説明

スライド扉用安全装置

【課題】コスト高を招くことなく、スライド扉と共に独立したスライド扉用安全装置を提供する。
【解決手段】本発明は、空気の通る内部通路hを有しこの通路hの排出口hoを側面に形成したロッド2と、ロッド2を摺動可能に保持して排出口hoを開閉する取付基部3と、この基部3が固定されるスライド扉10と、スライド扉10に固定した基部3に対して排出口hoが閉じられる位置に付勢する弾性部材4と、通路hにガスを供給するガス供給手段と、排出口hoがスライド扉10との相対運動によって開かれることにより、スライド扉10に障害物が接触したことを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド扉を閉じる際に、スライド扉に障害物が接触したことを検知することにより、安全且つ素早い対応を取ることができるスライド扉用安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライド扉には、安全装置を付加したものがある。こうした安全装置としては、例えば、射出成形機の型締装置を操作するにあたり、扉が開いた状態では型締装置を停止させ、また、扉が閉じた状態では型締装置を稼働させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭58−180027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の安全装置は、扉の動きを機械的に型締装置の連動させる構成であり、扉と扉内部に収容された装置本体との関係が一体不可分であるため、用途の異なる様々な装置に応じて安全装置の態様も様々に変更する必要がある。このため、装置本体に対して別個独立し、様々な種類の装置に適用可能な安全装置についての要求が生じている。
【0004】
これに対し、他の安全装置としては、図3(a)のように、工作機械M内の作業スペースWsの正面両側に、2つの長尺部材30を配置し、この長尺部材30にそれぞれ複数の感知センサ31を設けることで障害物の存在を認識し、スライド扉10が破線で示すように閉まるときに障害物を認識したら、工作機械Mを停止させるものが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記の安全装置は、高価な感知センサを必要とするため、コストがかかるという問題がある。また、こうした安全装置は、人間の手が挟まってしまうことを防止するための対策を考慮すると、感知センサの配置間隔を短くしなければならず、感知センサの個数が多くなり、装置全体のコスト高を招くという問題がある。
【0006】
本発明の解決すべき課題は、様々な種類の物を収納し、又は、1つの空間を2つに仕切るスライド扉の安全装置をスライド扉と共に独立して提供するにあたり、コスト高を招くことにあり、
本発明の目的とするところは、コスト高を招くことなく、スライド扉と共に独立したスライド扉用安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明であるスライド扉用安全装置は、スライド扉に固定される取付基部に摺動可能に保持されるロッドと、このロッドが取付基部に対して移動したことを検知する検知手段とを有し、ロッドが取付基部に対して移動したことをもって、スライド扉に障害物が接触したことを認識することを特徴とするものである。
【0008】
検知手段としては、少なくとも、ロッドが取付基部に対して移動したことを検知できるものであれば、例えば、単体の位置検出センサを採用できるが、本発明に係る検知手段としては、ロッドの側面に、このロッドの内部を通るガスを排出する排出口を形成し、この排出口が取付基部との相対運動によって解放されることで、ロッドが取付基部に対して移動したことを検知するものであることが好ましい。
【0009】
また、この場合、ロッドは、取付基部との間に弾性部材が介在し、この弾性部材の復元力(弾性力)によって取付基部に対してその排出口を閉じる位置に位置決めさせるフランジ部を有し、弾性部材の復元力(弾性力)に抗して移動させることによって、当該取付基部に対してその排出口を開くものであることが好ましい。
【0010】
更に、この場合、ロッドは、その後端側に、弾性部材の一端を保持する支持部材を有し、また、弾性部材の他端は、ロッドを摺動可能に保持する貫通孔を有した座部材を介して取付基部に弾性保持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スライド扉を閉じる際、スライド扉に固定される取付基部とロッドとは一体に移動するが、スライド扉に障害物が接触すると、ロッドのみがスライド扉に対して移動するため、この相対移動を検知するだけで、スライド扉に障害物が接触したことを認識することができる。
【0012】
即ち、本発明の安全装置は、スライド扉と共に独立したものであることから、様々な状況に応じて使用可能であって高い汎用性を有する。しかも、本発明の安全装置は、ロッドが取付基部に対して移動したことを検知し、これをもって、スライド扉に障害物が接触したことを認識できるので、ロッドが取付基部に対して移動したことを検知するための検知手段以外に、他の検知手段を用いる必要がないから、安価な安全装置を提供することができる。
【0013】
従って、本発明によれば、コスト高を招くことなく、スライド扉と共に独立したスライド扉用安全装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明に係る検知手段が、ロッドの側面に、このロッドの内部を通るガスを排出する排出口を形成し、この排出口が取付基部との相対運動によって解放されることで、ロッドが取付基部に対して移動したことを検知するものであれば、高価なセンサを用いることなく、装置全体のコスト高を更に抑制することができる。
【0015】
更に、この場合、本発明に係るロッドは、取付基部との間に弾性部材が介在し、この弾性部材の復元力(弾性力)によって取付基部に対してその排出口を閉じる位置に位置決めさせるフランジ部を有し、弾性部材の復元力(弾性力)に抗して移動させることによって、当該取付基部に対してその排出口を開くものであれば、障害物を排除すれば、ロッドがその排出口を閉じる位置に自動的に復帰するため、リセットする際の作業性を更に向上させることができる。
【0016】
なお、本発明によれば、ロッドの位置決めという比較的簡単な作業で、安全装置を動作可能状態にセットし、又は、リセットすることができ、その場合、ロッドの位置決めを、障害物の接触を検知する度に離脱及び取り付けを繰り返す必要のある爪部材を用いて行うことができる。
【0017】
しかしながら、上記構成のように、ロッドの位置決めとして弾性部材の復元力を用いれば、安全装置のセット又はリセット時における作業性がよい。加えて、かかる構成によれば、障害物の接触を検知する度に離脱及び取り付けを繰り返す爪部材を用いないので、安全装置の耐久性も向上する。
【0018】
従って、ロッドの位置決めとして弾性部材の復元力を用いれば、コスト抑制、安全装置を動作可能状態にセットし、又は、リセットする際の作業性及び耐久性という異なる要求を同時に実現しつつ、スライド扉を閉じる際に障害物が接触したことを検知して、素早い対応が可能なスライド扉用安全装置を提供することができる。
【0019】
加えて、この場合、本発明に係るロッドは、その後端側に、弾性部材の一端を保持する支持部材を有し、また、本発明に係る弾性部材の他端は、ロッドを摺動可能に保持する貫通孔を有した座部材を介して取付基部に弾性保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好適な形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一形態である安全装置1を備えたスライド扉10を上側から示す要部断面図であり、また、図2は、スライド扉10が障害物に接触したことを同形態の安全装置1で検知したときの状態を上側から示す要部断面図である。
【0022】
なお、以下の説明において、図に符号Dで示す方向が、スライド扉10を閉じる向きである。また、本形態の安全装置1を備えたスライド扉10は、図3に示すような工作機械Mの安全扉として採用した場合として説明する。
【0023】
符号2は、空気の通る内部通路hを有しこの内部通路hの排出口hoを側面に形成したロッドである。ロッド2は、その先端部分をシリンダロッド2aとして区画する抜け止め用のフランジ2bを有し、このフランジ2bよりも後方側がロッド本体2cをなす。排出口hoは、ロッド本体2cの側面から開口されている。
【0024】
符号3は、ロッド2を摺動可能に保持してその排出口hoを開閉してスライド扉10の裏面に取り付けられる取付基部である。ロッド2と取付基部3との間は、ブッシュB及びパッキンPにより気密状態に保持されている。取付基部3は、スライド扉10に対して溶接等によって固定してもよいが、本形態では、ボルトに代表される締結要素Cを用いて着脱可能に固定されている。
【0025】
符号4は、図1に示すように、取付基部3に対してロッド2をその排出口hoが閉じられる位置に付勢するリターンスプリングに代表される弾性部材である。弾性部材4の一端は、ロッド2が摺動可能に保持される貫通孔5hを有した中空の座部材5を介して取付基部3で支持され、その他端は、ロッド2の後端側に一体に設けられた支持部材6で支持される。なお、図2において、座部材5は、一部断面で示し、また、支持部材6も、ロッド2と共に一部断面で示す。
【0026】
符号7は、ロッド2の内部通路hに、ガスの一例である空気を供給する手段としてのエアチューブ(ガス供給用チューブ)である。エアチューブ7の一端は、ナットnによって支持部材6に固定され、その他端は、コンプレッサや流体ポンプに接続されている。これにより、ロッド2の内部通路hに空気を供給することができる。
【0027】
符号21は、スライド扉10と独立した位置、例えば、工作機械Mの本体に設けられ、スライド扉10を完全に閉じたことを確認するための位置感知センサである。また、符号22も、スライド扉10と独立した位置に設けられ、スライド扉10が開いたことを確認するための位置感知センサである。
【0028】
位置感知センサ21,22からの信号はそれぞれ、CPUを搭載したコントロールユニット100に入力され、スライド扉10が完全に閉じているのか、開いているのかを判断することができる。なお、位置感知センサには、例えば、レーザーセンサを利用することができる。
【0029】
本発明によれば、スライド扉10を閉じる際、図1に示すように、スライド扉10とロッド2とは一体に移動するが、スライド扉10に障害物が接触すると、図2に示すように、ロッド2のみがスライド扉10に対して弾性部材Sの復元力(弾性力)に抗して移動することでロッド2の側面に形成した排出口hoから当該ロッド2の内部を通る空気が排出され、これにより、スライド扉10に障害物が接触したことを認識することができる。
【0030】
なお、スライド扉10に障害物が接触したことを検知するには、ロッド2の排出口hoが、取付基部3との相対運動、即ち、スライド扉10との相対運動によって開かれることで生じるエアチューブ7内の圧力の減少を検知すればよい。具体的には、スライド扉10に障害物が接触したことを検知する手段として、エアチューブ7に圧力スイッチSWを設け、ロッド2の排出口hoが開かれることで生じるエアチューブ7内の圧力の減少を圧力スイッチSWのON/OFF信号としてコントロールユニット100で検知することで、スライド扉10に障害物が接触したと判断する。
【0031】
スライド扉10に障害物が接触したことを検知した後は、コントロールユニット100からの指令により、工作機械Mの運転を停止する。これにより、スライド扉10の開閉に関わらず、工作機械Mを停止させることができる。
【0032】
加えて、スライド扉10の開閉を自動化した場合には、スライド扉10を停止させることができるので、作業者や物を誤って挟むことが無い。
【0033】
上述したように、本形態によれば、スライド扉10を閉じる際、スライド扉10に固定される取付基部3とロッド2とは一体に移動するが、スライド扉10に障害物が接触すると、ロッド2のみがスライド扉10に対して移動するため、この相対移動を検知するだけで、スライド扉10に障害物が接触したことを認識することができる。
【0034】
即ち、安全装置1によれば、スライド扉10と共に独立したものであることから、様々な状況に応じて使用可能であって高い汎用性を有する。しかも、安全装置1は、ロッド2が取付基部3に対して移動したことを検知し、これをもって、スライド扉10に障害物が接触したことを認識できるので、ロッド2が取付基部3に対して移動したことを検知するための検知手段以外に、他の検知手段を用いる必要がないから、安価な安全装置1を提供することができる。
【0035】
従って、本発明によれば、コスト高を招くことなく、スライド扉と共に独立したスライド扉用安全装置1を提供することができる。
【0036】
また、本形態に係る検知手段は、ロッド2の側面に、このロッド2の内部を通るエアを排出する排出口hoを形成し、この排出口hoが取付基部3との相対運動によって、図3に示すように解放されることで、ロッド2が取付基部3に対して移動したことを検知するものであるので、高価なセンサを用いることなく、装置1全体のコスト高を更に抑制することができる。
【0037】
更に、この場合、本発明に係るロッド2は、取付基部3との間に弾性部材4が介在し、この弾性部材4の復元力(弾性力)によって、図1に示すように、取付基部3に対してその排出口hoを閉じる位置に位置決めさせるフランジ2bを有し、弾性部材4の復元力(弾性力)に抗して移動させることによって、当該取付基部3に対してその排出口hoを開くものであれば、障害物を排除すれば、図1に示すように、ロッド2がその排出口hoを閉じる位置に自動的に復帰するため、リセットする際の作業性を更に向上させることができる。
【0038】
なお、安全装置1によれば、ロッド2の位置決めという比較的簡単な作業で、安全装置1を動作可能状態にセットし、又は、リセットすることができ、特に、上記構成のように、ロッド2の位置決めとして弾性部材4の復元力を用いれば、安全装置1のセット又はリセット時における作業性がよい。
【0039】
従って、ロッド2の位置決めとして弾性部材4の復元力を用いれば、コスト抑制、安全装置を動作可能状態にセットし、又は、リセットする際の作業性及び耐久性という異なる要求を同時に実現しつつ、スライド扉10を閉じる際に障害物が接触したことを検知して、素早い対応が可能なスライド扉用安全装置を提供することができる。
【0040】
加えて、この場合、本発明に係るロッド2は、その後端側に、弾性部材4の一端を保持する支持部材6を有し、また、本発明に係る弾性部材4の他端は、ロッド2を摺動可能に保持する貫通孔5hを有した座部材5を介して取付基部3に弾性保持することができる。
【0041】
上述したところは、本発明の好適な形態を例示するものであるが、当業者によれば、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明に係るスライド扉は、上述したように、コントロールユニット100等からの指令により、その開閉操作が自動的に制御されるものに限らず、手動操作によって開閉されるものであってもよい。この場合、スライド扉を閉じる際に、人や物を誤って挟むことが無いので有効である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、工作機械の安全扉に限らず、建築物としての扉にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一形態である安全装置を備えたスライド扉を上側から示す要部断面図である。
【図2】スライド扉が障害物に接触したことを同形態の安全装置で検知したときの状態を上側から示す要部断面図である。
【図3】本形態の安全装置を備えたスライド扉を、工作機械の安全扉として採用した場合を模式的に示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 安全装置
2 ロッド
2a シリンダロッド
2b 抜け止め用フランジ
2c ロッド本体
3 取付基部
4 弾性部材
5 ロッド用座部材
6 弾性部材支持部材
7 ガス供給用チューブ
10 スライド扉
C 締結要素
B ブッシュ
P パッキン
h ロッド内部通路
ho ロッド排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド扉に固定される取付基部に摺動可能に保持されるロッドと、このロッドが取付基部に対して移動したことを検知する検知手段とを有し、
ロッドが取付基部に対して移動したことをもって、スライド扉に障害物が接触したことを認識することを特徴とするスライド扉用安全装置。
【請求項2】
検知手段は、ロッドの側面に、このロッドの内部を通るガスを排出する排出口を形成し、この排出口が取付基部との相対運動によって解放されることで、ロッドが取付基部に対して移動したことを検知するものであることを特徴とする請求項1に記載のスライド扉用安全装置。
【請求項3】
ロッドは、取付基部との間に弾性部材が介在し、この弾性部材の復元力によって取付基部に対してその排出口を閉じる位置に位置決めさせるフランジ部を有し、弾性部材の復元力に抗して移動させることによって、当該取付基部に対してその排出口を開くものであることを特徴とする請求項2に記載のスライド扉用安全装置。
【請求項4】
ロッドは、その後端側に、弾性部材の一端を保持する支持部材を有し、また、
弾性部材の他端は、ロッドを摺動可能に保持する貫通孔を有した座部材を介して取付基部に弾性保持されることを特徴とする請求項3に記載のスライド扉用安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−30322(P2009−30322A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195094(P2007−195094)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】