説明

セラミックグリーンシートと積層セラミック物品及びその製造方法

セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥したセラミックグリーンシートであって、前記結合剤は平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールを含み、平均重合度が大きいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に多く、平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に少ない。このグリーンシートは、脱バインダー、焼成し、内部電極層2と誘電体層1が交互に積層され、両端に外部電極3を焼結したセラミックコンデンサとする。これにより、誘電体層の薄層化により生じるシート強度の低下を抑制し、高強度なグリーンシートと積層セラミック物品及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、セラミックグリーンシートと積層セラミック物品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
図1に示されるような積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック物品の従来の製造方法は、下記特許文献1に記載されているような方法で行われている。まず、原料となる各種セラミック粉末を混合した後、仮焼、解砕することにより目的とする組成及び粒径を持つセラミック粉末を得る。次に、得られたセラミック粉末と有機結合剤、有機溶媒等を所定の比に混合してセラミック塗料を調製し、このセラミック塗料をドクターブレード法等の方法によって所定の厚みを持ったシート状に成形することにより焼成後に誘電体層となるセラミックグリーンシートを作製する。次に、このセラミックグリーンシート上に内部電極形成用の導電性塗料をパターン印刷し、焼成後に内部電極層となる内部電極塗膜が形成されたセラミックグリーンシートを得る。又はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの支持体上に予め内部電極形成用の導電性塗料をパターン印刷しておき、その内部電極塗膜をセラミックグリーンシートに転写し、内部電極塗膜が形成されたセラミックグリーンシートを得る。このようにして得られた内部電極塗膜が形成されたセラミックグリーンシートを、内部電極層と誘電体層が交互になるように積層、圧着し、切断することによりグリーンチップを作製する。
グリーンチップを作製する他の方法としては、PETフィルムなどの支持体上に予め内部電極形成用の導電性塗料をパターン印刷しておき、内部電極層と誘電体層が交互になるようにグリーンシートと内部電極塗膜とを交互に積層、圧着する方法なども可能である。最後に、得られたグリーンチップを脱バインダー、焼成し、また必要に応じて外部電極を形成することにより積層セラミック物品を作製する。このようにして、内部電極層2と誘電体層1が交互になるように積層され、両端に外部電極3からなるセラミックコンデンサが得られる。
近年の電子機器の小型軽量化に伴い、電子物品の小型高機能化が急速に進行している。その中で積層セラミック物品において、特に積層セラミックコンデンサにおいては、小型大容量化を達成するために、誘電体層及び内部電極層の薄層化、高積層化が必要となっており、特に誘電体層の薄層化には著しいものがある。近年では、誘電体層の厚みが3μm以下のものまで製品化されている。誘電体層を薄層化するためには、焼成前のセラミックグリーンシートの薄層化が必要である。しかし、セラミックグリーンシートの薄層化がさらに進展するとシートの強度が低下してしまい、積層時の圧力によりセラミックグリーンシートが伸びてしまう。その結果、内部電極層の積層ずれなどが生じるケースがある。下記特許文献2にはその対策法として、セラミックグリーンシートに含まれる結合剤において、平均重合度の異なる2種の結合剤を用いる方法が取られている。また下記特許文献3では結合剤中の水酸基の量が異なる2種の結合剤を用いる方法が取られている。
【特許文献1】:特開平8−316089号公報(第4図)
【特許文献2】:特開平3−170360号公報
【特許文献3】:特開平10−67567号公報
しかし、従来の方法ではシート強度をさらに強くしようとした場合は、結合剤の平均重合度をより高くしたり、高重合度の配合量を多くする必要があるが、その結果セラミック塗料の粘度が大きく上昇してしまい、セラミックグリーンシートの成形性が低下するという問題があった。
【発明の開示】
本発明者らは、結合剤の平均重合度を高くしたり、高重合度の配合量を増加させたり、又は結合剤中の水酸基の含有量を多くすると、セラミックグリーンシートのシート強度は強くなるが、セラミックグリーンシート同士の接着性が低下し、層間剥離などの問題が生じることを見出した。
本発明は、セラミック塗料の粘度を大きく上昇させることなくセラミックグリーンシートのシート強度を強くし、かつセラミックグリーンシート同士の接着性の低下を抑制し、その結果、高精度に積層することができるセラミックグリーンシートと積層セラミック物品及びその製造方法を提供する。
本発明のセラミックグリーンシートは、セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミックスラリーをシート状に成形し、乾燥したセラミックグリーンシートであって、前記結合剤は平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールを含み、平均重合度が大きいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に多く、平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に少ないことを特徴とする。
また、本発明の積層セラミック物品は、セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料を作製し、得られたセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥することによりセラミックグリーンシートを作製し、前記セラミックグリーンシートと内部電極シートを用いて積層体を作製するか又は前記セラミックグリーンシート上に内部電極が形成されたセラミックグリーンシートを用いて積層体を作製し、脱バインダーし、焼成することにより得られる積層セラミック物品において、前記セラミックグリーンシートが前記本発明のセラミックグリーンシートであることを特徴とする。
さらに、本発明の積層セラミック物品の製造方法は、セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料を作製する工程と、得られたセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥することによりセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記セラミックグリーンシートと内部電極シートを用いて積層体を作製するか、又は前記セラミックグリーンシート上に内部電極が形成されたセラミックグリーンシートを用いて積層体を作製する工程と、前記積層体を脱バインダーし、焼成する工程とを少なくとも含む積層セラミック物品の製造方法において、前記セラミックグリーンシートが前記本発明のセラミックグリーンシートであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
図1は従来と本発明の一実施例における積層セラミックコンデンサの断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミックスラリーをシート状に成形し、乾燥して得られるセラミックグリーンシートにおいて、セラミックグリーンシートに含まれる前記結合剤が少なくとも平均重合度の異なる前記2種以上のポリビニルアセタールは、それぞれ下記式(化1)(ただし、0<X<100、0<Y<100、0<Z<100、X+Y+Z=100モル%、Rは炭素数1〜6のアルキル基)で示されるランダム重合体である。

前記ポリビニルアセタール樹脂は官能基としてアセタール基、及び水酸基、アセチル基を含む。アセタール基を下記式(化2)に示す。

(ただし、RはC2n+1、n=1〜6の整数を示す。)
前記結合剤は平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールを含み、かつ平均重合度が大きいポリビニルアセタールの方が相対的に水酸基量が多く、平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方が水酸基量が相対的に少ない。これにより、高強度でも接着性が低下しないセラミックグリーンシートを提供し、また、得られたセラミックグリーンシートを用いて積層セラミック物品を作製することにより、高品質な積層セラミック物品を提供する。
前記結合剤のうち少なくとも2種の平均重合度の差が約300以上であり、かつ平均重合度の低い結合剤中の水酸基量が該低重合度の結合剤に含まれる全官能基量の約25モル%未満、平均重合度の高い結合剤中の水酸基量が該高重合度の結合剤に含まれる全官能基量の約25モル%以上であることが好ましい。
また、各々の結合剤の配合量は少なくとも低重合度の結合剤量が全結合剤量の10重量%以上であり、かつ高重合度の結合剤量が全結合剤量の10重量%以上であれば、本発明の効果はより発揮でき、特にその上限値に関しては限定されず、目的とする最適粘度が得られるような配合比を選択すればよい。高重合度の結合剤が全結合剤量の10重量%未満である場合は、シート強度の大幅な向上は見られなく、低重合度の結合剤が全結合剤量の10重量%未満である場合は、セラミックグリーンシート間の接着性が低下する傾向となる。
また、各々の結合剤の平均重合度は、低重合度と高重合度の結合剤の平均重合度の差が約300であればその効果が得られるが、低重合度の結合剤の平均重合度が約600以下、高重合度の結合剤の平均重合度が約900以上であればその効果はより大きく、特に好ましくは低重合度の結合剤の平均重合度が約500以下、高重合度の結合剤の平均重合度が約1000以上であることが望ましい。
前記平均重合度が大きいポリビニルアセタールのガラス転移温度が相対的に高く、かつ前記平均重合度が小さいポリビニルアセタールのガラス転移温度が相対的に低ければよく、それぞれのガラス転移温度については特に限定はされない。
前記平均重合度が大きいポリビニルアセタールのガラス転移温度と、前記平均重合度が小さいポリビニルアセタールのガラス転移温度との差が5℃以上であればその効果がより顕著に得られ、より好ましくは10℃以上である。
また、結合剤として用いる前記式(化1)で表されるポリビニルアセタール樹脂の官能基としては、前記(化2)で表されるアセタール基、及びアセチル基、水酸基を持つが、アセタール基とアセチル基の量、及びアセタール基のRの種類については特に限定されるものではない。一般的には、アセチル基の量は全官能基量の約20モル%以下であり、アセタール基の量は全官能基量の約50モル%以上である。また、アセタール基のRの種類については、n=1又は3などが一般的である。グリーンシートの取扱いを容易にするための柔軟性を考慮した場合、より好ましくは、低重合度の結合剤中のアセタール基のRはn=3(すなわちC)である。また、低重合度の結合剤中のアセチル基量は約3モル%以上であることが望ましい。また、高重合度の結合剤中のアセタール基のRはn=1又は3(すなわちCH又はC)であれば効果が得られるが、より好ましくはn=1である。また、高重合度結合剤中のアセチル基量は約3モル%以上であることが望ましい。
また、セラミックグリーンシートの気孔率は10から60体積%であるが、より好ましくは15から50体積%である。気孔率が10体積%未満であると、内部電極の厚みを吸収できずに、セラミックグリーンシート同士の接着性が不十分となり、層間剥離などの問題が生じる傾向となる。また60体積%を超えると、グリーンシート自体のシート強度が低下する傾向となる。
さらにこのグリーンシートを用いて積層セラミック物品を作製することにより、内部電極層の積層ずれの少ない高品質な積層セラミック物品を得ることができる。このグリーンシートは、脱バインダー、焼成し、例えば図1に示すように、内部電極層2と誘電体層1が交互に積層され、両端に外部電極3を焼結したセラミックコンデンサとする。これにより、誘電体層の薄層化により生じるシート強度の低下を抑制し、高強度なグリーンシートと積層セラミック物品及びその製造方法を提供する。
本発明は、セラミック塗料の粘度を大きく上昇させることなくセラミックグリーンシートのシート強度を強くし、かつセラミックグリーンシート同士の接着性の低下を抑制し、その結果、高精度に積層することができるセラミックグリーンシートを提供できる。また、このグリーンシートを用いて積層セラミック物品を作製することにより、高品質な積層セラミック物品、例えば積層セラミックコンデンサを得ることができるようになる。
次に、本発明の具体例を説明する。
【実施例1】
一般的な積層セラミックコンデンサ用の誘電体材料であるチタン酸バリウム系のセラミック粉末100gとトルエンとエタノールとジブチルフタレートを混合した混合溶媒70gと、結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約62℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約1500、水酸基含有量が約34モル%、ガラス転移温度が約89℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂5gとをボールミルにて攪拌、混合し、セラミック塗料を作製した。作製したセラミック塗料をドクターブレード法にてシート状に成形し、厚さ20μmのグリーンシートを得た。得られたグリーンシートを用いて、面剥離強度と引張強度の測定を行った。面剥離強度については、予め250kg/cmで2枚のセラミックグリーンシートを積層しておいたものを用いて、直径15mmの面積での面剥離強度について評価を行った。引張強度については、シート幅10mmの短冊状の試験片を用いて、チャック間距離30mm、引張速度10mm/minで引張試験を行い、伸び量が5mmのときの強度について評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【実施例2】
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約62℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約1500、水酸基含有量が約33モル%、ガラス転移温度が約73℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
【実施例3】
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約62℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂4gと平均重合度が約1500、水酸基含有量が約34モル%、ガラス転移温度が約89℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂4gと、平均重合度が約800、水酸基含有量が約22モル%、ガラス転移温度が約61℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂2gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
【実施例4】
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約62℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂4gと平均重合度が約1500、水酸基含有量が約34モル%、ガラス転移温度が約89℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂4gと、平均重合度が約800、水酸基含有量が約29モル%、ガラス転移温度が約64℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂2gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
【実施例5】
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約59℃、アセチル基含有量が約10モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約1500、水酸基含有量が約34モル%、ガラス転移温度が約84℃、アセチル基含有量が約10モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
【実施例6】
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約59℃、アセチル基含有量が約10モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約1500、水酸基含有量が約33モル%、ガラス転移温度が約69℃、アセチル基含有量が約10モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
(比較例1)
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約62℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約300、水酸基含有量が約34モル%、ガラス転移温度が約75℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
(比較例2)
結合剤として平均重合度が約1500、水酸基含有量が約22モル%、ガラス転移温度が約67℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約1500、水酸基含有量が約34モル%、ガラス転移温度が約89℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
(比較例3)
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約62℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約1500、水酸基含有量が約24モル%、ガラス転移温度が約93℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
(比較例4)
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約35モル%、ガラス転移温度が約68℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと、平均重合度が約1500、水酸基含有量が約34モル%、ガラス転移温度が約89℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=1のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
(比較例5)
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約28モル%、ガラス転移温度が約60℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと平均重合度が約1500、水酸基含有量が約22モル%、ガラス転移温度が約67℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は、実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。
(比較例6)
結合剤として平均重合度が約300、水酸基含有量が約21モル%、ガラス転移温度が約62℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gと平均重合度が約1500、水酸基含有量が約30モル%、ガラス転移温度が約66℃、アセチル基含有量が約3モル%、前記式(化2)で表されるアセタール基のRがn=3のポリビニルアセタール樹脂5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を下記表1に示す。

以上の結果から明らかなとおり、実施例1〜6は比較例1〜6に比べてシート強度と面剥離強度の両面において特性がよいことが確認できた。
実施例1と比較例1、2の結果から、低重合度、高重合度結合剤の平均重合度の差が300以上あるほうが好ましいことが分かる。
実施例1と比較例3から5の比較から、低重合度結合剤の水酸基量が約25モル%未満、高重合度結合剤の水酸基量が約25モル%以上であるのが良いことがわかる。
実施例1から4の結果から、3種類の結合剤が入っている場合でも、少なくとも2種類の結合剤の平均重合度の差が約300以上であり、かつ低重合度結合剤の水酸基量が約25モル%未満で、高重合度結合剤の水酸基量が約25モル%以上であれば他の結合剤に関しては限定しなくともよいことがわかる。
実施例2と比較例6の結果から、平均重合度が大きい結合剤のガラス転移温度と、平均重合度が小さい結合剤のガラス転移温度との差が5℃以上であるほうがより好ましいことがわかる。
実施例1、2、5、6の結果から、アセチル基量の多いほうが接着しやすいことが分かる。
なお、本実施例では、積層セラミック物品の一例として積層セラミックコンデンサ用のグリーンシートを用いた例を用いて説明したが、積層セラミックコンデンサ用に限らず、例えば積層セラミック基板、積層アクチュエータなどの他の積層セラミック物品用のグリーンシートに適用しても本実施例と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
本発明のグリーンシートは積層セラミックコンデンサや積層セラミック基板、積層アクチュエータなどの積層セラミック物品用のグリーンシートに適用できる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥したセラミックグリーンシートであって、
前記結合剤は平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールを含み、
平均重合度が大きいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に多く、平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に少ないことを特徴とするセラミックグリーンシート。
【請求項2】
前記平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールが、平均重合度の差で300以上ある請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項3】
前記平均重合度の低いポリビニルアセタール中の水酸基量が該低重合度のポリビニルアセタールに含まれる全官能基量の25モル%未満である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項4】
前記平均重合度の高いポリビニルアセタール中の水酸基量が該高重合度のポリビニルアセタールに含まれる全官能基量の25モル%以上である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項5】
前記平均重合度の低いポリビニルアセタールの平均重合度が600以下である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項6】
前記平均重合度の高いポリビニルアセタールの平均重合度が900以上である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項7】
前記平均重合度の低いポリビニルアセタールの量がセラミックグリーンシートに含まれる全結合剤量の10〜90重量%の範囲であり、前記平均重合度の高いポリビニルアセタールの量がセラミックグリーンシートに含まれる全結合剤量の90〜10重量%の範囲である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項8】
前記平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールにおいて、平均重合度の大きいポリビニルアセタールの方のガラス転移温度が相対的に高く、平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方のガラス転移温度が相対的に低い請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項9】
前記平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールにおいて、平均重合度の大きいポリビニルアセタールの方のガラス転移温度と平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方のガラス転移温度との差が5℃以上である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項10】
前記2種以上のポリビニルアセタールがそれぞれ下記式(化1)(ただし、0<X<100、0<Y<100、0<Z<100、X+Y+Z=100モル%、Rは炭素数1〜6のアルキル基)で示されるランダム重合体である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。

【請求項11】
前記式(化1)において、低重合度ポリビニルアセタール中のアセタール基のRは、Cである請求項10に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項12】
前記式(化1)において、高重合度ポリビニルアセタール中のアセタール基のRは、CH又はCである請求項10に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項13】
前記低重合度のポリビニルアセタール中のアセチル基含有量が、該低重合度のポリビニルアセタールに含まれる全官能基量の3モル%以上である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項14】
前記高重合度のポリビニルアセタール中のアセチル基含有量が、該高重合度のポリビニルアセタールに含まれる全官能基量の3モル%以上である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項15】
前記セラミックグリーンシートの気孔率が10〜60体積%である請求項1に記載のセラミックグリーンシート。
【請求項16】
セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料を作製し、得られたセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥することによりセラミックグリーンシートを作製し、前記セラミックグリーンシートと内部電極シートを用いて積層体を作製するか又は前記セラミックグリーンシート上に内部電極が形成されたセラミックグリーンシートを用いて積層体を作製し、脱バインダーし、焼成することにより得られる積層セラミック物品において、
前記セラミックグリーンシートは、セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥されており、前記結合剤は平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールを含み、平均重合度が大きいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に多く、平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に少ないことを特徴とする積層セラミック物品。
【請求項17】
前記積層セラミック物品が積層セラミックコンデンサである請求項16に記載の積層セラミック物品。
【請求項18】
セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料を作製する工程と、得られたセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥することによりセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記セラミックグリーンシートと内部電極シートを用いて積層体を作製するか、又は前記セラミックグリーンシート上に内部電極が形成されたセラミックグリーンシートを用いて積層体を作製する工程と、前記積層体を脱バインダーし、焼成する工程とを少なくとも含む積層セラミック物品の製造方法において、
前記セラミックグリーンシートは、セラミック原料粉末と結合剤と有機溶媒を少なくとも含むセラミック塗料をシート状に成形し、乾燥されており、前記結合剤は平均重合度の異なる2種以上のポリビニルアセタールを含み、平均重合度が大きいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に多く、平均重合度が小さいポリビニルアセタールの方の水酸基量が相対的に少ないことを特徴とする積層セラミック物品の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/101465
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506284(P2005−506284)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006991
【国際出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】