説明

スルホニウム塩を含む高分子化合物、レジスト材料及びパターン形成方法、並びにスルホニウム塩単量体及びその製造方法

【課題】レジスト溶剤への溶解性が高い、スルホニウム塩含有高分子化合物を提供する。
【解決手段】一般式(1a)、(2)及び(3)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物。


(R1はH、F、CH3又はCF3を示す。R2〜R4は、いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基である特定の置換基。R8はH、又はアルキル基を示す。pは0又は1、Bは単結合又は2価の有機基を示す。aは0〜3の整数、bは1〜3の整数、Xは酸不安定基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)カチオンにフッ素原子を有するスルホニウムカチオンと特定の重合性単位を有するアニオンの重合性スルホニウム塩、(2)そのスルホニウム塩を構成単位とする高分子化合物、(3)当該高分子化合物を含有するレジスト材料及び(4)そのレジスト材料を用いて高エネルギー線を使用したパターン形成方法、並びにスルホニウム塩単量体及びその製造方法に関する。
なお、本発明において、高エネルギー線とは、紫外線、遠紫外線、電子線(EB)、EUV(極紫外光)、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線を含むものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、次世代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィー及び真空紫外線リソグラフィーが有望視されている。中でもArFエキシマレーザー光を光源としたフォトリソグラフィーは0.13μm以下の超微細加工に不可欠な技術である。
【0003】
更に、ArFリソグラフィー以降の露光技術としては、電子線リソグラフィー、F2リソグラフィー、EUVリソグラフィー、X線リソグラフィーなどが有望視されているが、真空下(減圧下)での露光を行わなければならないことから露光中に発生したスルホン酸が揮発し、良好なパターン形状が得られないなどの問題や揮発したスルホン酸が露光装置へのダメージを与える可能性がある。更にEB、EUVリソグラフィーにおいては、特に機器への負担を低減するために用いるレジスト材料の高感度化が望まれる。
【0004】
このような中で、解像性の向上やPED寸法変化の低減、添加酸発生剤のArF液浸露光での液浸液(水)への低減を目的に光酸発生剤単位を樹脂中に導入することが検討されている。特許文献1:特開2008−133448号公報には、トリフェニルスルホニウム=メタクリル酸1−(ジフルオロスルホメチル)−2,2,2−トリフルオロエチル(トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート)を構成単位として有する高分子化合物が記載されており、更に特許文献2:特開2009−263487号公報には、上記構成単位とフェノール性水酸基を有する重合単位とを有する高分子化合物が感度向上を達成できたことが記載されている。また、特許文献3:特開2010−77377号公報には、4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=メタクリル酸1,1−ジフルオロ−1−スルホエチル並びにこれを重合単位として用いた高分子化合物及びレジスト材料が開示されている。
【0005】
本発明者らの検討では、トリフェニルスルホニウムカチオンを有するスルホニウム塩はArFやKrF露光での感度は十分高いものの、EUV露光では未だ感度が不十分であり、特許文献2記載のような特定の重合性単位と組み合わせた場合でも、更なる感度向上が望まれている。また、解像性も更なる向上が望まれている。特許文献3記載の4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=メタクリル酸1,1−ジフルオロ−1−スルホエチルにはそれ自身の重合溶剤への溶解性やでき上がった高分子化合物のレジスト溶剤への溶解性が低い傾向があり、問題の解決には至っていない。
また、EUVレジストにおいても、従来のKrFレジストやArFレジストで問題となったラインエッジラフネス(LER)の問題も持ち上がってきており、これらの解決が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−133448号公報
【特許文献2】特開2009−263487号公報
【特許文献3】特開2010−77377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ArFエキシマレーザー光等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィー、特にEUV(極紫外光)リソグラフィーにおいて、高感度、高解像性かつラインエッジラフネス(LER)に優れたレジスト材料のベース樹脂用の単量体として有用な重合性アニオンを有するスルホニウム塩を用いて得られた高分子化合物、その高分子化合物を含有するレジスト材料及びそのレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示される4−フルオロフェニル基を有するスルホニウム塩を繰り返し単位として導入し、下記一般式(2)で示されるヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートに代表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で示される酸不安定基含有(メタ)アクリレート単位を有する高分子化合物をベース樹脂として用いたレジスト材料が、高感度、高解像性、低LERといった諸特性に優れ、この高分子化合物がレジスト材料として精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記のスルホニウム塩を単量体として含む高分子化合物及びレジスト材料及びパターン形成方法、更にスルホニウム塩単量体とその製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1a)、下記一般式(2)及び下記一般式(3)で示される繰り返し単位を含有することを特徴とする高分子化合物。
【化1】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。nは0〜2の整数を示す。R8は水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。pは0又は1、Bは単結合又は酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。aは0〜3の整数、bは1〜3の整数、Xは酸不安定基を示す。)
請求項2:
更に、下記一般式(4)〜(6)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【化2】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。Yはラクトン構造を有する置換基を示す。Zは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。)
請求項3:
更に、下記一般式(7)〜(9)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子化合物。
【化3】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Xは酸不安定基を示す。Gは酸素原子又はカルボニルオキシ基(−C(=O)O−)を示す。)
請求項4:
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高分子化合物をベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
請求項5:
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高分子化合物と、請求項1に記載の一般式(1a)、一般式(2)及び一般式(3)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物以外の高分子化合物とをベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
請求項6:
更に、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のポジ型レジスト材料。
請求項7:
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項8:
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な保護膜を塗布する工程と、当該基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項9:
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後電子線で描画する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項10:
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布し、波長3〜15nmの範囲の軟X線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項11:
下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩。
【化4】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。)
請求項12:
下記一般式(1b)で示されるアンモニウム塩と下記一般式(1c)で示される4−フルオロフェニルスルホニウム塩とをイオン交換させることを特徴とする請求項11に記載の一般式(1)で示されるスルホニウム塩の製造方法。
【化5】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。A+はアンモニウムカチオン、又は炭素数1〜16の一級、二級、三級もしくは四級アンモニウムカチオンを示す。X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はメチルサルフェートを示す。)
【0010】
本発明のレジスト材料は、液浸リソグラフィーに適用することも可能である。液浸リソグラフィーは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に液浸媒体を挿入して露光する。ArF液浸リソグラフィーにおいては、液浸媒体として主に純水が用いられる。NAが1.0以上の投影レンズと組み合わせることによって、ArFリソグラフィーを65nmノード以降まで延命させるための重要な技術であり、開発が加速されている。
【0011】
また、本発明のレジスト材料は、種々のシュリンク方法によって現像後のパターン寸法を縮小することができる。例えば、サーマルフロー、RELACS、SAFIRE、WASOOMなど既知の方法によりホールサイズをシュリンクすることができる。特にポリマーTgが低い水素化ROMPポリマー(シクロオレフィン開環メタセシス重合体水素添加物)などをブレンドした場合、サーマルフローによりホールサイズを効果的に縮小することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスルホニウム塩は重合溶剤への溶解性に優れ、更にこれを用いた高分子化合物はレジスト溶剤への溶解性も十分高い。また、本発明の合成方法では、従来製造のできなかった加水分解〜アシル交換による4−フルオロフェニルスルホニウム塩の合成を達成できた。
本発明の高分子化合物を感放射線レジスト材料のベース樹脂として用いた場合、高感度、高解像性かつラインエッジラフネスに優れ、この高分子化合物はレジスト材料として精密な微細加工に極めて有効である。更には、ArF液浸露光の際の水への溶出も抑えることができるのみならず、ウエハー上に残る水の影響も少ない。EUV露光の際にはアウトガスを抑え、特にラインエッジラフネスの改善を行うことができ、欠陥も抑えることができる。デバイス作製後のレジスト廃液処理の際には、(メタ)アクリル酸エステル部位がアルカリ加水分解されるため、より低分子量の低蓄積性の化合物へと変換が可能であるし、燃焼による廃棄の際もフッ素置換率が低いため、燃焼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】合成例5の[PAG−1]の1H−NMRを示した図である。
【図2】合成例5の[PAG−1]の19F−NMRを示した図である。
【図3】合成比較例1の[PAG−2]の1H−NMRを示した図である。
【図4】合成比較例1の[PAG−2]の19F−NMRを示した図である。
【図5】合成比較例2の[PAG−3]の1H−NMRを示した図である。
【図6】合成比較例2の[PAG−3]の19F−NMRを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では第一に重合性アニオンを有するアンモニウム塩と4−フルオロフェニル基を有するスルホニウム塩との交換により得られるスルホニウム塩を提供する。
以下、本発明の上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩の合成方法について述べる。なお、公知の方法である特開2008−133448号公報、特開2009−263487号公報を参考に4−フルオロフェニルスルホニウム=2−アシルオキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネートの加水分解/加アルコール分解を行って4−フルオロフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネートを調製しようとする場合には、4−フルオロフェニルスルホニウムカチオンへのヒドリシス、アルコリシスが生じ、カチオンが分解して4−ヒドロキシフェニルスルホニウムや4−アルコキシフェニルスルホニウムカチオンを生じるため、そのまま適用することはできない。
【0015】
本合成方法の概略は下記の通りである。
【化6】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。A+はアンモニウムカチオン、又は炭素数1〜16の一級、二級、三級もしくは四級アンモニウムカチオンを示す。X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はメチルサルフェートを示す。)
【0016】
以下、詳述する。
上記一般式(1b)中のA+は上記定義の通りであるが、炭素数1〜16の一級、二級、三級もしくは四級アンモニウムカチオンとして具体的には、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、tert−ブチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、2,6−ルチジニウム、アニリニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等が挙げられるが、4−フルオロフェニルスルホニウム塩類との交換ができればこれに限定されるものではない。有機溶剤への溶解性等の取り扱いのし易さと後述するイオン交換の容易性からはトリエチルアンモニウム又はベンジルトリメチルアンモニウムが好ましく用いられる。
上記一般式(1c)中のX-はフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はメチルサルフェートを示すが、好ましくは塩化物イオン、メチルサルフェートである。
上記一般式(1b)及び(1)中のR1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、好ましくは水素原子、メチル基である。
上記一般式(1c)及び(1)中のR2〜R4は上記定義の通りであるが、具体的にR2、R3、R4を示すと、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、4−フルオロフェニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。R2〜R4のいずれか1つは4−フルオロフェニル基である。また、R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して硫黄原子と共に、環状構造を形成する場合には、下記式で示される基が挙げられる。
【0017】
【化7】


(上記式中においてのみ、R4は4−フルオロフェニル基を示す。)
【0018】
より具体的にスルホニウムカチオンを示すと、4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−フルオロフェニルジ(4−メチルフェニル)スルホニウム、ビス(4−フルオロフェニル)(4−メチルフェニル)スルホニウム、4−フルオロフェニルジ(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)スルホニウム、ビス(4−フルオロフェニル)(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)スルホニウム、4−フルオロフェニルビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、ビス(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)−4−フルオロフェニルスルホニウム、(4−フルオロフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、ビス(4−フルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホニウム、4−フルオロフェニルジメチルスルホニウム、2−オキソ−2−(4−フルオロフェニル)エチルチアシクロペンタニウム、4−フルオロナフタ−1−イルテトラヒドロチオフェニウム、10−(4−フルオロフェニル)フェノキサチイニウム等が挙げられる。いわゆるアルキルスルホニウム塩は熱安定性の低さや求核剤に対する反応性の高さなどの問題があり、より好ましくは4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−フルオロフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−フルオロフェニルジ(4−メチルフェニル)スルホニウム、10−(4−フルオロフェニル)フェノキサチイニウム等が挙げられる。
【0019】
以下合成方法に関して詳述する。
(1)スルホン酸アニオンの調製方法:(1b)の合成方法
中井らにより1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールを出発原料として開発された1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン−2−イルベンゾエートに代表される1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン−2−イル脂肪族カルボン酸エステルあるいは芳香族カルボン酸エステルを亜硫酸水素ナトリウムあるいは亜硫酸ナトリウムとアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等のラジカル開始剤存在下あるいは非存在下で、溶剤として水あるいはアルコール及びその混合物中で反応させることにより、対応する1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−アシルオキシプロパンスルホン酸塩あるいは1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−アレーンカルボニルオキシプロパンスルホン酸塩を得た後にベンジルトリメチルアンモニウムブロミドやトリエチルアンモニウムクロリド等のアンモニウム塩との塩交換を行い、アンモニウム塩を得る。
このアンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−アシルオキシプロパンスルホネートあるいはベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−アレーンカルボニルオキシプロパンスルホネートを水酸化ナトリウム等の塩基により加水分解後、酸により中和してベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパンスルホネートを得る。重合性アニオンを合成する反応は、公知の方法により容易に進行するが、上記中間体を塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中に溶解し、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基とアクリロイルクロリド、アクリル酸無水物、メタクリロイルクロリド、メタクリル酸無水物、2−フルオロアクリロイルクロリド、2−フルオロアクリル酸無水物、α,α,α−トリフルオロメタクリルクロリド、α,α,α−トリフルオロメタクリル酸無水物などの酸クロリドあるいは酸無水物を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0020】
(2)カチオンの調製:(1c)の合成方法
これは一例であるがジフェニルスルホキシド、トリメチルシリルクロリド、4−フルオロフェニルグリニャール試薬を用いて定法により4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムクロリド等を合成できる。これら合成方法は特許第4175115号公報を参考にできる。また特許第3063615号公報や特許第4207623号公報記載のようにグリニャール試薬からトリス(4−フルオロフェニル)スルホニウムハライドを調製することもできる。
ジアリールスルホキシドとしてはジフェニルスルホキシドの他、ビス(4−メチルフェニル)スルホキシド、ビス(4−フルオロフェニル)スルホキシド、フェノキサチイン−S−オキシド等を用いることができ、アリールグリニャール試薬としては4−フルオロフェニルグリニャール試薬の他、フェニルグリニャール試薬、4−メチルフェニルグリニャール試薬等を用いることができる。
【0021】
(3)スルホニウム塩の調製:(1)の合成方法
上記の重合性単位を有するアンモニウム塩(1b)とフルオロフェニル基を有するスルホニウム塩(1c)は通常の塩交換方法によって調製できる。具体的にはジクロロメタン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤及び水中にて混合し有機層を分取、ついでこの有機層を水洗濃縮して再結晶やカラムクロマト等により精製し、得ることができる。
なお、繰り返しになるが、4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−アシルオキシプロパンスルホネートをメタノール水溶液中の加水分解/アルコリシス等既存条件にて中間体を得ようとする場合には、スルホニウムカチオンのフッ素原子が水酸化物イオンやアルコキシドより求核置換され、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム塩や4−アルコキシフェニルジフェニルスルホニウム塩となってしまうため、好ましくない。上記のように重合性単位を有するアニオン部を別途調製し、4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムカチオンと交換することで上記問題を解決し得る。
【0022】
更に、本発明では第二に下記一般式(1a)、下記一般式(2)及び下記一般式(3)で示される繰り返し単位を含有することを特徴とする高分子化合物を提供する。
【化8】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。nは0〜2の整数を示す。R8は水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。pは0又は1、Bは単結合又は酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。aは0〜3の整数、bは1〜3の整数、Xは酸不安定基を示す。)
【0023】
以下、繰り返し単位について詳述する。
上記式(1a)中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、好ましくは水素原子、メチル基である。
上記式(1a)中、R2、R3及びR4については上述の一般式(1)と同様である。
【0024】
上記一般式(1a)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できる。
【化9】

【0025】
上記一般式(2)中のR1は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。より好ましくは水素原子あるいはメチル基である。nは0〜2の整数を示し、好ましくは1あるいは2である。R8は水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、好ましくは水素原子、メチル基である。pは0又は1、Bは単結合又は酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基としてはメチレンなどのアルキレン基が挙げられる。好ましくは単結合、メチレンである。aは0〜3の整数であり、好ましくは0である。bは1〜3の整数であり、好ましくは1である。
【0026】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できる。
【化10】

【0027】
上記一般式(3)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。Xは酸不安定基を示す。
酸不安定基Xとしては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)及び(L2−2)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0028】
【化11】

【0029】
式中、破線は結合手を示す(以下、同様)。
式(L1)において、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0030】
【化12】

【0031】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0032】
式(L2)において、RL04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜6の整数である。
【0033】
式(L2−2)において、
【化13】

は下記の基であり、RL04は上記と同意である。
【化14】

(式中、破線は結合手を示す。Wは酸素原子あるいはCH2を示し、Mは1〜3の整数である。)
【0034】
式(L3)において、RL05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。mは0又は1、nは0、1、2、3のいずれかであり、2m+n=2又は3を満足する数である。
【0035】
式(L4)において、RL06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL05と同様のもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL07〜RL16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09L07とRL10L08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の2価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15、RL14とRL15等)。
【0036】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化15】

【0037】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0038】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0039】
上記式(L2−2)の酸不安定基としては、具体的には、
9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル基、
2−(9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
2−(9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル基、
4−(9−(tert−ブチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(tert−アミルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−ブチルシクロペンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−エチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(1−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基、
4−(9−(4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イルオキシカルボニル)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−4−オキソブチル基等が例示できる。
【0040】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0041】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化16】

【0042】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0043】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0044】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化17】

【0045】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化18】

【0046】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0047】
なお、(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50モル%以上であることが好ましく、exo比率が80モル%以上であることが更に好ましい。
【化19】


(特開2000−336121号公報参照)
【0048】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化20】

【0049】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはRL04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0050】
前記一般式(3)で表される繰り返し単位として具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。(メタ)アクリル酸エステルのみを示しているが、上記式(L−2)又は(L−2−2)で示される2価の連結基を介したものを用いてもよい。
【0051】
【化21】

【0052】
【化22】

【0053】
【化23】

【0054】
【化24】

【0055】
【化25】

【0056】
【化26】

【0057】
また、本発明の高分子化合物には、上記一般式(1a)、(2)及び(3)で示される化合物の繰り返し単位に加え、下記一般式(4)〜(6)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することができる。
【化27】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。Yはラクトン構造を有する置換基を示す。Zは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。)
【0058】
前記一般式(4)で表される繰り返し単位として、具体的には以下のものが例示できる。
【化28】

【0059】
前記一般式(5)で表される繰り返し単位として、具体的には以下のものが例示できる。なお、酸不安定基を有する繰り返し単位も存在する。具体的には上記酸不安定基として説明した式(L2−2)と重複するが、ラクトン単位として使用してもよいし、酸不安定基を有する単位として用いてもよい。
【0060】
【化29】

【0061】
【化30】

【0062】
【化31】

【0063】
また、下記一般式(5L−1)のものも好適に用いることができる。
【化32】

【0064】
ここで、上記一般式(5L−1)中のR1は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。より好ましくはメチル基である。R5は水素原子又はCO25’又はCO2Xを示す。R5’は水素原子、ハロゲン原子又は酸素原子を有していてもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。W’はCH2、O又はSを示す。M’は1〜3の整数である。)
【0065】
5’として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、及び下記の基等が例示できる。
【0066】
【化33】


(式中、破線は結合手を示す。)
【0067】
これらの中でも、R5’として好ましくは、メチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基等が挙げられる。W’として好ましくはCH2が挙げられる。
【0068】
上記一般式(5L−1)で示される繰り返し単位を構成するためのモノマーとして、具体的には下記のものを例示できる。
【0069】
【化34】


(式中、R1は上記と同様である。)
【0070】
【化35】


(式中、R1は上記と同様である。)
【0071】
【化36】


(式中、R1は上記と同様である。)
【0072】
なお、上記一般式(5L−1)で示される繰り返し単位を構成するためのモノマー類でM’=1の化合物に関しては特開2008−031298号公報に詳しい。また、M’=3の化合物に関してはM’=1の化合物における原料のクロロアセチルクロリドをクロロ酪酸クロリドとすることで同様に合成ができる。
【0073】
前記一般式(6)で表される繰り返し単位として、具体的には以下のものを挙げることができる。
【化37】

【0074】
【化38】

【0075】
本発明の高分子化合物は、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0076】
なお、本発明の高分子化合物は、ArF露光以外のリソグラフィー、例えばKrFリソグラフィー、電子線リソグラフィー、EUVリソグラフィーなどにも適用が可能である。
【0077】
即ち、本発明の高分子化合物には、更に下記一般式(7)〜(9)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することができ、更に上述した一般式(4)〜(6)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有していてもよい。
【化39】


(式中、R1、Xは上記と同様である。Gは酸素原子又はカルボニルオキシ基(−C(=O)O−)を示す。)
【0078】
上記一般式(7)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してフェノール性水酸基及び/又はカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基Xとしては種々用いることができるが、具体的には上述した一般式(L1)〜(L4)及び(L2−2)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0079】
前記一般式(7)で表される繰り返し単位として具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化40】

【0080】
上記一般式(9)で示されるヒドロキシビニルナフタレンの置換位置は任意であるが、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシ−1−ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でも6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレンが好ましく用いられる。
【0081】
更に、上記一般式(7)〜(9)で示される繰り返し単位のいずれか1種に加えて上記一般式(4)〜(6)で示される繰り返し単位の中で、特に上記一般式(4)で示される繰り返し単位を含有するものを好ましく用いることができる。
【0082】
本発明の重合性アニオンを有するスルホニウム塩を繰り返し単位として含み、上記一般式(7)〜(9)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有する高分子化合物には、上記以外の炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体、ノルボルナジエン類などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、スチレン、アセナフチレン、ビニルナフタレン、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0083】
なお、本発明の高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。分子量の測定方法は、溶出液として臭化リチウムを少量添加したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いたポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)や光散乱法などが挙げられる。
【0084】
本発明の高分子化合物において、各単量体から得られる各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0085】
(I)上記式(1a)の構成単位の1種又は2種以上を0モル%を超え50モル%以下、好ましくは1〜30モル%、より好ましくは5〜20モル%含有し、
(II)上記式(2)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モルを超え80モル%未満、好ましくは10〜50モル%、より好ましくは20〜40モル%含有し、
(III)上記式(3)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モルを超え80モル%未満、好ましくは10〜50モル%、より好ましくは20〜40モル%含有し、必要に応じ、
(IV)上記式(4)〜(6)及び/又は上記式(7)〜(9)で示される構成単位の1種又は2種以上を0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有し(なお、配合する場合は、0モル%を超えること、特に1モル%以上であることが好ましい。)、更に必要に応じ
(V)その他の構成単位の1種又は2種以上を0〜50モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜30モル%含有することができる。
【0086】
本発明の高分子化合物の製造は、上記一般式(1a)で示される化合物を第1の単量体に、重合性二重結合を含有する化合物を第2以降の単量体に用いた共重合反応により行う。
本発明の高分子化合物を製造する共重合反応は種々あるが、好ましくはラジカル重合である。
【0087】
ラジカル重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール等のアルコール類、又はメチルイソブチルケトン等のケトン類を用い、(イ)重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、又は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0088】
また、上記重合方法により製造した高分子化合物の酸不安定基の一部あるいは全部を脱保護し、再び酸不安定基を導入し、重合時に導入した酸不安定基とは異なる置換基を導入することもできる。
【0089】
例えば、4−エトキシエトキシスチレンと本発明の上記一般式(1)で示される重合性アニオンを有するスルホニウム塩を上述のラジカル重合により高分子化合物とし、次いで酢酸、ピリジニウムトシレートなどによりエトキシエトキシ基を外し、ジtert−ブチルジカーボネート、クロロ酢酸tert−ブチル、種々ビニルエーテルなどと反応させることにより、重合時の酸不安定基(エトキシエトキシ基)とは異なる酸不安定基の導入をすることができる。
【0090】
本発明では第三に、上述した高分子化合物を含有するレジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料を提供する。
この場合、ポジ型レジスト材料としては、
(A)上記高分子化合物を含むベース樹脂、
(C)有機溶剤、
必要により、更に
(B)酸発生剤、
(D)クエンチャー、
(E)界面活性剤
を含有するものが好ましい。
【0091】
上記ポジ型レジスト材料を構成する場合、上記(A)成分のベース樹脂として、本発明の高分子化合物以外に、必要に応じて他の、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する樹脂を加えてもよい。例としては、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、v)ポリヒドロキシスチレン誘導体などを挙げることができるが、これに限定されない。
これらの例示に関しては特開2009−263487号公報を参照できる。
【0092】
本発明の高分子化合物と別の高分子化合物との配合比率は、100:0〜10:90、特に100:0〜20:80の質量比の範囲内にあることが好ましい。本発明の高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
なお、上記高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0093】
本発明で必要に応じて使用される(B)成分の酸発生剤として光酸発生剤を添加する場合は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
これらの例示に関しては特開2009−263487号公報を参照できる。
【0094】
中でもより好ましく用いられるのは、下記一般式(PAG−1)で示される酸発生剤である。
【化41】

【0095】
ここで、式中、R5P、R6P、R7Pはそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示し、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基として具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、及びこれらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基や、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基に置換された基を例示することができる。R8Pはヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示し、具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
【化42】

【0097】
より具体的には、以下のものが例示できる。
【化43】

【0098】
【化44】

【0099】
本発明の化学増幅型レジスト材料における(B)成分の光酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100部(質量部、以下同様)に対し0.1〜10部、好ましくは0.1〜5部である。(B)成分の光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト膜剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記(B)成分の光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0100】
なお、光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる。即ち、本発明の高分子化合物は強酸を発生するので弱酸(例えばフッ素置換されていないスルホン酸もしくはカルボン酸)を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により本発明の高分子化合物から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し、強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
ここで強酸を発生するオニウム塩と弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、上記のように強酸が弱酸に交換することはできるが、弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いとの現象に起因する。
【0101】
本発明で使用される(C)成分の有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0102】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100部に対して200〜1,000部、特に400〜800部が好適である。
【0103】
更に、本発明のレジスト材料には、クエンチャー(D)を1種又は2種以上配合することができる。
クエンチャーとは、本技術分野において広く一般的に用いられる用語であり、酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物を言う。クエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0104】
このようなクエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が挙げられる。
これらの例示に関しては特開2009−263487号公報を参照できる。
【0105】
なお、クエンチャーの配合量は、ベース樹脂100部に対して0.001〜2部、特に0.01〜1部が好適である。配合量が0.001部より少ないと配合効果がなく、2部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。
【0106】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤(E)を添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0107】
界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171,F172,F173,R08,R30,R90,R94(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−430,FC−431,FC−4430,FC−4432(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,S−386,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40、S−386、S−651,S−420(AGCセイミケミカル(株)製)、サーフィノールE1004(日信化学工業(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられ、また、下記構造式(surf−1)の部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤も好ましく用いられる。
【0108】
【化45】


ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、上述の界面活性剤以外の記載に拘わらず、上記式(surf−1)のみに適用される。Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンが挙げられ、3又は4価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化46】


(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0〜3の整数、nは1〜4の整数であり、nとmの和はRの価数を示し、2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくはBは4〜20の整数を示し、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
上記界面活性剤の中でもFC−4430,サーフロンS−381,サーフィノールE1004,KH−20,S−386,S−651、S−420及び上記構造式にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0109】
本発明の化学増幅型レジスト材料中の界面活性剤の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100部に対し好ましくは2部以下、より好ましくは1部以下であり、配合する場合は、0.01部以上であることが好ましい。
【0110】
本発明の実施に用いるレジスト材料には、水を用いた液浸露光において特にはレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤は高分子型の界面活性剤であり、水に溶解せずアルカリ現像液に溶解する性質であり、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤の例示に関しては特開2009−263487号公報を参照できる。
【0111】
上記高分子型の界面活性剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂100部に対して0.001〜20部、好ましくは0.01〜10部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0112】
本発明のレジスト材料の基本的構成成分は、上記の高分子化合物(ベース樹脂)、有機溶剤であり、更に酸発生剤、クエンチャーを含有してもよいが、上記成分以外に任意成分として必要に応じて、更に、溶解阻止剤、酸性化合物、安定剤、色素などの他の成分を添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0113】
本発明では第四に、上述したレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供する。
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線、波長3〜15nmの範囲の軟X線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも250〜190nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。また、上記範囲が上限又は下限から外れる場合は、目的のパターンを得ることができない場合がある。
【0114】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型ともう1種類はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶媒に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【実施例】
【0115】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0116】
本発明の高分子化合物に用いる重合性スルホニウム塩を以下に示す処方で合成した。
[合成例1]4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムブロミドの合成
ジフェニルスルホキシド40g(0.2モル)をジクロロメタン400gに溶解させ、氷冷下撹拌した。トリメチルシリルクロリド65g(0.6モル)を、20℃を超えない温度で滴下し、更にこの温度で30分間熟成を行った。次いで、金属マグネシウム14.6g(0.6モル)と4−フルオロブロモベンゼン105g(0.6モル)、テトラヒドロフラン(THF)300gから別途調製したGrignard試薬を、20℃を超えない温度で滴下した。反応の熟成を1時間行った後、20℃を超えない温度で水50gを加えて反応を停止し、更に水300gと12規定塩酸10gとジエチルエーテル200gを加えた。
水層を分取し、ジエチルエーテル100gで洗浄し、4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムブロミド水溶液を得た。これは、これ以上の単離操作をせず、水溶液のまま次の反応に用いた。
【0117】
[合成例2]ベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ピバロイルオキシプロパン−1−スルホネートの合成
常法により合成した1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロパン−2−イル ピバロエート46.4g(0.2モル)を水325gに分散させ、亜硫酸水素ナトリウム41.6g(0.4モル)を加えて100℃で48時間反応を行った。反応液を放冷後、トルエンを加えて分液操作を行い、分取した水層にベンジルトリメチルアンモニウムクロリド37.1g(0.2モル)とジクロロメタン300gを加え、有機層に目的物を抽出した。有機層を水洗後、溶剤を除去しジイソプロピルエーテルを加えて結晶を濾過、乾燥することで目的物を得た[白色結晶77g(収率83%)]。
【0118】
[合成例3]ベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネートの合成
合成例2のベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ピバロイルオキシプロパン−1−スルホネート46.3g(0.1モル)をメタノール139gに溶解させ、氷冷下で撹拌した。水酸化ナトリウム8.0g(0.2モル)と水24gを別途溶解させ、20℃を超えない温度で滴下した。一晩室温で撹拌を行い、濃塩酸21gと水60gを加えて反応を停止した。メタノールを減圧除去後、残渣にジクロロメタンと水を加えて有機層を分取し、再度有機層を濃縮した。一部白色結晶を含む残渣にジイソプロピルエーテル150gを加えて結晶を濾過、乾燥することで目的物を得た[白色結晶37g(収率98%)]。
【0119】
[合成例4]ベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホネートの合成
合成例3のベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート37.9g(0.1モル)をジクロロメタン152gに溶解させ、トリエチルアミン11.1g(0.11モル)と4−ジメチルアミノピリジン0.06g(0.005モル)を加えて氷冷下で撹拌した。メタクリル酸無水物16.2g(0.105モル)を、20℃を超えない温度で滴下した。一晩室温で撹拌を行い、濃塩酸13gと水40gを加えて反応を停止した。有機層を分取し、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド10質量%水溶液100gを用いて3回有機層を洗浄した後に微量の重合禁止剤を加えて溶剤を減圧除去後、残渣にジイソプロピルエーテル150gを加えて結晶を濾過、乾燥することで目的物を得た[白色結晶31g(収率73%)]。
【0120】
[合成例5]4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホネート[PAG−1]の合成
合成例1の4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムブロミド水溶液(0.05モル相当)と合成例4のベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホネート22.4g(0.05モル)をジクロロメタン200gに加えて撹拌した。有機層を分取し、更に水200gで3回有機層を洗浄した後、有機層に微量の重合禁止剤を添加し、溶剤を減圧除去した。残渣にジイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ、濾過、乾燥することで目的物を得た[白色結晶27.5g(収率95%)]。
得られた目的物の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR)を図1及び図2に示す。また赤外吸収スペクトル(IR)及び飛行時間型質量分析スペクトル(TOF−MS)の結果を以下に記す。
赤外吸収スペクトル(KBr:cm-1
1733、1588、1492、1474、1445、1375、1256、1213、1184、1172、1161、1138、1116、1068、1009、991、902、839、811、767、755、686、639
飛行時間型質量分析スペクトル(TOF−MS:MALDI)
POSITIVE M+281((C64F)(C652+相当)
NEGATIVE M-297(CF3CH(OCOC(CH3)=CH2)CF2SO3-相当)
【0121】
[合成比較例1]4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ピバロイルオキシプロパン−1−スルホネート[PAG−2]の合成
合成例1の4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムブロミド水溶液とベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ピバロイルオキシプロパン−1−スルホネートをジクロロメタン中で混合した。有機層を分取し、更に水で3回有機層を洗浄した後、溶剤を減圧除去した。残渣にジイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ、濾過、乾燥することで目的物を得た。
PAG−2の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR)を図3及び図4に示す。19F−NMRにおいて4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムカチオンのフッ素に起因するスペクトルが−104ppm付近に観測されている。
【0122】
[合成比較例2]4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネートの合成検討
合成比較例1の4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ピバロイルオキシプロパン−1−スルホネート59.4g(0.1モル)をメタノール139gに溶解させ、氷冷下で撹拌した。水酸化ナトリウム8.0g(0.2モル)と水24gを別途溶解させ、20℃を超えない温度で滴下した。一晩室温で撹拌を行い、濃塩酸21gと水60gを加えて反応を停止した。メタノールを減圧除去後、残渣にジクロロメタンと水を加えて有機層を分取し、再度有機層を濃縮した。残渣にジイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ、濾過、乾燥して白色結晶を得た。しかしながらこの結晶の19F−NMRを測定したところ4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムカチオンのフッ素に起因する−104ppm付近に観測されていたピークが消失しており、生成物は4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート[PAG−3]であった。
PAG−3の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR)を図5及び図6に示す。
本検討では水酸化ナトリウムを2当量用いたが、1当量ではエステルの加水分解/アルコリシスは不十分であり、1.5〜2当量以上入れなければ完結しないことがわかった。4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウムカチオンの分解を抑えてエステルだけを分解することは困難である。
【0123】
[実施例1−1]ポリマー1の合成
本発明の高分子化合物(ポリマー1)を以下に示す処方で合成した。
窒素雰囲気としたフラスコに8.9gの4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート、12.7gのメタクリル酸4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,7.02,6]ドデカン−4−イル、10.3gのメタクリル酸2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル、8.2gのメタクリル酸4−ヒドロキシフェニル、1.77gの2,2’−アゾビスイソ酪酸メチル、0.2gのメルカプトエタノール、84.8gのMEK(メチルエチルケトン)をとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに23.3gのMEKをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した400gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をMEK45.4gとヘキサン194.6gとの混合溶媒で2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して31gの白色粉末状の共重合体(ポリマー1)を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で10/30/30/30モル%であった。
【化47】

【0124】
[比較例1−1]比較例ポリマー1の合成
同様に比較例ポリマー1を合成した。
窒素雰囲気としたフラスコに8.7gのトリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート、12.8gのメタクリル酸4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,7.02,6]ドデカン−4−イル、10.4gのメタクリル酸2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル、8.3gのメタクリル酸4−ヒドロキシフェニル、1.78gの2,2’−アゾビスイソ酪酸メチル、0.2gのメルカプトエタノール、84.8gのMEK(メチルエチルケトン)をとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに23.3gのMEKをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した400gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をMEK45.4gとヘキサン194.6gとの混合溶媒で2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して31gの白色粉末状の共重合体(比較例ポリマー1)を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で10/30/30/30モル%であった。
【化48】

【0125】
[比較例1−2]比較例ポリマー2の合成
実施例1−1の4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネートに代えて、特許文献3:特開2010−77377号公報に記載の4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1−ジフルオロ−2−メタクリロイルオキシエタンスルホネートを用いたが、重合中にポリマーが析出し、重合反応を行うことができなかった。
【0126】
[実施例1−2〜13、比較例1−3,4]ポリマー2〜13、比較例ポリマー3,4の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、実施例1−1と同様の手順により、表1に示した樹脂(高分子化合物)を製造した。ポリマー13はポリマー12のエトキシエチル基を脱保護して合成した。これらポリマーの保護−脱保護は特開2009−263487号公報を参考に行うことができる。なお、下記表1において、導入比はモル比を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
なお、表1中の重合性単位は下記化合物を示す。
PM−1:4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート
PM−2:トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート
A−1:メタクリル酸4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,7.02,6]ドデカン−4−イル
A−2:メタクリル酸2−エチルトリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−2−イル
A−3:メタクリル酸8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル
A−4:メタクリル酸1−エチルシクロヘキシル
A−5:メタクリル酸1−(1−メチルエチル)シクロペンチル
A−6:メタクリル酸6−メチルスピロ[4.5]デカ−6−イル
A−7:メタクリル酸1−メチル−1−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イル)エチル
A−8:4−t−アミルオキシスチレン
A−9:4−(1−エトキシエトキシ)スチレン
L−1:メタクリル酸2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル
L−2:メタクリル酸2−オキソオキソラン−3−イル
L−3:メタクリル酸ブタノ−4−ラクトン−3−イル
L−4:メタクリル酸5−オキソ−9−メトキシカルボニル−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル
H−1:メタクリル酸4−ヒドロキシフェニル
H−2:メタクリル酸6−ヒドロキシ−2−ナフチル
H−3:4−ヒドロキシスチレン
H−4:メタクリル酸3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イル
上記ポリマー1〜13及び比較例ポリマー1,3,4をそれぞれP−1〜13、RP−1,3,4とした。
【0129】
レジスト材料の調製
[実施例2−1〜12、比較例2−1〜3]
上記で製造した本発明の樹脂(P−1〜11,13)及び比較例用の樹脂(RP−1,3,4)をベース樹脂として用い、酸発生剤、クエンチャー(塩基性化合物)、及び溶剤を表2に示す組成で添加し、混合、溶解後にそれらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、レジスト材料(R−1〜12)及び比較用のレジスト材料(RR−1〜3)を得た。
【0130】
【表2】

【0131】
表2中、略号で示した酸発生剤、クエンチャー(塩基性化合物)及び溶剤は、それぞれ下記の通りである。
PAG−α:4−フルオロフェニルジフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1−スルホネート
Base−1:トリ(2−メトキシメトキシエチル)アミン
三成分系:酢酸1−メトキシ−2−プロピル/1−メトキシ−2−プロパノール/シクロヘキサノン混合溶剤(質量比1,000/500/2,000)に界面活性剤としてポリフォックスPF636(オムノバ社製)を0.01質量%添加したもの
【0132】
感度、解像性の評価:EUV露光
[実施例3−1〜12、比較例3−1〜3]
本発明のレジスト材料(R−1〜12)及び比較用のレジスト材料(RR−1〜3)を、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理した直径4インチのシリコンウエハー上へスピンコーティングし、105℃,60秒間の熱処理を施して、厚さ50nmのレジスト膜を形成した。これにEUVマイクロステッパー(NA0.3、ダイポール照明)を用いて露光した。直ちに表3記載の温度で60秒間の熱処理(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間パドル現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。
【0133】
得られたレジストパターンを次のように評価した。
35nmのラインアンドスペースのトップとボトムを1:1で解像する露光量を最適露光量(感度:Eop)として、この露光量における分離しているラインアンドスペースの最小線幅を評価レジストの解像度とした。また35nmラインアンドスペースにおけるエッジラフネスをSEMにて測定した。その結果を表3に記す。
【0134】
【表3】

【0135】
表3中の結果等から、本発明のレジスト材料が、EUV露光において高感度で解像性能に優れることが確認された。
なお、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液の代わりに3.84質量%のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、5.31質量%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液、6.78質量%のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いることでもポジ型レジストパターンを得ることができ、解像性やラインエッジラフネスはやや改善した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1a)、下記一般式(2)及び下記一般式(3)で示される繰り返し単位を含有することを特徴とする高分子化合物。
【化1】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。nは0〜2の整数を示す。R8は水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。pは0又は1、Bは単結合又は酸素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10の2価の有機基を示す。aは0〜3の整数、bは1〜3の整数、Xは酸不安定基を示す。)
【請求項2】
更に、下記一般式(4)〜(6)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【化2】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。Yはラクトン構造を有する置換基を示す。Zは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。)
【請求項3】
更に、下記一般式(7)〜(9)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子化合物。
【化3】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Xは酸不安定基を示す。Gは酸素原子又はカルボニルオキシ基(−C(=O)O−)を示す。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高分子化合物をベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高分子化合物と、請求項1に記載の一般式(1a)、一般式(2)及び一般式(3)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物以外の高分子化合物とをベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【請求項6】
更に、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のポジ型レジスト材料。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な保護膜を塗布する工程と、当該基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後電子線で描画する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布し、波長3〜15nmの範囲の軟X線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩。
【化4】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。)
【請求項12】
下記一般式(1b)で示されるアンモニウム塩と下記一般式(1c)で示される4−フルオロフェニルスルホニウム塩とをイオン交換させることを特徴とする請求項11に記載の一般式(1)で示されるスルホニウム塩の製造方法。
【化5】


(式中、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。R2、R3及びR4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、アリールオキソアルキル基又は4−フルオロフェニル基を示す。R2、R3及びR4の内いずれか2つが相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。但し、R2〜R4の内いずれか1つ以上は4−フルオロフェニル基を示す。A+はアンモニウムカチオン、又は炭素数1〜16の一級、二級、三級もしくは四級アンモニウムカチオンを示す。X-はフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はメチルサルフェートを示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107151(P2012−107151A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258496(P2010−258496)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】