説明

セラミックスヒータ及び該ヒータを用いた半導体/液晶製造装置

【課題】 反応チャンバー内に気密性を保持して簡単に収納することが可能なセラミックスヒータを提供すること、及びそのセラミックスヒータを用いることにより、優れた熱効率を達成でき、しかも反応チャンバーの小型化が可能な半導体製造装置及び液晶製造装置を提供する。
【解決手段】 セラミックスヒータ12は、内部に発熱体13が埋設され、一部に一端側がガラス封止部21で気密接合された金属フランジ19を備えている。このセラミックスヒータ11は半導体製造装置又は液晶製造装置の反応チャンバー11内に収納され、支持部材14で支持されると共に、金属フランジ20の他端側が反応チャンバー11の一部に支持され、且つO−リング15で気密シールされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置や液晶製造装置の反応チャンバーに使用されるセラミックスヒータ、及びそのセラミックスヒータを用いた半導体製造装置及び液晶製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ上でエッチングや成膜を行う場合、反応制御性に優れた枚葉式の半導体製造装置が一般に使用されている。半導体ウエハは反応チャンバー内に配置したセラミックス製の保持体の表面上に載せて、そのまま静置したり、機械的に固定したり、又は保持体に内蔵した電極に電圧を付加して静電力によってチャックしたりして、保持体上に固定される。
【0003】
保持された半導体ウエハは、CVD(chemical Vapor Deposition)、プラズマCVD等、あるいはエッチング、プラズマエッチング等における成膜速度やエッチング速度を均一に維持するために、その温度が厳密に制御される。その厳密な温度制御のために、保持体に内蔵した発熱体によって保持体を加熱し、その表面からの伝熱によって半導体ウエハを加熱するようになっている。尚、保持体は耐熱性、絶縁性、耐食性を備えた材料、例えば窒化アルミニウムや窒化ケイ素のようなセラミックス等で構成されている。
【0004】
従来、保持体に系外から電力を供給するために、保持体の裏面に引き出した電極に引出線を繋ぎ、系外へ電気的に接続する方法が採られていた。その際、反応チャンバー内に流す反応ガスは腐食性の高いハロゲン系のガスが用いられるため、耐食性の高いセラミックスからなるパイプ状のシャフトを保持体に取り付け、このシャフト内に電極及び引出線を収納して反応チャンバー内の雰囲気と完全に遮断していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように従来の半導体製造装置においては、例えば図5に示すように、内部に発熱体3が埋設されたセラミックス製の保持体(以後、セラミックスヒータと云う)2は、その裏面にホットプレス等を用いてセラミックス製のシャフト4の一端が接合され、シャフト4内に電力供給用の引出線を収納している。このセラミックスヒータ2はシャフト4の他端で反応チャンバー1に支持され、且つO−リング5で気密シールされる。O−リング5の近傍には水冷ジャケット6を配置して、シール部分を200℃以下に冷却することによりO−リング5を高温から保護している。
【0006】
しかしながら、セラミックスヒータ2は埋設した発熱体3により500〜800℃の温度でウエハを均一に加熱する一方で、セラミックスヒータ2に接合されたシャフト4を通じて熱が逃げていき、またシャフト4の他端を水冷しているため、セラミックスヒータ2の均熱性が損なわれ且つ熱効率も悪かった。セラミックスヒータ2の熱効率は50%以上が求められているが、従来の半導体製造装置ではシャフト4を通じて無駄になる熱が多く、熱効率の向上が妨げられると共に、ランニングコストが極めて高くなっていた。
【0007】
セラミックスヒータ2の熱がシャフト4へ逃げるのを抑えるためには、シャフト4の肉厚を出来るだけ薄くして、熱の拡散に寄与する断面積を小さくすれば良い。しかし、セラミックスヒータ2の重量を支え且つ気密シールを取るためシャフト4には剛性や強度が必要であり、シャフト4を構成するセラミックスは脆性材料であるため、薄肉にするとセラミックスヒータ2の荷重やシャフト4の内外の気圧差で破損する危険がある。このような理由から、シャフト4の肉厚は通常3mm以上を必要とし、そのためセラミックスヒータ2からの熱の逃げを十分に抑えることができなかった。
【0008】
また、反応チャンバー1には高い気密性が要求され、具体的にはHeリークで少なくとも10−8Pa・m/s未満、望ましくは10−9Pa・m/s未満が求められている。従来は反応チャンバー1とシャフト4との間の気密シールをO−リング5で行っているが、ゴムや樹脂からなるO−リング5は精々200℃までの温度にしか耐えられないため、耐熱素材のシャフト4を高温部から低温部までを伸ばし、且つ水冷して200℃以下となった箇所でO−リング5を用いて気密シールしていた。
【0009】
しかし、シャフト4に支持されているセラミックスヒータ2は500〜800℃に加熱されているので、シャフト4には温度分布が付き、シャフト4を短くし過ぎると熱勾配による応力で脆性材料のセラミックス製のシャフト4が割れてしまう。従って、シャフト4の長さは短くできず、300mm程度の長いシャフト4にして熱勾配を緩やかにする必要があった。
【0010】
このように、従来の半導体製造装置では、セラミックスヒータ2を長いシャフト4で支持する必要があるため、セラミックスヒータ2を収納する反応チャンバー1は非常に無駄の多い大型構造にせざるを得ず、実際に反応チャンバー1の高さは400mm以上となっていたが、最近では200mm以下に小型化することが求められている。
【0011】
尚、上記した問題点は半導体製造装置だけのものではなく、発熱体を埋設したセラミックスヒータを反応チャンバー内に気密に支持して用いる液晶製造装置においても、同様の問題を抱えていた。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、反応チャンバー内に気密性を保持して簡単に収納することが可能なセラミックスヒータを提供すること、及びそのセラミックスヒータを用いることにより、優れた熱効率を達成でき、しかも反応チャンバーの小型化が可能な半導体製造装置及び液晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明が提供するセラミックスヒータは、半導体製造装置又は液晶製造装置の反応チャンバー内に配置して使用されるセラミックスヒータであって、発熱体が埋設されたセラミックスヒータの一部に一端がガラスで気密接合された金属フランジを備え、金属フランジの他端はセラミックスヒータを収納する反応チャンバーの一部に支持されると共に気密シールされることを特徴とするものである。
【0014】
上記本発明のセラミックスヒータにおいて、前記金属フランジはセラミックスヒータに形成された溝内に一端が挿入され、その一端挿入部の少なくとも一部を包み込むように溝内に充填されたガラスにより気密接合されていることを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明のセラミックスヒータにおいては、前記セラミックスヒータを構成するセラミックスとガラスとの熱膨張率の差は5×10−6/℃以下であることが好ましい。また、前記ガラスは結晶化ガラスであることが好ましい。
【0016】
更に、上記本発明のセラミックスヒータにおいては、前記セラミックスヒータが、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウムから選ばれた材料で構成されていることを特徴とする。また、前記金属フランジが、タングステン若しくはモリブデン、又はそれらにメッキ処理を施した材料で構成されていることを特徴とする。また、前記金属フランジが波形の形状であることを特徴とする。
【0017】
本発明は、また、上記本発明のセラミックスヒータを備えた半導体製造装置又は液晶製造装置を提供するものであり、その半導体製造装置又は液晶製造装置は、上記セラミックスヒータが反応チャンバー内に収納され、該セラミックスヒータに一端をガラスで気密接合された金属フランジの他端が反応チャンバーの一部に支持されると共にO−リングで気密シールされ、その気密シール部分近傍が冷却されていることを特徴とする。
【0018】
また、上記本発明の半導体製造装置又は液晶製造装置では、前記セラミックスヒータが、前記金属フランジ以外に、低熱伝導率の支持部材によって反応チャンバーに支持されていることを特徴とする。特に、この場合のセラミックスヒータにおいては、前記金属フランジの厚さが0.05〜2.0mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半導体製造装置や液晶製造装置の反応チャンバー内に、Heリーク量で10−8Pa・m/s未満の気密性を保持した状態で簡単に取り付けることが可能なセラミックスヒ一タを提供することができる。また、そのセラミックスヒータを用いることにより、セラミックスヒータの熱効率50%以上を達成することができ、しかも反応チャンバーの小型化が可能な半導体製造装置及び液晶製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
半導体製造装置や液晶製造装置に用いるセラミックスヒータは、従来は脆性材料であるセラミックス製のシャフトで反応チャンバー内に支持されており、熱伝導を抑制するためにはシャフトをできるだけ薄くすることが望ましいが、強度的に厚くしなければならないため、シャフトを通して逃げる熱が大きく、セラミックスヒータの熱効率が悪かった。また、反応チャンバーでのシャフト支持部をO−リングで気密シールするため、シャフトをO−リングが耐え得る低温部まで長く延長しなければならず、必然的に反応チャンバーが大型化していた。
【0021】
これに対して本発明では、セラミックスよりも靭性の高い金属フランジの一端側をセラミックスヒータに気密に接合すると共に、この金属フランジの他端側を反応チャンバーに支持すると同時に気密シールする。また、セラミックスヒータと金属フランジとの気密接合には、セラミックスヒータ表面の所定加熱温度(通常は800℃以上)で耐熱性を有するガラスを用いる。
【0022】
半導体製造装置や液晶製造装置に用いられるセラミックスヒータのような大型部品について、高温における高信頼性の気密接合を行う場合、わずか一箇所でもリークは許されない。従って、小さな電子部品の接続の場合と同様に、大型のセラミックス部材に金属板の端部を重ねてガラスをその部分に肉盛りしたり、セラミックス部材に金属板の端を垂直にあてがってガラスでメニスカスを形成したりして接合しても、信頼性の高い気密接合を得ることは難しい。
【0023】
本発明においては、大型のセラミックスヒータに溝を形成し、その溝の空間内に金属フランジの一端側を挿入すると共に、金属フランジの一端挿入部の少なくとも一部が、好ましくは両平面、更には両側面や端面を含めた全表面が包み込まれるように、溝の中にガラスを充填することによって、信頼性の高い気密接合を達成することができる。
【0024】
一般に、セラミックス部材に金属板の端を重ねてガラスを肉盛りした場合は、金属板に押し付けの力が働いたときはセラミックスの反作用で耐えることができるが、引っ張りの力が働いたときには、肉盛りされている全面ではなく、金属板とガラスの接合端部のラインに引き剥がしの力が集中するため、その部分から徐々にガラスにクラックが導入されて容易に破壊が進行する。
【0025】
また、セラミックス部材に金属板の端を垂直にあてがって、ガラスでメニスカスを形成して接合した場合は、金属板の平面に対して水平方向の応力には比較的強いが、垂直方向の力が加わったときには、ガラスのメニスカス端部の金属と接しているラインに引き剥がしの力が集中するため、その部分から徐々にガラスにクラックが導入されて容易に破壊が進行する。
【0026】
これに対して、本発明によるセラミックスヒータと金属フランジの気密接合の場合には、金属フランジの平面に対し水平方向の応力が働いたときには、挿入された金属フランジのガラスで包み込まれた全面で応力を受けるため破壊を受け難い。また、垂直方向に応力が掛かっても、その力は金属フランジの反対側にあるガラスと溝を形成しているセラミックスで受ける。ガラスやセラミックスは、引っ張り応力や引き剥がしの応力には弱く容易にクラックが進展しやすいが、圧縮応力に対しては一般に一桁以上高い強度を示す。このような作用によって、信頼性の高い気密接合が得られるものと考えられる。
【0027】
セラミックスヒータやガラスは接合後の冷却過程で熱収縮するが、その熱収縮量の差が大きいとガラスやセラミックスに掛かる熱応力が増大し、ガラスにクラックが入りやすくなる。熱収縮量の差による熱応力を抑制して、気密封止の信頼性を高めるため、使用するセラミックスとガラスの熱膨張率の差を5×10−6/℃以下とすることが好ましい。
【0028】
接合に用いるガラスとしては、従来から電子部品等においてセラミックスや金属の接合に使用されている材料であって良いが、ガラスの強度を上げて更に信頼性を内上させるためには、結晶化ガラスを用いることが好ましい。
【0029】
また、セラミックスヒータを構成するセラミックスとしては、耐熱性、耐食性、耐酸化性等を考慮すると、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウムから選ばれた材料であることが好ましい。
【0030】
金属フランジとしては、耐熱性の高いこと、ガラスやセラミックスとの熱膨張率の差が小さいことが必要であり、これらの点を考慮するとタングステン又はモリブデンであることが望ましい。また、耐食性や耐酸化性を高めるために、それらの金属フランジにニッケル等のメッキ処理を施すことが好ましい。
【0031】
本発明のセラミックスヒータを反応チャンバー内に取り付ける際には、セラミックスヒータに接合した金属フランジの他端側を反応チャンバーの内壁に支持すると共に、その金属フランジの他端側と反応チャンバーの内壁との間を気密にシールする。尚、セラミックスヒータの荷重は金属フランジのみで受けても良いが、低熱伝導率の材料からなる支持部材を別途設けてセラミックスヒータの荷重を受けることもできる。
【0032】
また、セラミックスヒータを支持するためには金属フランジが厚い方が好ましいが、厚くなると熱が逃げ易くなるので、0.05〜2.0mm程度の厚さが望ましい。一方、セラミックスヒータの支持部材を別に設ける場合には、セラミックスヒータから金属フランジに熱が逃げるのを抑えるために、金属フランジを薄くすることができる。好ましくは、支持部材を設けてセラミックスヒータを支持すると共に、金属フランジの厚さを0.05〜2.0mmと薄くすることによって、金属フランジヘの熱の伝導が抑えられ、セラミックスヒータの熱効率の向上を図ることができる。
【0033】
金属フランジの他端側と反応チャンバーの内壁とは、ボルトとナット等を用いて機械的に支持でき、その間の気密シールはO−リングで行うことができ、そのシール部分の近傍に水冷ジャケッを配置して冷却する。金属フランジの幅(又は長さ)を大きくし、セラミックスヒータとO−リングとの距離を長くするほどO−リングを低温部に移すことができ、熱的には反応チャンバーの設計に余裕ができる。
【0034】
しかし、セラミックスヒータとO−リングとの距離を長くすると、セラミックスヒータを収納する反応チャンバーが大きくなる。そこで、金属フランジを波形に曲折することによって、熱的な勾配を持たせると同時に、反応チャンバーを小型化することが可能となる。
【0035】
このようにしてセラミックスヒータを取り付けた反応チャンバーは、セラミックスヒータと金属フランジによって上側領域と下側領域とに区分され、両領域の間はガラスによる気密接合とO−リングでの気密シールとにより気密性が保たれる。従って、発熱体への電力供給用の引出線を、セラミックスヒータの裏面から反応チャンバーの下側領域を通して系外に簡単に導出することができる。
【0036】
しかも、金属フランジを通して無駄に失われる熱が少なく、セラミックスヒータの熱効率を向上させることができると共に、金属フランジでセラミックスヒータを支持することにより無駄な空間が少なくなり、反応チャンバー及び半導体製造装置や液晶製造装置全体を小型化することが可能になった。
【実施例1】
【0037】
窒化アルミニウム(AlN)粉末に、焼結助剤として5重量%のイットリア(Y)を加え、更にバインダを添加して分散混合した後、スプレードライにより造粒した。この造粒粉末を用いて、焼結後の形状が直径350mm×厚さ10mmとなる寸法の円板状成形体を一軸プレスにより2枚成形した。また、外径350mm、内径300mm、厚み5mmとなる寸法の円環状成形体を、冷間静水圧プレス(CIP)により1枚成形した。
【0038】
円板状成形体の1枚に幅4mm及び深さ4mmの溝を形成し、温度800℃の窒素ガス気流中で脱脂した。その後、溝内にMoコイルを這わし、残り1枚の円板状成形体を重ねて、窒素中にて加重100kgf/cm、温度1850℃で4時間焼結して接合し、セラミックスヒータを得た。尚、円環状成形体も同様に焼結して、セラミックスリングとした。
【0039】
得られたセラミックスヒータ12は、図1に示すように、内部にMoコイルからなる発熱体13が埋設されている。このセラミックスヒータ12の両端面をダイヤモンド砥粒を用いて研磨すると共に、セラミックスヒータ12の下端部外周を溝加工して、外径300mmの小径部17を形成した。
【0040】
次に、セラミックスヒータ12の小径部17に、外径400mm、内径300mm、厚み1mmのWリングからなる金属フランジ19の一端内周側を挿入し、更に上記セラミックスリング18を差し込んだ。その後、図2に示すように、円板状のセラミックスヒータ12とセラミックスリング18で形成された溝内に、金属フランジ19の一端挿入部の両側平面が包み込まれるように、軟化点が850℃で熱膨張率が4.5×10−6/℃のガラス粉末を充填し、900℃で溶融させてガラス封止部21により気密接合した。
【0041】
尚、セラミックスヒータ12を構成する窒化アルミニウム(AlN)の熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が4.5×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差はゼロである。
【0042】
このようにして得られたセラミックスヒータ12を、図3に示すように、金属フランジ19の他端外周部を反応チャンバー11の内壁にボルトやナットで締め付けて取り付けると共に、O−リング15で気密シールした。また、セラミックスヒータ12の裏面を、熱伝導率150W/mKの窒化アルミニウムからなる直径10mmの4本の円柱状支持体14で支持した。更に、O−リング15による気密シール部の近傍に水冷ジャケット16を配置した。発熱体13の引出線は、セラミックスヒータ12の裏面から反応チャンバー11の底壁を通して、そのまま外部に導出した。
【0043】
800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー11の全体(セラミックスヒータと金属フランジによる区分された上側領域)のHeリーク量は2.4×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバー11の寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータ12を800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【0044】
比較例1
実施例1と同様にして、Moコイルの発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製した。また、実施例1と同じ造粒粉末をCIP成形して、焼結後の形状が外径100mm、内径80mm、長さ300mmのパイプ状になるように成形した。このパイプ状成形体を温度800℃の窒素ガス気流中で脱脂し、温度1900℃で6時間焼結した。得られた焼結体パイプの両端面をダイヤモンド砥粒で研磨すると共に、中央部を研磨して外径88mmのシャフトに仕上げた。
【0045】
このようにして作製したシャフトとセラミックスヒータを、100kgf/cmの圧力で窒素気流中において1800℃×2時問の条件でホットプレス接合した。図5に示すように、このセラミックスヒータ2を反応チャンバー1内に配置して、シャフト4で支持すると共に、シャフト4の下端と反応チャンバー1の底壁の間をO−リング5で気密シールした。更に、O−リング5の気密シール部の近傍に水冷ジャケット6を設置した。
【0046】
800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は2.6×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/S未満を達成でき、封止には全く問題が無かった。しかしながら、反応チャンバー1の寸法は、内径500mm、高さ450mmと大型になった。更に、セラミックスヒータ2を800℃に加熱した際の熱効率は、40%と不十分なものであった。
【実施例2】
【0047】
実施例1と同様にして発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製し、封止用のガラスとして熱膨張率7.0×10−6/℃のガラスを用いた以外は実施例1と同じ方法により、Wリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0048】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が7.0×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は2.5×10−6/℃である。
【0049】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は6.7×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例3】
【0050】
実施例1と同様にして発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製し、封止用のガラスとして熱膨張率9.0×10−6/℃のガラスを用いた以外は実施例1と同じ方法により、Wリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0051】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が9.0×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は4・5×10−6/℃である。
【0052】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は9.5×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例4】
【0053】
実施例1と同様にして発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製し、封止用のガラスとして熱膨張率10.0×10−6/℃のガラスを用いた以外は実施例1と同じ方法により、Wリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0054】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が10.0×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は5.5×10−6/℃である。
【0055】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は5.5×10−9Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成できた。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例5】
【0056】
実施例1と同様にして発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製し、封止用のガラスとして熱膨張率12.0×10−6/℃のガラスを用いた以外は実施例1と同じ方法により、Wリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0057】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が12.0×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は7.5×10−6/℃である。
【0058】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は9.7×10−9Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成できた。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例6】
【0059】
実施例1と同様にして発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製し、封止用のガラスとして熱膨張率12.0×10−6/℃の結晶化ガラスを用いた以外は実施例1と同じ方法により、Wリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0060】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用の結晶化ガラスの熱膨張率が12.0×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は7.5×10−6/℃である。
【0061】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は5.6×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例7】
【0062】
窒化ケイ素(Si)粉末に、焼結助剤として3重量%のイットリア(Y)と2重量%のアルミナ(Al)を加え、更にバインダを添加して分散混合し、スプレードライにより造粒した。得られた造粒粉末を用い、焼結条件を窒素気流中1650℃で4時間にした以外は実施例1と同じ方法により、Wリングの金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0063】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化ケイ素の熱膨張率は3.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が4.5×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は1.0×10−6/℃である。
【0064】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は5.3×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例8】
【0065】
炭化ケイ素(SiC)粉末に、焼結助剤として2重量%の炭化ホウ素(BC)と1重量%のカーボン(C)を加え、更にバインダを添加して分散混合し、スプレードライにより造粒した。得られた造粒粉末を用い、焼結条件をアルゴン気流中2000℃で7時間にした以外は実施例1と同じ方法により、Wリングの金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0066】
尚、セラミックスヒータを構成する炭化ケイ素の熱膨張率は3.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が4.5×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は1.0×10−6/℃である。
【0067】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は4.8×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m3/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チヤンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例9】
【0068】
酸化アルミニウム(Al)粉末に、焼結助剤として2重量%のマグネシア(MgO)を加え、更にバインダを添加して分散混合し、スプレードライにより造粒した。得られた造粒粉末を用い、焼結条件をアルゴン気流中2000℃で7時間にした以外は実施例1と同じ方法により、Wリングの金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0069】
尚、セラミックスヒータを構成する酸化アルミニウムの熱膨張率は7.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が4.5×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差は3.0×10−6/℃である。
【0070】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は8.8×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例10】
【0071】
実施例1と同様にして発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製し、金属フランジであるWリングに厚さ2μmのNiメッキを施した以外は実施例1と同じ方法により、NiメッキしたWリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。
【0072】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が4.5×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差はゼロである。
【0073】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は1.5×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例11】
【0074】
実施例1と同様にして発熱体を内蔵したセラミックスヒータを作製し、金属フランジとして図4のように波形のWリングからなる金属フランジ20を用いた以外は実施例1と同じ方法により、波形のWリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。尚、図4の反応チャンバーでは波形の金属フランジ20を除く他の部分は全て図3と同じであり、従って同じ部分には同一の符号を付してある。
【0075】
尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が4.5×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差はゼロである。
【0076】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付け、800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク章は2.5×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/s未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径450mm、高さ150mmと更に小型化できた。セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は65%であった。
【実施例12】
【0077】
実施例1と同様にして、発熱体を内蔵し且つWリングからなる金属フランジを接合したセラミックスヒータを作製した。尚、セラミックスヒータを構成する窒化アルミニウムの熱膨張率は4.5×10−6/℃、封止用ガラスの熱膨張率が4.5×10−6/℃であり、両者の熱膨張率の差はゼロである。
【0078】
このセラミックスヒータを実施例1と同様に反応チャンバーに取り付けると共に、窒化アルミニウムの円柱状支持体に代えて、熱伝導率20W/mKのアルミナ(Al)からなる直径10mmの円柱状の支持部材4本を用いて反応チャンバーに支持した。
【0079】
800℃に加熱した状態で気密試験を実施したところ、反応チャンバー全体のHeリーク量は2.5×10−10Pa・m/sであり、目標の10−8Pa・m/S未満を達成でき、封止に全く問題は無かった。また、反応チャンバーの寸法は、内径500mm、高さ150mmに小型化できた。更に、セラミックスヒータを800℃に加熱した際の熱効率は75%に向上した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、半導体製造装置や液晶製造装置の反応チャンバー内に、Heリーク量で10−8Pa・m/s未満の気密性を保持した状態で簡単に取り付けることが可能なセラミックスヒータを提供することができる。また、そのセラミックスヒータを用いることにより、セラミックスヒータの熱効率50%以上を達成することができ、しかも反応チャンバーの小型化が可能な半導体製造装置及び液晶製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明によるセラミックスヒータを構成する各部材の一具体例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明によるセラミックスヒータの一具体例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明によるセラミックスヒータを備えた反応チャンバーの一具体例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明による別のセラミックスヒータを備えた反応チャンバーの他の具体例を模式的に示す断面図である。
【図5】従来のセラミックスヒータを備えた反応チャンバーの具体例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1、11 反応チャンバー
2、12 セラミックスヒータ
3、13 発熱体
5、15 O−リング
6、16 水冷ジャケット
14 支持部材
18 セラミックスリング
19、20 金属フランジ
21 ガラス封止部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置又は液晶製造装置の反応チャンバー内に配置して使用されるセラミックスヒータであって、発熱体が埋設されたセラミックスヒータの一部の一端がガラスで気密接合された金属フランジを備え、金属フランジを備え、金属のフランジの他端はセラミックスヒータを収納する反応チャンバーの一部に支持されると共に気密シールされることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記金属フランジはセラミックスヒータに形成された溝内に一端が挿入され、その一端挿入部の少なくとも一部を包み込むように溝内に充填されたガラスにより気密接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記セラミックスヒータを構成するセラミックスとガラスとの熱膨張率の差が5×10−6/℃以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項4】
前記ガラスが結晶化ガラスであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックスヒータ。
【請求項5】
前記セラミックスヒータが、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウムから選ばれた材料で構成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックスヒータ。
【請求項6】
前記金属フランジが、タングステン若しくはモリブデン、又はそれらにメッキ処理を施した材料で構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックスヒータ。
【請求項7】
前記金属フランジが波形の形状であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックスヒータ。
【請求項8】
請求項1〜8のいずれかに記載のセラミックスヒータが反応チャンバー内に収納され、該セラミックスヒータに一端をガラスで気密接合された金属フランジの他端が反応チャンバーの一部に支持されると共にO−リングで気密シールされ、その気密シール部分近傍が冷却されていることを特徴とする半導体製造装置又は液晶製造装置。
【請求項9】
前記セラミックスヒータが、前記金属フランジ以外に、低熱伝導率の支持部材によって反応チャンバーに支持されていることを特徴とする、請求項8に記載の半導体製造装置又は液晶製造装置。
【請求項10】
前記金属フランジの厚さが0.05〜2.0mmであることを特徴とする、請求項9に記載の半導体製造装置又は液晶製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−302884(P2006−302884A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103298(P2006−103298)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【分割の表示】特願2002−52592(P2002−52592)の分割
【原出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】