スロー排気機能付き真空制御バルブ
【課題】真空容器の真空引きの過程において発生するパーティクルの巻き上がりを抑制する技術を簡易に実装する技術を提供する。
【解決手段】真空制御バルブ100は、真空容器に接続される上流側流路141と、真空ポンプに接続される下流側流路142と、を含む流路140と、弁開度を操作することによって、上流側流路141と下流側流路142との間のコンダクタンスを変化させる開閉弁110と、上流側流路141の内部の圧力を計測する圧力センサ120と、上流側流路141の目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させ、計測された圧力と目標圧力値との間の偏差に応じて開度を操作する制御部150と、を備え、制御部150は、真空制御バルブ100の外部からの開始入力に応じて、コンダクタンスを操作することによって偏差を小さくする制御を開始する。コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができる。
【解決手段】真空制御バルブ100は、真空容器に接続される上流側流路141と、真空ポンプに接続される下流側流路142と、を含む流路140と、弁開度を操作することによって、上流側流路141と下流側流路142との間のコンダクタンスを変化させる開閉弁110と、上流側流路141の内部の圧力を計測する圧力センサ120と、上流側流路141の目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させ、計測された圧力と目標圧力値との間の偏差に応じて開度を操作する制御部150と、を備え、制御部150は、真空制御バルブ100の外部からの開始入力に応じて、コンダクタンスを操作することによって偏差を小さくする制御を開始する。コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置や減圧乾燥炉、真空焼結装置といった様々な真空装置に使用される真空容器内の気体を排出する真空制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置の分野において、真空容器である反応室の真空引きの過程で発生するパーティクルの巻き上がりを抑制する技術が提案されている。具体的には、たとえば図12に示されるように、真空容器200と真空ポンプ300との間に親子弁Vfを接続する構成が従来技術として開示されている(特許文献1)。親子弁Vfは、圧力センサ510とコントローラ520とを有する真空制御装置500によって制御される。この構成では、親子弁Vfのバイパス弁Vsを使用して真空引きが行われる。バイパス弁Vsには固定オリフィスが装備されているので、図13に示されるように、固定オリフィスによる圧力変化が抑制されてパーティクルの巻き上がりを抑制することができる。
【0003】
圧力変化の抑制は、固定オリフィスの流量係数を調整することによって調整される。固定オリフィスの流量係数の設定は、パーティクルの巻き上げと排気時間のトレードオフの問題となる。すなわち、パーティクルの巻き上げの抑制を重視し、高圧領域(巻き上げ標定領域)の状態における排気量を小さくするために流量係数を小さくすると、目標圧力Ptの近傍の低圧領域(排気時間標定領域)の状態における排気時間が過度に長くなるという問題がある。真空ポンプの入り口圧力と真空容器内の圧力の差が小さくなるからである。逆に、排気時間を重視すると、パーティクルの巻き上げの問題が発生することになる。真空引きの完了後は、バイパス弁Vsに並列に接続されている真空制御バルブVmを使用して真空圧力の制御が開始され、半導体プロセスの処理が可能となる。
【0004】
このような従来技術の問題を解決するために、本願発明者は、特許文献1において新たな技術を提供している。この技術は、図14に示されるように、バイパス弁Vsを使用することなく、追従制御を実行させるコントローラ520aで真空制御バルブVmを適切に制御することによって上述の課題を解決している。具体的には、図15に示されるように、目標値F1(図14)を時間の関数として変化させて制御系を追従させることによって上述のトレードオフの問題を解決している。
【0005】
具体的には、パーティクルの巻き上げの発生しやすい高圧領域(高ガス密度)の状態においては圧力の変動を緩やかにし、低圧領域(低ガス密度)の状態においては排気を促進して排気時間を短縮させている(Vm操作参照)。比較のために、図15には、バイパス弁Vsを開とした場合の圧力変化が点線で示されている。これにより、目標真空圧力値だけでなく、真空圧力の変化速度をも制御することによって反応室内の急激な気流の発生の抑制と真空引きに要する時間の短縮化(この例では、9分から6分)の両立を実現している。この結果、真空引きに要する時間を長期化させること無く、パーティクルの巻き上がりを抑制して、反応室内のウエハーに形成される薄膜の品質の向上が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3606754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術は、実装面において改善の余地があることが本願発明者によって見出された。さらに、パーティクルの巻き上がりは、半導体製造装置だけでなく、たとえば液晶製造装置や太陽電池製造装置、減圧乾燥炉、アニール炉といった種々の真空装置に共通する問題であることが本願発明者によって見出された。
【0008】
本発明は、上述の従来の課題の少なくとも一部を解決するために創作されたものであり、真空容器の真空引きの過程において発生するパーティクルの巻き上がりの抑制技術を簡易に実装するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
手段1は、真空装置が備える真空容器と真空ポンプとの間に接続されるための真空制御バルブである。この真空制御バルブは、前記真空容器に接続されるための上流側流路と前記真空ポンプに接続されるための下流側流路とを含む流路と、弁開度を操作することによって前記上流側流路と前記下流側流路との間のコンダクタンスを変化させる開閉弁と、前記上流側流路の内部の圧力を計測する圧力センサと、前記上流側流路の目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させて前記計測された圧力と前記目標圧力値との間の偏差に応じて前記開度を操作する制御部と、を備える。前記制御部は、前記真空制御バルブの外部からの開始入力に応じて、前記コンダクタンスを操作することによって前記偏差を小さくする制御を開始する。前記コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができる。
【0010】
手段1では、真空制御バルブの外部からの開始入力に応じて、コンダクタンスを操作することによって偏差を小さくする制御が開始されるので、真空引きのコマンドを与えるだけで、パーティクルの巻き上がりが抑制された短時間の真空引きを自動的に実行させることができる。コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができるので、パーティクルの巻き上がりが発生する排気速度に対し、排気速度ゼロから予め設定された範囲まで連続した範囲で柔軟に適合させることができる。
【0011】
さらに、この真空制御バルブは、開閉弁が開閉する流路である上流側流路の内部圧力を計測する圧力センサの計測値によって制御されるので、開閉弁の操作によって圧力の影響を直接的に受ける領域の計測値を利用して動的な遅れや開閉弁近傍の部分的な圧力変動を計測して精密な制御を実現することができる。このような特性は、圧力目標値が固定されている一般の真空制御と相違し、目標値が時間とともに変動する構成において顕著な効果を奏する。なお、時間関数とは、時間の経過とともに値が変化する関数である。また、本発明は、半導体製造装置だけでなく、減圧乾燥炉や真空焼結装置といった様々な真空装置に対して簡易に適用することができる。
【0012】
さらに、この真空制御バルブは、計測系としての圧力センサ、制御則を有する制御部、および操作系としての開閉弁といった制御系の基本要素を全て内蔵しているので、計測系や操作系に適合させるための制御則のパラメータ調整もほとんどの場合に不要である。これにより、この真空制御バルブを使用すれば、一般に、真空制御バルブを交換するだけで、上述の真空引きを実現することができることになる。
【0013】
手段2は、手段1において、前記開閉弁は、ポペット弁体と、弁座と、前記ポペット弁体と前記弁座との間をシールする弾性シール部材と、を有する。前記制御部は、前記ポペット弁体と前記弁座との間の距離であるリフト量を変化させて前記コンダクタンスを操作する。前記弁開度の操作は、前記リフト量が前記弾性シール部材に変形を生じさせる値を少なくとも一部に含む範囲において、前記リフト量を変動させることによって操作される操作モードを有する。
【0014】
手段2は、ポペット弁体の位置が弾性シール部材に変形を生じさせる位置を少なくとも一部に含む範囲において、ポペット弁体を変動させることによって操作される弁開度の操作モードを有する。これにより、コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で円滑かつ精密に操作することができる。本構成によれば、たとえば弾性シール部材の弾性を利用した微小振動を発生させ、これを有効利用して、弾性シール部材のつぶし量やパルス変調の調整によるゼロ近傍のコンダクタンスの操作を実現することができるからである。本構成では、さらに、ポペット弁体から弾性シール部材が離れた状態との連続的な遷移をも実現されている。
【0015】
手段3は、手段2において、前記リフト量の操作は、前記ポペット弁体の位置が前記弾性シール部材に変形を生じさせる範囲において行われる。こうすれば、弾性シール部材におけるガスの漏洩を積極的に利用してコンダクタンスがゼロに近い領域で精密な制御を実現することができる。
【0016】
手段4は、手段2または3において、前記圧力センサは、前記ポペット弁体の外表面であって、前記上流側流路に面する位置に計測面を有する。こうすれば、ポペット弁体に格納して効率的に装備することができるとともに、ポペット弁体の近傍での精密な圧力計測を実現することができる。
【0017】
手段5は、手段4において、前記ポペット弁体は、前記上流側流路に露出する先端部を有する。前記圧力センサは、前記先端部に計測面を有する。こうすれば、ポペット弁体のリフト方向の長さを利用して効率的に装備することができる。
【0018】
手段6は、手段1ないし5のいずれか一つにおいて、さらに、前記時間関数の内容を変更するための情報を入力して、前記制御部に伝達するための外部インターフェースを備える。こうすれば、真空引きの対象となる真空容器の特性に応じて時間関数を簡易に変更することができる。
【0019】
手段7は、手段1ないし6のいずれか一つにおいて、前記制御部は、前記目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させるためのデータを格納する記憶部と、前記記憶部から読み出されたデータに基づいて、前記目標圧力値を変化させる目標値生成部と、を有する。
【0020】
手段8は、手段1ないし7のいずれか一つにおいて、前記制御部は、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する。こうすれば、完了信号の受信に応じて真空引き制御系から真空制御系への制御系の切替を自動的に実行することができる。さらに、たとえばユーザに真空引きの完了を知らせることができるとともに、真空ポンプの停止信号としても利用可能である。このような構成は、たとえば減圧乾燥炉やアニール炉(ステンレスの磁性調整)に使用される真空容器に適する。減圧完了後において真空制御を行う必要は無く真空排気制御バルブを遮断状態とするだけで足りるからである。
【発明の効果】
【0021】
手段1の真空制御バルブによれば、真空引きのコマンドを与えるだけで、パーティクルの巻き上がりが抑制された短時間の真空引きを自動的に実行させることができる。コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができるので、パーティクルの巻き上がりが発生する排気速度に対し、排気速度ゼロから予め設定された範囲まで連続した範囲で適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態における真空装置10を示す説明図。
【図2】実施形態の真空排気制御バルブ100の機能ブロック図。
【図3】実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全開状態における構成を示す断面図。
【図4】実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全閉状態における構成を示す断面図。
【図5】実施形態の真空排気制御バルブ100を上方から見た外観を示す外観図。
【図6】実施形態の真空排気制御バルブ100を側方から見た外観を示す外観図。
【図7】実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係を示すグラフ。
【図8】実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係の閉弁領域を拡大したグラフ。
【図9】実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きの制御ブロック図。
【図10】実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きからプロセスの開始までの作動シーケンスを示すフローチャート。
【図11】変形例の真空引き制御装置の構成を示す説明図。
【図12】従来技術の真空引き制御装置の構成を示す説明図。
【図13】従来技術の真空引き制御装置における圧力変動の様子を示す説明図。
【図14】従来技術の真空引き制御装置の構成を示す説明図。
【図15】従来技術の真空引き制御装置における圧力変動の様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(A.実施形態のスロー排気機能付き真空装置)
図1は、実施形態における真空装置10を示す説明図である。真空装置10は、真空排気制御バルブ100と、真空容器200と、真空ポンプ300と、真空制御装置500と、を備えている。真空制御装置500は、真空容器200の内部圧力を計測する圧力センサ510と、コントローラ520と、を備えている。
【0025】
実施形態の真空排気制御バルブ100は、真空制御バルブVmに対して、さらにスロー排気コントローラ150と、圧力センサ120と、を備えている。スロー排気コントローラ150は、従来技術のコントローラ520aが有する真空引き制御機能と同一の機能を備えている。圧力センサ120は、真空制御バルブVmの内部流路の圧力を計測する。この計測圧力は、スロー排気コントローラ150による真空引きに利用される。
【0026】
真空排気制御バルブ100は、コントローラ520からの開始信号の入力に応じて真空引きを開始する。真空排気制御バルブ100は、親子弁Vfと置き換えることによって簡易に装備することができる。真空排気制御バルブ100は、真空引きの開始信号としてバイパス弁Vsの開閉信号を利用することができるからである。なお、バイパス弁Vsの開閉信号を利用することができない場合であっても、開始信号は、オンオフ信号で足りるので、簡易に実装することができる。
【0027】
図2は、実施形態の真空排気制御バルブ100の機能ブロック図である。真空排気制御バルブ100のスロー排気コントローラ150は、CPU151と、目標値の経時的な変化を表す目標値データF1を格納する不揮発性メモリ152と、インターフェース153と、インターフェース端子156と、メモリ154と、制御系切替スイッチ155とを備えている。目標値データF1は、たとえば一定の周期ごとの目標値のデータの集合でも良いし、あるいは近似式を表すデータでも良い。真空制御バルブVmは、電空制御部130と、開閉弁110とを備えている。インターフェース端子156は、目標値データF1の書き換えやプロファイルの追加に利用することができる。これにより、図示しないパソコンから簡易にプロファイルの追加や書き換えを実現することができる。不揮発性メモリ152は、記憶部とも呼ばれる。
【0028】
(B.スロー排気機能付き真空制御バルブの構成と制御対象としての特性)
図3は、実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全開状態における構成を示す断面図である。図4は、実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全閉状態における構成を示す断面図である。真空排気制御バルブ100は、スロー排気コントローラ150と、真空容器200と真空ポンプ300とを接続する流路140と、流路140を開閉する開閉弁110と、開閉弁110を操作する電空制御部130と、を備えている。開閉弁110は、ポペット弁体112と、付勢バネ113と、弾性シール部材114と、弁座115と、を備えている。弁座115と流路140は、バルブハウジング111に形成されている。流路140は、真空容器200側に接続される上流側流路141と、真空ポンプ300側に接続される下流側流路142とを有している。なお、本実施形態では、弾性シール部材114としてOリングを使用している。
【0029】
ポペット弁体112は、外表面であって弾性シール部材114に囲まれた領域である先端部112tと、バルブハウジング111の摺動面111sで摺動する第1の摺動面112s1と、シリンダ室133の内面133sとの間で摺動する第2の摺動面112s2と、を備えている。第2の摺動面112s2は、シリンダ室133の一部を形成するフランジ112fの端部に設けられている。ポペット弁体112は、先端部112tと弁座115との間の距離(本明細書では、リフト量とも呼ばれる。)を調整可能にバルブハウジング111に対して摺動する。ポペット弁体112は、2個の付勢バネ113L、113Sによってリフト量が小さくなる方向に付勢されている。2個の付勢バネ113L、113Sは、相互に相違する付勢力(バネ係数や弁閉時荷重)を有している。
【0030】
電空制御部130は、真空排気制御バルブ100の外部から供給される圧縮空気を利用してポペット弁体112のリフト量を操作する。リフト量の操作は、たとえば圧縮空気吸入口136から供給され、排気口137(後述)から排出される圧縮空気を利用して行われる。たとえば、図4に示されるようなリフト量が小さい状態において、電空制御弁131が空気流路132を介して、シリンダ室133に空気を送り込むと、フランジ112fが圧縮空気に押され、付勢力に打ち勝ってリフト量が増大されることになる。
【0031】
圧力センサ120は、ポペット弁体112に装備され、その先端部112tに計測面121が露出している。これにより、閉弁状態では、真空容器200の内部圧力を計測することができるとともに、ポペット弁体112と弁座115による弁の開度による影響を動的な遅れを抑制するとともに、開閉弁近傍の部分的な圧力変動を計測することができる。このような特性は、圧力目標値が固定されている一般の真空制御と相違し、目標値が時間とともに変動する構成において顕著な効果を奏する。
【0032】
圧力センサ120は、たとえばひずみゲージ式の圧力トランスデューサを利用可能である。圧力センサ120は、真空引きの制御にのみ使用できるものであればよいからである。このようなタイプの圧力センサは、小型のものが利用可能なので、ポペット弁体112に装備することが可能である。なお、真空排気制御バルブ100と真空容器200および真空ポンプ300の接続状態が逆の場合は、ポペット弁体112の側方に計測面121が露出するように装備することができる。
【0033】
真空制御の圧力計測では、静電容量式の圧力センサを使用することが通例であった。静電容量式の圧力センサは、高い精度で圧力を計測することができるからである。ところが、静電容量式の圧力センサは、静電容量の変化によって高い計測制度で検知するために大きな面積の対向電極を有する圧力検知面を必要とし、圧力検知面が大型化することが通例である。一方、従来は、真空引きのためだけの圧力計測という発想がなかったので、バルブに圧力センサを装備するということ自体が技術常識に反するものであった。本構成は、真空引きのためだけの圧力計測という発想によって、圧力センサの選択の自由度を獲得し、これによって実現されたものである。
【0034】
開閉弁110は、ポペット弁体112のリフト量を変動させて上流側流路141と下流側流路142との間を開閉する。これにより、真空容器200から真空ポンプ300へのガスの流れを制御することができる。すなわち、ポペット弁体112のリフト量が大きくなると、上流側流路141と下流側流路142との間のコンダクタンスが大きくなる。一方、ポペット弁体112のリフト量が小さくなると、コンダクタンスが小さくなる。さらに、ポペット弁体112が弁座115に対して予め設定された荷重で押し付けられて十分なつぶし代が得られると、弾性シール部材114によって上流側流路141と下流側流路142との間が遮断されることになる。
【0035】
ポペット弁体112のリフト量は、電空制御部130と付勢バネ113とによって制御される。付勢バネ113は、開閉弁110を閉側に付勢し、電空制御部130が非通電の時には、流路140を遮断するように構成されている。電空制御部130は、外部から供給される圧縮空気を利用してリフト量を操作する。電空制御部130は、電空制御弁131と、空気流路132と、シリンダ室133と、を備えている。電空制御弁131は、空気流路132へ圧縮空気を供給するための吸気弁(図示せず)と、空気流路132から空気を排出するための排気弁(図示せず)と、有している。
【0036】
電空制御弁131は、たとえば周知のパルス幅変調方式で吸気弁と排気弁の開弁時間(デューティ)を操作することによって、外部から供給される圧縮空気の空気流路132への供給圧力を操作することができる。電空制御弁131は、吸気弁の開弁時間(デューティ)を大きくする一方、排気弁の開弁時間を小さくすることによってシリンダ室133の圧力を高くし、ポペット弁体112のリフト量を大きくさせることができる。電空制御弁131は、吸気弁の開弁時間(デューティ)を小さくする一方、排気弁の開弁時間を大きくすることによってシリンダ室133の圧力を低くし、付勢バネ113からの荷重によってポペット弁体112のリフト量を小さくすることができる。
【0037】
図5は、実施形態の真空排気制御バルブ100を上方から見た外観を示す平面図である。図6は、実施形態の真空排気制御バルブ100を側方から見た外観を示す側面図である。真空排気制御バルブ100は、インターフェース153(図2参照)のインターフェースパネル153pと、圧縮空気吸入口136と、排気口137と、を備えている。
【0038】
インターフェースパネル153pには、スロー排気レートを表示する表示器53wと、スロー排気レートを操作する一対の操作ボタン53u,53dとが装備されている。操作ボタン53uは、スロー排気レートの設定値を上昇させるボタンで、一度押す毎に1Pa/秒だけレートが上昇する。操作ボタン53dは、スロー排気レートの設定値を下降させるボタンで、一度押す毎に1Pa/秒だけレートが下降する。このようにして設定されたスロー排気レートの設定値は、表示器53wに表示される。
【0039】
スロー排気レートの設定は、たとえば真空容器の特性としてのパーティクルの巻き上がりの発生のしやすさの実験に利用可能である。具体的には、各圧力において、スロー排気レートの設定値を調整し、パーティクルの巻き上がりに対する感度分析を実行し、ユーザ側で最適プロファイルを設定することもできる。最適プロファイルとは、たとえばパーティクルの巻き上がりを十分に抑制しつつ、最短時間で真空引きを完了させるための各時刻におけるスロー排気レートを表すプロファイルである。
【0040】
図7は、実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係を示すグラフである。図8は、実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係の閉弁領域を拡大したグラフである。図8のC点は、図7のC点に相当する。開弁領域とは、ポペット弁体112の弾性シール部材114と弁座115とが離れた状態となる圧力領域を意味する。閉弁領域とは、弾性シール部材114と弁座115とが接触した状態となる圧力領域を意味する。
【0041】
開弁領域と閉弁領域では、相互に相違するメカニズムでコンダクタンスが操作される。開弁領域では、オリフィス径を変動させることによってコンダクタンスが操作される。閉弁領域では、弾性シール部材114からの漏れ量を変動させることによってコンダクタンスが操作される。本実施形態の制御系は、このような特性を活かして以下のように構成されている。
【0042】
(C.スロー排気機能付き真空制御バルブの制御系)
図9は、実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きの制御ブロック図である。真空引き制御は、閉弁領域と開弁領域とで制御対象の物理的な特性が変わるので、閉弁領域における閉弁モード制御系CL1と開弁領域における閉弁モード制御系CL2の2つのモードの制御系として機能する。ただし、スロー排気コントローラ150が有する制御則Lは、共通の制御則を利用しても良いし、あるいは各モードに適する制御則に切り替えるようにしても良い。
【0043】
開弁モードの制御系は、パーティクルの巻き上がりの可能性が低い低密度(低圧力)の圧力範囲で使用される。すなわり、真空引きの最終段階やプロセス中の真空制御で機能する制御系である。この制御系は、ポペット弁体112の位置を制御するためのスレーブループと、真空容器200の内部圧力を制御するためのマスターループとを有する二重ループ構造のカスケード制御として構成されている。スレーブループとマスターループの各制御ループは、周知のPID制御系として構成することができる。
【0044】
スレーブループは、電空制御部130がシリンダ室133の圧力を操作して、ポペット弁体112の位置を目標値に近づけることを目的とする制御ループである。電空制御弁131は、シリンダ室133の内部圧力を操作し、付勢バネ113の付勢力とのバランスによってポペット弁体112の位置(リフト量)を操作することができる。目標値は、スロー排気コントローラ150によってポペット弁体112の位置を表す目標指令値pvとして電空制御部130に与えられる。ポペット弁体112のリフト量は、弁体位置センサ138によって計測され、電空制御弁131にフィードバックされる。このようにして、スレーブループは、ポペット弁体112のリフト量をスロー排気コントローラ150から与えられた目標指令値pvに近づけるように制御することができる。なお、フィードバック量は、リフト量に限られず、たとえばシリンダ圧力計測センサを用いてシリンダ圧力をフィードバック量としてもよい。
【0045】
マスターループは、スロー排気コントローラ150が真空排気制御バルブ100のコンダクタンスを操作して、真空容器200の内部圧力を時変の目標値である時変目標値Tpに近づけることを目的とする制御ループである。時変目標値Tpは、不揮発性メモリ152から読み出されたデータに基づいて、スロー排気コントローラ150が生成する。コンダクタンスは、ポペット弁体112のリフト量を変化させて、弁座115との間のクリアランスを調整させることによって行われる。この操作は、オリフィス径を操作することと物理的に等価である。不揮発性メモリ152は、複数種類のプロファイルを表すデータを格納し、その中から選択できように構成しても良い。
【0046】
一方、閉弁モードの制御系は、パーティクルの巻き上がりの可能性が高い高密度(大気圧近傍)の圧力範囲で使用される。閉弁モードの制御系は、コンダクタンスの操作が開弁モードの制御系と相違する。閉弁モードでは、コンダクタンスの操作は、ポペット弁体112の位置である弁体位置と弾性シール部材114のつぶし量を操作することによって行われる。
【0047】
閉弁モードでは、さらに、つぶし量を周期的に変化させることによって、パルス変調に近似する方法で、ゼロ近傍におけるコンダクタンスを操作することができる。閉弁モードにおけるコンダクタンスの操作は、以下のようなシーケンスを繰り返すことによって周期的に動作することになる。
(1)弾性シール部材114のつぶし量の減少(シリンダ圧低下、図4参照)
(2)弾性シール部材114でのガス漏洩の発生。
(3)圧力センサ120の計測面121近傍の圧力が降下。
(4)圧力センサ120が圧力降下を検知(計測圧力の低下)。
(5)偏差δ(=目標値−計測圧力:負の値)の大きさが減少(図9参照)
(6)弾性シール部材114のつぶし量が増大(シリンダ圧上昇、図4参照)
(7)弾性シール部材114でのガス漏洩停止(あるいは低減)
(8)圧力センサ120の計測面121近傍の圧力が上昇。
(9)圧力センサ120が圧力上昇を検知(計測圧力の上昇)
(10)偏差δ(=目標値−計測圧力:負の値)の大きさが増大(図9参照)
(11)(1)に戻る。
上述の(8)工程では、弁開閉による振動的な圧力変動を想定しているが、振動的な圧力変動が発生しない場合には、(10)工程においては、目標値の降下によって偏差δの大きさが増大することになる。
【0048】
このように、実施形態の制御系は、大気圧近傍の高密度領域におけるゼロに近いコンダクタンスから分子領域の近傍における低密度領域におけるコンダクタンスの操作までのきわめて広いダイナミックレンジの操作を実現している。
【0049】
このように、真空排気制御バルブ100では、閉弁領域あるいはその近傍において、オンオフを繰り返して、ゼロ近傍のコンダクタンス操作が実現されているので、ポペット弁体112が周期的に小刻みに動くことになる。このため、本実施形態では、ポペット弁体112は、リニアベアリング135を利用してシリンダ室133に対して支持され、摺動面には、エスロン(商標)その他の低摩擦係数と耐摩耗性とを兼ね備える高機能樹脂のシール部材134を使用し、シリンダ室133の内面133sは、鏡面仕上げが施されている。
【0050】
(D.スロー排気機能付き真空制御バルブの作動シーケンス)
図10は、実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きからプロセスの開始までの作動シーケンスを示すフローチャートである。このオペレーションは、真空容器200の内部が大気圧の状態から、プロセス用の真空制御が開始されるまでの処理の内容を示している。ステップS100では、コントローラ520は、開始信号送信処理を実行する。開始信号送信処理とは、コントローラ520から真空排気制御バルブ100に真空引きを開始させるための開始信号を送信する処理である。開始信号は、真空引きの開始のトリガーとなるものであれば良いので、親子弁Vfが有するバイパス弁Vsへの「バルブ開」の指令信号を利用することもできる。コントローラ520は、容器圧力制御部とも呼ばれる。
【0051】
ステップS200では、真空排気制御バルブ100は、開始信号の受信(開始入力)に応じて真空引きのための制御である真空引き制御を開始する。真空排気制御バルブ100は、計測系としての圧力センサ、制御則を有する制御部、および操作系としての開閉弁といった制御系の基本要素を全て内蔵しているので、計測系や操作系に適合させるための制御則のパラメータ調整もほとんど不要である。真空引き制御は、真空排気制御バルブ100によって自動的に開始され、真空容器200から真空ポンプ300への真空引きが開始される。
【0052】
ステップS300では、コントローラ520は、プロセス用制御系の起動処理を実行する。プロセス用制御系の起動処理は、たとえば真空排気制御バルブ100からの排気完了信号(図2参照)の受信に応じて開始することができる。本実施形態では、排気完了信号は、真空排気制御バルブ100によってコントローラ520に送信される。真空排気制御バルブ100は、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する機能を有している。真空引き目標圧力とは、たとえば排気によってパーティクルの巻き上がりが発生しない圧力としてユーザによって設定される。
【0053】
プロセス用制御系は、真空容器200の内部圧力を計測する計測系としての圧力センサ510と、制御則を有するコントローラ520と、操作系としての真空制御バルブVmと、を備える制御系として構成されている(図1参照)。プロセス用制御系は、操作系としての真空制御バルブVmを真空引き制御系と共有していることになる。これにより、プロセス用制御系が利用可能な状態となる。
【0054】
ステップS400では、コントローラ520は、制御系切替信号送信処理を実行する(図2参照)。制御系切替信号送信処理は、プロセス用制御系の起動完了に応じて、コントローラ520が真空排気制御バルブ100に制御系切替信号を送信する処理である。真空排気制御バルブ100のスロー排気コントローラ150は、制御系切替信号の受信に応じて、制御系切替スイッチ155を切り替える。この切替によって、真空制御バルブVmから真空引き制御系が切り離されるとともに、プロセス用制御系が接続される。これにより、真空容器200の内部圧力は、プロセス用制御系によって制御されることになり、真空引き制御処理は完了する。
【0055】
ただし、制御系の切替は、必ずしも真空引き目標圧力への到達を待つ必要は無く、コントローラ520によって強制的に制御系を切り替えるように構成しても良い。たとえば、コントローラ520は、圧力センサ510の計測値に基づいて、制御系の切替を行ってもパーティクルの巻上げが発生しない領域まで圧力が下がったと判断したら強制的に制御系を切り替えるように構成しても良い(オーバーライド機能)。こうすれば、真空排気制御バルブ100を真空制御バルブVmと同様に扱うことによって、短時間の真空引きとパーティクルの巻き上がり抑制を両立した真空引き制御を簡易に実現させることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、真空排気制御バルブ100に対して開始信号を与えるだけで、真空排気制御バルブ100が真空引き制御を自動的に実行するので、短時間の真空引きとパーティクルの巻き上がり抑制を両立した真空引き制御を簡易に実装することができる。具体的には、たとえば上述の従来技術(図12参照)に対しては以下のように適用することができる。
【0057】
この適用形態は、真空引きに親子弁Vf(図12参照)を利用していた装置において、バイパス弁Vsの開指令信号と閉指令信号とを、それぞれ開始信号と制御系切替信号として利用する形態である。この形態は、親子弁Vfを真空排気制御バルブ100に置き換えるだけで簡易に実装可能である。
【0058】
さらに、実施形態の真空排気制御バルブ100は、計測系としての圧力センサ120、制御則を有するスロー排気コントローラ150、および操作系としての真空制御バルブVmといった制御系の基本要素を全て内蔵しているので、計測系や操作系に適合させるための制御則のパラメータ調整もほとんど不要である。逆に、従来技術のように、圧力センサ510を利用して真空引き制御を行う場合には、圧力センサ510の特性や装備位置に応じた制御定数(パラーメータ)の調整が必要か否かの判断と、必要に応じてパラメータ調整とが必要となる。
【0059】
なお、上述した各実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0060】
(a)上述の実施形態では、弾性シール部材のつぶし量の変動と弁の周期的開閉動作によってゼロ近傍のコンダクタンスを操作しているが、弾性シール部材114のつぶし量の変動と弁の周期的開閉動作のいずれか一方のみによって、ゼロ近傍のコンダクタンスを操作するようにしてもよい。このように、ゼロ近傍のコンダクタンスの操作は、弾性シール部材のつぶし量の変動と弁の周期的開閉動作の少なくとも一方によって実現されていればよい。
【0061】
(b)弾性シール部材の使用は必須ではない。ただし、弾性シール部材を利用すれば、微小振動を発生させ、これを有効利用することができるという利点がある。さらに、ポペット弁体から弾性シール部材が離れた状態との連続的かつ円滑な遷移をも実現することができる。
【0062】
(c)リフト量の操作範囲は、ポペット弁体の位置が弾性シール部材に変形を生じさせる範囲において行われるような操作モードを有するようにしてもよい。こうすれば、ゼロ近傍のコンダクタンスを精密に制御することができる(閉弁モード)。
【0063】
ポペット弁体の位置が弾性シール部材に変形を生じさせる位置を少なくとも一部に含む範囲において、ポペット弁体を周期的に変動させることによって操作される弁開度の操作モードを有するようにしてもよい(準閉弁モード)。こうすれば、開弁モードと閉弁モードとの間の操作モードの遷移を円滑にすることができる。なお、「ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲でのコンダクタンスの操作」は、閉弁モード、準閉弁モード、および開弁モードのうちの少なくとも2つのモードを有する操作であることを意味する。
【0064】
(d)上述の実施形態では、スレーブループとマスターループの二重ループを備えるカスケード制御によって真空引き制御が行われているが、スレーブループの代わりに予め設定された特性の動作を実行する構成で置き換えることによって実現することもできる。特定の動作は、たとえば図11に示される5個のプロファイルP1〜P5のように一定のプロファイルでオンオフを繰り返す動作とし、オンパルスの幅wと間隔g(デューティ比)が相違するパルス幅変調としてもよいし、パルスの振幅を可変とするようにしてもよいし、あるいはパルス数(プロファイルP1では6個)を可変とするようにしてもよい。
【0065】
特定の動作は、たとえば実施形態の電空制御弁の代わりに装備されている電磁制御弁が予め複数の種類の動作を格納し、偏差に応じて選択されるようにしても良いし、偏差に応じてデューティ比を調整するようにしてもよい。こうすれば、カスケード制御での安定性に問題が生じた場合にも、制御系の構成を簡素化して安定性解析を容易にするとともに安定性を改善できる場合もある。
【0066】
さらに、特定の動作は、たとえば図11に示される5個のプロファイルP1a〜P5aのようにパルス信号の出力の後で一定の待機時間qを設けるようにしても良い。こうすれば、真空排気制御バルブの圧力センサによる計測を圧力が安定した状態での計測とすることができる。この構成は、真空排気制御バルブの制御系の仕様において安定性が重視される場合に利用価値が高い。
【0067】
このように、真空引き制御は、上述の実施形態のようにカスケード制御によって実現するようにしてもよいし、シングルループで構成するようにしてもよい。ただし、真空装置の圧力のプロセス制御系には、カスケード制御系が広く利用されているので、そのような場合には、圧力のプロセス制御系を共用して簡易な実装が可能となるという利点がある。一方、真空引き制御の構成に、スレーブループの代わりに予め設定された特性の動作を実行する構成(たとえば電空制御部130での特定の動作の実行)を採用すれば、真空引き制御に特化した制御則を真空排気制御バルブ100に実装可能となる。このように、真空排気制御バルブ100の制御系は、プロセス制御系を利用したカスケード制御だけでなく、シングルループの制御として構成しても良いし、双方の制御モードから選択できるように構成してもよい。
【0068】
このように、真空引き制御は、コンダクタンスをゼロから予め設定された範囲までの操作範囲で操作することができればよく、制御ループの数やコンダクタンス操作における物理的挙動に関わらず、大気圧近傍の高密度領域における巻き上がりを抑制することができる。なお、真空排気制御バルブは、真空引きの制御機能を備える真空制御バルブとして把握されるので、単に真空制御バルブとも呼ばれる。
【0069】
(c)上述の実施形態では、真空引きの完了後に別の制御系による真空制御が実行されているが、たとえば減圧乾燥炉やアニール炉(ステンレスの磁性調整)に使用される真空容器においては、減圧完了後において真空制御を行う必要は無く真空排気制御バルブを遮断状態とするだけで足りる。このような構成では、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する機能を有すれば、ユーザに真空引きの完了を知らせることができるとともに、真空ポンプの停止信号としても利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
110…開閉弁、111…バルブハウジング、112…ポペット弁体、113…付勢バネ、114…弾性シール部材、115…弁座、120…圧力センサ、121…計測面、130…電空制御部、131…電空制御弁、132…空気流路、133…シリンダ室、138…弁体位置センサ、140…流路、141…上流側流路、142…下流側流路、150…スロー排気コントローラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置や減圧乾燥炉、真空焼結装置といった様々な真空装置に使用される真空容器内の気体を排出する真空制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置の分野において、真空容器である反応室の真空引きの過程で発生するパーティクルの巻き上がりを抑制する技術が提案されている。具体的には、たとえば図12に示されるように、真空容器200と真空ポンプ300との間に親子弁Vfを接続する構成が従来技術として開示されている(特許文献1)。親子弁Vfは、圧力センサ510とコントローラ520とを有する真空制御装置500によって制御される。この構成では、親子弁Vfのバイパス弁Vsを使用して真空引きが行われる。バイパス弁Vsには固定オリフィスが装備されているので、図13に示されるように、固定オリフィスによる圧力変化が抑制されてパーティクルの巻き上がりを抑制することができる。
【0003】
圧力変化の抑制は、固定オリフィスの流量係数を調整することによって調整される。固定オリフィスの流量係数の設定は、パーティクルの巻き上げと排気時間のトレードオフの問題となる。すなわち、パーティクルの巻き上げの抑制を重視し、高圧領域(巻き上げ標定領域)の状態における排気量を小さくするために流量係数を小さくすると、目標圧力Ptの近傍の低圧領域(排気時間標定領域)の状態における排気時間が過度に長くなるという問題がある。真空ポンプの入り口圧力と真空容器内の圧力の差が小さくなるからである。逆に、排気時間を重視すると、パーティクルの巻き上げの問題が発生することになる。真空引きの完了後は、バイパス弁Vsに並列に接続されている真空制御バルブVmを使用して真空圧力の制御が開始され、半導体プロセスの処理が可能となる。
【0004】
このような従来技術の問題を解決するために、本願発明者は、特許文献1において新たな技術を提供している。この技術は、図14に示されるように、バイパス弁Vsを使用することなく、追従制御を実行させるコントローラ520aで真空制御バルブVmを適切に制御することによって上述の課題を解決している。具体的には、図15に示されるように、目標値F1(図14)を時間の関数として変化させて制御系を追従させることによって上述のトレードオフの問題を解決している。
【0005】
具体的には、パーティクルの巻き上げの発生しやすい高圧領域(高ガス密度)の状態においては圧力の変動を緩やかにし、低圧領域(低ガス密度)の状態においては排気を促進して排気時間を短縮させている(Vm操作参照)。比較のために、図15には、バイパス弁Vsを開とした場合の圧力変化が点線で示されている。これにより、目標真空圧力値だけでなく、真空圧力の変化速度をも制御することによって反応室内の急激な気流の発生の抑制と真空引きに要する時間の短縮化(この例では、9分から6分)の両立を実現している。この結果、真空引きに要する時間を長期化させること無く、パーティクルの巻き上がりを抑制して、反応室内のウエハーに形成される薄膜の品質の向上が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3606754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術は、実装面において改善の余地があることが本願発明者によって見出された。さらに、パーティクルの巻き上がりは、半導体製造装置だけでなく、たとえば液晶製造装置や太陽電池製造装置、減圧乾燥炉、アニール炉といった種々の真空装置に共通する問題であることが本願発明者によって見出された。
【0008】
本発明は、上述の従来の課題の少なくとも一部を解決するために創作されたものであり、真空容器の真空引きの過程において発生するパーティクルの巻き上がりの抑制技術を簡易に実装するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
手段1は、真空装置が備える真空容器と真空ポンプとの間に接続されるための真空制御バルブである。この真空制御バルブは、前記真空容器に接続されるための上流側流路と前記真空ポンプに接続されるための下流側流路とを含む流路と、弁開度を操作することによって前記上流側流路と前記下流側流路との間のコンダクタンスを変化させる開閉弁と、前記上流側流路の内部の圧力を計測する圧力センサと、前記上流側流路の目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させて前記計測された圧力と前記目標圧力値との間の偏差に応じて前記開度を操作する制御部と、を備える。前記制御部は、前記真空制御バルブの外部からの開始入力に応じて、前記コンダクタンスを操作することによって前記偏差を小さくする制御を開始する。前記コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができる。
【0010】
手段1では、真空制御バルブの外部からの開始入力に応じて、コンダクタンスを操作することによって偏差を小さくする制御が開始されるので、真空引きのコマンドを与えるだけで、パーティクルの巻き上がりが抑制された短時間の真空引きを自動的に実行させることができる。コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができるので、パーティクルの巻き上がりが発生する排気速度に対し、排気速度ゼロから予め設定された範囲まで連続した範囲で柔軟に適合させることができる。
【0011】
さらに、この真空制御バルブは、開閉弁が開閉する流路である上流側流路の内部圧力を計測する圧力センサの計測値によって制御されるので、開閉弁の操作によって圧力の影響を直接的に受ける領域の計測値を利用して動的な遅れや開閉弁近傍の部分的な圧力変動を計測して精密な制御を実現することができる。このような特性は、圧力目標値が固定されている一般の真空制御と相違し、目標値が時間とともに変動する構成において顕著な効果を奏する。なお、時間関数とは、時間の経過とともに値が変化する関数である。また、本発明は、半導体製造装置だけでなく、減圧乾燥炉や真空焼結装置といった様々な真空装置に対して簡易に適用することができる。
【0012】
さらに、この真空制御バルブは、計測系としての圧力センサ、制御則を有する制御部、および操作系としての開閉弁といった制御系の基本要素を全て内蔵しているので、計測系や操作系に適合させるための制御則のパラメータ調整もほとんどの場合に不要である。これにより、この真空制御バルブを使用すれば、一般に、真空制御バルブを交換するだけで、上述の真空引きを実現することができることになる。
【0013】
手段2は、手段1において、前記開閉弁は、ポペット弁体と、弁座と、前記ポペット弁体と前記弁座との間をシールする弾性シール部材と、を有する。前記制御部は、前記ポペット弁体と前記弁座との間の距離であるリフト量を変化させて前記コンダクタンスを操作する。前記弁開度の操作は、前記リフト量が前記弾性シール部材に変形を生じさせる値を少なくとも一部に含む範囲において、前記リフト量を変動させることによって操作される操作モードを有する。
【0014】
手段2は、ポペット弁体の位置が弾性シール部材に変形を生じさせる位置を少なくとも一部に含む範囲において、ポペット弁体を変動させることによって操作される弁開度の操作モードを有する。これにより、コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で円滑かつ精密に操作することができる。本構成によれば、たとえば弾性シール部材の弾性を利用した微小振動を発生させ、これを有効利用して、弾性シール部材のつぶし量やパルス変調の調整によるゼロ近傍のコンダクタンスの操作を実現することができるからである。本構成では、さらに、ポペット弁体から弾性シール部材が離れた状態との連続的な遷移をも実現されている。
【0015】
手段3は、手段2において、前記リフト量の操作は、前記ポペット弁体の位置が前記弾性シール部材に変形を生じさせる範囲において行われる。こうすれば、弾性シール部材におけるガスの漏洩を積極的に利用してコンダクタンスがゼロに近い領域で精密な制御を実現することができる。
【0016】
手段4は、手段2または3において、前記圧力センサは、前記ポペット弁体の外表面であって、前記上流側流路に面する位置に計測面を有する。こうすれば、ポペット弁体に格納して効率的に装備することができるとともに、ポペット弁体の近傍での精密な圧力計測を実現することができる。
【0017】
手段5は、手段4において、前記ポペット弁体は、前記上流側流路に露出する先端部を有する。前記圧力センサは、前記先端部に計測面を有する。こうすれば、ポペット弁体のリフト方向の長さを利用して効率的に装備することができる。
【0018】
手段6は、手段1ないし5のいずれか一つにおいて、さらに、前記時間関数の内容を変更するための情報を入力して、前記制御部に伝達するための外部インターフェースを備える。こうすれば、真空引きの対象となる真空容器の特性に応じて時間関数を簡易に変更することができる。
【0019】
手段7は、手段1ないし6のいずれか一つにおいて、前記制御部は、前記目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させるためのデータを格納する記憶部と、前記記憶部から読み出されたデータに基づいて、前記目標圧力値を変化させる目標値生成部と、を有する。
【0020】
手段8は、手段1ないし7のいずれか一つにおいて、前記制御部は、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する。こうすれば、完了信号の受信に応じて真空引き制御系から真空制御系への制御系の切替を自動的に実行することができる。さらに、たとえばユーザに真空引きの完了を知らせることができるとともに、真空ポンプの停止信号としても利用可能である。このような構成は、たとえば減圧乾燥炉やアニール炉(ステンレスの磁性調整)に使用される真空容器に適する。減圧完了後において真空制御を行う必要は無く真空排気制御バルブを遮断状態とするだけで足りるからである。
【発明の効果】
【0021】
手段1の真空制御バルブによれば、真空引きのコマンドを与えるだけで、パーティクルの巻き上がりが抑制された短時間の真空引きを自動的に実行させることができる。コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができるので、パーティクルの巻き上がりが発生する排気速度に対し、排気速度ゼロから予め設定された範囲まで連続した範囲で適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態における真空装置10を示す説明図。
【図2】実施形態の真空排気制御バルブ100の機能ブロック図。
【図3】実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全開状態における構成を示す断面図。
【図4】実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全閉状態における構成を示す断面図。
【図5】実施形態の真空排気制御バルブ100を上方から見た外観を示す外観図。
【図6】実施形態の真空排気制御バルブ100を側方から見た外観を示す外観図。
【図7】実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係を示すグラフ。
【図8】実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係の閉弁領域を拡大したグラフ。
【図9】実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きの制御ブロック図。
【図10】実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きからプロセスの開始までの作動シーケンスを示すフローチャート。
【図11】変形例の真空引き制御装置の構成を示す説明図。
【図12】従来技術の真空引き制御装置の構成を示す説明図。
【図13】従来技術の真空引き制御装置における圧力変動の様子を示す説明図。
【図14】従来技術の真空引き制御装置の構成を示す説明図。
【図15】従来技術の真空引き制御装置における圧力変動の様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(A.実施形態のスロー排気機能付き真空装置)
図1は、実施形態における真空装置10を示す説明図である。真空装置10は、真空排気制御バルブ100と、真空容器200と、真空ポンプ300と、真空制御装置500と、を備えている。真空制御装置500は、真空容器200の内部圧力を計測する圧力センサ510と、コントローラ520と、を備えている。
【0025】
実施形態の真空排気制御バルブ100は、真空制御バルブVmに対して、さらにスロー排気コントローラ150と、圧力センサ120と、を備えている。スロー排気コントローラ150は、従来技術のコントローラ520aが有する真空引き制御機能と同一の機能を備えている。圧力センサ120は、真空制御バルブVmの内部流路の圧力を計測する。この計測圧力は、スロー排気コントローラ150による真空引きに利用される。
【0026】
真空排気制御バルブ100は、コントローラ520からの開始信号の入力に応じて真空引きを開始する。真空排気制御バルブ100は、親子弁Vfと置き換えることによって簡易に装備することができる。真空排気制御バルブ100は、真空引きの開始信号としてバイパス弁Vsの開閉信号を利用することができるからである。なお、バイパス弁Vsの開閉信号を利用することができない場合であっても、開始信号は、オンオフ信号で足りるので、簡易に実装することができる。
【0027】
図2は、実施形態の真空排気制御バルブ100の機能ブロック図である。真空排気制御バルブ100のスロー排気コントローラ150は、CPU151と、目標値の経時的な変化を表す目標値データF1を格納する不揮発性メモリ152と、インターフェース153と、インターフェース端子156と、メモリ154と、制御系切替スイッチ155とを備えている。目標値データF1は、たとえば一定の周期ごとの目標値のデータの集合でも良いし、あるいは近似式を表すデータでも良い。真空制御バルブVmは、電空制御部130と、開閉弁110とを備えている。インターフェース端子156は、目標値データF1の書き換えやプロファイルの追加に利用することができる。これにより、図示しないパソコンから簡易にプロファイルの追加や書き換えを実現することができる。不揮発性メモリ152は、記憶部とも呼ばれる。
【0028】
(B.スロー排気機能付き真空制御バルブの構成と制御対象としての特性)
図3は、実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全開状態における構成を示す断面図である。図4は、実施形態の真空排気制御バルブ100の弁全閉状態における構成を示す断面図である。真空排気制御バルブ100は、スロー排気コントローラ150と、真空容器200と真空ポンプ300とを接続する流路140と、流路140を開閉する開閉弁110と、開閉弁110を操作する電空制御部130と、を備えている。開閉弁110は、ポペット弁体112と、付勢バネ113と、弾性シール部材114と、弁座115と、を備えている。弁座115と流路140は、バルブハウジング111に形成されている。流路140は、真空容器200側に接続される上流側流路141と、真空ポンプ300側に接続される下流側流路142とを有している。なお、本実施形態では、弾性シール部材114としてOリングを使用している。
【0029】
ポペット弁体112は、外表面であって弾性シール部材114に囲まれた領域である先端部112tと、バルブハウジング111の摺動面111sで摺動する第1の摺動面112s1と、シリンダ室133の内面133sとの間で摺動する第2の摺動面112s2と、を備えている。第2の摺動面112s2は、シリンダ室133の一部を形成するフランジ112fの端部に設けられている。ポペット弁体112は、先端部112tと弁座115との間の距離(本明細書では、リフト量とも呼ばれる。)を調整可能にバルブハウジング111に対して摺動する。ポペット弁体112は、2個の付勢バネ113L、113Sによってリフト量が小さくなる方向に付勢されている。2個の付勢バネ113L、113Sは、相互に相違する付勢力(バネ係数や弁閉時荷重)を有している。
【0030】
電空制御部130は、真空排気制御バルブ100の外部から供給される圧縮空気を利用してポペット弁体112のリフト量を操作する。リフト量の操作は、たとえば圧縮空気吸入口136から供給され、排気口137(後述)から排出される圧縮空気を利用して行われる。たとえば、図4に示されるようなリフト量が小さい状態において、電空制御弁131が空気流路132を介して、シリンダ室133に空気を送り込むと、フランジ112fが圧縮空気に押され、付勢力に打ち勝ってリフト量が増大されることになる。
【0031】
圧力センサ120は、ポペット弁体112に装備され、その先端部112tに計測面121が露出している。これにより、閉弁状態では、真空容器200の内部圧力を計測することができるとともに、ポペット弁体112と弁座115による弁の開度による影響を動的な遅れを抑制するとともに、開閉弁近傍の部分的な圧力変動を計測することができる。このような特性は、圧力目標値が固定されている一般の真空制御と相違し、目標値が時間とともに変動する構成において顕著な効果を奏する。
【0032】
圧力センサ120は、たとえばひずみゲージ式の圧力トランスデューサを利用可能である。圧力センサ120は、真空引きの制御にのみ使用できるものであればよいからである。このようなタイプの圧力センサは、小型のものが利用可能なので、ポペット弁体112に装備することが可能である。なお、真空排気制御バルブ100と真空容器200および真空ポンプ300の接続状態が逆の場合は、ポペット弁体112の側方に計測面121が露出するように装備することができる。
【0033】
真空制御の圧力計測では、静電容量式の圧力センサを使用することが通例であった。静電容量式の圧力センサは、高い精度で圧力を計測することができるからである。ところが、静電容量式の圧力センサは、静電容量の変化によって高い計測制度で検知するために大きな面積の対向電極を有する圧力検知面を必要とし、圧力検知面が大型化することが通例である。一方、従来は、真空引きのためだけの圧力計測という発想がなかったので、バルブに圧力センサを装備するということ自体が技術常識に反するものであった。本構成は、真空引きのためだけの圧力計測という発想によって、圧力センサの選択の自由度を獲得し、これによって実現されたものである。
【0034】
開閉弁110は、ポペット弁体112のリフト量を変動させて上流側流路141と下流側流路142との間を開閉する。これにより、真空容器200から真空ポンプ300へのガスの流れを制御することができる。すなわち、ポペット弁体112のリフト量が大きくなると、上流側流路141と下流側流路142との間のコンダクタンスが大きくなる。一方、ポペット弁体112のリフト量が小さくなると、コンダクタンスが小さくなる。さらに、ポペット弁体112が弁座115に対して予め設定された荷重で押し付けられて十分なつぶし代が得られると、弾性シール部材114によって上流側流路141と下流側流路142との間が遮断されることになる。
【0035】
ポペット弁体112のリフト量は、電空制御部130と付勢バネ113とによって制御される。付勢バネ113は、開閉弁110を閉側に付勢し、電空制御部130が非通電の時には、流路140を遮断するように構成されている。電空制御部130は、外部から供給される圧縮空気を利用してリフト量を操作する。電空制御部130は、電空制御弁131と、空気流路132と、シリンダ室133と、を備えている。電空制御弁131は、空気流路132へ圧縮空気を供給するための吸気弁(図示せず)と、空気流路132から空気を排出するための排気弁(図示せず)と、有している。
【0036】
電空制御弁131は、たとえば周知のパルス幅変調方式で吸気弁と排気弁の開弁時間(デューティ)を操作することによって、外部から供給される圧縮空気の空気流路132への供給圧力を操作することができる。電空制御弁131は、吸気弁の開弁時間(デューティ)を大きくする一方、排気弁の開弁時間を小さくすることによってシリンダ室133の圧力を高くし、ポペット弁体112のリフト量を大きくさせることができる。電空制御弁131は、吸気弁の開弁時間(デューティ)を小さくする一方、排気弁の開弁時間を大きくすることによってシリンダ室133の圧力を低くし、付勢バネ113からの荷重によってポペット弁体112のリフト量を小さくすることができる。
【0037】
図5は、実施形態の真空排気制御バルブ100を上方から見た外観を示す平面図である。図6は、実施形態の真空排気制御バルブ100を側方から見た外観を示す側面図である。真空排気制御バルブ100は、インターフェース153(図2参照)のインターフェースパネル153pと、圧縮空気吸入口136と、排気口137と、を備えている。
【0038】
インターフェースパネル153pには、スロー排気レートを表示する表示器53wと、スロー排気レートを操作する一対の操作ボタン53u,53dとが装備されている。操作ボタン53uは、スロー排気レートの設定値を上昇させるボタンで、一度押す毎に1Pa/秒だけレートが上昇する。操作ボタン53dは、スロー排気レートの設定値を下降させるボタンで、一度押す毎に1Pa/秒だけレートが下降する。このようにして設定されたスロー排気レートの設定値は、表示器53wに表示される。
【0039】
スロー排気レートの設定は、たとえば真空容器の特性としてのパーティクルの巻き上がりの発生のしやすさの実験に利用可能である。具体的には、各圧力において、スロー排気レートの設定値を調整し、パーティクルの巻き上がりに対する感度分析を実行し、ユーザ側で最適プロファイルを設定することもできる。最適プロファイルとは、たとえばパーティクルの巻き上がりを十分に抑制しつつ、最短時間で真空引きを完了させるための各時刻におけるスロー排気レートを表すプロファイルである。
【0040】
図7は、実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係を示すグラフである。図8は、実施形態の真空排気制御バルブ100のコンダクタンスとシリンダ圧力の関係の閉弁領域を拡大したグラフである。図8のC点は、図7のC点に相当する。開弁領域とは、ポペット弁体112の弾性シール部材114と弁座115とが離れた状態となる圧力領域を意味する。閉弁領域とは、弾性シール部材114と弁座115とが接触した状態となる圧力領域を意味する。
【0041】
開弁領域と閉弁領域では、相互に相違するメカニズムでコンダクタンスが操作される。開弁領域では、オリフィス径を変動させることによってコンダクタンスが操作される。閉弁領域では、弾性シール部材114からの漏れ量を変動させることによってコンダクタンスが操作される。本実施形態の制御系は、このような特性を活かして以下のように構成されている。
【0042】
(C.スロー排気機能付き真空制御バルブの制御系)
図9は、実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きの制御ブロック図である。真空引き制御は、閉弁領域と開弁領域とで制御対象の物理的な特性が変わるので、閉弁領域における閉弁モード制御系CL1と開弁領域における閉弁モード制御系CL2の2つのモードの制御系として機能する。ただし、スロー排気コントローラ150が有する制御則Lは、共通の制御則を利用しても良いし、あるいは各モードに適する制御則に切り替えるようにしても良い。
【0043】
開弁モードの制御系は、パーティクルの巻き上がりの可能性が低い低密度(低圧力)の圧力範囲で使用される。すなわり、真空引きの最終段階やプロセス中の真空制御で機能する制御系である。この制御系は、ポペット弁体112の位置を制御するためのスレーブループと、真空容器200の内部圧力を制御するためのマスターループとを有する二重ループ構造のカスケード制御として構成されている。スレーブループとマスターループの各制御ループは、周知のPID制御系として構成することができる。
【0044】
スレーブループは、電空制御部130がシリンダ室133の圧力を操作して、ポペット弁体112の位置を目標値に近づけることを目的とする制御ループである。電空制御弁131は、シリンダ室133の内部圧力を操作し、付勢バネ113の付勢力とのバランスによってポペット弁体112の位置(リフト量)を操作することができる。目標値は、スロー排気コントローラ150によってポペット弁体112の位置を表す目標指令値pvとして電空制御部130に与えられる。ポペット弁体112のリフト量は、弁体位置センサ138によって計測され、電空制御弁131にフィードバックされる。このようにして、スレーブループは、ポペット弁体112のリフト量をスロー排気コントローラ150から与えられた目標指令値pvに近づけるように制御することができる。なお、フィードバック量は、リフト量に限られず、たとえばシリンダ圧力計測センサを用いてシリンダ圧力をフィードバック量としてもよい。
【0045】
マスターループは、スロー排気コントローラ150が真空排気制御バルブ100のコンダクタンスを操作して、真空容器200の内部圧力を時変の目標値である時変目標値Tpに近づけることを目的とする制御ループである。時変目標値Tpは、不揮発性メモリ152から読み出されたデータに基づいて、スロー排気コントローラ150が生成する。コンダクタンスは、ポペット弁体112のリフト量を変化させて、弁座115との間のクリアランスを調整させることによって行われる。この操作は、オリフィス径を操作することと物理的に等価である。不揮発性メモリ152は、複数種類のプロファイルを表すデータを格納し、その中から選択できように構成しても良い。
【0046】
一方、閉弁モードの制御系は、パーティクルの巻き上がりの可能性が高い高密度(大気圧近傍)の圧力範囲で使用される。閉弁モードの制御系は、コンダクタンスの操作が開弁モードの制御系と相違する。閉弁モードでは、コンダクタンスの操作は、ポペット弁体112の位置である弁体位置と弾性シール部材114のつぶし量を操作することによって行われる。
【0047】
閉弁モードでは、さらに、つぶし量を周期的に変化させることによって、パルス変調に近似する方法で、ゼロ近傍におけるコンダクタンスを操作することができる。閉弁モードにおけるコンダクタンスの操作は、以下のようなシーケンスを繰り返すことによって周期的に動作することになる。
(1)弾性シール部材114のつぶし量の減少(シリンダ圧低下、図4参照)
(2)弾性シール部材114でのガス漏洩の発生。
(3)圧力センサ120の計測面121近傍の圧力が降下。
(4)圧力センサ120が圧力降下を検知(計測圧力の低下)。
(5)偏差δ(=目標値−計測圧力:負の値)の大きさが減少(図9参照)
(6)弾性シール部材114のつぶし量が増大(シリンダ圧上昇、図4参照)
(7)弾性シール部材114でのガス漏洩停止(あるいは低減)
(8)圧力センサ120の計測面121近傍の圧力が上昇。
(9)圧力センサ120が圧力上昇を検知(計測圧力の上昇)
(10)偏差δ(=目標値−計測圧力:負の値)の大きさが増大(図9参照)
(11)(1)に戻る。
上述の(8)工程では、弁開閉による振動的な圧力変動を想定しているが、振動的な圧力変動が発生しない場合には、(10)工程においては、目標値の降下によって偏差δの大きさが増大することになる。
【0048】
このように、実施形態の制御系は、大気圧近傍の高密度領域におけるゼロに近いコンダクタンスから分子領域の近傍における低密度領域におけるコンダクタンスの操作までのきわめて広いダイナミックレンジの操作を実現している。
【0049】
このように、真空排気制御バルブ100では、閉弁領域あるいはその近傍において、オンオフを繰り返して、ゼロ近傍のコンダクタンス操作が実現されているので、ポペット弁体112が周期的に小刻みに動くことになる。このため、本実施形態では、ポペット弁体112は、リニアベアリング135を利用してシリンダ室133に対して支持され、摺動面には、エスロン(商標)その他の低摩擦係数と耐摩耗性とを兼ね備える高機能樹脂のシール部材134を使用し、シリンダ室133の内面133sは、鏡面仕上げが施されている。
【0050】
(D.スロー排気機能付き真空制御バルブの作動シーケンス)
図10は、実施形態の真空排気制御バルブ100による真空引きからプロセスの開始までの作動シーケンスを示すフローチャートである。このオペレーションは、真空容器200の内部が大気圧の状態から、プロセス用の真空制御が開始されるまでの処理の内容を示している。ステップS100では、コントローラ520は、開始信号送信処理を実行する。開始信号送信処理とは、コントローラ520から真空排気制御バルブ100に真空引きを開始させるための開始信号を送信する処理である。開始信号は、真空引きの開始のトリガーとなるものであれば良いので、親子弁Vfが有するバイパス弁Vsへの「バルブ開」の指令信号を利用することもできる。コントローラ520は、容器圧力制御部とも呼ばれる。
【0051】
ステップS200では、真空排気制御バルブ100は、開始信号の受信(開始入力)に応じて真空引きのための制御である真空引き制御を開始する。真空排気制御バルブ100は、計測系としての圧力センサ、制御則を有する制御部、および操作系としての開閉弁といった制御系の基本要素を全て内蔵しているので、計測系や操作系に適合させるための制御則のパラメータ調整もほとんど不要である。真空引き制御は、真空排気制御バルブ100によって自動的に開始され、真空容器200から真空ポンプ300への真空引きが開始される。
【0052】
ステップS300では、コントローラ520は、プロセス用制御系の起動処理を実行する。プロセス用制御系の起動処理は、たとえば真空排気制御バルブ100からの排気完了信号(図2参照)の受信に応じて開始することができる。本実施形態では、排気完了信号は、真空排気制御バルブ100によってコントローラ520に送信される。真空排気制御バルブ100は、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する機能を有している。真空引き目標圧力とは、たとえば排気によってパーティクルの巻き上がりが発生しない圧力としてユーザによって設定される。
【0053】
プロセス用制御系は、真空容器200の内部圧力を計測する計測系としての圧力センサ510と、制御則を有するコントローラ520と、操作系としての真空制御バルブVmと、を備える制御系として構成されている(図1参照)。プロセス用制御系は、操作系としての真空制御バルブVmを真空引き制御系と共有していることになる。これにより、プロセス用制御系が利用可能な状態となる。
【0054】
ステップS400では、コントローラ520は、制御系切替信号送信処理を実行する(図2参照)。制御系切替信号送信処理は、プロセス用制御系の起動完了に応じて、コントローラ520が真空排気制御バルブ100に制御系切替信号を送信する処理である。真空排気制御バルブ100のスロー排気コントローラ150は、制御系切替信号の受信に応じて、制御系切替スイッチ155を切り替える。この切替によって、真空制御バルブVmから真空引き制御系が切り離されるとともに、プロセス用制御系が接続される。これにより、真空容器200の内部圧力は、プロセス用制御系によって制御されることになり、真空引き制御処理は完了する。
【0055】
ただし、制御系の切替は、必ずしも真空引き目標圧力への到達を待つ必要は無く、コントローラ520によって強制的に制御系を切り替えるように構成しても良い。たとえば、コントローラ520は、圧力センサ510の計測値に基づいて、制御系の切替を行ってもパーティクルの巻上げが発生しない領域まで圧力が下がったと判断したら強制的に制御系を切り替えるように構成しても良い(オーバーライド機能)。こうすれば、真空排気制御バルブ100を真空制御バルブVmと同様に扱うことによって、短時間の真空引きとパーティクルの巻き上がり抑制を両立した真空引き制御を簡易に実現させることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、真空排気制御バルブ100に対して開始信号を与えるだけで、真空排気制御バルブ100が真空引き制御を自動的に実行するので、短時間の真空引きとパーティクルの巻き上がり抑制を両立した真空引き制御を簡易に実装することができる。具体的には、たとえば上述の従来技術(図12参照)に対しては以下のように適用することができる。
【0057】
この適用形態は、真空引きに親子弁Vf(図12参照)を利用していた装置において、バイパス弁Vsの開指令信号と閉指令信号とを、それぞれ開始信号と制御系切替信号として利用する形態である。この形態は、親子弁Vfを真空排気制御バルブ100に置き換えるだけで簡易に実装可能である。
【0058】
さらに、実施形態の真空排気制御バルブ100は、計測系としての圧力センサ120、制御則を有するスロー排気コントローラ150、および操作系としての真空制御バルブVmといった制御系の基本要素を全て内蔵しているので、計測系や操作系に適合させるための制御則のパラメータ調整もほとんど不要である。逆に、従来技術のように、圧力センサ510を利用して真空引き制御を行う場合には、圧力センサ510の特性や装備位置に応じた制御定数(パラーメータ)の調整が必要か否かの判断と、必要に応じてパラメータ調整とが必要となる。
【0059】
なお、上述した各実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0060】
(a)上述の実施形態では、弾性シール部材のつぶし量の変動と弁の周期的開閉動作によってゼロ近傍のコンダクタンスを操作しているが、弾性シール部材114のつぶし量の変動と弁の周期的開閉動作のいずれか一方のみによって、ゼロ近傍のコンダクタンスを操作するようにしてもよい。このように、ゼロ近傍のコンダクタンスの操作は、弾性シール部材のつぶし量の変動と弁の周期的開閉動作の少なくとも一方によって実現されていればよい。
【0061】
(b)弾性シール部材の使用は必須ではない。ただし、弾性シール部材を利用すれば、微小振動を発生させ、これを有効利用することができるという利点がある。さらに、ポペット弁体から弾性シール部材が離れた状態との連続的かつ円滑な遷移をも実現することができる。
【0062】
(c)リフト量の操作範囲は、ポペット弁体の位置が弾性シール部材に変形を生じさせる範囲において行われるような操作モードを有するようにしてもよい。こうすれば、ゼロ近傍のコンダクタンスを精密に制御することができる(閉弁モード)。
【0063】
ポペット弁体の位置が弾性シール部材に変形を生じさせる位置を少なくとも一部に含む範囲において、ポペット弁体を周期的に変動させることによって操作される弁開度の操作モードを有するようにしてもよい(準閉弁モード)。こうすれば、開弁モードと閉弁モードとの間の操作モードの遷移を円滑にすることができる。なお、「ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲でのコンダクタンスの操作」は、閉弁モード、準閉弁モード、および開弁モードのうちの少なくとも2つのモードを有する操作であることを意味する。
【0064】
(d)上述の実施形態では、スレーブループとマスターループの二重ループを備えるカスケード制御によって真空引き制御が行われているが、スレーブループの代わりに予め設定された特性の動作を実行する構成で置き換えることによって実現することもできる。特定の動作は、たとえば図11に示される5個のプロファイルP1〜P5のように一定のプロファイルでオンオフを繰り返す動作とし、オンパルスの幅wと間隔g(デューティ比)が相違するパルス幅変調としてもよいし、パルスの振幅を可変とするようにしてもよいし、あるいはパルス数(プロファイルP1では6個)を可変とするようにしてもよい。
【0065】
特定の動作は、たとえば実施形態の電空制御弁の代わりに装備されている電磁制御弁が予め複数の種類の動作を格納し、偏差に応じて選択されるようにしても良いし、偏差に応じてデューティ比を調整するようにしてもよい。こうすれば、カスケード制御での安定性に問題が生じた場合にも、制御系の構成を簡素化して安定性解析を容易にするとともに安定性を改善できる場合もある。
【0066】
さらに、特定の動作は、たとえば図11に示される5個のプロファイルP1a〜P5aのようにパルス信号の出力の後で一定の待機時間qを設けるようにしても良い。こうすれば、真空排気制御バルブの圧力センサによる計測を圧力が安定した状態での計測とすることができる。この構成は、真空排気制御バルブの制御系の仕様において安定性が重視される場合に利用価値が高い。
【0067】
このように、真空引き制御は、上述の実施形態のようにカスケード制御によって実現するようにしてもよいし、シングルループで構成するようにしてもよい。ただし、真空装置の圧力のプロセス制御系には、カスケード制御系が広く利用されているので、そのような場合には、圧力のプロセス制御系を共用して簡易な実装が可能となるという利点がある。一方、真空引き制御の構成に、スレーブループの代わりに予め設定された特性の動作を実行する構成(たとえば電空制御部130での特定の動作の実行)を採用すれば、真空引き制御に特化した制御則を真空排気制御バルブ100に実装可能となる。このように、真空排気制御バルブ100の制御系は、プロセス制御系を利用したカスケード制御だけでなく、シングルループの制御として構成しても良いし、双方の制御モードから選択できるように構成してもよい。
【0068】
このように、真空引き制御は、コンダクタンスをゼロから予め設定された範囲までの操作範囲で操作することができればよく、制御ループの数やコンダクタンス操作における物理的挙動に関わらず、大気圧近傍の高密度領域における巻き上がりを抑制することができる。なお、真空排気制御バルブは、真空引きの制御機能を備える真空制御バルブとして把握されるので、単に真空制御バルブとも呼ばれる。
【0069】
(c)上述の実施形態では、真空引きの完了後に別の制御系による真空制御が実行されているが、たとえば減圧乾燥炉やアニール炉(ステンレスの磁性調整)に使用される真空容器においては、減圧完了後において真空制御を行う必要は無く真空排気制御バルブを遮断状態とするだけで足りる。このような構成では、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する機能を有すれば、ユーザに真空引きの完了を知らせることができるとともに、真空ポンプの停止信号としても利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
110…開閉弁、111…バルブハウジング、112…ポペット弁体、113…付勢バネ、114…弾性シール部材、115…弁座、120…圧力センサ、121…計測面、130…電空制御部、131…電空制御弁、132…空気流路、133…シリンダ室、138…弁体位置センサ、140…流路、141…上流側流路、142…下流側流路、150…スロー排気コントローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空装置が備える真空容器と真空ポンプとの間に接続されるための真空制御バルブであって、
前記真空容器に接続されるための上流側流路と、前記真空ポンプに接続されるための下流側流路と、を含む流路と、
弁開度を操作することによって、前記上流側流路と前記下流側流路との間のコンダクタンスを変化させる開閉弁と、
前記上流側流路の内部の圧力を計測する圧力センサと、
前記上流側流路の目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させ、前記計測された圧力と前記目標圧力値との間の偏差に応じて前記開度を操作する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記真空制御バルブの外部からの開始入力に応じて、前記コンダクタンスを操作することによって前記偏差を小さくする制御を開始し、
前記コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができる真空制御バルブ。
【請求項2】
請求項1の真空制御バルブであって、
前記開閉弁は、ポペット弁体と、弁座と、前記ポペット弁体と前記弁座との間をシールする弾性シール部材と、を有し、
前記制御部は、前記ポペット弁体と前記弁座との間の距離であるリフト量を変化させて前記コンダクタンスを操作し、
前記弁開度の操作は、前記リフト量が前記弾性シール部材に変形を生じさせる値を少なくとも一部に含む範囲において、前記リフト量を変動させることによって操作される操作モードを有する真空制御バルブ。
【請求項3】
請求項2記載の真空制御バルブであって、
前記リフト量の操作は、前記ポペット弁体の位置が前記弾性シール部材に変形を生じさせる範囲において行われる真空制御バルブ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の真空制御バルブであって、
前記圧力センサは、前記ポペット弁体の外表面であって、前記上流側流路に面する位置に計測面を有する真空制御バルブ。
【請求項5】
請求項4記載の真空制御バルブであって、
前記ポペット弁体は、前記上流側流路に露出する先端部を有し、
前記圧力センサは、前記先端部に計測面を有する真空制御バルブ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の真空制御バルブであって、さらに
前記時間関数の内容を変更するための情報を入力して、前記制御部に伝達するための外部インターフェースを備える真空制御バルブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の真空制御バルブであって、
前記制御部は、
前記目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させるためのデータを格納する記憶部と、
前記記憶部から読み出されたデータに基づいて、前記目標圧力値を変化させる目標値生成部と、
を有する真空制御バルブ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の真空制御バルブであって、
前記制御部は、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する真空制御バルブ。
【請求項1】
真空装置が備える真空容器と真空ポンプとの間に接続されるための真空制御バルブであって、
前記真空容器に接続されるための上流側流路と、前記真空ポンプに接続されるための下流側流路と、を含む流路と、
弁開度を操作することによって、前記上流側流路と前記下流側流路との間のコンダクタンスを変化させる開閉弁と、
前記上流側流路の内部の圧力を計測する圧力センサと、
前記上流側流路の目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させ、前記計測された圧力と前記目標圧力値との間の偏差に応じて前記開度を操作する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記真空制御バルブの外部からの開始入力に応じて、前記コンダクタンスを操作することによって前記偏差を小さくする制御を開始し、
前記コンダクタンスは、ゼロから予め設定された範囲までの連続した範囲で操作することができる真空制御バルブ。
【請求項2】
請求項1の真空制御バルブであって、
前記開閉弁は、ポペット弁体と、弁座と、前記ポペット弁体と前記弁座との間をシールする弾性シール部材と、を有し、
前記制御部は、前記ポペット弁体と前記弁座との間の距離であるリフト量を変化させて前記コンダクタンスを操作し、
前記弁開度の操作は、前記リフト量が前記弾性シール部材に変形を生じさせる値を少なくとも一部に含む範囲において、前記リフト量を変動させることによって操作される操作モードを有する真空制御バルブ。
【請求項3】
請求項2記載の真空制御バルブであって、
前記リフト量の操作は、前記ポペット弁体の位置が前記弾性シール部材に変形を生じさせる範囲において行われる真空制御バルブ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の真空制御バルブであって、
前記圧力センサは、前記ポペット弁体の外表面であって、前記上流側流路に面する位置に計測面を有する真空制御バルブ。
【請求項5】
請求項4記載の真空制御バルブであって、
前記ポペット弁体は、前記上流側流路に露出する先端部を有し、
前記圧力センサは、前記先端部に計測面を有する真空制御バルブ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の真空制御バルブであって、さらに
前記時間関数の内容を変更するための情報を入力して、前記制御部に伝達するための外部インターフェースを備える真空制御バルブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の真空制御バルブであって、
前記制御部は、
前記目標圧力値を予め設定された時間関数として変化させるためのデータを格納する記憶部と、
前記記憶部から読み出されたデータに基づいて、前記目標圧力値を変化させる目標値生成部と、
を有する真空制御バルブ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の真空制御バルブであって、
前記制御部は、真空引き目標圧力への到達完了に応じて、完了信号を外部に出力する真空制御バルブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−134183(P2011−134183A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294213(P2009−294213)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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