説明

セラミックヒータ

【課題】耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供すること。
【解決手段】排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータ1。セラミック製のヒータ基材10と、該ヒータ基材10の内部に形成される発熱体と、ヒータ基材10の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子2と接触する外部電極パッド12とを有する。発熱体、ヒータリード部11、及び外部電極パッド12は卑金属からなる。外部電極パッド12は、貴金属からなる緻密な保護膜14のみによって外表面が覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すごとく、例えば、排ガス中の特定ガス濃度(酸素濃度等)を検出するガスセンサ8には、ガスセンサ素子80を加熱するためのセラミックヒータ9が内蔵されている。
該セラミックヒータ9は、セラミック製のヒータ基材910の内部に発熱体(図示略)を有する。そして、上記ヒータ基材910の外表面には、図11に示すごとく、上記発熱体に接続された外部電極パッド912が設けられている。該外部電極パッド912は、タングステンからなるとともに、例えば、Niめっきからなる保護膜914によって外表面が覆われている(特許文献1参照)。また、上記保護膜914は、例えばAu−Cu合金からなるろう材915により、外部リード92と接合されている。これにより、外部電極パッド912の耐熱性を確保するとともに酸化を抑制している。
【0003】
上記ガスセンサ8は、図10に示すごとく、有底筒型のガスセンサ素子80をハウジング81内に配設してなるとともに、ガスセンサ素子80の内部に上記セラミックヒータ9を配設してなる。
上記ガスセンサ素子80の先端外周面は排ガスが導入される被測定ガス室82に曝され、内周面は大気が導入される大気室83に曝される。また、セラミックヒータ9の外部電極パッド912は、大気室83に曝される。そして、上記被測定ガス室82と大気室83とは、ガスセンサ素子80とハウジング81との間に配されたシール材84によって、気密性が確保されている。
これにより、大気室83に排ガスが侵入することを防いでいる。
【0004】
しかしながら、近年、排ガス規制の強化により、排ガス温度が上昇している。そのため、上記シール材84に熱負荷がかかり、気密性が低下するおそれがある。
これにより、大気室83に排ガスが侵入し、排ガス中の腐食成分(窒素酸化物等)が保護膜914に達するおそれがある。保護膜914は、上記のごとく、Niめっき等からなり、Niは窒素酸化物をもとにして生成される硝酸等の腐食成分と反応しやすい。それゆえ、保護膜914のNiが窒素酸化物によって腐食してしまうおそれがある。
【0005】
これに対して、図11に示すごとく、保護膜914やろう材915等の外表面をCrめっきによって覆うことが考えられる。ところが、かかる場合には、ろう材915に生じる熱応力に起因して、Crめっきにクラックが生じることがある。そして、Crに形成されたクラックから腐食成分が侵入して、該腐食成分が、Niからなる保護膜914へと達するおそれがある。これにより、保護膜914が腐食してしまうおそれがある。
【0006】
これに対して、図12に示すごとく、外部リードと外部電極パッド912とを、上記のようなろう材による固定ではなく取出端子920により接触させる構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。上記取出端子920は、セラミックヒータ9の基端部を厚み方向から挟持する部品である。また、外部電極パッド912は、その耐熱性を確保すべく、Niめっきからなる第1保護膜916により覆われるとともに、耐腐食性を確保すべくAuめっきからなる第2保護膜917によって覆われている。
【0007】
しかしながら、この第2保護膜917を構成するAuめっき膜には、ピンホールが形成されることがある。そして、第2保護膜917にピンホールがあると、該ピンホールより腐食成分が侵入して第1保護膜916へと達することがある。これにより、例えばNiからなる第1保護膜916が腐食してしまうおそれがある。
そのため、耐腐食性及び耐熱性に優れた外部電極パッドを有するセラミックヒータが求められていた。
【0008】
【特許文献1】特開2005−158471号公報
【特許文献2】特開2006−91009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が貴金属からなる緻密な保護膜のみによって覆われていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項1)。
【0011】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記保護膜は、貴金属のみからなる。すなわち、保護膜を、耐腐食性に優れた材料のみによって形成することができる。その結果、排ガスに曝されても外部電極パッドの腐食を防ぐことができ、耐腐食性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0012】
また、上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が耐熱性に優れる貴金属からなる緻密な保護膜のみによって覆われている。そして、外部電極パッドにおいて少なくとも取出端子と実質的に直接接触する部分を上記保護膜によって覆うことにより、少なくともその部分においては卑金属からなる外部電極パッドが高温の排ガスに直接曝されることを防ぐことができる。そして、これにより、外部電極パッドが熱劣化して酸化しやすくなることを防ぐことができる。その結果、耐熱性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0014】
第2の発明は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が、貴金属からなる緻密な保護膜と、Crからなる緻密な保護膜とからなる保護層のみによって覆われていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項2)。
【0015】
本発明において、上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が、貴金属からなる緻密な保護膜と、Crからなる緻密な保護膜とからなる保護層のみによって覆われている。すなわち、外部電極パッドの外表面の少なくとも一部は、耐腐食性及び耐熱性に優れた貴金属と、保護膜の表面において酸化クロムとなって不動態皮膜を形成する耐腐食性及び耐熱性に優れたCrとによって覆われている。そのため、上記第1の発明(請求項1)と同様、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0016】
以上のごとく、本発明によれば、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0017】
第3の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックヒータを製造する方法であって、上記外部電極パッドの外表面に上記貴金属からなる上記保護膜を形成するに当たって、上記外部電極パッドの外表面の少なくとも一部に、上記貴金属からなる上記保護膜を形成するための貴金属めっきを施した後、該貴金属の融点より150℃低い温度以上の温度で上記貴金属めっきを熱処理することを特徴とするセラミックヒータの製造方法にある(請求項6)。
【0018】
上記製造方法においては、上記貴金属の融点より150℃低い温度以上の温度で上記貴金属めっきを熱処理する。これにより、請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを容易に得ることができる。すなわち、外部電極パッドにいったん貴金属めっきを施した後、その貴金属めっきに熱処理を施すことにより貴金属を軟化させて、外部電極パッドの表面の微小凹凸面に貴金属を十分なじませることができる。つまり、上記製造方法によれば、いわゆるアンカー効果によって外部電極パッドと保護膜との密着力を向上させることできる。
その結果、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを容易に得ることができる。
【0019】
以上のごとく、本発明によれば、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータの製造方法を提供することができる。
【0020】
第4の発明は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部がCrからなる緻密な保護膜のみによって覆われていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項8)。
【0021】
上記保護膜は、Cr(クロム)からなる。それゆえ、保護膜の表面においてCrが酸化クロムとなって不動態皮膜を形成することにより、耐腐食性に優れた保護膜を得ることができる。その結果、排ガスに曝されても外部電極パッドの腐食を防ぐことができ、耐腐食性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0022】
また、上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が耐熱性に優れるCrからなる保護膜のみによって外表面が覆われている。そして、外部電極パッドにおいて少なくとも取出端子と実質的に直接接触する部分を上記保護膜によって覆うことにより、少なくともその部分においては卑金属からなる外部電極パッドが高温の排ガスに直接曝されることを防ぐことができる。そして、これにより、外部電極パッドが熱劣化して酸化しやすくなることを防ぐことができる。その結果、耐熱性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0023】
以上のごとく、本発明によれば、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0024】
第5の発明は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、貴金属からなることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項11)。
【0025】
上記外部電極パッドは、貴金属からなる。すなわち、外部電極パッドは耐腐食性に優れる材料のみによって形成されているため、排ガスに曝されても外部電極パッドが腐食することを防ぐことができる。それゆえ、耐腐食性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
また、外部電極パッドが耐熱性に優れる貴金属からなるため、高温の排ガスに曝されても外部電極パッドが熱劣化することを防ぐことができる。その結果、耐熱性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0026】
以上のごとく、本発明によれば、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0027】
第6の発明は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、Crからなることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項13)。
【0028】
上記外部電極パッドは、Crからなる。それゆえ、外部電極パッドの表面においてはCrが酸化クロムとなって不動態皮膜を形成することにより、排ガスに曝されても外部電極パッドが腐食することを防ぐことができる。その結果、耐腐食性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
また、上記外部電極パッドのCrが耐熱性に優れる酸化クロムを形成することにより、高温の排ガスに曝されても外部電極パッドが熱劣化することを防ぐことができる。その結果、耐熱性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0029】
以上のごとく、本発明によれば、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0030】
第7の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載のセラミックヒータを内蔵することを特徴とするガスセンサにある(請求項15)。
【0031】
この場合には、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを有するガスセンサを得ることができる。その結果、信頼性に優れたガスセンサを得ることができる。
【0032】
以上のごとく、本発明によれば、信頼性に優れたガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
第1の発明(請求項1)、第2の発明(請求項2)、及び第4の発明(請求項8)において、上記保護膜によって覆われていない外表面が外部電極パッドに存在する場合には、その外表面に、例えばガラスやセラミック材料等からなる保護層を設けることが好ましい。
【0034】
第1の発明及び第2の発明において、上記貴金属は、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)の少なくともいずれか一種以上からなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、耐腐食性及び耐熱性に優れた保護膜を形成することができる。その結果、耐腐食性及び耐熱性に一層優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0035】
また、第1、第2、第4の発明において、上記外部電極パッドは、外表面の全体が、上記保護膜によって覆われていることが好ましい(請求項4、請求項9)。
この場合には、外部電極パッド全体の腐食や熱劣化を防ぐことができる。
【0036】
また、上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は、タングステンからなるものを用いることができる(請求項5、請求項10)。
この場合には、耐腐食性に優れる安価なセラミックヒータを得ることができる。
【0037】
また、上記熱処理は、上記貴金属の融点以上の温度で行うことが好ましい(請求項7)。
この場合には、熱処理によって貴金属めっきを溶融させることができるため、貴金属めっきをより一層外部電極パッドになじませることができる。その結果、外部電極パッドと保護膜との密着力をより一層向上させることができる。
【0038】
上記第5の発明(請求項11)において、上記外部電極パッドは、Au、Ag、Pt、Rh、Pdの少なくともいずれか一種以上からなることが好ましい(請求項12)。
この場合には、耐腐食性及び耐熱性に優れた外部電極パッドを形成することができる。その結果、耐腐食性及び耐熱性に一層優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0039】
第5の発明及び第6の発明(請求項13)において、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は、タングステンからなるものを用いることができる(請求項14)。
この場合には、耐腐食性に優れる安価なセラミックヒータを得ることができる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
本発明の実施例に係るセラミックヒータにつき、図1〜図3を用いて説明する。
本例のセラミックヒータ1は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵される。
セラミックヒータ2は、図1に示すごとく、セラミック製のヒータ基材10と、該ヒータ基材10の内部に形成される発熱体(図示略)と、ヒータ基材10の外表面に設けられるとともに外部リード(図示略)の取出端子2と接触する外部電極パッド12と、該外部電極パッド12と上記発熱体とを接続するヒータリード部11とを有する。
外部電極パッド12は、Auめっきからなる緻密な保護膜14のみによって外表面全体が覆われている。
【0041】
ヒータ基材10は、例えば、アルミナ(Al23)又は窒化珪素(Si34)からなり、図2に示すごとく、円柱形状に形成されている。
外部電極パッド12、発熱体、及びヒータリード部11は、卑金属であるタングステン(W)からなる。
【0042】
また、ヒータ基材10におけるヒータリード部11と外部電極パッド12との間には、スルーホール100が形成されている。かかるスルーホール100にもタングステンが充填されており、ヒータリード部11と外部電極パッド12とを接続している。そして、取出端子2を介して外部電源(図示略)より流れてきた電流は、保護膜14及びヒータリード部11を通過して、上記発熱体へと通電される。
【0043】
また、取出端子2は、図2、図3に示すごとく、対になって形成されるとともに、セラミックヒータ1の基端部を厚み方向から押圧するように付勢されている。また、取出端子2は、保護膜14を介して外部電極パッド12に接触している。すなわち、外部電極パッド12と取出端子2とは、例えばろう材(例えば、図11における符号915参照)によって接合されることなく電気的に導通している。
【0044】
次に、本例の作用効果につき説明する。
保護膜14は、Auのみからなる。すなわち、保護膜14を、耐腐食性に優れた材料のみによって形成することができる。その結果、排ガスに曝されても外部電極パッド12の腐食を防ぐことができ、耐腐食性に優れたセラミックヒータ1を得ることができる。
【0045】
また、外部電極パッド12は、耐熱性に優れるAuからなる緻密な保護膜14のみによって外表面全体が覆われている。それゆえ、卑金属からなる外部電極パッド12が高温の排ガスに直接曝されることを防ぐことができる。そして、これにより、外部電極パッド12が熱劣化して酸化しやすくなることを防ぐことができる。その結果、耐熱性に優れたセラミックヒータ1を得ることができる。
特に、本例においては、図1に示すように外部電極パッド12の外表面全体をAuからなる保護膜14によって覆われているため、外部電極パッド12の腐食や熱劣化をより一層防ぐことができる。
【0046】
以上のごとく、本例によれば、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0047】
なお、上記実施例1においては、保護膜にAuを用いたが、他の貴金属、例えば、Ag、Pt、Rh、Pdを用いて保護膜を形成することもできる。
【0048】
さらに、保護膜には、Crからなるものを用いることもできる。この場合には、保護膜の表面においてCrが酸化クロムとなって不動態皮膜を形成することにより、耐腐食性に優れた保護膜を得ることができる。その結果、排ガスに曝されても外部電極パッドの腐食を防ぐことができ、耐腐食性に優れたセラミックヒータを得ることができる。また、上記外部電極パッドは、耐熱性に優れるCrからなる保護膜のみによって外表面が覆われているため、外部電極パッドが熱劣化して酸化しやすくなることを防ぐことができる。その結果、耐熱性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0049】
(実施例2)
本例は、図4に示すごとく、保護膜14が、二層で形成されているセラミックヒータ1の例である。すなわち、外部電極パッド12の外表面全体は第1保護膜141により覆われており、さらに該第1保護膜141の外表面は第2保護膜142により覆われている。
また、本例の第1保護膜141と第2保護膜142とは、Au、Ag、Pt、Rh、Pdのうちから選ばれる互いに異なる貴金属によって形成されている。さらに、上記の貴金属とCrとを組み合わせて保護膜14を形成することもできる。この場合には、第2保護膜142をCrによって形成するとよい。
その他は、実施例1と同様の構成及び作用効果を有する。
【0050】
(実施例3)
本例は、図5に示すごとく、外部電極パッド12が、貴金属からなるセラミックヒータ1の例である。すなわち、外部電極パッド12は、Au、Ag、Pt、Rh、Pdの少なくともいずれか一種以上からなる。
その他は、実施例1と同様である。
【0051】
外部電極パッド12は、貴金属からなる。すなわち、外部電極パッド12は耐腐食性に優れる材料のみによって形成されているため、外部電極パッド12が腐食することを防ぐことができる。それゆえ、耐腐食性に優れたセラミックヒータ1を得ることができる。
また、外部電極パッド12が耐熱性に優れる貴金属からなるため、外部電極パッド12が熱劣化することを抑制することができる。その結果、耐熱性に優れたセラミックヒータ1を得ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0052】
なお、上記実施例3では、上述のごとく、外部電極パッドは貴金属からなるものを用いたが、Crからなる外部電極パッドを用いることもできる。この場合にも、耐腐食性及び耐熱性に十分に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0053】
(実施例4)
本例は、図6に示すように、外部電極パッド12の一部の外表面が、貴金属からなる緻密な保護膜14によって覆われているセラミックヒータの例である。
すなわち、外部電極パッド12は、該外部電極パッド12において取出端子2と実質的に直接接触する部分とその周囲のみが保護膜14によって覆われており、その他の部分は、ガラス15によって覆われている。
この場合には、外部電極パッド12の外表面全体に保護膜14を形成する必要がないため、耐腐食性及び耐熱性に優れた安価なセラミックヒータ1を製造することができる。
その他は、実施例1と同様の構成及び作用効果を有する。
【0054】
(実施例5)
本例は、図7〜図9に示すように、本発明のセラミックヒータ1を備えた積層型のガスセンサ素子3を内蔵するガスセンサ4の例である。
【0055】
本例のガスセンサ4は、図9に示すように、本発明のセラミックヒータ1を備えたガスセンサ素子3と、該ガスセンサ素子3を内側に挿通する素子側絶縁碍子41と、該素子側絶縁碍子41を内側に挿通するハウジング42とを有する。
ハウジング42の先端側には、ガスセンサ素子3の先端部を保護する素子カバー46が配設され、ハウジング42の基端側には、ガスセンサ素子3の基端側を覆う大気側カバー44が配設されている。
また、大気側カバー44の基端側には、外部電源と接続されたリード線47を挿通するブッシュ45が配設されている。さらに、大気側カバー44の内側には、ガスセンサ素子3の基端部を覆う大気側絶縁碍子43が配設されている。
【0056】
本例において、ガスセンサ素子3は、図7に示すように、酸素イオン伝導性の固体電解質体31と、該固体電解質体31の一方の表面において被測定ガスを検出するための測定電極32と、固体電解質体31の他方の表面に配設された基準電極33とを有する。
また、測定電極32は、多孔質体からなる多孔質拡散抵抗層37を介して緻密な遮蔽層36によって覆われている。
また、固体電解質体31における基準電極33を設けた側の表面には、大気が導入される大気室を形成するための大気室形成層34が積層されている。
そしてさらに、大気室形成層34には、板状のセラミックヒータ1が積層されている。
【0057】
セラミックヒータ1は、図7に示すように、大気室形成層34と隣接する第1ヒータ基材101と、該第1ヒータ基材101における大気室形成層34が積層される側の表面と反対側の表面に配設される発熱体110と、第1ヒータ基材101との間で発熱体110を挟み込む第2ヒータ基材102とを有する。
第2ヒータ基材102には、発熱体110が設けられている側の表面と反対側の表面に外部電極パッド12が設けられている。
発熱体110は、第2ヒータ基材102の長手方向に平行に形成されるヒータリード部11と、第2ヒータ基材102を貫通してなるスルーホール100とを介して、外部電極パッド12と電気的に接続されている。
【0058】
外部電極パッド12は、その外表面全体を貴金属からなる保護膜14によって覆われており、該保護膜14を介して外部リードの取出端子(図示略)と電気的に接続される。
図7、図8に示されるような積層型のガスセンサ素子3に積層する板状のセラミックヒータにおいても、本発明を適用することにより、本発明の作用効果を効果的に発揮することができる。
【0059】
(実施例6)
本例は、実施例1(図1参照)において示されるような貴金属からなる保護膜14によって外部電極パッド12の外表面を覆ったセラミックヒータ1を製造する方法の例である。
なお、本例において使用した符号は、図1において使用した符号に準ずる。
【0060】
本例においては、外部電極パッド12の外表面に第1めっき層として無電解めっきによりAu(金)めっきを形成する。
次いで、Auの融点である1064℃以上の温度で該Auめっきを熱処理する。
次いで、第1めっき層の外表面に電解めっきを施してAuめっきからなる第2めっき層を形成する。
【0061】
このように、本例においては、外部電極パッド12の外表面に二回にわたってめっきを施し、そのうちの内側に形成される第1めっき層を無電解めっきにより形成し、外側に形成される第2めっき層を電解めっきにより形成することにより、保護膜14を形成する。
なお、本例においては、二層のみめっき層を形成しているが、さらに複数のめっき層を形成することもできる。かかる場合にも、めっき層のうち、最も外側に形成されるめっき層以外のめっき層の少なくとも一つを無電解めっきにより形成することが好ましい。
【0062】
上記製造方法においては、Auの融点である1064℃以上の温度でAuめっきを熱処理する。本例においては、第1めっき層を形成した後にのみ熱処理を行う。かかる熱処理により、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータ1を容易に得ることができる。すなわち、外部電極パッド12にいったんAuめっきを施した後、そのAuめっきに熱処理を施すことによりAuを軟化させて、外部電極パッド12を構成するタングステンの表面の微小凹凸面にAuを十分になじませることができる。つまり、上記製造方法によれば、いわゆるアンカー効果によって外部電極パッド12と保護膜14との密着力を向上させることできる。
その結果、耐腐食性及び耐熱性に優れたセラミックヒータ1を容易に得ることができる。
【0063】
また、本例においては、複数回にわたってめっきを施している。これにより、各めっき層にピンホールが形成されても、二層以上のめっき層を形成することでピンホールが保護膜14全体を貫通することを防ぐことができる。
また、第1保護膜141を無電解めっきにより形成するため、電解めっきのみで保護膜14を形成する場合のように、めっき治具の電極接点跡によってめっきの未着部が形成されることを抑制することができる。
さらに、第2保護膜142を電解めっきにより形成しているため、最外層の保護膜14を緻密なものとすることができる。それゆえ、取出端子2と保護膜14との接点部における摩耗を抑制することができる。
【0064】
(実施例7)
本例は、保護膜14をペースト印刷により形成するセラミックヒータ1の製造方法の例である。
なお、本例において使用した符号は、図1において使用した符号に準ずる。
【0065】
すなわち、本例においては、例えば、貴金属を含有してなるペーストにガラス成分を添加してなるペーストを、外部電極パッド12の外表面全体に印刷する。
次いで、このペーストを、高温にて焼き付けてセラミックヒータ1を形成する。
【0066】
具体的には、貴金属としてPt(白金)を含有させたペーストを用いた場合には、例えば1100〜1200℃という高温にてペーストを焼き付ける。
本例の製造方法によって形成されたセラミックヒータ1においても、本発明の作用効果を十分効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1における、セラミックヒータの外部電極パッドと取出端子との接触部付近の軸方向断面図。
【図2】実施例1における、セラミックヒータの正面図。
【図3】図2におけるセラミックヒータを90°異なる位置から見たセラミックヒータの基端部の側面図。
【図4】実施例2における、セラミックヒータの外部電極パッドと取出端子との接触部付近の軸方向断面図。
【図5】実施例3における、セラミックヒータの外部電極パッドと取出端子との接触部付近の軸方向断面図。
【図6】実施例4における、セラミックヒータの外部電極パッドと取出端子との接触部付近の軸方向断面図。
【図7】実施例5における、セラミックヒータの外部電極パッドと取出端子との接触部付近の軸方向断面図。
【図8】実施例5における、積層型ガスセンサ素子の斜視図。
【図9】実施例5における、ガスセンサの断面図。
【図10】従来例における、セラミックヒータを内蔵したガスセンサの軸方向断面図。
【図11】従来例における、セラミックヒータの外部電極パッドと取出端子との接合部付近の軸方向断面図。
【図12】従来例における、セラミックヒータの外部電極パッドと取出端子との別形態の接合部付近の軸方向断面図。
【符号の説明】
【0068】
1 セラミックヒータ
10 ヒータ基材
11 ヒータリード部
12 外部電極パッド
14 保護膜
2 取出端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が、貴金属からなる緻密な保護膜のみによって覆われていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が、貴金属からなる緻密な保護膜と、Crからなる緻密な保護膜とからなる保護層のみによって覆われていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記貴金属は、Au、Ag、Pt、Rh、Pdの少なくともいずれか一種以上からなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記外部電極パッドは、外表面の全体が、上記保護膜によって覆われていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は、タングステンからなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックヒータを製造する方法であって、上記外部電極パッドの外表面に上記貴金属からなる上記保護膜を形成するに当たって、上記外部電極パッドの外表面の少なくとも一部に、上記貴金属からなる上記保護膜を形成するための貴金属めっきを施した後、該貴金属の融点より150℃低い温度以上の温度で上記貴金属めっきを熱処理することを特徴とするセラミックヒータの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、上記熱処理は、上記貴金属の融点以上の温度で行うことを特徴とするセラミックヒータの製造方法。
【請求項8】
排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、外表面の少なくとも一部が、Crからなる緻密な保護膜のみによって覆われていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項9】
請求項8において、上記外部電極パッドは、外表面の全体が、上記保護膜によって覆われていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項10】
請求項8又は9において、上記外部電極パッド、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は、タングステンからなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項11】
排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、貴金属からなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項12】
請求項11において、上記外部電極パッドは、Au、Ag、Pt、Rh、Pdの少なくともいずれか一種以上からなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項13】
排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵されるセラミックヒータであって、
セラミック製のヒータ基材と、該ヒータ基材の内部に形成される発熱体と、上記ヒータ基材の外表面に設けられるとともに外部リードの取出端子と接触する外部電極パッドと、該外部電極パッドと上記発熱体とを接続するヒータリード部とを有し、
上記発熱体、及び上記ヒータリード部は卑金属からなり、
上記外部電極パッドは、Crからなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項において、上記発熱体、及び上記ヒータリード部は、タングステンからなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のセラミックヒータを内蔵することを特徴とするガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−270168(P2008−270168A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15160(P2008−15160)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】