説明

セラミック多層基板の製造方法

【課題】ブレイクパターンが変形してブレイク不良が発生する問題を改善できるセラミック多層基板の製造方法を提供する。
【解決手段】未焼成のセラミックシートの表面にブレイクパターンを形成し、それを積層してセラミック積層体を得た後、セラミック積層体を焼成してブレイクパターンを消失させ、空隙を形成する。ブレイクパターンの形成方法として電子写真法を用いることで、粒子径の大きなトナーを使用でき、積層圧着時にブレイクパターンの潰れを抑制し、アスペクト比の大きな空隙を形成できる。そのため、ブレイク不良を改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック多層基板の製造方法、詳しくは複数のセラミック層が積層されたセラミック多層基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では、セラミック多層基板を製造するため、複数のセラミックグリーンシートを準備し、その上に導体パターン等を形成し、積層・圧着して未焼成のセラミック積層体を得ている。そして、このセラミック積層体を焼成して焼成済みセラミック積層体を得た後、焼成済みセラミック積層体を子基板に分割して複数のセラミック多層基板を取り出している。
【0003】
特許文献1には、焼成済みセラミック積層体をセラミック多層基板に分割する手法として、少なくとも1つのセラミックグリーンシートの上に焼成により消失する材料を用いてブレイクパターンを形成し、焼成時にブレイクパターンを消失させて焼成済みセラミック積層体の内部に空隙を形成し、この空隙にそって焼成済みセラミック積層体をブレイクすることで、セラミック多層基板に分割する手法が開示されている。ブレイクパターンは、樹脂粒子やカーボン粒子を含むペースト状である。このペースト状材料を、スクリーン印刷法を用いてセラミックグリーンシートにパターン形成している。
【0004】
しかしながら、この方法ではブレイクパターンが変形してブレイク不良が発生するという問題がある。図15の(a)〜(c)は従来のブレイクパターンの形成、積層、ブレイクの各ステップを示す。図15の(a)は、セラミックグリーンシート100の上にブレイクパターン101を印刷した状態を示す。図15の(b)に示すように、ブレイクパターン101を印刷したセラミックグリーンシート100を積層する際、ブレイクパターン101が圧力により潰されて偏平化してしまう。ブレイクパターン101が潰されて広がる方向はブレイクしたい方向と垂直方向である。セラミック積層体を焼成した時、ブレイクパターン101が消失して空隙103が形成されるが、焼成済みセラミック積層体102をブレイクする時、次のような問題が発生することがある。
(1)ブレイクしたい方向の空隙103が狭い(溝が浅い)ため、ブレイクに大きな力が必要になる。
(2)大きな力をかけると、意図しない箇所からの割れが発生したり、図15の(c)のように空隙の先端からブレイク方向と垂直方向に走るクラック104が発生することがある。
【0005】
図16は、ブレイクパターン101が圧力により潰される様子を示す。ブレイクパターンは樹脂粒子やカーボン粒子を含むペーストで構成され、スクリーン印刷時には(a)のように粒子が積み重なっているが、セラミックグリーンシート100の積層・圧着時に(b)のように崩され、広がってしまう。その際、粒子径が小さい程、粒子が流動しやすく、パターンが変形する自由度が高いので、横に潰された形状になってしまう。そのため、このセラミック積層体を焼成すると、(c)のように焼成済みセラミック積層体102の内部には厚みの薄い空隙103しか形成できない。
【0006】
一方、図17の(a)に示すようにブレイクパターン101を構成する粒子の粒子径が大きい場合は、セラミックグリーンシート100の積層・圧着時に崩された場合でも(b)のように変形具合は小さく、ほぼ元の形状を保つことができる。そのため、(c)のように焼成済みセラミック積層体102の内部にアスペクト比の大きな空隙103を形成できる。
【0007】
上述のように積層・圧着時の潰れを考慮すると、ペースト中の粒子はできるだけ大きい方が望ましいが、粒子を大きくするとスクリーン版のメッシュに目詰まりを起こしてしまい、パターニング不良が発生してしまう。そのため、ペースト中の粒子径がスクリーン版の開口面積に制限され、積層・圧着時のブレイクパターンの潰れを防ぐことが出来ない。
【0008】
セラミック電子部品の中には、LCフィルタのように部品側面に電極を引き出す構造のものがある。しかし、従来技術のようにスクリーン印刷法でブレイクパターンを形成する場合には、以下に説明するように側面電極を形成することが困難である。図18はスクリーン印刷法でセラミックグリーンシート100上にブレイクパターン101と電極パターン105とを形成する方法を示し、(a)は印刷後のシート断面、(b)は焼成後の断面、(c)はブレイク後の断面である。スクリーン印刷では、電極パターンとブレイクパターンとが境界を接するように形成することはできないので、2つのパターンを重ねる必要がある。つまり、電極パターン105はブレイクパターン101をまたいで形成される。そのため、ブレイクする際、電極が隣同士の子基板にまたがって接続しているために、綺麗にブレイクできない。セラミックは、きっかけがあれば粒界破壊を起こし簡単にブレイクすることが可能であるが、金属材料の電極105は延性を持つため、ブレイクしようと力を加えても簡単に破断しない。無理やりブレイクすると、(c)のように電極105が延びてちぎれたり、電極部分がえぐれたりする不良になることがある。
【0009】
上記の問題を避けるために、図19に示すように、電極105間にギャップgを設ける構造も考えられるが、印刷にじみや印刷位置ズレ等の加工時のばらつきを考慮して、ブレイクパターン101と電極パターン105との間に重なり部(マージン)mを設ける必要があるだけでなく、次のような問題が発生する。
(1)扁平形状の空洞による構造欠陥の発生
ブレイクパターン101は厚さが薄く、幅が広いアスペクト比の小さい扁平な形状になり、あたかも電極105とセラミックシート100間に楔を打ち込んだ形になる。そのため、焼成時に収縮挙動の差により電極105とセラミック102の間に応力が発生した場合、空隙103の先端部からクラックが発生してしまう。同じような事が基板のブレイク時にも発生する。ブレイクのために基板を撓ませた場合、空隙103の先端部に電極105とセラミック102間を裂く方向の力が発生し、電極とセラミックの界面に沿ってクラック106等の構造欠陥が発生してしまう。
(2)側面電極との接続信頼性
電極間のギャップgのために、図19の(b)に示すように、ブレイク箇所によっては片方の電極105が端面からギャップ分だけ奥まった位置になることがある。空隙103の厚みはギャップより薄く、開口部に比べて奥行きが長いために、ブレイク後に側面電極として導電性ペーストを塗布しても、導電性ペーストが電極105と接続できず、オープン不良が発生する可能性がある。
以上のような理由から、従来技術のようなスクリーン印刷法でブレイクパターンを形成する場合には、側面に引き出す電極を形成することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2008/018227
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、積層時のブレイクパターンの変形を抑制し、ブレイク不良を改善できるセラミック多層基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、複数のセラミックシートを積層して未焼成のセラミック積層体を得る第1の工程と、前記未焼成のセラミック積層体を焼成して焼成済みセラミック積層体を得る第2の工程と、前記焼成済みセラミック積層体をブレイクして複数のセラミック多層基板を取り出す第3の工程と、を含むセラミック多層基板の製造方法において、前記第1の工程の前に、前記複数のセラミックシートのうち少なくとも一つのセラミックシートについて、焼成により消失するトナーを用いて電子写真法によりブレイクパターンを形成する工程を実施し、前記トナーは、第1の工程における積層時にブレイクパターンが潰れるのを抑制できる粒子径を持つ粒子で構成されており、前記第2の工程における焼成時に、前記ブレイクパターンが消失して前記焼成済みセラミック積層体の内部に空隙を形成し、前記第3の工程において、前記焼成済みセラミック積層体を前記空隙に沿ってブレイクすることを特徴とするセラミック多層基板の製造方法を提供する。なお、ここでいう粒子径とは、体積分布基準で50%になる体積平均粒子径で定義される。
【0013】
本発明では、未焼成のセラミックシートの表面にブレイクパターンを形成し、それを積層してセラミック積層体を得た後、セラミック積層体を焼成してブレイクパターンを消失させ、空隙を形成する点では従来と同様であるが、ブレイクパターンの形成方法として電子写真法を用いる点を特徴としている。電子写真法は、感光体の表面にパターン状の電荷の像(静電潜像)を形成し、その静電潜像にブレイクパターン形成用のトナーを静電的に付着させ、ブレイクパターン形成用のトナーによる像をセラミックシート上に転写した後、定着させるものである。
【0014】
冒頭で述べたようにスクリーン印刷法でブレイクパターンを形成する場合には、ペースト中の粒子径がスクリーン版の開口面積に制限され、積層・圧着時のブレイクパターンの潰れを防ぐことが出来ない。一般に、スクリーン印刷での粒子径は1〜3μm程度である。これに対し、本発明では電子写真法によりブレイクパターンを形成するため、スクリーン印刷法に比べて大きな粒子を使用することが可能である。パターン用材料であるトナーの粒子径を30μm程度まで大きくした場合でも、印刷性に問題なくパターンを形成することができる。そのため、従来技術の課題である積層・圧着時のパターン潰れを防止することができる。焼成によりトナーを消失させた時、焼成済みセラミック積層体の内部にアスペクト比の大きな空隙を形成できるので、ブレイク時にセラミック積層体は空隙を起点として粒界破壊を起こし、カット等の格別な工程を行わなくても、クラックや構造欠陥を発生させずに簡単にブレイクできる。単純に焼成済みセラミック積層体を撓めてブレイクする方法もあるが、焼成済みセラミック積層体の表面に空隙と重なる溝などを形成しておき、その溝に沿ってブレイクする方法や、レーザー等を用いてカットする方法もある。
【0015】
ブレイクパターン用トナーの粒子径をd、セラミックシートの厚みをtとしたとき、t/5≦d<tの範囲とするのが望ましい。d<t/5では、アスペクト比の大きな空隙を形成しにくくなり、一方t≦dであると、焼成時にセラミック積層体が割れてしまうからである。
【0016】
本発明で使用される消失材料よりなるトナーは、3〜30μmの粒子径を有する粒子を含むのが望ましい。このようにスクリーン印刷で使用できる粒子径よりも大きな粒子径を持つトナーを使用できるので、積層・圧着時にパターンの潰れを抑制することができる。
【0017】
消失材料よりなるトナーとしては樹脂粒子やカーボン粒子を含むものを用いることができる。樹脂材料としては、燃焼して消失する樹脂、又は高温になるとモノマーに分解する樹脂のうち、少なくとも1種類の樹脂とすることが望ましい。これら樹脂を単体で用いてもよいが、混合して用いることも可能である。
【0018】
セラミックシートはガラス成分を含み、消失材料よりなるトナーは、セラミックシートに含まれるガラス成分が流動する温度よりも低い温度で消失するものがよい。トナーが樹脂のようにセラミック中のガラスが流動する温度よりも低い温度で消失するものの場合、消失時に発生するガスの抜けをガラスに妨げられることがないため、ガス起因で発生する構造欠陥が起こりにくい。
【0019】
セラミックシートはガラス成分を含み、消失材料よりなるトナーは、セラミックシートに含まれるガラス成分が流動する温度よりも高い温度で消失するものでもよい。例えばトナーがカーボン粒子のようにセラミック中のガラスが流動する温度よりも高い温度で消失するものの場合、ガラスの流動・浸入によりブレイク用の空隙が狭まることを防ぐことができる。
【0020】
セラミックシート上には、ブレイクパターンの他に電極パターンが形成されるが、両パターンをスクリーン印刷法で形成する場合、電極パターンとブレイクパターンとが境界を接するように、正確に位置合わせすることは困難である。そのため、2つのパターンを重ねる必要があり、重なりに起因する種々の課題が発生する(図18、図19参照)。これに対し、ブレイクパターンを電子写真法で形成する場合には、電極パターンとブレイクパターンとを境界を接するように形成できる。
【0021】
例えば、電極パターンをセラミックシート上に形成した後で、電極パターンの位置に合わせてブレイクパターンを形成することができる。すなわち、電極パターンの位置ずれを予め測定し、そのずれ量をブレイクパターンの電子データにフィードバックすることで、電極パターンとブレイクパターンとのずれをスクリーン印刷法に比べて小さくすることができる。なお、本発明では電極パターンをスクリーン印刷で形成した後、ブレイクパターンを電子写真法で形成してもよいし、電極パターンとブレイクパターンとを共に電子写真法で形成してもよい。
【0022】
電極パターンとブレイクパターンとを共に電子写真法で形成する場合、ブレイクパターンと同時に電極パターンをセラミックシート上に形成することも可能である。その場合には、感光体上にまずブレイクパターンを現像し、このブレイクパターンが現像された感光体を再び帯電させ、この感光体を電極パターン状に露光する。その際、ブレイクパターンが形成された領域には光が届かないため、電荷が発生せず、表面電位を保持する。その上に電極パターンを現像すると、電極パターンは露光された感光体上に現像されるが、ブレイクパターン上には現像されない。そのため、電極パターンとブレイクパターンとが交差している箇所でも、ブレイクパターンに隙間なく隣接して電極パターンを現像できる。感光体上に現像されたブレイクパターンと電極パターンとをセラミックシート上に転写すれば、ブレイクパターンと電極パターンとが境界を接してセラミックシート上に形成できる。この場合には、ブレイクされたセラミック多層基板の側面に露出する引き出し電極を容易に形成でき、この引き出し電極と導通する側面電極を形成するのが容易になる。
【0023】
第1の工程において、セラミックシートを電子写真法により形成することも可能である。この場合には、ブレイクパターン、電極パターンの他に、セラミックシートも電子写真法で形成できるので、セラミック部分の残り代を調整でき、ブレイク性の調整が可能になる。すなわち、ブレイクパターン及び電極パターンと対向するセラミックシート部分の厚みを薄くし、パターンと対向しないセラミックシート部分の厚みを厚くすることで、セラミックシートの積層・圧着時にブレイクパターン及び電極パターンが変形するのを抑制できる。また、表面に段差のないセラミックシートを形成できるので、基板の平坦性が向上するという利点がある。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係るセラミック多層基板の製造方法によれば、ブレイクパターンを電子写真法で形成するため、消失材料よりなるトナーとして粒子径の大きな粒子を用いることができ、積層・圧着時のパターンの潰れを抑制できる。そのため、焼成によりトナーを消失させた時、焼成済みセラミック積層体の内部にアスペクト比の大きな空隙を形成でき、クラックや構造欠陥を発生させずにセラミック多層基板に簡単にブレイクすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセラミックグリーンシートの製造工程を示す断面図である。
【図2】図1に示すセラミックグリーンシートの平面図である。
【図3】図1に示すセラミックグリーンシートを積層し、焼成した焼成済みセラミック積層体の断面図である。
【図4】ブレイクパターン用トナーの例の断面図である。
【図5】焼成済みセラミック積層体の他の例の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るセラミックグリーンシートの製造工程を示す断面図である。
【図7】導電性トナーの幾つかの例を示す断面図である。
【図8】ブレイクパターンと電極パターンを電子写真法で形成するセラミック多層基板の製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るセラミックシートの例を示す断面図である。
【図10】図9に示すセラミックシートの製造工程を示す図である。
【図11】セラミックトナーの例を示す断面図である。
【図12】実施例1に適した電子写真印刷装置の概略構成図である。
【図13】実施例2に適した電子写真印刷装置の概略構成図である。
【図14】実施例3に適した電子写真印刷装置の概略構成図である。
【図15】従来技術におけるブレイクパターンを形成したセラミック多層基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図16】粒子径の小さい粒子を用いてブレイクパターンを形成したセラミック多層基板の製造方法を示す工程図である。
【図17】粒子径の大きい粒子を用いてブレイクパターンを形成したセラミック多層基板の製造方法を示す工程図である。
【図18】従来技術におけるブレイクパターンと電極パターンとをスクリーン印刷法により形成する方法の一例を示す図である。
【図19】従来技術におけるブレイクパターンと電極パターンとをスクリーン印刷法により形成する方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
−第1実施形態−
図1〜図3は本発明に係るセラミック多層基板の製造方法の第1実施形態を示す。まず、セラミック多層基板の製造方法の概要を説明する。図1,図2は複数枚準備されるセラミックグリーンシートの中の1つを示す。
【0027】
図1は、セラミックグリーンシートの製造工程を示す。図1では1個のセラミック多層基板に相当するセラミックグリーンシート部分を示してあるが、実際には図2に示すように、1枚のセラミックグリーンシート1上に複数の電極パターン2がマトリックス状に規則的に形成されている。1つの電極パターン2が形成された部分が1つのセラミック多層基板に相当する。セラミックグリーンシート1として、低温焼成セラミック材料(LTCC)を使用することができる。この場合には、Au、Ag、Cu等の導電ペースト材料と同時焼成ができるので、好適である。
【0028】
まず図1の(a)のように、適切な位置にビア導体3が形成されたセラミックグリーンシート1を準備する。ビア導体3は、公知のようにセラミックグリーンシート1にレーザー加工等により貫通孔を形成した後、その孔に導電ペーストを充填することで形成できる。
【0029】
次に、図1の(b)のように、ビア導体3を形成したセラミックグリーンシート1上に、導電ペーストをスクリーン印刷することにより、セラミック多層基板の内部電極、内部配線、内層素子となる電極パターン2を形成する。電極パターン2のうち、ランド部2aがビア導体3の上に形成され、接続される。なお、スクリーン印刷法以外に、インクジェット印刷、熱転写印刷、グラビア印刷、直接描画印刷等の公知の配線パターン形成法を利用できる。なお、形成された電極パターン2の基準位置からのズレ量を測長機により測定し、電子データとして求めておくのがよい。
【0030】
図1の(c)は、電極パターン2を形成したセラミックグリーンシート1上に、電子写真法でブレイクパターン4を形成した状態を示す。このとき、ブレイクパターン4の電子データ(ビットマップ)を先に求めたズレ量分だけ補正することで、正確な位置にブレイクパターン4を形成できる。
【0031】
ブレイクパターン4は、図2に示すように、各電極パターン2の間を仕切るように格子状に形成されている。このブレイクパターン4は、焼成時に消失する樹脂粒子及び/又はカーボン粒子よりなるトナーで構成されており、粒子は例えば3〜30μmの粒子径を有する。ブレイクパターン4は子基板であるセラミック多層基板の境界(ブレイクライン)に相当し、ブレイクパターン4の外側の領域がマージンである。トナーを構成する樹脂材料としては、アクリル系、スチレンアクリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ブチラール系等の燃焼して消失する樹脂、又は高温になるとモノマーに分解する樹脂のうちより選ばれた少なくとも1種類の樹脂とすることが望ましい。また、これら樹脂を単体で用いてもよいが、混合して用いることも可能である。トナーを構成する材料として、樹脂に限らず焼成時に消失するカーボン等でも構わない。
【0032】
図4はブレイクパターン形成用トナーの構造の例を示す。(a)は樹脂トナー40であり、帯電制御剤42を含む樹脂材料41によって粒子状としたもの、(b)はカーボントナー43であり、カーボン粒子44を樹脂材料45で固めて粒子状としたものである。これらトナー40,43の粒子径は、セラミックグリーンシートの積層・圧着時にブレイクパターンが潰れるのを抑制できる粒子径、例えば3〜30μmの粒子径とされている。積層・圧着時にブレイクパターンが潰れるのを抑制できる粒子径の目安は、シート厚の1/5以上である。セラミックグリーンシートの一般的な厚みは15〜150μmであり、トナー粒子径が3〜30μmであれば、積層・圧着時にブレイクパターンが潰れるのを抑制できる。焼成時にセラミック積層体が割れるのを防止するには、ブレイクパターン用トナーの粒子径dをセラミックシートの厚みtより小さくする必要があるので、結局、t/5≦d<tの範囲とするのがよい。なお、ブレイクパターン形成用トナーの成分や構造は、これらに限るものではない。
【0033】
図1の(c)に示すセラミックグリーンシート1を複数枚積層することで、図3の(a)に示す未焼成のセラミック積層体10を得る。積層時に電極パターン2及びブレイクパターン4がセラミックグリーンシート1間に挟まれるように、セラミックグリーンシート1を積層する。その際、各層のブレイクパターン4がセラミックグリーンシート1の厚み方向に並ぶように、かつビア導体3が所定の電極2間を接続できるように、セラミックグリーンシート1を位置合わせして積層する。ブレイクパターン4を構成するトナーの粒子径が大きいので、積層時のブレイクパターン4の潰れが少ない。未焼成のセラミック積層体10を焼成することで、図3の(b)に示す焼成済みセラミック積層体11を得ることができる。焼成時にブレイクパターン4が消失するので、焼成済みセラミック積層体11の内部に空隙12が形成される。積層時のブレイクパターン4の潰れが少ないため、アスペクト比の大きな空隙12になる。そのため、焼成済みセラミック積層体11に対してブレイクライン13に沿ってブレイク負荷を加えると、セラミック層は簡単に粒界破壊を起こし、クラックや構造欠陥を発生させずに綺麗にブレイクすることが可能である。
【0034】
図5は、第1実施形態と同様の方法で形成した未焼成のセラミック積層体10’の他の例を示す。この例では、セラミックグリーンシート1の一層おきにブレイクパターン4を形成してある。そのうち、最上層のセラミックグリーンシート1上にブレイクパターン4を形成することで、ブレイク時の目印とすることができる。このようにブレイクパターン4は、焼成済みセラミック積層体のブレイク性を考慮して任意の層に形成できる。
【0035】
−第2実施形態−
図6は、電極パターン及びブレイクパターンを共に電子写真法で形成するセラミックグリーンシートの形成方法の一例を示す。まず(a)のように、予めビア導体21を形成したセラミックグリーンシート20を準備する。次に(b)のように、セラミックグリーンシート20上に前述と同様なブレイクパターン形成用トナーを用いてブレイクパターン22を電子写真法で形成する。次に、セラミックグリーンシート20上に、導電性トナーを用いて電極パターン23を電子写真法で形成する。このとき、電極パターン23の一部がビア導体21上に載るように形成する。こうして電極パターン23及びブレイクパターン22を形成したセラミックグリーンシート20を、複数枚積層して未焼成のセラミック積層体を得た後、焼成することで、焼成済みセラミック積層体を得ることができる。この場合も、ブレイクパターン22として粒子径の大きなトナーを用いることで、アスペクト比の大きな空隙を形成でき、焼成済みセラミック積層体のブレイク性が向上する。なお、電極パターン23及びブレイクパターン22の形成順序は、電極パターン23が先でもよいし、両パターン22,23を同時にセラミックグリーンシート20上に形成してもよい。
【0036】
導電性トナーとしては、図7に示すような、いくつかの種類がある。図7の(a)は球形の導電性材料50aの周囲をガラスなどの無機材料50bで被覆し、その周囲を帯電制御剤50cを含む樹脂材料50dで被覆したトナー50、(b)は導電性材料51aの周囲を帯電制御剤51bを含む樹脂材料51cで被覆したトナー51、(c)は導電性材料52aの周囲に無機材料52bを付着させ、その周囲を帯電制御剤52cを含む樹脂材料52dで被覆したトナー52、(d)は粉状の導電性材料53aを無機材料53bと一緒に樹脂材料53cで固めたトナー53である。なお、導電性トナーの構造はこれらに限るものではない。
【0037】
図8は、電極パターンとブレイクパターンとを電子写真法でセラミックグリーンシート上に同時形成する方法の一例を示す。特に、電極パターンとブレイクパターンとが接する場合、つまりセラミック多層基板の側面に側面電極を形成する場合に好適な方法である。
【0038】
まず図8の(A)のように、感光体24上に焼成時に消失するトナーでブレイクパターン22を現像する。具体的には、感光体24を帯電させ、ブレイクパターン形状に露光し、静電潜像を形成した後、この潜像にブレイクパターン用トナーを現像させればよい。
【0039】
次に、図8の(B)のように、ブレイクパターン22が形成された感光体24を再び帯電させる。このとき、ブレイクパターン22も帯電する。
【0040】
次に、図8の(C)のように、帯電した感光体24を電極パターン形状に露光する。このとき、ブレイクパターン22が形成された箇所は光が感光体24中の電荷発生層に届かないため、電荷が発生しない。そのため、露光を終了した後も図8の(D)のように、ブレイクパターン22上は帯電された状態を保持する。
【0041】
次に、図8の(E)のように、露光後の感光体24に導電性トナーで電極パターン23を現像する。感光体24上には電極パターン23が問題なく現像されるが、ブレイクパターン22上は表面電位が保持されているため現像されない。つまり、電極パターン23とブレイクパターン22が交差した場所では、両者が重なることなく、境界を接した状態で現像される。なお、現像バイアス調整によって、ブレイクパターン22よりも電極パターン23を薄く現像することもできる。
【0042】
次に、図8の(F)のように、感光体24上の電極パターン23とブレイクパターン22とをセラミックグリーンシート20に転写する。これによって、図8の(F−2)のように、セラミックグリーンシート20上に、ブレイクパターン22と電極パターン23とが隙間なく接触した状態で形成される。
【0043】
次に、図8の(G)のように、セラミックグリーンシート20を積層し、焼成する。焼成済みセラミック積層体25内部に、ブレイクパターンによってアスペクト比の大きな空隙26が形成される。
【0044】
図8の(H)は、空隙26にそって焼成済みセラミック積層体25をブレイクして子基板27とした状態を示す。ブレイクの際、空隙上には電極パターン23が存在しないので、電極23が延びてちぎれたり、電極部分がえぐれたりする不良は発生しない。子基板27のブレイク面に電極パターン(引き出し電極)23が露出するので、そこに導電ペーストを塗布することで、電極パターン23と確実に導通した側面電極28を形成することができる。
【0045】
−第3実施形態−
図9の(a),(b)は、電極パターン、ブレイクパターンだけでなく、セラミック層も電子写真法で形成したセラミックシートの2つの例を示す。図9の(a)のセラミックシート30Aは、セラミック層31上に電極パターン32を形成し、ブレイクパターン33をセラミック層31を貫通するように形成したものである。特に、ブレイクパターン33に重ならないようにセラミック層31を形成することで、セラミック層31の厚み方向に貫通するブレイクパターン33を形成できる。この場合には、セラミックシート30Aの表面に電極パターン32やブレイクパターン33による段差がないため、積層性、基板の平坦性が向上すると共に、積層時におけるパターン崩れがなく、綺麗なパターンを形成できる。また、ブレイクパターン33により形成される空隙は、セラミック積層体の厚み方向に深い空隙となるので、よりブレイク性が向上する。
【0046】
図9の(b)のセラミックシート30Bは、ブレイクパターン33がセラミック層31の厚み方向中間で止まるように形成した例である。この場合には、電極パターン32の一部に厚肉部32aが形成され、この厚肉部32aがセラミック層31を貫通している。すなわち、厚肉部32aに重ならないようにセラミック層31を形成することで、厚み方向に貫通するビア導体32aとすることができる。この場合も、(a)と同様に積層性、基板の平坦性が向上すると共に、ブレイク性が向上する。
【0047】
図10は電極パターン32、ブレイクパターン33及びセラミック層31を電子写真法で形成するセラミックシートの製造方法の一例の概要を示す。まず図10の(a)のように、転写体34の上にブレイクパターン用トナーを用いてブレイクパターン33を形成する。次に、図10の(b)のように導電性トナーを用いて転写体34の上に電極パターン32を形成する。このとき、ブレイクパターン33を厚く形成してもよいし、電極パターン32の一部32aを厚肉に形成してもよい。ブレイクパターン33と電極パターン32の形成順序はいずれが先でもよい。転写体34としては、PETフィルムのような耐熱性のある樹脂フィルムを用いてもよいし、金属薄板を用いてもよい。
【0048】
次に、図10の(c)のように、電極パターン32及びブレイクパターン33が形成された転写体34に、セラミックトナーを用いてセラミック層31を形成する。このとき、セラミック層31のパターン形状と厚みとを設定することにより、電極パターン32及びブレイクパターン33による段差のない平坦なセラミックシート30を得ることができる。転写体34上に、上記と同様の手法で電極パターン32、ブレイクパターン33及びセラミック層31を積層し、転写体34から剥離することで、未焼成のセラミック積層体を得ることができる。このセラミック積層体を焼成すれば、焼成済みセラミック積層体が得られる。積層時に電極パターン32、ブレイクパターン33が崩れないので、綺麗なパターンを形成できると共に、焼成により形成される空隙のアスペクト比が大きくなるので、ブレイク性が良好となる。
【0049】
セラミックトナーとしては、図11の(a)のような、セラミック粉60aとガラス粉60bとを樹脂材料60cで固めて粒子状としたもの60でもよいし、(b)のように、セラミック粉61aを樹脂材料61bで固めて粒子状としたもの61でもよい。その他、電子写真法で使用できるセラミックトナーであれば、組成や構造は任意である。
【0050】
第3実施形態において、ブレイクパターン33、電極パターン32、セラミック層31の形成順序は、上記の順に限らず、任意に変更できる。すなわち、セラミック層31を先に形成し、その後でブレイクパターン33、電極パターン32を形成することもできる。また、転写体34上にブレイクパターン33、電極パターン32及びセラミック層31を順次形成して積層する例を示したが、これに限るものではなく、例えば感光体上でブレイクパターン、電極パターン、セラミック層を重ね、これを一体に転写体に転写してもよいし、各パターンを積層体上で重ねてもよい。
【0051】
−実施例1−
次に、第1実施形態に対応した具体的な製造方法を以下に説明する。
【0052】
〔セラミックグリーンシートの作製〕
(1)セラミック材料にはBa、Al、Siを中心とした組成からなる材料(BAS材)を用い、各素材を所定の組成になるよう調合、混合し、800-1000℃で仮焼する。
(2)(1)で得られた仮焼粉末をジルコニアボールミルで12時間粉砕し、セラミック粉末を得る。
(3)(2)で得られたセラミック粉末に、トルエン・エキネンなどの有機溶媒を加え混合する。さらにバインダー、可塑剤を加え混合しスラリーを得る。
(4)得られたスラリーをドクターブレード法により成形し、厚さ40umのグリーンシートを得る。
【0053】
セラミック材料は、前記材料に限定されるものでなく、絶縁性のものであればよい。例えば、フォルステライトにガラスを加えたものや、CaZrOにガラスを加えたものなど他のものを用いてもよい。
【0054】
〔電極形成用ペーストの作製〕
(1)体積平均粒子径2umのCu粉80wt%とエチルセルロース等からなるバインダー樹脂に溶剤を添加する。
(2)(1)で得られたサンプルを3本ロールで攪拌、混合し電極形成用ペーストを得た。
【0055】
電極形成用ペーストの導電性材料としては、Cu、Ni、Co、Ag、Pd、Rh、Ru、Au、Pt、Ir等の遷移金属群より選ばれた少なくとも1種類の金属とすることが望ましい。またこれら金属を単体で用いてもよいが、合金として用いることも可能である。更にこれらの金属の酸化物を用いてもよい。
【0056】
〔ブレイクパターン形成用トナーの作製〕
(1)アクリルビーズ(体積平均粒子径:20μm、5μm)と外添剤を混合し、表面処理機にてアクリルビーズ表面に外添剤を均一に付着させる。
(2)(1)の操作によって得られたアクリルビーズトナーとキャリアを混合し、現像剤を得た。
【0057】
ブレイクパターン形成用トナーを構成する樹脂材料としては、アクリル系、スチレンアクリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ブチラール系等の燃焼して消失する樹脂または高温になるとモノマーに分解する樹脂のうちより選ばれた少なくとも1種類の樹脂とすることが望ましい。またこれら樹脂を単体で用いてもよいが、混合して用いることも可能である。トナーを構成する樹脂ビーズの体積平均粒子径(ほぼトナーの体積平均粒子径と同じ)は3μm〜30μmの範囲が好ましい。30μm以上になるとトナー粒子径が大きくなり、微細なブレイクパターンの形成が困難になる。3μm以下になると、外添処理時に凝集しやすくなるため、帯電性の良好なトナーが形成しにくいからである。ここでは、樹脂ビーズを使用したが、トナーを構成するものは樹脂に限らず、焼成時に消失するカーボン等でも構わない。トナー構成材料が樹脂のようにセラミック中のガラスが流動する温度よりも低い温度で消失するものの場合、消失時に発生するガスの抜けをガラスに妨げられることがないため、ガス起因で発生する構造欠陥が起こりにくい。トナー構成材料がカーボンのようにセラミック中のガラスが流動する温度よりも高い温度で消失するものの場合、ガラスの流動・浸入によりブレイク用の空隙が狭まることを防ぐことができる。
【0058】
〔スクリーン印刷による電極パターン形成〕
充填済みのビアが形成されたセラミックグリーンシートのシート面に、スクリーン印刷で内層電極パターンを形成する。ここではスクリーン印刷によって電極パターンを形成したが、その他、インクジェット印刷、熱転写印刷、グラビア印刷、直接描画印刷、等の公知の配線パターン形成法を好適に利用できる。
【0059】
〔電子写真法によるブレイクパターン形成〕
(1)スクリーン印刷により形成された電極パターンの位置ズレ量を測長機により測定する。
(2)ブレイクパターンの電子データ(ビットマップ)を(1)で求めたズレ量分だけ補正する。電子データの補正は、中心位置の調整、倍率の調整、局所的な伸び・縮みの調整、画像の回転調整、などを行うことができる。
(3)感光体を一様に帯電させる。感光体は正帯電、負帯電のどちらの方式も利用できる。
(4)帯電した感光体にLEDにてブレイクパターンのパターン状に光を照射し、潜像を形成する。ブレイクパターンは複数個の子基板を区画するように格子状とした。またライン幅は50μmとした。露光はLEDに限らずレーザーなどの公知の方法をとることができる。
(5)現像バイアスをかけ感光体上にブレイクパターン形成用トナーを現像する。現像バイアスを変化させることでブレイクパターンの膜厚を調整することが可能である。現像バイアス(絶対値)を大きくした場合、膜厚は大きくなる。
(6)ブレイクパターンが現像された感光体とセラミックグリーンシートを重ね、トナーをセラミックグリーンシートに転写する。ブレイクパターンの膜厚は、現像剤のトナー濃度を変化させトナー帯電量を調整することでも可能である。トナー濃度を大きくし、トナー帯電量を小さくすると、ブレイクパターンは厚くなる。
(7)ブレイクパターンが転写されたセラミックグリーンシートをオーブンに入れてトナーを定着させ、ブレイクパターンが形成されたセラミックグリーンシートを得た。トナーの定着方法は、オーブンに限らず熱ロール定着、フラッシュ定着、溶剤定着、圧力定着等の公知技術を使用することができる。
【0060】
電子写真法としては、上記に限らず、次のような方法を使用してもよい。例えば、2成分現像法に限らず1成分現像法でも実施できる。1成分系の場合、キャリアを必要としないので、キャリアがグリーンシートに付着して構造欠陥や信頼性低下を引き起こす心配がない。またトナー濃度調整も必要がないため、印刷機が簡素で済み小型化できる。感光体からの直接転写方式以外に、感光体から直接グリーンシートに転写せず、中間転写体を介してもよい。グリーンシートは厚みやバインダー毎に幾つか種類があり各々抵抗が違う。そのため感光体上からパターンを静電気力により転写する際に転写効率が変化してしまい、転写不良が発生する場合がある。それを避けるために、感光体から中間転写体に静電気力で一旦転写し、中間転写体からグリーンシートへ熱ロールなどで転写する手法がある。中間転写体はエンドレスベルト、ドラム、短冊フィルム等を用いることができる。実施例1は逆現像方式を採用したが、正現像方式で印刷してもよい。ブレイクパターンをセラミック基板端に露出させた場合、パターン消失時に発生するガスが抜けやすく、ガス起因の構造欠陥が発生しにくい。
【0061】
〔シート積層〜焼成〕
(1)必要な層について電極パターン形成およびブレイクパターン形成を行う。
(2)すべての層を積層し、圧着して未焼成のセラミック積層体を得る。
(3)未焼成のセラミック積層体を焼成することで、電極を形成すると共に、ブレイクパターンによって空隙を形成する。
(4)表面の所定部位にメッキを施す。
(5)IC、SMDの実装を行う。
(6)空隙に沿ってブレイクすることで、子基板に分割する。
【0062】
収縮抑制層を積層基板の上下に貼り付けたり、内層に入れたりしてもよい。収縮抑制層はxy方向(平面方向)の収縮を抑制するため、厚み方向の収縮量が大きくなる。そのため、焼結後のセラミック基板内に形成される空隙の厚み方向の間隔を狭くしブレイク性を向上させる効果がある。
【0063】
従来方法と本発明でのブレイク実験の結果を表1に示す。内層電極の基板端からのギャップは40〜150μmの範囲で設計した。焼成後の基板(t=0.6 mm)をブレイクし、基板端面からの電極の露出、基板端面からのクラックについて比較を行った。スクリーン印刷法では、内層電極とブレイクパターンの位置ズレにより、電極の露出がかなりの頻度で発生した。また内層電極と基板端面までのギャップが小さくなっているものでは、クラックが確認された。それに対し、電子写真法では電極露出は確認されず、設計値40μmと実使用領域よりもギャップが小さいもので、クラックが数個観察されたのみであった。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1の効果は次の通りである。
(1)内層電極パターンの位置に合わせてブレイクパターンを印刷することができるため、印刷位置ズレを無くすことができる。
(2)本発明では、パターン中に含まれる樹脂の粒子径を30μm程度まで大きくすることが出来る。そのため、従来技術(スクリーン印刷法)で問題であったプレス時のブレイクパターンの潰れを防止することができ、扁平でない厚みのある空洞を形成できる。その結果、従来技術のようなブレイク不良が発生しない。
【0066】
−実施例2−
実施例2では、実施例1とは電極パターンの形成方法が異なるが、他の方法は同様である。実施例1では電極パターンをスクリーン印刷法で形成したのに対し、実施例2では電子写真法で形成する。セラミックグリーンシート、ブレイクパターン用トナーは実施例1と共通である。
【0067】
〔電極形成用導電性トナーの作製〕
(1)銅粉(体積平均粒子径5.5μm)と樹脂を混合し、表面処理機を用いて銅粉表面に樹脂を被覆する。
(2)(1)のサンプルを分級し微粉と粗粉を除去する。
(3)(2)の操作によって得られたカプセル銅紛と外添剤を混合し、表面処理機にてカプセル銅紛表面に外添剤を均一に付着させる。
(4)(3)の操作によって得られたカプセル銅紛とキャリアを混合し現像剤を得た。
【0068】
導電性トナーを構成する導電性材料としてはCu、Ni、Co、Ag、Pd、Rh、Ru、Au、Pt、Ir等の遷移金属群より選ばれた少なくとも1種類の金属とすることが望ましい。またこれら金属を単体で用いてもよいが、合金として用いることも可能である。更にこれらの金属の酸化物を用いてもよい。トナーを構成する導電性材料の体積平均粒子径は0.1μm〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましい範囲は、0.5μm〜7μmである。7μm以上になると、トナー粒子径が大きくなり、電極の表裏面粗さが大きくなるため、高周波特性が悪化するからである。0.5μm以下になると、樹脂被覆時に凝集しやすくなるため、帯電性の良好なトナーが形成しにくい。トナーの体積平均粒子径は0.75〜15μmであり、より好ましい体積平均粒子径は、1〜10μmである。10μm以上になると電極の表裏面粗さが大きくなるため、高周波特性が悪化する。1μm以下になると外添処理時に凝集しやすくなるため、帯電性の良好なトナーが形成しにくいからである。導電性材料の含有率は10〜95wt%、より好ましい含有率は30〜70wt%である。含有率が95wt%以上になると、トナー中の樹脂が少なくなり表面に導電性材料が露出し帯電性が悪化する。また10wt%以下になると、焼成した後の電極パターンの抵抗が高くなってしまう。
【0069】
電極形成用トナーの作製方法は機械式被覆法に限らず、混練粉砕法や湿式重合法、湿式転層乳化法などの公知の方法をとることができる。金属表面をAlO、ZrO、SiOなどの無機材料でコートした粉末を原料にすることもできる。絶縁性のためにトナーの樹脂被覆が不十分な場合でも良好な帯電性を保つことができる。トナーには帯電制御剤を添加してもいい。正の荷電制御物質としては、例えば、ニグロシン塩基類及びその誘導体、四級アンモニウム塩、ナフテン酸又は高級脂肪酸塩類、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、トリフェニルメタン染料、側鎖にこれら正極性物質をもつオリゴマーあるいはポリマー、四級ピリジニウム、高級脂肪酸の金属塩を用いえる。負の荷電制御物質としては、例えば、含金属(Cr又はFe)アゾ錯体染料、サリチル酸又はその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体を用いえる。トナーにガラスやセラミックなどの無機材料を添加してもよい。焼成によりセラミックとの接合力が向上し構造欠陥の発生を防止することができる。トナー被覆樹脂としては、アクリル系、スチレンアルリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ブチラール系等の良好な帯電特性を有し、また焼成中に燃焼、分解、溶融、気化などにより消失し導電性粉末の真表面が露出するものが好ましい。
【0070】
〔電子写真法によるブレイクパターン形成〕
(1)感光体を一様に帯電させる。
(2)露光装置にて帯電した感光体にブレイクパターン状に光を照射し、潜像を形成する。
(3)現像バイアスをかけ感光体上に、ブレイクパターン用トナーを現像する。
【0071】
〔電子写真法による電極パターン形成〕
(1)ブレイクパターンが形成された感光体を一様に帯電させる。
(2)露光装置にて帯電した感光体に電極パターン状に光を照射し潜像を形成する。引き出し電極部はブレイクパターンに重なるように光を照射する。
(3)現像バイアスをかけ感光体上にトナーを現像する。現像バイアス値はブレイクパターンを印刷したバイアス値よりも小さくする(絶対値)。そうすることでブレイクパターン上に電極パターンが印刷されない。
(4)ブレイクパターンおよび電極パターンが現像された感光体とビアが形成されたセラミックグリーンシートを重ね、トナーをセラミックグリーンシートに転写する。
(5)ブレイクパターンと電極パターンが転写されたセラミックグリーンシートをオーブンに入れトナーを定着させ、ブレイクパターンおよび電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを得た。トナーの定着方法はオーブンに限らず熱ロール定着、フラッシュ定着、溶剤定着等の公知技術を使用することができる。
今回は感光体上でブレイクパターン、電極パターンを重ねたが、とくに引き出し電極がない場合などは中間転写体上やセラミックグリーンシート上で重ねてもよい。
【0072】
〔シート積層〜焼成〜側面電極塗布〕
(1)必要な層についてビア形成、電極パターン形成、ブレイクパターン形成を行う。
(2)すべての層を積層し、圧着して未焼成のセラミック積層体を得る。
(3)このセラミック積層体の焼成を行うことで、電極パターンを焼き付けると共に、ブレイクパターンによって焼成済みセラミック積層体の内部に空隙を形成する。
(4)空隙にそって焼成済みセラミック積層体をブレイクすることで、子基板に分割する。
(5)ブレイクした子基板の側面に、必要に応じて導電性ペーストにより側面電極を形成する。
【0073】
実施例2では、実施例1と同様の効果に追加して、ブレイク面に露出する引き出し電極が形成できるため、側面電極として導電性ペーストを塗布した時、導電性ペーストが引き出し電極と確実に接続でき、オープン不良を防止できるという効果がある。
【0074】
−実施例3−
実施例1、2とはセラミック層の形成方法が異なる。実施例1、2では、セラミックシートがスラリーを成形したセラミックグリーンシートであるのに対し、実施例3ではセラミックトナーを電子写真法で印刷したセラミックシートである。
【0075】
〔セラミックトナーの作製〕
(1)セラミック粉末とポリエステル樹脂を混合機を用いて混練し、ポリエステル中にセラミック粉末を分散させる。
(2)(1)のサンプルを粉砕機により粗粉砕する。
(3)(2)で得られたサンプルをラボジェットミルにより微粉砕し、所望の粒子径に仕上げる。
(4)(3)で得られたサンプルを、気流式分級機により粗粉・微粉とに分級する。
(5)(3)で得られたサンプルと外添剤を混合し表面処理機にてサンプル表面に外添剤を均一に付着させる。
【0076】
〔電子写真法によるブレイクパターン形成〕
(1)感光体を一様に帯電させる。
(2)露光装置にて帯電した感光体にブレイクパターン状に光を照射し潜像を形成する。
(3)現像バイアスをかけ感光体上にトナーを現像する。
【0077】
〔電子写真法による電極パターン形成〕
(1)ブレイクパターンが形成された感光体を一様に帯電させる。
(2)露光装置にて帯電した感光体に電極パターン状に光を照射し潜像を形成する。引き出し電極部はブレイクパターンに重なるように光を照射する。
(3)現像バイアスをかけ感光体上にトナーを現像する。
【0078】
〔電子写真法によるセラミック層の形成〕
(1)ブレイクパターンと電極パターンが形成された感光体を一様に帯電させる。
(2)露光装置にて帯電した感光体にセラミック層パターン状に光を照射し潜像を形成する。
(3)現像バイアスをかけ感光体上にセラミックトナーを現像する。
(4)ブレイクパターン、電極パターンおよびセラミック層パターンが現像された感光体を転写基材に重ね、トナーを転写基材に転写する。
(5)ブレイクパターン、電極パターンおよびセラミック層パターンが転写された基材にフラッシュランプを照射し、トナーを定着させる。
今回は感光体上でブレイクパターン、電極パターン、セラミック層を重ねたが、中間転写体上や積層体上で重ねてもよい。
【0079】
〔シート積層〜焼成〜側面電極塗布〕
(1)必要な層について電極パターン形成、ブレイクパターン形成、セラミック層パターン形成を行う。1層分ごとに基材に逐次転写し、基材上で必要な層が重なった積層体を形成する。
(2)すべての層を印刷積層し、圧着する。
(3)焼成を行う。
(4)子基板に分割する。
(5)必要に応じて導電性ペーストにより側面電極を形成する。
スクリーン印刷法でも電極パターンやブレイクパターンの形成後にセラミックシートを印刷形成することで、ブレイクパターンの潰れを防止することは可能であるが、印刷の位置ずれがあるため、実際上困難である。その点、電子写真法では電極パターンやブレイクパターンのずれ量を予め測定し、そのずれ量をセラミック層パターンの電子データにフィードバックすることで、位置ずれの問題を解消できる。
【0080】
実施例3では、実施例1、2の効果に加え、セラミック部分の残り代を調整できるため、ブレイク性の調整が可能になる。また、パターン形成段階でセラミック層の表面に段差がないので、基板の平坦性が向上すると共に、電極パターン及びブレイクパターンがセラミック層の積層・圧着時に押しつぶされないので、パターン崩れがなく、精度の高いパターンを形成できる。
【0081】
図12〜図14は電子写真印刷装置の幾つかの例を示す。図12は実施例1に適した電子写真印刷装置70の例を示し、71は感光体、72は帯電器、73は露光装置、74はブレイクパターン用トナーの現像器、75は転写器、76は定着装置、77はクリーナーである。この例では、電極パターンを印刷済みのセラミックグリーンシートS又は転写基材に、ブレイクパターンを直接転写し、熱定着させることができる。
【0082】
図13は実施例2に適した電子写真印刷装置80の例を示す。この例では、感光体81の周囲に、帯電器82、露光装置83に続いて、ブレイクパターン用トナーの現像器84と導電性トナーの現像器85とが設けられている。86はクリーナーである。感光体81とセラミックグリーンシートSとの間にドラム型中間転写体87が設けられている。なお、セラミックグリーンシートSを間にして中間転写体87との対向位置には転写ローラ88が配置され、中間転写体87の下流側にはセラミックグリーンシートS又は転写基材上のトナーを定着させるフラッシュ定着装置89が設けられている。この印刷装置80では、まずブレイクパターン用トナーで感光体81上にブレイクパターンを現像し、次に導電性トナーで感光体81上に電極パターンを現像する。ブレイクパターンと電極パターンを中間転写体87に転写する。そして、中間転写体87上に転写されたブレイクパターン及び電極パターンを一緒にセラミックグリーンシートS又は転写基材に圧力転写し、定着装置89で定着させるものである。
【0083】
図14は実施例3に適した電子写真印刷装置90の例を示す。この例は、エンドレスベルト型の中間転写体91を備え、その上方に3組の現像装置92〜94が配置されたタンデム方式の電子写真印刷装置である。中間転写体91は、駆動プーリ91a、ガイドプーリ91b及び転写ローラ91cを備え、それらの間にエンドレスベルト91dが巻き掛けられている。ベルト91dの上部には、ベルトの移動方向にそって、ブレイクパターン用トナーの現像装置92、導電性トナーの現像装置93、セラミックトナーの現像装置94が順に配置されている。各現像装置92〜94は、それぞれ感光体、帯電器、露光装置、現像器、クリーナーを備えている。また、ベルト91dを間にして各感光体と対向する位置にはそれぞれ転写器92a〜94aが設けられている。ベルト91d及び転写基材95を間にして転写ローラ91cと対向する位置には、支持ローラ96が配置されている。現像装置92〜94によってベルト91dに転写されたブレイクパターン、電極パターン及びセラミック層は、転写基材95の上に転写ローラ91cと支持ローラ96とによって一緒に転写された後、転写基材95の移動方向下流側に配置された定着装置(プレス装置)97によって圧力定着される。その後、転写基材95から剥離することで、ブレイクパターン及び電極パターンが形成された未焼成セラミックシートを得ることができる。実施例3で使用するブレイク用トナーはパターン潰れがないため、より細かいものを使用できる。具体的には、0.5〜30μmの粒子径が望ましい。
【符号の説明】
【0084】
1 セラミックグリーンシート
2 電極パターン
3 ビア導体
4 ブレイクパターン
10 未焼成セラミック積層体
11 焼成済みセラミック積層体
12 空隙
13 ブレイクライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミックシートを積層して未焼成のセラミック積層体を得る第1の工程と、
前記未焼成のセラミック積層体を焼成して焼成済みセラミック積層体を得る第2の工程と、
前記焼成済みセラミック積層体をブレイクして複数のセラミック多層基板を取り出す第3の工程と、を含むセラミック多層基板の製造方法において、
前記第1の工程の前に、前記複数のセラミックシートのうち少なくとも一つのセラミックシートについて、焼成により消失するトナーを用いて電子写真法によりブレイクパターンを形成する工程を実施し、
前記トナーは、第1の工程における積層時にブレイクパターンが潰れるのを抑制できる粒子径を持つ粒子で構成されており、
前記第2の工程における焼成時に、前記ブレイクパターンが消失して前記焼成済みセラミック積層体の内部に空隙を形成し、
前記第3の工程において、前記焼成済みセラミック積層体を前記空隙に沿ってブレイクすることを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
【請求項2】
前記トナーの粒子径をd、前記セラミックシートの厚みをtとしたとき、
t/5≦d<t
であることを特徴とする、請求項1に記載のセラミック多層基板の製造方法。
【請求項3】
前記トナーの粒子径は3〜30μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセラミック多層基板の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックシートはガラス成分を含み、
前記トナーは、前記セラミックシートに含まれるガラス成分が流動する温度よりも低い温度で消失することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセラミック多層基板の製造方法。
【請求項5】
前記セラミックシートはガラス成分を含み、
前記トナーは、前記セラミックシートに含まれるガラス成分が流動する温度よりも高い温度で消失することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のセラミック多層基板の製造方法。
【請求項6】
前記セラミックシート上に、電子写真法により電極パターンを形成する工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のセラミック多層基板の製造方法。
【請求項7】
前記ブレイクパターンと前記電極パターンとが接するように、前記ブレイクパターン及び前記電極パターンを電子写真法により形成することを特徴とする請求項6に記載のセラミック多層基板の製造方法。
【請求項8】
前記セラミックシートは電子写真法により形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のセラミック多層基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−165992(P2011−165992A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28424(P2010−28424)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】