説明

スライドレールおよびそれを有する画像形成装置

【課題】少ない部品点数でスライド性と耐久性を両立したスライドレールおよびそれを有する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のスライドレールは,アウターレールとインナーレール10とを互いにスライド可能に組み合わせたものである。本発明におけるインナーレール10は,一端に端部14を有し,残部が主部22となっている。端部14には,頂面部18と,その両サイドの端部側壁部23とが設けられている。主部22には,いずれも頂面部18と,その両サイドの第1側壁部19,棚状部20,および第2側壁部21とが設けられている。頂面部18は,端部14と主部22とにわたって連続している。ここで,端部側壁部23と第1側壁部19とは繋がっている。すなわち,端部14と主部22とは,頂面部18だけではなく側壁部(23および19)でも繋がっている。また,頂面部18には,ビード部30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,第1の部材と第2の部材とを互いにスライド可能に組み付けるスライドレールに関する。より詳細には,例えば画像形成装置における装置本体と画像形成ユニットとを互いにスライド可能に組み付ける用途に好適なスライドレール,およびその画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,各種の装置類においては,その構成要素の一部を装置本体に対して移動可能に設けることが行われている。その目的としては例えば,当該構成要素の交換や整備の便宜がある。その場合,当該構成要素をユニット化して装置本体から引き出し可能に設けることになる。すなわち,ユニット化された構成要素を,本来の動作位置である装置本体内の位置と,整備時の位置である引き出し位置との間でスライド移動できるように設けるのである。そのためにスライドレールが用いられる。例えば画像形成装置にこのようにされているものがある(特許文献1等)。
【0003】
また,収納容器等,整備という観点でなくそのもの本来の必要上,格納状態と引き出し状態とを取る必要があるものもある。このようなものでも,容器部分は外形部分に対してスライド可能であり,スライドレールが用いられている(特許文献2等)。さらに,格納状態と引き出し状態ということではないが,個々のユーザの体格にフィットさせるために部材の位置調整をする必要のあるものもある。自動車のシートがその例で,そこにもスライドレールが用いられている(特許文献3等)。
【0004】
スライドレールは一般的に,ともに長尺状のアウターレールとインナーレールとをスライド可能に組み合わせたものである。アウターレールおよびインナーレールがそれぞれ2つの部材の一方に固定されることにより,2つの部材を互いにスライド可能に組み付けるのである。従来の一般的なスライドレールのインナーレールの先端部分の形状を,図10〜図12に示す。図10と図11とは斜視図であり,互いに裏側から見た図である。図12は平面図である。これらの図に示すインナーレール70は,長尺状の平板を成形してなるものである。このインナーレール70の形状は,端部71と主部72とで異なっている。
【0005】
端部71におけるインナーレール70は,平板部73と,その両サイドの端部側壁部74とにより構成されている。両サイドの端部側壁部74はともに,もともとの平板の一部を,平板部73の同一面側にほぼ垂直に折り曲げたものである。一方,主部72におけるインナーレール70も,平板部73と,その両サイドの主部側壁部75とにより構成されている。平板部73は,端部71と主部72とにわたって連続している。主部側壁部75も,もともとの平板の一部を平板部73の同一面側に折り曲げたものである点では端部側壁部74と共通する。ただし主部側壁部75は,平板部73との間の折り曲げ箇所の上方でさらに2箇所で折り曲げられている。これにより主部側壁部75は,下段部76と中段部77と上段部78とによる,断面形状にてクランク状をなす形状となっている。
【0006】
ここで,平板部73から見て,端部側壁部74の突出高さH1は,下段部76の突出高さH2より大きい。また,端部側壁部74と主部側壁部75との間には,スリット79が形成されている。スリット79により,端部側壁部74と主部側壁部75とは完全に分離されている。スリット79は,平板部73にも少し食い込んでいる。このようなインナーレール70を,インナーレール70より少し大きい断面形状で同様に長尺状のアウターレールの中にスライド可能に挿入したものがスライドレールである。そしてアウターレールに,主部側壁部75とは緩衝しないが端部側壁部74と緩衝する部位が設けられている。その部位と端部側壁部74との当接により,インナーレール70のスライド範囲が規制されるようになっている。これにより,2つの部材がスライドしつつも分離はないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−37677号公報
【特許文献2】特開2002−17486号公報
【特許文献3】特開2010−100077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,前述の従来のスライドレールには,次に説明する問題点があった。すなわち,端部側壁部74の強度が弱いのである。一方,端部側壁部74は前述のように,アウターレールの一部分と当接することによりスライド範囲を規制する機能を有する。したがって,端部側壁部74がアウターレールの当該部分と当接する頻度はかなりあり,このために端部側壁部74が変形してしまうのである。これによりスライド範囲を規制する機能が失われてしまう。よって,インナーレールがアウターレールから抜けてしまうことになる。つまり耐久性という点で弱かった。特に,2つの部材のうちの可動部材が重量物である場合にその傾向が強かった。また,玉軸受けを用いるタイプのものもあるが,部品点数が多く構造が複雑であった。
【0009】
本発明は,前記した従来のスライドレールが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,少ない部品点数でスライド性と耐久性を両立したスライドレールおよびそれを有する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のスライドレールは,アウターレールと,インナーレールとを有し,インナーレールがアウターレール内に長手方向にスライド可能に収容されてなるものであって,インナーレールは,幅方向中央に位置し長手方向に連続する頂面部と,頂面部における長手方向の一方の端部以外の部分の幅方向両側に隣接して設けられ,アウターレールの方に向かって折り曲げられた主部側壁部と,主部側壁部における頂面部と反対側の縁辺に幅方向外向きに繋がる外縁部と,頂面部における前記一方の端部の部分の幅方向両側に隣接して設けられ,アウターレールの方に向かって折り曲げられた端部側壁部とを有し,端部側壁部の高さ方向の寸法が主部側壁部の高さ方向の寸法より大きく,端部側壁部と主部側壁部とが繋がっており,頂面部のうち端部側壁部に隣接する部分における幅方向中間の箇所に,長手方向に沿った畝状屈曲部が形成されているものであり,アウターレールは,幅方向中央に位置し長手方向に連続する底面部と,底面部の幅方向両側に隣接して設けられ,インナーレールの方に向かって折り曲げられ,インナーレールのうち外縁部を覆う収納部とを有するものである。
【0011】
このスライドレールでは,インナーレールのうち端部における端部側壁部と,端部以外の部分における主部側壁部とが繋がっている。つまり,端部と端部以外の部分とが,頂面部ばかりでなく側壁部(端部側壁部および主部側壁部)でも繋がっている。また,頂面部のうち端部側壁部に隣接する部分に畝状屈曲部が形成されている。これらにより端部が十分な強度を有し,耐久性に優れている。このため端部の変形が起こりにくい。
【0012】
本発明のスライドレールでは,畝状屈曲部が,頂面部のうち端部側壁部に隣接する部分から主部側壁部に隣接する部分に及んで形成されていることが望ましい。畝状屈曲部がこのように形成されていることにより,端部側壁部に隣接する部分と主部側壁部に隣接する部分との間の領域が効果的に補強されるからである。
【0013】
本発明のスライドレールでは,アウターレールが,底面部の一部に設けられ,インナーレールをアウターレールに対してスライドさせたときに端部側壁部における主部側壁部側の端面と当接することによりインナーレールのスライド範囲の一端を規制するストッパ部を有することが望ましい。このようなものでは端部側壁部における主部側壁部側の端面とストッパ部との当接により,インナーレールに衝撃が加えられる。しかしながら前述のようにインナーレールは補強されているので,衝撃に対する耐性は十分である。
【0014】
また,本発明の画像形成装置は,装置本体と,装置本体から引き出し可能な画像形成ユニットと,画像形成ユニットを装置本体にスライド可能に搭載する前述のいずれかのスライドレールとを有し,インナーレールとアウターレールとのうち一方が装置本体に固定され,他方が前記形成ユニットに固定されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,少ない部品点数でスライド性と耐久性を両立したスライドレールおよびそれを有する画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態の画像形成装置における画像形成ユニットの引き出し部分の構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態の画像形成装置に用いられるスライドレールを示す斜視図である。
【図4】実施の形態のスライドレールの断面図である。
【図5】実施の形態のスライドレールのインナーレールの第1端部付近の斜視図(その1)である。
【図6】実施の形態のスライドレールのインナーレールの第1端部付近の斜視図(その2)である。
【図7】実施の形態のスライドレールのインナーレールの第1端部付近の斜視図(その3)である。
【図8】実施の形態のスライドレールのアウターレールの一方の端部付近の斜視図(その1)である。
【図9】実施の形態のスライドレールのアウターレールの一方の端部付近の斜視図(その2)である。
【図10】従来のスライドレールのインナーレールの端部形状を示す斜視図(その1)である。
【図11】従来のスライドレールのインナーレールの端部形状を示す斜視図(その2)である。
【図12】従来のスライドレールのインナーレールの端部形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像形成装置であって,感光体およびその周辺機器をユニット化して本体から引き出し可能に構成したものに本発明を適用したものである。そのユニット部分の引き出し機構に本発明のスライドレールを用いている。
【0018】
図1に本形態の画像形成装置の全体構成を示す。図1の画像形成装置1は,給紙部2,画像形成部3,排紙部4,読取部5などを有している。このうちの画像形成部3は,4つの画像形成部6Y,6M,6C,6Kと,中間転写ベルト7と,露光器31とを有している。各画像形成部6Y,6M,6C,6Kはそれぞれ,感光体や現像器を含んで構成されており,当該色のトナー像を形成するものである。これにより,読取部5で原稿から取得した画像データに基づき,画像形成部6Y,6M,6C,6Kでイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色のトナー像を形成し,それらのトナー像が中間転写ベルト7上に重ね合わせられるようになっている。さらに,給紙部2から供給された用紙に,重ね合わせられたフルカラートナー画像が転写され,その用紙は定着を経て排紙部4に排出されるようになっている。
【0019】
ここで,ブラック色(K)の画像形成部6Kは,装置本体から引き出し可能なユニット構成とされている。そこで以下,画像形成部6Kを画像形成ユニット6Kということとする。画像形成ユニット6Kの引き出し構造を,図2により説明する。画像形成装置1には図2に示すように,長尺状の2本のスライドレール8が互いに平行に備えられている。2本のスライドレール8はいずれも,アウターレール9とインナーレール10とにより構成されている。アウターレール9とインナーレール10とはいずれも長尺状のものであり,長尺方向に互いにスライド可能である。
【0020】
アウターレール9は,取付ステー11を介して画像形成装置1の本体に対して固定されている。インナーレール10には,ユニット載置台12が取り付けられている。ユニット載置台12は,両方のスライドレール8のインナーレール10に跨って取り付けられている。このため,両方のインナーレール10は,画像形成装置1の本体に対して揃ってスライド移動するようになっている。ユニット載置台12はむろん,画像形成ユニット6Kを載置するための部材である。図2では,インナーレール10の大部分がアウターレール9から引き出されている。これは,画像形成ユニット6Kを本体から引き出した状況,すなわち画像形成ユニット6Kの交換等の種々のメンテナンスを行う状況でのスライドレール8を示している。
【0021】
単独でのスライドレール8を図3に示す。図3に示すスライドレール8では,インナーレール10の大部分がアウターレール9内に収納されている。この状態は,画像形成装置1で言えば,画像形成ユニット6Kを本体内に収納した状態,すなわち画像形成を実行する動作状態に相当する。図3では,アウターレール9における図中右下端に,第1ストッパ13が設けられているのが見えている。第1ストッパ13は,インナーレール10のスライド範囲の一端を規制する部位であり,インナーレール10がアウターレール9に対して図3中で右下向きに突出するのを防いでいる。第1ストッパ13は,図2中ではアウターレール9の右上端に位置し,画像形成装置1では装置本体の奥行き方向奥側に位置する。図3ではまた,第1ストッパ13に隣接して,インナーレール10の一方の端部である端部14が見えている。端部14は,図2中では矢印Aの辺りに位置する。なお,スライド範囲の反対側の一端の規制については後述する。
【0022】
スライドレール8の,図3中のB−B位置での断面図を図4に示す。B−B位置でのアウターレール9は,底面部15と,側壁部16と,縁辺部17とを有している。側壁部16および縁辺部17は,底面部15に対し,幅方向(長手方向に対し交差する方向)の両側に設けられている。側壁部16および縁辺部17は,もともとは底面部15とともに全体として平板であったものをプレス加工して折り曲げたものである。2つの側壁部16は,平板の一部を底面部15に対し同じ面側に折り曲げた部位である。縁辺部17は,側壁部16の上端付近をさらに,幅方向内側向きに折り曲げたものである。縁辺部17と縁辺部17との間には隙間がある。また,前出の第1ストッパ13は,底面部15の一部を側壁部16と同じ側に折り曲げたものである。
【0023】
インナーレール10もまた,もともとは平板であったものをプレス加工して折り曲げたものである。B−B位置でのインナーレール10は,頂面部18と,第1側壁部19と,棚状部20と,第2側壁部21とを有している。幅方向両側の第1側壁部19は,平板の一部を頂面部18に対し同じ面側に折り曲げた部位である。棚状部20は,第1側壁部19の上辺から幅方向外側に,頂面部18と平行に設けられた部位である。第2側壁部21は,棚状部20の外辺から上方に形成された部位である。第2側壁部21および棚状部20は,アウターレール9の側壁部16および縁辺部17に覆われている。
【0024】
スライドレール8は,上記のアウターレール9とインナーレール10とを組み合わせたものである。図4から明らかなように,アウターレール9の底面部15と,側壁部16と,縁辺部17とで区画される空間内に,インナーレール10が収納されている。ただし,インナーレール10のうち頂面部18は,縁辺部17と縁辺部17との間の隙間から外部に露出している。アウターレール9の側壁部16および縁辺部17,特に縁辺部17は,インナーレール10が図4右向きにアウターレール9から脱出することを防止している。
【0025】
インナーレール10についてさらに説明する。単独の状態でのインナーレール10における端部14付近の斜視図を図5〜図7に示す。インナーレール10は,一端に端部14を有し,残部が主部22となっている。インナーレール10の形状は,端部14と主部22とで異なっている。なお,インナーレール10における端部14と反対側の端部は,特段,主部22と異なる形状とはされていない。
【0026】
端部14におけるインナーレール10は,前出の頂面部18と,その両サイドの端部側壁部23とにより構成されている。両サイドの端部側壁部23はともに,もともとの平板の一部を,頂面部18の同一面側にほぼ垂直に折り曲げたものである。さらに端部14における頂面部18には,ビード部30が形成されている。ビード部30は,頂面部18の一部を畝状に,アウターレール9の方に向かって屈曲させた部位である。ビード部30は,頂面部18における幅方向中央に,インナーレール10の長手方向と平行に形成されている。ビード部30は,部分的に主部22にも及んで形成されている。なお図4は,ビード部30が形成されていない箇所における断面図である。
【0027】
一方,主部22におけるインナーレール10は,いずれも前出の頂面部18と,第1側壁部19と,棚状部20と,第2側壁部21とにより構成されている。このうち第1側壁部19,棚状部20,第2側壁部21は,頂面部18の両サイドにそれぞれ設けられている。頂面部18は,端部14と主部22とにわたって連続している。端部側壁部23,第1側壁部19,棚状部20,第2側壁部21はいずれも,もともとの平板の一部を頂面部18の同一面側に折り曲げたものである点で共通する。ただし,第1側壁部19,棚状部20,第2側壁部21は全体として,図4に示したように,断面形状にてクランク状をなしている。
【0028】
ここで,頂面部18から見て,端部側壁部23の突出高さH1は,第1側壁部19の突出高さH2より大きい。また,端部側壁部23と,棚状部20および第2側壁部21との間には,スリット24が形成されている。スリット24により,端部側壁部23と,棚状部20および第2側壁部21とは分離されている。ただしスリット24は,第1側壁部19には及んでいない。このため,端部側壁部23と第1側壁部19とは繋がっている。また,端部側壁部23における主部22とは反対側の端面28(図6中左上側の端面)は,前出の第1ストッパ13と当接する面である。一方,端部側壁部23における主部22側の端面29(図7中左側の端面)は,後出の第2ストッパ26と当接する面である。なお,頂面部18に開けられている穴25は,図2に示したユニット載置台12をネジ止めするための穴である。
【0029】
アウターレール9について説明する。単独の状態でのアウターレール9における一方の端部付近の斜視図を図8,図9に示す。アウターレール9は,その全長にわたり,前出の底面部15と,側壁部16と,縁辺部17とで構成されている。インナーレール10における端部14のような,他の箇所と異なる構成の部分はない。ただし前述のように,一方の端部には図3に示した第1ストッパ13が形成されている。図8,図9に示しているのは,第1ストッパ13とは反対側の端部の付近である。
【0030】
一方,図8,図9中には第2ストッパ26が現れている。第2ストッパ26は,底面部15の一部を側壁部16と同じ側に折り曲げたものである。第2ストッパ26は,インナーレール10のスライド範囲の一端を規制する部位であり,インナーレール10がアウターレール9に対して図2中で左下向きにさらに移動してアウターレール9から脱落してしまうのを防いでいる。なお,底面部15に開けられている穴25は,図2に示した取付ステー11にアウターレール9をネジ止めするための穴である。
【0031】
第2ストッパ26は,図2中では取付ステー11等に隠れて見えないが,矢印Dで指される辺りに位置している。この位置は,同図中の矢印Aで示される位置のすぐ左下の位置である。すなわち図2中のスライドレール8では,インナーレール10がアウターレール9に対して,図2中左下向きにスライド範囲のいっぱいまでスライドした状態となっている。言い替えるとこの状態では,端部側壁部23の端面29が第2ストッパ26と当接している。このようにして,第1ストッパ13および第2ストッパ26により,インナーレール10のスライド範囲の両端が規制されている。
【0032】
なお,スライドレール8において第2ストッパ26は常時,インナーレール10の第1側壁部19および棚状部20と対向しているが,これらの部材に接触することはない。つまり第2ストッパ26の高さは,端部側壁部23とは当接するが第1側壁部19等には接触しない高さとされている。前述のように端部側壁部23の突出高さH1が第1側壁部19の突出高さH2より大きいので,第2ストッパ26の高さをこのように設定することができる。
【0033】
上記のように構成された本形態のスライドレール8では,インナーレール10が次の特徴を有している。すなわち,端部側壁部23と第1側壁部19とが,端部14と主部22との間のスリット24により分断されることなく,繋がった一体のものとなっていることである。つまり,端部14と主部22とは,頂面部18だけではなく側壁部(23および19)でも繋がっている。このため,端部と主部とが頂面部のみで繋がっている従来のものと比較して,端部14の強度が著しく高い。また,端部14から主部22に掛けて底面部にビード部30が設けられていることも,端部14を強化している。したがって端部14は,第1ストッパ13や第2ストッパ26との当接を繰り返しても変形しにくい。つまり耐久性が高い。
【0034】
このことは,従来のスライドレールと比較してみれば明らかである。図10〜図12に示した従来のスライドレール70では,主部72と端部71とが,平板部73のみで繋がっている。このため主部72と端部71との間の接続部分の強度が弱かった。特に,端部71を主部72から離間させる向きの衝撃に対して弱かった。このような衝撃が加わるのは,画像形成ユニットをスライド範囲の限界まで引き出したときである。つまり本形態で言えば端部側壁部23の端面29と第2ストッパ26とが当接したときである。このため従来のスライドレール70では,耐久使用により,端部71の変形が起こりやすく,スライド範囲の規制機能が失われてしまったり,スライド動作自体のスムーズさが失われてしまったりした。
【0035】
本形態のスライドレール8では従来のもののような問題はない。上記のように端部14の強度が十分に高いので,画像形成ユニット6Kの引き出し動作や収納動作を勢いよく行っても,端部14はほとんど変形しない。また,想定されない操作をユーザがした場合でも,スライドレール8に破損,破壊が生じるおそれはまずない。また,本形態のスライドレール8は,基本的にアウターレール9とインナーレール10との2部品だけで構成されており,玉軸受け等を用いるものと比較して構成が簡単で部品点数も少ない。このようにして,簡単な構成でかつ十分な強度を持つスライドレール8およびそれを用いた画像形成装置1が実現されている。
【0036】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【0037】
例えば,インナーレール10における第1側壁部19,棚状部20,第2側壁部21の具体的形状は,必ずしもこの通りでなくてもよい。特に,第2側壁部21は必須のものではない。また,ビード部30は,必ずしも主部22に及んで形成されている必要はない。最低限,端部14の一部に形成されていれば補強効果はある。ただし,主部22に及んで形成されていた方がよりよい。主部22と端部14との間の領域が効果的に補強されるからである。
【0038】
また,主部22における第1側壁部19同士の間隔と,端部14における端部側壁部23同士の間隔とは,同一でもよいし,異なっていてもよい。異なる場合,端部側壁部23同士の間隔の方が小さいことが望ましい。その方が,第1ストッパ13や第2ストッパ26が小さくて済む。また,スリット24は,部分的にであれば第1側壁部19に及んで形成されていてもよい。すなわち,第1側壁部19と端部側壁部23とが部分的にでも直接に繋がっていればよい。
【0039】
また,アウターレール9についても,側壁部16,縁辺部17の具体的形状は,必ずしもこの通りでなくてもよい。インナーレール10が図4中右向きにアウターレール9から脱出することを防止でき,かつ,インナーレール10のスライド移動を妨げない形状であればよい。例えば,インナーレール10における第1側壁部19,棚状部20,第2側壁部21の具体的形状に合わせてもっと複雑な形状としてもよい。また,第1ストッパ13は必須のものではない。例えば,インナーレール10が図3中で右下向きに突出することが,画像形成装置1の全体構成により防止されているならば,第1ストッパ13は不要である。また,インナーレール10のそのような突出自体が許容される用途でも,第1ストッパ13は不要である。
【0040】
また,画像形成装置1におけるアウターレール9とインナーレール10との関係を逆にすることも可能である。すなわち,インナーレール10を装置本体に固定し,アウターレール9に画像形成ユニット6Kを搭載するようにしてもよい。さらに,画像形成装置1におけるスライドレール8の適用箇所は,画像形成ユニット6Kには限定されない。他の画像形成部6Y,6M,6Cをもユニット化してスライドレール8を適用してもよい。また,画像形成ユニット自体も,感光体と現像器とを含むものには限定されない。トナー容器を含んでいてもよいし,逆に,感光体部分と現像器部分とが別々にユニット化されたものでもよい。トナー容器単体や給紙カセットであってもよい。1本のスライドレールで可動要素を搭載する構成であってもよい。画像形成装置1自体についても,読取部5を有しない機器や,4サイクル機,モノクロ機,公衆回線との通信機能を有する機器等であってもよい。さらには,画像形成装置以外の種々の機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成装置
6K 画像形成ユニット
8 スライドレール
9 アウターレール
10 インナーレール
15 底面部
17 縁辺部
18 頂面部
19 第1側壁部(主部側壁部)
20 棚状部(外縁部)
23 端部側壁部
26 第2ストッパ
30 ビード部(畝状屈曲部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターレールと,インナーレールとを有し,前記インナーレールが前記アウターレール内に長手方向にスライド可能に収容されてなるスライドレールにおいて,
前記インナーレールは,
幅方向中央に位置し長手方向に連続する頂面部と,
前記頂面部における長手方向の一方の端部以外の部分の幅方向両側に隣接して設けられ,前記アウターレールの方に向かって折り曲げられた主部側壁部と,
前記主部側壁部における前記頂面部と反対側の縁辺に幅方向外向きに繋がる外縁部と,
前記頂面部における前記一方の端部の部分の幅方向両側に隣接して設けられ,前記アウターレールの方に向かって折り曲げられた端部側壁部とを有し,
前記端部側壁部の高さ方向の寸法が前記主部側壁部の高さ方向の寸法より大きく,
前記端部側壁部と前記主部側壁部とが繋がっており,
前記頂面部のうち前記端部側壁部に隣接する部分における幅方向中間の箇所に,長手方向に沿った畝状屈曲部が形成されているものであり,
前記アウターレールは,
幅方向中央に位置し長手方向に連続する底面部と,
前記底面部の幅方向両側に隣接して設けられ,前記インナーレールの方に向かって折り曲げられ,前記インナーレールのうち前記外縁部を覆う収納部とを有することを特徴とするスライドレール。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドレールにおいて,前記畝状屈曲部は,
前記頂面部のうち前記端部側壁部に隣接する部分から前記主部側壁部に隣接する部分に及んで形成されていることを特徴とするスライドレール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスライドレールにおいて,前記アウターレールは,
前記底面部の一部に設けられ,前記インナーレールを前記アウターレールに対してスライドさせたときに前記端部側壁部における前記主部側壁部側の端面と当接することにより前記インナーレールのスライド範囲の一端を規制するストッパ部を有することを特徴とするスライドレール。
【請求項4】
装置本体と,
前記装置本体から引き出し可能な画像形成ユニットと,
前記画像形成ユニットを前記装置本体にスライド可能に搭載する請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載のスライドレールとを有し,
前記インナーレールと前記アウターレールとのうち一方が前記装置本体に固定され,他方が前記画像形成ユニットに固定されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−257628(P2011−257628A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132800(P2010−132800)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】