説明

ズームレンズ及びそれを用いたプロジェクタ装置

【課題】 DMD等の光の反射方向を変えて画像を形成するライトバルブからの画像をスクリーン等に拡大投射する高性能で明るくコンパクトなズームレンズを提供する。
【解決手段】 拡大側から順に、全体で負の屈折力を有する第1レンズ群、全体で正の屈折力を有する第2レンズ群、全体で正の屈折力を有する第3レンズ群、全体で正の屈折力を有する第4レンズ群及び全体で正の屈折力を有する第5レンズ群から構成され、前記第1レンズ群は、拡大側に凸形状の負レンズ、正レンズ、負レンズ、負レンズ及び正レンズ、前記第2レンズ群は、拡大側に凹形状の負レンズ及び正レンズ、前記第3レンズ群は正レンズ1枚、前記第4レンズ群は、負レンズ、正レンズ、負レンズ及び正レンズ、前記第5レンズ群は正レンズ1枚、でなるズームレンズであり、前記第1、5レンズ群は変倍動作中固定され、前記第2〜4レンズ群は光軸上を移動することによってレンズ全系の変倍を成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にDMDなどの光の反射方向を変えて画像を形成するライトバルブからの画像をスクリーンその他に拡大投射する高性能で明るくコンパクトなズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小なマイクロミラー(鏡面素子)を画素に対応させて平面上に並べ、マイクロマシン技術を用いて、それぞれの鏡面の角度を機械的に制御することによって画像を表示するDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)が実用化されており、この分野で従来から広く用いられてきた液晶パネルより応答速度が速く、明るい画像が得られるという特徴が、小型で高輝度、高画質であり持ち運びが容易なプロジェクタ装置を実現するのに適していることから、急速に普及してきている。
【0003】
プロジェクタ装置においてライトバルブとしてDMDを用いる場合、同時に使用する投射用レンズに対してはDMD特有の制約が発生する。第1の制約は小型のプロジェクタ装置を開発する上で最大の制約とも考えられる投射用レンズのF値に関するものである。現在、DMDにおいて、画像を生成する際にマイクロミラーのON及びOFFを表現するために旋回する角度は±12°であり、これにより有効な反射光(有効光)と無効な反射光(無効光)とを切り替えている。従って、DMDをライトバルブとしたプロジェクタ装置においては有効光をとらえる必要があると共に無効光を捉えないことが条件となり、この条件から投射用レンズのF値を導くことが出来、すなわちF=2.4となる。実際にはさらに少しでも光量を取り込みたいという要望があるため、実害のない範囲でのコントラストの低下などに配慮した上で更なる小さなF値であるF=2.0クラスを要求されることも多い。また、この様な条件は投射用レンズのライトバルブ側の瞳の位置が一定という条件のもとで成立しているため、ズームレンズなどの瞳位置が移動する場合は、移動した分、光量のロスなどが生ずるため、一般的には明るさが問題となりやすい広角端で瞳位置を最適化するなどの配慮も必要となる。
【0004】
第2の制約は光源系との配置に関するものである。小型化の為には投射用レンズのイメージサークルはなるべく小さくしたい為に、DMDに投射用の光束を入力する光源系の配置は限られてしまう。前述のDMDからの有効光を投射用レンズに入力するには、光源系を投射用レンズとほぼ同じ方向(隣り合わせ)に設置することとなる。また投射用レンズの最もライトバルブ側レンズとライトバルブとの間(すなわち一般的にはバックフォーカス)を投射系と光源系との両光学系で使用することになり、投射用レンズには大きなバックフォーカスを設けなければならないと同時に、光源からの導光スペースを確保するために、ライトバルブ側のレンズ系を小さく設計する必要が生ずる。このことは投射用レンズの光学設計の立場から考えると、投射用レンズの後方付近にライトバルブ側の瞳位置が来るように設計するという制約となる。その一方で、投射用レンズの性能を向上するためには、多数のレンズを組み合わせる必要があり、多数枚のレンズを配置すると投射用レンズの全長は有る程度の長さが必要となり、投射用レンズの全長が長くなれば、入射瞳位置が後方にあるレンズでは当然のことながら前方のレンズ径が大きくなってしまうという小型化とは相反する問題となる。
【0005】
この様に、開発を行う上の大きな制約はあるものの、ライトバルブとしてDMDを採用するプロジェクタ装置は、小型化の上で他の方式よりも有利とされており、現在ではプレゼンテーションを行う際に便利なデータプロジェクタを中心として、持ち運びが容易なコンパクトなものが広く普及してきている。また装置自体をコンパクトに構成するためには、当然のことながら使用される投射用レンズに関しても、コンパクト化の要望は非常に強く、もう一方では、多機能化という要望もあり、諸収差の補正の結果としての画質に関する性能が使用するDMDの仕様を充分満足することはもちろんのこと、利便性の点ではズーム構成による変倍が可能というだけではなく、DMDの中心と投射レンズの光軸をずらした、いわゆるシフト構成を採用するためにイメージサークルが大きいものを要求するようになってきた。このような仕様で開発された投射用レンズは特に前群レンズの口径が要望よりどうしても大きくなりがちで、プロジェクタ装置の厚さ寸法に大きな影響を及ぼすことになる。しかしながら、持ち運びが容易であることを前提としたプロジェクタ装置において厚さ寸法を小さくすることは重要で、ノート型パーソナルコンピュータなどと共に持ち歩くことの多い使われ方をするプロジェクタ装置では、最も重要な要素であるとも言える。この問題を解決する手段として、例えば特開2006−162734号公報に開示されているような投射用レンズのコンパクト化設計方法の一例がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−162734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の提案では、画角が46度程度であり、広角レンズとして使用するには不満を感じざるを得ない。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑み、DMDなどの光の反射方向を変えて画像を形成するライトバルブの特性に適しており、ライトバルブからの画像をスクリーン上或いはその他の壁面等に拡大投射する用途において結像性能が高く、さらに明るくコンパクトなズームレンズを実現し、小さな会議室等の限られたスペースでも大きな画面を投射可能な高画質で持ち運びが容易なプロジェクタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、 拡大側から順に、全体で負の屈折力を有する第1レンズ群、全体で正の屈折力を有する第2レンズ群、全体で正の屈折力を有する第3レンズ群、全体で正の屈折力を有する第4レンズ群及び全体で正の屈折力を有する第5レンズ群から構成され、前記第1レンズ群は、拡大側から順に、拡大側に凸のメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズ(以下負レンズ)、正の屈折力を有するレンズ(以下正レンズ)、負レンズ、負レンズ及び正レンズの5枚を配して構成され、前記第2レンズ群は、拡大側から順に、拡大側に凹のメニスカス形状の負レンズ及び正レンズの2枚のレンズを配して構成され、前記第3レンズ群は、正レンズ1枚を配して構成され、前記第4レンズ群は、負レンズ、正レンズ、負レンズ及び正レンズの4枚を配して構成され、前記第5レンズ群は、正レンズ1枚を配して構成される変倍可能なズームレンズであって、前記第1レンズ群及び前記第5レンズ群は変倍動作中固定されており、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群及び前記第4レンズ群は広角端から望遠端にかけて縮小側から拡大側方向へ光軸上を移動することによってレンズ全系の変倍を成しており、第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの光軸上の距離に関して下記条件式(1)を満足しており、広角端における前記第4レンズ群と前記第5レンズ群との位置関係に関して下記条件式(2)を満足しており、前記第1レンズ群のパワーに関して下記条件式(3)を満足しており、前記第1レンズ群の光軸上の寸法に関して下記条件式(4)を満足しており、前記第1レンズ群の最も拡大側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(5)を満足しており、前記第1レンズ群を構成する各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(6)を満足していることを特徴とする。(請求項1)
(1) 5.0 < TL / fw < 8.0
(2) 1.0 < dIV w / fw < 2.0
(3) −1.1 < fI / fw < −0.5
(4) 1.5 < LI / fw < 2.2
(5) −3.6 < f1 / fw < −2.3
(6) 18 <(V1+V3+V4)/ 3−(V2+V5)/ 2
ただし、
TL :第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの光軸上の距離
(第1レンズ群の最も拡大側面からの拡大側物体距離1950mmに合焦状態)
w :広角端におけるレンズ全系の合成焦点距離
(第1レンズ群の最も拡大側面からの拡大側物体距離1950mmに合焦状態)
IV w :広角端における第4レンズ群と第5レンズ群の間の空気間隔
I :第1レンズ群の合成焦点距離
I :第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と、第1レンズ群で最も縮小側面に配置されるレンズの縮小側面までの光軸上の距離
1 :第1レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
2 :第1レンズ群で拡大側から2枚目に配置される正レンズのアッベ数
3 :第1レンズ群で拡大側から3枚目に配置される負レンズのアッベ数
4 :第1レンズ群で拡大側から4枚目に配置される負レンズのアッベ数
5 :第1レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
【0010】
条件式(1)は、第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの光軸上の距離の条件であり、小型、小径化の条件となる。上限を超えると第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの距離が大きくなり、またレンズが大口径になり、小型、小径化を損ねてしまい、下限を超えると、諸収差のバランスを取るのが困難になる。
【0011】
条件式(2)は、第4レンズ群と第5レンズ群の広角端における間隔条件である。前述のようにライトバルブの照明系のスペースの為、この間隔を確保することが必要となる。上限を超えると照明系のスペース確保は可能になるがレンズが大型化し、下限を超えると照明系のスペースが不足し設計困難となる。
【0012】
条件式(3)は、第1レンズ群のパワーに関する条件である。第1レンズ群は強い負のパワーを持ち、DMD等のライトバルブを照明するための光学系を配する為の空間を第4レンズ群と第5レンズ群の空気間隔部分に確保する目的を持っている。下限を超えると、第1レンズ群の負のパワーが小さくなり、第4レンズ群と第5レンズ群の空気間隔を確保するのが困難になり、上限を超えると負のパワーが大きくなり第2レンズ群、第3レンズ群及び第4レンズ群の正のパワーを強めなければならず、諸収差のバランスを取るのが困難になる。
【0013】
条件式(4)は、第1レンズ群の光軸上の寸法に関する条件式であり、少ないレンズ枚数で諸収差を補正する為の条件となる。第4レンズ群と第5レンズ群の間のバックフォーカスに相当する部分を長く取る為には、特に第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの負パワーを増大することが有効であるが、負パワーが過大になると諸収差を補正することが困難になる。これを第1レンズ群の光軸上の距離を大きくとることにより解決するか、第1レンズ群の負パワーを分散するために、レンズ枚数を増加させることで解決することになり、必然的に第1レンズ群はある程度長くならざるを得ない。条件式(4)の上限を超えると光軸方向の寸法が大きく成り過ぎて仕様を満足することが難しくなり小型化の意味がなくなり、下限を超えると小径化は難しくなる。
【0014】
条件式(5)は、第1レンズ群の最も拡大側に配置される負レンズのパワーに関する条件式である。第4レンズ群と第5レンズ群の間のバックフォーカスに相当する部分を長く取る為には、特に第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの負パワーを増大することが有効であるが、条件式(5)の上限を超えると負パワーが過大になり諸収差を補正することが困難になり、下限を超えると負パワーが弱くなりバックフォーカスを長くとることが難しくなる。
【0015】
条件式(6)は、第1レンズ群内での色収差補正のための条件である。単色収差を補正するには、各レンズのパワーが過大とならないことが必要で、そのためには条件式(6)を満たす正レンズ、負レンズのアッベ数であることが必要な条件となる。下限を超えると、色収差の補正が困難となる。
【0016】
請求項1記載のズームレンズにおいて、前記第2レンズ群を構成する各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(7)を満足していることが好ましい。(請求項2)
(7) 10 < V7−V6
ただし、
6 :第2レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
7 :第2レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
【0017】
条件式(7)は、第2レンズ群内での色収差補正のための条件である。単色収差を補正するには、各レンズのパワーが過大とならないことが必要で、そのためには条件式(7)を満たす負レンズ、正レンズのアッベ数であることが必要な条件となる。下限を超えると、色収差の補正が困難となる。
【0018】
請求項1又は2に記載のズームレンズにおいて、合焦動作を前記第1レンズ群を光軸方向に移動することにより達成し、前記第1レンズ群を構成する前記第1レンズ群で2枚目に配置されるレンズに関して条件式(8)を満足していることが好ましい。(請求項3)
(8) 3.3 < f2 / fw < 5.4
ただし、
2 :第1レンズ群で拡大側から2枚目に配置されるレンズの焦点距離
【0019】
条件式(8)は、第1レンズ群の最も拡大側から2枚目に配置される正レンズのパワーに関する条件式である。第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの負パワーを増大することは、広角端における第4レンズ群と第5レンズ群の間の空気間隔を確保し、かつ小型化に有効であるが、負のパワーを強くすると歪曲収差が発生するため、この歪曲収差を補正するために、第1レンズ群で拡大側から2枚目に正レンズを配置することが必要になる。下限を超えると、正のパワーが弱くなり歪曲収差の補正が困難になり、上限を超えると、正のパワーが強くなり第1レンズ群の負のパワーが弱くなるため、バックフォーカスを確保することが困難になる。
【0020】
請求項1に記載のズームレンズにおいて、前記第4レンズ群は、拡大側に凹のメニスカス形状の負レンズ、正レンズ、負レンズ、正レンズの4枚で構成され、前記第4レンズ群を構成する4枚の各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(9)を満足しており、前記第4レンズ群の最も縮小側に配置される硝材の分散特性に関して下記条件式(10)を満足しており、前記第4レンズ群の最も縮小側に配置されるレンズの縮小側の面の形状に関して下記条件式(11)を満足していることが好ましい。(請求項4)
(9) 10 <(V10+V12)/ 2−(V9+V11)/ 2
(10) 60 < V12
(11) −1.7 < rIV 7 / fw < −0.9
ただし、
9 :第4レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
10 :第4レンズ群で拡大側から2枚目に配置される正レンズのアッベ数
11 :第4レンズ群で拡大側から3枚目に配置される負レンズのアッベ数
12 :第4レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
IV7 :第4レンズ群の最も縮小面側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【0021】
条件式(9)は、第4レンズ群内での色収差補正のための条件である。単色収差を補正するには、各レンズのパワーが過大とならないことが必要で、そのためには条件式(9)を満たす負レンズ、正レンズのアッベ数であることが必要な条件となる。下限を超えると、色収差の補正が困難となる。
【0022】
条件式(10)は、倍率色収差補正のための条件である。第4レンズ群は正パワーを有しているため、倍率色収差への影響も大きい。特に、第4レンズ群の中で最も縮小側に配置される正レンズはパワーが強く色収差への影響が大きく、条件式(14)の下限を超えると収差補正が困難になる。
【0023】
条件式(11)は、レンズ全系における球面収差、コマ収差をきめ細かく補正するための条件式である。前記第4レンズ群の拡大側面から3枚のレンズで補正しきれずに残存する球面収差、コマ収差を補正している。下限を超えると補正不足となり、逆に上限を超えると補正過剰となる。
【0024】
このように本発明によるズームレンズをプロジェクタ装置に搭載することにより装置全体を小型化することが可能となり(請求項5)、持ち運びが容易なコンパクトなプロジェクタ装置を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、DMDなどのライトバルブの特性に適した結像性能が高くコンパクトなズームレンズを実現し、コンパクトで明るく、高画質のプロジェクタを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるズームレンズの第1実施例のレンズ構成図である。
【図2】第1実施例のレンズの諸収差図である。
【図3】本発明によるズームレンズの第2実施例のレンズ構成図である。
【図4】第2実施例のレンズの諸収差図である。
【図5】本発明によるズームレンズの第3実施例のレンズ構成図である。
【図6】第3実施例のレンズの諸収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、具体的な数値実施例について、本発明を説明する。以下の第1実施例から第3実施例のズームレンズでは拡大側から順に、全体で負の屈折力を有する第1レンズ群LG1、全体で正の屈折力を有する第2レンズ群LG2、全体で正の屈折力を有する第3レンズ群LG3、全体で正の屈折力を有する第4レンズ群LG4及び全体で正の屈折力を有する第5レンズ群LG5から構成され、前記第1レンズ群は、拡大側から順に、拡大側に凸のメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズ(レンズ名称L11、拡大側面101、縮小側面102)(以下負レンズ)、正の屈折力を有するレンズ(レンズ名称L12、拡大側面103、縮小側面104)(以下正レンズ)、負レンズ(レンズ名称L13、拡大側面105、縮小側面106)、負レンズ(レンズ名称L14、拡大側面107、縮小面側108)及び正レンズ(レンズ名称L15、拡大側面108、縮小側面109)の5枚を配して構成され、前記第2レンズ群LG2は、拡大側から順に、拡大側に凹のメニスカス形状の負レンズ(レンズ名称L21、拡大側面201、縮小側面202)及び正レンズ(レンズ名称L22、拡大側面202、縮小面側203)の2枚のレンズを配して構成され、前記第3レンズ群LG3は、正レンズ1枚(レンズ名称L31、拡大側面301、縮小面側302)を配して構成され、前記第4レンズ群LG4は、負レンズ、正レンズ、負レンズ及び正レンズの4枚を配して構成され(レンズ名称を拡大側より順にL41、L42・・・・、面の名称を拡大側から順に401、402・・・・とする)、前記第5レンズ群LG5は、正レンズ1枚(レンズ名称L51、拡大側面501、縮小側面502)を配して構成される。また、前記第5レンズ群LG5の縮小側とライトバルブ面との間には僅かな空気間隔をおいてDMD等のライトバルブの構成部品であるカバーガラスCG(拡大側面をC01、縮小側面をC02)が配されている。前記第1レンズ群及び前記第5レンズ群は変倍動作中固定されており、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群及び前記第4レンズ群は広角端から望遠端にかけて縮小側から拡大側方向へ光軸上を移動することによってレンズ全系の変倍を成している。
【0028】
各実施例において使用している非球面については、周知のごとく、光軸方向にZ軸、光軸と直交する方向にY軸をとるとき、非球面式:
Z=(Y/r)/〔1+√{1−(1+K)(Y/r)}〕
+A・Y+B・Y+C・Y+D・Y10+E・Y12
で与えられる曲線を光軸の回りに回転して得られる曲面で、近軸曲率半径:r、円錐定数:K、高次の非球面係数:A、B、C、D、Eを与えて形状を定義する。尚表中の円錐定数及び高次の非球面係数の表記において「eとそれに続く数字」は「10の累乗」を表している。例えば、「e−4」は10−4を意味し、この数値を直前の数値に掛ければ良い。
【0029】
[実施例1]
本発明のズームレンズの第1実施例について数値例を表1に示す。また図1は、そのレンズ構成図、図2はその諸収差図である。
表及び図面中、fはズームレンズ全系の焦点距離、FnoはFナンバー、2ωはズームレンズの全画角を表す。また、rは曲率半径、dはレンズ厚またはレンズ間隔、nはd線に対する屈折率、νはd線のアッベ数を示す(ただし、表中の合焦動作により変化する数値は101面からの物体距離を1950mmとした合焦状態での数値)。諸収差図中の球面収差図におけるCA1、CA2、CA3はそれぞれCA1=550.0nm、CA2=450.0nm、CA3=620.0nmの波長における収差曲線である。非点収差図におけるSはサジタル、Mはメリディオナルを示している。また、全般に亘り特別に記載のない限り、諸値の計算に使用している波長はCA1=550.0nmである。
【0030】
【表1】

【0031】
[実施例2]
本発明のズームレンズの第2実施例について数値例を表2に示す。また図3はそのレンズ構成図、図4はその諸収差図である。
【0032】
【表2】

【0033】
[実施例3]
本発明のズームレンズの第3実施例について数値例を表3に示す。また図5はそのレンズ構成図、図6はその諸収差図である。
【0034】
【表3】

【0035】
次に第1実施例から第3実施例に関して条件式(1)から条件式(11)に対応する値を、まとめて表4に示す。
表4から明らかなように、第1実施例から第3実施例の各実施例に関する数値は条件式(1)から(11)を満足しているとともに、各実施例における収差図からも明らかなように、各収差とも良好に補正されている。
【0036】
【表4】

【0037】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
請求項1記載の発明は、ズームレンズにおいて、
拡大側から順に、全体で負の屈折力を有する第1レンズ群、全体で正の屈折力を有する第2レンズ群、全体で正の屈折力を有する第3レンズ群、全体で正の屈折力を有する第4レンズ群及び全体で正の屈折力を有する第5レンズ群から構成され、前記第1レンズ群は、拡大側から順に、拡大側に凸のメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズ(以下負レンズ)、正の屈折力を有するレンズ(以下正レンズ)、負レンズ、負レンズ及び正レンズの5枚を配して構成され、前記第2レンズ群は、拡大側から順に、拡大側に凹のメニスカス形状の負レンズ及び正レンズの2枚のレンズを配して構成され、前記第3レンズ群は、正レンズ1枚を配して構成され、前記第4レンズ群は、負レンズ、正レンズ、負レンズ及び正レンズの4枚を配して構成され、前記第5レンズ群は、正レンズ1枚を配して構成される変倍可能なズームレンズであって、前記第1レンズ群及び前記第5レンズ群は変倍動作中固定されており、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群及び前記第4レンズ群は広角端から望遠端にかけて縮小側から拡大側方向へ光軸上を移動することによってレンズ全系の変倍を成しており、第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの光軸上の距離に関して下記条件式(1)を満足しており、広角端における前記第4レンズ群と前記第5レンズ群との位置関係に関して下記条件式(2)を満足しており、前記第1レンズ群のパワーに関して下記条件式(3)を満足しており、前記第1レンズ群の光軸上の寸法に関して下記条件式(4)を満足しており、前記第1レンズ群の最も拡大側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(5)を満足しており、前記第1レンズ群を構成する各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(6)を満足していることを特徴とする。
(1) 5.0 < TL/fw < 8.0
(2) 1.0 < dIV w /fw < 2.0
(3) −1.1 < fI /fw < −0.5
(4) 1.5 < LI /fw < 2.2
(5) −3.6 < f1 /fw < −2.3
(6) 18 <(V1+V3+V4)/ 3−(V2+V5)/ 2
ただし、
TL :第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの光軸上の距離
(第1レンズ群の最も拡大側面からの拡大側物体距離1950mmに合焦状態)
w :広角端におけるレンズ全系の合成焦点距離
(第1レンズ群の最も拡大側面からの拡大側物体距離1950mmに合焦状態)
IV w :広角端における第4レンズ群と第5レンズ群の間の空気間隔
I :第1レンズ群の合成焦点距離
I :第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と、第1レンズ群で最も縮小側面に配置されるレンズの縮小側面までの光軸上の距離
1 :第1レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
2 :第1レンズ群で拡大側から2枚目に配置される正レンズのアッベ数
3 :第1レンズ群で拡大側から3枚目に配置される負レンズのアッベ数
4 :第1レンズ群で拡大側から4枚目に配置される負レンズのアッベ数
5 :第1レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
【0038】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のズームレンズにおいて、
前記第2レンズ群を構成する各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(7)を満足していることを特徴とする。
(7) 10 < V7−V6
ただし、
6 :第2レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
7 :第2レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
【0039】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のズームレンズにおいて、
合焦動作を前記第1レンズ群を光軸方向に移動することにより達成し、前記第1レンズ群を構成する前記第1レンズ群で2枚目に配置されるレンズに関して条件式(8)を満足していることを特徴とする。
(8) 3.3 < f2 / fw < 5.4
ただし、
2 :第1レンズ群で拡大側から2枚目に配置されるレンズの焦点距離
【0040】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のズームレンズにおいて、
前記第4レンズ群は、拡大側に凹のメニスカス形状の負レンズ、正レンズ、負レンズ、正レンズの4枚で構成され、前記第4レンズ群を構成する4枚の各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(9)を満足しており、前記第4レンズ群の最も縮小側に配置される硝材の分散特性に関して下記条件式(10)を満足しており、前記第4レンズ群の最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の形状に関して下記条件式(11)を満足していることを特徴とする。
(9) 10 <(V10+V12)/2−(V9+V11)/2
(10) 60 < V12
(11) −1.7 < rIV 7 / fw < −0.9
ただし、
9 :第4レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
10 :第4レンズ群で拡大側から2枚目に配置される正レンズのアッベ数
11 :第4レンズ群で拡大側から3枚目に配置される負レンズのアッベ数
12 :第4レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
IV7 :第4レンズ群の最も縮小面側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【0041】
請求項5記載の発明は、プロジェクタ装置において、請求項1から請求項4のいずれかの1項に記載されるズームレンズを搭載していることを特徴とする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から順に、全体で負の屈折力を有する第1レンズ群、全体で正の屈折力を有する第2レンズ群、全体で正の屈折力を有する第3レンズ群、全体で正の屈折力を有する第4レンズ群及び全体で正の屈折力を有する第5レンズ群から構成され、前記第1レンズ群は、拡大側から順に、拡大側に凸のメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズ(以下負レンズ)、正の屈折力を有するレンズ(以下正レンズ)、負レンズ、負レンズ及び正レンズの5枚を配して構成され、前記第2レンズ群は、拡大側から順に、拡大側に凹のメニスカス形状の負レンズ及び正レンズの2枚のレンズを配して構成され、前記第3レンズ群は、正レンズ1枚を配して構成され、前記第4レンズ群は、負レンズ、正レンズ、負レンズ及び正レンズの4枚を配して構成され、前記第5レンズ群は、正レンズ1枚を配して構成される変倍可能なズームレンズであって、前記第1レンズ群及び前記第5レンズ群は変倍動作中固定されており、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群及び前記第4レンズ群は広角端から望遠端にかけて縮小側から拡大側方向へ光軸上を移動することによってレンズ全系の変倍を成しており、第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの光軸上の距離に関して下記条件式(1)を満足しており、広角端における前記第4レンズ群と前記第5レンズ群との位置関係に関して下記条件式(2)を満足しており、前記第1レンズ群のパワーに関して下記条件式(3)を満足しており、前記第1レンズ群の光軸上の寸法に関して下記条件式(4)を満足しており、前記第1レンズ群の最も拡大側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(5)を満足しており、前記第1レンズ群を構成する各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(6)を満足していることを特徴とするズームレンズ。
(1) 5.0 < TL / fw < 8.0
(2) 1.0 < dIV w / fw < 2.0
(3) −1.1 < fI / fw < −0.5
(4) 1.5 < LI / fw < 2.2
(5) −3.6 < f1 / fw < −2.3
(6) 18 <(V1+V3+V4)/ 3−(V2+V5)/ 2
ただし、
TL :第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と合焦位置までの光軸上の距離
(第1レンズ群の最も拡大側面からの拡大側物体距離1950mmに合焦状態)
w :広角端におけるレンズ全系の合成焦点距離
(第1レンズ群の最も拡大側面からの拡大側物体距離1950mmに合焦状態)
IV w :広角端における第4レンズ群と第5レンズ群の間の空気間隔
I :第1レンズ群の合成焦点距離
I :第1レンズ群で最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面と、第1レンズ群で最も縮小側面に配置されるレンズの縮小側面までの光軸上の距離
1 :第1レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
2 :第1レンズ群で拡大側から2枚目に配置される正レンズのアッベ数
3 :第1レンズ群で拡大側から3枚目に配置される負レンズのアッベ数
4 :第1レンズ群で拡大側から4枚目に配置される負レンズのアッベ数
5 :第1レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
【請求項2】
前記第2レンズ群を構成する各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(7)を満足していることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
(7) 10 < V7−V6
ただし、
6 :第2レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
7 :第2レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
【請求項3】
合焦動作を前記第1レンズ群を光軸方向に移動することにより達成し、前記第1レンズ群を構成する前記第1レンズ群で2枚目に配置されるレンズに関して条件式(8)を満足していることを特徴とする請求項1又は2に記載のズームレンズ。
(8) 3.3 <f2 / fw < 5.4
ただし、
2 :第1レンズ群で拡大側から2枚目に配置されるレンズの焦点距離
【請求項4】
前記第4レンズ群は、拡大側に凹のメニスカス形状の負レンズ、正レンズ、負レンズ、正レンズの4枚で構成され、前記第4レンズ群を構成する4枚の各レンズに使用される硝材の分散特性に関して下記条件式(9)を満足しており、前記第4レンズ群の最も縮小側に配置される硝材の分散特性に関して下記条件式(10)を満足しており、前記第4レンズ群の最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の形状に関して下記条件式(11)を満足していることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
(9) 10 <(V10+V12)/ 2−(V9+V11)/2
(10) 60 < V12
(11) −1.7 < rIV 7 / fw < −0.9
ただし、
9 :第4レンズ群で最も拡大側に配置される負レンズのアッベ数
10 :第4レンズ群で拡大側から2枚目に配置される正レンズのアッベ数
11 :第4レンズ群で拡大側から3枚目に配置される負レンズのアッベ数
12 :第4レンズ群で最も縮小側に配置される正レンズのアッベ数
IV7 :第4レンズ群の最も縮小面側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの1項に記載されるズームレンズを搭載していることを特徴としたプロジェクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−73129(P2013−73129A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213673(P2011−213673)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】