スライド駆動機構およびこれを備える椅子の可動構造物のスライド装置
【課題】操作を容易にする。
【解決手段】ベース3に設けられたガイド4と、ガイド4に案内されて往復動されるスライダ8と、スライダ8を往復動させるようにベース3に対して往復動される牽引部材9と、牽引部材9を往復動させる操作手段2と、牽引部材9がスライダ8に対して中立位置10からロック解除距離Lだけ空移動すると牽引部材9をスライダ8に連結する連結手段11と、スライダ8をベース3に係止すると共に牽引部材9を中立位置10に向けて付勢する往方向弾性アーム12及び復方向弾性アーム13と、牽引部材9が中立位置10からロック解除距離Lだけ空移動する間に各弾性アーム12、13の係止を解除する往方向ロック解除凸部14及び復方向ロック解除凸部15を備えている。
【解決手段】ベース3に設けられたガイド4と、ガイド4に案内されて往復動されるスライダ8と、スライダ8を往復動させるようにベース3に対して往復動される牽引部材9と、牽引部材9を往復動させる操作手段2と、牽引部材9がスライダ8に対して中立位置10からロック解除距離Lだけ空移動すると牽引部材9をスライダ8に連結する連結手段11と、スライダ8をベース3に係止すると共に牽引部材9を中立位置10に向けて付勢する往方向弾性アーム12及び復方向弾性アーム13と、牽引部材9が中立位置10からロック解除距離Lだけ空移動する間に各弾性アーム12、13の係止を解除する往方向ロック解除凸部14及び復方向ロック解除凸部15を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内側の部材に沿って移動側の部材を操作手段の操作に連動してスライドさせるスライド駆動機構と、これを備える椅子の可動構造物のスライド装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、操作手段からの入力に対しては移動側部材と案内側部材との相対移動(スライド)は可能であるが、案内側部材側からの入力に対しては移動部材と案内側部材との相対移動が禁止されるスライド駆動機構と、これを備える椅子の可動構造物のスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の座の位置を前後調整可能にするスライド機構として、座受けにガイドレールを設け、このガイドレールに沿って座本体をスライド可能にする移動案内手段と、座受けに対する座本体の前後移動を規制するロック手段とを備えたものがある(特許文献1)。ロック手段は、座本体側のクッション支持体の底面に所定ピッチで多数の係合凹部を設け、当該係合凹部に座受け側に設けた係合凸部を係合させることで、座受けに対して座本体をロックするものである。
【0003】
座本体の位置調整を行う場合には、先ず、座本体の側方に突出している操作レバーを降ろすように操作することで係合凸部を横に倒して係合凹部から外した後、操作レバーの操作を維持しながら、座本体を押したり引いたりして前後移動させる。そして、所望の位置まで移動させた後、操作レバーの操作を解除する。これにより、係合凸部が起立して係合凹部に係合し、座本体が座受けにロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のスライド装置では、座の位置を前後調整するために、座本体のロックを外す動作と座本体を移動させる動作という2つの異なった動作を別々に行う必要があり、位置調整の為の操作が煩わしいものである。
【0006】
本発明は、操作が容易なスライド駆動機構を提供することを目的とする。また、本発明は、前記スライド駆動機構を備えることで操作が容易な椅子の可動構造物のスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために請求項1記載のスライド駆動機構は、ベースに設けられた線状のガイドと、ガイドに案内されてベースに対して相対的に往動又は復動されるスライダと、スライダを往動又は復動させるようにベースに対して往動又は復動される牽引部材と、牽引部材を往動又は復動させる操作手段と、牽引部材がスライダに対して中立位置からロック解除距離だけ往方向又は復方向に空移動すると牽引部材をスライダに連結する連結手段と、スライダを往方向の移動に対してベースに係止すると共に牽引部材が中立位置から往動した場合に中立位置に向けて付勢する往方向弾性アームと、スライダを復方向の移動に対してベースに係止すると共に牽引部材が中立位置から復動した場合に中立位置に向けて付勢する復方向弾性アームと、牽引部材が中立位置からロック解除距離だけ往方向に空移動する間に往方向弾性アームに当ってスライダの係止を解除する往方向ロック解除凸部と、牽引部材が中立位置からロック解除距離だけ復方向に空移動する間に復方向弾性アームに当ってスライダの係止を解除する復方向ロック解除凸部を備えるものである。
【0008】
したがって、操作手段によって牽引部材が操作されていない状態では、スライダは往方向弾性アームと復方向弾性アームとによってベースに係止されており、スライダに外力が作用してもスライダをベースに対して往動又は復動させることはできず、また、逆にベースに外力が作用してもベースをスライダに対して相対的に往動又は復動させることはできない。また、この状態では、往方向弾性アームと復方向弾性アームとによって牽引部材はスライダに対する中立位置に位置決めされており、連結手段は牽引部材をスライダに対して連結させていない。
【0009】
この状態から操作手段を操作して牽引部材を例えば往動させると、牽引部材はまず最初にスライダを往動させることなく空移動する。この空移動によって往方向ロック解除凸部が往方向弾性アームに当たり、スライダの往方向への移動に対する係止を解く(往方向へのロック解除)。そして、牽引部材の空移動距離がロック解除距離に達すると、連結手段が牽引部材をスライダに連結するので、以降、牽引部材の往動に連動してスライダがガイドに案内されて往動する。このとき、スライダの移動方向は往方向であるので、復方向弾性アームによる復方向への係止力は発揮されない。
【0010】
そして、操作手段による操作を停止し、牽引部材を往動させようとする力が消滅すると、往方向弾性アームがその弾性力によって牽引部材をスライダに対する中立位置に復帰させながらスライダをベースに係止する。また、この状態では復方向弾性アームもスライダをベースに係止しているので、スライダは往方向と復動方向のいずれに対してもベースに係止されている。
【0011】
この状態から操作手段を操作して牽引部材を復動させると、上記とは逆の手順でスライダが復動する。
【0012】
また、請求項1記載の発明に係るスライド駆動機構は、特定の用途に限定されるものではなく、産業機器やあらゆる可動部品・装置の可動機構の駆動源として利用することができるが、例えば椅子の座のスライド機構の駆動源として利用することが好ましい。
【0013】
即ち、請求項1記載のスライド駆動機構を椅子の可動部材とそれを支持する固定部材との間に配置し、ベースを可動部材と固定部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを可動部材と固定部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で可動部材をスライド可能とすることが好ましい。
【0014】
ここで、可動構造物としては座受け部材に対して前後移動する座であり、ベースを座と座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを座と座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で座を前後方向にスライド可能とすることが好ましい。
【0015】
また、可動構造物としては、座受け部材と背支桿との間に配置されて座受け部材に対する連結位置を変更して傾きを調整可能とする背ガススプリングの位置調整機構であり、ベースを背ガススプリングの端部と座受け部材とを連結しかつ座受け部材の長孔内を貫通して移動する連結ピンと座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを連結ピンと座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作でベースとスライダとを相対移動させて連結ピンを長孔内を移動させることにより背ガススプリングの傾きを調整することが好ましい。
【0016】
また、可動構造物としては、背支桿に対して昇降可能な背であり、ベースを背と背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを背と背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で背を昇降可能とすることが好ましい。
【0017】
また、可動構造物としては、肘支持部材に沿って昇降可能な肘であり、ベースを肘と肘支持部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを肘と肘支持部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で肘を昇降可能とすることが好ましい。
【0018】
また、可動構造物としては、背フレームに対して前後方向に出入り自在なランバーサポートであり、ベースをランバーサポートと背フレームのうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダをランバーサポートと背フレームのうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作でランバーサポートを前後方向に出入り可能とすることが好ましい。
【0019】
また、可動構造物としては、背支桿に対して昇降可能なヘッドレストであり、ベースをヘッドレストと背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、牽引部材をヘッドレストと背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作でヘッドレストを昇降可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスライド駆動機構では、操作手段を操作して牽引部材を移動させると、その移動によって移動方向のロック(係止)が解除され、そのままスライダを移動させることができるので、1つの動作によってロック解除と移動を行うことができる。そのため、スライダを移動させる操作が簡単なものとなり、扱いやすく便利なものとなる。
【0021】
また、操作手段による操作を停止し、牽引部材への操作力の入力がなくなると、往方向弾性アームと復方向弾性アームの弾性力によって牽引部材がスライダに対する中立位置に戻されて連結手段による連結が解除されると共に、往方向弾性アームと復方向弾性アームがスライダをベースにロックする。そのため、スライダに外力が作用した場合は勿論のこと、ベースに外力が作用した場合にもベースとスライダとの相対移動を防止することができる。このように、自動的かつ確実にロックされる。
【0022】
また、本発明の椅子の可動構造物のスライド装置では、上記スライド駆動機構を用いているので、固定部材に対する可動部材の位置調整を簡単な操作で行うことができ、扱いやすく便利な椅子の可動構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のスライド駆動機構の実施形態の一例を示し、図2のI−I線に沿う断面図である。
【図2】同スライド駆動機構を示す平面図である。
【図3】同スライド駆動機構を示し、図1の状態からスライダを往動させて往方向弾性アームによるロックを解除した状態の断面図である。
【図4】同スライド駆動機構を示し、図3の状態からスライダを更に往動させている状態の断面図である。
【図5】同スライド駆動機構を示し、図4の状態からスライダを更に往動させて停止させた状態の断面図である。
【図6】図6の状態のスライド駆動機構の平面図である。
【図7】ベースを示し、(A)は(B)のA−A線に沿う断面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図8】スライダを示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図9】牽引部材を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図10】往方向弾性アーム及び復方向弾性アームを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図11】操作手段を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図12】本発明の椅子の可動構造物のスライド装置の実施形態の一例を示す説明図である。
【図13】同スライド装置を組み込んだ椅子の側面図である。
【図14】本発明の椅子の可動構造物のスライド装置の他の実施形態を示し、スライダを最も後退させている状態の説明図である。
【図15】同スライド装置のスライダを最も前進させている状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態では、牽引部材等を前後方向に移動させる場合を例に説明する。即ち、前方向が往方向であり、後方向が復方向である。ただし、移動させる方向はこれに限るものではなく、左右方向、上下方向、斜め方向等に移動させても良い。線状の移動であれば、その方向、角度は特に制限されない。
【0025】
図1〜図11に本発明のスライド駆動機構の実施の一形態を示す。スライド駆動機構1は、主に移動側部材と案内側部材と操作手段2から成り、操作手段2の操作によって移動側部材を案内側部材に対して相対的に移動させることで、例えば図示しない固定部材に対して可動部材をスライドさせるものである。
【0026】
案内側部材は、ベース3とベース3に設けられた線状のガイド4を備えている。本実施形態では、板状のベース3にガイド4としての案内突部5と案内枠6を設けている。ただし、ベース3は必ずしも板状のものに限られるものではなく、ガイド4を設けることができればその他の形状のものでも良い。また、ガイド4としては案内突部5と案内枠6とから構成されたものに限るものではなく、移動側部材を案内できるものであればその他のものでも良い。
【0027】
ベース3を図7に示す。案内突部5は直線状に設けられており、山谷形状の凹凸5aを多数連続させている。また、案内枠6は移動側部材の両側方と上方を囲む平らな3枚の板6a、6a、6bから構成され、操作手段2を動かすことが可能なように2枚の側板6aの下側は大きく切り欠かれている。側板6a、6aはベース3に固着されている。また、天板6bには移動側部材の移動距離を制限する長孔7が設けられている。案内突部5を直線状に形成し、案内枠6を平らな3枚の板6a、6a、6bから構成することで、移動側部材を真っ直ぐに案内する直線状のガイド4が構成される。
【0028】
移動側部材は、ガイド4に案内されてベース3に対して相対的に往動又は復動されるスライダ8と、スライダ8を往動又は復動させるようにベース3に対して往動又は復動される牽引部材9と、牽引部材9がスライダ8に対して中立位置10からロック解除距離Lだけ往方向又は復方向に空移動すると牽引部材9をスライダ8に連結する連結手段11と、スライダ8を往方向の移動に対してベース3に係止すると共に牽引部材9が中立位置10から往動した場合に中立位置10に向けて付勢する往方向弾性アーム12と、スライダ8を復方向の移動に対してベース3に係止すると共に牽引部材9が中立位置10から復動した場合に中立位置10に向けて付勢する復方向弾性アーム13と、牽引部材9が中立位置10からロック解除距離Lだけ往方向に空移動する間に往方向弾性アーム12に当ってスライダ8の係止を解除する往方向ロック解除凸部14と、牽引部材9が中立位置10からロック解除距離Lだけ復方向に空移動する間に復方向弾性アーム13に当ってスライダ8の係止を解除する復方向ロック解除凸部15を備えている。
【0029】
本実施形態のスライダ8を図8に示す。スライダ8は、2枚の側板8a、8aの前後を2枚の連結板8b、8bによって連結した枠形状をなし、2枚の側板8a、8aの中央部にはこれらを連結するように取付板8cが固着されている。取付板8cの幅方向中央かつ移動方向中央には移動方向に細長い長孔16が形成されている。長孔16の長さは後述する連結ボルト11のねじの直径にロック解除距離Lの2倍を加えた長さ、幅は連結ボルト11のねじの直径とほぼ同じ長さになっている。また、長孔16の移動方向両側にはねじ孔17、17が設けられている。さらに、2枚の側板8a、8aの取付板8cの固着位置の下には、操作手段2を貫通させるためのスリット18が形成されている。ただし、スライダ8の構成はこれに限るものではない。
【0030】
本実施形態の牽引部材9を図9に示す。牽引部材9は、2枚の側板9a、9aの上端を1枚の連結板9bによって連結したもので、連結板9bの上面の移動方向中央には天板9cが重ねられて固着されている。天板9cの幅方向中央かつ移動方向中央には連結手段11である連結ボルトをねじ込むねじ孔19が形成されている。このねじ孔19は連結板9bにも連続して形成されている。また、2枚の側板9a、9aの前後両端の上部は上端を天板9cの端に揃えるように斜めに切り欠かれて斜辺9dとなっており、牽引部材9全体としての前後両端の上側の角が往方向ロック解除凸部14及び復方向ロック解除凸部15になっている。
【0031】
本実施形態の往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を図10に示す。本実施形態では、1枚の板ばね20によって往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を形成している。即ち、板ばね20の前後を斜め下方に向けて折り曲げて往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を形成している。各アーム12、13の角度は牽引部材9の側板9a、9aの斜辺9d、9dの角度と同じである。各アーム12、13の先端は案内突部5の凹凸5aの谷形状に合わせて上方に向けて折り曲げられている。板ばね20の各アーム12、13の間の部分(以下、中央部分20aという)にはスライダ8の取付板8cに設けられている長孔16と平面から見た形状が同じ形状の長孔21と、ねじ孔17、17と平面から見た形状が同じ形状の貫通孔22、22がそれぞれ設けられている。
【0032】
本実施形態では、板ばね20の幅と牽引部材9の幅は同じであり、スライダ8の取付板8cの幅即ち側板8a、8aの間隔よりも若干短くなっている。また、板ばね20の中央部分20aの前後方向の長さとスライダ8の取付板8cの前後方向の長さは同じである。
【0033】
本実施形態では、連結手段11をボルト(以下、適宜連結ボルト11という)によって構成している。連結手段11は板ばね20の長孔21とスライダ8の取付板8cの長孔16を貫通し、牽引部材9のねじ孔19にねじ込まれている。ただし、必ずしも連結ボルト11に限られるものではなく、例えば牽引部材9に設けられ、且つスライダ8の取付板8cの長孔16と板ばね20の長孔21に通される凸部等でも良い。
【0034】
連結手段11の頭部はベース3の案内枠6の長孔7に挿入されている。したがって、スライダ8及び牽引部材9がベースに対して移動(前進又は後進)できる範囲は連結手段11が長孔7内を移動できる範囲に制限される。
【0035】
また、連結手段11の軸部は、スライダ8の長孔16及び板ばね20の長孔21を貫通している。したがって、スライダ8及び板ばね20(往方向弾性アーム12及び復方向弾性アーム13)が牽引部材9に対して相対的に移動(前進又は後進)できる範囲は連結手段11が長孔16、21内を移動できる範囲に制限される。長孔16、21の長さは連結ボルト11のねじの直径にロック解除距離Lの2倍を加えた長さであるので、スライダ8及び板ばね20と牽引部材9とは中立位置10から両方向にロック解除距離Lずつ移動可能である。
【0036】
牽引部材9は操作手段2によって操作されて往動又は復動される。本実施形態の操作手段2を図11に示す。本実施形態の操作手段2は、操作レバーである。操作手段2の基端2aはベース3に例えばボルト23を使用して回転自在に取り付けられている。また、操作手段2の基端2a近傍には、連結手段11が貫通する長孔24が設けられている。
【0037】
移動側部材及び操作手段2は以下のようにして組み付けられる。先ず、スライダ8の取付板8cの上に板ばね20の中央部分20aを重ね、2本のボルト25,25で固定する。次に、スライダ8の側板8a、8aのスリット18、18に操作手段2を挿入してスライダ8の取付板8cの下に操作手段2を重ねると共に、スライダ8の取付板8cの各側板8a、8aの間に下から牽引部材9を入れて操作手段2の下に牽引部材9の天板9cを重ね、長孔21、長孔16、長孔24、ねじ孔19の位置を一致させる。この状態で長孔21、長孔16、長孔24に上から連結ボルト11を通し、その先端をねじ孔19に所定量だけねじ込む。このとき、操作手段2とスライダ8の取付板8c・牽引部材9の天板9cとの間には隙間を設けておき、操作手段2の動かすことができるようにしておく。このようにして移動側部材及び操作手段2が組み付けられる。組み付けることで、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13は牽引部材9の側板の斜辺9dと重なる。
【0038】
そして、この組み付け体を案内側部材の案内枠6内に、側板6a、6aが切り欠かれている側から挿入する。このとき、スライダ8の側板8a。8aと牽引部材9の側板9a、9aが案内枠6の側板6a、6aとガイド4との間に入るようにする。挿入後、操作手段2の基端2aをベース3にボルト23で回転可能に取り付けることで、スライド駆動機構1の組み付けが完了する。
【0039】
次に、スライド駆動機構1の作動について説明する。
【0040】
図1及び図2に示すように、操作手段2によって牽引部材9が操作されていない状態では、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13が案内突部5の凹凸5aの1つにそれぞれ嵌り込んでおり、スライダ8をベース3に係止している。このため、スライダ8に操作手段2以外から外力が作用してもスライダ8をベース3に対して前進(往動)又は後進(復動)させることはできず、また、逆にベース3に外力が作用してもベース3をスライダ8に対して相対的に前進又は後進させることはできない。また、この状態では、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13とによって牽引部材9はスライダ8に対する中立位置10に位置決めされており、連結手段11は牽引部材9をスライダ8に連結していない。
【0041】
この状態から操作手段2を操作して牽引部材9を例えば前進(図1中左方向に移動)させると、牽引部材9はまず最初にスライダ8を前進させることなく空移動する。この空移動によって往方向ロック解除凸部14が往方向弾性アーム12に当たり、弾性変形させて案内突部5の凹凸5aから外す(図3)。これによりスライダ8の前進に対する係止が解除される(往方向へのロック解除)。そして、牽引部材9の空移動距離がロック解除距離Lに達すると、連結手段11が牽引部材9をスライダ8に連結するので、以降、牽引部材9の前進に連動してスライダ8がガイド4に案内されて前進する(図4)。このとき、復方向弾性アーム13はスライダ8に引かれて案内突部5の凹凸5aに沿って上下動しながらこれを摺動することになり、係止力は発揮されない。
【0042】
操作手段2の動きは回転運動であるのに対し、スライダ8及び牽引部材9の動きは直線運動である。したがって、操作手段2の回転によって操作手段2とスライダ8及び牽引部材9の位置関係が変化する。本実施形態では、連結手段11を操作手段2の長孔24に通しており、連結手段11が長孔24内を移動することで上記位置関係の変化を吸収し、両者の運動をスムーズなものにしている。
【0043】
そして、操作手段2による操作を停止し、牽引部材9を前進させようとする力が消滅すると、図5に示すように、往方向弾性アーム12がその弾性力によって牽引部材9をスライダ8に対する中立位置10に復帰させながら案内突部5の凹凸5aの1つに嵌り込んでスライダ8をベース3に係止する。また、この状態では復方向弾性アーム13も案内突部5の凹凸5aの1つに嵌り込んでスライダ8をベース3に係止する。そのため、スライダ8は前方向と後方向のいずれに対してもベース3に係止されている。ベース3の案内突部5にはその長手方向に沿って多数の凹凸5aが連続して形成されているので、スライダ8の係止位置を細かいピッチで調節することができる。
【0044】
この状態から操作手段2を操作して牽引部材9を後進させると、上記とは逆の手順でスライダ8が後進する。
【0045】
本発明のスライド駆動機構1は、操作手段2を操作して牽引部材9を移動(前進又は後進)させると、その移動によって移動方向のロック(係止)が解除され、そのままスライダ8を移動させることができるので、1つの動作によってロック解除と移動の両方を行うことができる。そのため、スライダ8を移動させる操作が簡単なものとなり、扱いやすく便利である。
【0046】
また、操作手段2による操作を停止し、牽引部材9への操作力の入力がなくなると、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13の弾性力によって牽引部材9がスライダ8に対する中立位置10に戻されて連結手段11による連結が解除されると共に、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13が案内突部5の凹凸5aの1つに嵌り込んでスライダ8をベース3に係止する。そのため、スライダ8に外力が作用した場合は勿論のこと、ベース3に外力が作用した場合であってもベース3とスライダ8との相対移動を防止することができる。このように、操作を止めると、スライダ8を自動的かつ確実にロックすることができる。
【0047】
次に、本発明の椅子の可動構造物のスライド装置について説明する。椅子の可動構造物のスライド装置(以下、単にスライド装置という)は、スライド駆動機構1を椅子の可動部材とそれを支持する固定部材との間に配置し、ベース3を可動部材と固定部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を可動部材と固定部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で可動部材をスライド可能とするものである。
【0048】
可動構造物として椅子の座受け部材(固定部材)に対して前後移動する座(可動部材)に適用した例を図12及び図13に示す。なお、図1〜図11に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、それらの詳しい説明を省略する。このスライド装置は、ベース3を座26と座受け部材27のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を座26と座受け部材27のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で座26を前後方向にスライド可能としている。本実施形態では、ベース3を座受け部材27に取り付け、スライダ8を座26に取り付けている。ただし、ベース3を座26に取り付け、スライダ8を座受け部材27に取り付けるようにしても良い。
【0049】
ベース3はその後側面を座受け部材27の支持フレーム28の梁28aに固着している。また、スライダ8はその前端をベース3よりも突出させており、その突出部8dの上面を座26のアウターシェル26aの底面に取り付けている。したがって、ベース3に対してスライダ8が前進(往動)又は後進(復動)すると、座受け部材27に対して座26が前進又は後進する。
【0050】
座26の下から側方へと伸びる操作手段2(操作レバー)を図12の実線位置から前方に向けて操作すると、図12中仮想線で示すようにスライダ8が前進(往動)して座26を前進させることができる。また、操作手段2を後方に向けて操作すると、スライダ8が後進(復動)して座26を元の位置に戻すことができる。操作手段2の操作によって座26を所望の位置に移動させてスライダ8をロックすることで、座26の位置を前後調整することができる。
【0051】
このスライド装置は上述のスライド駆動機構1を使用して座26の位置を前後に調整するので、1つの動作によって座26のロック解除と移動の両方を行うことができる。また、操作を止めることで座26を自動的にロックすることができる。したがって、座26の位置の前後調整が簡単なものとなり、扱いやすく便利である。
【0052】
また、操作を行っていない状態では、座26(スライダ8)に外力が作用した場合は勿論のこと、座受け部材27(ベース3)に外力が作用した場合であっても座26と座受け部材27との相対移動を防止することができる。
【0053】
また、ベース3の案内突部5の凹凸5aのピッチを細かくしておくことで、座26の前後位置を細かく調整することができる。
【0054】
可動構造物として椅子の座受け部材と背支桿との間に配置されて座受け部材に対する連結位置を変更して傾きを調整可能とする背ガススプリングの位置調整機構に適用した例を図14及び図15に示す。なお、図1〜図11に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、それらの詳しい説明を省略する。このスライド装置は、ベース3を背ガススプリング29の端部と座受け部材27とを連結しかつ座受け部材27の長孔27a内を貫通して移動する連結ピン30(可動部材)と座受け部材27(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を連結ピン30と座受け部材27のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作でベース3とスライダ8とを相対移動させて連結ピン30を長孔27a内を移動させることにより背ガススプリング29の傾きを調整可能としている。本実施形態では、ベース3を座受け部材27に取り付け、スライダ8を連結ピン30に取り付けている。ただし、ベース3を連結ピン30に取り付け、スライダ8を座受け部材27に取り付けるようにしても良い。なお、本実施形態では、背ガススプリング29の下端をスライド駆動機構1によって変位させるようにしているが、背ガススプリング29の上端を変位させるようにしても良い。
【0055】
ベース3は座受け部材27の上面に固着されている。また、スライダ8はリンク31を介して連結ピン30に接続されている。したがって、ベース3に対してスライダ8が前進(往動)又は後進(復動)すると、座受け部材27に対して連結ピン30が長孔27a内を移動する。
【0056】
図14の状態より、図示しない操作手段2を操作してスライダ8を前進(往動)させると、図15に示すようにリンク31が連結ピン30を長孔27a内で引き上げるので、背ガススプリング29の下端が上がり背ガススプリング29の角度は倒される。また、操作手段2を操作してスライダ8を後進(復動)させると、リンク31が連結ピン30を長孔27a内で押し下げるので、背ガススプリング29の下端が下がり背ガススプリング29の角度は起こされる。このように操作手段2の操作によって背ガススプリング29を所望の傾きに調整してスライダ8をロックすることで、背ガススプリング29の反力の強さを調整することができる。
【0057】
このスライド装置は上述のスライド駆動機構1を使用して背ガススプリング29の反力の強さを調整するので、1つの動作によって背ガススプリング29の傾きのロック解除と傾き調整の両方を行うことができる。また、操作を止めることで背ガススプリング29の傾きを自動的にロックすることができる。したがって、背ガススプリング29の反力調整が簡単なものとなり、扱いやすく便利である。
【0058】
また、操作を行っていない状態では、連結ピン30(スライダ8)に外力が作用した場合は勿論のこと、座受け部材27(ベース3)に外力が作用した場合であっても連結ピン30と座受け部材27との相対移動を防止することができる。
【0059】
また、ベース3の案内突部5の凹凸5aのピッチを細かくしておくことで、背ガススプリング29の反力を細かく調整することができる。
【0060】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、牽引部材9を移動させる操作手段2としてレバーを使用していたが、レバーに限られるものではない。牽引部材9を往動及び復動させるさせることが可能なものであれば、例えば、ワイヤー等の使用も可能である。
【0061】
また、上述の説明では、ベース3に設けたガイド4を移動側部材を真っ直ぐに案内する直線状のものとしているが、ガイド4は直線状のものに限られるものではなく、曲線状、例えば操作手段2の回転中心を中心にする円弧状に移動側部材を案内する曲線状のガイド4としても良い。
【0062】
また、上述の説明では、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を1枚の板ばね20を使用して一体的に形成していたが、必ずしも往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を一体的に形成する必要はなく、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を別々に形成しても良い。
【0063】
また、上述の説明では、案内側部材のベース3の上に移動側部材を載せるようにしていたが、上下関係は逆でも良い。また、案内側部材のベース3と移動側部材とを上下に配置する場合に限るものではなく、水平あるいは斜めに配置するようにしても良い。
【0064】
また。上述の説明では、案内側部材に対して移動側部材を前後に案内するようにしていたが、左右方向、斜め方向に案内するようにしても良く、さらには水平方向に限るものではなく、上下方向、斜め方向に案内するようにしても良い。
【0065】
また、本発明のスライド駆動機構1は特定の用途に限定されるものではなく、産業機器やあらゆる可動部品・装置のスライド駆動機構に利用することができる。さらに本発明のスライド駆動機構1を組みこむ椅子の可動構造物のスライド装置としては、上述の座26のスライド装置や背ガススプリング29の傾きを調整する機構に特に限定されず、例えば、図示していないが背の昇降機構、肘の昇降機構、ランバーサポートの突出高さ調整機構、ヘッドレストの昇降機構などのあらゆる可動構造物のスライド装置として利用することができる。
【0066】
即ち、可動構造物として椅子の背支桿に対して昇降可能な背に適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3を背(可動部材)と背支桿(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を背と背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で背を昇降可能とすることができる。
【0067】
また、可動構造物として椅子の肘支持部材に沿って昇降可能な肘に適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3を肘(可動部材)と肘支持部材(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を肘と肘支持部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で肘を昇降可能とすることができる。
【0068】
また、可動構造物として椅子の背フレームに対して前後方向に出入り自在なランバーサポートに適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3をランバーサポート(可動部材)と背フレーム(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8をランバーサポートと背フレームのうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作でランバーサポートを前後方向に出入り可能とすることができる。
【0069】
また、可動構造物として背支桿に対して昇降可能なヘッドレストに適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3をヘッドレスト(可動部材)と背支桿(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、牽引部材9をヘッドレストと背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作でヘッドレストを昇降可能とすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 スライド駆動機構
2 操作手段
3 ベース
4 ガイド
8 スライダ
9 牽引部材
10 スライダに対する牽引部材の中立位置
11 連結手段
12 往方向弾性アーム
13 復方向弾性アーム
14 往方向ロック解除凸部
15 復方向ロック解除凸部
26 座
27 座受け部材
27a 座受け部材の長孔
29 背ガススプリング
30 連結ピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内側の部材に沿って移動側の部材を操作手段の操作に連動してスライドさせるスライド駆動機構と、これを備える椅子の可動構造物のスライド装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、操作手段からの入力に対しては移動側部材と案内側部材との相対移動(スライド)は可能であるが、案内側部材側からの入力に対しては移動部材と案内側部材との相対移動が禁止されるスライド駆動機構と、これを備える椅子の可動構造物のスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の座の位置を前後調整可能にするスライド機構として、座受けにガイドレールを設け、このガイドレールに沿って座本体をスライド可能にする移動案内手段と、座受けに対する座本体の前後移動を規制するロック手段とを備えたものがある(特許文献1)。ロック手段は、座本体側のクッション支持体の底面に所定ピッチで多数の係合凹部を設け、当該係合凹部に座受け側に設けた係合凸部を係合させることで、座受けに対して座本体をロックするものである。
【0003】
座本体の位置調整を行う場合には、先ず、座本体の側方に突出している操作レバーを降ろすように操作することで係合凸部を横に倒して係合凹部から外した後、操作レバーの操作を維持しながら、座本体を押したり引いたりして前後移動させる。そして、所望の位置まで移動させた後、操作レバーの操作を解除する。これにより、係合凸部が起立して係合凹部に係合し、座本体が座受けにロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のスライド装置では、座の位置を前後調整するために、座本体のロックを外す動作と座本体を移動させる動作という2つの異なった動作を別々に行う必要があり、位置調整の為の操作が煩わしいものである。
【0006】
本発明は、操作が容易なスライド駆動機構を提供することを目的とする。また、本発明は、前記スライド駆動機構を備えることで操作が容易な椅子の可動構造物のスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために請求項1記載のスライド駆動機構は、ベースに設けられた線状のガイドと、ガイドに案内されてベースに対して相対的に往動又は復動されるスライダと、スライダを往動又は復動させるようにベースに対して往動又は復動される牽引部材と、牽引部材を往動又は復動させる操作手段と、牽引部材がスライダに対して中立位置からロック解除距離だけ往方向又は復方向に空移動すると牽引部材をスライダに連結する連結手段と、スライダを往方向の移動に対してベースに係止すると共に牽引部材が中立位置から往動した場合に中立位置に向けて付勢する往方向弾性アームと、スライダを復方向の移動に対してベースに係止すると共に牽引部材が中立位置から復動した場合に中立位置に向けて付勢する復方向弾性アームと、牽引部材が中立位置からロック解除距離だけ往方向に空移動する間に往方向弾性アームに当ってスライダの係止を解除する往方向ロック解除凸部と、牽引部材が中立位置からロック解除距離だけ復方向に空移動する間に復方向弾性アームに当ってスライダの係止を解除する復方向ロック解除凸部を備えるものである。
【0008】
したがって、操作手段によって牽引部材が操作されていない状態では、スライダは往方向弾性アームと復方向弾性アームとによってベースに係止されており、スライダに外力が作用してもスライダをベースに対して往動又は復動させることはできず、また、逆にベースに外力が作用してもベースをスライダに対して相対的に往動又は復動させることはできない。また、この状態では、往方向弾性アームと復方向弾性アームとによって牽引部材はスライダに対する中立位置に位置決めされており、連結手段は牽引部材をスライダに対して連結させていない。
【0009】
この状態から操作手段を操作して牽引部材を例えば往動させると、牽引部材はまず最初にスライダを往動させることなく空移動する。この空移動によって往方向ロック解除凸部が往方向弾性アームに当たり、スライダの往方向への移動に対する係止を解く(往方向へのロック解除)。そして、牽引部材の空移動距離がロック解除距離に達すると、連結手段が牽引部材をスライダに連結するので、以降、牽引部材の往動に連動してスライダがガイドに案内されて往動する。このとき、スライダの移動方向は往方向であるので、復方向弾性アームによる復方向への係止力は発揮されない。
【0010】
そして、操作手段による操作を停止し、牽引部材を往動させようとする力が消滅すると、往方向弾性アームがその弾性力によって牽引部材をスライダに対する中立位置に復帰させながらスライダをベースに係止する。また、この状態では復方向弾性アームもスライダをベースに係止しているので、スライダは往方向と復動方向のいずれに対してもベースに係止されている。
【0011】
この状態から操作手段を操作して牽引部材を復動させると、上記とは逆の手順でスライダが復動する。
【0012】
また、請求項1記載の発明に係るスライド駆動機構は、特定の用途に限定されるものではなく、産業機器やあらゆる可動部品・装置の可動機構の駆動源として利用することができるが、例えば椅子の座のスライド機構の駆動源として利用することが好ましい。
【0013】
即ち、請求項1記載のスライド駆動機構を椅子の可動部材とそれを支持する固定部材との間に配置し、ベースを可動部材と固定部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを可動部材と固定部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で可動部材をスライド可能とすることが好ましい。
【0014】
ここで、可動構造物としては座受け部材に対して前後移動する座であり、ベースを座と座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを座と座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で座を前後方向にスライド可能とすることが好ましい。
【0015】
また、可動構造物としては、座受け部材と背支桿との間に配置されて座受け部材に対する連結位置を変更して傾きを調整可能とする背ガススプリングの位置調整機構であり、ベースを背ガススプリングの端部と座受け部材とを連結しかつ座受け部材の長孔内を貫通して移動する連結ピンと座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを連結ピンと座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作でベースとスライダとを相対移動させて連結ピンを長孔内を移動させることにより背ガススプリングの傾きを調整することが好ましい。
【0016】
また、可動構造物としては、背支桿に対して昇降可能な背であり、ベースを背と背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを背と背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で背を昇降可能とすることが好ましい。
【0017】
また、可動構造物としては、肘支持部材に沿って昇降可能な肘であり、ベースを肘と肘支持部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダを肘と肘支持部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作で肘を昇降可能とすることが好ましい。
【0018】
また、可動構造物としては、背フレームに対して前後方向に出入り自在なランバーサポートであり、ベースをランバーサポートと背フレームのうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダをランバーサポートと背フレームのうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作でランバーサポートを前後方向に出入り可能とすることが好ましい。
【0019】
また、可動構造物としては、背支桿に対して昇降可能なヘッドレストであり、ベースをヘッドレストと背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、牽引部材をヘッドレストと背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段の操作でヘッドレストを昇降可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスライド駆動機構では、操作手段を操作して牽引部材を移動させると、その移動によって移動方向のロック(係止)が解除され、そのままスライダを移動させることができるので、1つの動作によってロック解除と移動を行うことができる。そのため、スライダを移動させる操作が簡単なものとなり、扱いやすく便利なものとなる。
【0021】
また、操作手段による操作を停止し、牽引部材への操作力の入力がなくなると、往方向弾性アームと復方向弾性アームの弾性力によって牽引部材がスライダに対する中立位置に戻されて連結手段による連結が解除されると共に、往方向弾性アームと復方向弾性アームがスライダをベースにロックする。そのため、スライダに外力が作用した場合は勿論のこと、ベースに外力が作用した場合にもベースとスライダとの相対移動を防止することができる。このように、自動的かつ確実にロックされる。
【0022】
また、本発明の椅子の可動構造物のスライド装置では、上記スライド駆動機構を用いているので、固定部材に対する可動部材の位置調整を簡単な操作で行うことができ、扱いやすく便利な椅子の可動構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のスライド駆動機構の実施形態の一例を示し、図2のI−I線に沿う断面図である。
【図2】同スライド駆動機構を示す平面図である。
【図3】同スライド駆動機構を示し、図1の状態からスライダを往動させて往方向弾性アームによるロックを解除した状態の断面図である。
【図4】同スライド駆動機構を示し、図3の状態からスライダを更に往動させている状態の断面図である。
【図5】同スライド駆動機構を示し、図4の状態からスライダを更に往動させて停止させた状態の断面図である。
【図6】図6の状態のスライド駆動機構の平面図である。
【図7】ベースを示し、(A)は(B)のA−A線に沿う断面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図8】スライダを示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図9】牽引部材を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図10】往方向弾性アーム及び復方向弾性アームを示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図11】操作手段を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図12】本発明の椅子の可動構造物のスライド装置の実施形態の一例を示す説明図である。
【図13】同スライド装置を組み込んだ椅子の側面図である。
【図14】本発明の椅子の可動構造物のスライド装置の他の実施形態を示し、スライダを最も後退させている状態の説明図である。
【図15】同スライド装置のスライダを最も前進させている状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態では、牽引部材等を前後方向に移動させる場合を例に説明する。即ち、前方向が往方向であり、後方向が復方向である。ただし、移動させる方向はこれに限るものではなく、左右方向、上下方向、斜め方向等に移動させても良い。線状の移動であれば、その方向、角度は特に制限されない。
【0025】
図1〜図11に本発明のスライド駆動機構の実施の一形態を示す。スライド駆動機構1は、主に移動側部材と案内側部材と操作手段2から成り、操作手段2の操作によって移動側部材を案内側部材に対して相対的に移動させることで、例えば図示しない固定部材に対して可動部材をスライドさせるものである。
【0026】
案内側部材は、ベース3とベース3に設けられた線状のガイド4を備えている。本実施形態では、板状のベース3にガイド4としての案内突部5と案内枠6を設けている。ただし、ベース3は必ずしも板状のものに限られるものではなく、ガイド4を設けることができればその他の形状のものでも良い。また、ガイド4としては案内突部5と案内枠6とから構成されたものに限るものではなく、移動側部材を案内できるものであればその他のものでも良い。
【0027】
ベース3を図7に示す。案内突部5は直線状に設けられており、山谷形状の凹凸5aを多数連続させている。また、案内枠6は移動側部材の両側方と上方を囲む平らな3枚の板6a、6a、6bから構成され、操作手段2を動かすことが可能なように2枚の側板6aの下側は大きく切り欠かれている。側板6a、6aはベース3に固着されている。また、天板6bには移動側部材の移動距離を制限する長孔7が設けられている。案内突部5を直線状に形成し、案内枠6を平らな3枚の板6a、6a、6bから構成することで、移動側部材を真っ直ぐに案内する直線状のガイド4が構成される。
【0028】
移動側部材は、ガイド4に案内されてベース3に対して相対的に往動又は復動されるスライダ8と、スライダ8を往動又は復動させるようにベース3に対して往動又は復動される牽引部材9と、牽引部材9がスライダ8に対して中立位置10からロック解除距離Lだけ往方向又は復方向に空移動すると牽引部材9をスライダ8に連結する連結手段11と、スライダ8を往方向の移動に対してベース3に係止すると共に牽引部材9が中立位置10から往動した場合に中立位置10に向けて付勢する往方向弾性アーム12と、スライダ8を復方向の移動に対してベース3に係止すると共に牽引部材9が中立位置10から復動した場合に中立位置10に向けて付勢する復方向弾性アーム13と、牽引部材9が中立位置10からロック解除距離Lだけ往方向に空移動する間に往方向弾性アーム12に当ってスライダ8の係止を解除する往方向ロック解除凸部14と、牽引部材9が中立位置10からロック解除距離Lだけ復方向に空移動する間に復方向弾性アーム13に当ってスライダ8の係止を解除する復方向ロック解除凸部15を備えている。
【0029】
本実施形態のスライダ8を図8に示す。スライダ8は、2枚の側板8a、8aの前後を2枚の連結板8b、8bによって連結した枠形状をなし、2枚の側板8a、8aの中央部にはこれらを連結するように取付板8cが固着されている。取付板8cの幅方向中央かつ移動方向中央には移動方向に細長い長孔16が形成されている。長孔16の長さは後述する連結ボルト11のねじの直径にロック解除距離Lの2倍を加えた長さ、幅は連結ボルト11のねじの直径とほぼ同じ長さになっている。また、長孔16の移動方向両側にはねじ孔17、17が設けられている。さらに、2枚の側板8a、8aの取付板8cの固着位置の下には、操作手段2を貫通させるためのスリット18が形成されている。ただし、スライダ8の構成はこれに限るものではない。
【0030】
本実施形態の牽引部材9を図9に示す。牽引部材9は、2枚の側板9a、9aの上端を1枚の連結板9bによって連結したもので、連結板9bの上面の移動方向中央には天板9cが重ねられて固着されている。天板9cの幅方向中央かつ移動方向中央には連結手段11である連結ボルトをねじ込むねじ孔19が形成されている。このねじ孔19は連結板9bにも連続して形成されている。また、2枚の側板9a、9aの前後両端の上部は上端を天板9cの端に揃えるように斜めに切り欠かれて斜辺9dとなっており、牽引部材9全体としての前後両端の上側の角が往方向ロック解除凸部14及び復方向ロック解除凸部15になっている。
【0031】
本実施形態の往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を図10に示す。本実施形態では、1枚の板ばね20によって往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を形成している。即ち、板ばね20の前後を斜め下方に向けて折り曲げて往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を形成している。各アーム12、13の角度は牽引部材9の側板9a、9aの斜辺9d、9dの角度と同じである。各アーム12、13の先端は案内突部5の凹凸5aの谷形状に合わせて上方に向けて折り曲げられている。板ばね20の各アーム12、13の間の部分(以下、中央部分20aという)にはスライダ8の取付板8cに設けられている長孔16と平面から見た形状が同じ形状の長孔21と、ねじ孔17、17と平面から見た形状が同じ形状の貫通孔22、22がそれぞれ設けられている。
【0032】
本実施形態では、板ばね20の幅と牽引部材9の幅は同じであり、スライダ8の取付板8cの幅即ち側板8a、8aの間隔よりも若干短くなっている。また、板ばね20の中央部分20aの前後方向の長さとスライダ8の取付板8cの前後方向の長さは同じである。
【0033】
本実施形態では、連結手段11をボルト(以下、適宜連結ボルト11という)によって構成している。連結手段11は板ばね20の長孔21とスライダ8の取付板8cの長孔16を貫通し、牽引部材9のねじ孔19にねじ込まれている。ただし、必ずしも連結ボルト11に限られるものではなく、例えば牽引部材9に設けられ、且つスライダ8の取付板8cの長孔16と板ばね20の長孔21に通される凸部等でも良い。
【0034】
連結手段11の頭部はベース3の案内枠6の長孔7に挿入されている。したがって、スライダ8及び牽引部材9がベースに対して移動(前進又は後進)できる範囲は連結手段11が長孔7内を移動できる範囲に制限される。
【0035】
また、連結手段11の軸部は、スライダ8の長孔16及び板ばね20の長孔21を貫通している。したがって、スライダ8及び板ばね20(往方向弾性アーム12及び復方向弾性アーム13)が牽引部材9に対して相対的に移動(前進又は後進)できる範囲は連結手段11が長孔16、21内を移動できる範囲に制限される。長孔16、21の長さは連結ボルト11のねじの直径にロック解除距離Lの2倍を加えた長さであるので、スライダ8及び板ばね20と牽引部材9とは中立位置10から両方向にロック解除距離Lずつ移動可能である。
【0036】
牽引部材9は操作手段2によって操作されて往動又は復動される。本実施形態の操作手段2を図11に示す。本実施形態の操作手段2は、操作レバーである。操作手段2の基端2aはベース3に例えばボルト23を使用して回転自在に取り付けられている。また、操作手段2の基端2a近傍には、連結手段11が貫通する長孔24が設けられている。
【0037】
移動側部材及び操作手段2は以下のようにして組み付けられる。先ず、スライダ8の取付板8cの上に板ばね20の中央部分20aを重ね、2本のボルト25,25で固定する。次に、スライダ8の側板8a、8aのスリット18、18に操作手段2を挿入してスライダ8の取付板8cの下に操作手段2を重ねると共に、スライダ8の取付板8cの各側板8a、8aの間に下から牽引部材9を入れて操作手段2の下に牽引部材9の天板9cを重ね、長孔21、長孔16、長孔24、ねじ孔19の位置を一致させる。この状態で長孔21、長孔16、長孔24に上から連結ボルト11を通し、その先端をねじ孔19に所定量だけねじ込む。このとき、操作手段2とスライダ8の取付板8c・牽引部材9の天板9cとの間には隙間を設けておき、操作手段2の動かすことができるようにしておく。このようにして移動側部材及び操作手段2が組み付けられる。組み付けることで、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13は牽引部材9の側板の斜辺9dと重なる。
【0038】
そして、この組み付け体を案内側部材の案内枠6内に、側板6a、6aが切り欠かれている側から挿入する。このとき、スライダ8の側板8a。8aと牽引部材9の側板9a、9aが案内枠6の側板6a、6aとガイド4との間に入るようにする。挿入後、操作手段2の基端2aをベース3にボルト23で回転可能に取り付けることで、スライド駆動機構1の組み付けが完了する。
【0039】
次に、スライド駆動機構1の作動について説明する。
【0040】
図1及び図2に示すように、操作手段2によって牽引部材9が操作されていない状態では、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13が案内突部5の凹凸5aの1つにそれぞれ嵌り込んでおり、スライダ8をベース3に係止している。このため、スライダ8に操作手段2以外から外力が作用してもスライダ8をベース3に対して前進(往動)又は後進(復動)させることはできず、また、逆にベース3に外力が作用してもベース3をスライダ8に対して相対的に前進又は後進させることはできない。また、この状態では、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13とによって牽引部材9はスライダ8に対する中立位置10に位置決めされており、連結手段11は牽引部材9をスライダ8に連結していない。
【0041】
この状態から操作手段2を操作して牽引部材9を例えば前進(図1中左方向に移動)させると、牽引部材9はまず最初にスライダ8を前進させることなく空移動する。この空移動によって往方向ロック解除凸部14が往方向弾性アーム12に当たり、弾性変形させて案内突部5の凹凸5aから外す(図3)。これによりスライダ8の前進に対する係止が解除される(往方向へのロック解除)。そして、牽引部材9の空移動距離がロック解除距離Lに達すると、連結手段11が牽引部材9をスライダ8に連結するので、以降、牽引部材9の前進に連動してスライダ8がガイド4に案内されて前進する(図4)。このとき、復方向弾性アーム13はスライダ8に引かれて案内突部5の凹凸5aに沿って上下動しながらこれを摺動することになり、係止力は発揮されない。
【0042】
操作手段2の動きは回転運動であるのに対し、スライダ8及び牽引部材9の動きは直線運動である。したがって、操作手段2の回転によって操作手段2とスライダ8及び牽引部材9の位置関係が変化する。本実施形態では、連結手段11を操作手段2の長孔24に通しており、連結手段11が長孔24内を移動することで上記位置関係の変化を吸収し、両者の運動をスムーズなものにしている。
【0043】
そして、操作手段2による操作を停止し、牽引部材9を前進させようとする力が消滅すると、図5に示すように、往方向弾性アーム12がその弾性力によって牽引部材9をスライダ8に対する中立位置10に復帰させながら案内突部5の凹凸5aの1つに嵌り込んでスライダ8をベース3に係止する。また、この状態では復方向弾性アーム13も案内突部5の凹凸5aの1つに嵌り込んでスライダ8をベース3に係止する。そのため、スライダ8は前方向と後方向のいずれに対してもベース3に係止されている。ベース3の案内突部5にはその長手方向に沿って多数の凹凸5aが連続して形成されているので、スライダ8の係止位置を細かいピッチで調節することができる。
【0044】
この状態から操作手段2を操作して牽引部材9を後進させると、上記とは逆の手順でスライダ8が後進する。
【0045】
本発明のスライド駆動機構1は、操作手段2を操作して牽引部材9を移動(前進又は後進)させると、その移動によって移動方向のロック(係止)が解除され、そのままスライダ8を移動させることができるので、1つの動作によってロック解除と移動の両方を行うことができる。そのため、スライダ8を移動させる操作が簡単なものとなり、扱いやすく便利である。
【0046】
また、操作手段2による操作を停止し、牽引部材9への操作力の入力がなくなると、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13の弾性力によって牽引部材9がスライダ8に対する中立位置10に戻されて連結手段11による連結が解除されると共に、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13が案内突部5の凹凸5aの1つに嵌り込んでスライダ8をベース3に係止する。そのため、スライダ8に外力が作用した場合は勿論のこと、ベース3に外力が作用した場合であってもベース3とスライダ8との相対移動を防止することができる。このように、操作を止めると、スライダ8を自動的かつ確実にロックすることができる。
【0047】
次に、本発明の椅子の可動構造物のスライド装置について説明する。椅子の可動構造物のスライド装置(以下、単にスライド装置という)は、スライド駆動機構1を椅子の可動部材とそれを支持する固定部材との間に配置し、ベース3を可動部材と固定部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を可動部材と固定部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で可動部材をスライド可能とするものである。
【0048】
可動構造物として椅子の座受け部材(固定部材)に対して前後移動する座(可動部材)に適用した例を図12及び図13に示す。なお、図1〜図11に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、それらの詳しい説明を省略する。このスライド装置は、ベース3を座26と座受け部材27のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を座26と座受け部材27のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で座26を前後方向にスライド可能としている。本実施形態では、ベース3を座受け部材27に取り付け、スライダ8を座26に取り付けている。ただし、ベース3を座26に取り付け、スライダ8を座受け部材27に取り付けるようにしても良い。
【0049】
ベース3はその後側面を座受け部材27の支持フレーム28の梁28aに固着している。また、スライダ8はその前端をベース3よりも突出させており、その突出部8dの上面を座26のアウターシェル26aの底面に取り付けている。したがって、ベース3に対してスライダ8が前進(往動)又は後進(復動)すると、座受け部材27に対して座26が前進又は後進する。
【0050】
座26の下から側方へと伸びる操作手段2(操作レバー)を図12の実線位置から前方に向けて操作すると、図12中仮想線で示すようにスライダ8が前進(往動)して座26を前進させることができる。また、操作手段2を後方に向けて操作すると、スライダ8が後進(復動)して座26を元の位置に戻すことができる。操作手段2の操作によって座26を所望の位置に移動させてスライダ8をロックすることで、座26の位置を前後調整することができる。
【0051】
このスライド装置は上述のスライド駆動機構1を使用して座26の位置を前後に調整するので、1つの動作によって座26のロック解除と移動の両方を行うことができる。また、操作を止めることで座26を自動的にロックすることができる。したがって、座26の位置の前後調整が簡単なものとなり、扱いやすく便利である。
【0052】
また、操作を行っていない状態では、座26(スライダ8)に外力が作用した場合は勿論のこと、座受け部材27(ベース3)に外力が作用した場合であっても座26と座受け部材27との相対移動を防止することができる。
【0053】
また、ベース3の案内突部5の凹凸5aのピッチを細かくしておくことで、座26の前後位置を細かく調整することができる。
【0054】
可動構造物として椅子の座受け部材と背支桿との間に配置されて座受け部材に対する連結位置を変更して傾きを調整可能とする背ガススプリングの位置調整機構に適用した例を図14及び図15に示す。なお、図1〜図11に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、それらの詳しい説明を省略する。このスライド装置は、ベース3を背ガススプリング29の端部と座受け部材27とを連結しかつ座受け部材27の長孔27a内を貫通して移動する連結ピン30(可動部材)と座受け部材27(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を連結ピン30と座受け部材27のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作でベース3とスライダ8とを相対移動させて連結ピン30を長孔27a内を移動させることにより背ガススプリング29の傾きを調整可能としている。本実施形態では、ベース3を座受け部材27に取り付け、スライダ8を連結ピン30に取り付けている。ただし、ベース3を連結ピン30に取り付け、スライダ8を座受け部材27に取り付けるようにしても良い。なお、本実施形態では、背ガススプリング29の下端をスライド駆動機構1によって変位させるようにしているが、背ガススプリング29の上端を変位させるようにしても良い。
【0055】
ベース3は座受け部材27の上面に固着されている。また、スライダ8はリンク31を介して連結ピン30に接続されている。したがって、ベース3に対してスライダ8が前進(往動)又は後進(復動)すると、座受け部材27に対して連結ピン30が長孔27a内を移動する。
【0056】
図14の状態より、図示しない操作手段2を操作してスライダ8を前進(往動)させると、図15に示すようにリンク31が連結ピン30を長孔27a内で引き上げるので、背ガススプリング29の下端が上がり背ガススプリング29の角度は倒される。また、操作手段2を操作してスライダ8を後進(復動)させると、リンク31が連結ピン30を長孔27a内で押し下げるので、背ガススプリング29の下端が下がり背ガススプリング29の角度は起こされる。このように操作手段2の操作によって背ガススプリング29を所望の傾きに調整してスライダ8をロックすることで、背ガススプリング29の反力の強さを調整することができる。
【0057】
このスライド装置は上述のスライド駆動機構1を使用して背ガススプリング29の反力の強さを調整するので、1つの動作によって背ガススプリング29の傾きのロック解除と傾き調整の両方を行うことができる。また、操作を止めることで背ガススプリング29の傾きを自動的にロックすることができる。したがって、背ガススプリング29の反力調整が簡単なものとなり、扱いやすく便利である。
【0058】
また、操作を行っていない状態では、連結ピン30(スライダ8)に外力が作用した場合は勿論のこと、座受け部材27(ベース3)に外力が作用した場合であっても連結ピン30と座受け部材27との相対移動を防止することができる。
【0059】
また、ベース3の案内突部5の凹凸5aのピッチを細かくしておくことで、背ガススプリング29の反力を細かく調整することができる。
【0060】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、牽引部材9を移動させる操作手段2としてレバーを使用していたが、レバーに限られるものではない。牽引部材9を往動及び復動させるさせることが可能なものであれば、例えば、ワイヤー等の使用も可能である。
【0061】
また、上述の説明では、ベース3に設けたガイド4を移動側部材を真っ直ぐに案内する直線状のものとしているが、ガイド4は直線状のものに限られるものではなく、曲線状、例えば操作手段2の回転中心を中心にする円弧状に移動側部材を案内する曲線状のガイド4としても良い。
【0062】
また、上述の説明では、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を1枚の板ばね20を使用して一体的に形成していたが、必ずしも往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を一体的に形成する必要はなく、往方向弾性アーム12と復方向弾性アーム13を別々に形成しても良い。
【0063】
また、上述の説明では、案内側部材のベース3の上に移動側部材を載せるようにしていたが、上下関係は逆でも良い。また、案内側部材のベース3と移動側部材とを上下に配置する場合に限るものではなく、水平あるいは斜めに配置するようにしても良い。
【0064】
また。上述の説明では、案内側部材に対して移動側部材を前後に案内するようにしていたが、左右方向、斜め方向に案内するようにしても良く、さらには水平方向に限るものではなく、上下方向、斜め方向に案内するようにしても良い。
【0065】
また、本発明のスライド駆動機構1は特定の用途に限定されるものではなく、産業機器やあらゆる可動部品・装置のスライド駆動機構に利用することができる。さらに本発明のスライド駆動機構1を組みこむ椅子の可動構造物のスライド装置としては、上述の座26のスライド装置や背ガススプリング29の傾きを調整する機構に特に限定されず、例えば、図示していないが背の昇降機構、肘の昇降機構、ランバーサポートの突出高さ調整機構、ヘッドレストの昇降機構などのあらゆる可動構造物のスライド装置として利用することができる。
【0066】
即ち、可動構造物として椅子の背支桿に対して昇降可能な背に適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3を背(可動部材)と背支桿(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を背と背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で背を昇降可能とすることができる。
【0067】
また、可動構造物として椅子の肘支持部材に沿って昇降可能な肘に適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3を肘(可動部材)と肘支持部材(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8を肘と肘支持部材のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作で肘を昇降可能とすることができる。
【0068】
また、可動構造物として椅子の背フレームに対して前後方向に出入り自在なランバーサポートに適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3をランバーサポート(可動部材)と背フレーム(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、スライダ8をランバーサポートと背フレームのうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作でランバーサポートを前後方向に出入り可能とすることができる。
【0069】
また、可動構造物として背支桿に対して昇降可能なヘッドレストに適用しても良い。この場合のスライド装置は、ベース3をヘッドレスト(可動部材)と背支桿(固定部材)のうちいずれか一方に取り付けると共に、牽引部材9をヘッドレストと背支桿のうちいずれか他方に取り付け、操作手段2の操作でヘッドレストを昇降可能とすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 スライド駆動機構
2 操作手段
3 ベース
4 ガイド
8 スライダ
9 牽引部材
10 スライダに対する牽引部材の中立位置
11 連結手段
12 往方向弾性アーム
13 復方向弾性アーム
14 往方向ロック解除凸部
15 復方向ロック解除凸部
26 座
27 座受け部材
27a 座受け部材の長孔
29 背ガススプリング
30 連結ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに設けられた線状のガイドと、前記ガイドに案内されて前記ベースに対して相対的に往動又は復動されるスライダと、前記スライダを往動又は復動させるように前記ベースに対して往動又は復動される牽引部材と、前記牽引部材を往動又は復動させる操作手段と、前記牽引部材が前記スライダに対して中立位置からロック解除距離だけ往方向又は復方向に空移動すると前記牽引部材を前記スライダに連結する連結手段と、前記スライダを往方向の移動に対して前記ベースに係止すると共に前記牽引部材が前記中立位置から往動した場合に前記中立位置に向けて付勢する往方向弾性アームと、前記スライダを復方向の移動に対して前記ベースに係止すると共に前記牽引部材が前記中立位置から復動した場合に前記中立位置に向けて付勢する復方向弾性アームと、前記牽引部材が前記中立位置から前記ロック解除距離だけ往方向に空移動する間に前記往方向弾性アームに当って前記スライダの係止を解除する往方向ロック解除凸部と、前記牽引部材が前記中立位置から前記ロック解除距離だけ復方向に空移動する間に前記復方向弾性アームに当って前記スライダの係止を解除する復方向ロック解除凸部を備えることを特徴とするスライド駆動機構。
【請求項2】
請求項1記載のスライド駆動機構を椅子の可動部材とそれを支持する固定部材との間に配置し、前記ベースを前記可動部材と前記固定部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記可動部材と前記固定部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記可動部材をスライド可能とするものである椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項3】
前記可動構造物は座受け部材に対して前後移動する座であり、前記ベースを前記座と前記座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記座と前記座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記座を前後方向にスライド可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項4】
前記可動構造物は座受け部材と背支桿との間に配置されて前記座受け部材に対する連結位置を変更して傾きを調整可能とする背ガススプリングの位置調整機構であり、前記ベースを前記背ガススプリングの端部と前記座受け部材とを連結しかつ前記座受け部材の長孔内を貫通して移動する連結ピンと前記座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記連結ピンと前記座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記ベースと前記スライダとを相対移動させて前記連結ピンを前記長孔内を移動させることにより背ガススプリングの傾きを調整するものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項5】
前記可動構造物は背支桿に対して昇降可能な背であり、前記ベースを前記背と前記背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記背と前記背支桿のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記背を昇降可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項6】
前記可動構造物は肘支持部材に沿って昇降可能な肘であり、前記ベースを前記肘と前記肘支持部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記肘と前記肘支持部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記肘を昇降可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項7】
前記可動構造物は背フレームに対して前後方向に出入り自在なランバーサポートであり、前記ベースを前記ランバーサポートと前記背フレームのうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記ランバーサポートと前記背フレームのうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記ランバーサポートを前後方向に出入り可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項8】
前記可動構造物は背支桿に対して昇降可能なヘッドレストであり、前記ベースを前記ヘッドレストと前記背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記牽引部材を前記ヘッドレストと前記背支桿のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記ヘッドレストを昇降可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項1】
ベースに設けられた線状のガイドと、前記ガイドに案内されて前記ベースに対して相対的に往動又は復動されるスライダと、前記スライダを往動又は復動させるように前記ベースに対して往動又は復動される牽引部材と、前記牽引部材を往動又は復動させる操作手段と、前記牽引部材が前記スライダに対して中立位置からロック解除距離だけ往方向又は復方向に空移動すると前記牽引部材を前記スライダに連結する連結手段と、前記スライダを往方向の移動に対して前記ベースに係止すると共に前記牽引部材が前記中立位置から往動した場合に前記中立位置に向けて付勢する往方向弾性アームと、前記スライダを復方向の移動に対して前記ベースに係止すると共に前記牽引部材が前記中立位置から復動した場合に前記中立位置に向けて付勢する復方向弾性アームと、前記牽引部材が前記中立位置から前記ロック解除距離だけ往方向に空移動する間に前記往方向弾性アームに当って前記スライダの係止を解除する往方向ロック解除凸部と、前記牽引部材が前記中立位置から前記ロック解除距離だけ復方向に空移動する間に前記復方向弾性アームに当って前記スライダの係止を解除する復方向ロック解除凸部を備えることを特徴とするスライド駆動機構。
【請求項2】
請求項1記載のスライド駆動機構を椅子の可動部材とそれを支持する固定部材との間に配置し、前記ベースを前記可動部材と前記固定部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記可動部材と前記固定部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記可動部材をスライド可能とするものである椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項3】
前記可動構造物は座受け部材に対して前後移動する座であり、前記ベースを前記座と前記座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記座と前記座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記座を前後方向にスライド可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項4】
前記可動構造物は座受け部材と背支桿との間に配置されて前記座受け部材に対する連結位置を変更して傾きを調整可能とする背ガススプリングの位置調整機構であり、前記ベースを前記背ガススプリングの端部と前記座受け部材とを連結しかつ前記座受け部材の長孔内を貫通して移動する連結ピンと前記座受け部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記連結ピンと前記座受け部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記ベースと前記スライダとを相対移動させて前記連結ピンを前記長孔内を移動させることにより背ガススプリングの傾きを調整するものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項5】
前記可動構造物は背支桿に対して昇降可能な背であり、前記ベースを前記背と前記背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記背と前記背支桿のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記背を昇降可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項6】
前記可動構造物は肘支持部材に沿って昇降可能な肘であり、前記ベースを前記肘と前記肘支持部材のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記肘と前記肘支持部材のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記肘を昇降可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項7】
前記可動構造物は背フレームに対して前後方向に出入り自在なランバーサポートであり、前記ベースを前記ランバーサポートと前記背フレームのうちいずれか一方に取り付けると共に、前記スライダを前記ランバーサポートと前記背フレームのうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記ランバーサポートを前後方向に出入り可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【請求項8】
前記可動構造物は背支桿に対して昇降可能なヘッドレストであり、前記ベースを前記ヘッドレストと前記背支桿のうちいずれか一方に取り付けると共に、前記牽引部材を前記ヘッドレストと前記背支桿のうちいずれか他方に取り付け、前記操作手段の操作で前記ヘッドレストを昇降可能とするものである請求項2記載の椅子の可動構造物のスライド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−92245(P2011−92245A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246326(P2009−246326)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
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