説明

セラミック多孔体及びその製造方法

【課題】アルカリ性溶液と酸性溶液とに対する耐食性に優れ、それら溶液に頻繁に晒されるような過酷な環境下でも強度が低下しにくいセラミック多孔体を提供する。
【解決手段】10〜20質量%のZrOを含むガラス相と、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子とを含むセラミック多孔体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理に使用されるフィルターの基材(支持体)等として好適な、耐酸性及び耐アルカリ性に優れたセラミック多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体などの流体中に含まれる固形物(懸濁物質)を除去する固液分離用あるいは気固分離用のフィルターとして、セラミック多孔体からなるフィルター(セラミックフィルター)が広く使用されている。従来、このようなセラミックフィルターは、アルミナ等のセラミック粒子からなる骨材間がガラス質の結合相で結合された微構造を有する多孔体を基材(支持体)とし、その表面に基材の平均気孔径よりも小さい平均気孔径を有する多孔質膜を濾過膜等として一層以上積層したものが一般的である。
【0003】
ところで、このような固液分離用のセラミックフィルターは、使用時間の経過とともに、被処理流体中に含まれる懸濁物質がフィルターの気孔中に詰まり、透過性が低下してくるので、一定期間毎に薬洗や逆洗を行って、気孔中に詰まった懸濁物質を取り除く必要がある。
【0004】
薬洗とは、懸濁物質を溶解するのに適した薬液、例えば、水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ性溶液や、クエン酸水溶液のような酸性溶液を使用した洗浄処理であり、一般には、長時間の間に蓄積した懸濁物質を溶解させて取り除くために行われることが多い。また、逆洗とは、通常の濾過処理の際とは逆に、フィルターの流体透過側から被処理流体供給側へ圧力をかけて流体を流すことにより、気孔中に詰まった懸濁物質を除去し、系外へ排出する洗浄処理であり、一般には、短時間で蓄積した懸濁物質を除去するため、数分ないし数時間毎に、濾過処理の合間に行われることが多い。
【0005】
そして、セラミックフィルターには、この薬洗と逆洗との繰り返しにより、フィルター自身が浸食されて強度が低下するという問題がある。具体的には、薬洗時に薬液として用いられるアルカリ性溶液や酸性溶液により、主に基材の結合相であるガラス相が化学的に浸食され、その浸食により骨材間の強度が低下したところに、通常の濾過処理の際よりも高い圧力で逆洗が行われるため、当該圧力により更に物理的な浸食が起こり、その結果、基材全体、ひいてはフィルター全体の強度低下を招くことになる。
【0006】
これに対し、特許文献1には、初期強度を高めることで強度が低下しても必要な強度をある程度維持できるように工夫されたセラミック多孔体を用いたフィルターが開示されている。しかしながら、この種のセラミックフィルターは、今後、より過酷な使用環境、例えば、医薬・食品分野等の広範な分野において使用されることが見込まれ、将来的には薬洗や逆洗の頻度が増加する等、より過酷な洗浄条件に晒されることが予想されるため、アルカリ性溶液や酸性溶液に対する耐食性の更なる向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4136365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アルカリ性溶液と酸性溶液とに対する耐食性に優れ、それら溶液に頻繁に晒されるような過酷な環境下でも強度が低下しにくいセラミック多孔体とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のセラミック多孔体、セラミック多孔体の製造方法、及びセラミックフィルターが提供される。
【0010】
[1] 10〜20質量%のZrOを含むガラス相と、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子とを含むセラミック多孔体。
【0011】
[2] 前記ガラス相と前記骨材粒子との合計質量に対する前記ガラス相の質量割合が10〜30質量%である[1]に記載のセラミック多孔体。
【0012】
[3] 前記ガラス相が、55〜70質量%のSiOと、10〜20質量%のZrOと、合計2〜20質量%の一種以上のM(I)O(ただし、M(I)は、Li、Na及びKの内の何れかの元素を表す)とを含有する[1]又は[2]に記載のセラミック多孔体。
【0013】
[4] 前記ガラス相が、更に、1.5質量%以下のAl、合計4質量%以下の一種以上のM(II)O(ただし、M(II)は、Mg、Ca、Sr、Ba及びFeの内の何れかの元素を表す)、5質量%以下のTiO及び2質量%以下のBからなる群より選択される少なくとも一種の成分を含有する[3]に記載のセラミック多孔体。
【0014】
[5] 前記骨材粒子の平均粒径が5〜150μmである[1]〜[4]の何れかに記載のセラミック多孔体。
【0015】
[6] 気孔率が20〜50%である[1]〜[5]の何れかに記載のセラミック多孔体。
【0016】
[7] 平均気孔径が3〜50μmである[1]〜[6]の何れかに記載のセラミック多孔体。
【0017】
[8] 曲げ強度が10〜70MPaである[1]〜[7]の何れかに記載のセラミック多孔体。
【0018】
[9] pH2の硫酸水溶液である酸薬液中に100℃で3時間浸漬してから当該酸薬液を洗浄除去し、乾燥させた後、pH12の水酸化ナトリウム水溶液であるアルカリ薬液中に100℃で3時間浸漬してから当該アルカリ薬液を洗浄除去し、乾燥させるという操作を3回繰り返した後の曲げ強度(操作後強度)と、前記操作を行う前の曲げ強度(初期強度)とから下式(1)により算出される強度低下率が40%以下である[1]〜[8]の何れかに記載のセラミック多孔体。
強度低下率(%)=(初期強度−操作後強度)/初期強度×100 (1)
【0019】
[10] モノリス形状のセラミック多孔体である[1]〜[9]の何れかに記載のセラミック多孔体。
【0020】
[11] 固液分離用フィルターの基材として使用される[1]〜[10]の何れかに記載のセラミック多孔体。
【0021】
[12] 水処理用の固液分離用フィルターの基材として使用される[1]〜[10]の何れかに記載のセラミック多孔体。
【0022】
[13] ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子と、10〜20質量%のZrOを含むガラス粉末とを含む原料混合物を混練して得た坏土を、所定形状に成形し、得られた成形体を乾燥、脱脂及び焼成して、10〜20質量%のZrOを含むガラス相と、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される骨材粒子とを含むセラミック多孔体を得るセラミック多孔体の製造方法。
【0023】
[14] 前記焼成を800〜1100℃で行う[13]に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【0024】
[15] [1]〜[12]の何れかに記載のセラミック多孔体の表面に、当該セラミック多孔体の平均気孔径より小さな平均気孔径を有する多孔質セラミック膜を一層以上積層してなるセラミックフィルター。
【発明の効果】
【0025】
本発明のセラミック多孔体は、骨材間を結合するガラス相(結合相)が、従来のようなアルカリ性溶液や酸性溶液に対する耐食性が低いガラス相ではなく、ZrOを所定の割合で含有する耐食性が高いガラス相であるので、アルカリ性溶液や酸性溶液に対して優れた耐食性を発揮し、それら溶液に頻繁に交互に晒されるような過酷な環境下でも強度が低下しにくい。更に、骨材粒子として、ガラス相との界面でガラス相中のZrOの結晶化を生じさせにくいZrO粒子又はSiC粒子を用いているので、ガラス相の組成の変化が抑制され、ガラス相の耐食性を長期間に渡って維持することができる。また、本発明の製造方法によれば、前記のような耐食性に優れたセラミック多孔体を、比較的低温で焼結させて、簡便に製造することができる。更に、本発明のセラミックフィルターは、本発明のセラミック多孔体を基材(支持体)として使用しているため、アルカリ性溶液や酸性溶液に対して優れた耐食性を発揮し、長期間に渡って高い強度を維持することができる。したがって、従来のセラミックフィルターの用途よりも、より過酷な洗浄条件に晒されるような用途、例えば、医薬・食品分野等において、固形物の除去に用いても、十分な強度を長期間に渡って維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】モノリス形状のセラミック多孔体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0028】
本発明のセラミック多孔体は、10〜20質量%のZrOを含むガラス相と、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子とを含むものである。
【0029】
前述のとおり、骨材間を結合する結合相がガラス相であるセラミック多孔質体が、酸性溶液やアルカリ性溶液に晒されたときの浸食は、それら溶液に対する耐食性が低いガラス相において進行するものであるので、セラミック多孔質体の耐食性を改善するためには、ガラス相の耐食性を向上させることが必要となる。
【0030】
本発明のセラミック多孔体は、骨材間を結合する結合相として、従来のアルカリ性溶液や酸性溶液に対する耐食性が低いガラス相ではなく、ZrOを高い割合で含有する、耐食性が高いガラス相を有するものであるので、アルカリ性溶液や酸性溶液に対して優れた耐食性を発揮する。
【0031】
本発明のセラミック多孔体において、ガラス相に含まれるZrOの割合は、ガラス相全体の10〜20質量%である。また、当該割合の下限については、12質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。ZrOの割合が10質量%未満では、アルカリ性溶液や酸性溶液に対して十分な耐食性が発現しない。一方、ZrOの割合が20質量%を超えると、ZrOが結晶化することで、所望のガラス相の組成となりにくくなるとともに、十分な耐食性が発現しなくなる。
【0032】
より具体的な組成としては、ガラス相が、55〜70質量%のSiOと、10〜20質量%のZrOと、合計2〜20質量%の一種以上のM(I)O(ただし、M(I)は、Li、Na及びKの内の何れかの元素を表す)とを含有することが好ましい。なお、M(I)Oについては、その内の少なくとも一種として、LiOを含有する場合には、その含有量が3質量%以下であることが好ましく、NaOを含有する場合には、その含有量が15質量%以下であることが好ましく、KOを含有する場合には、その含有量が8質量%以下であることが好ましい。また、これら以外の成分として、更に、1.5質量%以下のAl、合計4質量%以下の一種以上のM(II)O(ただし、M(II)は、Mg、Ca、Sr、Ba及びFeの内の何れかの元素を表す)、5質量%以下のTiO及び2質量%以下のBからなる群より選択される少なくとも一種の成分を含有していても良い。このような組成を有するガラス相であれば、アルカリ性溶液や酸性溶液に対して良好な耐食性が発現する。
【0033】
本発明のセラミック多孔体は、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子を含む。従来、セラミックフィルターの基材等に用いられるセラミック多孔体には、その耐食性の高さ等から、骨材粒子としてAl粒子を用いたものが広く使用されているが、Al粒子を骨材粒子とし、その骨材粒子間を、前記のようなZrOを高い割合で含有するガラス相で結合した場合には、骨材粒子(Al粒子)とガラス相との界面でガラス相中のZrOの結晶化が生じやすく、それによりガラス相の組成が変化して耐食性が低下する。
【0034】
そこで、本発明のセラミック多孔体においては、骨材粒子として、それ自体の耐食性がAl粒子と比べても遜色が無く、更に、ZrOを高い割合で含有するガラス相で結合した場合でも、ガラス相との界面でガラス相中のZrOの結晶化を生じさせにくいZrO粒子又はSiC粒子を用いている。
【0035】
本発明のセラミック多孔体において、このような骨材粒子の平均粒径は、5〜150μmであることが好ましい。また、当該平均粒径の範囲は、下限については8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。上限については120μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。骨材粒子の平均粒径が5μm未満では、得られるセラミック多孔体の気孔径が小さくなりすぎ、フィルターとしての特性が低下する場合があり、一方、150μmを超えると、成形がしにくくなる場合がある。なお、本明細書にいう「平均粒径」は、JIS R 1629に準拠したレーザー回折散乱法によって粒度分布測定した値であり、体積基準の平均粒径である。
【0036】
本発明のセラミック多孔体においては、ガラス相と骨材粒子との合計質量に対するガラス相の質量割合が10〜30質量%であることが好ましい。また、当該割合の範囲は、下限については12質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。上限については28質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。このガラス相の質量割合が10質量%未満であると、十分な強度が発現できなくなる場合があり、一方、30質量%を超えると、気孔率が小さくなりすぎ、フィルターとしての特性(透水量)が低下する場合がある。
【0037】
本発明のセラミック多孔体は、その気孔率が20〜50%であることが好ましい。また、当該気孔率の範囲は、下限については22%以上であることがより好ましく、25%以上であることが更に好ましい。上限については48%以下であることがより好ましく、45%以下であることが更に好ましい。気孔率が20%未満では、例えば、固液分離用のセラミックフィルターの基材に用いた場合に、十分な透過水量が得られにくい場合がある。一方、気孔率が50%を超えると、十分な強度が得られない場合がある。なお、本明細書にいう「気孔率」とは、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定した値をいう。
【0038】
本発明のセラミック多孔体は、その平均気孔径が3〜50μmであることが好ましい。また、当該平均気孔径の範囲は、下限については5μm以上であることがより好ましく、7μm以上であることが更に好ましい。上限については40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。平均気孔径が3μm未満では、例えば、固液分離用のセラミックフィルターの基材に用いた場合に、十分な透過水量が得られにくい場合がある。一方、平均気孔径が50μmを超えると、十分な強度が得られない場合がある。なお、本明細書にいう「平均気孔径」とは、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)によって測定した値をいう。
【0039】
本発明のセラミック多孔体は、その曲げ強度が10〜70MPaであることが好ましい。また、当該曲げ強度の範囲は、下限については15MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることが更に好ましい。上限については65MPa以下であることがより好ましく、60MPa以下であることが更に好ましい。曲げ強度が10MPa未満では、セラミックフィルターの基材等として用いた場合に、アルカリ性溶液や酸性溶液による浸食がなくても破損が生じる可能性がある。一方、曲げ強度が70MPaを超えることは、特に問題はないが、セラミックフィルターの基材等に必要な気孔率を確保しつつ、そのような強度のものを製造することは、実質的には困難である。なお、本明細書にいう「曲げ強度」とは、JIS R 1601に準拠した曲げ強度試験によって測定した値をいう。
【0040】
本発明のセラミック多孔体は、pH2の硫酸水溶液である酸薬液中に100℃で3時間浸漬してから当該酸薬液を洗浄除去し、乾燥させた後、pH12の水酸化ナトリウム水溶液であるアルカリ薬液中に100℃で3時間浸漬してから当該アルカリ薬液を洗浄除去し、乾燥させるという操作を3回繰り返した後の曲げ強度(操作後強度)と、前記操作を行う前の曲げ強度(初期強度)とから下式(1)により算出される強度低下率が40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
強度低下率(%)=(初期強度−操作後強度)/初期強度×100 (1)
【0041】
この強度低下率が40%以下であれば、固液分離用のセラミックフィルターの基材のように、アルカリ性溶液と酸性溶液とに交互に繰り返し晒されるものに用いた場合にも、十分な耐食性を発揮する。
【0042】
本発明のセラミック質多孔体の形状は、特に限定されるものではなく、その用途に応じて任意の形状とすることができる。例えば、固液分離用フィルターの基材として使用する場合は、当該基材の一般的な形状として従来広く知られているモノリス形状とすることが好ましい。
【0043】
本発明のセラミック質多孔体は、その用途が特に限定されるものではないが、前記のようにアルカリ性溶液や酸性溶液に対する耐食性に優れるという性質を有することから、水処理等に使用される固液分離用フィルターの基材のような当該性質を有効に活用できる用途が好ましい。特に、従来のセラミックフィルターの用途よりも、より過酷な洗浄条件に晒されるような用途、例えば、医薬・食品分野等において使用される固液分離用フィルターは、頻繁に薬洗や逆洗が必要となるため、その基材として本発明のセラミック質多孔体を使用することは、その性質を有効に活用できる点で非常に好ましい。
【0044】
次に、本発明のセラミック質多孔体の製造方法について説明する。本発明のセラミック質多孔体の製造方法は、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子と、10〜20質量%のZrOを含むガラス粉末とを含む原料混合物を混練して得た坏土を、所定形状に成形し、得られた成形体を乾燥、脱脂及び焼成して、10〜20質量%のZrOを含むガラス相と、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子とを含むセラミック多孔体を得るものである。
【0045】
本製造方法に用いられる、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子は、本発明のセラミック多孔体における骨材粒子についての説明で述べたように、その平均粒径が、5〜150μmであることが好ましい。また、当該平均粒径の範囲は、下限については8μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。上限については120μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0046】
また、本製造方法に用いられるガラス粉末は、骨材粒子間を結合するガラス相を形成するためのものであり、本製造方法により得ようとするセラミック多孔体のガラス相と同じ割合でZrOを含有する。すなわち、このガラス粉末は、10〜20質量%のZrOを含有するものである。なお、ガラス粉末に含まれるZrOの割合の下限については、12質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。
【0047】
このガラス粉末は、本発明のセラミック多孔体におけるガラス相と同様に、55〜70質量%のSiOと、10〜20質量%のZrOと、合計2〜20質量%の一種以上のM(I)O(ただし、M(I)は、Li、Na及びKの内の何れかの元素を表す)とを含有することが好ましい。M(I)Oについては、その内の少なくとも一種として、LiOを含有する場合には、その含有量が3質量%以下であることが好ましく、NaOを含有する場合には、その含有量が15質量%以下であることが好ましく、KOを含有する場合には、その含有量が8質量%以下であることが好ましい。また、これら以外の成分として、更に、1.5質量%以下のAl、合計4質量%以下の一種以上のM(II)O(ただし、M(II)は、Mg、Ca、Sr、Ba及びFeの内の何れかの元素を表す)、5質量%以下のTiO及び2質量%以下のBからなる群より選択される少なくとも一種の成分を含有していても良い。なお、ガラス粉末はフリットなどのガラス原料を溶融し、急冷して、ガラス化したものを粉砕して得た粉末でも良いし、焼成過程においてガラス化するガラス原料の混合物であっても良い。
【0048】
骨材粒子とガラス粉末との配合割合は、本発明のセラミック多孔体におけるガラス相と骨材粒子との好適な質量割合と同様である。すなわち、ガラス粉末と骨材粒子との合計質量に対するガラス粉末の質量割合が10〜30質量%であることが好ましい。また、当該質量割合の範囲は、下限については12質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。上限については28質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0049】
原料混合物に配合する成分としては、上述した骨材粒子とガラス粉末以外にも、例えば、有機バインダー、分散剤、界面活性剤及び水等を挙げることができる。
【0050】
有機バインダーの具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0051】
分散剤や界面活性剤の具体例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩、脂肪族四級アンモニウム塩、脂肪族アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(又はソルビトール)脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルベタイン、アミンオキサイド、カチオン性セルロース誘導体等を挙げることができる。
【0052】
原料混合物を混錬して可塑性の坏土とし、この坏土を所定の形状となるように成形して成形体を得る。坏土の好ましい作製方法の例としては、まず、ガラス粉末と、分散剤と、水とを混合してガラススラリーを得、このガラススラリーに、骨材粒子と、有機バインダーと、界面活性剤と、適量の水とを加えて混練する方法が挙げられる。
【0053】
成形体の形状は特に限定されず、用途に応じた種々の形状とすることができる。例えば、固液分離用のセラミックフィルターの基材等として用いる場合は、モノリス形状とすることが好ましい。坏土をモノリス形状に成形するには、例えば押出成形等の成形方法を採用することが好ましい。
【0054】
得られた成形体を、適当な乾燥方法によって乾燥した後、焼成すれば、本発明のセラミック多孔体を製造することができる。乾燥方法は特に限定されないが、例えばマイクロ波、熱風等を用いる乾燥方法が好ましい。また、成形体を乾燥した後、焼成する前に、成形体中の有機物(有機バインダー等)を燃焼させて除去するための、仮焼(脱脂、脱バインダー等ともいう)を適宜行うことができる。一般に、有機バインダーの燃焼温度は100〜300℃程度であるので、仮焼温度は200〜600℃程度とすればよい。仮焼時間には特に制限はないが、通常は、1〜10時間程度である。仮焼雰囲気は、大気雰囲気、窒素雰囲気等適宜選択できる。
【0055】
焼成温度は、800〜1100℃とすることが好ましく、850〜1050℃とすることがより好ましく、900〜1000℃とすることが更に好ましい。SiC粒子単独あるいはZrO粒子単独でセラミック多孔体(焼結体)を得る場合は、通常、1200〜2300℃程度の焼成温度が必要であるが、本発明の製造方法においては、ガラス粉末が含まれているため、前記のような低い焼成温度でも高い耐食性と強度とを備えたセラミック多孔体を得ることが可能である。なお、焼成温度が800℃未満では、焼結が十分に進行しない場合がある。一方、焼成温度が1100℃を超えると、骨材粒子とガラス相との反応が起こり、所望のガラス相成分を維持できなくなる場合があるとともに、コストや製造歩留まりの面で不利になる傾向にある。焼成時間には特に制限はないが、通常は、0.5〜10時間程度である。焼成雰囲気は、大気雰囲気、窒素雰囲気等適宜選択できる。
【0056】
次に、本発明のセラミックフィルターについて説明する。本発明のセラミックフィルターは、本発明のセラミック多孔体の表面に、当該セラミック多孔体の平均気孔径より小さな平均気孔径を有する多孔質セラミック膜を一層以上積層してなるものである。
【0057】
このセラミックフィルターは、アルカリ性溶液や酸性溶液に対して高い耐食性を有する本発明のセラミック多孔体を基材(支持体)として使用しているため、前記溶液に対して優れた耐食性を発揮し、長期間に渡って高い強度を維持することができる。したがって、従来のセラミックフィルターの用途よりも、より過酷な洗浄条件に晒されるような用途、例えば、医薬・食品分野等において、固形物の除去に用いても、十分な強度を長期間に渡って維持することが可能である。
【0058】
本発明のセラミックフィルターの好適な形態としては、例えば、本発明のセラミック多孔体を基材とし、その表面に基材の平均気孔径より小さな平均気孔径を有する濾過膜を形成したものが挙げられる。濾過膜は、セラミックフィルターの濾過機能を担う多孔質のセラミック膜である。また、基材と濾過膜との間に、基材の平均気孔径より小さく、濾過膜の平均気孔径よりは大きい平均気孔径を有する中間膜を形成してもよい。更に、これら基材と膜の端部は、当該端部を包み込むように形成されたシール部によってシールされていることが好ましい。このシール部により、被処理流体が、濾過膜を透過せずに、基材や中間膜の端面から基材や中間膜の内部に直接侵入することを防止することができる。
【0059】
本発明のセラミックフィルターの作製方法の一例としては、まず、ZrO粒子等のセラミック粒子、あるいは、本発明のセラミック多孔体の製造方法に用いたガラス粉末と同様の組成を有するガラス粉末とZrO粒子等のセラミック粒子との混合物と、必要に応じて分散剤や有機バインダーや界面活性剤と、水とを、ポットミル等で混合するとともに、セラミック粒子、あるいは、セラミック粒子とガラス粉末との混合物を平均粒径0.1〜3μm程度になるまで解砕して、セラミック膜形成用スラリーを調製する。次いで、図1に示すようなモノリス形状のセラミック質多孔体1を、その外周面とセル2の内部とが隔離されるように、セラミック質多孔体の外周両端部にO−リングを装着してフランジ内に固定する。
【0060】
そして、セラミック膜形成用スラリーを送液ポンプによりセル内に連続的に循環供給しながら、真空ポンプによってセラミック質多孔体の外周面側を減圧して、外周面側とセル内との間に差圧を付与し、セル内を流れる濾過膜用スラリーを外周面側から吸引してセル内面に付着させ、セラミック膜を形成する。こうして、セラミック膜を形成したセラミック多孔体を乾燥した後、700〜1000℃程度の温度で焼成し、セラミック多孔体からなる基材のセルの内表面に多孔質セラミック膜が形成されたセラミックフィルターを得る。
【0061】
なお、多孔質セラミック膜を複数層形成する場合は、前記のような膜の形成、乾燥、焼成の工程を複数回繰り返す。その際、セラミック膜形成用スラリーに含まれるセラミック粒子の平均粒径を、回数を重ねる毎に徐々に小さくすれば、基材から最も表層にある多孔質セラミック膜(濾過膜)に向かって平均気孔径が徐々に小さくなるセラミックフィルターが得られる。
【0062】
更に、多孔質セラミック膜を複数層形成する場合は、被処理流体が、濾過膜を透過せずに、基材や中間膜の端面から基材や中間膜の内部に直接侵入することを防止するために、基材と膜の端部において、当該端部を包み込むようにシール部を形成することが好ましい。例えば、基材端部とその近傍に、シール剤を施し、乾燥あるいは熱処理により、被処理流体の透過性が著しく低いシール部を形成させることができる。シール剤を構成する成分としては、ガラス状物質や、熱可塑性重合体、熱硬化性重合体などを適宜選択することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1〜9並びに比較例1及び2)
まず、表1に示す組成のガラス粉末A〜Eを用意し、これら各ガラス粉末に、水と分散剤とを加えて、ポットミルにより、ガラス粉末の平均粒径が10μm以下となるまで粉砕することによりガラススラリーを得た。なお、何れのガラス粉末を用いたガラススラリーにおいても、ガラススラリー全体に対するガラス粉末の割合は35質量%である。また、分散剤は、ガラス粉末に対して0.5質量%加えた。
【0065】
次に、表2及び3に示す割合で、ZrO骨材粒子(平均粒径15μm)、SiC骨材粒子A(平均粒径65μm)、SiC骨材粒子B(平均粒径104μm)及びAl骨材粒子(平均粒径55μm)の内の何れかの骨材粒子と、前記何れかのガラス粉末を含むガラススラリーと、有機バインダーと、界面活性剤と、水とを混合して可塑性の坏土を得、これを押出成形により、25mm×50mm×5mmの角板状に成形し、乾燥して成形体を得た。この成形体を、450℃で仮焼(脱脂)した後、表2及び3に示す焼成温度で同表に示す時間焼成し、実施例1〜9並びに比較例1及び2のセラミック多孔体を得た。
【0066】
こうして得られたセラミック多孔体について、下記の方法により、気孔率、平均気孔径、曲げ強度及び強度低下率を求め、その結果を表2及び3に示した。
【0067】
[気孔率]
セラミック多孔体から、10mm×25mm×5mmの測定用試料を切り出し、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)により測定した。
【0068】
[平均気孔径]
セラミック多孔体から、8mm×10mm×5mmの測定用試料を切り出し、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により測定した。
【0069】
[曲げ強度]
JIS R 1601に準拠して測定した。
【0070】
[強度低下率]
テフロン製の内壁の圧力容器に、酸薬液(pH2の硫酸水溶液)とセラミック多孔体を、セラミック多孔体全体が酸薬液中に浸かるように入れ、密閉して100℃で3時間保持してから、セラミック多孔体を取り出して、酸薬液を洗浄除去し、十分に乾燥させた。その後、同じくテフロン製の内壁の圧力容器に、アルカリ薬液(pH12の水酸化ナトリウム水溶液)と先程のセラミック多孔体を、セラミック多孔体全体がアルカリ薬液中に浸かるように入れ、密閉して100℃で3時間保持してから、セラミック多孔体を取り出して、アルカリ薬液を洗浄除去し、十分に乾燥させた。以上の操作を3回繰り返した後、前記した曲げ強度の測定方法と同様の方法で、3回操作後の曲げ強度(操作後強度)を求め、その値と操作前の曲げ強度(初期強度)の値とから、下式(1)により算出した。
強度低下率(%)=(初期強度−操作後強度)/初期強度×100 (1)
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
表2及び3に示すとおり、骨材粒子として、ガラス相との界面でガラス相中のZrOの結晶化を生じさせやすいAl骨材粒子を用いた比較例1のセラミック多孔体と、ZrOを含まないガラス粉末Eを用いたガラススラリーにより骨材粒子間のガラス相を形成した比較例2のセラミック多孔体は、強度低下率が50%前後と非常に高く、アルカリ性溶液や酸性溶液に繰り返し晒されるフィルターの基材には適さないものであった。これに対し、ZrOを所定の割合で含むガラス粉末A〜Dを用いたガラススラリーにより骨材粒子間のガラス相を形成するとともに、骨材粒子として、ガラス相との界面でガラス相中のZrOの結晶化を生じさせにくいZrO骨材粒子又はSiC骨材粒子を用いた実施例1〜9のセラミック多孔体は、フィルターの基材として好適な気孔率、平均気孔径、曲げ強度を有し、強度低下率も概ね許容範囲であった。
【0075】
(実施例10及び11)
表4に示す割合で、ZrO骨材粒子(平均粒径15μm)及びSiC骨材粒子(平均粒径65μm)の内の何れかの骨材粒子と、前記ガラス粉末Aを含むガラススラリーと、有機バインダーと、界面活性剤と、水とを混合して可塑性の坏土を得、これを押出成形により、図1に示すようなモノリス形状(外径:φ30mm×1000mmL、セル数:55個、セルの孔径:2mm)に成形し、乾燥して成形体を得た。この成形体を、450℃で仮焼(脱脂)した後、表4に示す焼成温度で2時間焼成し、実施例10及び11のモノリス形状セラミック多孔体を得た。
【0076】
こうして得られたモノリス形状セラミック多孔体について、前記実施例1〜9並びに比較例1及び2と同様に、気孔率、平均気孔径、曲げ強度及び強度低下率を求め、その結果を表4に示した。
【0077】
【表4】

【0078】
表4に示すとおり、ZrOを所定の割合で含むガラス粉末Aを用いたガラススラリーにより骨材粒子間のガラス相を形成するとともに、骨材粒子として、ガラス相との界面でガラス相中のZrOの結晶化を生じさせにくいZrO骨材粒子又はSiC骨材粒子を用いた実施例10及び11のモノリス形状セラミック多孔体は、フィルターの基材として好適な気孔率、平均気孔径、曲げ強度を有し、強度低下率も概ね許容範囲であった。
【0079】
(実施例12)
表1に示す組成のガラス粉末Aと、平均粒径2μmのZrO粉末とに、水と分散剤と有機バインダーとを加え、ポットミルにて前記粉末の平均粒径が3μm以下となるまで粉砕することにより中間膜形成用スラリーを得た。なお、このときのZrO粉末とガラス粉末Aとの割合は質量比で9:1とし、これら粉末のスラリー中の濃度は合計25質量%とした。
【0080】
次いで、前記実施例10で得たモノリス形状セラミック多孔体を、その外周面とセルの内部とが隔離されるように、外周両端部にO−リングを装着してフランジ内に固定した。次に、前述の中間膜形成用スラリーを送液ポンプによりセル内に連続的に循環供給しながら、真空ポンプによってモノリス形状セラミック質多孔体の外周面側を減圧して、外周面側とセル内との間に差圧を付与し、セル内を流れる中間膜形成用スラリーを外周面側から吸引してセル内面に付着させ、中間膜を形成した。こうして、中間膜を形成したモノリス形状セラミック多孔体を乾燥した後、900℃の温度で焼成した。
【0081】
更に、この中間膜が形成されたモノリス形状セラミック多孔体を、その外周面とセルの内部とが隔離されるように、外周両端部にO−リングを装着してフランジ内に固定し、ジルコニアゾル(平均粒径50nm、濃度5質量%)を、送液ポンプによりセル内に連続的に循環供給しながら、真空ポンプによってモノリス形状セラミック多孔体の外周面側を減圧して、外周面側とセル内との間に差圧を付与し、セル内を流れるジルコニアゾルを外周面側から吸引してセル内面の中間膜上に付着させ、濾過膜を形成した。こうして、濾過膜を形成したモノリス形状セラミック多孔体を乾燥した後、850℃の温度で焼成し、モノリス形状セラミック多孔体からなる基材のセルの内表面に中間膜及び濾過膜が形成されたセラミックフィルターを得た。
【0082】
このセラミックフィルターについて、平均気孔径をエアーフロー法(ASTM F306に準拠)で測定したところ、0.6μmであり、基材の平均気孔径(8.0μm)よりも小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、水処理に使用されるフィルターの基材(支持体)等として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1:モノリス形状のセラミック多孔体、2:セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜20質量%のZrOを含むガラス相と、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子とを含むセラミック多孔体。
【請求項2】
前記ガラス相と前記骨材粒子との合計質量に対する前記ガラス相の質量割合が10〜30質量%である請求項1に記載のセラミック多孔体。
【請求項3】
前記ガラス相が、55〜70質量%のSiOと、10〜20質量%のZrOと、合計2〜20質量%の一種以上のM(I)O(ただし、M(I)は、Li、Na及びKの内の何れかの元素を表す)とを含有する請求項1又は2に記載のセラミック多孔体。
【請求項4】
前記ガラス相が、更に、1.5質量%以下のAl、合計4質量%以下の一種以上のM(II)O(ただし、M(II)は、Mg、Ca、Sr、Ba及びFeの内の何れかの元素を表す)、5質量%以下のTiO及び2質量%以下のBからなる群より選択される少なくとも1種の成分を含有する請求項3に記載のセラミック多孔体。
【請求項5】
前記骨材粒子の平均粒径が5〜150μmである請求項1〜4の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
【請求項6】
気孔率が20〜50%である請求項1〜5の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
【請求項7】
平均気孔径が3〜50μmである請求項1〜6の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
【請求項8】
曲げ強度が10〜70MPaである請求項1〜7の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
【請求項9】
pH2の硫酸水溶液である酸薬液中に100℃で3時間浸漬してから当該酸薬液を洗浄除去し、乾燥させた後、pH12の水酸化ナトリウム水溶液であるアルカリ薬液中に100℃で3時間浸漬してから当該アルカリ薬液を洗浄除去し、乾燥させるという操作を3回繰り返した後の曲げ強度(操作後強度)と、前記操作を行う前の曲げ強度(初期強度)とから下式(1)により算出される強度低下率が40%以下である請求項1〜8の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
強度低下率(%)=(初期強度−操作後強度)/初期強度×100 (1)
【請求項10】
モノリス形状のセラミック多孔体である請求項1〜9の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
【請求項11】
固液分離用フィルターの基材として使用される請求項1〜10の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
【請求項12】
水処理用の固液分離用フィルターの基材として使用される請求項1〜10の何れか一項に記載のセラミック多孔体。
【請求項13】
ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される何れか一種の骨材粒子と、10〜20質量%のZrOを含むガラス粉末とを含む原料混合物を混練して得た坏土を、所定形状に成形し、得られた成形体を乾燥、脱脂及び焼成して、10〜20質量%のZrOを含むガラス相と、ZrO粒子及びSiC粒子からなる群より選択される骨材粒子とを含むセラミック多孔体を得るセラミック多孔体の製造方法。
【請求項14】
前記焼成を800〜1100℃で行う請求項13に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜12の何れか一項に記載のセラミック多孔体の表面に、当該セラミック多孔体の平均気孔径より小さな平均気孔径を有する多孔質セラミック膜を一層以上積層してなるセラミックフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2010−228949(P2010−228949A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76465(P2009−76465)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】