説明

セラミック多層基板

【課題】セラミック多層基板を用いた電子部品実装工程における歩留まりを改善することを目的としたセラミック多層基板を提供する。
【解決手段】アルミナ成分とガラス成分を有するグリーンシートを焼成することに形成されたセラミック基板部2と、セラミック基板部2内部に形成された内部配線パターン3と、セラミック基板部2の表面に形成された外部配線パターン4と、セラミック基板部2に形成され、内部配線パターン3、もしくは前記外部配線パターン4に接続され、導電性ペーストが充填されたビア5と、内部配線パターン3、もしくは外部配線パターン4が形成される配線部6と、配線部6の周辺に配置された非配線部7と、を有するセラミック多層基板1において、非配線部7に、ビア5に充電された導電性ペーストと同一の導電性ペーストが充填されたダミービア8を設けたこと、を特徴とするセラミック多層基板1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック多層基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック多層基板は、耐熱性・耐湿性に優れ、また、高周波回路において良好な周波数特性を有することから、モバイル機器のRF(Radio Frequency)モジュール、放熱性を利用したパワーLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)用の基板や液晶のバックライト向けLED用の基板、また、自動車搭載用の電子制御回路用の基板として用いられている。
現在、このセラミック多層基板の平面寸法は、下記特許文献1に示すように、約100mm角のセラミック多層基板が用いられていた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1に記載されている)。
【0003】
また、現在のセラミック多層基板の平面方向の反りは、セラミック多層基板一辺が100mmの正方形のものの場合、35umから200um程度(一般には約100um)となっていた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献2に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/087845号
【特許文献2】特開2008−251782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子機器の高密度化に伴い、このセラミック多層基板のビア(ビア材が充填されたスルーホール)の間隔が200um以下と、ビア間隔の狭ピッチ化が進んでいる。
【0006】
そのビア間隔の狭ピッチ化に伴い、セラミック多層基板の製造工程において、従来のセラミック多層基板の平面方向の反りの形状とは、異なった形状の反りが生じるようになってきた。
【0007】
図1は、セラミック多層基板の反りの形状を示す斜視図を示すもので、図1(a)は従来の反りの形状(おわん型反り)のセラミック多層基板の反りの形状を示す斜視図、図1(b)は、本願の解決しようとする課題のセラミック多層基板の反りの形状(鞍型反り)を示す斜視図を示すものである。
【0008】
従来のセラミック多層基板の反りの形状は、図1(a)に示すような反り(以下、おわん型反りと記述する)であった。しかし、近年のセラミック多層基板のビア間隔の狭ピッチ化とセラミック多層基板の内部配線部の高密度化に伴い、ラミック多層基板の反りの形状は、図1(b)に示すように、今までにはない、特殊な形状の反り(以下、鞍型反りと記述する)は生じることを見出した。
【0009】
このようなセラミック多層基板の鞍型反りが生じてしまうと、セラミック多層基板上に、半導体チップ等の電子部品を実装する際、セラミック多層基板自身や、実装しようとする電子部品が破損してしまい、その結果として、セラミック多層基板を用いた電子部品実装工程における歩留まりが低下するという課題を有していた。
【0010】
そこで、本発明は、セラミック多層基板の鞍型反りの発生を抑制することによって、セラミック多層基板を用いた電子部品実装工程における歩留まりを改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、この目的を達成するために本発明は、アルミナ成分とガラス成分を有するグリーンシートを焼成することに形成されたセラミック基板部と、前記セラミック基板部内部に形成された内部配線パターンと、前記セラミック基板部の表面に形成された外部配線パターンと、前記セラミック基板部に形成され、前記内部配線パターン、もしくは前記外部配線パターンに接続され、導電性ペーストが充填されたビアと、前記内部配線パターン、もしくは前記外部配線パターンが形成される配線部と、前記配線部の周辺に配置された非配線部と、を有するセラミック多層基板において、前記非配線部に、前記ビアに充電された前記導電性ペーストと同一の導電性ペーストが充填されたダミービアを設けたこと、を特徴とするセラミック多層基板とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明は、アルミナ成分とガラス成分を有するグリーンシートを焼成することに形成されたセラミック基板部と、前記セラミック基板部内部に形成された内部配線パターンと、前記セラミック基板部の表面に形成された外部配線パターンと、前記セラミック基板部に形成され、前記内部配線パターン、もしくは前記外部配線パターンに接続され、導電性ペーストが充填されたビアと、前記内部配線パターン、もしくは前記外部配線パターンが形成される配線部と、前記配線部の周辺に配置された非配線部と、を有するセラミック多層基板において、前記非配線部に、前記ビアに充電された前記導電性ペーストと同一の導電性ペーストが充填されたダミービアを設けたこと、を特徴とするセラミック多層基板としたものであるので、セラミック多層基板を用いた電子部品実装工程における歩留まりを改善することができる。
【0013】
すなわち、本発明においては、前記非配線部に、前記ビアに充電された前記導電性ペーストと同一の導電性ペーストが充填されたダミービアを設けたることによって、前記グリーンシートが焼成される際の前記配線部全体の状態変化の影響(言い換えると、前記グリーンシートの前記配線部に対応する部分を形成するガラス成分、ビアに充填された導電性ペースト、それぞれの状態変化による影響)と、前記グリーンシートが焼成される際の前記非配線部全体の状態変化の影響(言い換えると、前記グリーンシートの前記非配線部に対応する部分を形成するガラス成分、ビアに充填された導電性ペースト、それぞれの状態変化による影響)とのギャップを抑えることによって、前記グリーンシートが焼成される際の、前記セラミック基板部全体における状態変化を平均化することができるので、その結果として、セラミック多層基板の鞍型反りの発生を抑制することができる。
【0014】
すなわち、セラミック多層基板の鞍型反りの発生を抑制することによって、セラミック多層基板を用いた電子部品実装工程における歩留まりを改善することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】セラミック多層基板の反りの形状を示す斜視図を示すもので、(a)は従来の反りの形状(おわん型反り)のセラミック多層基板の反りの形状を示す斜視図、(b)は、本願の解決しようとする課題のセラミック多層基板の反りの形状(鞍型反り)を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の平面図と断面図を示すものであり、(a)は平面図、(b)は図2(a)中の点線A−Aの断面図
【図3】図1中の領域Bと領域Cを拡大した平面図であり、(a)は領域Bの平面図、(b)は領域Cの平面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板のプロセスフローを示す図
【図5】本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、(a)はグリーンシート9Aの断面図、(b)はグリーンシート9Bの断面図、(c)はグリーンシート9Cの断面図
【図6】本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態1の積層工程におけるグリーンシート積層体の断面図
【図8】本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図9】本発明の実施の形態1の脱バインダー工程における加熱方法を説明する断面図
【図10】本発明の実施の形態1の焼成工程における加熱方法を説明する断面図
【図11】本発明の実施の形態1の拘束層除去工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態を図面とともに詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
[1]セラミック多層基板の構成
まず、はじめに、本発明の実施1におけるセラミック多層基板の構成に関して説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の平面図と断面図を示すものであり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)中の点線A−Aの断面図である。
【0018】
図2に示すように、セラミック多層基板1は、複数(具体的には本実施形態では後述のように3枚)のセラミック製のグリーンシートを焼成して形成されたセラミック基板部2と、そのセラミック基板部2内部に形成された内部配線パターン3と、そのセラミック基板部2の表面に形成された外部配線パターン4と、そのセラミック基板部2に形成され、内部配線パターン3、もしくは前記外部配線パターン4のどちらかに接続され、導電性ペーストが充填されたビア5と、内部配線パターン3、もしくは外部配線パターン4が形成される配線部6と、その配線部6の周辺に配置された非配線部7と、を有している。
さらに、セラミック多層基板1は、非配線部7にダミービア8を形成している。ここで、ダミービア8に充填されている導体ペーストは、配線部6に形成されているビア5に充填されている導体ペーストと同一のものが用いられている。
【0019】
また、セラミック基板部2の表裏に形成されている外部配線パターン4は、所望の電子部品(例えばIC=Integrated Cuircuit)を実装するための電極や、所望の回路パターンとなっている。
【0020】
本実施形態において、セラミック基板部2は、後述で再度説明するが、何れも、アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物からなる、シート状の形状のグリーンシートと呼ばれるものを、複数枚(少なくとも2枚以上)積層し、加圧し、その後、900[℃]にて焼成することによって形成する。なお、本実施形態のセラミック基板部2においては、三枚のグリーンシートを積層、焼成したものを用いた。
【0021】
また、本実施形態において、セラミック基板部2の内部にあるビア5、および、ダミービア8は、前述の焼成前のグリーンシートに、予め、例えば、NCパンチプレス(Numerical Controlパンチプレス)によって孔を形成し、その後、その孔に導電性ペーストを充填し、更に前述のセラミックシートを焼成する際に同時に焼成される事によって形成する。なお、本実施形態において、銀(Ag)粒子とガラス成分を含有する導電性ペーストを用いた。
【0022】
また、本実施形態において、セラミック基板部2の内部にある内部配線パターン3は、前述の焼成前のグリーンシートに、予め、スクリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して形成後、前述のセラミックシートを焼成する際に同時に焼成される事によって形成している。なお、本実施形態においては、銀(Ag)粒子とガラス成分を含有する導電性ペーストを用いた。
【0023】
また、本実施形態において、セラミック基板部2の表面(表裏面)の外部配線パターン4は、前述のグリーンシートを焼成後、導電性ペーストをスクリーン印刷法により所望のパターンに印刷して形成後、前述のセラミックシートを焼成する温度より低い温度で、かつ、この導電性ペーストが十分に焼成される温度にて熱処理を行うことによって形成する。 なお、本実施形態においては、ビア5、およびダミービア8と同じく、銀(Ag)粒子とガラス成分を含有する導電性ペーストを用いた。
【0024】
以上のように本実施形態のセラミック多層基板1は、アルミナ成分とガラス成分を有するグリーンシートを焼成することに形成されたセラミック基板部2と、セラミック基板部2内部に形成された内部配線パターン3と、セラミック基板部2の表面に形成された外部配線パターン4と、セラミック基板部2に形成され、内部配線パターン3、もしくは前記外部配線パターン4に接続され、導電性ペーストが充填されたビア5と、内部配線パターン3、もしくは外部配線パターン4が形成される配線部6と、配線部6の周辺に配置された非配線部7と、を有するセラミック多層基板1において、非配線部7に、ビア5に充電された導電性ペーストと同一の導電性ペーストが充填されたダミービア8を設けたこと、
を特徴とするセラミック多層基板1としたものであるので、セラミック多層基板1を用いた電子部品実装工程における歩留まりを改善することができる。
【0025】
すなわち、本発明においては、非配線部7に、ビア5に充電された導電性ペーストと同一の導電性ペーストが充填されたダミービア8を設けたることによって、グリーンシートが焼成される際の配線部6全体の状態変化の影響(言い換えると、グリーンシートの配線部6に対応する部分を形成するガラス成分、及びビア5に充填された導電性ペーストのそれぞれの状態変化による影響)と、グリーンシートが焼成される際の非配線部7全体の状態変化の影響(言い換えると、グリーンシートの非配線部7に対応する部分を形成するガラス成分、及びビアに充填された導電性ペーストのそれぞれの状態変化による影響)とのギャップを抑えることによって、グリーンシートが焼成される際の、セラミック基板部全体1における状態変化を平均化することができるので、その結果として、セラミック多層基板1の鞍型反りの発生を抑制することができる。
【0026】
すなわち、セラミック多層基板1の鞍型反りの発生を抑制することによって、セラミック多層基板1を用いた電子部品実装工程における歩留まりを改善することができるのである。
【0027】
また、図3は、図1中の領域Bと領域Cを拡大した平面図であり、図3(a)は領域Bの平面図、図3(b)は領域Cの平面図を示すものである。
【0028】
ここで、領域Bとは、配線部6からある一定の面積を抜きとった領域を示すものである。また、領域Cとは、非配線部7からある一定の面積を抜きとった領域を示すものである。なお、図3(a)、図3(b)中の領域Bと領域Cはセラミック多層基板1の表面において、同一面積になるように記載している。
【0029】
また、本実施形態においては、図3(a)、図3(b)に示すように、ビア5とダミービア8は、同一直径(すなわち同一面積)の大きさになるように、セラミック多層基板1上の、それぞれ、配線部6、および非配線部7に設けている。
すなわち、図3(a)、(b)に示すように、本実施形態においては、非配線部7の面積に対するダミービア8の面積の占める比率は、配線部6の面積に対するビア5の面積の占める比率が同等になるようにしている。
【0030】
以上のように、非配線部7の面積に対するダミービア8の面積の占める比率は、配線部6の面積に対するビア5の面積の占める比率が同等になるように、セラミック多層基板1を構成することによって、グリーンシートが焼成される際の配線部6全体の状態変化の影響と、グリーンシートが焼成される際の非配線部7全体の状態変化の影響とのギャップをより安定して抑えることができるので、その結果として、セラミック多層基板1の鞍型反りの発生を。さらに安定して抑制することができる。
【0031】
すなわち、セラミック多層基板1の鞍型反りの発生をさらに安定して抑制することによって、セラミック多層基板1を用いた電子部品実装工程における歩留まりを、更に安定して改善することができるのである。
【0032】
なお、本実施形態においては、ビア5とダミービア8は、同一直径(すなわち同一面積)の大きさになるように、セラミック多層基板1上の、それぞれ、配線部6、および非配線部7に設けたが、必ずしも。ビア5とダミービア8は、同一直径(すなわち同一面積)の大きさにする必要はなく、非配線部7の面積に対するダミービア8の面積の占める比率は、配線部6の面積に対するビア5の面積の占める比率が同等になるように配置すればよい。
【0033】
[2]セラミック多層基板の製造方法
それでは、以下に、本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の製造方法について説明する。
【0034】
図4は、本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の製造方法のフローチャートを示すものである。
【0035】
図4は、本実施形態のセラミック多層基板1のプロセスフローを示す図であり、大きく分けて、ステップ1:グリーンシート準備工程と、ステップ2:積層工程と、ステップ3:脱バインダー工程と、ステップ4:焼成工程と、ステップ5:拘束層除去工程と、ステップ6:外部配線パターン形成工程という、6つのステップからなるものである。
【0036】
[ステップ1:グリーンシート準備工程]
図5は、本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図5(a)はグリーンシート9Aの断面図、図5(b)はグリーンシート9Bの断面図、図5(c)はグリーンシート9Cの断面図を示すものである。
【0037】
本実施形態においては、純のグリーンシート(アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物をシート状に形成したもの)から、図
5(a)〜図5(c)に示すように、グリーンシート9A(図5(a))、グリーンシート9B(図5(b))、グリーンシート9C(図5(c))を作成する。
【0038】
まず、はじめに、図5(a)に示すグリーンシート9Aに関して説明する。グリーンシート7Aには、例えば、NCパンチプレスによって孔を形成し、その後、その孔に、銀(Ag)粒子を含有する導電性ペーストを充填することによって、ビア5、ダミービア8を形成する。これにて、グリーンシート9Aが完成する。
【0039】
次に、図5(b)に示すグリーンシート9Bに関して説明する。グリーンシート9Bは、はじめに、グリーンシート9Aと同様に、孔を形成し、その後、その孔に、銀(Ag)粒子を含有する導体ペーストを充填することによって、ビア5、ダミービア8を形成する。次に、グリーンシート9B上面に導電性ペーストを、スクリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して、内部配線パターン3を形成する。これにて、グリーンシート9Bが完成する。
【0040】
次に、図5(c)に示すグリーンシート9Cに関して説明する。グリーンシート9Cは、グリーンシート9Aと同様に、まずはじめに孔を形成し、その後、その孔に、銀(Ag)粒子を含有する導体ペーストを充填することによって、ビア5、ダミービア8を形成する。次に、グリーンシート9C上面に導電性ペーストを、スクリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して、内部配線パターン3を形成する。これにて、グリーンシート9Cが完成する。
以上が、図4中のステップ1のグリーンシート準備工程である。
【0041】
[ステップ2:積層工程]
次に、図6、図7、図8を用いてステップ2の積層工程について説明する。図6は、本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図である。また、図7は、本発明の実施の形態1の積層工程におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。また、図8は、本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。
【0042】
まず、はじめに、図6、図7に示している拘束層10に関して説明する。
【0043】
一般に、アルミナ粉末とガラス粉末を配合したガラス・セラミックの組成物で、シート状の形状のグリーンシートを、高温を印加すると、アルミナ粉末とガラス粉末が焼成することによって、そのグリーンシートの体積(平面方向、および厚さ方向)に収縮する。
【0044】
本実施形態においても、次の工程であるステップ3:脱バインダー工程、ステップ4:焼成工程にて、グリーンシート積層体11(図7中に図示)を、加圧しながら熱を印加するのであるが、その際、それらグリーンシート9A、9B、9Cを挟み込むように、印加する温度では焼成しない成分のセラミックからなる拘束層10をそれぞれ上下面に配置しておく。
【0045】
こうすることによって、グリーンシー9A、89B、9Cは、図6中に示す、X方向、およびY方向(すなわち、グリーンシート積層体11の平面方向)には収縮せず、Z方向(すなわち、グリーンシート積層体11の厚さ方向)にのみ収縮する。このX方向、Y方向に収縮させないために、この拘束層10を使用するのである。本実施形態においては、アルミナ粉末をシート状に成形したものを拘束層10として用いた。
【0046】
次に、図6を用いて、グリーンシート9A、9B、9Cを積層し、グリーンシート積層体11を準備する方法を説明する。
【0047】
まず、拘束層10上に、グリーンシート9Cを積層する。次に、グリーンシート9C上にグリーンシート9Bを積層し、更に、グリーンシート9B上にグリーンシート9Aに所望の位置になるように、位置合わせを実施しながら積層する。
【0048】
最後に、グリーンシート9A上に、拘束層10を配置する。
【0049】
このようにして、図7に示すような、グリーンシート積層体11が準備されるのである。
【0050】
次に、図8に示すように、グリーンシート積層体11を台座12上に配置し、その上面から加圧加熱をすることによって、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C同士を仮接着する。
【0051】
ここで、図8中のグリーンシート積層体11は、図7中のグリーンシート積層体11と同一のものであるが、図8中のグリーンシート積層体11は簡略化して図示している。
【0052】
また、本実施形態において、グリーンシート積層体11を上から加圧した圧力は15.2[MPa]とし、加熱温度は85[℃]を用いた。このようにして、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C同士を仮接着する。
【0053】
[ステップ3:脱バインダー工程]
次に、ステップ3の脱バインダー工程について説明する。
【0054】
図9は、本発明の実施の形態1の脱バインダー工程における加熱方法を説明する断面図を示すものである。
【0055】
この工程では、図9に示すように、(図8と同じように)、グリーンシート積層体11を台座13上に配置し、その上面から加熱をすることによって、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C内部の有機バインダーを除去する。
【0056】
本実施形態において、グリーンシート積層体11の加熱温度は650[℃]にて加熱を行った。このようにして、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C内部の有機バインダーを除去する。
【0057】
[ステップ4:焼成工程]
次に、ステップ4の焼成工程について説明する。
【0058】
図10は、本発明の実施の形態1の焼成工程における加熱方法を説明する断面図を示すものである。
【0059】
グリーンシート積層体11を台座14上に配置し、その上面から加熱をすることによって、グリーンシート積層体11を焼成する。本実施形態において、グリーンシート積層体11上の加熱温度は前述のように900[℃]を用いた。
このようにして、この焼成工程後、図10に示すように、グリーンシート積層体11は、その厚さ方向に収縮したものになる。
【0060】
[ステップ5:拘束層除去工程]
次に、ステップ5の拘束層除去工程について説明する。
この工程では、水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体8の上下面の拘束層10上から吹き付ける。
【0061】
図11は、本発明の実施の形態1の拘束層除去工程後におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。こうすることによって、拘束層10のみ除去することができ、図11に示すようなものになる。
【0062】
[ステップ6:外部配線パターン形成工程]
次に、ステップ6の外部電極・回路パターン配線部形成工程について説明する。
【0063】
ステップ6にて焼成されたグリーンシート積層体11の表裏面(上下面)に、図1に示すような、外部配線パターン4を形成する。
【0064】
本実施形態においては、前述のように、スクリーン印刷法を用いて、導体ペーストを所望のパターンに印刷して形成し、その後、ステップ3の焼成工程で印加した温度より低い温度で、かつ、導体ペーストが十分に焼成される温度にて熱処理を行うことによって形成した。本実施形態においては、この導体ペーストの焼成温度が850℃の銀ペースト(Agペースト)を用い、焼成のための熱処理温度は850℃を用いた。
【0065】
この工程後のグリーンシート積層体11は、図1に示すような、本実施形態のセラミック多層基板になる。
【0066】
以上のように、図4に示すステップ1からステップ6を行うことによって、本実施形態のセラミック多層基板を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかるセラミック多層基板は、セラミック多層基板の反りを低減することができるので、特に、最近普及の進んでいる液晶テレビや携帯電話の液晶画面用のバックライト向けLED用の基板として用いられることが大いに期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0068】
1 セラミック多層基板
2 セラミック基板部
3 内部配線パターン
4 外部配線パターン
5 ビア
6 配線部
7 非配線部
8 ダミービア
9A、9B、9C グリーンシート
10 拘束層
11 グリーンシート積層体
12、13、14 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ成分とガラス成分を有するグリーンシートを焼成することに形成されたセラミック基板部と、
前記セラミック基板部内部に形成された内部配線パターンと、
前記セラミック基板部の表面に形成された外部配線パターンと、
前記セラミック基板部に形成され、前記内部配線パターン、もしくは前記外部配線パターンに接続され、導電性ペーストが充填されたビアと、
前記内部配線パターン、もしくは前記外部配線パターンが形成される配線部と、
前記配線部の周辺に配置された非配線部と、
を有するセラミック多層基板において、
前記非配線部に、前記ビアに充填された前記導電性ペーストと同一の導電性ペーストが充填されたダミービアを設けたこと、
を特徴とするセラミック多層基板。
【請求項2】
前記非配線部の面積に対する前記ダミービアの面積の占める比率は、前記配線部の面積に対する前記ビアの面積の占める比率と同等であること、
を特徴とする請求項1記載のセラミック多層基板。
【請求項3】
前記グリーンシートが焼成される際に、前記グリーンシートがその面積方向に対して無収縮であることを特徴とする請求項1乃至2に記載にセラミック多層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−114183(P2012−114183A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260867(P2010−260867)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】