の計測装置の一つの実施形態では、前記画像処理手段は、計測対象の撮像画像を処理して寸法を算出するものである。
【0035】
この実施形態によれると、膜厚計測に加えて、計測対象物の線幅などの寸法を計測することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、複数の位置での膜厚サンプルの膜厚の計測によって、スポット光と膜厚サンプルとの位置関係を把握できるとともに、前記複数の位置で撮像した画像の画像処理によって撮像画像内における膜厚サンプルの位置を把握できるので、膜厚サンプルの位置を対応させることによって、撮像画像内におけるスポット光の位置を求めることができる。
【0037】
これによって、光学系を変更することなく、膜厚サンプルを計測することによって、画像内におけるスポット中心の位置を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る計測装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の計測ヘッドの構成を示す図である。
【図3】図1の計測装置の構成を示すブロック図である。
【図4】膜厚サンプルの測定領域を示す図である。
【図5】膜厚サンプルの位置をずらして撮像した画像を示す図である。
【図6】画像中心と膜厚サンプルの中心との中心位置の差に対する膜厚変化を示す図である。
【図7】動作説明に供するフローチャートである。
【図8】従来のスポット位置確認方法を説明するための図である。
【図9】撮像画像の中心からのスポット位置のずれ量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0040】
(実施形態1)
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る計測装置の概略構成を示す斜視図である。
【0041】
この実施形態の計測装置1は、画像計測および膜厚計測のためのデータを取り込む計測系3と、この計測系3に相互に情報伝送可能に接続されて、取り込んだデータを処理して計測を行なうとともに、各部の制御を行なう制御系4とを備えており、制御系4は、計測系3を制御する制御プログラムを実行するコンピュータを内蔵している。
【0042】
計測系3は、基台5と、その上に設置された一対のガイドレール6に沿って移動可能なステージ7と、このステージ7を跨ぐ形で基台5上の固定位置に架設された門型の架台8と、この架台8内に設けられた図示しないヘッド移動機構と、ヘッド移動機構に支持された計測ヘッド9とを備えている。ステージ7には、計測対象物である基板2が載置される。
【0043】
計測ヘッド9は、図示しない光ファイバやケーブルによって、制御系4に接続されている。
【0044】
矩形板状のステージ7は、図示しないリニアモータなどの駆動機構によって図のY方向に移動可能である。計測ヘッド9は、Y方向に直交する図のX方向を可動方向とするヘッド移動機構によって、X方向に移動可能である。
【0045】
基台5上には、ステージ7の移動方向であるY方向に沿って延びるリニアスケール10が設けられる一方、ステージ7には、該ステージ7と一体的に移動する図示しないエンコーダヘッドが設置されており、リニアスケール10とエンコーダヘッドとによって、ステージ7のY方向の移動量を測定するリニアエンコーダが構成される。
【0046】
各エンコーダヘッドには、投光部と受光部とが備えられ、投光部から出射されてリニアスケール10で変調された反射光を受光部で受けることにより、ステージ7の移動量に応じた数のパルス信号を得ることができる。また、各リニアスケール10の1箇所には原点パターンが設けられていることにより、ステージ位置の原点信号を得ることもできる。
【0047】
架台8に内蔵されるヘッド移動機構は、ステージ7上に載置された基板2を撮像するとともに、膜厚計測用の投受光を行う計測ヘッド9を、X方向に移動させるものである。このヘッド移動機構は、リニアエンコーダを備えており、このリニアエンコーダで計測ヘッド9のX方向の移動量を測定しながら、制御系4から指令されたX座標に計測ヘッド9を移動させる。
【0048】
計測ヘッド9は、顕微鏡のように対物レンズを有する構成となっており、対物レンズの交換により撮像倍率を変更できるようになっている。また、この計測ヘッド9には、後述のようにカメラが搭載されるとともに、オートフォーカスユニット11を備えている。
【0049】
制御系4は、膜厚計測のための膜の材質や光学定数などのデータを入力するとともに、画像計測のための計測位置などを特定するための計測レシピ等を入力するキーボードやマウスなどの入力装置20と、計測値などが表示されるディスプレイなどの表示装置21とを備えており、計測系3に対してリアルタイムに指令を送ったり、計測系3で撮像した画像を観察したり、計測系3を制御するプログラムを入力したりできるようになっている。計測系3を制御するプログラムは、ネットワークを経由して、外部からダウンロードすることもできる。
【0050】
図2は、図1の計測ヘッド9の概略構成図である。
【0051】
この実施形態の計測ヘッド9は、対物レンズ12を保持する鏡筒本体13と、上部にカメラ14が装備された副鏡筒15とを備えており、鏡筒本体13には、レンズ16が配置されるとともに、上述のオートフォーカスユニット11が装備されている。この鏡筒本体13には、ハーフミラー17を介して図示しない照明光学系からの照明光が導入される。
【0052】
副鏡筒15には、複数のレンズ18,19,22が配置されるとともに、基板2からの反射光を、カメラ14側へ透過させる一方、分光器23に接続された光ファイバ24の受光端25側へ反射させるビームスプリッター26が配置されている。なお、27はスリットである。
【0053】
図示しない照明光学系からの照明光が、鏡筒本体13に導入されてハーフミラー17を介して基板2に向けて反射され、対物レンズ12を介して基板2に照射される。
【0054】
基板2で反射された反射光は、ビームスプリッター26を透過して撮像手段としてのカメラ14のCCD二次元撮像素子上に結像される一方、ビームスプリッター26で反射されて、レンズ22、スリット27、光ファイバ24を介してスポット光として分光器23に取り込まれる。カメラ14の画像は、比較的広い領域を撮像しており、この撮像画像に基づいて、後述のようにスポット中心の計測や基板2のパターンの線幅などの計測が行われる。
【0055】
図3は、計測ヘッド9を含む計測装置1の全体構成を示す要部のブロック図である。
【0056】
照明光が照射された計測対象からの反射光は、計測ヘッド9を介して上述の分光器23に導光され、分光器23で分光されて、波長単位の反射光の強度が取り出される。
【0057】
制御回路28は、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、膜厚や寸法を算出するための演算処理を行なうとともに、カメラのフォーカス制御部29、ステージ7や計測ヘッド9の移動制御部30などに対する制御処理を行なう。
【0058】
制御回路28は、分光器23からの反射光のスペクトルと、膜厚を所定値に想定したときの理論上の反射光のスペクトルとの比較を、膜厚の想定値を変えながら順に行い、膜厚毎の比較結果に基づいて、膜厚の値を特定する、いわゆる、カーブフィッティング法によって膜厚を計測する膜厚計測部31としての機能を備えている。
【0059】
また、制御回路28は、上述のカメラ14で撮像した画像を、画像入力部32を介して取り込み、画像処理して計測対象の基板2上に形成されたパターン等の寸法を測定するとともに、後述にように膜厚サンプルの中心位置を求めるための画像処理部33としての機能を有している。更に、スポット光の位置を測定するスポット位置測定部34としての機能を有する。
【0060】
この実施形態の計測装置1では、光学系を変更することなく、撮像画像内におけるスポット光の位置を確認できるように、図4に示す矩形の膜厚サンプル35を、位置をずらして複数の位置で撮像するとともに、膜厚を計測してスポット光の位置を求めるようにしている。
【0061】
この実施形態の膜厚サンプル35は、矩形(正方形)のガラス基板上に、画像認識できるように、着色膜が形成されたものであり、この膜厚サンプル35は、例えば、上述のステージ7の端の所定位置に、各辺がX方向またはY方向に沿うように設置されている。したがって、スポット光の位置を定期的に確認する際には、膜厚サンプル35を容易に撮像できるとともに、その膜厚を計測できるようになっている。なお、膜厚サンプル35は、スポット光の位置を確認する際に、ステージ7に載置するようにしてもよい。
【0062】
この実施形態では、図4に示すように、矩形の膜厚サンプル35を含む領域を、矢符Aで示すようにX方向にN回位置をずらして各位置で膜厚サンプル35を撮像するとともに、膜厚を計測し、撮像画像を画像処理して矩形の膜厚サンプル35のX方向の中心位置を計測する。更に、矩形の膜厚サンプル35を含む領域を、矢符Bで示すようにY方向にM回位置をずらして各位置で膜厚サンプル35を撮像するとともに、膜厚を計測し、撮像画像を画像処理して矩形の膜厚サンプル35のY方向の中心位置を計測する。なお、N回、M回は、特に、制限はないが、スポット光の位置が精度よく測定できるように任意に設定すればよい。
【0063】
図5a〜fは、例えば、X方向に位置をずらして矩形の膜厚サンプル35を複数回撮像した画像の一部の画像を示す図である。
【0064】
先ず、図5aに示される位置で膜厚サンプル35を撮像し、撮像した画像を処理して矩形の膜厚サンプル35の中心位置P1の座標を求める。この画像処理は、例えば、予め、膜厚サンプルを撮像して登録したテンプレート画像とのマッチングを行い、マッチングしたときの位置を基準として、計測レシピの計測パラメータに従って、指定された計測位置のサーチ範囲をサーチし、指定された閾値を超える微分波形のピーク位置から矩形のパターンの両エッジ(両辺)を認識し、両エッジ間の中心として中心位置の座標を求める。この中心位置P1の座標と、一義的に規定されている矩形の撮像画像36の中心PのX座標との差ΔX1を算出する。
【0065】
また、スポット光を分光器23で分光し、上述のようにカーブフィッティング法によってスポット光に基づく膜厚を計測する。
【0066】
次に、図5bに示すように、X方向に膜厚サンプル35の位置をずらし、上述と同様に、撮像した画像を処理して求めた矩形の膜厚サンプル35の中心P1の座標と撮像画像36の中心PのX座標との差ΔX2を算出する一方、スポット光に基づいて膜厚を計測する。
【0067】
更に、図5cに示すように、X方向に膜厚サンプル35の位置をずらし、上述と同様に、撮像した画像を処理して求めた矩形の膜厚サンプル35の中心P1の座標と画像の中心PのX座標との差ΔX3を算出する一方、スポット光に基づいて膜厚を計測する。
【0068】
以下、図5(d)〜(f)に示すように、X方向に位置をずらして、矩形の膜厚サンプル35の中心P1の座標と画像の中心PのX座標との差ΔX4〜ΔX6を算出する一方、スポット光に基づいて膜厚を計測する。
【0069】
以上のようにして得られた画像の中心Pと膜厚サンプル35の中心P1との中心座標の差ΔXnを横軸、各位置で計測された膜厚を縦軸としてグラフにすると、図6に示すようになる。
【0070】
このグラフにおいて、膜厚サンプル35を相対的に移動させて、スポット光に、矩形の膜厚サンプル35が徐々にかかるにつれて膜厚の値が徐々に上昇し、スポット光を、矩形の膜厚サンプル35が通過する間は、膜厚が略一定となり、スポット光から矩形の膜厚サンプル35が徐々に外れるにつれて膜厚の値が徐々に低下することになる。
【0071】
したがって、スポット光の位置に、矩形の膜厚サンプル35の中心位置P1があるのは、膜厚の変化の中心、すなわち、膜厚が略一定の区間の中心の位置である。
【0072】
一方、矩形の膜厚サンプル35の中心P1の座標と画像の中心Pの座標とが一致する位置は、グラフのΔXnが「0」の位置である。
【0073】
したがって、画像の中心PのX座標とスポット中心のX座標とが一致している場合には、ΔXnが「0」の位置と、膜厚の変化の中心の位置とが一致するはずであり、ΔXnが「0」の位置と、膜厚の変化の中心の位置とのずれ量ΔXgが、画像の中心に対するスポット中心のX方向のずれ量となる。
【0074】
同様にして、Y方向についても、画像の中心に対するスポット中心のY方向のずれ量を求めることができる。
【0075】
図7は、以上の処理のフローチャートである。
【0076】
先ず、膜厚サンプル35を含む領域を撮像できるように、ステージ7および計測ヘッド9を移動させる(ステップn1)。次に、膜厚サンプル35を画像認識して、上述の矢符Aおよび矢符Bで示す測定場所を決定する(ステップn2)。
【0077】
次に、X方向にN回ステップ移動し、各位置で膜厚サンプル35を撮像するとともに、膜厚を計測する(ステップn3)。次に、上述のように膜厚変化の位置からスポット光の画像中心からのX方向のずれ量を算出する(ステップn4)。
【0078】
次に、Y方向にM回ステップ移動し、各位置で膜厚サンプル35を撮像するとともに、膜厚を計測する(ステップn5)。次に、上述のように膜厚変化の位置からスポット光の画像中心からのY方向のずれ量を算出する(ステップn6)。
【0079】
なお、X方向の撮像および膜厚計測(ステップn3)に引き続いて、Y方向の撮像および膜厚計測(ステップn5)を行い、その後、スポット光の画像中心からのX方向のずれ量の算出(ステップn4)およびスポット光の画像中心からのY方向のずれ量の算出ステップn6)を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、基板等の計測対象物の膜厚および寸法の計測などに有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 計測装置
2 基板
9 計測ヘッド
14 カメラ
23 分光器
35 膜厚サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物からのスポット光に基づいて、前記計測対象物の膜厚を計測する計測装置における前記スポット光の位置を測定する方法であって、
予め準備した膜厚サンプルの位置を相対的にずらして、複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記膜厚サンプルの膜厚をそれぞれ計測する第1のステップと、
前記複数の位置でそれぞれ撮像した撮像画像内の膜厚サンプルの位置と前記各位置で計測される膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像内の前記スポット光の位置を求める第2のステップと、
を含むことを特徴とするスポット位置測定方法。
【請求項2】
前記第1のステップは、前記膜厚サンプルの位置を、第1の方向に相対的にずらして、複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記膜厚サンプルの膜厚をそれぞれ計測するステップと、前記膜厚サンプルの位置を、前記第1の方向に直交する第2の方向に相対的にずらして、複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記膜厚サンプルの膜厚をそれぞれ計測するステップとを含み、
前記第2のステップでは、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第1の方向および前記第2の方向のずれ量を求めるものであり、
前記膜厚サンプルは、前記第1の方向に延びる平行な対向辺および前記第2の方向に延びる平行な対向辺を有する多角形状に形成された膜を有する請求項1に記載のスポット位置測定方法。
【請求項3】
前記第1のステップでは、前記第1の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像および前記第2の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像を処理して、撮像画像の中心と膜厚サンプルの中心との前記第1の方向に沿う中心位置の差および前記第2の方向に沿う中心位置の差を計測し、
前記第2のステップでは、前記第1の方向に沿う中心位置の差と前記第1の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第1の方向のずれ量を求めるとともに、前記第2の方向に沿う中心位置の差と前記第2の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第2の方向のずれ量を求める請求項2に記載のスポット位置測定方法。
【請求項4】
計測対象物の膜厚を計測する計測装置であって、
前記計測対象物を撮像する撮像手段と、
前記計測対象物からのスポット光を分光する分光手段と、
前記撮像手段からの撮像画像を処理する画像処理手段と、
前記分光手段の出力に基づいて、膜厚を演算する演算手段と、
前記撮像手段で撮像される画像内の前記スポット光の位置を測定する測定手段とを備え、
前記撮像手段は、予め準備した膜厚サンプルを、相対的に位置をずらした複数の位置でそれぞれ撮像するものであり、
前記分光手段は、前記複数の位置での前記膜厚サンプルからのスポット光を分光するものであり、
前記画像処理手段は、前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像を処理して、撮像画像内の膜厚サンプルの位置を求めるものであり、
前記演算手段は、前記複数の位置での前記膜厚サンプルの膜厚を演算するものであり、
前記測定手段は、前記画像処理手段で求めた撮像画像内の膜厚サンプルの位置と、前記演算手段で演算した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像内の前記スポット光の位置を測定することを特徴とする計測装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記膜厚サンプルの位置を、第1の方向に相対的にずらした複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するとともに、前記第1の方向に直交する第2の方向に相対的にずらした複数の位置で前記膜厚サンプルをそれぞれ撮像するものであり、
前記分光手段は、前記第1の方向に沿う前記複数の位置での前記膜厚サンプルからのスポット光を分光するとともに、前記第2の方向に沿う前記複数の位置での前記膜厚サンプルからのスポット光を分光するものであり、
前記画像処理手段は、前記第1の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像および前記第2の方向に沿う前記複数の位置でそれぞれ撮像した画像を処理して、撮像画像の中心と膜厚サンプルの中心との前記第1の方向に沿う中心位置の差および前記第2の方向に沿う中心位置の差を求めるものであり、
前記演算手段は、前記第1の方向に沿う前記複数の位置での前記膜厚サンプルの膜厚を演算するとともに、前記第2の方向に沿う前記複数の位置での膜厚サンプルの膜厚を演算するものであり、
前記測定手段は、前記第1の方向に沿う中心位置の差と前記第1の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第1の方向のずれ量を測定するとともに、前記第2の方向に沿う中心位置の差と前記第2の方向に沿う複数の位置で計測した膜厚サンプルの膜厚とに基づいて、撮像画像の中心に対する前記スポット光の前記第2の方向のずれ量を測定するものであり、
前記膜厚サンプルは、前記第1の方向に延びる平行な対向辺および前記第2の方向に延びる平行な対向辺を有する多角形状に形成された膜を有する請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、計測対象の撮像画像を処理して寸法を算出する請求項4または5に記載の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−210389(P2010−210389A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56328(P2009−56328)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】