説明

スポット溶接ロボットの電極チップ整形監視方法及び同監視装置

【課題】 電極チップ整形監視装置を簡素化でき、ロボットのティーチングが不要で、且つサイクルタイムに影響を与えないようにする。
【解決手段】 スポット溶接ロボットに設けた各軸回りに電極チップを回動させるためのサーボモータ24における回転軸の回転位置、回転軸の回転速度及びモータ電流をそれぞれフィードバック制御するサーボモータ制御部70Aのフィードバック量(即ち、検出電流If、位置情報Pf、速度情報Vfのうちの少なくとも一つ)と、このフィードバック量に対応させて予め設定した設定値幅とを比較することにより、電極チップの整形状態及びチップドレッサの作動状態を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接ロボットの電極チップ整形監視方法及び同監視装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接用電極チップは、溶接作業を続けていくと、その先端部分が徐々に摩耗・変形し、摩耗・変形が進むと、溶接不良の原因となる。このため、定期的に電極チップの先端部分を整形する必要がある。
【0003】
このようなスポット溶接用電極チップの整形状態を検査する方法、装置として、整形状態を、(1)対向する一対の電極チップの先端の接触による通電で検知するもの(例えば、特許文献1参照。)、(2)対向する一対の電極チップの間の隙間に挿入するゲージで検知するもの(例えば、特許文献2参照。)、(3)ガイド部材に設けた穴部から突出した電極チップの先端部の突出量で検知するものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2004−167558公報
【特許文献1】特開2000−351083公報
【特許文献1】実開平5−24175号公報
【0004】
特許文献1の図4を以下の図7(a),(b)で説明する。なお、符号は振り直した。
図7(a),(b)は従来のスポット溶接用電極チップの整形状態を確認する装置を示す断面図である。
(a)において、研磨確認装置101は、検査治具102を備え、検査治具102は、上下に設けた凹部103,104と、これらの凹部103,104のそれぞれの底を貫通する貫通孔106とを備える。電極チップ108,109が的確に研磨されたかどうかを確認するには、(b)に示すように、電極チップ108,109をそれぞれ凹部103,104に挿入する。そして、電極チップ108,109間に通電が確認されたとき、即ち、電極チップ108,109の先端同士が接触したときに研磨完了と判断する。
【0005】
特許文献2の図5を以下の図8で説明する。なお、符号は振り直した。
図8は従来のスポット溶接用電極チップの整形状態を検査する装置を示す第1説明図である。
検査装置111は、ガイド部材112に設けた一対の凹部113,114を備え、これらの凹部113,114の底は、空間116に連通する。
研磨した電極117,118をそれぞれ凹部113,114に挿入して、空間116にゲージ119を挿入したときに、ゲージ119が電極117,118の先端に接触すれば、正常に研磨されたと判断する。
【0006】
特許文献3の図1及び図2を以下の図9で説明する。なお、符号は振り直した。
図9(a),(b)は従来のスポット溶接用電極チップの整形状態を検査する装置を示す第2説明図である。
(a)において、スポット溶接用電極検査装置121は、窪みを設けたガイド部材122と、このガイド部材122に近接させた設けた先端検出部材123とを備え、(b)に示すように、ガイド部材122の窪みにスポット溶接用電極124を挿入したときに、窪みの底から突出する電極124の先端の突出量を、アクチュエータ126を備える先端検出部材123((a)参照)で検知し、この突出量が所定量である場合に、良好な研磨状態であるとして表示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の図7〜図9に示した電極チップの整形状態を確認、あるいは検査する装置は、電極チップを整形する整形装置とは別に、配置のための大きなスペースが必要になる。
また、電極チップの整形状態の確認、検査のために、スポット溶接ロボットに設けた電極チップを、上記の確認、あるいは検査する装置の位置まで移動させる場合、スポット溶接ロボットに移動経路をティーチングする必要もあり、ティーチングが煩雑になる。更に、電極チップの整形工程とは別に、上記の確認工程、あるいは検査行程が増えるため、サイクルタイムが長くなる。
【0008】
本発明の目的は、スポット溶接ロボットの電極チップ整形監視方法及び同監視装置において、省スペース化を図るとともに、整形監視装置を簡素化でき、ロボットのティーチングが不要で、且つサイクルタイムに影響を与えないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、スポット溶接ロボットの電極チップをチップドレッサにより整形するときの整形状態及びチップドレッサの作動状態を監視する方法であって、スポット溶接ロボットに設けた軸回りに電極チップを回動させるためのサーボモータにおける回転軸の回転位置、回転軸の回転速度及びモータ電流をそれぞれフィードバック制御するサーボモータ制御部のフィードバック量と、このフィードバック量に対応させて予め設定した設定値幅とを比較することにより、電極チップの整形状態及びチップドレッサの作動状態を監視することを特徴とする。
【0010】
サーボモータ制御部のフィードバック量を流用して、このフィードバック量と、予め設定した設定値幅とを比較し、電極チップの整形状態及びチップドレッサの作動状態を監視するから、電極チップの整形工程中に整形状態及び作動状態を監視することが可能になる。
【0011】
請求項2に係る発明は、スポット溶接ロボットの電極チップをチップドレッサにより整形するときの整形状態及びチップドレッサの作動状態を監視する装置において、スポット溶接ロボットの各軸に設けた駆動用サーボモータの作動を制御するサーボモータ制御部と、このサーボモータ制御部のフィードバック量が出力される比較部と、フィードバック量に対応させて比較部に予め設定された設定値幅とフィードバック量とを比較してフィードバック量が設定値幅を外れた場合にチップドレッサの作動異常であるとして警報を発する警報手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
サーボモータ制御部は、スポット溶接ロボットに備えられているから、スポット溶接ロボットに、比較部と警報手段とを追加することにより、整形監視装置を構成することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、サーボモータにおける回転軸の回転位置、回転軸の回転速度及びモータ電流をそれぞれフィードバック制御するサーボモータ制御部のフィードバック量と、このフィードバック量に対応させて予め設定した設定値幅とを比較することにより、電極チップの整形状態及びチップドレッサの作動状態を監視するので、電極チップの整形工程中に整形状態及びチップドレッサの作動状態を監視することができ、特に整形確認工程、作動確認工程を増やす必要がなく、また、整形確認工程、作動確認工程のためのスポット溶接ロボットのティーチングも必要がないから、サイクルタイムが長くならず、サイクルタイムに影響を与えることがことがない。
【0014】
請求項2に係る発明では、サーボモータの作動を制御するサーボモータ制御部と、このサーボモータ制御部のフィードバック量が出力される比較部と、この比較部により設定値幅とフィードバック量とを比較してフィードバック量が設定値幅を外れた場合にチップドレッサの作動異常であるとして警報を発する警報手段とを備えるので、スポット溶接ロボットに、比較部と警報手段とを追加することにより、整形監視装置を構成することができ、整形監視装置の簡素化及び小型化を図ることができて、スポット溶接ロボット本体に付設することが可能であるため、省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るスポット溶接ロボットの電極チップを整形する状態を示す斜視図であり、スポット溶接ロボット10に備える一対の電極チップ11,12をチップドレッサ13で整形中の状態を示す。このように電極チップ11,12を整形中に整形状態を電極チップ整形監視装置(不図示。詳細は後述する。)で監視する。
【0016】
溶接ロボット10は、ベース部21と、このベース部21に支軸22でスイング自在に支持した第1アーム部23と、この第1アーム部23の先端に取付けた第1サーボモータ24と、この第1サーボモータ24で駆動するR軸26(26AはR軸26の軸線である。)と、このR軸26の先端にB軸27(不図示。27AはB軸27の軸線である。)を介してスイング自在に取付けた第2アーム部28と、この第2アーム部28をR軸26に対してスイング駆動させるために第2アーム部28の一端に取付けた第2サーボモータ31と、第2アーム部28の先端に取付けた第3サーボモータ32と、この第3サーボモータ32でT軸33(不図示。33AはT軸33の軸線である。)を介して駆動する溶接部本体34と、上記した第1サーボモータ24、第2サーボモータ31、第3サーボモータ32のそれぞれに設けた図示せぬサーボモータ制御部とからなる。
【0017】
図中の矢印Aは第1サーボモータ24によるR軸26の回転方向、矢印Bは第2サーボモータ31による第2アーム部28のスイング方向、矢印Cは第3サーボモータ32による溶接部本体34のスイング方向である。
【0018】
溶接部本体34は、電極チップ11,12と、T軸33に取付けた基部41と、一方の電極チップ11をその軸方向に移動させるために基部41に取付けた電極チップ駆動装置42と、他方の電極チップ12を支持するために基部41の下部に取付けたL字状アーム43とからなる。なお、45は電極チップ駆動装置42を構成するロッドであり、このロッド45の下端に電極チップ11を取付ける。
【0019】
チップドレッサ13は、電極チップ11,12を整形する切削工具(不図示)と、この切削工具を駆動する駆動モータ51とを備えるものである。なお、52は切削工具及び駆動力伝達機構を収納するハウジングである。
【0020】
図2(a),(b)は本発明に係る電極チップの整形状態を示す断面図である。
(a)は電極チップ11,12の整形前の状態を示す図であり、チップドレッサ13のハウジング52内に回転自在に設けた切削工具61の上面及び下面に、底面がほぼ球面状のチップ整形凹部62,63をそれぞれ形成し、これらのチップ整形凹部62,63に電極チップ11,12を挿入したことを示す。電極チップ11,12の先端は、摩耗によって荒れている。なお、65はチップ整形凹部62,63に複数形成した刃部(複数の刃部65の切刃でチップ整形凹部62,63を形成する。)、66,66はハウジング52と切削工具61との間に設けたブッシュである。
切削工具61は、駆動モータ51(図1参照)と歯車、ベルト、チェーン等の図示せぬ駆動力伝達機構で連結され、駆動モータ51の駆動力により所定回転数で回転する。
【0021】
(b)は電極チップ11,12の整形後の状態を示す図であり、(a)に示した電極11,12を切削工具61に所定の押付け力で押し付けた状態で切削工具61を回転させて、電極チップ11,12の先端を所望の形状に整形したことを示す。
【0022】
図3(a),(b)は本発明に係る電極チップ整形の際の状態を説明する図であり、図1の3矢視図に相当するものである。
(a)は電極チップ11,12を整形する前の状態を示す。スポット溶接ロボット10は、チップドレッサ13に対して直立した状態にある。図中の破線はR軸26、黒丸は軸線26Aを表す(以下同じ。)。
【0023】
(b)は電極チップ11,12の整形中の状態を示す。即ち、スポット溶接ロボット10は、チップドレッサ13の切削工具から受ける力によって、(a)に示した直立位置から左右に揺動する(実際には、この揺動は左右方向に限らず、前後方向にも発生するが、ここでは、説明の簡略化のために左右方向の揺動のみ説明する。)。図中の+θ,−θがスポット溶接ロボット10の直立位置に対する左右方向の揺動角度である。スポット溶接ロボット10が角度+θ揺動すれば、これに伴って、スポット溶接ロボット10のR軸26は軸線26A回りに角度+αだけ回転する。このように、スポット溶接ロボット10の揺動角度に対して、R軸26の回転角度が一義的に定まる。B軸及びT軸の各回転角度も同様である。
【0024】
上記したように、スポット溶接ロボット10が角度+θ揺動したとき、スポット溶接ロボット10のR軸26を駆動する第1サーボモータ24(図1参照)には、図示せぬサーボモータ制御部によって、予め設定した、例えば、直立位置までスポット溶接ロボット10を角度−θだけ揺動させて戻すためにR軸26を角度−αだけ回転させるような駆動力が発生する。
【0025】
そして、電極チップ11,12の先端が図2(b)のように整形完了に近づくと、上記したスポット溶接ロボット10の左右方向への揺動角度は時間経過とともに次第に小さくなり、R軸26の回転角度も小さくなるから、この回転角度が電極チップ11,12の整形開始から所定時間経過後に所定の角度幅(設定値幅)に等しくなったとき、又はその所定角度幅に入ったときに、例えば、表示手段で電極チップ11,12の整形が完了したことを表示させる。この表示が表れたら、作業者は、チップドレッサ13の駆動モータ51を停止させる。
【0026】
このように、スポット溶接ロボット10の電極チップ整形中の揺動角度を、R軸の回転角度としてサーボモータ制御部で常に監視しているから、R軸の回転角度が所定角度幅(設定値幅)を外れたときに、チップドレッサの作動を停止させることができる。
【0027】
即ち、電極チップ整形中に、切削工具の切刃の破損・緩み、切粉やシーラー等による切刃の目詰まり、駆動モータの故障による作動不良等の異常(これらの異常をここでは、「チップドレッサの作動異常」という。)が発生した場合には、電極チップ11,12への負荷が、設定値幅に対して増減(切削工具の切刃の破損・緩みの場合は増加する傾向にあり、切粉やシーラー等による切刃の目詰まり、駆動モータの故障の場合は減少する傾向にある。)するから、スポット溶接ロボット10の揺動角度が大きく、あるいは小さくなるため、この時のR軸の回転角度も大きく、あるいは小さくなり、この時の回転角度が所定の角度幅(設定値幅)を外れたときに、異常であることを表示手段で表示したり、警報手段で警報を鳴らしたりすることができる。
【0028】
電極チップ整形中は、B軸27(図1参照)及びT軸33(図1参照)の第2・第3サーボモータ31,32(図1参照)にもR軸26の第1サーボモータ24と同様にスポット溶接ロボット10の左右方向への揺動に対応して予め設定した位置、例えば、直立位置まで戻そうとする駆動力が発生し、スポット溶接ロボット10の電極チップ整形中の揺動角度をB軸及びT軸の回転角度として第2・第3サーボモータ31,32のそれぞれのサーボモータ制御部で常に監視している。
【0029】
図4は本発明に係るスポット溶接ロボットの揺動角度の設定値幅を説明するグラフであり、縦軸はスポット溶接ロボットの揺動角度θ(鉛直線に対する片側の揺動角度の最大値であり、R軸、B軸、T軸の軸回転角度αに対応する。)、横軸は時間tを表す。
【0030】
図中の一点鎖線は、スポット溶接ロボットの電極チップをチップドレッサが正常に整形したときの、スポット溶接ロボットにおける揺動角度の経時変化データを元にして作成した上限設定値S1及び下限設定値S2を示し、これらの上限設定値S1と下限設定値S2との間の範囲(上限設定値S1及び下限設定値S2を含む。)が設定値幅である。
【0031】
例えば、グラフ中の実施例は、時間tがゼロ(即ち、チップドレッサの整形開始)から時間が経過したときに、スポット溶接ロボットの揺動角度θは上限設定値S1と下限設定値S2との間にあり、整形開始から時間tが所定時間t3経過してチップドレッサの整形を終了したときにも、上限設定値S1と下限設定値S2との間、即ち設定値幅内にある。
これを、電極チップの整形が正常に行われ、整形正常完了と判断する。
【0032】
また、グラフ中の比較例1の場合、チップドレッサの整形を開始してから、時間t1が経過したときにスポット溶接ロボットの揺動角度θが上限設定値S1を越えたので、チップドレッサの作動異常(前述の切削工具の切刃の破損・緩み等の異常)と判断する。
【0033】
更にまた、グラフ中の比較例2の場合、チップドレッサの整形を開始してから、時間t2が経過したときにスポット溶接ロボットの揺動角度θが下限設定値S2を下回ったので、チップドレッサの作動異常(前述の切粉、シーラー等による切刃の目詰まり、駆動モータの故障等の異常)と判断する。
【0034】
図5は本発明に係る電極チップ整形監視装置(第1実施形態)を示すブロック図である。
電極チップ整形監視装置70は、スポット溶接ロボット10(図1参照)に備えるサーボモータ制御部70Aと、このサーボモータ制御部70Aからの信号に基づいて電極チップの整形状態や整形時のチップドレッサの作動異常を判断する整形判断部70Bとからなる。
【0035】
サーボモータ制御部70Aは、第1サーボモータ24に流れる電流を検出して検出電流Ifとして出力する電流検出部71と、第1サーボモータ24の回転軸の回転位置(即ち、回転角度である。)を位置情報Pfとして出力するエンコーダ72と、このエンコーダ72より得られる位置情報Pfを微分して第1サーボモータ24の回転軸の回転速度を算出し速度情報Vfとして出力する微分手段73と、第1サーボモータ24を作動させるためのティーチングデータに基づく位置指令Pcを出力する作動指令装置74からの位置指令Pcとエンコーダ72からの位置情報Pfとを減算器76で減算して得られらた偏差信号ε1に基づいてモータ速度を算出してモータ速度指令Vcを出力する位置制御部77と、モータ速度指令Vcと微分手段73からの速度情報Vfとを減算器78で減算して得られた偏差信号ε2に基づいてモータ電流指令Icを出力する速度制御部81と、モータ電流指令Icと電流検出部71からの検出電流Ifとを減算器82で減算して得られた偏差信号ε3に基づいて第1サーボモータ24に流れる電流を制御する電流制御部83とからなる。
【0036】
整形判断部70Bは、スポット溶接ロボットの電極チップをチップドレッサが正常に整形したときのデータを元にした設定値幅であって、チップドレッサの切削工具により電極チップが受ける力によってスポット溶接ロボットが揺動するときのR軸、B軸、T軸の回転角度の上限設定値S1と下限設定値S2とを時系列で電極チップの整形開始から整形終了までを出力する位置情報設定部86と、上限設定値S1とサーボモータ制御部70Aの偏差信号ε1、下限設定値S2と偏差信号ε1をそれぞれ比較して、偏差信号ε1が上限設定値S1又は下限設定値S2と同一か、あるいは上限設定値S1と下限設定値S2との間にある場合には、整形が正常に完了したと判断し、上限設定値S1よりも大きい又は下限設定値S2よりも小さい場合、即ち、設定値幅(上限設定値S1〜下限設定値S2の範囲)を外れた場合は、整形異常(即ち、チップドレッサの作動異常)が発生したと判断する位置情報比較部87と、この位置情報比較部87による判断の結果(整形正常完了又は整形異常発生)を表示する表示手段88と、整形異常発生があった場合に警報を発する警報手段91とからなる。
【0037】
位置情報比較部87は、R軸からの偏差信号ε1と同様に、B軸及びT軸に係る第2サーボモータ、第3サーボモータのそれぞれのサーボモータ制御部からの偏差信号ε1も入力され、整形正常完了、整形異常発生が判断される。
【0038】
図6は本発明に係る電極チップ整形監視装置(第2実施形態)を示すブロック図である。
電極チップ整形監視装置95は、サーボモータ制御部70Aと、このサーボモータ制御部70Aからの信号に基づいて電極チップの整形状態や整形時の異常を判断する整形判断部70Cとからなる。
【0039】
整形判断部70Cは、スポット溶接ロボットの電極チップをチップドレッサが正常に整形したときのデータを元にした設定値幅であって、チップドレッサの切削工具により電極チップが受ける力によってスポット溶接ロボットが揺動するときのR軸、B軸、T軸の各サーボモータの負荷トルクの上限設定値T1と下限設定値T2とを時系列で電極チップの整形開始から整形終了まで出力する負荷トルク設定部96と、上限設定値T1とサーボモータ制御部70Aの検出電流Ifに対応した負荷トルク、下限設定値T2と検出電流Ifに対応した負荷トルクをそれぞれ比較して、検出電流Ifに対応した負荷トルクが上限設定値T1又は下限設定値T2と同一か、あるいは上限設定値T1と下限設定値T2との間にある場合には、整形が正常に完了したと判断し、上限設定値T1よりも大きい又は下限設定値T2よりも小さい場合即ち、設定値幅(上限設定値T1〜下限設定値T2の範囲)を外れた場合は、整形異常が発生したと判断する負荷トルク比較部97と、この負荷トルク比較部97による判断の結果(整形正常完了又は整形異常発生)を表示する表示手段88と、警報手段91とからなる。
【0040】
R軸、B軸、T軸の各サーボモータのモータ電流はモータ発生トルクに比例する(即ち、スポット溶接ロボットの電極チップ整形中の揺動角度が大きければ、この揺動を、例えば、直立状態にするために各サーボモータに大きなモータ電流が流れ、モータ発生トルクも大きくなる。)ことから、負荷トルク比較部97へ検出電流Ifを入力すれば、検出電流Ifは負荷トルクに変換される。
【0041】
負荷トルク比較部97は、R軸からの検出電流Ifと同様に、B軸及びT軸に係る第2サーボモータ、第3サーボモータのそれぞれのサーボモータ制御部からの検出電流Ifも入力され、整形正常完了、整形異常発生が判断される。
【0042】
以上の図1、図5及び図6で説明したように、本発明は第1に、スポット溶接ロボット10の電極チップ11,12をチップドレッサ13により整形するときの整形状態及びチップドレッサ13の作動状態を監視する方法であって、スポット溶接ロボット10に設けた各軸(即ち、R軸26の軸線26A、B軸27の軸線27A、T軸33の軸線33A)回りに電極チップ11,12を回動させるためのサーボモータ(第1サーボモータ24、第2サーボモータ31、第3サーボモータ32)における回転軸の回転位置、回転軸の回転速度及びモータ電流をそれぞれフィードバック制御するサーボモータ制御部70Aのフィードバック量(即ち、検出電流If、位置情報Pf、速度情報Vfのうちの少なくとも一つ)と、このフィードバック量に対応させて予め設定した設定値幅(即ち、(上限設定値S1〜下限設定値S2の範囲)又は(上限設定値T1〜下限設定値T2の範囲))とを比較することにより、電極チップ11,12の整形状態及びチップドレッサ13の作動状態を監視することを特徴とする。
【0043】
サーボモータ制御部70Aのフィードバック量(検出電流If、位置情報Pf、速度情報Vfの少なくとも一つ)と、予め設定した設定値幅とを比較することにより、電極チップ11,12の整形状態及びチップドレッサ13の作動状態を監視するので、電極チップ11,12の整形工程中に整形状態及び作動状態を監視することができ、特に整形確認工程、作動確認工程を増やす必要がなく、また、整形確認工程、作動確認工程のためのスポット溶接ロボット10のティーチングも必要がないから、サイクルタイムが長くならず、サイクルタイムに影響を与えることがことがない。また、チップドレッサ13の作動状態を特別な検出器なしで検出することが可能である。
【0044】
本発明は第2に、スポット溶接ロボット10の電極チップ11,12をチップドレッサ13により整形するときの整形状態及びチップドレッサ13の作動状態を監視する電極チップ整形監視装置70において、スポット溶接ロボット10の各軸(即ち、R軸26の軸線26A、B軸27の軸線27A、T軸33の軸線33A)に設けた駆動用サーボモータ(第1サーボモータ24、第2サーボモータ31、第3サーボモータ32)の作動を制御するサーボモータ制御部70Aと、このサーボモータ制御部70Aのフィードバック量(検出電流If、位置情報Pf、速度情報Vfの少なくとも一つ)が出力される比較部(即ち、位置情報比較部87又は負荷トルク比較部97)と、この比較部に予め設定された設定値幅とフィードバック量とを比較してフィードバック量が設定値幅を外れた場合に整形異常であるとして警報を発する警報手段91とを備えることを特徴とする。
【0045】
スポット溶接ロボット10に備えるサーボモータ制御部70Aと、位置情報比較部87(又は負荷トルク比較部97)と、警報手段91とを備えるので、スポット溶接ロボット10に、位置情報比較部87(又は負荷トルク比較部97)と警報手段91とを追加することにより、電極チップ整形監視装置70(又は電極チップ整形監視装置95)を構成することができ、電極チップ整形監視装置70(又は電極チップ整形監視装置95)の簡素化及び小型化を図ることができて、電極チップ整形監視装置70(又は電極チップ整形監視装置95)をスポット溶接ロボット10に付設することが可能であるため、省スペース化を図ることができる。
【0046】
尚、本実施形態では、図4及び図5に示したように、整形判断部70B,70Cでは、整形正常完了、整形異常発生を表示手段で表示させるようにしたが、これに限らず、表示と共に、図1に示したチップドレッサ13の駆動モータ51を停止させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電極チップ整形監視方法及び同監視装置は、スポット溶接ロボットに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るスポット溶接ロボットの電極チップを整形する状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る電極チップの整形状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る電極チップ整形の際の状態を説明する図である。
【図4】本発明に係るスポット溶接ロボットの揺動角度の設定値幅を説明するグラフである。
【図5】本発明に係る電極チップ整形監視装置(第1実施形態)を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る電極チップ整形監視装置(第2実施形態)を示すブロック図である。
【図7】従来のスポット溶接用電極チップの整形状態を確認する装置を示す断面図である。
【図8】従来のスポット溶接用電極チップの整形状態を検査する装置を示す第1説明図である。
【図9】従来のスポット溶接用電極チップの整形状態を検査する装置を示す第2説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10…スポット溶接ロボット、11,12…電極チップ、13…チップドレッサ、24,31,32…サーボモータ(第1サーボモータ、第2サーボモータ、第3サーボモータ)、26A,27A,33A…軸(軸線)、70,95…電極チップ整形監視装置、70A…サーボモータ制御部、87,97…比較部(位置情報比較部、負荷トルク比較部)、91…警報手段、If,Pf,Vf…フィードバック量(検出電流、位置情報、速度情報)、S1,T1…上限設定値、S2,T2…下限設定値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット溶接ロボットの電極チップをチップドレッサにより整形するときの整形状態及び前記チップドレッサの作動状態を監視する方法であって、
前記スポット溶接ロボットに設けた軸回りに前記電極チップを回動させるためのサーボモータにおける回転軸の回転位置、回転軸の回転速度及びモータ電流をそれぞれフィードバック制御するサーボモータ制御部のフィードバック量と、このフィードバック量に対応させて予め設定した設定値幅とを比較することにより、前記電極チップの整形状態及び前記チップドレッサの作動状態を監視することを特徴とするスポット溶接ロボットの電極チップ整形監視方法。
【請求項2】
スポット溶接ロボットの電極チップをチップドレッサにより整形するときの整形状態及び前記チップドレッサの作動状態を監視する装置において、
前記スポット溶接ロボットの各軸に設けた駆動用サーボモータの作動を制御するサーボモータ制御部と、このサーボモータ制御部のフィードバック量が出力される比較部と、前記フィードバック量に対応させて前記比較部に予め設定された設定値幅と前記フィードバック量とを比較して、前記フィードバック量が前記設定値幅を外れた場合に前記チップドレッサの作動異常であるとして警報を発する警報手段とを備えることを特徴とするスポット溶接ロボットの電極チップ整形監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−341271(P2006−341271A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168858(P2005−168858)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】