説明

スリットバーナおよび金属帯の加熱方法

【課題】本発明は帯状の火炎を噴出させるスリットバーナおよびそれを用いた金属帯の加熱方法を提供する。
【解決手段】噴射面と該噴射面の4周に取り付けられる保護壁を有し、前記噴射面は一列の、複数の燃料ガス供給孔からなる燃料ガス供給孔列と、前記燃料ガス供給孔列の両側で、平行となるように配置される複数の燃焼用空気供給孔からなる燃焼用空気供給孔列と、更にその外側で、前記燃焼用空気供給孔列と平行となるように配置される複数の空気流入孔からなる空気流入孔列を有し、前記燃料ガス供給孔と前記燃焼用空気供給孔には供給管が連結され、前記保護壁は相対する内方に傾斜している。金属帯の進行方向に対し、燃料ガス供給孔列を直角となるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯状の火炎を噴出させるスリットバーナおよびそれを用いた金属帯の加熱方法に関し、金属帯両端部の加熱に好適なものに関する。特に、溶融亜鉛めっき等の溶融めっき設備において、鋼板幅方向でのめっき層の合金化を制御するものに関する。
【背景技術】
【0002】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、図7に示す装置により製造される。すなわち、溶融亜鉛200を満たした亜鉛ポット100に浸漬された鋼板Sは、シンクロール300で通板方向が変えられ上方に引き上げられ、過剰な亜鉛は、亜鉛ポット100の上方に設けたワイピングノズル400から、空気、窒素ガス等の高圧ガスを吹き付けて絞り取り、所定の付着量に調整される。
【0003】
所定の亜鉛付着量とされた溶融亜鉛めっき鋼板は、合金化炉700に導入され、500〜600℃程度に加熱されることにより、めっき皮膜の合金化処理が施されて合金化溶融亜鉛めっき鋼帯が製造される。合金化炉700は、直火バーナを用いる方式と電磁誘導加熱方式があり、応答性の点からは、電磁誘導加熱方式が優れる。
【0004】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、鋼板エッジ近傍は、めっき絞り部で付着量が多くなる傾向があり、また鋼板エッジ部は鋼板幅方向中央部に比べて冷却されやすい。そのため合金化処理の際に鋼板エッジ近傍に合金化不良(フリージンク)が発生しやすいとい問題がある。
【0005】
そのため、連続溶融金属鍍金装置において鍍金浴を浸漬通過させた後、次工程に至る間での金属帯両端部の温度低下を熱補償することが必要で、種々の加熱装置や加熱方法が提案されている。
特許文献1は、スリットバーナに関し、保護壁でほぼ閉囲させた燃焼区間で、燃料ガスと燃焼用空気を混合燃焼させ、さらに燃焼用の圧力空気供給孔の外側に設けた複数の空気流入孔より空気を自然流入させることにより不完全燃焼を解消し垂直方向に帯状の火炎をつくり、金属帯の端部を集中的に加熱するものが記載されている。
【特許文献1】実用新案登録第2506871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のスリットバーナは、燃焼用空気供給孔がセンターに一列、燃料ガス供給孔がその外側に2列配列された構造で燃焼用空気供給孔面積をあまり大きくできないため、燃料ガスを完全燃焼させるために必要な空気量が、燃料ガス量を上回り、燃焼用空気供給孔部の圧力損失が過大となり、燃焼用空気供給条件が限定される。
【0007】
また、図5、6に示すように、スリットバーナ10により金属帯60の両端部を加熱する場合、噴射面20に設けた燃料ガス供給孔40や圧力空気供給孔30、空気流入孔50が、矢印Cで示す金属帯60の移動方向に沿うように配置するので、金属帯60に衝突した火炎dは、矢印eに示すように、金属帯60の進行方向と直角方向に広がり、端部のみの加熱に留まらず、金属帯の中央部も加熱されるようになる。
【0008】
そこで、本発明は、金属帯端部の集中的な加熱に適したスリットバーナおよびその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は以下の手段により達成される。
【0010】
1 噴射面と該噴射面の4周に取り付けられる保護壁を有し、前記噴射面は一列の、複数の燃料ガス供給孔からなる燃料ガス供給孔列と、前記燃料ガス供給孔列の両側で、平行となるように配置される複数の燃焼用空気供給孔からなる燃焼用空気供給孔列と、更にその外側で、前記燃焼用空気供給孔列と平行となるように配置される複数の空気流入孔からなる空気流入孔列を有し、前記燃料ガス供給孔と前記燃焼用空気供給孔には供給管が連結され、前記保護壁は相対する内方に傾斜していることを特徴とするスリットバーナ。
【0011】
2 燃料ガス供給孔列の両側に配置される燃焼用空気供給孔列の開口面積の総和が各列で相違することを特徴とする1記載のスリットバーナ。
【0012】
3 空気流入孔列と平行に、その外側で噴射面に、相対して取り付けられる保護壁の高さが相違することを特徴とする1記載のスリットバーナ。
【0013】
4 燃料ガス供給孔列の両側に配置される燃焼用空気供給孔列の孔面積の総和が各列で相違し、孔面積の総和が大きい燃焼用空気供給孔列の外側に配置される空気流入孔列と平行に、その外側で噴射面に、相対して取り付けられる保護壁の高さが他方の保護壁の高さより、より高いことを特徴とする1記載のスリットバーナ。
【0014】
5 1乃至4のいずれか一つに記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【0015】
6 2記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置する際、孔面積の総和が大きい燃焼用空気供給孔列が金属帯の進行方向となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【0016】
7 3記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置する際、高さが高い保護壁が金属帯の進行方向となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【0017】
8 4記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置する際、高さが高い保護壁が金属帯の進行方向となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【0018】
9 空気比0.8±0.2で燃焼させることを特徴とする5乃至8の何れか一つに記載の金属帯の加熱方法。
【0019】
但し、空気比の計算において、空気量として、燃焼用空気供給孔列から供給されるものを用いる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属帯の幅方向端部の集中加熱が可能で、更に、火炎形状を制御することにより、金属帯が低温となる、移動方向下流側をより強く加熱することが可能となり、効果的に金属帯端部の熱補償を行え、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、スリットバーナにおいて燃料ガスの燃焼に必要な空気量を供給する際、燃焼用空気の圧力損失が過大とならないように燃料ガス供給孔と燃焼用空気供給孔を配置することを特徴とする。また、金属帯の端部が均一に加熱されるように、スリットバーナから噴出する燃焼炎の形状を制御する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係るスリットバーナの構造を説明する模式図で、図2は図1のA−A断面図を示す。図において1は、スリットバーナ、2は噴出面、3は燃焼用空気供給孔、4は燃料ガス供給孔、5は空気流入孔、6は金属帯、7、8は保護壁、aは燃料ガス供給孔4に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管、bは燃焼用空気供給孔3に燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給管、cは金属帯の進行方向、dは燃焼炎、eは燃焼炎dの噴出方向を示す。
【0023】
図示したスリットバーナは、噴射面2とその4周に、相対する内方に傾斜して取り付けられる保護壁(図では7と8を示し、他の2面は略)を有し、前記噴射面2と保護壁は、噴射面2を底辺とし、その先端部に、燃焼炎dを噴出する開口部を有する四角錘の一部からなる空間を形成する。
【0024】
噴射面2には、一列の、複数の燃料ガス供給孔4からなる燃料ガス供給孔列と、その燃料ガス供給孔列の両側で、平行となるように配置される複数の燃焼用空気供給孔3からなる燃焼用空気供給孔列と、更にその外側で、前記燃焼用空気供給孔列と平行となるように配置される複数の空気流入孔5からなる空気流入孔列を設ける。
【0025】
このような配置により、供給する燃焼用空気の供給圧を過度に高めることなく、燃料ガスに対して十分な量の燃焼用空気が供給でき、燃焼用空気の圧力損失を通常の操業条件の範囲内とすることが可能となる。
【0026】
燃料ガス供給孔4には燃料ガス供給管a,燃焼用空気供給孔3には燃焼用空気供給管bが連結される。
【0027】
燃焼炎dの形状を制御する場合は、燃焼用空気供給孔列の燃焼用空気供給孔3の孔面積の総和か、保護壁7(8)の高さの少なくとも一つを調整する。燃焼用空気供給孔列の燃焼用空気供給孔3の孔面積の総和が大きい列は、燃焼用空気がより多量に供給されるので、燃焼炎dは、孔面積の総和が大きい列側に偏向する。また、燃焼炎dは、保護壁7(8)の高さが高い側に偏向する。
【0028】
尚、燃焼炎の方向は、金属帯の進行方向、または逆方向に偏向させることが可能であるが進行方向に偏向させることが好ましい。加熱の噴射面の範囲は加熱個所とほぼ同等の範囲である。燃料ガス、燃焼用空気の供給用開口部の形状は孔でなく、スリットとしても良い。
【0029】
孔面積の総和が大きい燃焼用空気供給孔列の外側に、保護壁7(8)の高さが他方の保護壁より、より高いものを取り付けると、燃焼炎dは更に強く偏向するようになる。
【0030】
尚、燃焼炎dの噴出方向を制御する場合は、空気比0.8±0.2で燃焼させる。上記範囲の下限以下では未燃焼ガスが発生し、上限以上では火炎長が短くなりすぎ加熱効率が低下する。
【0031】
燃焼用空気供給孔列の燃焼用空気供給孔3の孔面積の総和の大小により燃焼炎dの噴出方向を制御し、安定燃焼させる場合は、更に、燃料ガスと燃焼用空気の吐出流速の比を1:0.4〜1:1とすることが好ましい。空気比の計算において、供給空気は燃焼用空気供給孔3からの供給する空気のみで空気流入孔5からの空気は含まない。
【0032】
本発明に係るスリットバー1を用いて金属帯6の端部を加熱する場合は、その燃料ガス供給孔列が金属帯6の進行方向と直角となるように配置する。金属帯6に衝突した燃焼炎dは、燃料ガス供給孔列が金属帯6の進行方向と直角に位置するので、金属帯6の進行方向に拡がり、主に端部を加熱する。
【0033】
金属帯6は、その移動方向下流側が低温となるので、燃焼用空気供給孔列の燃焼用空気供給孔3の孔面積や、保護壁7(8)の高さを調整して、燃焼炎dを下流側に偏向させ、下流側を、より強く加熱する。
【実施例1】
【0034】
金属帯6に対しスリットバー1を図3に示すように配置し、燃焼炎dを噴出させ、金属帯6の端部を加熱した。バーナ寸法は112H×152Wとした。
【0035】
燃料ガスはCOGとし、燃料ガス供給孔列は2Φの孔で11個、空気流入孔5は各列10Φの孔で5個、燃焼用空気供給孔列は金属帯6の進行方向(上流側)を3.2Φの孔で11個、下流側を4.7Φの孔で11個とした。速度比はCOG:空気で1:0.5、燃焼用空気の運動量比は上流側:下流側で1:2とした。また空気比は0.8とした。
【0036】
金属帯6の端部が効果的に加熱されることが確認された。
【実施例2】
【0037】
金属帯6に対しスリットバー1を図4に示すように配置し、燃焼炎dを噴出させ、金属帯6の端部を加熱した。バーナ寸法は112H×152Wとした。本実施例では、スリットバー1の保護壁7(金属帯6の進行方向上流側)の高さを保護壁8(下流側)より高く、高さ比で1:0.1とした。
【0038】
燃料ガスはCOGとし、燃料ガス供給孔列は2Φの孔で11個、空気流入孔5は各列10Φの孔で5個、燃焼用空気供給孔列は金属帯6の進行方向(上流側)を3.2Φの孔で11個、下流側も3.2Φの孔で11個とした。速度比はCOG:空気で1:0.5、燃焼用空気の運動量比は上流側:下流側で1:1とした。また空気比は0.8とした。
【0039】
本実施例では、金属帯6の進行方向に燃焼炎dが偏向し、より強く加熱されることが観察された。幅方向では端部が効果的に加熱された。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明例。
【図2】本発明例。
【図3】実施例。
【図4】実施例。
【図5】従来例。
【図6】従来例。
【図7】従来例(合金化溶融亜鉛めっき鋼板製造装置の一例を示す模式図)。
【符号の説明】
【0041】
1 スリットバーナ
2 噴出面
3 燃焼用空気供給孔
4 燃料ガス供給孔
5 空気流入孔
6 金属帯
7、8保護壁
a 燃料ガス供給管
b 燃焼用空気供給管
c 金属帯の進行方向
d 燃焼炎
e 噴出方向
10 スリットバーナ
20 噴射面
30 圧力空気供給孔
40 燃料ガス供給孔
50 空気流入孔
60 金属帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射面と該噴射面の4周に取り付けられる保護壁を有し、前記噴射面は一列の、複数の燃料ガス供給孔からなる燃料ガス供給孔列と、前記燃料ガス供給孔列の両側で、平行となるように配置される複数の燃焼用空気供給孔からなる燃焼用空気供給孔列と、更にその外側で、前記燃焼用空気供給孔列と平行となるように配置される複数の空気流入孔からなる空気流入孔列を有し、前記燃料ガス供給孔と前記燃焼用空気供給孔には供給管が連結され、前記保護壁は相対する内方に傾斜していることを特徴とするスリットバーナ。
【請求項2】
燃料ガス供給孔列の両側に配置される燃焼用空気供給孔列の開口面積の総和が各列で相違することを特徴とする請求項1記載のスリットバーナ。
【請求項3】
空気流入孔列と平行に、その外側で噴射面に、相対して取り付けられる保護壁の高さが相違することを特徴とする請求項1記載のスリットバーナ。
【請求項4】
燃料ガス供給孔列の両側に配置される燃焼用空気供給孔列の孔面積の総和が各列で相違し、孔面積の総和が大きい燃焼用空気供給孔列の外側に配置される空気流入孔列と平行に、その外側で噴射面に、相対して取り付けられる保護壁の高さが他方の保護壁の高さより、より高いことを特徴とする請求項1記載のスリットバーナ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【請求項6】
請求項2記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置する際、孔面積の総和が大きい燃焼用空気供給孔列が金属帯の進行方向となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【請求項7】
請求項3記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置する際、高さが高い保護壁が金属帯の進行方向となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【請求項8】
請求項4記載のスリットバーナを、その燃料ガス供給孔列が金属帯の進行方向と直角となるように配置する際、高さが高い保護壁が金属帯の進行方向となるように配置することを特徴とする金属帯の加熱方法。
【請求項9】
空気比0.8±0.2で燃焼させることを特徴とする請求項5乃至8の何れか一つに記載の金属帯の加熱方法。
但し、空気比の計算において、空気量として、燃焼用空気供給孔列から供給されるものを用いる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−284003(P2006−284003A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100882(P2005−100882)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】