説明

セグメント化された電極を有するアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ

アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイであって、ディスプレイ基板4と、該ディスプレイ基板の上方に配置された第1電極6と、該第1電極の上方に配置された2つの第2電極14、16と、第1電極と第2電極との間に、該第1電極及び該第2電極と電気的に接触して形成されたエレクトロルミネッセント発光層であって、第1電極と各それぞれの第2電極が重なるところに第1のアクティブエリア及び第2のアクティブエリアが画定されるようになっており、該発光層は、第1電極と各それぞれの第2電極との間の電流に応じて各アクティブエリアから発光する、エレクトロルミネッセント発光層と、第1電極に電気的に接続された、エレクトロルミネッセント発光層を通る電流の流れを制御する駆動トランジスタを備える駆動回路と、それぞれの第2電極に接続された、該それぞれの第2電極にそれぞれの電圧を選択的に提供する2つの電源回路と、電源回路に順次又は同時に、それぞれの第2電極に電圧を提供させるコントローラーと、を備える、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極セグメントが解像度の増大をもたらすように駆動される、セグメント化された上部電極を有するアクティブマトリックスエレクトロルミネッセント(EL)ディスプレイに関する。省電力ELディスプレイ、立体ELディスプレイ、高解像度ELディスプレイ、及びマルチビューELディスプレイを含む、このELディスプレイのいくつかの用途が検討される。
【0002】
[関連出願の相互参照]
ここで、Dustin L. Winters他によって2008年8月14日に出願された「OLED Device With Embedded Chip Driving」と題する、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/191,478号、Michael E. Miller他によって2007年12月19日に出願された「Drive Circuit And Electro-Luminescent Display System」と題する米国特許出願第11/959,755号(米国特許出願公開第2009/0160826号)、及びMichael E. Miller他によって2007年11月7日に出願された「Electro-Luminescent Display Device」と題する米国特許出願第11/936,251号(米国特許出願公開第2009/0115705号)が参照される。これらの開示は本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
1つ又は複数のエレクトロルミネッセント(EL)材料層を含むELディスプレイが当該技術分野において知られている。1つ又は複数のEL材料層は2つの電極間に位置する発光層を含み、これらのEL材料層の全てがディスプレイ基板上にコーティングされる。これらのELディスプレイには、多くの場合に、EL材料が有機分子を含む有機エレクトロルミネッセントディスプレイが含まれる。これらのディスプレイでは、電極のうちの少なくとも一方がセグメント化され、2つの電極のセグメントが重なった領域が2次元アイランドを形成し、各重なったアイランドが個々の発光素子を画定するようにしている。
【0004】
ELディスプレイは、パッシブマトリックスディスプレイ又はアクティブマトリックスディスプレイのいずれかとして分類される。パッシブマトリックスディスプレイでは、電極のそれぞれがストリップにパターニングされ、アノードとしての役割を果たす電極のストリップと、カソードとしての役割を果たす電極のストリップとは互いに直交している。このようにして、2つの電極間の重なりによって、互いに分離された領域、すなわち発光素子が形成される。カソード及びアノードの双方を個々の電気信号を用いてアドレス指定することによって、個々の発光素子に、各発光素子の光出力を制御する別個の電流が提供される。しかしながら、クロストークを回避し、各発光素子に別個の電流を提供するために、任意の時点に、1つの方向(通常、行方向)において、1つの電極ストリップ(通常、カソード)にしか電流を提供することができない。各発光素子は、フリッカーを回避するために、好ましくは毎秒少なくとも60回光を生成し、各発光素子は非常に大きな静電容量を有するので、パッシブマトリックスディスプレイが大型であるか又はパッシブマトリックスディスプレイの解像度が高い場合、大きな電力損失が生じる。したがって、パッシブマトリックスELディスプレイは多くの場合に、小型の又は低解像度のディスプレイを形成するときにのみ実用的である。しかしながら、これらのディスプレイは、各発光素子への電流を制御するアクティブ回路を必要としないという利点を有する。
【0005】
パッシブマトリックスELディスプレイの1つの例が、特許文献1においてLiedenbaum他によって提供されている。この特許に示されているように、それぞれの電極がストライプの1次元アレイから形成され、アノードを形成するストライプ及びカソードを形成するストライプは互いに直交し、個々の発光素子を規定する。この特許では、電極を駆動する(すなわち電極に駆動電圧又は駆動電流を提供する)ドライバーも検討されている。検討されているように、各ドライバーは各電極のストライプに信号を提供し、各ストライプは複数の発光素子に対応する。この特許が実例で示しているように、ドライバーは、任意の回路が複数の電極ストライプに信号を順次提供するように配列される。
【0006】
パッシブマトリックスディスプレイの別の例では、特許文献2においてKomatsu他が、2つの領域に分けられ、各領域がアクティブな行電極及び列電極の独自のグループを有するパッシブマトリックスELディスプレイを検討している。この構成によって、発光素子の2つの行を同時にアドレス指定することが可能になり、したがってパッシブマトリックスELディスプレイの実際の解像度が増大する。しかしながら、アクティブ回路を通じていずれかの電極の全ての素子への電流を独立して制御することは不可能であり、したがって、Komatsu他は明らかにパッシブマトリックスディスプレイを提供している。
【0007】
アクティブマトリックスELディスプレイは、電極のうちの一方のみ、通常アノードを、発光素子を規定するアイランドの2次元アレイにパターニングすることによって形成される。次に、双方の次元において、パターニングされた電極の全てを覆うように対電極がブランケットコーティングされる。パターニングされた電極内の発光素子のそれぞれにアクティブマトリックス回路が取り付けられ、各発光素子への電流を制御する。このアクティブマトリックス回路は通常、少なくとも、金属バスからパターニングされた電極のアイランドへの電流の流れを制御する電力トランジスタと、該電力トランジスタのゲート電圧を制御するコンデンサーと、コンデンサーの選択を可能にし、該コンデンサーに駆動電圧をかけることを可能にする第2のトランジスタとを備える。ELディスプレイとともに用いるためのアクティブマトリックス回路が特許文献3においてCokによって検討されている。
【0008】
これらのアクティブマトリックス駆動回路の高解像度アレイを用いるディスプレイは、製造が複雑であり、アクティブマトリックス回路は通常、ディスプレイ基板上に大きな空間を必要とする。この理由により、アクティブマトリックスELディスプレイの解像度は通常、ディスプレイ基板上に形成されるアクティブマトリックス回路数によって制限される。この技術を用いて、パッシブマトリックスELディスプレイで可能であるよりもはるかに大型ではるかに高解像度のデバイスが形成されるが、解像度は多くの場合、多くの用途に必要とされる解像度よりも低い。また、こうしたディスプレイを形成するのに必要とされる数十万個又は数百万個のトランジスタを形成する際、不具合が生じる可能性が高く、不具合の可能性はトランジスタ数の増大とともに増大する。したがって、アクティブマトリックス回路数を増大させることによりディスプレイの解像度を増大させた結果、通常、製造からの市場性のあるディスプレイの歩留まりが低くなり、したがってディスプレイの製造コストが増大する。したがって、必要とされるトランジスタ数を増大させることなくディスプレイの解像度を増大させることが望ましい。
【0009】
非常に高解像度のELディスプレイが特に望ましい多くの用途が存在する。1つの用途は、裸眼立体(auto-stereoscopic)ディスプレイ、特にマルチビュー裸眼立体ディスプレイの作製である。この用途の分野では、障壁、レンズ、又は他の構造を適用して、ディスプレイ内のいくつかの発光素子からの光を空間内の1点又は空間内の限界視角に方向付ける一方で、ディスプレイ内の他の発光素子からの光を空間内の異なる点又は限界視角に方向付けることが知られている。この方法を通じて、ディスプレイ内の2つの異なる発光素子からの光が、裸眼立体画像を提供するようにユーザーの各眼に与えられるか、又は環境内でディスプレイを見ている異なるユーザーに与えられる。不都合なことに、各画像の解像度は、異なる方向の数の逆数に等しい係数だけ低減され、したがって、これらの方法によってディスプレイデバイスの有効解像度が低減する。例えば、Chou他は、非特許文献1において、1280×800のアドレス指定可能なピクセルを用いて従来の2次元画像を提供することが可能なディスプレイを検討している。このディスプレイは、4ビューマルチビューステレオディスプレイを提供するように切り替えることもできる。しかしながら、ディスプレイは、4ビューマルチビューステレオ画像を表示しているとき、960×266のアドレス指定可能なピクセルしか有しない。したがって、高解像度の画像を提供するために、発光素子数が、従来の2次元ディスプレイ内の発光素子数に、必要とされる異なる方向の数を乗算したものに等しくなるように解像度が増大される。したがって、Chou他によって記載されているような4つのビューを有するディスプレイを、2Dディスプレイに一般的な解像度で製造するには、通常の2Dディスプレイの4倍のトランジスタ数を用いてディスプレイを形成することが必要となる。同様に、Kao他によって非特許文献2において検討されているように、レンチキュラーレンズアレイ又は類似の特性を有するアドレス指定可能な液晶レンズが立体ディスプレイの作製のために知られている。障壁スクリーンの場合と同様に、これらのタイプのスクリーンは、マルチビューステレオ画像を提示する際にディスプレイの有効解像度を低減する。
【0010】
時間領域を分けて複数の画像を提供する立体ディスプレイも検討されている。例えば、Huang他は、非特許文献3において、アドレス指定可能なレンズがディスプレイ上に形成され、レンズの形状が、任意の発光ダイオードからの画像を空間内の複数のロケーションに方向付けるように時間とともに変更されるディスプレイの構想を記載している。この方法は、ディスプレイ上の画像が、フリッカーを回避するために、ビュー数の少なくとも60倍のレートで更新されることを必要とし、同じ更新レートで正確に変更される光学レンズを更に必要とする。さらに、レンズはピクセルごとに複数の電極を必要とする。したがって、この手法は実施が高価となる可能性があり、受容可能な更新レートを達成するにはディスプレイをより低解像度にすることが必要となる可能性がある。不都合なことに、今日商業化可能なディスプレイ技術は、更新レートが限られており、これによって、こうした方法によって提供されるビュー数が制限されることになる。
【0011】
非常に高解像度のELディスプレイが特に望ましい別の既知の用途は、視角低減を通じて低電力ディスプレイを提供することである。例えば、特許文献4において、Leeは、マイクロレンズのスパースなアレイを、発光素子のはるかに高密度のアレイとともに用いて、ユーザーの眼への光をステアリングすることを検討している。このため、ユーザーの眼への光をステアリングするのに様々な発光素子が選択され、ディスプレイがどの時点においても小さな視野しか提供しない場合であっても、ユーザーがディスプレイを非常に大きな視野を有するものとして知覚できるようにする。ディスプレイの視野を選択的に調整することがこのように可能であることは、ディスプレイの視野を低減することによってディスプレイの電力消費を大量に低減する一方でユーザーに知覚的に広い視野を提供することを可能にする。不都合なことに、こうしたディスプレイは、各ピクセル内に多数の個別にアドレス指定可能な発光素子を必要とする。さらに、今日利用可能な技術では、各ピクセル内に多数の個別にアドレス指定可能な発光素子を有する高解像度ディスプレイを作製することは不可能である。Leeは適用されるマイクロレンズの種類を特定していないが、これらのマイクロレンズには、特許文献5においてTutt他によって教示されているようなレンチキュラーレンズを含めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,927,542号明細書
【特許文献2】米国特許第6,791,260号明細書
【特許文献3】米国特許第6,636,191号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0091037号明細書
【特許文献5】米国特許第6,570,324号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「A Novel 2-D/3-D Arbitrarily Switchable Autostereoscopic Display」(SID 09 Digest pgs. 1407-1410)
【非特許文献2】「An auto-stereoscopic 3D Display using Tunable Liquid Crystal Lens Array that Mimics Effects of GRIN Lenticular Lens Array」(SID09 Digest pgs. 111-114)
【非特許文献3】「High resolution autostereoscopic 3D display with scanning multi-electrode driving liquid crystal (MeD-LC) Lens」(Society for Information Display 2009 (SID'09) Proceedings, pgs. 336-339)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、非常に高い解像度を有するELディスプレイを提供する必要がある。特に、アクティブマトリックス回路数よりも多くの数の個別にアドレス指定可能な発光素子を有するアクティブマトリックスELディスプレイが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイであって、
ディスプレイ基板と、
前記ディスプレイ基板の上方に配置された第1電極と、
前記第1電極の上方に配置された2つの第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に、該第1電極及び該第2電極と電気的に接触して形成されたエレクトロルミネッセント発光層であって、前記第1電極と各それぞれの第2電極が重なるところに第1のアクティブエリア及び第2のアクティブエリアが画定されるようになっており、該発光層は、前記第1電極と各それぞれの第2電極との間の電流に応じて各アクティブエリアから発光する、エレクトロルミネッセント発光層と、
前記第1電極に電気的に接続された、前記エレクトロルミネッセント発光層を通る電流の流れを制御する駆動トランジスタを備える駆動回路と、
それぞれの第2電極に接続された、該それぞれの第2電極にそれぞれの電圧を選択的に提供する2つの電源回路と、
前記電源回路に順次又は同時に、前記それぞれの第2電極に電圧を提供させるコントローラーと、
を備える、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイが提供される。
【0016】
本発明の構成は、ディスプレイ内のアクティブマトリックス駆動回路数を増大させることなく、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイの有効解像度を改善するという利点を提供する。加えて、この構成には、ディスプレイの電力消費を低減するか又は画像データセットを提供するために光学レンズを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のアクティブマトリックスELディスプレイにおいて有用なアクティブマトリックスディスプレイパネルの一部分の断面図である。
【図2】本発明のアクティブマトリックスELディスプレイにおいて有用なアクティブマトリックス回路の概略図である。
【図3】本発明のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイの概略図である。
【図4】本発明のアクティブマトリックスELディスプレイにおいて有用なアクティブマトリックスディスプレイパネルの一部分の上面図である。
【図5】本発明のアクティブマトリックスELディスプレイを駆動する際に有用な方法のフローチャートである。
【図6】本発明のアクティブマトリックスELディスプレイにおいて有用なアクティブマトリックス回路の概略図である。
【図7】本発明の構成における、チップレットを用いてアクティブマトリックス回路を提供するアクティブマトリックスディスプレイパネルの一部分の上面図である。
【図8】本発明の一構成による、光学層を含むディスプレイパネルの一部分の断面図である。
【図9】本発明の一構成による、光学層を含むディスプレイパネルの一部分の上面図である。
【図10】本発明の一構成による、光学層を含むディスプレイパネルの一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、各個別の発光素子に電流を提供するためのアクティブマトリックス回路数よりも多くの数の個別にアドレス指定可能な発光素子を有するエレクトロルミネッセント(EL)ディスプレイを提供する。
【0019】
本発明は、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイを提供する。このアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイはディスプレイパネル2を備え、ディスプレイパネル2の一部分が図1に示されている。このディスプレイパネル2はディスプレイ基板4を備える。少なくとも第1電極6がディスプレイ基板4のエリアの上方に配置される。2つ以上の個別にアドレス指定可能な第2電極8、10がディスプレイ基板4及び第1電極6の上方に更に配置される。第1電極6と第2電極8、10のそれぞれとの間に、それらの電極と電気的に接触してエレクトロルミネッセント発光層12が形成され、それによって第1電極6及び各それぞれの第2電極8、10が重なる第1のアクティブエリア14及び第2のアクティブエリア16が規定される。発光層12は、第1電極6と各それぞれの第2電極8、10との間の電流に応じて各アクティブエリア14、16内で発光する。また図1には、ディスプレイパネル2が任意選択で、アクティブマトリックス層18及びピクセル規定層20等の付加的な層を備えることができることも示されている。
【0020】
本発明の構成では、「アクティブエリア」14、16は、第1電極6のディスクリート素子、発光層12の一部分、及び第2電極8又は10のディスクリート素子が重なり、互いに電気的に接触するエリアであり、アクティブエリア14、16内の発光層12の部分が、第1電極6と、第2電極8又は10のうちの一方との間の電流の流れに応じて発光するようになっている。この規定では、第1電極のいずれの2つのディスクリート素子も互いに電気的に絶縁され、第1電極のいずれのディスクリート素子への電圧も、他のいずれの第1電極からも独立して制御されることが理解される。また、第1電極に重なる第2電極のいずれの2つのディスクリート素子も、互いに電気的に絶縁され、第1電極に重なる第2電極のいずれの2つのディスクリート素子への電圧も、第1電極に重なる第2電極の他のいずれのディスクリート素子に対する電圧からも独立して制御される。この規定は、第1電極に対応するか又は該第1電極に重なる第2電極が、互いに電気的に絶縁され、独立して制御可能な電圧を供給することを必要とすることに留意すべきである。一方、2つの別個の第1電極に対応するか、又はそれらに重なる第2電極は、互いに電気的に絶縁されることも、独立して制御可能とすることもできるが、これは必要ではない。
【0021】
図2に示す駆動回路30等の駆動回路も本発明のELディスプレイに含まれる。例えば、図2の駆動回路30は、図1のアクティブマトリックス層18内に形成される。図2に示されているように、この駆動回路30は、駆動トランジスタ32を備える。駆動トランジスタ32は、図2のノード36によって示される図1の第1電極6を通る電力線34からの電流の流れを変調するアクティブ回路の一部である。このため、駆動回路30はエレクトロルミネッセント発光層12(図1に示す)を通る電流の流れを制御する。駆動回路30は通常、データトランジスタ40に対するゲートを開き、データ線42を介して駆動回路30に制御信号が提供されることを可能にする信号を提供する選択線38を含む、図2の他の構成要素を備える。この制御信号は、コンデンサー44に蓄積される。この制御信号は、駆動トランジスタ32のゲートを制御して、電力線34と第1電極を表すノード36との間の電流の流れを制御する。
【0022】
本発明のアクティブマトリックスELディスプレイ50は、図3に示されているような2つの電源回路54、56を更に備える。図3は、電源回路54、56がそれぞれディスプレイパネル52に接続されていることを示している。ディスプレイパネル52の一部分は図1に示されている。一方、これらの電源回路54、56はそれぞれ、それぞれの第2電極8、10(図1に示す)にそれぞれの電圧を選択的に提供するために、それぞれの第2電極8、10に特に接続されている。電源回路54、56に、それぞれの第2電極8、10に電圧を順次又は同時に提供させるために、コントローラー58が更に含まれる。
【0023】
本発明のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ50(図3に示す)のディスプレイパネル70内の第1電極6及び第2電極8、10の特に望ましい構成が図4に示されている。図4に示されているように、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ内のディスプレイパネル70は、ディスプレイ基板72の上方に配置された第1電極74a、74b、74cの2次元アレイを更に含み、ここで74a及び74bは2次元アレイの第1の次元に沿って配列され、74a及び74cは2次元アレイの第2の次元に沿って配列される。これらの第1電極74a、74b、74cの可視性を改善するために、この図の中で第2電極78a、80a、82a、84aを通る切欠き76が与えられている。図4に示す構成では、第2電極78a、80a、82a、84aの1次元アレイが提供されている。第2電極78a、80a、82a、及び84aのそれぞれが複数の第1電極に重なる。例えば、切欠き76がなければ、第2電極78a、80a、82a、及び84aは第1電極74a及び74b、並びに第1の次元に沿った全ての他の第1電極に重なる。この構成では、2つ以上の第2電極78b、80b、82b、84bが、第1電極の2次元アレイ内の第1電極74cのそれぞれの上方に配置される。アクティブエリア104a、104b、104c、104d内で、第1電極のアレイ内の第1電極74cと第2電極78b、80b、82b、84bとの間に、それらの第1電極及び第2電極の双方と電気的に接触してエレクトロルミネッセント発光層102が形成される。発光層102は、第1電極の2次元アレイ内の第1電極74cのうちの1つと、該第1電極74cの上方に配置された2つ以上の第2電極78b、80b、82b、84bのうちの1つとの間の電流に応じて各アクティブエリア104a、104b、104c、104dから発光する。示されているように、アクティブマトリックスELパネル内の各第2電極78b、80b、82b、84bは第1の方向に延在し、ディスプレイ基板72の上方に配置された第1電極74a、74b、74cの2次元アレイと、第2電極の1次元アレイとを備え、第2電極78b、80b、82b、84bのそれぞれが複数の第1電極74a、74bに重なる。
【0024】
本発明の「アレイ」は、順序付けされたパターンに配列された複数の類似した構造を含む。1次元アレイは、第1の次元に沿って配列された複数の構造及び第2の次元に沿って配列された単一構造(singular structure)を含み、第2の次元は通常、第1の次元に対し垂直である。2次元アレイは、第1の次元に沿って配列された複数の構造及び第2の次元に沿って配列された複数の構造を含み、第2の次元は通常、第1の次元に対し垂直である。
【0025】
図3に示す構成では、第1の次元に沿って第1電極74a、74bに重なる第2電極78a、80b、82c、84cが、第2電極のグループ98を規定する。第1の次元内の第1電極の1次元アレイのそれぞれに重なる第2電極によって、第2電極の他のグループが形成される。例えば、第2電極のグループ100は、第1電極74c、及び第1電極74cとともに第1の次元に沿って配列された他の第1電極に重なる電極78b、80b、82b、84bによって形成される。この図に示されているように、第2電極の各グループ98、100は、等しい数の第2電極を有し、各グループは対応する第1の第2電極78a、78b及び第2の第2電極80a、80bを含む。これらの対応する電極78a、78b及び80a、80bは、互いに電気的に接続されている。図4に示すように、電力バス86、88、90、92がELパネル70上に設けられ、絶縁層(図示せず)によって第2電極78a、78b、80a、80b、82a、82b、84a、84bのほとんどから電気的に絶縁されている。一方、これらの電力バス86、88、90、92は、電力バス92を第2電極78aに接続するビア94を含むビアを通じて、選択された第2電極78a、78b、80a、80b、82a、82b、84a、84bに接続されている。電力バス92は第2電極のグループ98内の第2電極78a及び第2電極の異なるグループ100内の対応する第2電極78bに接続されていることに注目されたい。このため、各グループ内の対応する第2電極は、互いに電気的に接続されている。また、ELパネル70のエッジに電力をバスで供給する電力リード線96等の電力リード線が形成され、電力バス86、88、90、92のそれぞれの接続及び電源回路のうちの1つ、例えば電源回路54又は56(図3に示す)への接続を可能にする。この構成では、第2電極の複数の同一のグループが形成され、各グループは、第1の方向に沿って配列された複数の対応する第1電極に重なる。この構成では、第2電極の各グループ内の各第2電極は、第2電極の各グループ内の対応する第2電極及び異なる電源回路に電気的に接続されている。
【0026】
この構成内で、電力バス86、88、90、92は、好ましくは金属、例えばアクティブマトリックス層18(図1に示す)内にTFTを形成するのに用いられる金属層から形成され、電力バス86、88、90、92は、ピクセル規定層20(図1に示す)を形成するのに用いられる層の一部分によって第2電極78a、78b、80a、80b、82a、82b、84a、84bから絶縁されている。こうした構成は、少数の電源回路54、56を、通常、第2電極の各グループ内の第2電極の数以下しか必要としないので、特に望ましい。望ましい構成では、第2電極78a、80a、82a、84aの数、したがって第2電極の各グループ98内の電源回路54、56の数は、通常2〜50であり、より好ましくは5〜30である。また、この構成は、第2電極78a、78b、80a、80b、82a、82b、84a、84bへの接続を少数しか必要とせず、これによって、本発明の利点を提供する比較的単純で費用効率が高い解決法が可能になる。
【0027】
図3の要素を更に検討すると、電源回路54、56は通常、少数の電圧レベル間で切り替えるスイッチを備える。例えば、1つの構成では、電源回路54、56は2つの異なる電圧、すなわち、第1電極に対する、電流が発光層を通って流れることを可能にするのに十分大きな電位(electrical potential)を提供する基準電圧に対応する一方の電圧、及び第1電極に対する、電流が発光層を通って流れることができないようにするのに十分小さい電位を提供する第2の電圧を提供する電源回路間を切り替えることができる。すなわち、第1電極と第2電極との間の電圧電位は、発光層からの発光しきい値を下回るか、又は発光層に逆バイアスがかけられる。この構成では、コントローラー58はこれらの2つの電圧レベル間を切り替え、電源回路54、56に順次又は同時に、それぞれの第2電極に電圧を提供させ、例えば、電源回路54、56に同時に、それぞれの第2電極に異なる電圧を同時に提供させる。この例では、第1電極に対する、電流が発光層を通って流れることを可能にするのに十分大きな電位を電圧が提供するようにスイッチが設定されているとき、発光層は、適切な信号が第1の発光層に提供されている限り、第1電極及び発光層との第2電極の重なりによって画定されたアクティブエリア内で発光することが可能であることに注目されたい。一方、電圧が切り替えられると、発光層は、駆動回路30(図2に示す)によって第1電極に提供されたいずれの信号についても、第2電極と第1電極及び発光層との重なりによって画定されたアクティブエリア内で発光することが可能でなくなる。電源回路54、56が、3つ以上の電圧間を切り替えることも可能であり、例えば、電源回路54、56が、発光層を通る電流の流れの段階変化を可能にする第2の基準電圧を提供することに対応する第3の電圧に切り替えることが望ましい。第1の電圧を、第2電極の各グループ内の第2電極の数で除算したものに応じて流れる電流に実質的に等しい電流が発光層を通って流れることを可能にするようにこの第3の電圧を選択することが特に望ましい。
【0028】
別の構成では、電源回路54、56は、第2電極が電圧源に接続されることを可能にするか、又は単に第2電極を電圧源から遮断し、第2電極の電圧がフローティングすることを可能にする。この構成では、電源回路に順次又は同時に、それぞれの第2電極に電圧を提供させるコントローラー58は、電源回路に同時に第2電極のうちの一方に第1の電圧を提供させることができる一方で、同時に他方の第2電極を遮断し、該第2電極がフローティングすることを可能にすることができる。ここでもまた、第2電極が電圧源に接続されているとき、電圧源は、第1電極に対する、電流が発光層を通って流れることを可能にするのに十分大きな電位を提供することは注目に値する。したがって、発光層は、適切な信号が第1の発光層に提供されている限り、第2電極と第1電極及び発光層との重なりによって画定されたアクティブエリア内で発光することが可能となる。一方、発光層は、電圧源から遮断されると、駆動回路30(図2に示す)によって第1電極に提供されるいずれの信号についても、第2電極と第1電極及び発光層との重なりによって画定されたアクティブエリア内で発光することが可能でなくなる。
【0029】
これらの例のそれぞれにおいて、電源回路54、56は、少なくとも2つの条件、すなわち、電源回路54、56が取り付けられた第2電極8、10に対応する発光層12(図1に示す)のアクティブエリア14、16からの発光を可能にする一方の条件と、電源回路54、56が取り付けられた第2電極8、10に対応する発光層12(図1に示す)のアクティブエリア14、16からの発光を阻止する第2の条件との間の切り替えを提供することができる。このアクティベート/ディアクティベートスイッチは、駆動回路30の状態又は駆動回路30が第1電極6(図1に示す)に与える信号にかかわらず提供されることに更に注目されたい。したがって、アクティブエリアは、スイッチが発光を可能にする電圧を提供するように設定されているときに「アクティベート」され、スイッチが発光を妨げる電圧を提供するように設定されているときに「ディアクティベート」されるように規定される。
【0030】
ディスプレイ用途では、コントローラー58が入力画像信号60を付加的に受信し、電源回路54、56に、それぞれの第2電極8、10(図1に示す)に電圧を提供させるのと同期して、第1の駆動信号62を駆動回路に提供することが更に望ましい。このようにして、コントローラー58は、駆動信号62を駆動回路30(図2に示す)に提供する。この駆動回路30は通常、コントローラー58がアクティブエリアをアクティベートする信号を電源回路54、56に提供するときに、アクティブエリア14、16を通る電流のアナログ制御を提供する。一方、代替的に、コントローラー58はアクティブエリアをディアクティベートする信号を電源回路54、56に提供することもできる。
【0031】
このとき、いくつかの状況下では、コントローラー58が、電源回路54、56のうちの少なくとも第1の電源回路に信号を提供してアクティベート信号を提供する一方で、第1の電源回路と異なる少なくとも第2の電源回路に信号を提供してディアクティベーション信号を提供することが望ましい。このため、アクティブエリアの一部分、具体的には、第1の電源回路に取り付けられた第2電極と電気的に接触しているアクティブエリアは、駆動回路によって第1電極に提供された信号に応じて発光する一方で、アクティブエリアの第2の部分、具体的には、第2の電源回路に取り付けられた第2電極と電気的に接触しているアクティブエリアは発光しない。図4を参照すると、こうした選択によって、第2電極の各グループ98、100内の対応する第2電極、例えば78a及び78bのうちの1つ又は複数に対応するアクティブエリアが、駆動回路30(図2に示す)によって提供された信号に応じて発光することが可能になる一方で、第2電極の各グループ98、100内の他の対応する第2電極80a、80b、82a、82b、84a、84bのうちの1つ又は複数は、駆動回路30(図2に示す)によって提供された信号に応じて発光しない。
【0032】
上述したようなアクティブマトリックスELディスプレイを用いることによって、個々の発光素子に電流を提供するために、アクティブマトリックス回路数よりも多くの数の個別にアドレス指定可能な発光素子を有するアクティブマトリックスELディスプレイが提供される。こうしたディスプレイを提供するために、図3のコントローラー58は、図5に示すプロセスを用いることができる。図5において提供されるように、コントローラーは第1電極の数に各グループ内の第2電極の数を乗算したものに等しい解像度を有する入力画像信号60を受信する(110)か、又は信号を受信し、空間スケーリング技術を適用して、この解像度を有する信号を提供する。この入力画像信号60は、ディスプレイ上に第1の画像を表示するための画像信号を提供する。第1の次元に沿った、74a、74bを含む17個の第1電極、及び第2の次元に沿った、74a、74cを含む4つの第1電極、並びに各グループ内に4つの第2電極を有する図4に示すディスプレイパネル70において、入力画像信号は好ましくは、例えば17列×16行の、68個の一意のピクセル用の信号を含む。ここで、16行は第1電極によって形成された4行を含み、これらの4行のそれぞれが第2電極の各グループ内の第2電極によって4行に分けられる。第2電極はディアクティベートされ(112)、各グループ内のそれぞれの第2電極がアクティベーションのために選択される(114)。次に、各グループ内のそれぞれの第2電極に対応する画像データの第1のサブセットへの入力画像信号のサブセットが選択される(116)。次に、コントローラー58は、第1電極のそれぞれに接続された駆動回路30(図2に示す)に駆動信号62を提供することによって駆動信号を更新する(118)。ここで、この駆動信号は画像データの第1のサブセットに対応する。次に、コントローラー58は、電源回路54、56に信号を提供し、電源回路はステップ114において選択された第2電極に電圧を提供して、ディスプレイの対応するアクティブエリアをアクティベートする(120)。このため、第1電極のうちの1つによって画定されたエリア内の1つのアクティブエリアが照明され、ステップ116において選択された第1の画像データの第1のサブセットに対応する光出力を有する。このため、この例では、入力画像信号内の3つおきのデータ線が、各第1電極のアクティブエリアのうちの1つの中で提供される。次に、コントローラー58はアクティブな第2電極に対応する電源回路に信号を提供し、これらの第2電極に対応するアクティブエリアをディアクティベートし(122)、発光を停止する。次に、コントローラーは画像データの第2のサブセット及び第2電極の第2のサブセットを選択し(124)、ステップ116〜122を繰り返す。このプロセスが、少なくとも60Hzの周波数を有する一意の入力画像信号に応じて全てのアクティブエリアがアクティベートされるようなレートで完了するとき、ユーザーは、第1電極の数に各グループ内の第2電極の数を乗算したものに等しい解像度を有する画像を知覚する。コントローラーは、図5の方法を適用することによって、入力画像信号の第1のサブセットを駆動回路に順次提供する一方で、電源回路に、第1の時間間隔中に第1の光を生成するように第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせ、入力画像信号の第2のサブセットを駆動回路に提供する一方で、電源回路に、第2の時間間隔中に第2の光を生成するように第2電極の第2のサブセットをアクティベートさせ、これによってユーザーには高解像度のディスプレイが見える。この高解像度のディスプレイは、各アクティブエリアからの光が人間の眼によって統合されるときに、ディスプレイ内の駆動回路数よりも多くの数の知覚発光素子を有することになり、したがって、このディスプレイは、等しい数の駆動回路を有する従来技術のディスプレイの解像度よりも高い知覚解像度を有することになる。
【0033】
ディスプレイの複数の行がアクティベートされる図4に示すディスプレイパネル構成では、図2の駆動回路30が第1のディスプレイ更新サイクル中に第1の駆動信号を受信及び蓄積し、該信号を第2のディスプレイ更新サイクル中に第1電極素子に提供することが望ましい。実際に、駆動回路30が、存在する第2電極のグループと少なくとも同数の値を受信し蓄積することができる場合、データが駆動回路30にロードされるレートが大幅に低減される。これを達成するために、駆動回路30は、複数の値を蓄積し、これらの複数の値のそれぞれについて第1電極に信号を提供するように変更される。この構成において、用語「更新サイクル」は、アクティブマトリックスELディスプレイ内の各駆動回路30にデータ信号を提供するプロセスを指す。アクティブマトリックスELディスプレイ内の駆動回路30のそれぞれが更新されるか、又は駆動回路30の蓄積素子又はコンデンサー44にちょうど1回書き込まれると、更新サイクルが完了する。
【0034】
こうした構成において有用なアクティブマトリックス駆動回路130が図6に示されている。この図に示すように、このアクティブマトリックス駆動回路130は、電力線134から、第1電極を表すノード136までの電流の流れを制御する。駆動回路130では、駆動トランジスタ138が、この駆動トランジスタ138のゲートに提供された電圧に基づいてノード136への電流の流れを制御する。この駆動回路では、駆動トランジスタ138のゲートへの電圧が駆動線140によって電流制御回路132a又は電流制御回路132bのいずれかに提供され、電流制御回路132a又は電流制御回路132bのいずれかが、駆動トランジスタ138に電圧を提供する。電流制御回路132a、132bのそれぞれが、書込みトランジスタ140a、140bと、蓄積素子、具体的には蓄積コンデンサー142a、142bと、読出しトランジスタ144a、144bとを備える。
【0035】
動作中、選択信号が書込み線146a、146bのうちの一方に与えられ、書込みトランジスタ140a又は140bの一方のゲートに電圧をかける。この電圧は、選択された書込みトランジスタ140a又は140bをアクティベートし、選択された書込みトランジスタを導通させる。データ信号がデータ線148に提供され、選択された書込みトランジスタ140a又は140bを通過し、選択された書込みトランジスタ140a又は140bに接続された蓄積コンデンサー142a又は142bを充電する。次に、信号は書込み線146a又は146bから、そしてその後、データ線148からも除去される。信号がもう片方の(alternate)書込み線146a又は146b上に出され、書込みトランジスタ140a又は140bのうちの2番目をアクティベートする。データ信号がデータ線148上に出され、もう片方の蓄積コンデンサー142a又は142bを充電する。ここでもまた、信号が書込み線146a、146bから除去される。このプロセスは反復され、双方の後続の駆動信号を電流制御回路132a、132bに与える。同時に、選択信号が読出し線152a又は152b上に交互に出され、蓄積コンデンサー142a、142b上に蓄積された電圧が回路を通過し、駆動トランジスタ138のゲートに与えられ、上で電力線134からノード136への電流の流れを制御することを可能にする。蓄積コンデンサー142a、142bの静電容量は、蓄積コンデンサー142a、142b間のクロストークを低減するために、好ましくは駆動トランジスタ138のゲートにおける寄生容量よりもはるかに高い。
【0036】
図6のアクティブマトリックス回路では、読出しトランジスタ144a、144bは、書込みトランジスタ140a、140bが切り替えられるレートよりも高いレートで切り替えられ、書込みトランジスタ144a、144bが読出しトランジスタ140a、140bよりも長い期間アクティブであることを可能にする。したがって、この駆動回路は、通常、データ線148に与えられたアナログ電圧に応答して駆動トランジスタ138に制御回路を提供するマルチプレクサーの機能を果たす。また、マルチプレクサーは、電源から発光層のアクティブエリア及び複数の電流制御回路132a、132bへの電流を調整するための、第1の電源及び第1電極に接続された駆動トランジスタ138を備える。複数の電流制御回路132a、132bはそれぞれ、駆動トランジスタ138のゲート電極に接続され、書込みトランジスタ140a、140bと、蓄積コンデンサー142a、142bと、読出しトランジスタ144a、144bとを備える。
【0037】
当業者であれば、1つ又は複数のマルチプレクサーの機能を提供するために、多数の駆動回路を用いることができることを理解するであろう。例えば、追加の構成要素が各電流制御回路132a、132bに付加されるか、若しくは電流制御回路132a、132b間で共有されるか、又は回路は電圧ではなく電流に応じて応答することができる。また、駆動回路の或る特定の単純化が可能である。NMOSプロセス又はPMOSプロセスではなくCMOSプロセスを用いて代替の駆動回路が形成される。NMOSプロセス又はPMOSプロセスのうちのいずれを用いても図4に示す回路を形成することができる。一方、CMOSデバイスでは、読出しトランジスタ144aは第1のドーピングp又はnで形成され、PMOS TFT又はNMOS TFTのいずれかが形成され、このとき、読出しトランジスタ144bは第2のドーピングで形成され、読出しトランジスタ144aを形成するのに用いられたPMOS TFT又はNMOS TFTのもう片方が形成される。このため、読出し線152aは、読出しトランジスタ144a、144bの双方のゲートに取り付けられ、電流制御回路140a又は140bのうちの一方を書込み用に選択するために読出し線152aに正電圧が印加され、この場合、電流制御回路140a、140bのうちの他方を読出し用に選択するために同じ読出し線152aに負電圧が印加され、読出し線152bが必要なくなる。
【0038】
本発明の配置は駆動回路30(図2に示す)を供給するための多くの異なるバックプレーン技術を用いることができるが、1つの特に優れた構成では、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイは、独立したチップレット基板上に形成され、ディスプレイ基板に取り付けられたチップレットを更に備え、1つ又は複数の駆動回路が該チップレット内に形成される。例えば、図7は、ディスプレイ基板164上に搭載されたチップレット162を備えるディスプレイパネル160の一部分を示している。このチップレット162は、電力バス166と、第1電極170、172を含む第1電極に取り付けられた導線168との間の電力を変調する、駆動回路30等の駆動回路を含む。駆動回路を含む各チップレット162は、通常、各チップレット162が駆動信号を複数の第1電極170、172に提供するように複数の駆動回路を含むが、一方、チップレットは通常、該チップレットが取り付けられた第1電極170、172ごとに固有の駆動回路を含む。これらのチップレットは、信号線174に提供された信号に応じて駆動信号を変調し、信号線174は通常、図3のコントローラー58等のコントローラーに接続される。
【0039】
「チップレット」は、ディスプレイ基板上に搭載される、別個に製造された集積回路である。従来のマイクロチップ(又はチップ)と極めて同様に、チップレットはチップレット基板を用いて製造され、集積トランジスタ並びに絶縁体層及び導電体層を含み、これらの層は半導体製造施設(又は製造工場)において堆積され、次にフォトリソグラフィー法を用いてパターニングされる。チップレット内のこれらのトランジスタは、トランジスタ駆動回路内に配列され、本発明の第1電極170、172に対する電流を変調する。チップレット162は従来のマイクロチップよりも小さいが、従来のマイクロチップとは異なり、ワイヤーボンディング又はフリップチップボンディングによってチップレットに対し電気接続が作製されない。代わりに、各チップレットをディスプレイ基板上に搭載した後、導電層及び絶縁体層の堆積及びフォトリソグラフィーによるパターニングを用いて必要な付属品を形成する。したがって、例えば、2マイクロメートル〜15マイクロメートルの大きさのビアを用いることにより、通常、接続部は小さくされる。このフォトリソグラフィーによるパターニングによって、第1電極及び導線168が、金属層等の単一の材料からパターニングされることが可能になる。
【0040】
チップレットは従来のシリコン製造施設において製造されるので、これらのチップレット内の半導体は、好ましくは結晶質であり、例えば単結晶シリコンであり、極めて安定であり、ロバストであり、優れた電子移動度を有する。このため、第1電極への電流を変調するためにチップレット内に形成されたトランジスタは、多くの場合非常に小型である。チップレット内の回路は、信号線174からの低電圧のアナログ制御信号若しくはデジタル制御信号、又は他の高周波数信号に応答することができ、この制御信号に応じて電力バス166から第1電極170、172への電流の流れを変調する。このアーキテクチャでは、チップレットは、本発明のエレクトロルミネッセントディスプレイにおける第1電極170、172への信号を、毎秒数百回更新することができ、この構成を用いるディスプレイが全てのアクティブエリアを60Hz以上の周波数で更新することを可能にする。このレートで駆動トランジスタに対する信号を更新することがこのように可能であることは、本発明の或る特定の構成において特に有利である。また、メモリユニットがチップレット内に形成され、これらのメモリユニットを用いて、様々な駆動トランジスタ値に対応する信号が蓄積される。このため、チップレットが複数の駆動トランジスタ値に対応する値を蓄積し、該チップレットが、単一の制御信号値に応じて複数回駆動トランジスタ値を更新することを可能にし、駆動トランジスタに対する信号が、制御信号が提供されるレートよりも高速なレートで更新されることを可能にすることができる。
【0041】
いくつかの構成では、これらのチップレットのそれぞれにおいて光の変化を検出し、各チップレット内に光センサーを提供するCMOSセンサーもこれらのチップレット内に形成される。これらのチップレットは、エレクトロルミネッセントディスプレイが位置する環境をイメージングするために、この後でより詳細に説明する本発明の光学層とともに用いることもできるし、光学的に符号化された制御信号値を受信する等の他の使用のために用いることもできる。
【0042】
本構成内のチップレットを用いて、電力接続又はバス178から第2電極180への電力を変調することもできる。例えば、チップレット176は、これらの素子間の電力を変調することができる。一方、これらのカソードセグメント上で要求される電力は、多くの場合に従来のTFTが提供できる電力よりも高いことに留意すべきである。したがって、チップレットはこの電力を変調するための別の装置を含むことができる。例えば、チップレット176は、中継器としての役割を果たす1つ又は複数の微小電気機械スイッチ(MEMs)とともにCMOSロジックを含むことができる。代替的に、MEMs構成要素は、チップレット176によって指揮される他の構造内に設けることもできる。この構成では、単一の第2電極によって画定されたアクティブエリアの各行が、ディスプレイ内の他のアクティブエリアをアクティベートすることもディアクティベートすることもなくアクティベート又はディアクティベートされることに留意することが重要である。前の構成では、図5に示すような高解像度ディスプレイを設ける方法は、第2電極の全てを同時にディアクティベートした(112)。このディアクティベートによって、パネルからの発光の全体時間が低減する可能性があり、第2電極の全てをディアクティベートすることが必要とされない場合よりも、ちらついてみえる画像をもたらす可能性がより高い。第2電極のそれぞれに対し、図7のディスプレイパネル160上のチップレット176によって提供される別個の電圧制御を適用することによって、第2電極の全てを同時にディアクティベートすること、したがってアクティブエリアの全てをディアクティベートすることはもはや必要でない。この構成では、任意の一時点において単一行のアクティブエリアのみがディアクティベート又はアクティベートされる必要がある。この特徴は、ユーザーがちらつき及び他の潜在的な時間的画像アーティファクトを見る尤度を低減することができる。中間の解決法も可能であり、この解決法では、チップレット176又は他のデバイスは、図4のディスプレイパネル70について説明されたように第2電極の各グループ内のそれぞれの第2電極を同時にアクティベート又はディアクティベートすることなく、複数の第2電極を同時に制御する。図7に示すように、チップレット176は通常、ディスプレイ基板164上に搭載される。ビア182は、ディスプレイ基板164上のチップレット176を、エレクトロルミネッセント層184上に堆積された第2電極180に接続することができる。ここで、エレクトロルミネッセント層が第1電極170、172と第2電極180との間に堆積される。また、ディスプレイパネル160は通常、第2電極180への導線168のショートを阻止するための絶縁層186も含む。
【0043】
本発明の特定の構成は、図8に示すような光学レンズのアレイを備える光学層を備える。この図に示すように、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイはディスプレイパネル2を備える。このディスプレイパネルは、ディスプレイ基板4を含む。少なくとも第1電極6がディスプレイ基板4のエリアの上方に配置される。2つ以上の個別にアドレス指定可能な第2電極8、10がディスプレイ基板4の上方に更に配置される。第1電極6と第2電極8、10との間に、それらの電極と電気的に接触してエレクトロルミネッセント発光層12が形成され、第1電極に重なる2つ以上のアクティブエリア14、16が作製される。発光層12は、電流に応じて各アクティブエリア14、16内で発光する。ディスプレイパネル2は、任意選択で、アクティブマトリック層18、及びピクセル規定層20等の追加の層を含むことができる。これらの特徴のそれぞれは、図1に表されるものと同じである。しかしながら、図8のディスプレイパネル2は、付加的に光学層190を備え、光学層190は光学レンズのアレイを備える。EL発光層12の屈折率及び光学層190の屈折率に近い屈折率を提供する光学マッチング層192も備えることができる。しかしながら、この光学マッチング層12は必須ではなく、或る特定の構成では、第2電極8、10と光学層190との間に不活性ガス又は不活性空気が存在する。光学層190は通常、EL発光層12のアクティブエリア14、16内で発せられた光線194、196を曲げ、EL発光層12のアクティブエリア14、16のそれぞれの中から発せられた光がディスプレイ基板4に平行な平面に対して異なる角度に方向付けられるようにする。図8に示すように、線198は、ディスプレイ基板4の表面に平行であり、EL発光層12を出るときに互いに平行である光線対194、196と交差する仮想平面を表す。しかしながら、光線194、16が光学層190を出るとき、線198に対する2つの光線194、196の角度200、202は互いに異なり、この例では異なる符号を有する。
【0044】
光学層190は、光をディスプレイ基板4に対し異なる方向に方向付ける構造又はレンズの2次元構成を備えることができる。しかしながら、或る特定の構成、特に第2電極が1次元ストライプに分割される構成では、光学層190がシリンドリカル光学レンズのアレイを備え、各シリンドリカルレンズが長軸を有し、シリンドリカルレンズは、該シリンドリカルレンズの長軸に対し垂直な軸においてエレクトロルミネッセントディスプレイ内の発光素子によって生成された光を拡大することが望ましい。こうした構成の1つの例が図9に示されている。図9は、分割線215に沿って切り取られた(図8に示すような)光学層190と、分割線76によって切り取られた第2電極78a、80a、82a、84aとを有するディスプレイパネル210の上面図を示している。示すように、光学層190は、少なくとも2つのシリンドリカルレンズ212a、212bを備える。これらのシリンドリカルレンズ212a、212bは、矢印214によって示される方向を有する第1の次元に平行に向けられた長軸を有する。これらのシリンドリカルレンズ212a、212bは、アレイに配列され、このため、EL発光層のアクティブエリアによって生成された光を拡大する。図9に示すように、ディスプレイパネル210は、矢印214によって示される第1の次元に平行に向けられた長軸を有する1次元ストライプとして配列された第2電極80a、80b、82a、82b、84a、84b、86a、86bの一次元アレイを備える。ここで、第2電極80a、80b、82a、82b、84a、84b、86a、86bの一次元ストライプの長軸は、シリンドリカルレンズ212a、212bの長軸に平行に位置合わせされる。この構成において、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイは光学レンズのアレイを備え、ここでこれらの光学レンズはシリンドリカルレンズである。各シリンドリカルレンズは第1の方向に延びる長軸を有し、各シリンドリカルレンズは1つ又は複数の第2電極上に配置され、1つ又は複数の第2電極に対応するアクティブエリアにおいて生成された光を拡大する。また、各シリンドリカルレンズの下に配置された1つ又は複数の第2電極のそれぞれは異なる電源回路に接続される。
【0045】
図9のシリンドリカルレンズ212a、212bは、図9の矢印214によって示される長軸に沿って一貫した図8の光学層190の断面形状、例えば三角形状を有するという点で、シリンドリカルである。したがって、定義によれば、「シリンドリカルレンズ」は、第2の軸と比較して第1の軸において長い特徴を有し、第2の軸を通る断面が第1の軸に沿って一貫している光学材料の一部分を指す。この定義によれば、シリンドリカルレンズは、円の一部分の形状、楕円の一部分の形状、三角形状、又は他の形状を有する第2の軸を通る断面を有することができる。
【0046】
図9に示すように、望ましい構成は、各シリンドリカルレンズ212aの下に複数の第2電極80a、82a、84a、86aを備え、ディスプレイパネル210はシリンドリカルレンズの1次元アレイを備え、この1次元アレイは複数のレンズ212a、212bを含む。このレンズのアレイは、いくつかの構成ではディスプレイパネル210の他の素子に個別に取り付けられるか、又は光学基板内に形成され、この光学基板はディスプレイパネル210のディスプレイ基板4(図8に示す)に取り付けられる。
【0047】
この構成では、シリンドリカルレンズは、第2電極、第1電極、及びEL発光層の重なりによって画定された各アクティブエリア内のEL発光層によって生成された光が所与の視角内に投影されるような形状にされる。図10は本発明のディスプレイパネル220の一部分を示している。示すように、ディスプレイパネル220は、ディスプレイ基板222と、第1電極224と、EL発光層226と、複数の第2電極228a、228b、228c、228dとを備え、これらが4つのアクティブエリア236a、236b、236c、236dを画定する。次に、光学層230は、第1電極224及び複数のアクティブエリア236a、236b、236c、及び236dの上方に光学レンズを提供するように位置合わせされる。示すように、光学層230の機能は、EL発光層226のアクティブエリア236a、236b、236c、及び236d内で生成された光を4つの異なる視角に方向付けることである。このレンズ機能を達成するために、空間238は、光学層230よりも低い屈折率を有する材料で満たされる。例えば、光学レンズから離れた平面232において、アクティブエリア236a、236b、236c、及び236dのそれぞれからの光は、第1の視角234a、第2の視角234b、第3の視角234c、及び第4の視角234dを含む4つの異なる視角のうちの1つに方向付けられる。視角234a、234b、234c、234dは互いに異なることに注目されたい。これらの視角234a、234b、234c、234dは、互いに異なる中心方向を有することによって異ならせることができるか、又はそれらの限界視角が互いに異なる。本発明のほとんどの構成では、異なる視角234a、234b、234c、234dは異なる中心方向を有し、光を、総限界視角の80%を超えて重ならない錐体内に投影する。すなわち、輝度の大きさが任意の視角内のピーク輝度の5%未満である光の分布内の点は、近傍の視角の同じ点に、それらの2つの視角のいずれかの限界視角の80%よりも大きく重ならない。電力低減のために用いられる構成では、この重なりは50%よりも大きくないことが望ましい。立体ディスプレイとして用いられる本発明の構成において、重なりが10%よりも大きくないことが望ましい。したがって、アクティブエリア236a内で発せられた光は、角度234a内を向くように方向付けられ、アクティブエリア236b内で発せられた光は、角度234bに方向付けられ、アクティブエリア236c内で発せられた光は、角度234cに方向付けられ、アクティブエリア236d内で発せられた光は、角度234dに方向付けられる。
【0048】
ディスプレイパネル220をEL内に適用すると、コントローラー58(図3に示す)は、電源回路54、56に制御信号を提供し、第2電極228a、228b、228c、228dのサブセットへの電圧を制御して第2電極の第1のサブセットをアクティベートし、第1電極224に関連付けられた発光層226のアクティブエリア236a、236b、236c、及び236dに狭い視角を有する光を生成させることができる。すなわち、コントローラー58は、アクティブエリアのサブセット、例えば236cをアクティベートする制御信号を他の電源回路54、56に提供するとき、アクティブエリアのサブセット、例えば236a、236b、及び236dをディアクティベートする制御信号を電源回路54、56に提供することができる。このため、ディスプレイパネルは視角234c内にのみ発光する。この構成を用いて、狭い視角を有する光を提供し、それによってディスプレイパネル220の電力消費を低減する。すなわち、アクティブエリアのうちの1つのみが第1電極224に提供された駆動信号に応じて発光するので、ディスプレイの電力消費が低減する。この例では、ELディスプレイによって消費される電力は、アクティブエリアの総数に対するアクティベートされたアクティブエリアの数に等しい係数だけ、例えば4分の1に低減する。一方、ユーザーが視角234cの範囲内からティスプレイを見ている限り、ユーザーは、アクティベートされたアクティブエリアの数にかかわらず、ディスプレイの輝度又は画像品質において感知可能な変化を見てとることはない。したがって、この特徴は、ELディスプレイのユーザーの知覚において一切変化を生じることなく、大幅に電力が低減されたディスプレイを提供することができる。
【0049】
したがって、ディスプレイ基板222(図10)と、ディスプレイ基板222の上方に配置された第1電極224の2次元アレイとを備える、高い効率の動作モードを有するアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイが提供される。2つ以上の第2電極228a、228b、228c、228dもディスプレイ基板222の上方に配置される。より詳細には、2つ以上の第2電極228a、228b、228c、228dは、第1電極224の2次元アレイ内の第1電極のそれぞれの上方に配置される。アクティブエリア236a、236b、236c、及び236d内で、第1電極224と第2電極228a、228b、228c、228dとの間に、それらの電極と電気的に接触してエレクトロルミネッセント発光層226が形成される。発光層226は、第1電極の2次元アレイ内の第1電極236aのうちの1つと、第1電極224の上方に配置された2つ以上の第2電極228a、228b、228c、228dのうちの1つとの間の電流に応じて、各アクティブエリア236a、236b、236c、及び236dから発光する。例えば、電流が第2電極228aと第1電極224との間を流れると、アクティブエリア236a内の発光層226から光が発せられる。アクティブマトリックスディスプレイは、(図2又は図6に示すような)駆動回路30、130の2次元アレイを更に備え、各駆動回路は、第1電極の2次元アレイ内の第1電極224のうちの1つに電気的に接続された駆動トランジスタ32、138を備え、駆動回路30、130の2次元アレイは、第1電極の2次元アレイと1対1の対応関係にあり、駆動回路の2次元アレイ内の駆動回路30、130は、第1電極の2次元アレイ内の第1電極224のそれぞれに電流を提供する。それぞれの第2電極228a、228b、228c、228dに電圧を選択的に供給するために、それぞれの第2電極228a、228b、228c、228dに接続された2つ以上の電源回路54、56(図3に示す)も設けられる。エレクトロルミネッセント発光層226の各アクティブエリア236a、236b、236c、236d内で発せられた光を方向付けるために図10の光学層230が設けられる。各アクティブエリア236a、236b、236c、236dからの光は異なる視角に方向付けられる。最後に、入力画像信号60及び視野信号64を受信し、入力画像信号60に応じて駆動回路30、130(図2及び図6に示す)の2次元アレイに駆動信号62を提供し、電源回路54、56に順次又は同時に、視野信号64に応じてそれぞれの第2電極228a、228b、228c、228dに電圧を提供させるコントローラー58(図3に示す)が設けられる。
【0050】
前述したように、この構成では、図9の第2電極78a、80a、82a、84aによって示すように、第2電極がストライプ228a、228b、228c、228dのアレイから形成され、ストライプの長軸が矢印214によって示すような第1の次元に沿って向けられ、光学層がシリンドリカルレンズ212a、212bのアレイを備え、シリンドリカルレンズが長軸を有し、このシリンドリカルレンズの長軸も矢印214によって示されるような第1の次元に沿って向けられることが望ましい。
【0051】
この特定の構成では、第1の次元がディスプレイパネルの水平軸に沿って向けられ、ディスプレイパネルの垂直視角のみが調整されることを可能にすることが望ましい。しかしながら、第1の次元がディスプレイパネルの垂直軸に沿って向けられ、ディスプレイの水平視角が調整されることを可能にする場合も有用である。また、前の例では、任意の時点においてアクティブエリアのうちの1つのみがアクティベートされていた。これは要件ではなく、ディスプレイが高効率の動作モードで動作しているとき、アクティブエリアの任意のサブセットがアクティベートされる。アクティブエリアのうちの1つのみがアクティベートされているとき、最も大きな電力節減、したがって最も高いディスプレイ電力効率が達成される。本発明のELディスプレイのいくつかの構成は、アクティブエリアが毎秒複数回アクティベート及びディアクティベートされることを必要とすることも留意すべきである。しかしながら、これは、この特定の構成における要件ではない。実際、通常の動作条件下では、垂直視角は、ユーザーによって数分に1回手動で切り替えられる可能性が高い。したがって、ディスプレイサイズにかかわらず、この配置が、任意の従来のバックプレーン構成とともに用いられることは確かに可能である。すなわち、高速切替え時間が必要とされないので、駆動回路30、130は、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、又は単結晶シリコンを含む任意の半導体を用いて形成される。頭部追跡器、視線追跡器、又はユーザーの眼のおおまかな位置を検出することが可能な他のこうしたデバイスを含む他の入力デバイスを用いて、ユーザーがディスプレイパネルの前を動くとディスプレイパネルの視野が自動的に調整されるように視野信号64を生成することも可能である。一方、この例であっても、視野は毎秒数回よりも高いレートで更新される必要がない。
【0052】
アクティブマトリックスELディスプレイは、より小さな視角を有する画像を表示するとき、より高い電力効率を有するので、ディスプレイは、より狭い視角で動作しているときに、より低い電流を用いて駆動される。より低いピーク電力を提供するのに同じ駆動回路を用いた結果、グレイスケール解像度が損失する可能性がある。この問題は、複数の構成によって克服される。1つの構成では、電源回路54、56は、アクティベーション信号を提供する2つの電圧源間で切り替えることが可能となる。ここで、電圧源の一方は、第1電極によって提供されるピーク電圧の電圧により類似した電圧を提供する一方、他方は第1電極によって提供されるピーク電圧により類似していない電圧を提供する。広い視角を有する画像を提示するとき、第1電極によって提供されるピーク電圧により類似していない電圧を有する電圧源が適用され、狭い視角を有する画像を提示するとき、第1電極によって提供されるピーク電圧の電圧により類似した電圧を提供する電圧源が適用される。図2のデータ線42に提供されるデータ電圧の範囲は、ディスプレイがビット深度の改善をもたらすために広角から狭角に切り替えられるときに調整することもできる。
【0053】
前の構成では、狭い視角を有するELディスプレイを提供するように、アクティブエリアの第1のサブセットがアクティベートされ、残りのアクティブエリアがディアクティベートされた。別の構成では、アクティブエリアの第1のサブセットが、1つの時間間隔内で狭い視角を有する画像を提示するようにアクティベートされ、アクティブエリアの第2のサブセットが、第2の時間間隔内でより広い視角を有する画像を提示するようにアクティベートされる。すなわち、コントローラーは、電源回路に、より広い視角を有する光を生成するように第2電極の第2のサブセットを付加的にアクティベートさせる。これらの時間間隔中、入力画像信号は、少なくとも第1の画像データ、及びいくつかの事例では第2の画像データを含む複数の画像を形成するための信号を含むことができる。データは駆動信号に変換され、該駆動信号が、第1の画像データ又は第2の画像データに対応する画像を表示するためにディスプレイパネル内の2次元アレイ駆動回路に提供される。この構成では、コントローラー58(図3に示す)は、電源回路54、56に制御信号を提供し、第2電極228a、228b、228c、228d(図10に示す)への電圧を制御して、第1電極224に関連付けられた発光層226のアクティブエリア236a、236b、236c、及び236dの第1のサブセットを、第1の時間間隔内で狭い視角を有する光を生成するようにアクティベートすることができる。すなわち、第1の時間間隔内で、コントローラー58は、アクティブエリアのサブセット、例えば236a、236b、及び236dをディアクティベートする制御信号を電源回路54、56に提供する一方で、アクティブエリアのサブセット、例えば236cをアクティベートする制御信号を他の供給回路54、56に提供することができる。この第1の時間間隔中、コントローラー58は第1の画像データを駆動回路に提供する一方で、電源回路54、56に、光を生成するように第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせる。このため、ディスプレイパネルは視角234c内にのみ第1の画像データに対応する光を発する。一方、後続の時間間隔において、コントローラー58(図3に示す)は、第2電極228a、228b、228c、228d(図10に示す)への電圧を制御する制御信号を電源回路54、56(図3に示す)に提供し、第1電極224に関連付けられた発光層226のアクティブエリア236a、236b、236c、及び236dの第2のサブセットを、より広い視角を有する光を生成するようにアクティベートすることができる。すなわち、第2の時間間隔において、コントローラー58は、アクティブエリアの第2のサブセット、例えば236a、236b、及び236dをアクティベートする制御信号を電源回路54、56に提供することができる。この第2の時間間隔中、コントローラー58は第2の画像データを駆動回路54、56に順次提供する一方で、電源回路に、第2の光を生成するように第2電極の第2のサブセットをアクティベートさせることができる。このため、ディスプレイパネルは第2の時間間隔中、第2の画像データに対応する広い視角の光を発する。第1の時間間隔及び第2の時間間隔が十分に短く(例えば1/50秒未満)、2つのビューが十分高速に連続しているとき(例えばそれぞれ50Hz以上の周波数を有する)とき、視角234c内から画像を見ている第1のユーザーは、第1の時間間隔及び第2の時間間隔中に提示された画像の組合せである画像を知覚することになる。駆動回路30が2つの別個の画像信号に応じて十分高速に更新され、第1のユーザー及び第2のユーザーへのこれらの2つの異なる画像信号の提示を可能にする場合、第1のユーザーは、重大なアーティファクトなしで2つの画像の組合せを知覚することになる。一方、異なる角度、例えば234bからディスプレイを見ている第2のユーザーは、画像のうちの一方のみを見ることになり、したがって第1のユーザーと異なる情報を受け取ることになる。この構成では、コントローラーは、2つの第2電極をアクティベートする制御信号を電源回路に付加的に提供し、第1電極に関連付けられた発光層のアクティブエリアの第2のサブセットを、より広い視角を有する光を生成するように付加的にアクティベートする。この実施形態の可能な利点は、ユーザーのうちの何人かにしか見えなかった字幕等の情報の提示である。しかしながら、第1の画像データ及び第2の画像データが異なることも、第1の光が異なる方向又は視角を有する以外に第2の光と異なることも必要でないことに留意すべきである。
【0054】
別の構成では、アクティブマトリックスELディスプレイは、第1の時間間隔中に第1の視角234bを有する第1の画像データを提供するように第1のアクティブエリア234bのみをアクティベートし、第2の時間間隔中に第2の視角234cを有する第2の画像データを提供するように第2のアクティブエリア236cのみをアクティベートする同じプロトコルを用いて、2つの別個の画像を2つの別個の視角、例えば234b及び234cに提供することができる。前の構成と同様に、第1電極224に提供される信号は、第1の時間間隔及び第2の時間間隔のそれぞれの中で入力画像信号60(図3に示す)の変化に基づいて更新され、2つの別個の視角234b、234cからディスプレイを見ている2人の別個のユーザーに2つの別個の画像を提供する。このため、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイはコントローラー58(図3に示す)を備え、該コントローラー58は、第1電極224と電気的に接触している発光層226の選択されたアクティブエリア236a、236b、236c、及び236dに、第1の方向に向けられかつ第1の狭い視覚234bを有する光を発せさせる制御信号の第1のセットを複数の第1の回路54及び第2の回路56に提供し、第1電極224と電気的に接触している発光層226の選択されたアクティブエリア236a、236b、236c、及び236dに、異なる第2の方向に向けられるか又は異なる第2の狭い視覚234cを有する光を発せさせる制御信号の第2のセットを複数の第1の回路54及び第2の回路56に提供する。この応用形態では、コントローラーが、駆動回路に第1の画像データを順次提供する一方で、電源回路に、第1の時間間隔中に第1の光を生成するように第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせ、駆動回路に第2の画像データを順次提供する一方で、電源回路に、第2の時間間隔中に第2の光を生成するように第2電極の第2のサブセットをアクティベートさせることが有用である。
【0055】
この構成は、立体画像又は3D画像を提供するのに有用であるのと同様に、複数の視聴者位置等の、単一シーンのマルチビューを提供するのにも有用である。この配置では、アクティブマトリックスELディスプレイは、少なくともシーンの第1のビューに対応する第1の画像データ及び第2のビューに対応する第2の画像データを含む、個々のシーンのマルチビューを含む入力画像信号60を受信するためのコントローラー58(図3に示す)を更に備える。次に、アクティブマトリックスELディスプレイは、異なる視角を有するこれらのビューを提示するように制御される。ここで、異なる視角は異なる方向又は異なる限界視角を含む。この実施形態では、コントローラーは、第1の時間間隔中に入力画像信号60に応じて駆動回路30、130(図2、6に示す)に第1の駆動信号を提供する一方で、それと同時に、電源回路54、56(図3に示す)に、それぞれの第2電極228a、228b、228c、228dに電圧を提供させ、第1電極224と電気的に接触している発光層226のアクティブエリア236a、236b、236c、236dのうちの1つ又は複数に、第1の方向に向けられかつ第1の狭い視角234a、234b、234c、234dを有する光を発せさせる。その後、コントローラー58(図3に示す)は、第2の時間間隔中に入力画像信号60(図3に示す)に応じて駆動回路30(図2に示す)に第2の駆動信号62(図3に示す)を提供する一方で、それと同時に、電源回路54、56(図3に示す)に、それぞれの第2電極228a、228b、228c、228dに電圧を提供させ、第1電極224と電気的に接触している発光層226のアクティブエリア236a、236b、236c、236dのうちの1つ又は複数に、第2の方向に向けられているか又は第2の狭い視角234a、234b、234c、234dを有する光を発せさせる。
【0056】
立体画像又はマルチビュー画像を提供するためのディスプレイでは、シリンドリカルレンズはディスプレイパネル上で垂直に向けられるべきである。加えて、第2電極228a、228b、228c、228dの長軸もディスプレイパネル上で垂直に向けられることが望ましい。この実施形態で説明されるように、コントローラーは、駆動回路に第1の画像データを順次提供する一方で、電源回路に、ユーザーが見る第1の光を生成するように第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせ、駆動回路に第2の画像データを提供する一方で、電源回路に、第1の光と異なる方向の、ユーザーが見る第2の光を生成するように第2電極の第2のサブセットをアクティベートさせる。これにより、ユーザーには立体画像が見える。しかしながら、立体画像を見るために、2つのビューしか必要とされない。マルチビュー立体画像を提供する実施形態では、2人以上のユーザーが立体画像を見るように、シーンのより多数のビューを提供することができる。
【0057】
より具体的な構成では、複数の視角に複数の画像を提供するためのアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイが提供される。このアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ50(図3)は、ディスプレイパネル220(図10)を備える。ディスプレイパネル220はディスプレイ基板222を備える。第1電極224の2次元アレイがディスプレイ基板222上に配置される。2つ以上の第2電極228a、228b、228c、228dもディスプレイ基板222上に配置される。この構成では、2つ以上の第2電極228a、228b、228c、228dが第1電極の2次元アレイ内の第1電極224のそれぞれの上方に配置される。アクティブエリア236a、236b、236c、及び236d内で、第1電極のアレイ内の第1電極224と、第2電極228a、228b、228c、228dとの間に、それらの第1電極及び第2電極の双方と電気的に接触してエレクトロルミネッセント発光層226が形成され、発光層102は、第1電極の2次元アレイ内の第1電極224のうちの1つと、第1電極224cの上方に配置された2つ以上の第2電極228a、228b、228c、228dのうちの1つとの間の電流に応じて各アクティブエリア236a、236b、236c、及び236dから発光する。駆動回路(例えば図2の駆動回路30)の2次元アレイであって、各駆動回路は第1電極の2次元アレイ内の第1電極224のうちの1つの電気的に接続された駆動トランジスタ32を備え、該駆動回路の2次元アレイは、第1電極の2次元アレイと1対1の対応関係にあり、該駆動回路の2次元アレイ内の駆動回路30は第1電極の2次元回路内の第1電極224のそれぞれに電流を提供する、駆動回路の2次元アレイ。第1電極の2次元アレイ内の第1電極224のそれぞれと、第2電極228a、228b、228c、228dとの間に、それらの電極と電気的に接触して各アクティブエリア236a、236b、236c、236d内にエレクトロルミネッセント発光層226が形成され、発光層226は、駆動トランジスタ32(図2)からの電流に応じて各アクティブエリア236a、236b、236c、236dから発光する。それぞれの第2電極228a、228b、228c、228dに電圧を選択的に供給するために、それぞれの第2電極228a、228b、228c、228dに2つ以上の電源回路54、56(図3に示す)が接続されている。通常、第1電極のうちの任意のものに重なる第2電極228a、228b、228c、228dのそれぞれに異なる電源回路54、56(図3に示す)が接続される。ディスプレイパネル230は、エレクトロルミネッセント発光層226の各アクティブエリア236a、236b、236c、236d内で発せられる光を、異なる方向及び視角範囲234a、234b、234c、234dを有するように方向付けるための光学層230を付加的に備える。アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ50(図3)はコントローラー58(図3)を更に備え、該コントローラーは、複数の画像を含む入力画像信号60を受信し、入力画像信号60に応じて駆動回路30(図2)の2次元アレイに第1の駆動信号62を提供し、電源回路54、56に、第2電極228a、228b、228c、228dのうちの第1のもの(例えば228a)に電圧を供給させて、電極のアレイ内の第1電極224のうちの1つに関連付けられたアクティブエリア228a、228b、228c、228dのうちの1つを含むアクティブエリアの第1のグループ、及び電極のアレイ内の第1電極224のうちの第2のものに関連付けられたアクティブエリア内の発光層226に、第1の方向及び内在角(subtended angle)234a、234b、234c、234dを有する光を発せさせ、また、入力画像信号60(図3)に応じて駆動回路30(図2)の2次元アレイに第2の駆動信号62(図3)を提供し、電源回路54、56(図3)に、第2電極のうちの第2のもの(例えば236b)に電圧を供給させて、電極のアレイ内の第1電極224のうちの1つに関連付けられたアクティブエリア228a、228b、228c、228dの第2の異なるグループ、及び第1電極224のうちの第2のものに関連付けられたアクティブエリア内の発光層226に、第2の方向又は内在角234a、234b、234c、234dを有する光を発せさせる。コントローラーは、入力画像信号内のビューのそれぞれに応じて駆動回路30(図2)の2次元アレイに異なる駆動信号62(図3)を提供する一方で、ビューのそれぞれが異なる方向で提示されるように、電源回路54、56(図3)に、第2電極の後続のセットに電圧を提供させる。
【0058】
高品質の画像を提示するために、コントローラーは、駆動信号30のそれぞれへの駆動信号が少なくとも50Hzの周波数で提供されるように、2次元アレイ内の駆動回路30のそれぞれに異なる駆動信号を提供する。好ましくは、コントローラーは、少なくとも60Hzの周波数でこれらの異なる駆動信号を提供し、より好ましくは、少なくとも80Hzの周波数を提供する。好ましい実施形態では、第1の方向及び第2の方向は異なり、アクティブマトリックスELディスプレイは立体ディスプレイである。別の構成では、第1の内在角は広い視角であり、第2の内在角は比較的狭い視角であり、ディスプレイが、共通画像を広い視角に提供し、選択画像を狭い視角に提供することを可能にする。
【0059】
ディスプレイがマルチビュー3D画像を表示する実施形態では、順次表示される画像間のクロストークを低減することが望ましい。メモリを有するチップレット、非常に高速の動作を有するチップレット、アナログメモリを有するピクセル回路(例えば図6)の適用が、電極の第1のセットにおける、信号の或るセットから別のセットへの変更時間として有利であり、非常に高速となる(図5のステップ118)。
【0060】
本発明の実施形態では、図1の複数の第2電極8、10は通常、本発明のアクティブマトリックスELディスプレイ内のEL発光層の上に形成される。アクティブマトリックスディスプレイの上のこれらの複数の電極8、10の形成はアクティブマトリックスELディスプレイの技術分野では知られていない。一方、これらのセグメントは複数の方法を用いて形成される。1つの構成では、第2電極は全て材料の単一のシートとして堆積され、次にレーザー切断又は物理的なスクライビングを用いてセグメント化される。別の構成では、第1電極の上に、大きな高さ幅比(すなわち1より大きい比)を有するピラーが形成され、該ピラーが連続フィルムを分断して別個の第2電極8、10を形成するように、第2電極の材料がこれらのピラーの上方に堆積される。別の構成では、連続フィルムは堆積され、Organic Electronics 7 (2006) pgs. 21-28において発行された「Photolithoghraphic patterning of Organic Electronic Materials」において、DeFranco他によって記載されている技法等の、フォトリソグラフィーによるパターニング技法を用いてパターニングされる。別の構成では、別個の第2電極8、10は、ノズル(nozzle)技術、インクジェット技術、及び他の印刷技術を用いて個々に印刷される。
【0061】
本発明の実施形態では、第1電極及び第2電極は、アノード又はカソードのいずれかである。第1電極又は第2電極のいずれかがディスプレイ基板の最も近くに形成される。しかしながら、駆動回路を第1電極に容易に取り付けることを可能にするために、第1電極は通常、ディスプレイ基板上に形成される。光は、ディスプレイ基板を通して、又はディスプレイ基板から離れて発せられる。しかしながら、光学層を用いる構成では、光がディスプレイ基板から離れて発せられるか、ディスプレイ基板自体が光学層を形成するか、又はディスプレイ基板が上面図(例えば図4)に見られるように第1電極の幅及び高さ未満の厚みを有することが好ましい。なぜなら、これらの条件によって、光学層が光を所望の視角内に合焦させることが可能になるためである。
【0062】
光学層190は、別個の第2電極からの光を別個の視角に方向付けることが可能な任意の材料から形成される。1つの構成では、光学層はガラス又はポリマー材料の単一基板において形成された固定レンチキュラーレンズである。こうした実施形態は非常に低コストであるが、光学層は常に動作しているため、この層は、非常に広い視角を有する非常に高い解像度の2次元画像(すなわち、第1電極数に第1電極あたりの第2電極数を乗算した数値に等しい解像度を有する画像)のディスプレイを不要にする。別の実施形態では、光学層190は、「Efficiency analysis of multi-view spatially multiplexed autostereoscopic 2-D/3D Displays」(J of SID, 15/11 2007 pgs. 873-881)と題するthe Society for Information Displayの学術論文においてWoodgate及びHarroldによって記載されているような、偏光アクティベートマイクロレンズ又はアクティブレンズを含む可変の光強度を有する光学素子を備えることができる。同様のアクティブレンズは、「High resolution autostereoscopic 3D Display with scanning multi-electrode driving liquid crystal (MeD-LC) Lens」(SID 09, pgs. 336-339)と題する論文においてHuang他にも記載されている。これらのアクティブレンズは、光学層がマルチビュー又は電力節減を提供することが望まれているときに、固定の電力及び形状でアクティベートされ、マルチビューも電力節減も必要とされていないとき、広い視角を用いて非常に高解像度の2次元ディスプレイを提供するようにディアクティベートされる。
【0063】
本発明は、コーティング可能なエレクトロルミネッセント材料を用いる任意のアクティブマトリックスELディスプレイにおいて実施することができる。好ましい実施形態では、本発明は、限定ではないが、Tang他に対する米国特許第4,769,292号、及びVanSlyke他に対する米国特許第5,061,569号において開示されるような小分子OLED又は低分子OLEDで構成されるエレクトロルミネッセント層を含む。本発明は、Kahenによる米国特許出願公開第2007/0057263号において教示されているような多結晶半導体マトリックスにおいて形成された量子ドットを含むコーティング可能な無機層を用い、かつ有機又は無機の半導体マトリックス及び電荷制御層を用いるデバイスにおいて実施することもできる。当業者であれば、本発明のEL発光層が通常、電荷の注入、輸送、及び再結合のための複数の層を含むことを理解されよう。また、EL発光層は、各デバイスと連携して動作する2つ以上のデバイスを備えることができ、各デバイス内で、正孔及び電子が結合し、その結果発光するドーピングされた発光層を有する。
【0064】
本発明は、発光層が、第1電極及び複数の第2電極と電気的に接触して形成されることを必要とする。また、発光は、第1電極と第2電極との間に電位がかけられ、発光層を通る電流の流れが促進されたときのみ生じる。したがって、カソード又はアノードのいずれかに対する電圧を変調することによって、高速で更新されているときに、非常に高い解像度で発光を局所制御することが可能になる。
【0065】
本発明は、その特定の好ましい実施形態を特に参照しながら詳細に説明されてきたが、本発明の精神及び範囲内で変形及び変更を実施できることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0066】
2 ディスプレイパネル
4 ディスプレイ基板
6 第1電極
8 第2電極
10 第2電極
12 発光層
14 アクティブエリア
16 アクティブエリア
18 アクティブマトリックス層
20 ピクセル規定層
30 駆動回路
32 駆動トランジスタ
34 電力線
36 ノード
38 選択線
40 データトランジスタ
42 データ線
44 コンデンサー
50 アクティブマトリックスELディスプレイ
52 ディスプレイパネル
54 電源回路
56 電源回路
58 コントローラー
60 入力画像信号
62 駆動信号
64 視野信号
70 ディスプレイパネル
72 ディスプレイ基板
74a 第1電極
74b 第1電極
74c 第1電極
76 切欠き
78a 第2電極
78b 第2電極
80a 第2電極
80b 第2電極
82a 第2電極
82b 第2電極
84a 第2電極
84b 第2電極
86 電力バス
88 電力バス
90 電力バス
92 電力バス
94 ビア
96 電力リード線
98 第2電極のグループ
100 第2電極のグループ
102 発光層
104a アクティブエリア
104b アクティブエリア
104c アクティブエリア
104d アクティブエリア
110 入力画像信号を受信するステップ
112 第2電極をディアクティベートするステップ
114 ディアクティベートのために選択するステップ
116 入力画像信号を選択するステップ
118 駆動信号を更新するステップ
120 アクティブエリアをアクティベートするステップ
122 第2電極をディアクティベートするステップ
124 第2電極を選択するステップ
130 アクティブマトリックス駆動回路
132a 電流制御回路
132b 電流制御回路
134 電力線
136 ノード
138 駆動トランジスタ
140 駆動線
140a 書込みトランジスタ
140b 書込みトランジスタ
142a 蓄積コンデンサー
142b 蓄積コンデンサー
144a 読出しトランジスタ
144b 読出しトランジスタ
146a 書込み線
146b 書込み線
148 データ線
152a 読出し線
152b 読出し線
160 ディスプレイパネル
162 チップレット
164 ディスプレイ基板
166 電力バス
168 導線
170 第1電極
172 第1電極
174 信号線
176 チップレット
178 電力バス
180 第2電極
182 ビア
184 発光層
186 絶縁層
190 光学層
192 光学マッチング層
194 光線
196 光線
198 線
200 角度
202 角度
210 ディスプレイパネル
212a シリンドリカルレンズ
212b シリンドリカルレンズ
214 矢印
215 分割線
220 ディスプレイパネル
222 ディスプレイ基板
224 第1電極
226 EL発光層
228a 第2電極
228b 第2電極
228c 第2電極
228d 第2電極
230 光学層
232 平面
234a 第1視角
234b 第2視角
234c 第3視角
234d 第4視角
236a 第1視角を有するアクティブエリア
236b 第2視角を有するアクティブエリア
236c 第3視角を有するアクティブエリア
236d 第4視角を有するアクティブエリア
238 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイであって、
(a)ディスプレイ基板と、
(b)前記ディスプレイ基板の上方に配置された第1電極と、
(c)前記第1電極の上方に配置された2つの第2電極と、
(d)前記第1電極と前記第2電極との間に、該第1電極及び該第2電極と電気的に接触して形成されたエレクトロルミネッセント発光層であって、前記第1電極と各それぞれの第2電極が重なるところに第1のアクティブエリア及び第2のアクティブエリアが画定されるようになっており、該発光層は、前記第1電極と各それぞれの第2電極との間の電流に応じて各アクティブエリアから発光する、エレクトロルミネッセント発光層と、
(e)前記第1電極に電気的に接続された、前記エレクトロルミネッセント発光層を通る電流の流れを制御する駆動トランジスタを備える駆動回路と、
(f)それぞれの第2電極に接続された、該それぞれの第2電極にそれぞれの電圧を選択的に提供する2つの電源回路と、
(g)前記電源回路に順次又は同時に、前記それぞれの第2電極に前記電圧を提供させるコントローラーと、
を備える、アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項2】
各第2電極は第1の方向に延在し、前記アクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイは、前記ディスプレイ基板の上方に配置された第1電極の2次元アレイと、第2電極の1次元アレイとを更に備え、前記第2電極のそれぞれは複数の第1電極に重なる、請求項1に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項3】
第2電極の複数の同一のグループを更に備え、各グループは前記第1の方向に沿って配列された複数の対応する第1電極に重なり、第2電極の各グループ内の各第2電極は、第2電極の各グループ内の対応する第2電極及び異なる電源回路に電気的に接続される、請求項2に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項4】
前記コントローラーは、前記電源回路に、前記それぞれの第2電極に異なる電圧を同時に提供させる、請求項1に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項5】
前記コントローラーは、前記電源回路に、同時に前記第2電極のうちの一方に第1の電圧を提供させ、他方の第2電極を遮断させる、請求項1に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項6】
前記コントローラーは入力画像信号を更に受信し、前記駆動回路に第1の駆動信号を提供し、それと同時に前記電源回路に、前記それぞれの第2電極に前記電圧を提供させる、請求項1に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項7】
前記駆動回路は、第1のディスプレイ更新サイクル中に前記第1の駆動信号を受信して蓄積し、該信号を第2のディスプレイ更新サイクル中に前記第1電極に提供する、請求項6に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項8】
前記コントローラーは、前記入力画像信号の第1のサブセットを前記駆動回路に順次提供し、前記電源回路に、第1の時間間隔中に第1の光を生成するように第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせ、前記入力画像信号の第2のサブセットを前記駆動回路に提供し、前記電源回路に、第2の時間間隔中に第2の光を生成するように第2電極の第2のサブセットをアクティベートさせ、それによってユーザーには高解像度ディスプレイが見える、請求項6に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項9】
前記ディスプレイ基板に取り付けられた独立したチップレット基板を有するチップレットを更に備え、前記駆動回路は該チップレット内に形成される、請求項1に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項10】
光学レンズのアレイを含む光学層を更に備える、請求項2に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項11】
前記光学レンズはシリンドリカルレンズであり、それぞれが前記第1の方向に延びる長軸を有し、各シリンドリカルレンズは1つ又は複数の第2電極の上方に配置され、該1つ又は複数の第2電極に対応するアクティブエリア内に生成された前記光を拡大し、前記1つ又は複数の第2電極のそれぞれが異なる電源回路に接続される、請求項10に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項12】
前記コントローラーは、前記電源回路に、狭い視角を有する光を生成するように前記第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせる、請求項11に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項13】
前記コントローラーは、前記電源回路に、広い視角を有する光を生成するように前記第2電極の第2のサブセットを更にアクティベートさせる、請求項12に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項14】
前記コントローラーは、第1の画像データを前記駆動回路に提供する一方で、前記電源回路に、第1の光を生成するように第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせる、請求項11に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項15】
前記コントローラーは、第2の画像データを前記駆動回路に順次提供する一方で、前記電源回路に、第2の光を生成するように第2電極の第2のサブセットをアクティベートさせる、請求項14に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項16】
前記第1の画像データ及び前記第2の画像データはそれぞれ、少なくとも50Hzの周波数で提供される、請求項15に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。
【請求項17】
前記コントローラーは、前記駆動回路に第1の画像データを順次提供する一方で、前記電源回路に、ユーザーが見る第1の光を生成するように第2電極の第1のサブセットをアクティベートさせ、前記駆動回路に第2の画像データを提供する一方で、前記電源回路に、前記第1の光と異なる方向の、前記ユーザーが見る第2の光を生成するように第2電極の第2のサブセットをアクティベートさせ、それによって前記ユーザーには立体画像が見える、請求項11に記載のアクティブマトリックスエレクトロルミネッセントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−509616(P2013−509616A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536899(P2012−536899)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053711
【国際公開番号】WO2011/059663
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】13873 Park Center Road, Suite 330, Herndon, VA 20171, United States of America
【Fターム(参考)】