セラミック部材の製造方法、並びにセラミック部材、ガスセンサ素子、燃料電池素子、フィルタ素子、積層型圧電素子、噴射装置、及び燃料噴射システム
【課題】 金属層の焼結が十分に進行し、金属層中に樹脂等の不純物残渣が少なく、かつ、金属層の空隙率が高いセラミック部材を製造する。
【解決手段】 金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、積層成形体を作製する工程において、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層24aよりも質量百分率Xが低い第1金属ペースト層22aとし、この第1金属ペースト層に隣り合う両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させる。第2金属ペースト層24aが焼結してなる第2金属層24が、第1金属ペースト層22aが焼結してなる第1金属層22よりも空隙が多いものとなる。
【解決手段】 金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、積層成形体を作製する工程において、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層24aよりも質量百分率Xが低い第1金属ペースト層22aとし、この第1金属ペースト層に隣り合う両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させる。第2金属ペースト層24aが焼結してなる第2金属層24が、第1金属ペースト層22aが焼結してなる第1金属層22よりも空隙が多いものとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック部材の製造方法及びこれにより得られるセラミック部材に関する。より詳しくは、本発明は、例えば屋内の雰囲気検知、洞窟やトンネル内の雰囲気検知、排気ガス検知等に用いられるガスセンサ素子、発電等に用いられる燃料電池素子、フィルタ素子、自動車エンジンの燃料噴射装置、微少駆動装置、圧電センサ装置、圧電回路等に用いられる積層型圧電素子等のセラミック部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサ素子や燃料電池素子は、これらを構成するセラミック部材に気体を接触させて気体中の特定成分をセラミック表面に吸着させたり、透過させたりする機能を備えている。このような機能を付与するために、金属層(電極)を空隙率の高い構造にしてガスの通気性を高めたり、緻密な電極であっても電極形状を櫛型等のパターン形状にして電極による被覆面積を制御する試みがなされている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
空隙率の高い金属層を作製する方法としては、セラミックスの焼結温度よりも高温でなければ焼結しない金属を用いて電極パターンを印刷した後、セラミックスと電極金属を同時焼成する方法がある。
【0004】
また、電極金属の焼成温度では焼結しないセラミック原料を金属粉末に混合して電極ペーストを作製し、この電極ペーストを印刷した後、同時焼成する方法もある。また、空隙率の高い金属層を作製する他の方法としては、例えば特許文献3に記載されているPt圧膜電極の焼成方法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−317555号公報
【特許文献2】特開平6−258281号公報
【特許文献3】特開平11−51899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空隙率の高い金属層を形成する従来の方法では、同時焼成でセラミックスが十分に焼結しても電極部分の焼結が不十分である場合があった。また、金属粒界に電気伝導特性の低い成分が介在することで、電極本来の機能である電気伝導性が低下して電極の抵抗が高くなり、電極から伝わる電気信号の感度が低下することがある。このため、印加電圧を大きくする必要があるので、消費電力の高い素子になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とし、この第1金属ペースト層に隣り合う前記両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させることを特徴とする。
【0008】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、前記一部の領域にセラミック粉末を含有させることを特徴とする。
【0009】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが高い第2金属ペースト層とし、前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0010】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い低率金属ペースト層とし、前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0011】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層の一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0012】
本発明のセラミック部材は、金属成分M1を含む金属層と、空隙を介して互いに離隔して配置された複数のセラミック塊状体を含み、前記金属層より空隙が多い塊状体含有層と、前記金属層と前記塊状体含有層に挟まれたセラミック層と、からなる3層構造を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセラミック部材の製造方法では、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とし、この第1金属ペースト層に隣り合う両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させている。このようにセラミックグリーンシートを介して隣り合う金属ペースト層間で金属成分M1の質量百分率Xに差(濃度勾配)をつけた状態で積層成形体を焼成することによって、セラミック層を通じて質量百分率Xの高い方から低い方へ金属成分M1を拡散させることができる。第2金属ペースト層は、焼成過程で他の金属層より
多くの金属成分M1が第2金属ペースト層から拡散して出ていくことで体積が減少するとともに空隙が増加する。また、第2金属ペースト層に含まれているセラミック粉末は、焼成過程である程度凝集して焼結し、複数のセラミック塊状体となる。すなわち、本発明のセラミック部材の製造方法によれば、セラミックグリーンシートを介して隣り合う第1金属ペースト層と第2金属ペースト層との間で金属成分M1の質量百分率Xに差をつけ、かつ、第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させた積層成形体を焼成することにより、複数のセラミック塊状体が点在し空隙が多い塊状体含有層を備えたセラミック部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1に示す実施形態における塊状体含有層11の具体例をそれぞれ示す断面図である。
【図3】図2に示すセラミック部材を模式的に示した模式図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の一実施形態にかかるセラミック部材の製造方法を示す概念図である。
【図5】側面に外部電極が形成されたセラミック部材を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は図6に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図9】図8の実施形態の特徴を模式的に表したグラフである。
【図10】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図11】(a)〜(c)は図10に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図13】(a)〜(c)は図12に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材をそれぞれ示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。
【図19】本発明の一実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図20】本発明の他の実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図21】本発明のさらに他の実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図22】本発明のさらに他の実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図23】本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図24】本発明の他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図25】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図26】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図27】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図28】(a)は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は、この積層型圧電素子における圧電体層と内部電極層との積層状態を説明するための展開図である。
【図29】図28に示す素子における周縁部を示す断面図である。
【図30】本発明の一実施形態にかかる噴射装置を示す断面図である。
【図31】本発明の一実施形態にかかる燃料噴射システムを示す概略図である。
【図32】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図である。
【図33】図32におけるA−A線断面図である。
【図34】本発明のさらに他の実施形態にかかる素子の複合層付近を拡大した断面図である。
【図35】本発明のさらに他の実施形態における内部電極の構造および複合層の構造を示す一部破断斜視図である。
【図36】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図である。
【図37】図36の積層型圧電素子おける圧電体層と内部電極との積層状態を示す部分斜視図である。
【図38】(a)は、積層体の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面を示す断面図であり、(b)は、(a)における塊状体含有層に対して積層方向に隣り合う圧電体層を含み積層方向に垂直な平面で切ったときの断面を示す断面図である。
【図39】積層体の積層方向に平行な平面で積層体を切ったときの断面を示す断面図である。
【図40】(a)は、積層体の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面の他の例を示す断面図であり、(b)は、積層体の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面のさらに他の例を示す断面図である。
【図41】(a)は、本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は、(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。
【図42】図41における外部電極と積層体の側面との接合部分の拡大断面図である。
【図43】図41における積層体を積層方向に垂直な方向に塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面図である。
【図44】実施例5における焼成前の試料の状態を示す断面図である。
【図45】実施例5における焼成後の試料の状態を示す断面図である。
【図46】実施例7における試料番号1、3、4の断面を示す概念図である。
【図47】実施例7における試料番号5の断面を示す概念図である。
【図48】実施例7における試料番号6の断面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかるセラミック部材及びその製造方法について詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図1に示すように、このセラミック部材17は、金属成分M1を含む金属層13と、金属層13より空隙が多い塊状体含有層11と、金属層13と塊状体含有層11に挟まれたセラミック層15と、からなる3層構造を備えている。塊状体含有層11は、互いに離隔して配置された複数のセラミック塊状体3aを含んでいる。
【0016】
図2(a)〜(c)は、本実施形態における塊状体含有層11の具体例をそれぞれ示す断面図である。図2(a)における塊状体含有層11は、互いに離隔して配置された複数のセラミ
ック塊状体3aと、金属領域3cとを備え、複数の空隙3bを有する多孔質な層である。図2(b)における塊状体含有層11は、空隙3bを介して互いに離隔して配置された複数
のセラミック塊状体3aと、空隙3bを介して互いに離隔して配置された複数の金属塊状体3cとを備えている。図2(c)における塊状体含有層11は、空隙3bを介して互いに
離隔して配置された複数のセラミック塊状体3aからなる。なお、本発明において「空隙
」とは、セラミック塊状体3a間に形成された隙間のことである。
【0017】
以下、説明の便宜上、上記セラミック部材17を模式的に示した図3を用いて、本発明の各実施形態について説明する。図3は、上記3層構造を備えたセラミック部材17の断面を模式的に示した断面図である。図3に示すように、このセラミック部材17は、金属層13と、この金属層13よりも空隙が多い塊状体含有層11とがセラミック層15を介して積層されたものである。
【0018】
このような塊状体含有層11を備えたセラミック部材17を作製するための本発明の一実施形態にかかる製造方法は以下の通りである。図4(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材の製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層11a,13aがセラミックグリーンシート15aを介して積層された積層成形体17aを作製する工程と、この積層成形体17aを焼成する工程とが含まれている。
【0019】
図4(a)に示すように、セラミックグリーンシート15aの両方の主面に金属ペースト
層11a及び金属ペースト層13aを積層し積層成形体17aを作製する。金属ペースト層11aと金属ペースト層13aは積層方向に対向する位置に配設される。金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aには主成分として金属成分M1が含まれている。
【0020】
一つの金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、第2金属ペースト層11aは、積層方向に隣り合う第1金属ペースト層13aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、第2金属ペースト層11aのことを高率金属ペースト層11aということもある。この第2金属ペースト層11aにはセラミック粉末を含有させる。
【0021】
本発明におけるセラミックス粉末とは、非金属の無機粉末であり、一般的に多結晶体、単結晶体、非晶質体の結晶構造をもち、例えばアルミナ、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、サファイア、水晶、クリストバライト、石英、シリカガラス、コーディエライト、チタニア、ジルコニア、酸化鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウムカリウム、酸化タングステンなどの酸化物、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステンなどの炭化物、SiO2、SiO2−(B2O3)、SiO2−Al2O3−(B2O3)、SiO2−MgO−(B2O3)、SiO2−Al2O3−MgO−(B2O3)などの酸化物ガラス、Al2O3−SiO2−AlNなどのオキシナイトライドガラス、又はこれらの混合物で構成された無機粉末などのことをいう。特に、熱処理時にセラミックシートとの密着力を高めたり、液相を形成して焼結性を高めるために、セラミックシートを構成するセラミックスと同じセラミック粉末を用いることが好ましい。
【0022】
第2金属ペースト層11aには、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末を0.01質量部以上115質量部以下含有させるのが好ましい。金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末が0.01質量部未満になると、セラミック粉末の大半がセラミック層に吸収されてセラミック塊状体が形成されにくくなる。一方、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末が115質量部を超えると、セラミック粉末の焼結が主体的になって金属成分の拡散現象が生じにくくなる。本発明のセラミック部材を積層型圧電素子に適用する場合には、高い応力緩和効果が得られるという点で、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末を0.1質量部以上75質量部以下含有させるのがよい。また、空隙を介して互いに離隔した複数のセラミック塊状体を形成してより高い応力緩和効果を発現させるという点で、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末を1質量部以上50質量部以下含有させるのがさらに好ましい。
【0023】
セラミックグリーンシート15aの作製方法は次の通りである。まず、セラミックスの原料粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、このスラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法によりシート形状に成形してセラミックグリーンシート15aを得る。
【0024】
第2金属ペースト層11a及び第1金属ペースト層13aの作製方法は次の通りである。まず、金属粉末、合金粉末等にバインダー、可塑剤等を添加し混合して金属ペーストを作製する。このとき、高率金属ペースト層11a用の金属ペーストは、金属成分M1の質量百分率Xが金属ペースト層13a用の金属ペーストよりも高くなるように調製される。高率金属ペースト層11aには上記したようなセラミック粉末を添加する。セラミック粉末の添加量は、焼成後のセラミック部材において塊状体含有層に点在させるセラミック塊状体の量や大きさに応じて適宜決定すればよい。
【0025】
ついで、得られた各金属ペーストをセラミックグリーンシート15aの一方の主面及び他方の主面にスクリーン印刷等の手法で印刷して高率金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aを形成し、乾燥させる。こうして得られた積層成形体17aを、必要に応じて裁断して所望の形状にしてもよい。高率金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aの厚みは例えば1〜40μm程度の範囲に調製される。
【0026】
また、セラミックグリーンシートを2枚準備し、一方のシートの主面に高率金属ペースト層11aを形成し、他方のシートの主面に金属ペースト層13aを形成する。ついで、金属ペースト層を形成していない主面同士を合わせるようにして2枚のセラミックグリーンシートを積層することによっても積層成形体17aを作製することができる。
【0027】
次に、上記のようにして得られた積層成形体17aを所定の温度で脱バインダー処理を行った後、800〜1500℃程度で焼成する。図4(b)は焼成途中の積層成形体17b
を示し、図4(c)は焼成後のセラミック部材17を示している。上記のようにセラミック
グリーンシート15aを介して隣り合う金属ペースト層11a,13a間で金属成分M1の質量百分率Xに差(濃度勾配)をつけた積層成形体17aを焼成することによって、セラミック層を通じて質量百分率Xの高い方から低い方へ金属成分M1を拡散させる。このとき、セラミック粉末は、拡散することなくセラミック層上に残留する。
【0028】
これにより、複数のセラミック塊状体3aが点在し空隙が多い塊状体含有層を、セラミック部材の所望の位置に形成することができる。しかも、このセラミック部材では、金属層の焼結を十分に進行させることができ、従来のようにアクリル樹脂等を用いなくてもいいので金属層中に樹脂等の不純物残渣を極めて少なくできる。
【0029】
このように金属成分M1が拡散するのは、次のような理由に基づいていると推測される。すなわち、セラミックグリーンシートを介して高率金属ペースト層とこれに隣り合う金属ペースト層との間で金属成分M1の質量百分率Xに差をつけることで、フィックの法則に従って金属成分M1の質量百分率差を駆動力として、高率金属ペースト層からこれに隣り合う金属ペースト層に向かってより多くの金属成分M1が拡散するものと推測される。
【0030】
高率金属ペースト層11aには、金属成分M1を含む「合金粉末」及び金属成分M1からなる「金属粉末」の少なくとも一方が配合される。高率金属ペースト層11aに積層方向に隣り合う金属ペースト層13aには、金属成分M1と金属成分M2とを含む「合金粉末」及び金属成分M1からなる金属粉末と金属成分M2からなる金属粉末とを含む「混合粉末」の少なくとも一方が配合される。以下、金属粉末、合金粉末及び混合粉末を総称して「金属粉末等」ということがある。
【0031】
金属成分M1と金属成分M2は、これらの間で合金が形成される組み合わせであるのが好ましい。また、これらの金属成分の間で金属間化合物を形成しにくい組み合わせであるのがより好ましい。これらの金属成分が全率固溶する組み合わせであるのがさらに好ましい。
【0032】
具体的には、本発明では、金属成分M1が周期表第11族元素であり、金属成分M2が周期表第10族元素であるのが好ましい。これら第11族元素と第10族元素との合金は全率固溶するので、任意の濃度の合金を形成でき、金属成分の安定な拡散が可能になる。また、融点がセラミックスの焼結温度よりも高く、酸化雰囲気でも焼成が可能であるからである。これらの中でもセラミックスと同時焼成が可能な銀白金合金や銀パラジウム合金であるのが好ましい。
【0033】
特に、金属成分M1が銀であり、金属成分M2がパラジウムであるのがより好ましい。その理由は、銀を加熱したときに生じる酸化銀がセラミックスの液相を低温で形成する物質であるからである。したがって、銀を含有することでセラミック層15の焼結が低温で進行する。また、パラジウムと銀は全率固溶系であるとともに、液相線と固相線が接近していることから容易に相互に固溶できる。このため、液相を介して銀濃度が高い塊状体含有層11bから金属層13bへ銀成分が拡散する際には、選択的に引きつけ合って種々の組成比で合金化することが可能となる。その結果、パラジウムに比べて融点の低い銀が、パラジウムより先に拡散し、この拡散が短時間で進行することになる(図4(b)参照)。
【0034】
高率金属ペースト層11aにおける質量百分率X((金属成分M1(質量)/金属成分総量(質量))×100)は、セラミック部材の電気特性を安定させる点で、85≦X≦100の範囲にあるのが好ましい。質量百分率Xが85未満になると、空隙率の高い金属層の比抵抗が大きくなり、セラミック部材に通電した場合、金属層が熱発散しにくくなることがある。
【0035】
金属層中の11族元素がセラミック層へイオンマイグレーションするのを抑制するためには、85≦X≦99.999の範囲にあるのがより好ましい。セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、90≦X≦99.9の範囲にあるのがさらに好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合には、90.5≦X≦99.5の範囲にあるのが特に好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には92≦X≦98の範囲にあるのがよい。
【0036】
また、金属ペースト層13aにおける質量百分率Xは、セラミック部材の電気特性を安定させる点で、85≦X<100の範囲にあるのが好ましい。また、金属層中の11族元素がセラミック層へイオンマイグレーションするのを抑制するためには、85≦X≦99.999の範囲にあるのがより好ましい。
【0037】
セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、90≦X≦99.9の範囲にあるのがさらに好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合には、90.5≦X≦99.5の範囲にあるのが特に好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には92≦X≦98の範囲にあるのがよい。
【0038】
高率金属ペースト層11aにおける質量百分率Xは積層方向に隣り合う金属ペースト層13aよりも高く設定すればよい。これらの質量百分率差(高率金属ペースト層11aの質量百分率XH−金属ペースト層13aの質量百分率XL)は、特に限定されるものではない。
【0039】
金属成分M1が銀であり、金属成分M2がパラジウム又は白金である場合を例に挙げる
と、質量百分率差は以下の範囲であるのが好ましい。金属成分M1の拡散が進行しやすくなるという点で質量百分率差は0.1以上であるのが好ましい。また、金属成分M1が金属ペースト層13aに過度に拡散して隣接するセラミック層同士が接合するのを抑制するという点で、質量百分率差が30以下であるのが好ましい。したがって、質量百分率差は0.1以上30以下であるのがよい。
【0040】
金属成分M1の拡散速度が遅いときには、高率金属ペースト層11aに隣接するセラミックグリーンシート15a中のセラミックスの焼結が完了した時点で、このセラミックス中に多くの金属成分M1が残留することがある。セラミックス中に金属成分M1が残留するのを抑制するには、質量百分率差を大きくして金属成分M1の拡散速度を速くすればよい。金属成分M1の拡散速度を速くするという点で、質量百分率差は1以上であるのが好ましい。
【0041】
前述のように、高率金属ペースト層11aと金属ペースト層13aとの間に質量百分率差をつけると、これらのペースト層間の濃度勾配を小さくする方向に銀の拡散が生じる。質量百分率差がある程度大きくなると高率金属ペースト層11aから金属ペースト層13aへの銀の拡散とともに、金属ペースト層13aから高率金属ペースト層11aへのパラジウムの拡散も生じやすくなる。このような相互拡散の現象をより活発に生じさせるという点で、質量百分率差は2以上であるのが好ましい。
【0042】
金属成分M1の拡散速度が速くなると、金属層の焼結が完了するタイミングも早くなり、セラミック層の焼結温度よりも低温で金属層が焼結することがある。焼成時に金属層から発生した液相が少なくなると、セラミックスの焼結密度が小さくなる傾向にある。したがって、金属成分M1の拡散速度を抑えてセラミックスの焼結密度を高める点では、質量百分率差が10以下であるのがより好ましい。したがって、質量百分率差は、1以上10以下であるのが好ましく、2以上10以下であるのがより好ましい。
【0043】
質量百分率差は、応力緩和機能と絶縁性とを両立させることができる点で、3以上5以下であるのが特に好ましい。質量百分率差が3以上5以下であることにより銀の拡散が適度に起こるので、焼成後に得られる塊状体含有層11が、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体で構成されることになる。これらの金属塊状体は、互いに電気的に絶縁された状態でセラミック層間に点在する。したがって、このような塊状体含有層11は、電極としては機能しない絶縁性に優れた層となる。しかも、複数の金属塊状体がセラミック層間に適度な大きさと適度な量で分散するので、焼成時に隣接する両側のセラミック層が接合されてしまうのを防止できる。
【0044】
上記のように複数の金属塊状体が点在してなる塊状体含有層11は、例えば積層型圧電素子として用いた場合に、駆動時の応力を緩和する機能に極めて優れている。このような塊状体含有層11は素子中の他の部分よりも剛性が低くなるため、この塊状体含有層11に駆動時の応力が集中しやすくなる。特に、複数の金属塊状体と圧電体との境界付近に応力が集中しやすい。この境界部分の圧電体が応力により局所的に変形することで応力が緩和されるものと推測される。
【0045】
ここで、金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M2の質量百分率をZとする。金属成分M2が周期表第8〜10族元素である場合、質量百分率Z((金属成分M2(質量)/金属成分総量(質量))×100)が15以下であることにより、金属層の比抵抗が大きくなるのを抑制できる。これにより、セラミック部材に通電した際、金属層が発熱するのを抑制することができる。その結果、温度依存性を有するセラミック層に熱が作用して電気特性を変化させるのを抑制できる。よって、センサ、燃料電池、フィルタ素子、積層型圧電素子等の特性が使用中に変動するのを抑制できる。
【0046】
また、金属層が第11族元素のみでは、長期間の高湿度環境下ではイオンマイグレーションが生じやすくなるので、質量百分率Zは、好ましくは0.001≦Z≦15の範囲にあるのがよい。
【0047】
セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、0.1≦Z≦10の範囲にあるのがより好ましい。熱伝導に優れより高い耐久性を必要とする場合には、0.5≦Z≦9.5の範囲にあるのがさらに好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には、2≦Z≦8の範囲にあるのが特に好ましい。上記金属層中の金属成分M1,M2の含有量(質量)は、例えばEPMA(Electron Probe Micro Analysis)で特定できる。
【0048】
拡散が平衡状態になるように長時間加熱すると、パラジウムも拡散が可能となり、塊状体含有層11と金属層13の組成が近づいていく。このように塊状体含有層11と金属層13の組成が近くなるまで焼成したセラミック部材は、高温条件下で使用した場合であっても金属成分のイオンマイグレーションが抑制され、電極が安定した性能を発揮する。
【0049】
銀はパラジウムと結合しやすい。また、銀を加熱したときに生じる酸化物(酸化銀)はAgの融点よりもかなり低温で形成される。この酸化物はセラミックスの成分とともに液相を形成する成分である。したがって、高率金属ペースト層11aに銀粉末を配合し、金属ペースト層13aに銀パラジウム合金粉末を配合した場合、
低温での拡散がより生じやすくなり、かつ、選択的に銀を拡散移動させることができる。
【0050】
また、銀は溶融するとセラミック層との濡れ性が低いので銀同士が凝集する特性を有している。したがって、拡散によって体積が減少した銀または銀パラジウムは、セラミック層の表面に薄膜状に広がるのではなく、凝集した銀を含む金属成分が点在することになるので、ある程度の大きさに凝集してなる金属塊状体がセラミック層上(または2つのセラミック層間)に点在しやすい。これにより、空隙率の高い金属層を形成することができる。
【0051】
高率金属ペースト層11aに銀とともに白金が配合されていること、金属ペースト層13aにパラジウムとともに白金が配合されていることが好ましい。焼成により銀は選択的にパラジウムとの合金化が進行する。同一温度ではパラジウムよりも拡散速度が遅い白金が存在することで、銀の一部は白金と合金を形成する。したがって、焼成中に積層成形体17a内に大きな温度分布が生じる焼成や昇温速度の大きな焼成を行った場合であっても、銀が過度に拡散するのを抑制できる。これにより、金属ペースト中の全ての銀およびパラジウムが拡散して金属層が完全に消失するのを抑制できる。これにより、拡散を可能にする焼成条件の範囲を大幅に広げることができると同時に、金属層の消失を抑制できる。特に、金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aの両方に白金を配合することが好ましい。
【0052】
金属成分M1が銀(Ag)で、金属成分M2がパラジウム(Pd)である場合を例に挙げてより具体的に説明すると、次のようになる。高率金属ペースト層11aには、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金などのAgを含む「合金粉末」及びAgからなる「金属粉末」の少なくとも一方が配合される。金属ペースト層13aには、Ag−Pd合金などのAgとPdとを含む「合金粉末」及びAg粉末とPd粉末とを含む「混合粉末」の少なくとも一方が配合される。
【0053】
なお、Pd粉末は、Ag−Pd合金中のPdと比較して低温で酸化されやすい傾向にある。このため、金属ペーストの原料としてAg−Pd合金を用いた場合と比較して、Pd粉末を用いると焼成中の酸化に起因して金属層の体積増加が見られることがある。したが
って、金属成分M2がパラジウム(Pd)である場合には、金属ペーストの原料としてAg−Pd合金を用いるのが好ましい。特に、Ag粉末とAg−Pd合金粉末とを混合した粉末であれば、Agの融点が低いことから、Agが先に拡散を開始して、Ag−Pd合金のAg濃度を増加させて拡散を誘発するため、最も速く安定した拡散を実現するので、好ましい。
【0054】
焼成前のセラミックグリーンシート15aはセラミックスの原料粉末の粒子間にバインダーが充填された状態であるが、図4(b)に示す焼結途中の段階では、加熱されることで
バインダーが揮発してセラミックスの粒子間に微細な隙間が生じる。焼成温度がさらに上昇すると、セラミック粒子同士が焼結を開始し、印刷された金属ペースト層に含まれる金属粉末等も焼結を開始する。
【0055】
その後、セラミック粒子間や金属粒子間に液相が形成され、粒子間の拡散速度が増加し、焼結が進行する。このとき、セラミック粒子間に微細な隙間があることと、金属粒子間やセラミック粒子間に液相が存在することで、焼結途中の塊状体含有層11bと金属層13bの間でセラミック層15bを通じて金属成分の相互拡散が可能な状態となる。
【0056】
本実施形態では、塊状体含有層11bの質量百分率Xが金属層13bの質量百分率よりも高くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、銀の質量百分率差(濃度勾配)に応じて、塊状体含有層11bの銀が焼結途中のセラミック層15bを通過して金属層13bに拡散移動するものと推測される。
【0057】
その後、焼成温度がさらに上昇すると、セラミック粒子間の隙間が減少又は消滅するので、図4(c)に示すようにセラミック層15を介した銀の拡散移動が終了する。そして、
セラミック粒子の焼結が完了し、塊状体含有層11及び金属層13の焼結も完了する。
【0058】
以上のようにして塊状体含有層11は金属層13へ銀が拡散移動して体積が減少したことに加え、焼結途中の液相状態のときの流動性が高いことで銀又は銀パラジウム合金が凝集する。これにより、塊状体含有層11は、セラミック層15の表面に金属成分が一様に被覆されたものではなく、内部に複数の独立気泡を有し複数のセラミック塊状体が分散した多孔質なもの(図2(a))、若しくは空隙を介して互いに離隔した複数のセラミック塊
状体と空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体とにより構成されたもの(図2(b)
)、若しくは空隙を介して互いに離隔した複数のセラミック塊状体により構成されたもの(図2(c))となる。
【0059】
一方、金属層13は、塊状体含有層11から銀が拡散移動してくるので、比較的緻密な金属層となる。なお、焼結中に液相が形成しやすいように、セラミックグリーンシート15aや金属ペースト中に焼結助剤を添加することが好ましい。
【0060】
図2(a)〜(c)に示す形態のうち、塊状体含有層11が金属成分(金属領域3c又は金属塊状体3c)を含む図2(a),(b)に示す形態の場合、次の条件を満たしているのが好ましい。すなわち、金属層13又は塊状体含有層11に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYとするとき、塊状体含有層11は、積層方向に隣り合う金属層13よりも質量百分率Yが高く設定されているのが好ましい。
【0061】
セラミック部材を高温に晒されるような環境に設置して使用した場合、金属層13と塊状体含有層11間に組成の濃淡があるとマイグレーションが進行する場合がある。塊状体含有層11の質量百分率Yが金属層13よりも高いときには、金属層13から塊状体含有層11に向かって金属成分M1が移動してくるのを抑制できる。したがって、塊状体含有層11の高い空隙率が維持される。これにより、高い空隙率により発現するセンサ機能や
応力緩和機能が維持されて、耐久性の高いセラミック部材とすることができる。
【0062】
図5は側面に外部電極19が形成されたセラミック部材を示す断面図である。この外部電極は例えば次のようにして形成すればよい。金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを所定の部位に印刷し乾燥させた後、焼成する。このとき、セラミック部材に金属ペーストをそのまま印刷してもよいが、研磨等の加工を行って印刷面を平坦化してから印刷を行うのが好ましい。なお、他の部位については、図3と同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
本実施形態において「空隙が多い」とは、金属層の断面において空隙が占める総面積が大きいことをいう。塊状体含有層11とこれに隣り合う金属層13の空隙の多さを比較するには、次のようにすればよい。走査型電子顕微鏡(SEM)、金属顕微鏡、光学顕微鏡などを用いて塊状体含有層11の断面及び金属層13の断面(積層方向に平行な断面又は積層方向に垂直な断面)を観察して断面画像を得、この断面画像を評価すればよい。この断面画像において、塊状体含有層11と金属層13の空隙の多さに明らかな差が認められる場合には、目視で比較すればよい。また、塊状体含有層11と金属層13の空隙の多さを目視で判別することができない場合には、以下に示す方法により空隙率をそれぞれ測定して比較すればよい。
【0064】
セラミック部材の金属層(または塊状体含有層)の空隙率は、例えば以下のようにして測定することができる。すなわち、まず、空隙率を測定したい金属層または塊状体含有層の断面(積層方向に平行な断面又は積層方向に垂直な断面)が露出するまで、公知の研磨装置を用いてセラミック部材を積層方向に研磨する。具体的には、例えば研磨装置としてケメット・ジャパン(株)社製卓上研磨機KEMET−V−300を用いてダイヤモンドペーストで研磨することができる。
【0065】
この研磨処理により露出した断面を、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)、金属顕微鏡、光学顕微鏡などにより観察して断面画像を得、この断面画像を画像処理することによって空隙率を測定できる。SEM等の観察における拡大倍率は1000倍〜10000倍程度に設定するのがよい。
【0066】
なお、金属層または塊状体含有層の断面を観察する際には、金属層(または塊状体含有層)の厚みの約1/2の位置まで研磨し、これにより露出した断面を観察するのが好ましい。ただし、金属層(または塊状体含有層)の厚みが薄く、かつ、厚みのばらつきが比較的大きな場合には、研磨処理により金属層の断面全体を露出させることができないことがある。このような場合には、金属層または塊状体含有層の一部が露出するまで研磨処理した時点で、その露出部分を観察して断面画像を得た後、さらに研磨を進めて観察済み以外の他の部分を観察するという操作を複数回繰り返してもよい。このようにして複数回の操作で得た観察画像を足し合わせて金属層(または塊状体含有層)の断面全体が観察できればよい。
【0067】
画像処理の具体例を挙げると次のようになる。例えば光学顕微鏡にて撮影した断面画像に対して、空隙部分を黒色に塗りつぶし、空隙以外の部分を白色に塗りつぶし、黒色部分の比率、即ち、(黒色部分の面積)/(黒色部分の面積+白色部分の面積)を求め、比率で表すことにより空隙率を算出することができる。
【0068】
また、撮影した断面画像データをコンピューターにとりこみ、画像処理ソフトウェアにて空隙率を測定できる。なお、断面画像がカラーである場合は、グレースケールに変換して黒色部分と白色部分に分けるとよい。このとき、黒色部分と白色部分に2階調化するための境界の敷居値を設定する必要がある場合には、画像処理ソフトウェアや目視により境
界の敷居値を設定して2値化すればよい。
【0069】
図6は、本発明の他の実施形態にかかるセラミック部材27を示す断面図である。図6に示すように、このセラミック部材27は、塊状体含有層21と金属層23がセラミック層25を介してそれぞれ積層されたものである。
【0070】
塊状体含有層11が金属成分を含む図2(a),(b)に示す形態の場合、金属層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYとするとき、塊状体含有層21は、積層方向に隣り合う両側の金属層23,23よりも質量百分率Yが高く空隙率が高いことが好ましい。
【0071】
このセラミック部材27は、金属成分M1を含む金属層23(第1金属層23)と、金属層23より空隙が多い塊状体含有層21(第2金属層21)と、これらの金属層に挟まれたセラミック層25とからなる2つの3層構造を含んでいる。また、このセラミック部材27は、塊状体含有層21(第2金属層21)を共有する2つの3層構造からなる5層構造を備えている。
【0072】
このような塊状体含有層21を備えたセラミック部材27を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図7(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層21a,23aがセラミックグリーンシート25aを介して積層された積層成形体27aを作製する工程と、この積層成形体27aを焼成する工程とが含まれている。
【0073】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート25aを複数枚作製し、各グリーンシート25aの一方の主面に金属ペースト層21a又は23aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層21aの積層方向両側に金属ペースト層23aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体27aが得られる(図7(a))。
【0074】
金属ペースト層21a及び金属ペースト層23aには主成分として金属成分M1が含まれている。金属ペースト層21aは、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層23a,23aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、金属ペースト層21aのことを高率金属ペースト層21aという。
【0075】
本実施形態が上記した基本構造と異なるのは高率金属ペースト層21aの積層方向両側に金属ペースト層23aが配置されている点である。このように両側に金属ペースト層23aが配置されている場合には、積層成形体27aを焼成することによって高率金属ペースト層21aの金属成分M1が両側の金属ペースト層23aに拡散することになる。
【0076】
図7(a)に示す積層成形体27aは、上述したのと同様に、図7(b)に示す焼結途中の段階を経て、図7(c)に示すセラミック部材27となる。金属層23,23は、塊状体含有
層21から金属成分が拡散移動してくるので、比較的緻密な金属層となっている。
【0077】
図8は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図8に示すように、このセラミック部材37は、塊状体含有層21及び金属層23がセラミック層25を介してそれぞれ積層されたものである。このセラミック部材37では、塊状体含有層21が積層方向に複数配設されている。これらの塊状体含有層21は金属層23を複数層挟んでそれぞれ配設されている。これらの塊状体含有層21は積層方向に規則的に(所定の規則に従って)配設されている。具体的には、塊状体含有層21は所定の層数の金属層23を介して配置されている。
【0078】
このように複数の塊状体含有層21を備えたセラミック部材37を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。すなわち、上記した方法と同様にしてセラミックグリーンシート25a、金属ペースト層23a及び高率金属ペースト層21aをそれぞれ作製し、セラミックグリーンシート25aの主面に金属ペースト層23a又は高率金属ペースト層21aを印刷する。
【0079】
ついで、各高率金属ペースト層21aが金属ペースト層23aを複数層挟んでそれぞれ配設され、かつ、各高率金属ペースト層21aが積層方向に規則的に配設されるように各グリーンシート25aを積層して積層成形体を作製する。ついで、この積層成形体を焼成することによりセラミック部材37が得られる。
【0080】
焼成条件を調整して高率金属ペースト層21aから金属ペースト層23aに拡散する金属成分M1の量を調節することで、図9に示すような特徴を有するセラミック部材37を作製することができる。図9に示す特徴を有するセラミック部材37では、質量百分率Yが、塊状体含有層21にピークを有し、この塊状体含有層21から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層23にわたって漸次減少している(塊状体含有層11が金属成分を含む図2(a),(b)に示す形態の場合)。質量百分率Yが図9に示すような特徴を示すのは、以下の理由からである。
【0081】
すなわち、塊状体含有層21bの質量百分率Xは、前述の通り金属層23bの質量百分率よりも高くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、金属成分の質量百分率差に応じて、塊状体含有層21bの金属成分が焼結途中のセラミック層25bを通過して金属層23bに拡散移動する。この金属層23bは、該金属層23bの隣りにある金属層23bよりも金属成分M1の質量百分率Yが高い状態にあるので、これらの金属層23b,23b間にも濃度勾配が生まれる。
【0082】
したがって、この濃度勾配を駆動力にして金属層23bから金属層23bへの金属成分の拡散移動が生じることになる。このような拡散移動は、塊状体含有層21bから積層方向両側の2層以上の金属層23bにわたって順次生じていく。これにより、質量百分率Yが、塊状体含有層21にピークを有し、この塊状体含有層21から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層23にわたって漸次減少した構造を有するセラミック部材37を得ることができる。焼成時間を長くすると、各金属層の質量百分率Yの差が小さくなり、最終的にはほぼ同じ値に近づいていく。
【0083】
このような構造を有しているセラミック部材37は、金属成分濃度が急激に変化することなく漸次減少しているので、耐熱衝撃性が強いという利点がある。これは、セラミックスよりも金属の方が熱伝導特性に優れていることと、金属組成により熱伝導特性が変化するということに起因している。すなわち、金属成分濃度が急激に変化することなく漸次減少していることで、セラミック部材内の熱伝導特性の変化を抑制することができる。
【0084】
図10は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図10に示すように、このセラミック部材28は、金属層22,塊状体含有層24がセラミック層26を介してそれぞれ積層されたものである。
【0085】
塊状体含有層11が金属成分を含む図2(a),(b)に示す形態の場合、金属層22を両側から挟んで隣り合う金属層24は、金属層22よりも質量百分率Yが低くかつ空隙率が高いことが好ましい。
【0086】
このセラミック部材28は、金属成分M1を含む金属層22(第1金属層22)と、金
属層22より空隙が多い塊状体含有層24(第2金属層24)と、これらの金属層に挟まれたセラミック層26とからなる2つの3層構造を含んでいる。また、このセラミック部材28は、金属層22(第1金属層22)を共有する2つの3層構造からなる5層構造を備えている。
【0087】
このような塊状体含有層24を備えたセラミック部材28を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図11(a)〜(c)は、図10に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層22a,24aがセラミックグリーンシート26aを介して積層された積層成形体28aを作製する工程と、この積層成形体28aを焼成する工程とが含まれている。
【0088】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート26aを複数枚作製し、各グリーンシート26aの一方の主面に金属ペースト層22a又は24aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層22aの積層方向両側に金属ペースト層24aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体28aが得られる(図11(a))。
【0089】
金属ペースト層22a及び金属ペースト層24aには主成分として金属成分M1が含まれている。金属ペースト層22aは、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層24a,24aよりも質量百分率Xが低くなるように調製されている。以下、金属ペースト層22aのことを低率金属ペースト層22aという。
【0090】
本実施形態が上記した基本構造と異なるのは低率金属ペースト層22aの両側に金属ペースト層24aが配置されている点である。このように両側に金属ペースト層24aが配置されている場合には、積層成形体28aを焼成することによって両側の金属ペースト層24aの金属成分M1が低率金属ペースト層22aに拡散する。
【0091】
本実施形態では、塊状体含有層24bに挟まれる金属層22bの質量百分率Xが金属層24b,24bの質量百分率よりも低くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、金属成分の質量百分率差に応じて、両側の塊状体含有層24bの金属成分が焼結途中のセラミック層26bを通過して金属層22bの両側から拡散移動する(図11(b))。これにより、図11(c)に示すようなセラミック部材28が得られる(図11(c))。金属層22は、塊状体含有層24から金属成分が拡散
移動してくるので、比較的緻密な金属層となる。
【0092】
低率金属ペースト層22aにおける質量百分率Xは積層方向に両側に隣り合う金属ペースト層24aよりも低く設定すればよい。これらの質量百分率差(金属ペースト層24aの質量百分率XH−低率金属ペースト層22aの質量百分率XL)は、特に限定されるものではない。
【0093】
金属成分M1が銀であり、金属成分M2がパラジウム又は白金である場合を例に挙げると、質量百分率差は以下の範囲であるのが好ましい。金属成分M1の拡散が進行しやすくなるという点で質量百分率差は0.1以上であるのが好ましい。また、金属成分M1が低率金属ペースト層22aに過度に拡散して隣接するセラミック層同士が接合するのを抑制するという点で、質量百分率差が30以下であるのが好ましい。したがって、質量百分率差は0.1以上30以下であるのがよい。
【0094】
上記したように金属成分M1の拡散速度を速くするという点で、質量百分率差は1以上であるのが好ましい。また、上記したような相互拡散の現象をより活発に生じさせるという点で、質量百分率差は2以上であるのが好ましい。
【0095】
本実施形態の場合、低率金属ペースト層22aに対して積層方向両側に位置する金属ペースト層24aから低率金属ペースト層22aへ銀が拡散してくる。この形態の場合において、金属成分M1の拡散速度を抑えてセラミックスの焼結密度を高める点では、質量百分率差が25以下であるのがより好ましい。
【0096】
また、質量百分率Xにより拡散開始温度が変動することから、焼成炉の昇温加熱中にセラミック部材の温度分布が不均一になった場合でも、2層の金属ペースト層24aから低率金属ペースト層22aへの金属成分M1の拡散開始のタイミングを安定させるためには、質量百分率差は10以上であるのがよい。したがって、質量百分率差は、10以上25以下であるのがさらに好ましい。
【0097】
図12は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材127を示す断面図である。図12に示すように、このセラミック部材127は、塊状体含有層121,金属層123がセラミック層125を介してそれぞれ積層されたものである。
【0098】
塊状体含有層121は、この金属層121の一部に他の領域122よりも空隙が多い一部の領域124を備えている。一部の領域124は、他の領域122及び金属層123よりも質量百分率Yが高くかつ空隙率が高いことが好ましい。以下、一部の領域124のことを多孔質領域124という。
【0099】
このような金属層121中に多孔質領域124を備えたセラミック部材127を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図13(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【0100】
この製造方法には、金属ペースト層121a,123aがセラミックグリーンシート125aを介して積層された積層成形体127aを作製する工程と、この積層成形体127aを焼成する工程とが含まれている。
【0101】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート125aを複数枚作製し、各グリーンシート125aの一方の主面に金属ペースト層121a又は123aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層121aの積層方向両側に金属ペースト層123aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体127aが得られる(図13(a))。この
とき、金属ペースト層121aは、他の領域122用の金属ペースト層122aと一部の領域124用の金属ペースト層124aとからなる。
【0102】
金属ペースト層121a(122a,124a)及び金属ペースト層123aには主成分として金属成分M1が含まれている。金属ペースト層124aは、金属ペースト層122aよりも質量百分率Xが高くなり、かつ、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層123a,123aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、金属ペースト層124aのことを高率金属ペースト層121aという。
【0103】
高率金属ペースト層124aの両側に金属ペースト層123aが配置されている場合には、積層成形体127aを焼成することによって高率金属ペースト層124aの金属成分M1が同一面内での拡散よりも優先的に両側の金属ペースト層123aに拡散することになる。
【0104】
図13(a)に示す積層成形体127aは、上述したのと同様に、図13(b)に示す焼結途中の段階を経て、図13(c)に示すセラミック部材127となる。このようにして、同一
層内に空隙率の異なる領域(多孔質領域124および他の領域122)を形成することができる。
【0105】
図14は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図14に示すように、このセラミック部材27′では、塊状体含有層29が、この塊状体含有層29に対して積層方向に隣接するセラミック層25,25間に点在した複数のセラミック塊状体(または金属塊状体(部分金属層))29a,29a,・・・により構成され、これらの塊状体29aは互いに離隔して配置されている。
【0106】
複数の塊状体29aは、空隙29bを介して互いに電気的に絶縁された状態にある。すなわち、塊状体含有層29は、この塊状体含有層29を平面視したときに、セラミック層25上に複数の塊状体29aが点在したような形態である。このように塊状体29aが空隙を介して配置されていることで、この体含有層29は優れた応力緩和層として機能するとともに、優れた絶縁性をも有している。
【0107】
上記のようなセラミック部材は、例えば、セラミック層にZnO、SnO2、TiO2、ZrO2などのガスセンサに採用されるセラミック材料を用いて、金属層及び塊状体含有層に通電してセラミック層の電気抵抗を計測することでガスセンサとして用いることができる。また、フィルタにおいては、セラミック層に用いられる、コーディエライト、アルミナ、ZrO2などのセラミック材料を用いて塊状体含有層を形成することができる。そして、塊状体含有層で排気ガス中に含まれる有害物質を除去するフィルタとして用いることができる。また、セラミック層にZrO2に代表される固体電解質材料のセラミック材料を用いて、所定の雰囲気にさらして金属層及び塊状体含有層から起電力を得ることで燃料電池として用いることができる。さらに、セラミック層に、BaTiO3やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ZnOなどの圧電材料を用いて、金属層及び塊状体含有層に通電して駆動させるか、逆に起電力を得ることができる圧電素子として用いることができる。
【0108】
本発明のセラミック部材における塊状体含有層の空隙率は、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。空隙率は、質量百分率X、焼成時間、焼成温度等を適宜調整することによって変化させることができる。
【0109】
<ガスセンサ素子>
図3に示したセラミック部材17はガスセンサ素子として用いることができる。このセラミック部材17をガスセンサ素子に適用する場合、セラミック層15を構成する材料として、例えばZnO、SnO2、TiO2に代表される酸化物半導体特性を示すセラミック材料を用いることができる。上記のような酸化物半導体セラミック材料を用いて、金属層13及び塊状体含有層11に通電してセラミック層15の電気抵抗を計測するとガスセンサとして機能する。
【0110】
また、セラミック層15を構成する材料として、ZrO2に代表される固体電解質を用いることもできる。セラミック層15を挟んで異なる酸素濃度を有する気体が接すると、酸素濃度の差、すなわち酸素濃淡の差に起因してセラミック層15中の酸素イオンと自由電子の移動が生じる。
【0111】
高温雰囲気下で使用する場合、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層13と、空隙率が高い金属層11とは、金属成分M1を主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。このため、電池として機能させた際に金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを極力抑えることができるので、安定に使用できる耐久性の高い素子とすることができる。
【0112】
セラミック層15に常に大気と接するようにして、セラミック層15を挟んで反対側の面に測定したいガスを接するようにすると、酸素センサとして機能する。このとき、空隙率が高い塊状体含有層11に検知したいガスが接するようにして、金属層13に参照ガスとして大気が接するようにすればよい。
【0113】
図15は、優れた特性を有する本発明の他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。このガスセンサ素子41は、セラミック層43にZrO2に代表される固体電解質を用いている。空隙率の高い金属層45に検知したいガスが接するようにして、空隙率が高い塊状体含有層47には大気が接するようにする。金属層45に接するガスが金属層47に接することがないように、外部電極49とセラミック層51で塊状体含有層47を周囲から封じる。これにより、固体電解質であるセラミック層43の両側の主面に酸素濃度の異なる気体が接するようにすることができる。このガスセンサ素子には、ガス導入孔が設けられている。
【0114】
比較的緻密な金属層53を外部電極49に接続することで、検知した信号を緻密な電極(金属層53)を通じて高速で伝達することができる。すなわち、外部電極49は参照ガスである大気を導くガイドとしても機能し、さらに、信号を高速伝送させる機能をも有している。
【0115】
セラミック層51とセラミック層55との間に金属層53を埋設させることで、たとえガスセンサ素子が高温雰囲気に晒されたとしても、金属層53の酸化が抑制されるので、耐久性の高い素子とすることができる。
【0116】
セラミック層51,55を、耐熱特性があり熱伝導性能の高いアルミナセラミック材料で構成すると、ガスセンサ素子を加熱して用いる際に急速加熱が可能で、立ち上がり速度の速い酸素センサとすることができる。
【0117】
さらに、セラミック層43,51,55をZrO2に代表される固体電解質で構成することで、焼成時のセラミックスの収縮をほぼ同一にすることができるので、焼成が容易になり、焼成後の熱膨張の差から生じる応力の発生が低減される。これにより、耐久性の高い素子とすることができる。
【0118】
図16は、ガスセンサ素子の他の実施形態を示す断面図である。このようにセラミック層55に発熱体57が内蔵されたヒータ一体型酸素センサとすることもできる。
【0119】
次に、図15に示すガスセンサ素子の製造方法について説明する。まず、CaやYを添加したZrO2セラミック(安定化ジルコニア)の粉末を上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、上述と同様にしてスラリーをセラミックグリーンシートに成形する。
【0120】
次に、金属層53を形成するための金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得られる。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0121】
ついで、空隙率の高い塊状体含有層47を形成するための金属ペースト(高率金属ペースト)を作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得られる。この金属ペーストをグリーンシートにスクリーン印刷等によって印刷する。
【0122】
そして、これらの金属ペースト層が形成されたグリーンシートを積層し、高率金属ペーストの上にさらにもう一枚のグリーンシートを積層し乾燥することで積層成形体を得る。金属ペースト層の厚みは1〜40μm程度であるのがよい。
【0123】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。これにより、銀濃度の高い金属層47から金属層53へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される。
【0124】
次に、主に白金からなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して金属ペーストを作製する。これを上記焼結体に金属層45となる箇所にスクリーン印刷等によって印刷して800〜1000℃で焼成すると、セラミックス層を緻密に焼結することはできるが、セラミックスよりも液相点が高温である白金は緻密な焼結体とはならず、空隙率の高い金属層45が形成される。さらに高い空隙率を得るためには、平均粒径1μm白金粉末に平均粒径5μmのアクリルビーズを同量程度添加した金属ペーストを用いれば、さらにポーラスな電極を作製できる。
【0125】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した後、外部電極49を形成する。外部電極49は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0126】
なお、銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。
【0127】
また、図16に示すガスセンサ素子を作製するには、上記の工程に加えて、セラミック層55を形成するセラミックグリーンシート中に、主に白金からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して作製した金属ペーストを発熱体パターン形状に印刷する工程を設ければよい。
【0128】
塊状体含有層(空隙率の高い金属層)の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。また、空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。さらには、供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成するとガス検知機能を向上させる点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0129】
また、塊状体含有層以外の金属層の空隙率は、緻密であるほど電気伝導度が高くなり、高速で信号が伝達可能となるので0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であるとセンサ起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速いセンサとすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0130】
<燃料電池素子>
図17は、本発明の一実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。前述のように固体電解質に酸素濃度の異なる気体を接触させることで発生した起電力を集めて燃料電池とすることができる。大電流を得るためには、いかに少ない体積で多くの燃料電池素子を格納して結合し、効率良く起電力を集積するかが重要になる。
【0131】
図17に示すように、この燃料電池素子61では、酸素が流れる層(いわゆる空気極)に空隙率の高い電極層63を用い、酸素濃度が極めて低い層(いわゆる燃料極)にも空隙率の高い電極層65を用いている。その間のセラミック層67にはZrO2に代表される固体電解質をはさみこむ。これで燃料電池の基本部分は形成できる。
【0132】
外部電極69とセラミック層67,71とで空気極となる電極層63を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極63中に酸素を大量に流すことができる。また、外部電極69を介して緻密な電極層73が空隙率の高い電極層63と接続しているので、起電力を効率良く伝送することができる。
【0133】
外部電極69とセラミック層67,75とで燃料極となる電極層65を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極層65中を酸素濃度が極めて少ないガス(例えば天然ガス)を大量に流すことができる。さらに、外部電極69を介して緻密な電極77が空隙率の高い電極65と接続しているので、起電力を効率良く伝送することができる。
【0134】
燃料電池は、加熱して使用することで、発電効率が向上する。その際、高温雰囲気化で使用していると、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層73,77と、空隙率が高い金属層63,65とは、金属成分M1を主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。
【0135】
このため、電池として機能させた際に金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを抑制できるので、安定した耐久性を有する素子となる。さらに、図18に示すように燃料電池素子を積層して、同極の外部電極同士を接続することで、小型高密度の燃料電池素子を作製することもできる。
【0136】
次に、図17に示す燃料電池素子の製造方法について説明する。まず、CaやYを添加したZrO2セラミック(安定化ジルコニア)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、上述と同様にしてセラミック層67,71,75,79,81用のセラミックグリーンシートを作製する。
【0137】
ついで、金属層73,77用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0138】
ついで、空隙率の高い金属層63,65用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0139】
次に、各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図17に示す構造となるように積層して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0140】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63,65が形成され、比較的緻密な金属層73,77が形成される。
【0141】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極69を形成する。外部電極69は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0142】
なお、銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。図18に示す形態の場合、さらに、上記の工程のうち必要な工程をさらに追加すればよい。
【0143】
塊状体含有層の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。また、空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。
【0144】
さらには、供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成すると固体電解質が酸素濃度を検知する精度を向上させる点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0145】
また、塊状体含有層以外の金属層の空隙率は、緻密であるほど電気伝導度が高くなり、高速で信号が伝達可能となるので0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であると燃料電池起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速い燃料電池素子とすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0146】
<フィルタ素子>
図19は、本発明の一実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。図19に示すように、このフィルタ素子61では、ガスが流れる層に空隙率の高い電極層63を用い、加熱用あるいは熱伝達用の電極層73を用いている。その間のセラミック層71にはコーディエライト、アルミナに代表されるセラミック層をはさみこむ。これでフィルタの基本部分は形成できる。さらに、セラミック層67,79とで空隙率の高い電極層63を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極63中にガスを大量に流すことができる。
【0147】
また、空隙率の高い電極層63の金属自体が触媒として機能して、局所的に燃焼したり、選択的吸着することができるので、選択的に特定の物質を除去することができる。
【0148】
なお、フィルタは、加熱して使用することで、有害物質除去効率が向上する。その際、高温雰囲気化で使用していると、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層73と空隙率が高い金属層63とは、金属成分M1を主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。このため、金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを極力抑えることができるので、安定に使用できる耐久性の高い素子とすることができる。さらに、図20に示すようにフィルタ素子を積層して、同極の外部電極同士を接続することで、小型高密度のフィルタ素子を作製することもできる。
【0149】
次に、図19に示すフィルタ素子の製造方法について説明する。まず、Yや希土類金属の酸化物を添加したコーディエライトセラミック(2MgO−2Al2O3−5SiO2)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、このスラリーから上記したテープ成型法を用いて、セラミック層67,71,79用のセラミックグリーンシートを作成する。ついで、金属層73用の金属ペーストを上記と同様にして作製する。
【0150】
次に各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図19に示す構造となるように積層
して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。また積層成型体は、裁断して所望の形態にすることができる。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0151】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63が形成され、比較的緻密な金属層73が形成される。
【0152】
図20、21、22に示す形態の場合、さらに、上記の工程のうち必要な工程をさらに追加すればよい。図22においては、空隙率の高い金属層63をパターン印刷すれば良い。
【0153】
また、塊状体含有層63に含まれるセラミック粉末をセラミック層71を構成する材料と同じコーディエライトセラミックを用いることで、焼成時に液相として形成されると同時に、液相から析出した時点で、周囲の金属粒子と強固な結合を生み出す。
【0154】
塊状体含有層(空隙率の高い金属層)の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成するとフィルタに担持された金属粒子が触媒として機能を向上させる。この点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0155】
また、金属層は緻密であるほど熱伝導特性が高くなり、高速でフィルタ温度を所望の温度へ到達可能となるので、塊状体含有層以外の金属層(比較的緻密な金属層)の空隙率は0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であるとフィルタ起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速いフィルタ素子とすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0156】
<積層型圧電素子>
図23は、本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。この積層型圧電素子91は、内部電極として機能する複数の金属層93及び塊状体含有層95がセラミック層97を介して積層された積層体を備え、この積層体の側面に一対の外部電極101,101が形成された構造を有している。積層体の積層方向両端側には、圧電駆動に寄与しないセラミック層(不活性層)99をそれぞれ配設してもよい。
【0157】
塊状体含有層95は、積層方向に隣り合う第1金属層93よりも空隙が多い。この塊状体含有層95は、図2(a)〜(c)のいずれの形態であってもよい。
【0158】
セラミック層97の材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料を用いる。金属層93及び塊状体含有層95は、積層体の対向する側面に交互に露出するように配置されている。これにより、金属層93間に配置されたセラミック層97に外部電極101を通じて電圧を印加することができる。電圧が印加されることで素子が伸縮して圧電アクチュエータとして機能する。
【0159】
この積層型圧電素子91では、塊状体含有層95は空隙率が高く、金属層93は比較的緻密になるように形成されているので、緻密で信号伝達速度の速い金属層93に電圧が集中しやすい。空隙率が高く抵抗が大きい塊状体含有層95には、比較的小さな電圧しか印
加されない。
【0160】
塊状体含有層95の空隙率が高いことから、この塊状体含有層95が隣接するセラミック層97と接触する電極面積が小さくなるので、電圧を印加したときに逆圧電効果で変形するセラミック層97の領域が、緻密な金属層93に隣接するセラミック層97よりも小さくなる。したがって、金属層93に挟まれたセラミック層97の圧電変位量は大きくなり、隣接する金属層の少なくとも一方が空隙率の高い塊状体含有層95であるセラミック層97の圧電変位量は小さくなる。
【0161】
本実施形態では、変位する領域と変位しない領域の境界部分に存在する不活性層であるセラミック層99に、上記のような空隙率の高い塊状体含有層95を隣接させて配置しているので、この塊状体含有層95が応力緩和層として機能する。このようにセラミック層97を挟む内部電極の少なくとも一方が、空隙率が高く抵抗が大きい塊状体含有層95であることにより、これに隣接するセラミック層97の圧電変位量が小さくなって応力緩和効果が得られる。これにより、耐久性の高い積層型圧電素子が得られる。
【0162】
図24は、本発明の他の実施形態にかかる積層型圧電素子91′を示す断面図である。この積層型圧電素子91′が積層型圧電素子91と異なる点は、空隙率の高い塊状体含有層95が積層方向に隣り合う金属層93と同極の外部電極101に接続されている点である。このような構成にすることで、塊状体含有層95及びこれに隣り合う金属層93に挟まれたセラミック層97には電圧が印加されないので圧電変位を起こさない。素子内に変位する箇所と変位しない箇所が存在するとその境目に応力が集中するが、この境目に圧電体からなるセラミック層97が存在すると、応力に応じて圧電体が変形して応力が緩和される。
【0163】
仮に、隣り合う緻密な金属層を同極の外部電極に接続しこれらの間にセラミック層を配置した場合、セラミック層は金属層に強く拘束されるので応力緩和効果が小さく、応力が集中しやすくなる。一方、本実施形態のように、セラミック層97を挟む金属層の少なくとも一方が空隙率の高い塊状体含有層95であると、セラミック層97と空隙率が高い塊状体含有層95との接合面積が少ないことに起因して拘束力も小さくなる。また、同極で挟まれたセラミック層97だけでは応力が吸収しきれないときであっても、空隙率が高い塊状体含有層95のクッション効果で応力緩和効果をより高めることができる。
【0164】
また、想定外の大きな応力が加わって金属層93にクラックが入ったり、同極で挟まれたセラミック層97にクラック等が入ったとしても、同極同士でセラミック層97を挟んでいるので短絡する等の不具合が生じるのを抑制できる。
【0165】
また、図2(a)のような形態の場合、空隙率が高い塊状体含有層95が電極として機能
し、異なる電極でセラミック層97を2層挟むことになるので、厚みあたりの印加電圧が半分になって駆動変形が小さくなる分、応力緩和効果が大きくなる。これにより、性能の安定した積層型圧電素子とすることができる。
【0166】
次に、図23に示す積層型圧電素子91の製造方法について説明する。まず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、このスラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法を用いて、セラミック層97,99用のセラミックグリーンシートを作製する。
【0167】
ついで、金属層93用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを
上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。一方で、空隙率の高い塊状体含有層95用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0168】
次に各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図19に示す構造となるように積層して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0169】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い塊状体含有層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成される。
【0170】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極101を形成する。外部電極101は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0171】
銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い塊状体含有層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。
【0172】
図25は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子111を示す断面図である。図25に示すように、本実施形態の積層型圧電素子111は、複数の金属層93及び複数の塊状体含有層95がセラミック層97を介して積層された積層体を備え、この積層体の側面に一対の外部電極101,101が形成された構造を有している。
【0173】
この積層型圧電素子111では、積層方向に隣り合う両側の金属層93よりも空隙が多い塊状体含有層95が、複数の金属層93を介して配置されている。複数の塊状体含有層95は積層体の積層方向に規則的に配置されている。このように空隙率の高い塊状体含有層95が複数の金属層93を介して配置されることで、積層体の強度が低下するのを抑制している。また、複数の塊状体含有層95が積層方向に規則的に(所定の規則に従って)配置されていることで、積層方向に満遍なく応力緩和効果を発現させることができる。
【0174】
ここで、塊状体含有層が「規則的に配置されている」とは、複数の塊状体含有層が配置される間隔がすべて同じである場合はもちろんのこと、積層体に生じる応力を積層方向に効果的に分散させることができる程度に、各塊状体含有層の配置間隔が近似している場合も含む概念である。具体的には、塊状体含有層の配置間隔は、各塊状体含有層の配置間隔の平均値に対して好ましくは±20%の範囲内、より好ましくは±15%の範囲内、さらに好ましくはすべて同数であるのがよい。
【0175】
塊状体含有層95が図2(b)または図2(c)の形態のように塊状体含有層95に対して積層方向に隣接する2つの圧電体層97,97間に点在した複数のセラミック塊状体(および金属塊状体)により構成されたものである場合には、図2(a)のように金属層中に独立
した多数の空隙を有するスポンジ状の形態である場合と比較して応力緩和層が著しく向上する。
【0176】
この積層型圧電素子111における塊状体含有層95は、該塊状体含有層95に対して積層方向に隣り合う両側の金属層93,93よりも厚みが薄くなっているのが好ましい。厚みの小さい塊状体含有層95は厚みの大きい金属層93よりも変形しやすい。金属層が
変形する際には、圧電体層97の変位により生じる応力を吸収することができる。したがって、厚みが薄い塊状体含有層95を図21のように規則的に配置することにより、積層型圧電素子111の変位により生じる応力を効果的に吸収することができる。
【0177】
塊状体含有層用の金属ペースト層における質量百分率Xが他の金属層用の金属ペースト層における質量百分率Xよりも高くなるように調製することにより、金属成分の質量百分率差に応じて、塊状体含有層の金属成分が焼結途中のセラミック層を通過して隣り合う金属層に拡散移動することを利用することができる。すなわち、例えば焼成前に金属ペースト層の厚みが同程度であっても、金属成分が拡散した後の塊状体含有層の厚みは、他の金属層の厚みよりも薄くなる。
【0178】
また、塊状体含有層95の厚みを小さくする他の方法としては、例えば、セラミックグリーンシートに金属ペースト層を印刷する際に、塊状体含有層用の金属ペースト層の厚みを他の金属層用の金属ペースト層の厚みよりも薄くする方法が挙げられる。
【0179】
また、積層型圧電素子111における塊状体含有層95は、この塊状体含有層95に対して積層方向に隣り合う両側の金属層93,93よりも電気抵抗が高くなっているのが好ましい。電気抵抗の高い塊状体含有層95に隣接する圧電体層97は、電気抵抗の低い金属層93に隣接する圧電体層97と比較して変位量が小さくなる。このような変位の小さな圧電体層97が積層型圧電素子111中に複数存在することによって、変位によって生じる応力の分布を分散させることができるので、クラック等の不具合が発生するのを抑制することができる。
【0180】
塊状体含有層95の電気抵抗を他の金属層93よりも高くするには、いくつかの方法がある。すなわち、塊状体含有層95の断面積を他の金属層93よりも小さくする方法が挙げられる。具体的には、厚みを薄くしたり、空隙を多くすることにより断面積を小さくすることができる。また、塊状体含有層95の材料として抵抗値の高いものを用いる方法もある。
【0181】
また、積層型圧電素子111における塊状体含有層95は、質量百分率Yが積層方向に隣り合う両側の金属層93よりも高くなっているのが好ましい。特に、質量百分率Yが、塊状体含有層95にピークを有し、この塊状体含有層95から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層93にわたって漸次減少しているのがよい。
【0182】
このような構造を有している積層型圧電素子111は、複数の金属層において金属成分濃度が徐々に変化しているので、耐熱衝撃性が優れているという利点がある。これは、セラミックスよりも金属の方が熱伝導特性に優れていることと、金属組成により熱伝導特性が変化するということに起因している。すなわち、複数の金属層において金属成分濃度が徐々に減少していることで、セラミック部材内の熱伝導特性の急激な変化を抑制することができる。
【0183】
図26は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子112を示す断面図である。図26に示すように、積層型圧電素子112は、塊状体含有層95と該塊状体含有層95以外の金属層93とが交互に配置されている。これにより、各圧電体層97は、塊状体含有層95と金属層93に挟まれることになる。応力緩和効果に優れた塊状体含有層95が、駆動変位する全ての圧電体層97に接していることにより、応力緩和効果をより高めることができる。多孔質の金属層と緻密質の金属層とが交互に存在することで、金属層93は圧電体層97に電圧を引加して圧電変位を可能とする。
【0184】
圧電体層97を介して反対側の塊状体含有層95では、多孔質であるがゆえに金属層が
圧電体層97をクランプする力が弱いので応力の発生が少ない。したがって、圧電体層97はクランプされていないような状態となるので、大きな変位を発生させることができるとともに、金属層93と圧電体層97との間で生じた応力をも緩和することができる。
【0185】
積層型圧電素子112では、塊状体含有層95を内部電極として機能させる場合には、塊状体含有層95の空隙率が7%以上70%以下であるのが好ましい。空隙率が70%以下であることにより、塊状体含有層95の導電性が低下するのを抑制し、隣接する圧電体層に十分な電界を与えることができ、変位量を大きくすることができる。一方、空隙率が7%以上であることにより、この塊状体含有層95に隣接する圧電体層との接合力が過度に強くなるのを抑制することができる。その結果、駆動時に塊状体含有層95と圧電体層97との界面にクラックが発生しやすくなるので、クラックが圧電体層自体に発生するのを抑制できる。
【0186】
また、塊状体含有層95の絶縁性を高める場合には、塊状体含有層95の空隙率が24〜98%、より好ましくは24〜90%であるのがよい。これにより、絶縁性を高めることができる。また、金属層が圧電体を拘束する力を小さくして、駆動時の応力を減少させることができる。
【0187】
圧電体を駆動変位が大きくできる点で50〜90%であるのがより好ましい。さらには、空隙の空気層が断熱効果を生み、積層型圧電素子の耐熱衝撃特性が優れる点で70〜90%であるのがさらに好ましい。また、より高い絶縁性を付与する点で空隙率が70%以上であるのがよい。
【0188】
塊状体含有層以外の金属層の空隙率は、電気伝導特性を高め、圧電体の駆動電圧を効率的に印加できる点で0.1〜40%であるのが好ましい。また、さらに電気伝導を高めて、圧電体を大きく変位させることができる点で0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0189】
また、この積層型圧電素子112では、複数の金属層の積層方向両端に、塊状体含有層95がそれぞれ配置されているのが好ましい。積層型圧電素子112では、セラミック層(不活性層)99との境界部分に特に高い応力がかかりやすい。したがって、セラミック層99に隣接する金属層を塊状体含有層95とするのが好ましい。さらに、複数の塊状体含有層95の中でも、セラミック層99に隣接する塊状体含有層95の空隙率をより高くするのが好ましい。
【0190】
この積層型圧電素子112では、塊状体含有層95を内部電極として機能させる場合には、塊状体含有層95が正極であることが望ましい。応力の集中する圧電体層と金属層との境界部分では、エッジ効果により、局所的に電界の集中が生じて局所的な駆動変形が生じる。これとともに、応力による圧電体の結晶構造の相転移とが併発して、局所的に発熱することがある。この時、発熱した温度での圧電体の酸素イオンが解離する酸素分圧よりも、積層型圧電素子周囲の酸素分圧が低いという条件が成立すると、局所的に圧電体にイオン伝導体となる酸素空孔が発生し、積層型圧電素子の特性が変化する原因となることがある。
【0191】
さらに、イオン化した酸素空孔はマイナスの電荷を有しているので、正極側の金属層は、負極側と比較してイオン化した酸素空孔のマイグレーションが生じやすい。すなわち、正極側の金属層の空隙率を高めることで、圧電体周囲に酸素が供給されやすくなるので、酸素空孔の発生が抑制され、耐久性の低下を抑制できる。
【0192】
図27は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子113を示す断面図である。図27に示すように、積層型圧電素子113は、金属成分M1を含む金属層93と
塊状体含有層95′が圧電体層97を介して積層されたものである。複数の金属層は、積層方向に隣り合う両側の塊状体含有層95′よりも空隙が少ない緻密質金属層93′を複数含んでいる。金属層95′は塊状体含有層である。
【0193】
応力緩和効果に優れた塊状体含有層95′が、1層だけのときには素子に加わる応力がその周辺に集中しやすい傾向にある。塊状体含有層95′の隣の金属層93に接する圧電体層97は駆動変位することから、塊状体含有層95′の隣の金属層93と素子表面との間に挟まれた圧電体部分に応力が集中しやすくなる。
【0194】
このため、この金属層93と素子表面との間に挟まれた圧電体部分を、応力緩和効果に優れた塊状体含有層95′ではさみこむことで、局所的に集中した応力を緩和させることができる。しかも、近接した2層の応力緩和層(塊状体含有層95′)で応力が緩和されるため、応力緩和効果が非常に高い。
【0195】
さらに、図27のように、塊状体含有層95′に挟まれた緻密質金属層93′が接続される外部電極の極性を素子の積層方向に互い違いにすることで、緻密質金属層93′が外部電極に拘束されることによって生じる応力を均一に分散することができる。これにより、応力緩和効果を著しく高めることができる。
【0196】
本発明の積層型圧電素子においては、塊状体含有層に対して積層方向の両側に隣り合う2つの金属層は互いに異なる極の外部電極に接続されているのが好ましい。素子の駆動時に塊状体含有層が積層体に生じる応力をより効果的に吸収することができる。塊状体含有層が隣り合う同極の内部電極に挟まれた2つの圧電体層間に配置されているときには、塊状体含有層に隣接する圧電体層は内部電極に電圧が印加されても駆動しない。このように塊状体含有層が同極に挟まれている場合には、駆動する部分と駆動しない部分ができてその境界付近に応力が集中しやすくなる。一方、塊状体含有層が隣り合う異極の内部電極に挟まれているときには、上記のような応力集中が生じにくい。
【0197】
図28(a)は、本実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、図28(b)は、この積層型圧電素子における圧電体層と内部電極層(金属層)との積層状態を説明するための部分断面図である。
【0198】
図28(a)、(b)に示すように、この積層型圧電素子は、複数の圧電体層107が内部電極層102を介して積層された積層体104を有している。積層体104の側面には、複数の内部電極層102が一層おきに接続された一対の外部電極105が形成されている。複数の内部電極層102は、圧電体層107の主面全体には形成されておらず、圧電体層107の主面の面積よりも内部電極層102の面積が小さい構造、いわゆる部分電極構造となっている。これらの内部電極層102は、積層体104の互いに対向する側面に交互に露出するように積層されている。
【0199】
この積層型圧電素子では、上記したように内部電極層102が部分電極構造となっているため、外部電極105,105に電圧を印加すると、圧電体層107の上下に位置する2枚の内部電極層102に挟まれた部分、すなわち一方の内部電極層102が他方の内部電極層102に対して積層方向に重なり合う領域(変位部170)のみが変位する。一方、圧電体層107のうち、図28(b)に示すように内部電極層102が形成されていない
部分(周縁部131)では、圧電体層107は変位しない(非変位部171)。
【0200】
本発明の積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、半田により外部電極105にリード線106を接続固定し、リード線106を外部電圧供給部に接続すればよい。この外部電圧供給部からリード線106を通じて外部電極105,105に所
定の電圧を印加することで、各圧電体層107を逆圧電効果により変位させることができる。
【0201】
図28(b)に示すように、この積層型圧電素子は、積層方向に隣り合う2つの圧電体層
107,107間に位置し、かつ、内部電極層102の側端部102aと積層体104の側面104aとの間に位置する周縁部131を備えている。本実施形態の積層型圧電素子では、複数の周縁部131のうち、少なくとも一つの周縁部131には、セラミック塊状体103および/または金属塊状体(部分金属層)103が複数点在した領域が形成されている。
【0202】
図28(b)に示すように、これらの塊状体103は、周縁部131のほぼ全体に点在し
ている。塊状体103に代えて、圧電性セラミックスよりも変形しやすい他の物質を点在させてもよい。ここでいう「変形」とは、弾性変形、塑性変形、脆性変形などのいずれの形態の変形であってもよい。
【0203】
塊状体103は、周縁部131に内部電極層102と絶縁された状態で点在している。ここで、「内部電極層102と絶縁された状態で点在している」とは、複数の塊状体103が内部電極層102と電気的に導通していない状態にあり、かつ、塊状体103同士が互いに離隔して電気的に導通していない状態のことをいう(図29)。
【0204】
積層体104にある複数の周縁部131のうち、塊状体103を積層体104のどの位置に点在させるかは特に限定されない。例えば、全ての周縁部131(全ての内部電極層102に隣接する周縁部131)に塊状体103を点在させてもよく、任意に選定した周縁部131に点在させてもよい。この実施形態では、塊状体103が点在している周縁部131が複数存在し、これらが、積層体104の積層方向に、2層以上の圧電体層107を隔ててそれぞれ配置されている。
【0205】
塊状体103を構成する材料としては、圧電体と同様の材料や内部電極層102と同様の材料が使用でき、好ましくはPZTや銀パラジウム合金であるのがよい。銀パラジウム合金は、金属の中でも柔らかく変形しやすいので、少量でも非変位部の拘束力を低減させる効果が高い。また、銀パラジウム合金は、金属疲労しにくく、耐酸化性も高いので、積層型圧電素子の耐久性が低下するのを抑制することができる。塊状体103の形状、大きさ、周縁部131に存在する個数などについては特に限定されるものではなく、少なくとも上記のように点在した状態にあればよい。
【0206】
具体的には、塊状体103が点在した周縁部131を積層体104の積層方向から見たときに、周縁部131の面積に対して複数の塊状体103の合計面積が占める割合は、好ましくは0.1〜50%、より好ましくは5〜30%であるのがよい。
【0207】
塊状体103の占める割合が0.1%以上であると、変位部の変位を拘束する拘束力を低減する効果が得られる。塊状体103の占める割合が50%以下であると、抗折強度および絶縁性が過度に低下するのを抑制できる。
【0208】
塊状体103を積層体104の積層方向から見たときの塊状体103の最大径rは、特に限定されるものではない。好ましい塊状体103の最大径rは、周縁部131における内部電極層102と外部電極105の最短距離Lの1/2以下、好ましくは1/10以下であるのがよい。具体例を挙げると、例えば最短距離Lが約1mm程度の場合、領域3の最大径rは、500μm以下、好ましくは100μm以下であるのがよい。これにより、適度な抗折強度および絶縁性を維持できる。
【0209】
また、本実施形態では、塊状体103が点在した周縁部131において、隣り合う塊状体103間の一部または全部には絶縁性セラミック領域が存在し、該絶縁性セラミック領域が、隣り合う圧電体層107,107間を連結している。隣り合う塊状体103間に存在し圧電体層107同士を連結するセラミックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは圧電体層107と同じ材料であるのがよい。
【0210】
圧電体層107の材料としてチタン酸ジルコン酸鉛を使用する場合には、周縁部131において圧電体層107同士を連結する絶縁性セラミックスとしてチタン酸ジルコン酸鉛を使用するのが好ましい。これにより、熱膨張差に起因する不具合の発生を防止できることに加え、圧電体層107同士を結合する高い接合強度を得ることができる。
【0211】
塊状体103が点在した周縁部131は、積層体104の積層方向に等間隔に配置されるのがより好ましい。すなわち、複数の内部電極層102のうち、2層以上の圧電体層107を隔てて等間隔に選ばれた複数の内部電極層102の側端部102aと積層体104の側面104aとの間の複数の周縁部131に、複数の塊状体103が点在しているのがよい。このように等間隔に選ばれた複数の周縁部131に塊状体103を点在させているので、変位性能と抗折強度をよりバランスよく設定することができる。
【0212】
圧電体層107の材料としては、種々の圧電性セラミックスを用いることができ、特に限定されるものではなく、例えばBi層状化合物(層状ペロブスカイト型化合物)、タングステンブロンズ型化合物、Nb系ペロブスカイト型化合物(Nb酸ナトリウムなどのNb酸アルカリ化合物(NAC)、Nb酸バリウムなどのNb酸アルカリ土類化合物(NAEC))、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛等のペロブスカイト型化合物などを例示できる。
【0213】
これらのうち、特に、少なくともPbを含むペロブスカイト型化合物であるのがよい。例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛等を含有する物質が好ましい。これらの中でもチタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸鉛が、大きな変位を付加する上で好適である。圧電セラミックスは、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いものが望ましい。
【0214】
内部電極層102の材料としては、例えば金、銀、パラジウム、白金、銅、アルミニウムやこれらの合金などを用いることができる。合金の具体例としては、銀パラジウム合金などが挙げられる。内部電極層102の厚みは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度である必要があり、一般に、0.5〜7μm程度、好ましくは1〜5μm程度であるのがよい。
【0215】
圧電体層1の厚み、つまり内部電極層2間の距離は50〜200μm程度であるのが望ましい。圧電体層107の厚みが上記範囲にあることによりアクチュエータの小型化および低背化が達成でき、絶縁破壊も抑制できる。外部電極105の材料としては、例えば金、銀、パラジウム、白金、銅、アルミニウム、ニッケルやこれらの合金などを用いることができる。
【0216】
次に、本実施形態にかかるセラミック部材を積層型圧電素子とするために、銀粉末にガラス粉末とバインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを積層体104の対向する側面104a、104aにスクリーン印刷等の方法で印刷し乾燥させる。その後、500〜800℃で焼付けることにより外部電極105を形成することができる。この際、印刷のかわりに、上記銀ガラスペーストを乾燥させた5μm以下の
シートを焼付けてもよい。
【0217】
次に、外部電極105を形成した積層体4をシリコーンゴム溶液に浸漬し、このシリコーンゴム溶液を真空脱気した後、シリコーンゴム溶液から積層体104を引き上げ、積層体104の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、積層体104の側面にコーティングしたシリコーンゴムを硬化させることにより本実施形態にかかる積層型圧電素子が完成する。
【0218】
最後に、外部電極105にリード線を接続し、該リード線を介して一対の外部電極105に3kV/mmの直流電圧を印加して積層体104を分極処理することによって、本発明の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータが完成する。リード線は、外部の電圧供給部に接続され、リード線及び外部電極105を介して金属層102に電圧を印加することで、各圧電体層107は逆圧電効果によって大きく変位する。これにより、例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
(噴射装置)
図30は、本発明の一実施形態にかかる噴射装置を示す概略断面図である。図30に示すように、本実施形態にかかる噴射装置は、一端に噴射孔333を有する収納容器331の内部に上記実施形態に代表される本発明の積層型圧電素子が収納されている。収納容器331内には、噴射孔333を開閉することができるニードルバルブ335が配設されている。
【0219】
噴射孔333には燃料通路337がニードルバルブ335の動きに応じて連通可能に配設されている。この燃料通路337は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路337に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ335が噴射孔333を開放すると、燃料通路337に供給されていた燃料が一定の高圧で図示しない内燃機関の燃料室内に噴出されるように構成されている。
【0220】
また、ニードルバルブ335の上端部は内径が大きくなっており、収納容器331に形成されたシリンダ339と摺動可能なピストン341が配置されている。そして、収納容器331内には、上記した積層型圧電素子を備えた圧電アクチュエータ343が収納されている。
【0221】
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ343が電圧を印加されて伸長すると、ピストン341が押圧され、ニードルバルブ335が噴射孔333を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ343が収縮し、皿バネ345がピストン341を押し返し、噴射孔333が燃料通路337と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
【0222】
また、本発明の噴射装置は、噴出孔を有する容器と、上記積層型圧電素子とを備え、容器内に充填された液体が積層型圧電素子の駆動により噴射孔から吐出させるように構成されていてもよい。すなわち、素子が必ずしも容器の内部にある必要はなく、積層型圧電素子の駆動によって容器の内部に圧力が加わるように構成されていればよい。なお、本発明において、液体とは、燃料、インクなどの他、種々の液状流体(導電性ペースト等)が含まれる。
【0223】
(燃料噴射システム)
図31は、本発明の一実施形態にかかる燃料噴射システムを示す概略図である。図31に示すように、本実施形態にかかる燃料噴射システム351は、高圧燃料を蓄えるコモンレール352と、このコモンレール352に蓄えられた燃料を噴射する複数の上記噴射装置353と、コモンレール352に高圧の燃料を供給する圧力ポンプ354と、噴射装置
353に駆動信号を与える噴射制御ユニット355と、を備えている。
【0224】
噴射制御ユニット355は、エンジンの燃焼室内の状況をセンサ等で感知しながら燃料噴射の量やタイミングを制御するものである。圧力ポンプ354は、燃料タンク356から燃料を1000〜2000気圧程度、好ましくは1500〜1700気圧程度にしてコモンレール352に送り込む役割を果たす。
【0225】
コモンレール354では、圧力ポンプ354から送られてきた燃料を蓄え、適宜噴射装置353に送り込む。噴射装置353は、上述したように噴射孔333から少量の燃料を燃焼室内に霧状に噴射する。
【0226】
<その他の実施形態>
(他の実施形態1)
図32は、他の実施形態1にかかる積層型圧電素子を示す斜視図である。図33は、図32におけるA−A線断面図である。図34は、本発明の複合層を含む拡大断面図である。
【0227】
図32及び図33に示すように、本実施形態にかかる積層型圧電素子は、複数の圧電体層1が内部電極402を介して積層された積層体410を有し、この積層体の対向する側面に内部電極402の端部を一層おきに電気的に導通する一対の外部電極404a,404bが接合されている。外部電極404a,404bには、ハンダ等によりリード線406が接続固定されている。内部電極402は、正極の外部電極404aに導通されている第1の内部電極402aと負極の外部電極404bに導通されている第2の内部電極402bとからなる。
【0228】
図33及び図34に示すように、本実施形態の積層型圧電素子は、2つの圧電体層401a,401aと、これらの圧電体層401a,401a間に配置され、塊状体(無機組成物)403aが複数点在してなる塊状体含有層(無機層)403とからなる複合層411が、隣り合う異極の内部電極402a,402b間に配置されていることを特徴としている。
【0229】
複合層411は、異極の内部電極402a,402bに挟まれた2つの圧電体層401a,401aの間に塊状体403aが点在してなる塊状体含有層403を備えているので、塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aには、内部電極402a,402bに電圧が印加されたときに、他の圧電体層401bに比べて低い電界しかからない。従って、塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aは他の圧電体層402bに比べて歪量が小さくなる。これにより、塊状体含有層403と圧電体層401a,401aからなる複合層411が、積層体410全体の歪みによって生じる応力を効果的に吸収することができる。したがって、高電界、高圧力下で長時間連続駆動させた場合においても、圧電体層に過度な応力がかかるのを防止することができるので、耐久性の優れた積層型圧電素子を得ることができる。
【0230】
また、複合層を備えていることで、各圧電体層の変位挙動が一致する共振現象が発生することに起因するうなり音が発生するのを抑制することができ、また、駆動周波数の整数倍の高調波信号が発生するのを抑制してノイズ成分となるのを防ぐことができる。また、複合層を備えていることで、素子の耐久性が向上するので、変位量が次第に変化するのを抑制し、長期間連続運転において安定した変位量が得られる。
【0231】
塊状体403aの大きさは、積層体410の積層方向に垂直な方向の長さが0.1〜100μmであるのが好ましい。塊状体含有層403を構成する塊状体の上記長さを0.1
〜100μmとすることにより、塊状体含有層403の両側に配置された圧電体層401aにかかる電界を低減して、圧電体層401aの歪を低減させ、且つ、積層体410の伸縮によって生じる応力を塊状体403aが分散させて吸収することができる。さらに好ましくは、塊状体403aの上記長さが1〜10μmであるのが好ましい。また、塊状体403aの形状は、略球形であっても、他の形状であっても構わない。なお、塊状体含有層403は、圧電体層間の領域の一部分に形成されていてもよく、全領域に形成されていてもよい。
【0232】
塊状体含有層403は内部電極402よりも空隙403b(低誘電体)が多いことが好ましい。空隙の多さを比較するには、例えば空隙率を測定すればよい。塊状体含有層403における空隙403bの割合(空隙率)を内部電極402よりも多くしておくことにより、さらに塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aには、他の圧電体層1bに比べて、低い電界しかかからず、よりいっそうの応力低減が可能となる。
【0233】
ここで、塊状体含有層403の空隙率は、塊状体403aを点在させ、塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aにかかる電界を効果的に低減させる点から、好ましくは10〜95%、より好ましくは40〜90%であるのがよい。
【0234】
さらに、隣り合う異極の内部電極402a,402b間に積層配置された2つの圧電体層401aとこれらの圧電体層間に配置され、塊状体403aが複数点在してなる塊状体含有層403とからなる複合層411が、積層体410の積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に配置されていることが望ましい。つまり、積層体410の積層方向の両端部には電圧を印加しても圧電変位することのない不活性層409が配置されているが、該積層体410に電圧を印加して駆動させた場合において、圧電変位する圧電体層1と圧電変位しない不活性層409の界面に大きな応力が発生する。複合層411を積層体410の積層方向の端部側に配置することにより、不活性層409と圧電体層1の間に発生する応力を大きく低減することができ、駆動時に不活性層409近傍に働く応力によって圧電体層1にクラックが生じるのを抑制できる。
【0235】
積層体410の積層方向の端部側とは、積層体410の積層方向の端部に配置されている不活性層409の近傍のことであり、好ましくは不活性層409から数えて25番目以内の圧電体層1、より好ましくは10番目以内に形成されているのがよい。塊状体含有層403が複数層存在する場合には、複数層存在する塊状体含有層403の積層方向の端部に複合層411が形成されていることが好ましい。
【0236】
積層体410が、積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に、中央部の圧電体層1よりも層厚が厚い複数の圧電体層を含む応力緩和領域を備え、該応力緩和領域に複合層があることが望ましい。つまり、積層方向の端部側に設けた応力緩和領域では、積層方向中央の圧電体層1よりも層厚が厚い複数の圧電体層1を備えているため、電圧を印加した場合に生じる歪が中央の圧電体層1よりも小さくなる。これにより、電圧が加わらず歪が生じない不活性層409と電圧が加わって歪の生じる活性層の界面近傍に生じる応力を低減することができる。また、応力緩和領域に前述の複合層411を備えているため、応力緩和領域のみを備えている場合よりもまして、駆動時に不活性層409の近傍に生じる応力を低減することができる。これにより、高電界、高圧力下で長時間連続駆動させた場合においても、耐久性に優れた積層型圧電素子を提供することができる。
【0237】
塊状体含有層403を構成する塊状体403aをヤング率の低い金属材料で構成することにより、積層体410が変位して塊状体含有層403に応力が加わった場合においても、金属材料自体が変形できるため、該塊状体含有層403が変位を拘束することなく高変位を得ることができる。
【0238】
塊状体403aを構成する金属成分は、周期律表第8〜10族金属であるNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsから選ばれる少なくとも1種以上と、周期律表第11族金属であるCu,Ag及びAuから選ばれる少なくとも1種以上とからなる合金であるのが好ましい。これは、近年における合金粉末合成技術において量産性に優れた金属組成であるからである。また、塊状体403aを構成する金属成分は周期律表第11族金属単体であってもよい。特には、Ag単体若しくは、Agを主成分とする合金が望ましい。
【0239】
また、塊状体含有層403を構成する塊状体403aを圧電材料で構成することにより、高圧力下で使用した場合において、塊状体含有層403に高い圧縮力が加わっても、塊状体403aを構成する圧電材料が、圧縮力に対して変形できる。このため、応力が集中することがなく、圧電体層1にクラックが生じるのを抑制できる。
【0240】
塊状体含有層403を構成する塊状体403aは、金属材料と圧全材料とからなることが好ましい。これは前述の、金属材料が低ヤング率のため、変位を拘束しない点と、圧電材料が高い圧縮力下で変形できる点からである。
【0241】
塊状体含有層403を構成する金属材料と内部電極402の主成分が同一であることが好ましい。上記金属材料と内部電極402の主成分を同一としておくことにより、圧電体層1と内部電極402及び該金属材料を同時焼成することができ、安価な積層型圧電素子を製造することができる。これに加え、金属材料の主成分を内部電極402の主成分と同じにしておくことにより、焼成時に内部電極402と金属材料の収縮のミスマッチによりデラミネーションが生じるのを抑制できる。
【0242】
また、塊状体含有層403を構成する圧電材料と圧電体層1の主成分とが同じであることが好ましい。塊状体含有層403を構成する圧電材料と圧電体層1の主成分を同じにしておくことにより、圧電体層1と内部電極402及び塊状体含有層403を同時焼成することができ、安価な積層型圧電素子を製造することができる。これに加え、焼成時に圧電体層1と塊状体含有層403の収縮のミスマッチによるデラミネーションの発生を抑制できる。
【0243】
塊状体含有層403を形成するための無機ペーストは次のようにして作製する。塊状体403aを金属材料により構成する場合には、銀や、銀を主成分とする銀−パラジウムなどの合金等の金属粉末に、バインダー、可塑剤等を添加混合して、無機ペーストを作製する。また、塊状体403aを圧電材料により構成する場合には、PZT等の仮焼粉末に、バインダー、可塑剤等を添加混合して、無機ペーストを作製する。さらに、塊状体403aを金属材料と圧電材料とから構成する場合には前記銀や銀を主成分とする銀−パラジウムなどの合金等の金属粉末とPZT等の仮焼粉末に、バインダー、可塑剤等を添加混合して、無機ペーストを作製する。
【0244】
無機ペースト中にアクリルビーズ等の有機物を含有させておくことにより、任意の空隙率をもった塊状体含有層403を形成することができる。これにより、所望とする空隙率をもった該塊状体含有層403を形成することができる。
【0245】
図35に示すように、塊状体含有層403をなす無機ペーストが印刷されたグリーンシートの両隣に内部電極402をなす導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを互いに逆の極になるように積層する。これにより、隣り合う異極の内部電極402間に積層配置された2つの圧電体層401aと、これらの圧電体層401a間に配置され、塊状体403aが複数点在してなる塊状体含有層403とからなる複合層411を形成することができる。
【0246】
さらに、積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に、中央部の圧電体層1を形成するグリーンシートよりも層厚が厚い複数のグリーンシートを積層しておくことにより、中央部の圧電体層よりも層厚が厚い複数の圧電体層を含む応力緩和領域を形成することができる。この応力緩和層に前述ように、塊状体含有層403をなす無機ペーストが印刷されたグリーンシートの両隣に内部電極402をなす導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを互いに逆の極になるように積層する。これにより応力緩和領域に複合層411を備えた積層体410を作製することができる。
【0247】
(他の実施形態2)
図36は、他の実施形態2にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、図37は、図36における圧電体層と内部電極との積層状態を示す部分斜視図である。
【0248】
図36,37に示すように、本実施形態の積層型圧電素子は、複数の圧電体層511aと複数の内部電極512とをほぼ交互に積層してなる積層体513を有し、該積層体513の対向する側面に一対の外部電極515が配設されている。
【0249】
本実施形態の積層型圧電素子は、図36,37に示すように、複数の塊状体含有層(小断面積圧電体層)511bを備えている。この塊状体含有層511bは、積層方向に隣り合う2つの圧電体層511a,511a間に点在した6つの塊状体(部分圧電体層)511cにより構成されている。
【0250】
図38(a)は、積層体513の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層511bを含む平面
で切ったときの断面を示す断面図であり、図38(b)は、図38(a)における塊状体含有層511bに対して積層方向に隣り合う圧電体層511aを含み積層方向に垂直な平面で切ったときの断面を示す断面図である。
【0251】
塊状体含有層511bを含みかつ圧電体層の積層方向に垂直な平面で積層体513を切ったときの断面の面積に対してこの断面内における圧電体の面積(図38(a)中のハッチ
ング部分)が占める割合をXbとし、塊状体含有層511bに隣り合う圧電体層511aを含みかつ圧電体層の積層方向に垂直な平面で積層体513を切ったときの断面の面積に対して該断面内における圧電体の面積(図38(b)中のハッチング部分)の占める割合を
Xaとする。このとき、塊状体含有層511bにおける割合Xbは、積層方向の両側に隣り合う圧電体層511aにおける割合Xaよりも小さくなっている。
【0252】
割合Xa及びXbは、少なくとも(Xb/Xa)<1の関係にあればよいが、好ましくは(Xb/Xa)<0.8、より好ましくは0.1<(Xb/Xa)<0.7、さらに好ましくは0.2<(Xb/Xa)<0.5の関係にあるのがよい。また、割合Xaは、好ましくは0.8〜1.0、より好ましくは0.95〜1.0の範囲にあるのがよい。割合Xbは、好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.1〜0.5の範囲にあるのがよい。これにより、塊状体含有層511bによる応力緩和効果が十分に得られるとともに、塊状体含有層511bに起因する素子の強度低下を抑制することができる。塊状体含有層511bにおける上記割合Xb及び圧電体層511aにおける上記割合Xaは、上記した空隙率の測定方法と同様にして測定することができる。
【0253】
本実施形態にかかる積層型圧電素子は、次にようにして評価することもできる。図39は、積層体513の積層方向に平行な平面で積層体513を切ったときの断面を示す断面図である。ここで、圧電体層の積層方向に平行な平面で積層体513を切ったときの断面内における塊状体含有層511bにおいて、この塊状体含有層511bの面積に対して圧電体の面積が占める割合をYbとし、圧電体層の積層方向に平行な平面で積層体513を
切ったときの断面内における塊状体含有層511bに隣り合う圧電体層511aにおいて、この圧電体層511aの面積に対して圧電体の面積が占める割合をYaとする。このとき、塊状体含有層511bにおける割合Ybは、積層方向の両側に隣り合う圧電体層511aにおける割合Yaよりも小さくなっている。
【0254】
割合Ya及びYbは、少なくとも(Yb/Ya)<1の関係にあればよいが、好ましくは(Yb/Ya)<0.8、より好ましくは0.1<(Yb/Ya)<0.7、さらに好ましくは0.2<(Yb/Ya)<0.5の関係にあるのがよい。また、割合Yaは、好ましくは0.8〜1.0、より好ましくは0.95〜1.0の範囲にあるのがよい。割合Ybは、好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.1〜0.5の範囲にあるのがよい。これにより、塊状体含有層511bによる応力緩和効果が十分に得られるとともに、塊状体含有層511bに起因する素子の強度低下を抑制することができる。塊状体含有層511bにおける上記割合Yb及び圧電体層511aにおける上記割合Yaは、上記した空隙率の測定方法と同様にして測定することができる。
【0255】
本実施形態にかかる積層型圧電素子では、塊状体含有層511bが配設されていることで、塊状体含有層511b周辺の圧電体層511aの変位が小さくなり、塊状体含有層511bから離れた圧電体層511a周辺の変位が大きくなって、素子内に変位の大きい箇所と小さい箇所を分散させることができる。このような塊状体含有層511bを素子内に配置することで、素子に加わる応力を分散させることができる。これにより、応力集中による素子変形の抑圧が緩和されることで素子全体の変位を大きくすることができるだけでなく、素子の変形による応力集中を抑制でき、高電界、高圧力下で長期間連続駆動させた場合でも優れた耐久性が得られる。
【0256】
塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cは、圧電体層511a,11a間にほぼ均一に配設されていることが好ましい。複数の塊状体511cが圧電体層511a,11a間にほぼ均一に配設されているときには、素子変形に伴う応力が一部に集中することがなく、塊状体含有層511bが素子の断面全域にわたって圧電体層の応力緩和層として作用する。
【0257】
素子変形の際に塊状体511cに応力が加わると、加わった圧力の方向に応じて結晶構造が変形する圧電結晶としての応力緩和機能が発現する。そのため、塊状体511cを点在して配置することで、応力を緩和する箇所が増加する。これにより、塊状体511c内でクラックが生じるのを抑制できる。
【0258】
塊状体含有層511bは、積層体513における積層方向の両端に配設された2つの内部電極間の略中央に配設されているのが好ましい。積層体513における積層方向両端に位置する内部電極間の略中央(すなわち、活性層の略中央)は大きな応力が集中しやすい部位であるため、少なくともこの部位に塊状体含有層511bを配設することで素子の耐久性を向上させることができる。
【0259】
上記した内部電極間の略中央の次に重要な配設部位は、積層方向両端に位置する内部電極間の略中央と、積層方向の一端及び他端に位置する内部電極との略中央である(すなわち、活性層の端部から活性層の長さの約1/4隔てた位置)。以下、同様の考え方に基づいて塊状体含有層511bを配置していくのが好ましい。
【0260】
また、積層型圧電素子を燃料噴射装置等に用いる場合、一端に噴射孔を有する収納容器に素子が収納される。この場合、素子の一端側は収納容器の内壁に当接しているので、固定端となる一方で、素子の他端側(収納容器の噴射孔側)は自由端となって自由に伸縮可能となっている。このような場合、固定端側よりも自由端側により大きな応力がかかる傾
向にあるので、自由端側に塊状体含有層511bをより多く配置してもよい。
【0261】
さらに、本発明では、図39に示すように、塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cの一部は、該塊状体511cの厚み方向の両端が隣接する両側の圧電層11aに接しており、塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cの残部は、該塊状体511cの厚み方向の一端のみが圧電体層511aに接していることが望ましい。
【0262】
塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cは、その厚み方向の両端もしくは一端が、隣接する両側の圧電体層11に接している。一端のみが圧電体層511aに接している塊状体511cが存在することで、当該塊状体含有層511bに隣り合う圧電体層511aの自由度がより大きくなるので、変位量を高めるとともに、応力緩和効果も高めることができる。
【0263】
積層方向に平行な平面で積層体513を切ったときの断面内における塊状体511cの幅Wは、積層方向に隣接する圧電体層511aに近づくにつれて漸次小さく又は大きくなるような形状であるのがよい。図39の場合、塊状体511cの幅Wは、厚み方向の中央付近で最大となり、積層方向の両側の圧電体層511aにそれぞれ近づくにつれて漸次小さくなっている。
【0264】
積層型圧電素子が駆動、変位する時に発生する応力を緩和する機能を得るためには、積層型圧電素子が駆動変形したときに、圧電体と内部電極512の界面において発生する応力を一点集中させずに緩和する必要がある。この応力緩和機能をさらに高めるため、塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cの幅Wを、隣接する圧電体層511aの近傍領域において、圧電体層511aに近づくにつれて漸次小さくまたは漸次大きくし、応力の一点集中を抑制している。
【0265】
また、図39に示すように、塊状体含有層511bにおいて、隣り合う複数の塊状体511c間には空隙11dが存在することが望ましい。複数の塊状体511cの間に空隙11dが存在すると、応力がかかった際に、空隙の部分があることで塊状体511cが変形して応力を分散緩和することができる。また、塊状体含有層511bに接する圧電体11aが圧電変位する際、空隙の部分があることで、圧電体11aを部分的にクランプすることになり、全面でクランプするときよりも圧電体11aの束縛される力が小さくなるので、圧電体層511aが変位しやすくなって変位量を大きくすることができる。
【0266】
本実施形態の積層型圧電素子は、図39に示すように、圧電体層の積層方向に垂直な方向に複数の空隙11dが点在していることも大きな特徴である。複数の空隙11dは、積層方向の長さがほぼ均一であるのが好ましい。これにより、素子の幅方向(積層方向に垂直な方向)全体にわたってほぼ均一に応力緩和効果を付与することができる。空隙11dの長さ(積層方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜2.0μm程度であるのがよい。空隙11dの長さが0.1〜10μmであることにより、素子の駆動時における塊状体511cによる緩衝効果が低下するのを抑制するとともに、素子の強度が低下するのを抑制できる。また、塊状体511cの長さの好ましい範囲は、上記した空隙11dの好適範囲と同様である。
【0267】
また、塊状体含有層511bにおいて、隣り合う複数の塊状体511c間に空隙ではなく、ガラス層や樹脂などが存在していてもよい。これにより、塊状体含有層511bに接する圧電体11aに応力が集中するのを抑制できるので、変位量が大きくなるとともに応力一点集中を避けることができる。これにより、素子の変位がより大きくなり、かつ、耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。
【0268】
ガラス成分としては、例えば鉛アルカリけい酸ガラスを例示できる。鉛アルカリけい酸ガラスを用いることで圧電体層との界面強度が高く、積層型圧電素子の製造工程における破損を低減できるという効果がある。また、ガラス成分としては、例えばシリカガラスを用いてもよい。シリカガラスも鉛アルカリけい酸ガラスと同様に圧電体層との界面強度が高く、積層型圧電素子の製造工程における破損を低減できるという効果がある。樹脂成分としては、例えばエポキシ樹脂を例示できる。エポキシ樹脂を用いることで効果的に応力の集中を緩和できるという効果がある。樹脂成分としては、例えばポリイミド樹脂を用いてもよい。ポリイミド樹脂を用いることで高温環境下でも駆動できるという効果がある。
【0269】
ガラス成分及び樹脂成分の少なくとも一方を隣り合う複数の塊状体511c間に存在させるには、以下のようにすればよい。即ち、ガラス層を形成する場合は、塊状体含有層511bを圧電セラミックスの仮焼粉末とガラス成分の粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して圧電体・ガラス混合ペーストを作製し、これをグリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。更に銀−パラジウム等の内部電極512を構成する金属粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。そして、塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートと内部電極512を構成する導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを所定の順序で複数積層し、所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成して積層体513が作製される。
【0270】
また、樹脂層を形成する場合は、塊状体含有層511bを圧電セラミックスの仮焼粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して圧電体・ガラス混合ペーストを作製し、これをグリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。更に銀−パラジウム等の内部電極512を構成する金属粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。そして、塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートと内部電極512を構成する導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを所定の順序で複数積層し、所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成して積層体513が作製される。その後に、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などのペーストを塊状体含有層511bの空隙に注入する。注入方法は、樹脂ペーストを含ませたハケを用いて積層体513の側面から表面張力によって空隙に浸透させる、または樹脂ペーストを満たした浴槽に積層体513を浸漬した後に真空容器に入れ、減圧環境下で空隙に樹脂を浸透させる等の方法によって、塊状体含有層511bに樹脂を浸透させた後に、加熱昇温して樹脂を硬化させる事ができる。
【0271】
次に、本発明の積層型圧電素子の製法の一例を説明する。まず、圧電セラミックスの仮焼粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーを用いて周知の方法でセラミックグリーンシートを作製する。
【0272】
次に、塊状体含有層511bは圧電セラミックスの仮焼粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して圧電体ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。バインダー及び可塑剤と圧電体粉末との比を変えることや、スクリーンのメッシュの度数を変えることや、スクリーンのパターンを形成するレジスト厚みを変えることで、塊状体含有層511bの厚みおよび塊状体含有層511b中の空隙等を変化させることができる。この圧電体ペーストに用いる圧電セラミックスの粉末は、焼成工程での収縮差による割れを防止するために、圧電体層511aと同じ粉末を使用することが望ましい。塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートを、必要枚数分準備する。
【0273】
次に、銀−パラジウム等の内部電極512を構成する金属粉末にバインダー及び可塑剤
等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。上記と同様にして内部電極512の厚みおよび内部電極中の空隙等を変化させることができる。そして、導電性ペーストが印刷されたグリーンシート及び塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートを所定の順序で複数積層し、所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成することによって積層体513が作製される。
【0274】
その後、積層型圧電素子の側面に内部電極512と外部電極515間の圧電体部分に溝を形成して、この溝内に、圧電体511よりもヤング率の低い、樹脂またはゴム等の絶縁体を形成する。ここで、前記溝は内部ダイシング装置等で積層体513の側面に形成される。他の部位は上記と同様にして形成すればよい。
【0275】
なお、本実施形態における塊状体含有層は、図40(a)や図40(b)に示す形態であってもよい。すなわち、図40(a)に示すように、塊状体含有層21bがランダムに配設され
た複数の塊状体21cからなるような形態であってもよく、また、図40(b)に示すよう
に、塊状体含有層4031bが、圧電体層中に複数の空隙(又は樹脂層)531cがランダムに存在するような形態であってもよい。
【0276】
また、上記実施形態では、図37に示すように内部電極512bが6つの塊状体からなる形態を例に挙げて説明したが、本実施形態では塊状体の大きさ、個数、配置状態等は特に限定されない。したがって、内部電極512bは、大きさの異なる多数の塊状体がランダムに配設されたものであってもよい。また、上記実施形態では、塊状体含有層511bが、内部電極512を介さずに、積層方向の両側の圧電体層511aと隣り合っている場合を例に挙げて説明したが、塊状体含有層511bが、内部電極512aを介して、積層方向の両側の圧電体層511aと隣り合っている形態であってもよい。
【0277】
(他の実施形態3)
以下、本実施形態にかかる積層型圧電素子について詳細に説明する。図41(a)は、本
実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、図41(b)は、図41(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。図42は、図41(a)における本発明の実施形態における外部電極615と積層体615の側面との接合部分の拡大断面図である。
【0278】
図41(a)、(b)に示すように、本実施形態の積層型圧電素子は、複数の圧電体層11と複数の金属層12(12a,12b)とを交互に積層してなる積層体615を有し、該積層体615の対向する側面に一対の外部電極615が配設されている。
【0279】
本実施形態の積層型圧電素子は、図41(a)、(b)に示すように、複数の金属層612のうちの少なくとも一層が、圧電体層11間に空隙を介して互いに離隔された複数のセラミック塊状体(圧電体領域)12cと空隙を介して互いに離隔された複数の金属塊状体(金属領域)12dからなる塊状体含有層612bである。
【0280】
このような塊状体含有層612bが少なくとも1層存在することで、積層型圧電素子全体の変位を大きくすることができるだけでなく、積層型圧電素子の耐久性を向上させることができる。金属層612の少なくとも一層を塊状体含有層612bとしたことで、塊状体含有層612b周辺の圧電体層は変位が小さくなり、金属層612a周辺の圧電体層11は変位が大きくなって、素子内に変位の大きい箇所と小さい箇所を分散させることができる。このような金属層を素子内に配置することで、素子変形による応力を分散させることができる。
【0281】
さらに、塊状体含有層612bが空隙を介して互いに離隔された複数のセラミック塊状体と空隙を介して互いに離隔された複数の金属塊状体で構成されているので、素子に応力が加わった時に応力緩和効果が大きい。その理由は、互いに空隙を介して離隔して配置され、自由度の高くなったセラミック塊状体は応力が加わると、圧電結晶内のイオンの配置が移動して応力方向に応じて結晶の変形が発生し、応力を緩和することができるからである。
【0282】
同様に互いに空隙を介して離隔して配置され、自由度の高くなった金属塊状体は、応力が加わると、変形して応力を緩和することができる。そして、イオンの配置移動によるセラミック塊状体の緩和効果は速度が速く、金属の変形による金属塊状体の緩和は、イオンの移動速度よりは遅いけれどもイオンの移動距離よりも変形距離が大きい。このため、急激な応力に対してはセラミック塊状体が高速度に追随した応力緩和を可能となり、大きな応力や常時加わる応力に対しては金属塊状体が優れた応力緩和効果を示し、耐久性の優れた素子とすることができる。
【0283】
セラミック塊状体が吸収しきれない大きな応力が加わった時には、主に、金属塊状体が緩和効果を主に発現させ、高速の応力にはセラミック塊状体が緩和効果をそれぞれ対応できる。
【0284】
また、塊状体含有層612bを構成する複数のセラミック塊状体612c、複数の金属塊状体612dは、圧電体層間にほぼ均一に、点在していることが好ましい。複数のセラミック塊状体612c、金属塊状体612dが圧電体層間にほぼ均一に点在しているときには、素子変形に伴う応力が一部に集中することを抑制できる。
【0285】
金属塊状体とセラミック塊状体が互いに接した領域を有している場合には、緩和効果がより大きくなる。セラミック塊状体が、金属塊状体を包み込んでいたり、逆に、金属塊状体がセラミック塊状体を包み込んでいる場合には、セラミック塊状体612cと金属塊状体612dとを積層体の積層方向に直列につないだような形態となる。積層方向に加わる応力に対して緩和効果を直列に接続したような効果が生まれ、高速の応力に追随することができる。高速で変位可能なイオンの配置で緩和効果を発現できるので、特に、連続的な応力の繰り返しに対して、緩和効果が大きくなる。また、セラミック塊状体と金属塊状体が積層方向に垂直な方向に隣接している場合には、セラミック塊状体と金属塊状体の緩和効果が積層方向に垂直な方向に並列に接続したような効果が生まれ、様々な方向からの応力を緩和することができる。
【0286】
図41(a)、(b)に示す本実施形態では、塊状体含有層612bは、積層体615中に複数存在している。各塊状体含有層612bは、複数の圧電体層611および複数の金属層612aを介して配置されており、かつ、積層体615の厚み方向に規則的に配置されている。
【0287】
また、塊状体含有層612bを構成する複数のセラミック塊状体612cと複数の金属塊状体612dの比率を変化させることで、圧電体611の変位の大きさを制御できるので、圧電体11の厚みを変える必要がなく、量産性に優れた構造とすることができる。
【0288】
積層方圧電素子を安定した変位で駆動させるためには、塊状体含有層612bは積層型圧電素子が駆動する加重に対して容易には変形しないようにするのがよい。塊状体含有層612bは、複数のセラミック塊状体612cと複数の金属塊状体612dからなるので、加重に対する変形状態をその分布によって調整することが可能となる。
【0289】
セラミック塊状体612cが占める体積V1と金属塊状体612dが占める体積V2の
関係は、V1>V2であることが望ましい。また、塊状体含有層612bにおける、空隙の体積V3を考慮した場合はV3>V2であることが好ましく、V3>V1>V2であることがさらに好ましい。これにより、素子の変位がより大きくなり、かつ、耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。
【0290】
また、図42に示すように、塊状体含有層612bに積層方向両側に隣り合う金属層612eが、当該金属層612eに積層方向両側に隣り合う金属層(塊状体含有層612b及び金属層612f)よりも空隙が少ないことが望ましい。これにより、空隙の少ない緻密な金属層612eの端部と外部電極615との間の接触面積が大きくなって導電材料の拡散が生じやすくなる。この拡散による接合(拡散接合)により、外部電極615の積層体615の側面との接合強度を高めることができる。金属層612eの空隙率は、金属層612fなどの他の金属層の空隙率の95%以下であるのが好ましく、90%以下であるのがより好ましい。
【0291】
さらに、本発明では、塊状体含有層612bに積層方向両側に隣り合う金属層612eが、当該金属層612eに積層方向両側に隣り合う金属層(塊状体含有層612b及び金属層612f)よりも厚みが大きいことが望ましい。これにより、厚みの大きい金属層612eの端部と外部電極615との間の接触面積が大きくなって導電材料の拡散が生じやすくなる。この拡散による接合(拡散接合)により、外部電極615の積層体15の側面との接合強度を高めることができる。金属層612eの厚みは、金属層612fなどの他の金属層の厚みの105%以上であるのが好ましく、110%以上であるのがより好ましい。
【0292】
また、図42に示すように、外部電極615の一部15cが塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体11の間に入り込んでいることが望ましい。このように外部電極615の一部15cが隣り合う圧電体11,11間の一部の領域に入り込んでいることで、積層体615の側面から積層体615中に杭を打ち込んだような構造となる。これにより、外部電極615と積層体615との接合強度が増し、高電解、高圧力下で長期間連続駆動させた場合であっても、外部電極615が積層体615側面から剥離するといった問題が生じるのを防ぐことができる。このため、一部の金属層612aと外部電極615との接続信頼性が向上する。
【0293】
外部電極615が積層体615の側面から隣り合う圧電体611,611間の一部の領域に入り込む深さDは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であるのがよい。深さDがこの範囲にあることで、十分なアンカー効果が得られる。
【0294】
図42に示す本実施形態における外部電極615は、積層体615の側面に垂直な方向に積層された複数の層615a,615bからなる。これらのうち、積層体615の側面側に位置する外部電極層15aは、外表面側に位置する外部電極層615bよりもガラス材料の含有量が多いことが望ましい。積層体615の側面に近接した外部電極層15a中のガラス成分が多いことにより、外部電極615の一部615cが、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣り合う圧電体11の間に入り込みやすくなり、外部電極615と積層体615との接合強度をさらに高めることができる。また、外表面側に位置する外部電極層15bに含まれるガラス成分が外部電極層15aよりも少なくなることで、外部電極615に半田付けにより接続されるリード線の接合強度を高めることができる。これは、半田がガラス成分に対して濡れ性が低いことに起因する。
【0295】
図43は、積層体615を積層方向に垂直な方向に塊状体含有層612bを含む平面で切ったときの断面図である。図43に示すように、圧電体層611,611間に入り込んでいる外部電極615の一部615cが、塊状体含有層612bを構成するセラミック塊
状体612cと金属塊状体612dに接している(接合している)。このように外部電極615の一部615cがセラミック塊状体612cと金属塊状体612dの両方に接していることにより、以下の効果がある。
【0296】
すなわち、外部電極615の導電成分は金属塊状体612dの金属成分と濡れ性が良いので、外部電極615の一部が金属塊状体612dに接していると、これらが強固に接合される。また、外部電極615のガラス成分はセラミック塊状体612cの圧電体と濡れ性がよいので、外部電極615の一部がセラミック塊状体612cに接していると、これらが強固に接合される。さらに、外部電極615の一部が、前述のように、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体611、611間に入り込んでいるので、この入り込んでいる部分で隣接する圧電体11同士をつなぎ止めているため、素子を大きな変位量で駆動させた場合においても、積層体615が塊状体含有層612bを介して剥離するのを防ぐ効果がある。
【0297】
また、素子の駆動時に積層体615が伸縮し変形することにより生じる積層体615と外部電極615との界面での応力は、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体層611,611間に入り込んだ外部電極615の一部615cを介して、圧電体層11に伝播する。この伝播した応力に応じて、外部電極615の一部15cに接する圧電体がの結晶構造が変化し、応力が吸収される。
【0298】
特に、外部電極615の一部615cが金属を主成分とするので、金属自体が変形して応力を緩和する効果が得られるとともに、外部電極615の一部615cがこれに接する圧電体を押圧する力が大きいので、圧電体の結晶構造変化を生じさせやすい。
【0299】
また、圧電体層611が空隙に接した部分では、電圧が印加されず、応力に応じて圧電体が変形できる空間として機能する。このため、結晶構造変化により新たに生じた圧電体内の応力は、空隙に接した部分で緩和されるという、新たな緩和機能を生じさせることができる。
【0300】
さらに、外部電極615の一部15cをセラミック塊状体612cと金属塊状体612d間に枝わかれさせながら侵入させることで、応力を分散させる効果が高まり、さらに応力緩和効果を高くすることができる。これらのことにより、外部電極615と積層体615との接合信頼性がより高められ、耐久性が高く長寿命の積層型圧電素子が得られる。
【0301】
また、積層型圧電素子の表面に外装樹脂(不図示)を被覆し、外装樹脂の一部を隣り合う2つの圧電体層611,611間の一部の領域に入り込ませるのが好ましい。外部電極615の一部だけでなく、外装樹脂の一部も塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体611、611間に入り込んでいるときには、この入り込んでいる部分で隣接する圧電体611同士をつなぎ止めているため、素子を大きな変位量で駆動させた場合においても、積層体615が塊状体含有層612bを介して剥離するのを防ぐ効果がある。
【0302】
さらに、素子の駆動時に積層体615が伸縮し変形することにより生じる積層体615と外装樹脂との界面での応力は、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体層611,611間に入り込んだ外装樹脂の一部を介して、圧電体層611に伝播する。この伝播した応力に応じて、外装樹脂の一部に接する圧電体の結晶構造が変化し、応力が吸収される。
【0303】
特に、圧電層間に入り込んでいる外装樹脂の一部は主成分が樹脂であるので、樹脂自体が変形して応力緩和するだけでなく、外装樹脂に接する圧電体を被覆することができる。
これにより、圧電体の結晶構造変化による体積変化を吸収して、新たな応力発生を抑止することができる。
【0304】
さらに、圧電体層611が空隙に接した部分では、圧電体が周囲の雰囲気の酸素濃度や湿度に応じて酸化還元され、積層型圧電素子の長期間の使用において圧電特性が変化することがあるが、外装樹脂の一部が入り込んでいることにより使用環境の影響を抑制することができる。これにより、圧電体の応力緩和機能が耐久性の高いものとなり、被覆部材と積層体との接合信頼性がより高められ、長寿命の積層型圧電素子が得られる。
【0305】
本実施形態の積層型圧電素子は上記と同様にして製造できる。まず、上記と同様の手順で積層体を作製する。次に、ガラス粉末に、バインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製し、これをシート状に成形し、乾燥した(溶媒を飛散させた)シートの生密度を6〜9g/cm3に制御し、このシートを、柱状積層体615の外部電極形成面に転写する。これを、ガラスの軟化点よりも高い温度、且つ銀の融点(965℃)以下の温度で、且つ積層体615の焼成温度(℃)の4/5以下の温度で焼き付けを行う。これにより、銀ガラス導電性ペーストを用いて作製したシート中のバインダー成分が飛散消失し、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極615を形成することができる。
【0306】
このとき、外部電極615を構成するペーストを多層のシートに積層してから焼付けを行っても、1層ごとに積層しては焼付けを行っても良いが、多層のシートに積層してから一度に焼付けを行う方が量産性に優れている。そして、層ごとにガラス成分を変える場合は、シートごとにガラス成分の量を変えたものを用いればよいが、圧電体11に最も接した面にごく薄くガラスリッチな層を構成したい場合は、積層体615にスクリーン印刷等の方法でガラスリッチなペーストを印刷した上で、多層のシートを積層する方法が用いられる。このとき、印刷に代えて5μm以下のシートを用いても良い。
【0307】
なお、銀ガラス導電性ペーストの焼き付け温度は、ネック部を効果的に形成し、銀ガラス導電性ペースト中の銀と金属層612を拡散接合させ、また、外部電極615中の空隙を有効に残存させ、さらには、外部電極615と柱状の積層体615側面とを部分的に接合させるという点から、500〜800℃の範囲に設定するのが望ましい。また、銀ガラス導電性ペースト中のガラス成分の軟化点は、500〜800℃であるのが望ましい。焼き付け温度が800℃以下である場合には、有効な3次元網目構造をなす多孔質導電体を形成することができる。好ましくは、ガラスの軟化点の1.2倍以内の温度で焼き付けを行うのがよい。一方、焼き付け温度が500℃以上の場合には、金属層612端部と外部電極615の間で十分に拡散接合がなされ、ネック部が形成される。
【0308】
次に、外部電極615を形成した積層体615をシリコーンゴム溶液に浸漬するとともに、シリコーンゴム溶液を真空脱気することにより、積層体615の溝内部にシリコーンゴムを充填し、その後シリコーンゴム溶液から積層体615を引き上げ、積層体615の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、溝内部に充填、及び積層体615の側面にコーティングしたシリコーンゴムを硬化させることにより、本発明の積層型圧電素子が完成する。
【0309】
次に本実施形態の他の製法を説明する。まず、上述と同じように積層体615が作製される。その後、外部電極層615aとなる銀を主成分とした導電剤粉末とガラス粉末にバインダー、可塑剤及び溶剤を加えて作製した導電性ペーストを、外部電極615を形成する積層体615側面にスクリーン印刷等によって印刷する。その後、所定の温度で乾燥、焼き付けを行う。次に、外部電極層615bとなる銀を主成分とした導電剤粉末と必要に応じて微量のガラス粉末にバインダー、可塑剤及び溶剤とを加えて作製した導電性ペーストを、外部電極層15aの上に重ねてスクリーン印刷等によって印刷する。その後、所定
の温度で乾燥、焼き付けを行うことによって、外部電極層615aの外側に外部電極層615bを設けた外部電極615を形成することができる。
【0310】
なお、外部電極層615a及び615bを形成する各々の導電性ペースト中に含まれるガラス量を調整することにより、外部電極615aのガラス量を多くし、外部電極層615bのガラス量を少なくした外部電極615を形成することができる。なお、外部電極層15aを印刷、乾燥したのち、その上に外部電極層615bを印刷、乾燥し、同時に焼き付けを行い、外部電極層615aと615bからなる外部電極615を形成してもよい。ここでは、外部電極615が2層の場合を示したが、それ以上の層数であっても構わない。
【0311】
ここで、前記ガラス成分は、圧電体層11との接合強度を高め、且つ、圧電体層11,11間に効果的に侵入させるという点から、酸化鉛若しくは酸化珪素の少なくとも1種を含む軟化点800℃以下のガラスであるのが望ましい。また、前述した以外に、ガラス成分は、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリけい酸ガラス、アルミノほうけい酸塩ガラス、ほうけい酸塩ガラス、アルミノけい酸塩ガラス、ほう酸塩ガラス、りん酸塩ガラス、鉛ガラス等を用いることができる。
【0312】
例えば、ほうけい酸塩ガラスとしては、SiO240〜70質量%、B2O32〜30質量%Al2O30〜20質量%、MgO、CaO、SrO、BaOのようなアルカリ土類金属酸化物を総量で0〜10質量%、アルカリ金属酸化物0〜10質量%含有するものを使用することができる。また、上記ほうけい酸塩ガラスに、5〜30質量%のZnOを含むようなガラスとしても構わない。ZnOは、ほうけい酸塩ガラスの作業温度を低下させる効果がある。
【0313】
また、りん酸塩ガラスとしては、P2O540〜80質量%、Al2O30〜30質量%、B2O30〜30質量%、ZnO0〜30質量%、アルカリ土類金属酸化物0〜30質量%、アルカリ金属酸化物0〜10質量%を含むようなガラスを使用することができる。
【0314】
また、鉛ガラスとしては、PbO30〜80質量%、SiO20〜70質量%、Bi2O30〜30質量%、Al2O30〜20質量%、ZnO0〜30質量%、アルカリ土類金属酸化物0〜30質量%、アルカリ金属酸化物0〜10質量%を含むようなガラスを使用することができる。
【0315】
また、外部電極615を構成する導電剤は、耐酸化性があり、ヤング率が低く、安価であるという点から、銀を主成分とすることが望ましい。なお、耐エレクトロマイグレーション性を高めるという点から、微量の白金若しくはパラジウムを添加してもよい。
【実施例1】
【0316】
(ガスセンサ)
ガスセンサ素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y2O3含有−ZrO2)粉末を主成分とするジルコニア粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0317】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表1の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。このとき、発熱体を形成する部分については、従来からのセラミックヒータにあるように発熱が集中するように、折り返して蛇行した形状に発熱体パタ
ーンを印刷した。塊状体含有層45を形成するための導電性ペーストには、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y2O3含有−ZrO2)粉末を金属粉末に対して1質量%添加した。ついで、図16に示す形状になるように各グリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0318】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い塊状体含有層45が形成され、比較的緻密な金属層47が形成された。セラミック層55中にはあらかじめ、白金ペーストを印刷した金属パターン57を形成し積層した。これにより、ヒータ一体型酸素センサが得られた。
【0319】
この後、ヒータに電圧を印加することで、ガスセンサ素子温度を700℃に保ち、次に、水素、メタン、窒素、酸素の混合ガスを用いて、空燃比12の混合ガスをセンサに吹付けて、センサが起電力を生じるかでセンサが機能しているかを確認した。その後、空燃比12と23の混合ガスを0.5秒間隔で1×109回数交互にセンサに吹付けて、空燃比の差で起電力が変化することを確認した。その後、空燃比12の混合ガスをセンサに吹付けて、センサが起電力を生じるか否かでセンサが機能しているかを確認した。結果を表1に示す。
【0320】
【表1】
【0321】
表1より、金属層45が緻密である試料No.1は、センサを機能させる固体電解質であるセラミック層43に金属層45を介してガスを供給することができないので起電力が生じず、酸素センサとして機能しなかった。一方、試料No.2〜11は酸素センサとして機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率が85%以上で、これらの金属ペースト層の質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属層45,47の銀の質量百分率Xが90%以上で、質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5,6
,10,11が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例2】
【0322】
(フィルタ)
フィルタ素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのコーディエライト(5モル%Y2O3含有−コーディエライト)粉末を主成分とするコーディエライト粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0323】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表1の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。塊状体含有層63を形成するための導電性ペーストには、平均粒径が0.4μmのコーディエライト(5モル%Y2O3含有−コーディエライト)粉末を金属粉末に対して1質量%添加した。
【0324】
その後、図19に示す形状になるようにグリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0325】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成してフィルタ素子を得た。この後、実験的に合成した排気ガスを供給して、400℃に保った状態でフィルタ特性を測定した。その後、400℃の連続運転を1000時間行い、再びフィルタ特性を測定した。結果を表2に示す。
【0326】
【表2】
【0327】
表2より、金属層63が緻密な電極層になった試料No.1は、フィルタとして機能しなかった。一方、試料No.2〜11はフィルタとして機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5,6,10,11が最も優れた耐久性を有してい
た。
【実施例3】
【0328】
(燃料電池)
燃料電池素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y2O3含有−ZrO2)粉末を主成分とするジルコニア粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0329】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表1の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。
【0330】
その後、図17に示す形状になるようにグリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜
1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63,65が形成され、比較的緻密な金属層73,77が形成された。
【0331】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極を形成した。まず、主成分が銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面の外部電極69を形成する箇所にスクリーン印刷した。その後、これを600〜800℃で焼成して外部電極を形成し燃料電池素子を得た。
【0332】
この後、空気極側に酸素を、燃料極側に水素を供給して、800℃に保った状態で発電の出力密度を測定した。その後、800℃の連続運転を1000時間行い、再び発電の出力密度を測定した。結果を表3に示す。
【0333】
【表3】
【0334】
表3より、金属層63,65が緻密な電極層になった試料No.1は、発電機能させる固体電解質であるセラミック層67に金属層63,65を介して酸素も水素も供給することができないので、起電力が生じず、燃料電池として機能しなかった。一方、試料No.2〜11は燃料電池として機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5,6,10,11が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例4】
【0335】
(積層型圧電素子)
積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末を主成分とする原料粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表4〜表5の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。塊状体含有層95を形成するための金属ペースト層には、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末を金属粉末に対して1質量%添加した。尚、表4は、表4(1)と表4(2)に分けて示している。
【0336】
【表4】
【0337】
【表5】
【0338】
次に、図25の形状になるように各グリーンシートを積層して積層成形体を得た。駆動領域については、金属層の層数が100となるように積層し、セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0339】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い塊状体含有層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成された。
【0340】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極を形成した。まず、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面の外部電極101を形成する箇所にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成し外部電極を形成した。これにより、積層型圧電素子を得た。
【0341】
その後、外部電極101にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極101にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、試料No.32以外のすべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位が得られた。この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動させる試験を行った。結果を表6に示す。
【0342】
【表6】
【0343】
表4〜表5から、試料No.1,33では、連続駆動により積層界面にはがれが生じた。さらに圧電アクチュエータの高速応答性を確認するために駆動周波数を150Hzから徐々に上昇させていくと、1kHz以上で、素子がうなり音を発することがわかった(耳で聞こえた)。さらに、うなり音が発生する素子において、駆動周波数を確認するためにヨコガワ製オシロスコープDL1640Lでパルス波形を確認すると、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認できた。なお、試料No.32では、金属層のクッション効果により圧電体の変位変形は、金属層が変形して吸収したため、素子全体では変形が生じなかった。
【0344】
これらに対して、本発明の実施例である試料番号No.2〜31では、1×109回連続駆動させた後も素子変位量があまり低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有していた。
【0345】
また、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が2〜10%であるものは耐久性が優れていた。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3〜5%の試料No.4,9,10,15,16,
21,22,27,28が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例5】
【0346】
(積層型圧電素子)
図45に示す形状となるように、実施例4と同様の手順で表5に示す試料No.1〜14
の積層型圧電素子を作製した。図44は、焼成前の積層成形体を示す断面図である。図44に示すように、積層型圧電素子の積層方向の両端側に低率金属ペースト層95がそれぞれ配置されるようにした。低率金属ペースト層およびこれの両側の金属ペースト層における金属組成は表5に示す通りである。得られた試料No.1〜14について実施例4と同様
の評価を行った。結果を表5に示す。試料No.1はサイクル試験により特性が低下した。
他の試料は良好な結果であった。特に、金属ペースト層の質量百分率Xが高い方がよい結果が得られる傾向にあった。
【実施例6】
【0347】
図32に示すような積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのPZTを主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体層1になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0348】
次に、このセラミックグリーンシートの片面に内部電極402を形成するための銀−パラジウム合金(銀90質量%、パラジウム10質量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により4μmの厚みで形成した。さらに、一部のセラミックグリーンシートの片面には塊状体含有層403を形成するために銀粉末に平均粒径0.5μmのアクリルビーズを銀粉末100体積%に対して200体積%になるように加え、さらにバインダーを加えて形成した無機ペーストをスクリーン印刷法により4μmの厚みで形成した。
【0349】
ついで、内部電極402を形成するための導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシート20層に対して1層の割合で塊状体含有層403が形成されるように、各セラミックグリーンシートを積層した。内部電極402を形成するための導電性ペーストが印刷されたグリーンシートは300枚であり、塊状体含有層403を形成するための無機ペーストは14枚であった。塊状体含有層ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートの積層方向外側の両隣には、内部電極402が互いに異極になるように導電性ペーストの印刷されたセラミックグリーンシートを積層した。得られた積層成形体を所定の温度で脱脂し、980〜1100℃で焼成して積層焼成体を得た。ついで、得られた積層焼成体を平面研削盤にて研削し、積層体410を得た。
【0350】
次に、外部電極4を形成するための銀ガラス導電性ペーストを積層体410の側面に30μmの厚みでスクリーン印刷によって形成し、700℃にて30分焼き付けを行うことにより、外部電極4を形成した。得られた素子において、塊状体含有層403の空隙率は80%、内部電極402の空隙率は20%であった。塊状体含有層403には銀が点在して分布し、これらの銀の間には空隙が形成されていた。
【0351】
その後、外部電極4にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極4にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図32に示すような積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電アクチュエータに160Vの直流電圧を印加したところ、積層方向に変位量40μmが得られた。さらに、この積層型圧電アクチュエータを室温で0〜+160Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験行った。得られた結果を表7に示す。
【0352】
【表7】
【0353】
表7に示すように、本発明の積層型圧電アクチュエータ(試料番号1)では、連続駆動前と同様の変位量40μmが得られ、また、積層体410には異常は見られなかった。
【0354】
一方、本発明の請求範囲外である試料番号2の塊状体含有層403及び複合層411のない積層型圧電アクチュエータでは、5×107サイクルで圧電体にクラックが生じていた。これは、駆動時にはたらく応力を圧電体層1が十分に吸収できずに、圧電体層1にクラックが生じたものであると考えられる。
【実施例7】
【0355】
次に、塊状体含有層403の構成及び複合層411の配置を変化させた以外は、実施例6と同様の積層型圧電アクチュエータを作製した。評価結果を表7に示す。
【0356】
なお、試料番号3、4は、塊状体含有層403を構成する塊状体403aの材料を変化させた以外は、実施例1と同様にして積層型圧電アクチュエータを作製した。(試料番号3、4の概略断面図は図46)また、試料番号5は、両方の端部側から5番目の内部電極402の次に複合層を配置した以外は、実施例1と同様にして、内部電極402の20層に対して1層の割合で複合層411を形成した積層型圧電アクチュエータを作製した。(試料番号5の概略断面図は図47)さらに、試料番号6は、両方の端部側から8層の圧電体1cを300μm厚みで構成した応力緩和領域を設け、この応力緩和領域において、両方の端部側から5番目の内部電極402の次に複合層を形成した以外は実施例1と同様にして積層型圧電アクチュエータを作製した。ただし、複合層411を構成する圧電体層401a、1aの厚みはそれぞれ150μmとした。(試料番号6の概略断面図は図48)
これらの積層型圧電アクチュエータを室温で0〜+160Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験行った。結果を表8に示す。
【0357】
【表8】
【0358】
表8より、本発明の積層型圧電アクチュエータである試料番号1、3、4、5、6は、1×109回連続駆動した場合においても、連続駆動前と同様の変位量が得られ、高信頼性を備えた圧電アクチュエータであることが分かった。
【実施例8】
【0359】
上記で作製した試料番号1〜6の積層型圧電アクチュエータについて、さらに駆動電圧を上げ、室温で0〜+200Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験行った。結果を表9に示す。
【0360】
【表9】
【0361】
表9より、本発明の請求範囲外である試料番号2の塊状体含有層3及び複合層411のない積層型圧電アクチュエータでは、3×105サイクルで圧電体にクラックが生じていた。一方、本発明の積層型圧電アクチュエータである試料番号1、3〜6は、駆動後の変位量の改善効果が見られ、高信頼性を備えた圧電アクチュエータであることが分かった。
【実施例9】
【0362】
図36に示すような積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックスの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0363】
このセラミックグリーンシートの片面に、銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5重量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法によりレジスト厚み20μmの製版で、10μmの厚さとなるように印刷を行い、形成したシートを300枚積層し、焼成した。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で焼成した。
【0364】
このとき、複数の塊状体からなる塊状体含有層を形成する部分は、次のようにした。試料No1〜4については圧電体層と同一材料の圧電セラミックスの仮焼粉末にバインダーを加えた圧電体ペーストを作製し、レジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。試料No.5ついては圧電体層と同一材料の圧電セラミックスの仮焼粉末と同一重量の銀粉末を混合した粉末にバインダーを加えた混合ペーストを作製し、レジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層は、試料No.1,2については、積層体における50層目、100層目、200層目、250
層目に配置し、試料No.3,4、5については、積層体における50層目、100層目、150層目、200層目、250層目に配置した。試料No.6では塊状体含有層は設けなかった。また、試料No.1,4では、次のような手順で、小断面層における隣り合う塊状体間にエポキシ樹脂成分が存在するようにした。すなわち、1000℃で焼成した後に、エポキシ樹脂のペーストを塊状体含有層の空隙に注入した。注入方法は、樹脂ペーストを含ませたハケを用いて積層体の側面から表面張力によって空隙に浸透させた後に、加熱昇温して樹脂を硬化させた。なお、塊状体含有層は、図37に示すように6つの塊状体を配置したものとした。
【0365】
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、バインダーを銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製し、このようにして作製した銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成し、乾燥後、離型フィルムより剥がして、銀ガラス導電性
ペーストのシートを得た。
【0366】
そして、前記銀ガラスペーストのシートを積層体513の側面に転写して積層し、700℃で30分焼き付けを行い、外部電極515を形成した。
【0367】
その後、外部電極515にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極515にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図36に示すような形態の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。
【0368】
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。さらに、この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験を行った。結果は表10に示すとおりである。
【0369】
【表10】
【0370】
この表9から、比較例である試料番号No.6は、積層界面にかかる応力が一点に集中して負荷が増大して剥離が生じるとともに、うなり音やノイズ発生が生じた。これに対して、本発明の実施例である試料番号1〜5は、1×109回連続駆動させた後も、素子変位量が著しく低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有しており、優れた耐久性を有した圧電アクチュエータを作製できた。
【0371】
特に、応力緩和層(塊状体含有層)と応力集中層(緻密な層)を、他の圧電体を介して隣同士に配置させた試料No.2は素子の変位量を大きくすることができるだけでなく、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。さらに、応力緩和層を、圧電体を介して50層ごとに規則的に配置した試料No.3,4、5は、素子の変位量を最も大きくすることができるだけでなく、素子変位量がほとんど変化せず、極めて耐久性に優れていたことから、素子変位量が安定した積層型アクチュエータとすることができた。特に試料No.5は、圧電体層と同一材料の圧電セラミックスの仮焼粉末と同一重量の銀粉末を混合した粉末にバインダーを加えた混合ペーストを印刷した上に銀の融点960℃よりも高温の焼成を行ったことで、混合ペースト中の銀が全て圧電体を介してとなりあう金属層に拡散した。このため、試料中で最も空隙率の大きい応力緩和層(塊状体含有層)を形成することができ、素子変位量が極めて安定した積層型アクチュエータとすることができた。
【実施例10】
【0372】
図41に示すような積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0373】
このセラミックグリーンシートの片面に、銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5重量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により形成したシートを300枚積層し焼成して積層体615を得た。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で行った。
【0374】
このとき、金属層612aを形成するグリーンシートには、導電性ペーストをレジスト厚み20μmの製版で、10μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層612bを形成するグリーンシートには、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤からなるセラミック塊状体用ペーストをレジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。その後、80℃で20分間乾燥後、金属塊状体を形成する部分に、金属層612aの形成に用いた導電性ペーストをレジスト厚み5μmの製版で、5μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層612bは、50層目、100層目、150層目、200層目、250層目になるように配置した。塊状体含有層612bは、図41(b)に示すよ
うに10個のセラミック塊状体612dと10個の金属塊状体612cを配置したものとした。
【0375】
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部のバインダーを添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製した。この銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成し、乾燥後、離型フィルムから剥がして、銀ガラス導電性ペーストのシートを得た。そして、このシートを積層体615の側面に転写して積層し、700℃で30分焼き付けを行い、外部電極615を形成した。
【0376】
その後、外部電極615にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極615にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図41に示すような形態の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを得た。
【0377】
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチ
ュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験を行った。結果は表11に示すとおりである。
【0378】
なお、試料1は全ての金属層を金属成分のみで形成し(塊状体含有層なし)、試料2−9には50層目、100層目、150層目、200層目、250層目に塊状体含有層を配置した。また、試料2−9の塊状体含有層はAg−Pd合金で構成した。試料2−9の塊状体含有層には、隣り合う圧電体層に達する空隙が存在していた。
【0379】
表11中の「セラミック塊状体の配置状態」とは、セラミック塊状体の厚み方向の両端が隣接する両側の圧電体層に接するように配置されている層を示している。表11中の「金属塊状体の配置状態」とは、金属塊状体の厚み方向の両端が隣接する両側の圧電体層に接するように配置されている層を示している。
【0380】
【表11】
【0381】
この表11から、比較例である試料番号1は、積層界面にかかる応力が一点に集中して
負荷が増大して剥離が生じるとともに、うなり音やノイズ発生が生じた。これに対して、本発明の実施例である試料番号1〜9は、1×109回連続駆動させた後も、素子変位量が著しく低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有していた。
【0382】
特に、セラミック塊状体が占める体積V1、金属塊状体が占める体積V2、空隙が占め
る体積V3の関係が、V3>V1>V2を満足する試料番号2〜5、8、9では素子の変位量を大きくすることができ、セラミック塊状体または、金属塊状体の厚み方向の両端が隣接する両側の圧電体層に接している試料番号2〜7では、素子の変位量がほとんど変化せず、素子変位量が安定した積層型アクチュエータとすることができた。
【実施例11】
【0383】
図41に示すような積層型圧電素子からなる圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0384】
このセラミックグリーンシートの片面に、銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5重量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により形成したシートを300枚積層し、焼成して積層体を得た。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で行った。
【0385】
このとき、金属層612aを形成するグリーンシートには、導電性ペーストをレジスト厚み20μmの製版で、10μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層612bを形成するグリーンシートには、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤からなるセラミック塊状体用ペーストをレジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。その後、80℃で20分間乾燥後、金属塊状体を形成する部分に、金属層612aの形成に用いた導電性ペーストをレジスト厚み5μmの製版で、5μmの厚さとなるように印刷を行った。さらに、金属層612eを形成するグリーンシートには、銀−パラジウム合金にバインダーを加えた導電性ペーストをレジスト厚み30μmの製版で、15μmの厚さになるように印刷を行った。
【0386】
塊状体含有層612bは、50層目、100層目、150層目、200層目、250層目になるように配置し、また、塊状体含有層612bの積層方向両側に位置する金属層は、緻密な金属層612eとなるように配置した。塊状体含有層612bは、図41(b)に
示すように10個のセラミック塊状体と10個の金属塊状体を配置したものとした。
【0387】
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部のバインダーを添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製した。このペーストを積層体615の側面にスクリーン印刷によって印刷し、乾燥させた。その後、その上に重なるように、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末にバインダーを添加して作製した導電性ペーストを印刷し、乾燥した後、700℃で30分焼き付けを行った。これにより、外部電極層615a及び615bを備えた外部電極615を形成した。
【0388】
その後、外部電極615にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極615にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図41に示すような形態の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。
【0389】
なお、このとき塊状体含有層612bの積層方向両側に隣り合う金属層612eはその他の金属層612aに対して、1.3倍の厚みであり、さらに空隙率は4/5倍であった。また、外部電極615の一部が塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの
圧電体11の間に平均で深さ20μm入り込んでいた。また外部電極615については、積層体615の側面に位置する外部電極層15aがその外側に位置する外部電極層615bよりもガラス材料の含有量が多かった。
【0390】
その後、外部電極615にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極615にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、圧電アクチュエータを得た。(試料番号10)
すなわち、試料番号10の素子は、外部電極615を積層体615側面側の層の方がガラス成分の多い2層構造とし、塊状体含有層612bの積層方向両側に位置する金属層612eを他の金属層612aよりも厚みを大きく、空隙率を小さくし、また、外部電極の一部を塊状体含有層612bの積層方向両側に位置する圧電体11の間の一部の領域に入り込ませたものである。
【0391】
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。この圧電アクチュエータを室温で0〜+200Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験を行った。結果は表2に示すとおりである。なお、試料番号10は、上記記述以外については実施例10の試料番号2と同じである。
【0392】
【表12】
【0393】
この表12から、試料番号10のアクチュエータは、高電界、高圧力下で高速で連続運転しても、一部の外部電極615が積層体615側面から剥離し、変位特性が低下するといった問題が生じることはなかった。
【符号の説明】
【0394】
11 塊状体含有層
11a 第2金属ペースト層(高率金属ペースト層)
13 金属層
13a 第1金属ペースト層
15 セラミック層
15a セラミックグリーンシート
17 セラミック部材
17a 積層成形体
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック部材の製造方法及びこれにより得られるセラミック部材に関する。より詳しくは、本発明は、例えば屋内の雰囲気検知、洞窟やトンネル内の雰囲気検知、排気ガス検知等に用いられるガスセンサ素子、発電等に用いられる燃料電池素子、フィルタ素子、自動車エンジンの燃料噴射装置、微少駆動装置、圧電センサ装置、圧電回路等に用いられる積層型圧電素子等のセラミック部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサ素子や燃料電池素子は、これらを構成するセラミック部材に気体を接触させて気体中の特定成分をセラミック表面に吸着させたり、透過させたりする機能を備えている。このような機能を付与するために、金属層(電極)を空隙率の高い構造にしてガスの通気性を高めたり、緻密な電極であっても電極形状を櫛型等のパターン形状にして電極による被覆面積を制御する試みがなされている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
空隙率の高い金属層を作製する方法としては、セラミックスの焼結温度よりも高温でなければ焼結しない金属を用いて電極パターンを印刷した後、セラミックスと電極金属を同時焼成する方法がある。
【0004】
また、電極金属の焼成温度では焼結しないセラミック原料を金属粉末に混合して電極ペーストを作製し、この電極ペーストを印刷した後、同時焼成する方法もある。また、空隙率の高い金属層を作製する他の方法としては、例えば特許文献3に記載されているPt圧膜電極の焼成方法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−317555号公報
【特許文献2】特開平6−258281号公報
【特許文献3】特開平11−51899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空隙率の高い金属層を形成する従来の方法では、同時焼成でセラミックスが十分に焼結しても電極部分の焼結が不十分である場合があった。また、金属粒界に電気伝導特性の低い成分が介在することで、電極本来の機能である電気伝導性が低下して電極の抵抗が高くなり、電極から伝わる電気信号の感度が低下することがある。このため、印加電圧を大きくする必要があるので、消費電力の高い素子になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とし、この第1金属ペースト層に隣り合う前記両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させることを特徴とする。
【0008】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、前記一部の領域にセラミック粉末を含有させることを特徴とする。
【0009】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが高い第2金属ペースト層とし、前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0010】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い低率金属ペースト層とし、前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0011】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層の一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0012】
本発明のセラミック部材は、金属成分M1を含む金属層と、空隙を介して互いに離隔して配置された複数のセラミック塊状体を含み、前記金属層より空隙が多い塊状体含有層と、前記金属層と前記塊状体含有層に挟まれたセラミック層と、からなる3層構造を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセラミック部材の製造方法では、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とし、この第1金属ペースト層に隣り合う両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させている。このようにセラミックグリーンシートを介して隣り合う金属ペースト層間で金属成分M1の質量百分率Xに差(濃度勾配)をつけた状態で積層成形体を焼成することによって、セラミック層を通じて質量百分率Xの高い方から低い方へ金属成分M1を拡散させることができる。第2金属ペースト層は、焼成過程で他の金属層より
多くの金属成分M1が第2金属ペースト層から拡散して出ていくことで体積が減少するとともに空隙が増加する。また、第2金属ペースト層に含まれているセラミック粉末は、焼成過程である程度凝集して焼結し、複数のセラミック塊状体となる。すなわち、本発明のセラミック部材の製造方法によれば、セラミックグリーンシートを介して隣り合う第1金属ペースト層と第2金属ペースト層との間で金属成分M1の質量百分率Xに差をつけ、かつ、第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させた積層成形体を焼成することにより、複数のセラミック塊状体が点在し空隙が多い塊状体含有層を備えたセラミック部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1に示す実施形態における塊状体含有層11の具体例をそれぞれ示す断面図である。
【図3】図2に示すセラミック部材を模式的に示した模式図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の一実施形態にかかるセラミック部材の製造方法を示す概念図である。
【図5】側面に外部電極が形成されたセラミック部材を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は図6に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図9】図8の実施形態の特徴を模式的に表したグラフである。
【図10】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図11】(a)〜(c)は図10に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図13】(a)〜(c)は図12に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材をそれぞれ示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。
【図19】本発明の一実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図20】本発明の他の実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図21】本発明のさらに他の実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図22】本発明のさらに他の実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。
【図23】本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図24】本発明の他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図25】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図26】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図27】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図28】(a)は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は、この積層型圧電素子における圧電体層と内部電極層との積層状態を説明するための展開図である。
【図29】図28に示す素子における周縁部を示す断面図である。
【図30】本発明の一実施形態にかかる噴射装置を示す断面図である。
【図31】本発明の一実施形態にかかる燃料噴射システムを示す概略図である。
【図32】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図である。
【図33】図32におけるA−A線断面図である。
【図34】本発明のさらに他の実施形態にかかる素子の複合層付近を拡大した断面図である。
【図35】本発明のさらに他の実施形態における内部電極の構造および複合層の構造を示す一部破断斜視図である。
【図36】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図である。
【図37】図36の積層型圧電素子おける圧電体層と内部電極との積層状態を示す部分斜視図である。
【図38】(a)は、積層体の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面を示す断面図であり、(b)は、(a)における塊状体含有層に対して積層方向に隣り合う圧電体層を含み積層方向に垂直な平面で切ったときの断面を示す断面図である。
【図39】積層体の積層方向に平行な平面で積層体を切ったときの断面を示す断面図である。
【図40】(a)は、積層体の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面の他の例を示す断面図であり、(b)は、積層体の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面のさらに他の例を示す断面図である。
【図41】(a)は、本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は、(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。
【図42】図41における外部電極と積層体の側面との接合部分の拡大断面図である。
【図43】図41における積層体を積層方向に垂直な方向に塊状体含有層を含む平面で切ったときの断面図である。
【図44】実施例5における焼成前の試料の状態を示す断面図である。
【図45】実施例5における焼成後の試料の状態を示す断面図である。
【図46】実施例7における試料番号1、3、4の断面を示す概念図である。
【図47】実施例7における試料番号5の断面を示す概念図である。
【図48】実施例7における試料番号6の断面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかるセラミック部材及びその製造方法について詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図1に示すように、このセラミック部材17は、金属成分M1を含む金属層13と、金属層13より空隙が多い塊状体含有層11と、金属層13と塊状体含有層11に挟まれたセラミック層15と、からなる3層構造を備えている。塊状体含有層11は、互いに離隔して配置された複数のセラミック塊状体3aを含んでいる。
【0016】
図2(a)〜(c)は、本実施形態における塊状体含有層11の具体例をそれぞれ示す断面図である。図2(a)における塊状体含有層11は、互いに離隔して配置された複数のセラミ
ック塊状体3aと、金属領域3cとを備え、複数の空隙3bを有する多孔質な層である。図2(b)における塊状体含有層11は、空隙3bを介して互いに離隔して配置された複数
のセラミック塊状体3aと、空隙3bを介して互いに離隔して配置された複数の金属塊状体3cとを備えている。図2(c)における塊状体含有層11は、空隙3bを介して互いに
離隔して配置された複数のセラミック塊状体3aからなる。なお、本発明において「空隙
」とは、セラミック塊状体3a間に形成された隙間のことである。
【0017】
以下、説明の便宜上、上記セラミック部材17を模式的に示した図3を用いて、本発明の各実施形態について説明する。図3は、上記3層構造を備えたセラミック部材17の断面を模式的に示した断面図である。図3に示すように、このセラミック部材17は、金属層13と、この金属層13よりも空隙が多い塊状体含有層11とがセラミック層15を介して積層されたものである。
【0018】
このような塊状体含有層11を備えたセラミック部材17を作製するための本発明の一実施形態にかかる製造方法は以下の通りである。図4(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材の製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層11a,13aがセラミックグリーンシート15aを介して積層された積層成形体17aを作製する工程と、この積層成形体17aを焼成する工程とが含まれている。
【0019】
図4(a)に示すように、セラミックグリーンシート15aの両方の主面に金属ペースト
層11a及び金属ペースト層13aを積層し積層成形体17aを作製する。金属ペースト層11aと金属ペースト層13aは積層方向に対向する位置に配設される。金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aには主成分として金属成分M1が含まれている。
【0020】
一つの金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、第2金属ペースト層11aは、積層方向に隣り合う第1金属ペースト層13aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、第2金属ペースト層11aのことを高率金属ペースト層11aということもある。この第2金属ペースト層11aにはセラミック粉末を含有させる。
【0021】
本発明におけるセラミックス粉末とは、非金属の無機粉末であり、一般的に多結晶体、単結晶体、非晶質体の結晶構造をもち、例えばアルミナ、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、サファイア、水晶、クリストバライト、石英、シリカガラス、コーディエライト、チタニア、ジルコニア、酸化鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウムカリウム、酸化タングステンなどの酸化物、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステンなどの炭化物、SiO2、SiO2−(B2O3)、SiO2−Al2O3−(B2O3)、SiO2−MgO−(B2O3)、SiO2−Al2O3−MgO−(B2O3)などの酸化物ガラス、Al2O3−SiO2−AlNなどのオキシナイトライドガラス、又はこれらの混合物で構成された無機粉末などのことをいう。特に、熱処理時にセラミックシートとの密着力を高めたり、液相を形成して焼結性を高めるために、セラミックシートを構成するセラミックスと同じセラミック粉末を用いることが好ましい。
【0022】
第2金属ペースト層11aには、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末を0.01質量部以上115質量部以下含有させるのが好ましい。金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末が0.01質量部未満になると、セラミック粉末の大半がセラミック層に吸収されてセラミック塊状体が形成されにくくなる。一方、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末が115質量部を超えると、セラミック粉末の焼結が主体的になって金属成分の拡散現象が生じにくくなる。本発明のセラミック部材を積層型圧電素子に適用する場合には、高い応力緩和効果が得られるという点で、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末を0.1質量部以上75質量部以下含有させるのがよい。また、空隙を介して互いに離隔した複数のセラミック塊状体を形成してより高い応力緩和効果を発現させるという点で、金属成分総量100質量部に対してセラミック粉末を1質量部以上50質量部以下含有させるのがさらに好ましい。
【0023】
セラミックグリーンシート15aの作製方法は次の通りである。まず、セラミックスの原料粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、このスラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法によりシート形状に成形してセラミックグリーンシート15aを得る。
【0024】
第2金属ペースト層11a及び第1金属ペースト層13aの作製方法は次の通りである。まず、金属粉末、合金粉末等にバインダー、可塑剤等を添加し混合して金属ペーストを作製する。このとき、高率金属ペースト層11a用の金属ペーストは、金属成分M1の質量百分率Xが金属ペースト層13a用の金属ペーストよりも高くなるように調製される。高率金属ペースト層11aには上記したようなセラミック粉末を添加する。セラミック粉末の添加量は、焼成後のセラミック部材において塊状体含有層に点在させるセラミック塊状体の量や大きさに応じて適宜決定すればよい。
【0025】
ついで、得られた各金属ペーストをセラミックグリーンシート15aの一方の主面及び他方の主面にスクリーン印刷等の手法で印刷して高率金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aを形成し、乾燥させる。こうして得られた積層成形体17aを、必要に応じて裁断して所望の形状にしてもよい。高率金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aの厚みは例えば1〜40μm程度の範囲に調製される。
【0026】
また、セラミックグリーンシートを2枚準備し、一方のシートの主面に高率金属ペースト層11aを形成し、他方のシートの主面に金属ペースト層13aを形成する。ついで、金属ペースト層を形成していない主面同士を合わせるようにして2枚のセラミックグリーンシートを積層することによっても積層成形体17aを作製することができる。
【0027】
次に、上記のようにして得られた積層成形体17aを所定の温度で脱バインダー処理を行った後、800〜1500℃程度で焼成する。図4(b)は焼成途中の積層成形体17b
を示し、図4(c)は焼成後のセラミック部材17を示している。上記のようにセラミック
グリーンシート15aを介して隣り合う金属ペースト層11a,13a間で金属成分M1の質量百分率Xに差(濃度勾配)をつけた積層成形体17aを焼成することによって、セラミック層を通じて質量百分率Xの高い方から低い方へ金属成分M1を拡散させる。このとき、セラミック粉末は、拡散することなくセラミック層上に残留する。
【0028】
これにより、複数のセラミック塊状体3aが点在し空隙が多い塊状体含有層を、セラミック部材の所望の位置に形成することができる。しかも、このセラミック部材では、金属層の焼結を十分に進行させることができ、従来のようにアクリル樹脂等を用いなくてもいいので金属層中に樹脂等の不純物残渣を極めて少なくできる。
【0029】
このように金属成分M1が拡散するのは、次のような理由に基づいていると推測される。すなわち、セラミックグリーンシートを介して高率金属ペースト層とこれに隣り合う金属ペースト層との間で金属成分M1の質量百分率Xに差をつけることで、フィックの法則に従って金属成分M1の質量百分率差を駆動力として、高率金属ペースト層からこれに隣り合う金属ペースト層に向かってより多くの金属成分M1が拡散するものと推測される。
【0030】
高率金属ペースト層11aには、金属成分M1を含む「合金粉末」及び金属成分M1からなる「金属粉末」の少なくとも一方が配合される。高率金属ペースト層11aに積層方向に隣り合う金属ペースト層13aには、金属成分M1と金属成分M2とを含む「合金粉末」及び金属成分M1からなる金属粉末と金属成分M2からなる金属粉末とを含む「混合粉末」の少なくとも一方が配合される。以下、金属粉末、合金粉末及び混合粉末を総称して「金属粉末等」ということがある。
【0031】
金属成分M1と金属成分M2は、これらの間で合金が形成される組み合わせであるのが好ましい。また、これらの金属成分の間で金属間化合物を形成しにくい組み合わせであるのがより好ましい。これらの金属成分が全率固溶する組み合わせであるのがさらに好ましい。
【0032】
具体的には、本発明では、金属成分M1が周期表第11族元素であり、金属成分M2が周期表第10族元素であるのが好ましい。これら第11族元素と第10族元素との合金は全率固溶するので、任意の濃度の合金を形成でき、金属成分の安定な拡散が可能になる。また、融点がセラミックスの焼結温度よりも高く、酸化雰囲気でも焼成が可能であるからである。これらの中でもセラミックスと同時焼成が可能な銀白金合金や銀パラジウム合金であるのが好ましい。
【0033】
特に、金属成分M1が銀であり、金属成分M2がパラジウムであるのがより好ましい。その理由は、銀を加熱したときに生じる酸化銀がセラミックスの液相を低温で形成する物質であるからである。したがって、銀を含有することでセラミック層15の焼結が低温で進行する。また、パラジウムと銀は全率固溶系であるとともに、液相線と固相線が接近していることから容易に相互に固溶できる。このため、液相を介して銀濃度が高い塊状体含有層11bから金属層13bへ銀成分が拡散する際には、選択的に引きつけ合って種々の組成比で合金化することが可能となる。その結果、パラジウムに比べて融点の低い銀が、パラジウムより先に拡散し、この拡散が短時間で進行することになる(図4(b)参照)。
【0034】
高率金属ペースト層11aにおける質量百分率X((金属成分M1(質量)/金属成分総量(質量))×100)は、セラミック部材の電気特性を安定させる点で、85≦X≦100の範囲にあるのが好ましい。質量百分率Xが85未満になると、空隙率の高い金属層の比抵抗が大きくなり、セラミック部材に通電した場合、金属層が熱発散しにくくなることがある。
【0035】
金属層中の11族元素がセラミック層へイオンマイグレーションするのを抑制するためには、85≦X≦99.999の範囲にあるのがより好ましい。セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、90≦X≦99.9の範囲にあるのがさらに好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合には、90.5≦X≦99.5の範囲にあるのが特に好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には92≦X≦98の範囲にあるのがよい。
【0036】
また、金属ペースト層13aにおける質量百分率Xは、セラミック部材の電気特性を安定させる点で、85≦X<100の範囲にあるのが好ましい。また、金属層中の11族元素がセラミック層へイオンマイグレーションするのを抑制するためには、85≦X≦99.999の範囲にあるのがより好ましい。
【0037】
セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、90≦X≦99.9の範囲にあるのがさらに好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合には、90.5≦X≦99.5の範囲にあるのが特に好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には92≦X≦98の範囲にあるのがよい。
【0038】
高率金属ペースト層11aにおける質量百分率Xは積層方向に隣り合う金属ペースト層13aよりも高く設定すればよい。これらの質量百分率差(高率金属ペースト層11aの質量百分率XH−金属ペースト層13aの質量百分率XL)は、特に限定されるものではない。
【0039】
金属成分M1が銀であり、金属成分M2がパラジウム又は白金である場合を例に挙げる
と、質量百分率差は以下の範囲であるのが好ましい。金属成分M1の拡散が進行しやすくなるという点で質量百分率差は0.1以上であるのが好ましい。また、金属成分M1が金属ペースト層13aに過度に拡散して隣接するセラミック層同士が接合するのを抑制するという点で、質量百分率差が30以下であるのが好ましい。したがって、質量百分率差は0.1以上30以下であるのがよい。
【0040】
金属成分M1の拡散速度が遅いときには、高率金属ペースト層11aに隣接するセラミックグリーンシート15a中のセラミックスの焼結が完了した時点で、このセラミックス中に多くの金属成分M1が残留することがある。セラミックス中に金属成分M1が残留するのを抑制するには、質量百分率差を大きくして金属成分M1の拡散速度を速くすればよい。金属成分M1の拡散速度を速くするという点で、質量百分率差は1以上であるのが好ましい。
【0041】
前述のように、高率金属ペースト層11aと金属ペースト層13aとの間に質量百分率差をつけると、これらのペースト層間の濃度勾配を小さくする方向に銀の拡散が生じる。質量百分率差がある程度大きくなると高率金属ペースト層11aから金属ペースト層13aへの銀の拡散とともに、金属ペースト層13aから高率金属ペースト層11aへのパラジウムの拡散も生じやすくなる。このような相互拡散の現象をより活発に生じさせるという点で、質量百分率差は2以上であるのが好ましい。
【0042】
金属成分M1の拡散速度が速くなると、金属層の焼結が完了するタイミングも早くなり、セラミック層の焼結温度よりも低温で金属層が焼結することがある。焼成時に金属層から発生した液相が少なくなると、セラミックスの焼結密度が小さくなる傾向にある。したがって、金属成分M1の拡散速度を抑えてセラミックスの焼結密度を高める点では、質量百分率差が10以下であるのがより好ましい。したがって、質量百分率差は、1以上10以下であるのが好ましく、2以上10以下であるのがより好ましい。
【0043】
質量百分率差は、応力緩和機能と絶縁性とを両立させることができる点で、3以上5以下であるのが特に好ましい。質量百分率差が3以上5以下であることにより銀の拡散が適度に起こるので、焼成後に得られる塊状体含有層11が、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体で構成されることになる。これらの金属塊状体は、互いに電気的に絶縁された状態でセラミック層間に点在する。したがって、このような塊状体含有層11は、電極としては機能しない絶縁性に優れた層となる。しかも、複数の金属塊状体がセラミック層間に適度な大きさと適度な量で分散するので、焼成時に隣接する両側のセラミック層が接合されてしまうのを防止できる。
【0044】
上記のように複数の金属塊状体が点在してなる塊状体含有層11は、例えば積層型圧電素子として用いた場合に、駆動時の応力を緩和する機能に極めて優れている。このような塊状体含有層11は素子中の他の部分よりも剛性が低くなるため、この塊状体含有層11に駆動時の応力が集中しやすくなる。特に、複数の金属塊状体と圧電体との境界付近に応力が集中しやすい。この境界部分の圧電体が応力により局所的に変形することで応力が緩和されるものと推測される。
【0045】
ここで、金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M2の質量百分率をZとする。金属成分M2が周期表第8〜10族元素である場合、質量百分率Z((金属成分M2(質量)/金属成分総量(質量))×100)が15以下であることにより、金属層の比抵抗が大きくなるのを抑制できる。これにより、セラミック部材に通電した際、金属層が発熱するのを抑制することができる。その結果、温度依存性を有するセラミック層に熱が作用して電気特性を変化させるのを抑制できる。よって、センサ、燃料電池、フィルタ素子、積層型圧電素子等の特性が使用中に変動するのを抑制できる。
【0046】
また、金属層が第11族元素のみでは、長期間の高湿度環境下ではイオンマイグレーションが生じやすくなるので、質量百分率Zは、好ましくは0.001≦Z≦15の範囲にあるのがよい。
【0047】
セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、0.1≦Z≦10の範囲にあるのがより好ましい。熱伝導に優れより高い耐久性を必要とする場合には、0.5≦Z≦9.5の範囲にあるのがさらに好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には、2≦Z≦8の範囲にあるのが特に好ましい。上記金属層中の金属成分M1,M2の含有量(質量)は、例えばEPMA(Electron Probe Micro Analysis)で特定できる。
【0048】
拡散が平衡状態になるように長時間加熱すると、パラジウムも拡散が可能となり、塊状体含有層11と金属層13の組成が近づいていく。このように塊状体含有層11と金属層13の組成が近くなるまで焼成したセラミック部材は、高温条件下で使用した場合であっても金属成分のイオンマイグレーションが抑制され、電極が安定した性能を発揮する。
【0049】
銀はパラジウムと結合しやすい。また、銀を加熱したときに生じる酸化物(酸化銀)はAgの融点よりもかなり低温で形成される。この酸化物はセラミックスの成分とともに液相を形成する成分である。したがって、高率金属ペースト層11aに銀粉末を配合し、金属ペースト層13aに銀パラジウム合金粉末を配合した場合、
低温での拡散がより生じやすくなり、かつ、選択的に銀を拡散移動させることができる。
【0050】
また、銀は溶融するとセラミック層との濡れ性が低いので銀同士が凝集する特性を有している。したがって、拡散によって体積が減少した銀または銀パラジウムは、セラミック層の表面に薄膜状に広がるのではなく、凝集した銀を含む金属成分が点在することになるので、ある程度の大きさに凝集してなる金属塊状体がセラミック層上(または2つのセラミック層間)に点在しやすい。これにより、空隙率の高い金属層を形成することができる。
【0051】
高率金属ペースト層11aに銀とともに白金が配合されていること、金属ペースト層13aにパラジウムとともに白金が配合されていることが好ましい。焼成により銀は選択的にパラジウムとの合金化が進行する。同一温度ではパラジウムよりも拡散速度が遅い白金が存在することで、銀の一部は白金と合金を形成する。したがって、焼成中に積層成形体17a内に大きな温度分布が生じる焼成や昇温速度の大きな焼成を行った場合であっても、銀が過度に拡散するのを抑制できる。これにより、金属ペースト中の全ての銀およびパラジウムが拡散して金属層が完全に消失するのを抑制できる。これにより、拡散を可能にする焼成条件の範囲を大幅に広げることができると同時に、金属層の消失を抑制できる。特に、金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aの両方に白金を配合することが好ましい。
【0052】
金属成分M1が銀(Ag)で、金属成分M2がパラジウム(Pd)である場合を例に挙げてより具体的に説明すると、次のようになる。高率金属ペースト層11aには、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金などのAgを含む「合金粉末」及びAgからなる「金属粉末」の少なくとも一方が配合される。金属ペースト層13aには、Ag−Pd合金などのAgとPdとを含む「合金粉末」及びAg粉末とPd粉末とを含む「混合粉末」の少なくとも一方が配合される。
【0053】
なお、Pd粉末は、Ag−Pd合金中のPdと比較して低温で酸化されやすい傾向にある。このため、金属ペーストの原料としてAg−Pd合金を用いた場合と比較して、Pd粉末を用いると焼成中の酸化に起因して金属層の体積増加が見られることがある。したが
って、金属成分M2がパラジウム(Pd)である場合には、金属ペーストの原料としてAg−Pd合金を用いるのが好ましい。特に、Ag粉末とAg−Pd合金粉末とを混合した粉末であれば、Agの融点が低いことから、Agが先に拡散を開始して、Ag−Pd合金のAg濃度を増加させて拡散を誘発するため、最も速く安定した拡散を実現するので、好ましい。
【0054】
焼成前のセラミックグリーンシート15aはセラミックスの原料粉末の粒子間にバインダーが充填された状態であるが、図4(b)に示す焼結途中の段階では、加熱されることで
バインダーが揮発してセラミックスの粒子間に微細な隙間が生じる。焼成温度がさらに上昇すると、セラミック粒子同士が焼結を開始し、印刷された金属ペースト層に含まれる金属粉末等も焼結を開始する。
【0055】
その後、セラミック粒子間や金属粒子間に液相が形成され、粒子間の拡散速度が増加し、焼結が進行する。このとき、セラミック粒子間に微細な隙間があることと、金属粒子間やセラミック粒子間に液相が存在することで、焼結途中の塊状体含有層11bと金属層13bの間でセラミック層15bを通じて金属成分の相互拡散が可能な状態となる。
【0056】
本実施形態では、塊状体含有層11bの質量百分率Xが金属層13bの質量百分率よりも高くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、銀の質量百分率差(濃度勾配)に応じて、塊状体含有層11bの銀が焼結途中のセラミック層15bを通過して金属層13bに拡散移動するものと推測される。
【0057】
その後、焼成温度がさらに上昇すると、セラミック粒子間の隙間が減少又は消滅するので、図4(c)に示すようにセラミック層15を介した銀の拡散移動が終了する。そして、
セラミック粒子の焼結が完了し、塊状体含有層11及び金属層13の焼結も完了する。
【0058】
以上のようにして塊状体含有層11は金属層13へ銀が拡散移動して体積が減少したことに加え、焼結途中の液相状態のときの流動性が高いことで銀又は銀パラジウム合金が凝集する。これにより、塊状体含有層11は、セラミック層15の表面に金属成分が一様に被覆されたものではなく、内部に複数の独立気泡を有し複数のセラミック塊状体が分散した多孔質なもの(図2(a))、若しくは空隙を介して互いに離隔した複数のセラミック塊
状体と空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体とにより構成されたもの(図2(b)
)、若しくは空隙を介して互いに離隔した複数のセラミック塊状体により構成されたもの(図2(c))となる。
【0059】
一方、金属層13は、塊状体含有層11から銀が拡散移動してくるので、比較的緻密な金属層となる。なお、焼結中に液相が形成しやすいように、セラミックグリーンシート15aや金属ペースト中に焼結助剤を添加することが好ましい。
【0060】
図2(a)〜(c)に示す形態のうち、塊状体含有層11が金属成分(金属領域3c又は金属塊状体3c)を含む図2(a),(b)に示す形態の場合、次の条件を満たしているのが好ましい。すなわち、金属層13又は塊状体含有層11に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYとするとき、塊状体含有層11は、積層方向に隣り合う金属層13よりも質量百分率Yが高く設定されているのが好ましい。
【0061】
セラミック部材を高温に晒されるような環境に設置して使用した場合、金属層13と塊状体含有層11間に組成の濃淡があるとマイグレーションが進行する場合がある。塊状体含有層11の質量百分率Yが金属層13よりも高いときには、金属層13から塊状体含有層11に向かって金属成分M1が移動してくるのを抑制できる。したがって、塊状体含有層11の高い空隙率が維持される。これにより、高い空隙率により発現するセンサ機能や
応力緩和機能が維持されて、耐久性の高いセラミック部材とすることができる。
【0062】
図5は側面に外部電極19が形成されたセラミック部材を示す断面図である。この外部電極は例えば次のようにして形成すればよい。金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを所定の部位に印刷し乾燥させた後、焼成する。このとき、セラミック部材に金属ペーストをそのまま印刷してもよいが、研磨等の加工を行って印刷面を平坦化してから印刷を行うのが好ましい。なお、他の部位については、図3と同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
本実施形態において「空隙が多い」とは、金属層の断面において空隙が占める総面積が大きいことをいう。塊状体含有層11とこれに隣り合う金属層13の空隙の多さを比較するには、次のようにすればよい。走査型電子顕微鏡(SEM)、金属顕微鏡、光学顕微鏡などを用いて塊状体含有層11の断面及び金属層13の断面(積層方向に平行な断面又は積層方向に垂直な断面)を観察して断面画像を得、この断面画像を評価すればよい。この断面画像において、塊状体含有層11と金属層13の空隙の多さに明らかな差が認められる場合には、目視で比較すればよい。また、塊状体含有層11と金属層13の空隙の多さを目視で判別することができない場合には、以下に示す方法により空隙率をそれぞれ測定して比較すればよい。
【0064】
セラミック部材の金属層(または塊状体含有層)の空隙率は、例えば以下のようにして測定することができる。すなわち、まず、空隙率を測定したい金属層または塊状体含有層の断面(積層方向に平行な断面又は積層方向に垂直な断面)が露出するまで、公知の研磨装置を用いてセラミック部材を積層方向に研磨する。具体的には、例えば研磨装置としてケメット・ジャパン(株)社製卓上研磨機KEMET−V−300を用いてダイヤモンドペーストで研磨することができる。
【0065】
この研磨処理により露出した断面を、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)、金属顕微鏡、光学顕微鏡などにより観察して断面画像を得、この断面画像を画像処理することによって空隙率を測定できる。SEM等の観察における拡大倍率は1000倍〜10000倍程度に設定するのがよい。
【0066】
なお、金属層または塊状体含有層の断面を観察する際には、金属層(または塊状体含有層)の厚みの約1/2の位置まで研磨し、これにより露出した断面を観察するのが好ましい。ただし、金属層(または塊状体含有層)の厚みが薄く、かつ、厚みのばらつきが比較的大きな場合には、研磨処理により金属層の断面全体を露出させることができないことがある。このような場合には、金属層または塊状体含有層の一部が露出するまで研磨処理した時点で、その露出部分を観察して断面画像を得た後、さらに研磨を進めて観察済み以外の他の部分を観察するという操作を複数回繰り返してもよい。このようにして複数回の操作で得た観察画像を足し合わせて金属層(または塊状体含有層)の断面全体が観察できればよい。
【0067】
画像処理の具体例を挙げると次のようになる。例えば光学顕微鏡にて撮影した断面画像に対して、空隙部分を黒色に塗りつぶし、空隙以外の部分を白色に塗りつぶし、黒色部分の比率、即ち、(黒色部分の面積)/(黒色部分の面積+白色部分の面積)を求め、比率で表すことにより空隙率を算出することができる。
【0068】
また、撮影した断面画像データをコンピューターにとりこみ、画像処理ソフトウェアにて空隙率を測定できる。なお、断面画像がカラーである場合は、グレースケールに変換して黒色部分と白色部分に分けるとよい。このとき、黒色部分と白色部分に2階調化するための境界の敷居値を設定する必要がある場合には、画像処理ソフトウェアや目視により境
界の敷居値を設定して2値化すればよい。
【0069】
図6は、本発明の他の実施形態にかかるセラミック部材27を示す断面図である。図6に示すように、このセラミック部材27は、塊状体含有層21と金属層23がセラミック層25を介してそれぞれ積層されたものである。
【0070】
塊状体含有層11が金属成分を含む図2(a),(b)に示す形態の場合、金属層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYとするとき、塊状体含有層21は、積層方向に隣り合う両側の金属層23,23よりも質量百分率Yが高く空隙率が高いことが好ましい。
【0071】
このセラミック部材27は、金属成分M1を含む金属層23(第1金属層23)と、金属層23より空隙が多い塊状体含有層21(第2金属層21)と、これらの金属層に挟まれたセラミック層25とからなる2つの3層構造を含んでいる。また、このセラミック部材27は、塊状体含有層21(第2金属層21)を共有する2つの3層構造からなる5層構造を備えている。
【0072】
このような塊状体含有層21を備えたセラミック部材27を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図7(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層21a,23aがセラミックグリーンシート25aを介して積層された積層成形体27aを作製する工程と、この積層成形体27aを焼成する工程とが含まれている。
【0073】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート25aを複数枚作製し、各グリーンシート25aの一方の主面に金属ペースト層21a又は23aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層21aの積層方向両側に金属ペースト層23aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体27aが得られる(図7(a))。
【0074】
金属ペースト層21a及び金属ペースト層23aには主成分として金属成分M1が含まれている。金属ペースト層21aは、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層23a,23aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、金属ペースト層21aのことを高率金属ペースト層21aという。
【0075】
本実施形態が上記した基本構造と異なるのは高率金属ペースト層21aの積層方向両側に金属ペースト層23aが配置されている点である。このように両側に金属ペースト層23aが配置されている場合には、積層成形体27aを焼成することによって高率金属ペースト層21aの金属成分M1が両側の金属ペースト層23aに拡散することになる。
【0076】
図7(a)に示す積層成形体27aは、上述したのと同様に、図7(b)に示す焼結途中の段階を経て、図7(c)に示すセラミック部材27となる。金属層23,23は、塊状体含有
層21から金属成分が拡散移動してくるので、比較的緻密な金属層となっている。
【0077】
図8は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図8に示すように、このセラミック部材37は、塊状体含有層21及び金属層23がセラミック層25を介してそれぞれ積層されたものである。このセラミック部材37では、塊状体含有層21が積層方向に複数配設されている。これらの塊状体含有層21は金属層23を複数層挟んでそれぞれ配設されている。これらの塊状体含有層21は積層方向に規則的に(所定の規則に従って)配設されている。具体的には、塊状体含有層21は所定の層数の金属層23を介して配置されている。
【0078】
このように複数の塊状体含有層21を備えたセラミック部材37を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。すなわち、上記した方法と同様にしてセラミックグリーンシート25a、金属ペースト層23a及び高率金属ペースト層21aをそれぞれ作製し、セラミックグリーンシート25aの主面に金属ペースト層23a又は高率金属ペースト層21aを印刷する。
【0079】
ついで、各高率金属ペースト層21aが金属ペースト層23aを複数層挟んでそれぞれ配設され、かつ、各高率金属ペースト層21aが積層方向に規則的に配設されるように各グリーンシート25aを積層して積層成形体を作製する。ついで、この積層成形体を焼成することによりセラミック部材37が得られる。
【0080】
焼成条件を調整して高率金属ペースト層21aから金属ペースト層23aに拡散する金属成分M1の量を調節することで、図9に示すような特徴を有するセラミック部材37を作製することができる。図9に示す特徴を有するセラミック部材37では、質量百分率Yが、塊状体含有層21にピークを有し、この塊状体含有層21から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層23にわたって漸次減少している(塊状体含有層11が金属成分を含む図2(a),(b)に示す形態の場合)。質量百分率Yが図9に示すような特徴を示すのは、以下の理由からである。
【0081】
すなわち、塊状体含有層21bの質量百分率Xは、前述の通り金属層23bの質量百分率よりも高くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、金属成分の質量百分率差に応じて、塊状体含有層21bの金属成分が焼結途中のセラミック層25bを通過して金属層23bに拡散移動する。この金属層23bは、該金属層23bの隣りにある金属層23bよりも金属成分M1の質量百分率Yが高い状態にあるので、これらの金属層23b,23b間にも濃度勾配が生まれる。
【0082】
したがって、この濃度勾配を駆動力にして金属層23bから金属層23bへの金属成分の拡散移動が生じることになる。このような拡散移動は、塊状体含有層21bから積層方向両側の2層以上の金属層23bにわたって順次生じていく。これにより、質量百分率Yが、塊状体含有層21にピークを有し、この塊状体含有層21から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層23にわたって漸次減少した構造を有するセラミック部材37を得ることができる。焼成時間を長くすると、各金属層の質量百分率Yの差が小さくなり、最終的にはほぼ同じ値に近づいていく。
【0083】
このような構造を有しているセラミック部材37は、金属成分濃度が急激に変化することなく漸次減少しているので、耐熱衝撃性が強いという利点がある。これは、セラミックスよりも金属の方が熱伝導特性に優れていることと、金属組成により熱伝導特性が変化するということに起因している。すなわち、金属成分濃度が急激に変化することなく漸次減少していることで、セラミック部材内の熱伝導特性の変化を抑制することができる。
【0084】
図10は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図10に示すように、このセラミック部材28は、金属層22,塊状体含有層24がセラミック層26を介してそれぞれ積層されたものである。
【0085】
塊状体含有層11が金属成分を含む図2(a),(b)に示す形態の場合、金属層22を両側から挟んで隣り合う金属層24は、金属層22よりも質量百分率Yが低くかつ空隙率が高いことが好ましい。
【0086】
このセラミック部材28は、金属成分M1を含む金属層22(第1金属層22)と、金
属層22より空隙が多い塊状体含有層24(第2金属層24)と、これらの金属層に挟まれたセラミック層26とからなる2つの3層構造を含んでいる。また、このセラミック部材28は、金属層22(第1金属層22)を共有する2つの3層構造からなる5層構造を備えている。
【0087】
このような塊状体含有層24を備えたセラミック部材28を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図11(a)〜(c)は、図10に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層22a,24aがセラミックグリーンシート26aを介して積層された積層成形体28aを作製する工程と、この積層成形体28aを焼成する工程とが含まれている。
【0088】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート26aを複数枚作製し、各グリーンシート26aの一方の主面に金属ペースト層22a又は24aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層22aの積層方向両側に金属ペースト層24aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体28aが得られる(図11(a))。
【0089】
金属ペースト層22a及び金属ペースト層24aには主成分として金属成分M1が含まれている。金属ペースト層22aは、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層24a,24aよりも質量百分率Xが低くなるように調製されている。以下、金属ペースト層22aのことを低率金属ペースト層22aという。
【0090】
本実施形態が上記した基本構造と異なるのは低率金属ペースト層22aの両側に金属ペースト層24aが配置されている点である。このように両側に金属ペースト層24aが配置されている場合には、積層成形体28aを焼成することによって両側の金属ペースト層24aの金属成分M1が低率金属ペースト層22aに拡散する。
【0091】
本実施形態では、塊状体含有層24bに挟まれる金属層22bの質量百分率Xが金属層24b,24bの質量百分率よりも低くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、金属成分の質量百分率差に応じて、両側の塊状体含有層24bの金属成分が焼結途中のセラミック層26bを通過して金属層22bの両側から拡散移動する(図11(b))。これにより、図11(c)に示すようなセラミック部材28が得られる(図11(c))。金属層22は、塊状体含有層24から金属成分が拡散
移動してくるので、比較的緻密な金属層となる。
【0092】
低率金属ペースト層22aにおける質量百分率Xは積層方向に両側に隣り合う金属ペースト層24aよりも低く設定すればよい。これらの質量百分率差(金属ペースト層24aの質量百分率XH−低率金属ペースト層22aの質量百分率XL)は、特に限定されるものではない。
【0093】
金属成分M1が銀であり、金属成分M2がパラジウム又は白金である場合を例に挙げると、質量百分率差は以下の範囲であるのが好ましい。金属成分M1の拡散が進行しやすくなるという点で質量百分率差は0.1以上であるのが好ましい。また、金属成分M1が低率金属ペースト層22aに過度に拡散して隣接するセラミック層同士が接合するのを抑制するという点で、質量百分率差が30以下であるのが好ましい。したがって、質量百分率差は0.1以上30以下であるのがよい。
【0094】
上記したように金属成分M1の拡散速度を速くするという点で、質量百分率差は1以上であるのが好ましい。また、上記したような相互拡散の現象をより活発に生じさせるという点で、質量百分率差は2以上であるのが好ましい。
【0095】
本実施形態の場合、低率金属ペースト層22aに対して積層方向両側に位置する金属ペースト層24aから低率金属ペースト層22aへ銀が拡散してくる。この形態の場合において、金属成分M1の拡散速度を抑えてセラミックスの焼結密度を高める点では、質量百分率差が25以下であるのがより好ましい。
【0096】
また、質量百分率Xにより拡散開始温度が変動することから、焼成炉の昇温加熱中にセラミック部材の温度分布が不均一になった場合でも、2層の金属ペースト層24aから低率金属ペースト層22aへの金属成分M1の拡散開始のタイミングを安定させるためには、質量百分率差は10以上であるのがよい。したがって、質量百分率差は、10以上25以下であるのがさらに好ましい。
【0097】
図12は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材127を示す断面図である。図12に示すように、このセラミック部材127は、塊状体含有層121,金属層123がセラミック層125を介してそれぞれ積層されたものである。
【0098】
塊状体含有層121は、この金属層121の一部に他の領域122よりも空隙が多い一部の領域124を備えている。一部の領域124は、他の領域122及び金属層123よりも質量百分率Yが高くかつ空隙率が高いことが好ましい。以下、一部の領域124のことを多孔質領域124という。
【0099】
このような金属層121中に多孔質領域124を備えたセラミック部材127を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図13(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【0100】
この製造方法には、金属ペースト層121a,123aがセラミックグリーンシート125aを介して積層された積層成形体127aを作製する工程と、この積層成形体127aを焼成する工程とが含まれている。
【0101】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート125aを複数枚作製し、各グリーンシート125aの一方の主面に金属ペースト層121a又は123aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層121aの積層方向両側に金属ペースト層123aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体127aが得られる(図13(a))。この
とき、金属ペースト層121aは、他の領域122用の金属ペースト層122aと一部の領域124用の金属ペースト層124aとからなる。
【0102】
金属ペースト層121a(122a,124a)及び金属ペースト層123aには主成分として金属成分M1が含まれている。金属ペースト層124aは、金属ペースト層122aよりも質量百分率Xが高くなり、かつ、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層123a,123aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、金属ペースト層124aのことを高率金属ペースト層121aという。
【0103】
高率金属ペースト層124aの両側に金属ペースト層123aが配置されている場合には、積層成形体127aを焼成することによって高率金属ペースト層124aの金属成分M1が同一面内での拡散よりも優先的に両側の金属ペースト層123aに拡散することになる。
【0104】
図13(a)に示す積層成形体127aは、上述したのと同様に、図13(b)に示す焼結途中の段階を経て、図13(c)に示すセラミック部材127となる。このようにして、同一
層内に空隙率の異なる領域(多孔質領域124および他の領域122)を形成することができる。
【0105】
図14は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図14に示すように、このセラミック部材27′では、塊状体含有層29が、この塊状体含有層29に対して積層方向に隣接するセラミック層25,25間に点在した複数のセラミック塊状体(または金属塊状体(部分金属層))29a,29a,・・・により構成され、これらの塊状体29aは互いに離隔して配置されている。
【0106】
複数の塊状体29aは、空隙29bを介して互いに電気的に絶縁された状態にある。すなわち、塊状体含有層29は、この塊状体含有層29を平面視したときに、セラミック層25上に複数の塊状体29aが点在したような形態である。このように塊状体29aが空隙を介して配置されていることで、この体含有層29は優れた応力緩和層として機能するとともに、優れた絶縁性をも有している。
【0107】
上記のようなセラミック部材は、例えば、セラミック層にZnO、SnO2、TiO2、ZrO2などのガスセンサに採用されるセラミック材料を用いて、金属層及び塊状体含有層に通電してセラミック層の電気抵抗を計測することでガスセンサとして用いることができる。また、フィルタにおいては、セラミック層に用いられる、コーディエライト、アルミナ、ZrO2などのセラミック材料を用いて塊状体含有層を形成することができる。そして、塊状体含有層で排気ガス中に含まれる有害物質を除去するフィルタとして用いることができる。また、セラミック層にZrO2に代表される固体電解質材料のセラミック材料を用いて、所定の雰囲気にさらして金属層及び塊状体含有層から起電力を得ることで燃料電池として用いることができる。さらに、セラミック層に、BaTiO3やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ZnOなどの圧電材料を用いて、金属層及び塊状体含有層に通電して駆動させるか、逆に起電力を得ることができる圧電素子として用いることができる。
【0108】
本発明のセラミック部材における塊状体含有層の空隙率は、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。空隙率は、質量百分率X、焼成時間、焼成温度等を適宜調整することによって変化させることができる。
【0109】
<ガスセンサ素子>
図3に示したセラミック部材17はガスセンサ素子として用いることができる。このセラミック部材17をガスセンサ素子に適用する場合、セラミック層15を構成する材料として、例えばZnO、SnO2、TiO2に代表される酸化物半導体特性を示すセラミック材料を用いることができる。上記のような酸化物半導体セラミック材料を用いて、金属層13及び塊状体含有層11に通電してセラミック層15の電気抵抗を計測するとガスセンサとして機能する。
【0110】
また、セラミック層15を構成する材料として、ZrO2に代表される固体電解質を用いることもできる。セラミック層15を挟んで異なる酸素濃度を有する気体が接すると、酸素濃度の差、すなわち酸素濃淡の差に起因してセラミック層15中の酸素イオンと自由電子の移動が生じる。
【0111】
高温雰囲気下で使用する場合、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層13と、空隙率が高い金属層11とは、金属成分M1を主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。このため、電池として機能させた際に金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを極力抑えることができるので、安定に使用できる耐久性の高い素子とすることができる。
【0112】
セラミック層15に常に大気と接するようにして、セラミック層15を挟んで反対側の面に測定したいガスを接するようにすると、酸素センサとして機能する。このとき、空隙率が高い塊状体含有層11に検知したいガスが接するようにして、金属層13に参照ガスとして大気が接するようにすればよい。
【0113】
図15は、優れた特性を有する本発明の他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。このガスセンサ素子41は、セラミック層43にZrO2に代表される固体電解質を用いている。空隙率の高い金属層45に検知したいガスが接するようにして、空隙率が高い塊状体含有層47には大気が接するようにする。金属層45に接するガスが金属層47に接することがないように、外部電極49とセラミック層51で塊状体含有層47を周囲から封じる。これにより、固体電解質であるセラミック層43の両側の主面に酸素濃度の異なる気体が接するようにすることができる。このガスセンサ素子には、ガス導入孔が設けられている。
【0114】
比較的緻密な金属層53を外部電極49に接続することで、検知した信号を緻密な電極(金属層53)を通じて高速で伝達することができる。すなわち、外部電極49は参照ガスである大気を導くガイドとしても機能し、さらに、信号を高速伝送させる機能をも有している。
【0115】
セラミック層51とセラミック層55との間に金属層53を埋設させることで、たとえガスセンサ素子が高温雰囲気に晒されたとしても、金属層53の酸化が抑制されるので、耐久性の高い素子とすることができる。
【0116】
セラミック層51,55を、耐熱特性があり熱伝導性能の高いアルミナセラミック材料で構成すると、ガスセンサ素子を加熱して用いる際に急速加熱が可能で、立ち上がり速度の速い酸素センサとすることができる。
【0117】
さらに、セラミック層43,51,55をZrO2に代表される固体電解質で構成することで、焼成時のセラミックスの収縮をほぼ同一にすることができるので、焼成が容易になり、焼成後の熱膨張の差から生じる応力の発生が低減される。これにより、耐久性の高い素子とすることができる。
【0118】
図16は、ガスセンサ素子の他の実施形態を示す断面図である。このようにセラミック層55に発熱体57が内蔵されたヒータ一体型酸素センサとすることもできる。
【0119】
次に、図15に示すガスセンサ素子の製造方法について説明する。まず、CaやYを添加したZrO2セラミック(安定化ジルコニア)の粉末を上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、上述と同様にしてスラリーをセラミックグリーンシートに成形する。
【0120】
次に、金属層53を形成するための金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得られる。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0121】
ついで、空隙率の高い塊状体含有層47を形成するための金属ペースト(高率金属ペースト)を作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得られる。この金属ペーストをグリーンシートにスクリーン印刷等によって印刷する。
【0122】
そして、これらの金属ペースト層が形成されたグリーンシートを積層し、高率金属ペーストの上にさらにもう一枚のグリーンシートを積層し乾燥することで積層成形体を得る。金属ペースト層の厚みは1〜40μm程度であるのがよい。
【0123】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。これにより、銀濃度の高い金属層47から金属層53へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される。
【0124】
次に、主に白金からなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して金属ペーストを作製する。これを上記焼結体に金属層45となる箇所にスクリーン印刷等によって印刷して800〜1000℃で焼成すると、セラミックス層を緻密に焼結することはできるが、セラミックスよりも液相点が高温である白金は緻密な焼結体とはならず、空隙率の高い金属層45が形成される。さらに高い空隙率を得るためには、平均粒径1μm白金粉末に平均粒径5μmのアクリルビーズを同量程度添加した金属ペーストを用いれば、さらにポーラスな電極を作製できる。
【0125】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した後、外部電極49を形成する。外部電極49は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0126】
なお、銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。
【0127】
また、図16に示すガスセンサ素子を作製するには、上記の工程に加えて、セラミック層55を形成するセラミックグリーンシート中に、主に白金からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して作製した金属ペーストを発熱体パターン形状に印刷する工程を設ければよい。
【0128】
塊状体含有層(空隙率の高い金属層)の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。また、空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。さらには、供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成するとガス検知機能を向上させる点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0129】
また、塊状体含有層以外の金属層の空隙率は、緻密であるほど電気伝導度が高くなり、高速で信号が伝達可能となるので0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であるとセンサ起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速いセンサとすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0130】
<燃料電池素子>
図17は、本発明の一実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。前述のように固体電解質に酸素濃度の異なる気体を接触させることで発生した起電力を集めて燃料電池とすることができる。大電流を得るためには、いかに少ない体積で多くの燃料電池素子を格納して結合し、効率良く起電力を集積するかが重要になる。
【0131】
図17に示すように、この燃料電池素子61では、酸素が流れる層(いわゆる空気極)に空隙率の高い電極層63を用い、酸素濃度が極めて低い層(いわゆる燃料極)にも空隙率の高い電極層65を用いている。その間のセラミック層67にはZrO2に代表される固体電解質をはさみこむ。これで燃料電池の基本部分は形成できる。
【0132】
外部電極69とセラミック層67,71とで空気極となる電極層63を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極63中に酸素を大量に流すことができる。また、外部電極69を介して緻密な電極層73が空隙率の高い電極層63と接続しているので、起電力を効率良く伝送することができる。
【0133】
外部電極69とセラミック層67,75とで燃料極となる電極層65を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極層65中を酸素濃度が極めて少ないガス(例えば天然ガス)を大量に流すことができる。さらに、外部電極69を介して緻密な電極77が空隙率の高い電極65と接続しているので、起電力を効率良く伝送することができる。
【0134】
燃料電池は、加熱して使用することで、発電効率が向上する。その際、高温雰囲気化で使用していると、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層73,77と、空隙率が高い金属層63,65とは、金属成分M1を主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。
【0135】
このため、電池として機能させた際に金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを抑制できるので、安定した耐久性を有する素子となる。さらに、図18に示すように燃料電池素子を積層して、同極の外部電極同士を接続することで、小型高密度の燃料電池素子を作製することもできる。
【0136】
次に、図17に示す燃料電池素子の製造方法について説明する。まず、CaやYを添加したZrO2セラミック(安定化ジルコニア)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、上述と同様にしてセラミック層67,71,75,79,81用のセラミックグリーンシートを作製する。
【0137】
ついで、金属層73,77用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0138】
ついで、空隙率の高い金属層63,65用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0139】
次に、各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図17に示す構造となるように積層して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0140】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63,65が形成され、比較的緻密な金属層73,77が形成される。
【0141】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極69を形成する。外部電極69は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0142】
なお、銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。図18に示す形態の場合、さらに、上記の工程のうち必要な工程をさらに追加すればよい。
【0143】
塊状体含有層の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。また、空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。
【0144】
さらには、供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成すると固体電解質が酸素濃度を検知する精度を向上させる点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0145】
また、塊状体含有層以外の金属層の空隙率は、緻密であるほど電気伝導度が高くなり、高速で信号が伝達可能となるので0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であると燃料電池起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速い燃料電池素子とすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0146】
<フィルタ素子>
図19は、本発明の一実施形態にかかるフィルタ素子を示す断面図である。図19に示すように、このフィルタ素子61では、ガスが流れる層に空隙率の高い電極層63を用い、加熱用あるいは熱伝達用の電極層73を用いている。その間のセラミック層71にはコーディエライト、アルミナに代表されるセラミック層をはさみこむ。これでフィルタの基本部分は形成できる。さらに、セラミック層67,79とで空隙率の高い電極層63を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極63中にガスを大量に流すことができる。
【0147】
また、空隙率の高い電極層63の金属自体が触媒として機能して、局所的に燃焼したり、選択的吸着することができるので、選択的に特定の物質を除去することができる。
【0148】
なお、フィルタは、加熱して使用することで、有害物質除去効率が向上する。その際、高温雰囲気化で使用していると、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層73と空隙率が高い金属層63とは、金属成分M1を主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。このため、金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを極力抑えることができるので、安定に使用できる耐久性の高い素子とすることができる。さらに、図20に示すようにフィルタ素子を積層して、同極の外部電極同士を接続することで、小型高密度のフィルタ素子を作製することもできる。
【0149】
次に、図19に示すフィルタ素子の製造方法について説明する。まず、Yや希土類金属の酸化物を添加したコーディエライトセラミック(2MgO−2Al2O3−5SiO2)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、このスラリーから上記したテープ成型法を用いて、セラミック層67,71,79用のセラミックグリーンシートを作成する。ついで、金属層73用の金属ペーストを上記と同様にして作製する。
【0150】
次に各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図19に示す構造となるように積層
して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。また積層成型体は、裁断して所望の形態にすることができる。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0151】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63が形成され、比較的緻密な金属層73が形成される。
【0152】
図20、21、22に示す形態の場合、さらに、上記の工程のうち必要な工程をさらに追加すればよい。図22においては、空隙率の高い金属層63をパターン印刷すれば良い。
【0153】
また、塊状体含有層63に含まれるセラミック粉末をセラミック層71を構成する材料と同じコーディエライトセラミックを用いることで、焼成時に液相として形成されると同時に、液相から析出した時点で、周囲の金属粒子と強固な結合を生み出す。
【0154】
塊状体含有層(空隙率の高い金属層)の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成するとフィルタに担持された金属粒子が触媒として機能を向上させる。この点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0155】
また、金属層は緻密であるほど熱伝導特性が高くなり、高速でフィルタ温度を所望の温度へ到達可能となるので、塊状体含有層以外の金属層(比較的緻密な金属層)の空隙率は0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であるとフィルタ起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速いフィルタ素子とすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0156】
<積層型圧電素子>
図23は、本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。この積層型圧電素子91は、内部電極として機能する複数の金属層93及び塊状体含有層95がセラミック層97を介して積層された積層体を備え、この積層体の側面に一対の外部電極101,101が形成された構造を有している。積層体の積層方向両端側には、圧電駆動に寄与しないセラミック層(不活性層)99をそれぞれ配設してもよい。
【0157】
塊状体含有層95は、積層方向に隣り合う第1金属層93よりも空隙が多い。この塊状体含有層95は、図2(a)〜(c)のいずれの形態であってもよい。
【0158】
セラミック層97の材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料を用いる。金属層93及び塊状体含有層95は、積層体の対向する側面に交互に露出するように配置されている。これにより、金属層93間に配置されたセラミック層97に外部電極101を通じて電圧を印加することができる。電圧が印加されることで素子が伸縮して圧電アクチュエータとして機能する。
【0159】
この積層型圧電素子91では、塊状体含有層95は空隙率が高く、金属層93は比較的緻密になるように形成されているので、緻密で信号伝達速度の速い金属層93に電圧が集中しやすい。空隙率が高く抵抗が大きい塊状体含有層95には、比較的小さな電圧しか印
加されない。
【0160】
塊状体含有層95の空隙率が高いことから、この塊状体含有層95が隣接するセラミック層97と接触する電極面積が小さくなるので、電圧を印加したときに逆圧電効果で変形するセラミック層97の領域が、緻密な金属層93に隣接するセラミック層97よりも小さくなる。したがって、金属層93に挟まれたセラミック層97の圧電変位量は大きくなり、隣接する金属層の少なくとも一方が空隙率の高い塊状体含有層95であるセラミック層97の圧電変位量は小さくなる。
【0161】
本実施形態では、変位する領域と変位しない領域の境界部分に存在する不活性層であるセラミック層99に、上記のような空隙率の高い塊状体含有層95を隣接させて配置しているので、この塊状体含有層95が応力緩和層として機能する。このようにセラミック層97を挟む内部電極の少なくとも一方が、空隙率が高く抵抗が大きい塊状体含有層95であることにより、これに隣接するセラミック層97の圧電変位量が小さくなって応力緩和効果が得られる。これにより、耐久性の高い積層型圧電素子が得られる。
【0162】
図24は、本発明の他の実施形態にかかる積層型圧電素子91′を示す断面図である。この積層型圧電素子91′が積層型圧電素子91と異なる点は、空隙率の高い塊状体含有層95が積層方向に隣り合う金属層93と同極の外部電極101に接続されている点である。このような構成にすることで、塊状体含有層95及びこれに隣り合う金属層93に挟まれたセラミック層97には電圧が印加されないので圧電変位を起こさない。素子内に変位する箇所と変位しない箇所が存在するとその境目に応力が集中するが、この境目に圧電体からなるセラミック層97が存在すると、応力に応じて圧電体が変形して応力が緩和される。
【0163】
仮に、隣り合う緻密な金属層を同極の外部電極に接続しこれらの間にセラミック層を配置した場合、セラミック層は金属層に強く拘束されるので応力緩和効果が小さく、応力が集中しやすくなる。一方、本実施形態のように、セラミック層97を挟む金属層の少なくとも一方が空隙率の高い塊状体含有層95であると、セラミック層97と空隙率が高い塊状体含有層95との接合面積が少ないことに起因して拘束力も小さくなる。また、同極で挟まれたセラミック層97だけでは応力が吸収しきれないときであっても、空隙率が高い塊状体含有層95のクッション効果で応力緩和効果をより高めることができる。
【0164】
また、想定外の大きな応力が加わって金属層93にクラックが入ったり、同極で挟まれたセラミック層97にクラック等が入ったとしても、同極同士でセラミック層97を挟んでいるので短絡する等の不具合が生じるのを抑制できる。
【0165】
また、図2(a)のような形態の場合、空隙率が高い塊状体含有層95が電極として機能
し、異なる電極でセラミック層97を2層挟むことになるので、厚みあたりの印加電圧が半分になって駆動変形が小さくなる分、応力緩和効果が大きくなる。これにより、性能の安定した積層型圧電素子とすることができる。
【0166】
次に、図23に示す積層型圧電素子91の製造方法について説明する。まず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、このスラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法を用いて、セラミック層97,99用のセラミックグリーンシートを作製する。
【0167】
ついで、金属層93用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを
上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。一方で、空隙率の高い塊状体含有層95用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0168】
次に各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図19に示す構造となるように積層して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0169】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い塊状体含有層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成される。
【0170】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極101を形成する。外部電極101は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0171】
銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い塊状体含有層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。
【0172】
図25は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子111を示す断面図である。図25に示すように、本実施形態の積層型圧電素子111は、複数の金属層93及び複数の塊状体含有層95がセラミック層97を介して積層された積層体を備え、この積層体の側面に一対の外部電極101,101が形成された構造を有している。
【0173】
この積層型圧電素子111では、積層方向に隣り合う両側の金属層93よりも空隙が多い塊状体含有層95が、複数の金属層93を介して配置されている。複数の塊状体含有層95は積層体の積層方向に規則的に配置されている。このように空隙率の高い塊状体含有層95が複数の金属層93を介して配置されることで、積層体の強度が低下するのを抑制している。また、複数の塊状体含有層95が積層方向に規則的に(所定の規則に従って)配置されていることで、積層方向に満遍なく応力緩和効果を発現させることができる。
【0174】
ここで、塊状体含有層が「規則的に配置されている」とは、複数の塊状体含有層が配置される間隔がすべて同じである場合はもちろんのこと、積層体に生じる応力を積層方向に効果的に分散させることができる程度に、各塊状体含有層の配置間隔が近似している場合も含む概念である。具体的には、塊状体含有層の配置間隔は、各塊状体含有層の配置間隔の平均値に対して好ましくは±20%の範囲内、より好ましくは±15%の範囲内、さらに好ましくはすべて同数であるのがよい。
【0175】
塊状体含有層95が図2(b)または図2(c)の形態のように塊状体含有層95に対して積層方向に隣接する2つの圧電体層97,97間に点在した複数のセラミック塊状体(および金属塊状体)により構成されたものである場合には、図2(a)のように金属層中に独立
した多数の空隙を有するスポンジ状の形態である場合と比較して応力緩和層が著しく向上する。
【0176】
この積層型圧電素子111における塊状体含有層95は、該塊状体含有層95に対して積層方向に隣り合う両側の金属層93,93よりも厚みが薄くなっているのが好ましい。厚みの小さい塊状体含有層95は厚みの大きい金属層93よりも変形しやすい。金属層が
変形する際には、圧電体層97の変位により生じる応力を吸収することができる。したがって、厚みが薄い塊状体含有層95を図21のように規則的に配置することにより、積層型圧電素子111の変位により生じる応力を効果的に吸収することができる。
【0177】
塊状体含有層用の金属ペースト層における質量百分率Xが他の金属層用の金属ペースト層における質量百分率Xよりも高くなるように調製することにより、金属成分の質量百分率差に応じて、塊状体含有層の金属成分が焼結途中のセラミック層を通過して隣り合う金属層に拡散移動することを利用することができる。すなわち、例えば焼成前に金属ペースト層の厚みが同程度であっても、金属成分が拡散した後の塊状体含有層の厚みは、他の金属層の厚みよりも薄くなる。
【0178】
また、塊状体含有層95の厚みを小さくする他の方法としては、例えば、セラミックグリーンシートに金属ペースト層を印刷する際に、塊状体含有層用の金属ペースト層の厚みを他の金属層用の金属ペースト層の厚みよりも薄くする方法が挙げられる。
【0179】
また、積層型圧電素子111における塊状体含有層95は、この塊状体含有層95に対して積層方向に隣り合う両側の金属層93,93よりも電気抵抗が高くなっているのが好ましい。電気抵抗の高い塊状体含有層95に隣接する圧電体層97は、電気抵抗の低い金属層93に隣接する圧電体層97と比較して変位量が小さくなる。このような変位の小さな圧電体層97が積層型圧電素子111中に複数存在することによって、変位によって生じる応力の分布を分散させることができるので、クラック等の不具合が発生するのを抑制することができる。
【0180】
塊状体含有層95の電気抵抗を他の金属層93よりも高くするには、いくつかの方法がある。すなわち、塊状体含有層95の断面積を他の金属層93よりも小さくする方法が挙げられる。具体的には、厚みを薄くしたり、空隙を多くすることにより断面積を小さくすることができる。また、塊状体含有層95の材料として抵抗値の高いものを用いる方法もある。
【0181】
また、積層型圧電素子111における塊状体含有層95は、質量百分率Yが積層方向に隣り合う両側の金属層93よりも高くなっているのが好ましい。特に、質量百分率Yが、塊状体含有層95にピークを有し、この塊状体含有層95から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層93にわたって漸次減少しているのがよい。
【0182】
このような構造を有している積層型圧電素子111は、複数の金属層において金属成分濃度が徐々に変化しているので、耐熱衝撃性が優れているという利点がある。これは、セラミックスよりも金属の方が熱伝導特性に優れていることと、金属組成により熱伝導特性が変化するということに起因している。すなわち、複数の金属層において金属成分濃度が徐々に減少していることで、セラミック部材内の熱伝導特性の急激な変化を抑制することができる。
【0183】
図26は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子112を示す断面図である。図26に示すように、積層型圧電素子112は、塊状体含有層95と該塊状体含有層95以外の金属層93とが交互に配置されている。これにより、各圧電体層97は、塊状体含有層95と金属層93に挟まれることになる。応力緩和効果に優れた塊状体含有層95が、駆動変位する全ての圧電体層97に接していることにより、応力緩和効果をより高めることができる。多孔質の金属層と緻密質の金属層とが交互に存在することで、金属層93は圧電体層97に電圧を引加して圧電変位を可能とする。
【0184】
圧電体層97を介して反対側の塊状体含有層95では、多孔質であるがゆえに金属層が
圧電体層97をクランプする力が弱いので応力の発生が少ない。したがって、圧電体層97はクランプされていないような状態となるので、大きな変位を発生させることができるとともに、金属層93と圧電体層97との間で生じた応力をも緩和することができる。
【0185】
積層型圧電素子112では、塊状体含有層95を内部電極として機能させる場合には、塊状体含有層95の空隙率が7%以上70%以下であるのが好ましい。空隙率が70%以下であることにより、塊状体含有層95の導電性が低下するのを抑制し、隣接する圧電体層に十分な電界を与えることができ、変位量を大きくすることができる。一方、空隙率が7%以上であることにより、この塊状体含有層95に隣接する圧電体層との接合力が過度に強くなるのを抑制することができる。その結果、駆動時に塊状体含有層95と圧電体層97との界面にクラックが発生しやすくなるので、クラックが圧電体層自体に発生するのを抑制できる。
【0186】
また、塊状体含有層95の絶縁性を高める場合には、塊状体含有層95の空隙率が24〜98%、より好ましくは24〜90%であるのがよい。これにより、絶縁性を高めることができる。また、金属層が圧電体を拘束する力を小さくして、駆動時の応力を減少させることができる。
【0187】
圧電体を駆動変位が大きくできる点で50〜90%であるのがより好ましい。さらには、空隙の空気層が断熱効果を生み、積層型圧電素子の耐熱衝撃特性が優れる点で70〜90%であるのがさらに好ましい。また、より高い絶縁性を付与する点で空隙率が70%以上であるのがよい。
【0188】
塊状体含有層以外の金属層の空隙率は、電気伝導特性を高め、圧電体の駆動電圧を効率的に印加できる点で0.1〜40%であるのが好ましい。また、さらに電気伝導を高めて、圧電体を大きく変位させることができる点で0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0189】
また、この積層型圧電素子112では、複数の金属層の積層方向両端に、塊状体含有層95がそれぞれ配置されているのが好ましい。積層型圧電素子112では、セラミック層(不活性層)99との境界部分に特に高い応力がかかりやすい。したがって、セラミック層99に隣接する金属層を塊状体含有層95とするのが好ましい。さらに、複数の塊状体含有層95の中でも、セラミック層99に隣接する塊状体含有層95の空隙率をより高くするのが好ましい。
【0190】
この積層型圧電素子112では、塊状体含有層95を内部電極として機能させる場合には、塊状体含有層95が正極であることが望ましい。応力の集中する圧電体層と金属層との境界部分では、エッジ効果により、局所的に電界の集中が生じて局所的な駆動変形が生じる。これとともに、応力による圧電体の結晶構造の相転移とが併発して、局所的に発熱することがある。この時、発熱した温度での圧電体の酸素イオンが解離する酸素分圧よりも、積層型圧電素子周囲の酸素分圧が低いという条件が成立すると、局所的に圧電体にイオン伝導体となる酸素空孔が発生し、積層型圧電素子の特性が変化する原因となることがある。
【0191】
さらに、イオン化した酸素空孔はマイナスの電荷を有しているので、正極側の金属層は、負極側と比較してイオン化した酸素空孔のマイグレーションが生じやすい。すなわち、正極側の金属層の空隙率を高めることで、圧電体周囲に酸素が供給されやすくなるので、酸素空孔の発生が抑制され、耐久性の低下を抑制できる。
【0192】
図27は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子113を示す断面図である。図27に示すように、積層型圧電素子113は、金属成分M1を含む金属層93と
塊状体含有層95′が圧電体層97を介して積層されたものである。複数の金属層は、積層方向に隣り合う両側の塊状体含有層95′よりも空隙が少ない緻密質金属層93′を複数含んでいる。金属層95′は塊状体含有層である。
【0193】
応力緩和効果に優れた塊状体含有層95′が、1層だけのときには素子に加わる応力がその周辺に集中しやすい傾向にある。塊状体含有層95′の隣の金属層93に接する圧電体層97は駆動変位することから、塊状体含有層95′の隣の金属層93と素子表面との間に挟まれた圧電体部分に応力が集中しやすくなる。
【0194】
このため、この金属層93と素子表面との間に挟まれた圧電体部分を、応力緩和効果に優れた塊状体含有層95′ではさみこむことで、局所的に集中した応力を緩和させることができる。しかも、近接した2層の応力緩和層(塊状体含有層95′)で応力が緩和されるため、応力緩和効果が非常に高い。
【0195】
さらに、図27のように、塊状体含有層95′に挟まれた緻密質金属層93′が接続される外部電極の極性を素子の積層方向に互い違いにすることで、緻密質金属層93′が外部電極に拘束されることによって生じる応力を均一に分散することができる。これにより、応力緩和効果を著しく高めることができる。
【0196】
本発明の積層型圧電素子においては、塊状体含有層に対して積層方向の両側に隣り合う2つの金属層は互いに異なる極の外部電極に接続されているのが好ましい。素子の駆動時に塊状体含有層が積層体に生じる応力をより効果的に吸収することができる。塊状体含有層が隣り合う同極の内部電極に挟まれた2つの圧電体層間に配置されているときには、塊状体含有層に隣接する圧電体層は内部電極に電圧が印加されても駆動しない。このように塊状体含有層が同極に挟まれている場合には、駆動する部分と駆動しない部分ができてその境界付近に応力が集中しやすくなる。一方、塊状体含有層が隣り合う異極の内部電極に挟まれているときには、上記のような応力集中が生じにくい。
【0197】
図28(a)は、本実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、図28(b)は、この積層型圧電素子における圧電体層と内部電極層(金属層)との積層状態を説明するための部分断面図である。
【0198】
図28(a)、(b)に示すように、この積層型圧電素子は、複数の圧電体層107が内部電極層102を介して積層された積層体104を有している。積層体104の側面には、複数の内部電極層102が一層おきに接続された一対の外部電極105が形成されている。複数の内部電極層102は、圧電体層107の主面全体には形成されておらず、圧電体層107の主面の面積よりも内部電極層102の面積が小さい構造、いわゆる部分電極構造となっている。これらの内部電極層102は、積層体104の互いに対向する側面に交互に露出するように積層されている。
【0199】
この積層型圧電素子では、上記したように内部電極層102が部分電極構造となっているため、外部電極105,105に電圧を印加すると、圧電体層107の上下に位置する2枚の内部電極層102に挟まれた部分、すなわち一方の内部電極層102が他方の内部電極層102に対して積層方向に重なり合う領域(変位部170)のみが変位する。一方、圧電体層107のうち、図28(b)に示すように内部電極層102が形成されていない
部分(周縁部131)では、圧電体層107は変位しない(非変位部171)。
【0200】
本発明の積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、半田により外部電極105にリード線106を接続固定し、リード線106を外部電圧供給部に接続すればよい。この外部電圧供給部からリード線106を通じて外部電極105,105に所
定の電圧を印加することで、各圧電体層107を逆圧電効果により変位させることができる。
【0201】
図28(b)に示すように、この積層型圧電素子は、積層方向に隣り合う2つの圧電体層
107,107間に位置し、かつ、内部電極層102の側端部102aと積層体104の側面104aとの間に位置する周縁部131を備えている。本実施形態の積層型圧電素子では、複数の周縁部131のうち、少なくとも一つの周縁部131には、セラミック塊状体103および/または金属塊状体(部分金属層)103が複数点在した領域が形成されている。
【0202】
図28(b)に示すように、これらの塊状体103は、周縁部131のほぼ全体に点在し
ている。塊状体103に代えて、圧電性セラミックスよりも変形しやすい他の物質を点在させてもよい。ここでいう「変形」とは、弾性変形、塑性変形、脆性変形などのいずれの形態の変形であってもよい。
【0203】
塊状体103は、周縁部131に内部電極層102と絶縁された状態で点在している。ここで、「内部電極層102と絶縁された状態で点在している」とは、複数の塊状体103が内部電極層102と電気的に導通していない状態にあり、かつ、塊状体103同士が互いに離隔して電気的に導通していない状態のことをいう(図29)。
【0204】
積層体104にある複数の周縁部131のうち、塊状体103を積層体104のどの位置に点在させるかは特に限定されない。例えば、全ての周縁部131(全ての内部電極層102に隣接する周縁部131)に塊状体103を点在させてもよく、任意に選定した周縁部131に点在させてもよい。この実施形態では、塊状体103が点在している周縁部131が複数存在し、これらが、積層体104の積層方向に、2層以上の圧電体層107を隔ててそれぞれ配置されている。
【0205】
塊状体103を構成する材料としては、圧電体と同様の材料や内部電極層102と同様の材料が使用でき、好ましくはPZTや銀パラジウム合金であるのがよい。銀パラジウム合金は、金属の中でも柔らかく変形しやすいので、少量でも非変位部の拘束力を低減させる効果が高い。また、銀パラジウム合金は、金属疲労しにくく、耐酸化性も高いので、積層型圧電素子の耐久性が低下するのを抑制することができる。塊状体103の形状、大きさ、周縁部131に存在する個数などについては特に限定されるものではなく、少なくとも上記のように点在した状態にあればよい。
【0206】
具体的には、塊状体103が点在した周縁部131を積層体104の積層方向から見たときに、周縁部131の面積に対して複数の塊状体103の合計面積が占める割合は、好ましくは0.1〜50%、より好ましくは5〜30%であるのがよい。
【0207】
塊状体103の占める割合が0.1%以上であると、変位部の変位を拘束する拘束力を低減する効果が得られる。塊状体103の占める割合が50%以下であると、抗折強度および絶縁性が過度に低下するのを抑制できる。
【0208】
塊状体103を積層体104の積層方向から見たときの塊状体103の最大径rは、特に限定されるものではない。好ましい塊状体103の最大径rは、周縁部131における内部電極層102と外部電極105の最短距離Lの1/2以下、好ましくは1/10以下であるのがよい。具体例を挙げると、例えば最短距離Lが約1mm程度の場合、領域3の最大径rは、500μm以下、好ましくは100μm以下であるのがよい。これにより、適度な抗折強度および絶縁性を維持できる。
【0209】
また、本実施形態では、塊状体103が点在した周縁部131において、隣り合う塊状体103間の一部または全部には絶縁性セラミック領域が存在し、該絶縁性セラミック領域が、隣り合う圧電体層107,107間を連結している。隣り合う塊状体103間に存在し圧電体層107同士を連結するセラミックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは圧電体層107と同じ材料であるのがよい。
【0210】
圧電体層107の材料としてチタン酸ジルコン酸鉛を使用する場合には、周縁部131において圧電体層107同士を連結する絶縁性セラミックスとしてチタン酸ジルコン酸鉛を使用するのが好ましい。これにより、熱膨張差に起因する不具合の発生を防止できることに加え、圧電体層107同士を結合する高い接合強度を得ることができる。
【0211】
塊状体103が点在した周縁部131は、積層体104の積層方向に等間隔に配置されるのがより好ましい。すなわち、複数の内部電極層102のうち、2層以上の圧電体層107を隔てて等間隔に選ばれた複数の内部電極層102の側端部102aと積層体104の側面104aとの間の複数の周縁部131に、複数の塊状体103が点在しているのがよい。このように等間隔に選ばれた複数の周縁部131に塊状体103を点在させているので、変位性能と抗折強度をよりバランスよく設定することができる。
【0212】
圧電体層107の材料としては、種々の圧電性セラミックスを用いることができ、特に限定されるものではなく、例えばBi層状化合物(層状ペロブスカイト型化合物)、タングステンブロンズ型化合物、Nb系ペロブスカイト型化合物(Nb酸ナトリウムなどのNb酸アルカリ化合物(NAC)、Nb酸バリウムなどのNb酸アルカリ土類化合物(NAEC))、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛等のペロブスカイト型化合物などを例示できる。
【0213】
これらのうち、特に、少なくともPbを含むペロブスカイト型化合物であるのがよい。例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛等を含有する物質が好ましい。これらの中でもチタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸鉛が、大きな変位を付加する上で好適である。圧電セラミックスは、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いものが望ましい。
【0214】
内部電極層102の材料としては、例えば金、銀、パラジウム、白金、銅、アルミニウムやこれらの合金などを用いることができる。合金の具体例としては、銀パラジウム合金などが挙げられる。内部電極層102の厚みは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度である必要があり、一般に、0.5〜7μm程度、好ましくは1〜5μm程度であるのがよい。
【0215】
圧電体層1の厚み、つまり内部電極層2間の距離は50〜200μm程度であるのが望ましい。圧電体層107の厚みが上記範囲にあることによりアクチュエータの小型化および低背化が達成でき、絶縁破壊も抑制できる。外部電極105の材料としては、例えば金、銀、パラジウム、白金、銅、アルミニウム、ニッケルやこれらの合金などを用いることができる。
【0216】
次に、本実施形態にかかるセラミック部材を積層型圧電素子とするために、銀粉末にガラス粉末とバインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを積層体104の対向する側面104a、104aにスクリーン印刷等の方法で印刷し乾燥させる。その後、500〜800℃で焼付けることにより外部電極105を形成することができる。この際、印刷のかわりに、上記銀ガラスペーストを乾燥させた5μm以下の
シートを焼付けてもよい。
【0217】
次に、外部電極105を形成した積層体4をシリコーンゴム溶液に浸漬し、このシリコーンゴム溶液を真空脱気した後、シリコーンゴム溶液から積層体104を引き上げ、積層体104の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、積層体104の側面にコーティングしたシリコーンゴムを硬化させることにより本実施形態にかかる積層型圧電素子が完成する。
【0218】
最後に、外部電極105にリード線を接続し、該リード線を介して一対の外部電極105に3kV/mmの直流電圧を印加して積層体104を分極処理することによって、本発明の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータが完成する。リード線は、外部の電圧供給部に接続され、リード線及び外部電極105を介して金属層102に電圧を印加することで、各圧電体層107は逆圧電効果によって大きく変位する。これにより、例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
(噴射装置)
図30は、本発明の一実施形態にかかる噴射装置を示す概略断面図である。図30に示すように、本実施形態にかかる噴射装置は、一端に噴射孔333を有する収納容器331の内部に上記実施形態に代表される本発明の積層型圧電素子が収納されている。収納容器331内には、噴射孔333を開閉することができるニードルバルブ335が配設されている。
【0219】
噴射孔333には燃料通路337がニードルバルブ335の動きに応じて連通可能に配設されている。この燃料通路337は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路337に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ335が噴射孔333を開放すると、燃料通路337に供給されていた燃料が一定の高圧で図示しない内燃機関の燃料室内に噴出されるように構成されている。
【0220】
また、ニードルバルブ335の上端部は内径が大きくなっており、収納容器331に形成されたシリンダ339と摺動可能なピストン341が配置されている。そして、収納容器331内には、上記した積層型圧電素子を備えた圧電アクチュエータ343が収納されている。
【0221】
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ343が電圧を印加されて伸長すると、ピストン341が押圧され、ニードルバルブ335が噴射孔333を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ343が収縮し、皿バネ345がピストン341を押し返し、噴射孔333が燃料通路337と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
【0222】
また、本発明の噴射装置は、噴出孔を有する容器と、上記積層型圧電素子とを備え、容器内に充填された液体が積層型圧電素子の駆動により噴射孔から吐出させるように構成されていてもよい。すなわち、素子が必ずしも容器の内部にある必要はなく、積層型圧電素子の駆動によって容器の内部に圧力が加わるように構成されていればよい。なお、本発明において、液体とは、燃料、インクなどの他、種々の液状流体(導電性ペースト等)が含まれる。
【0223】
(燃料噴射システム)
図31は、本発明の一実施形態にかかる燃料噴射システムを示す概略図である。図31に示すように、本実施形態にかかる燃料噴射システム351は、高圧燃料を蓄えるコモンレール352と、このコモンレール352に蓄えられた燃料を噴射する複数の上記噴射装置353と、コモンレール352に高圧の燃料を供給する圧力ポンプ354と、噴射装置
353に駆動信号を与える噴射制御ユニット355と、を備えている。
【0224】
噴射制御ユニット355は、エンジンの燃焼室内の状況をセンサ等で感知しながら燃料噴射の量やタイミングを制御するものである。圧力ポンプ354は、燃料タンク356から燃料を1000〜2000気圧程度、好ましくは1500〜1700気圧程度にしてコモンレール352に送り込む役割を果たす。
【0225】
コモンレール354では、圧力ポンプ354から送られてきた燃料を蓄え、適宜噴射装置353に送り込む。噴射装置353は、上述したように噴射孔333から少量の燃料を燃焼室内に霧状に噴射する。
【0226】
<その他の実施形態>
(他の実施形態1)
図32は、他の実施形態1にかかる積層型圧電素子を示す斜視図である。図33は、図32におけるA−A線断面図である。図34は、本発明の複合層を含む拡大断面図である。
【0227】
図32及び図33に示すように、本実施形態にかかる積層型圧電素子は、複数の圧電体層1が内部電極402を介して積層された積層体410を有し、この積層体の対向する側面に内部電極402の端部を一層おきに電気的に導通する一対の外部電極404a,404bが接合されている。外部電極404a,404bには、ハンダ等によりリード線406が接続固定されている。内部電極402は、正極の外部電極404aに導通されている第1の内部電極402aと負極の外部電極404bに導通されている第2の内部電極402bとからなる。
【0228】
図33及び図34に示すように、本実施形態の積層型圧電素子は、2つの圧電体層401a,401aと、これらの圧電体層401a,401a間に配置され、塊状体(無機組成物)403aが複数点在してなる塊状体含有層(無機層)403とからなる複合層411が、隣り合う異極の内部電極402a,402b間に配置されていることを特徴としている。
【0229】
複合層411は、異極の内部電極402a,402bに挟まれた2つの圧電体層401a,401aの間に塊状体403aが点在してなる塊状体含有層403を備えているので、塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aには、内部電極402a,402bに電圧が印加されたときに、他の圧電体層401bに比べて低い電界しかからない。従って、塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aは他の圧電体層402bに比べて歪量が小さくなる。これにより、塊状体含有層403と圧電体層401a,401aからなる複合層411が、積層体410全体の歪みによって生じる応力を効果的に吸収することができる。したがって、高電界、高圧力下で長時間連続駆動させた場合においても、圧電体層に過度な応力がかかるのを防止することができるので、耐久性の優れた積層型圧電素子を得ることができる。
【0230】
また、複合層を備えていることで、各圧電体層の変位挙動が一致する共振現象が発生することに起因するうなり音が発生するのを抑制することができ、また、駆動周波数の整数倍の高調波信号が発生するのを抑制してノイズ成分となるのを防ぐことができる。また、複合層を備えていることで、素子の耐久性が向上するので、変位量が次第に変化するのを抑制し、長期間連続運転において安定した変位量が得られる。
【0231】
塊状体403aの大きさは、積層体410の積層方向に垂直な方向の長さが0.1〜100μmであるのが好ましい。塊状体含有層403を構成する塊状体の上記長さを0.1
〜100μmとすることにより、塊状体含有層403の両側に配置された圧電体層401aにかかる電界を低減して、圧電体層401aの歪を低減させ、且つ、積層体410の伸縮によって生じる応力を塊状体403aが分散させて吸収することができる。さらに好ましくは、塊状体403aの上記長さが1〜10μmであるのが好ましい。また、塊状体403aの形状は、略球形であっても、他の形状であっても構わない。なお、塊状体含有層403は、圧電体層間の領域の一部分に形成されていてもよく、全領域に形成されていてもよい。
【0232】
塊状体含有層403は内部電極402よりも空隙403b(低誘電体)が多いことが好ましい。空隙の多さを比較するには、例えば空隙率を測定すればよい。塊状体含有層403における空隙403bの割合(空隙率)を内部電極402よりも多くしておくことにより、さらに塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aには、他の圧電体層1bに比べて、低い電界しかかからず、よりいっそうの応力低減が可能となる。
【0233】
ここで、塊状体含有層403の空隙率は、塊状体403aを点在させ、塊状体含有層403に隣接する圧電体層401aにかかる電界を効果的に低減させる点から、好ましくは10〜95%、より好ましくは40〜90%であるのがよい。
【0234】
さらに、隣り合う異極の内部電極402a,402b間に積層配置された2つの圧電体層401aとこれらの圧電体層間に配置され、塊状体403aが複数点在してなる塊状体含有層403とからなる複合層411が、積層体410の積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に配置されていることが望ましい。つまり、積層体410の積層方向の両端部には電圧を印加しても圧電変位することのない不活性層409が配置されているが、該積層体410に電圧を印加して駆動させた場合において、圧電変位する圧電体層1と圧電変位しない不活性層409の界面に大きな応力が発生する。複合層411を積層体410の積層方向の端部側に配置することにより、不活性層409と圧電体層1の間に発生する応力を大きく低減することができ、駆動時に不活性層409近傍に働く応力によって圧電体層1にクラックが生じるのを抑制できる。
【0235】
積層体410の積層方向の端部側とは、積層体410の積層方向の端部に配置されている不活性層409の近傍のことであり、好ましくは不活性層409から数えて25番目以内の圧電体層1、より好ましくは10番目以内に形成されているのがよい。塊状体含有層403が複数層存在する場合には、複数層存在する塊状体含有層403の積層方向の端部に複合層411が形成されていることが好ましい。
【0236】
積層体410が、積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に、中央部の圧電体層1よりも層厚が厚い複数の圧電体層を含む応力緩和領域を備え、該応力緩和領域に複合層があることが望ましい。つまり、積層方向の端部側に設けた応力緩和領域では、積層方向中央の圧電体層1よりも層厚が厚い複数の圧電体層1を備えているため、電圧を印加した場合に生じる歪が中央の圧電体層1よりも小さくなる。これにより、電圧が加わらず歪が生じない不活性層409と電圧が加わって歪の生じる活性層の界面近傍に生じる応力を低減することができる。また、応力緩和領域に前述の複合層411を備えているため、応力緩和領域のみを備えている場合よりもまして、駆動時に不活性層409の近傍に生じる応力を低減することができる。これにより、高電界、高圧力下で長時間連続駆動させた場合においても、耐久性に優れた積層型圧電素子を提供することができる。
【0237】
塊状体含有層403を構成する塊状体403aをヤング率の低い金属材料で構成することにより、積層体410が変位して塊状体含有層403に応力が加わった場合においても、金属材料自体が変形できるため、該塊状体含有層403が変位を拘束することなく高変位を得ることができる。
【0238】
塊状体403aを構成する金属成分は、周期律表第8〜10族金属であるNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsから選ばれる少なくとも1種以上と、周期律表第11族金属であるCu,Ag及びAuから選ばれる少なくとも1種以上とからなる合金であるのが好ましい。これは、近年における合金粉末合成技術において量産性に優れた金属組成であるからである。また、塊状体403aを構成する金属成分は周期律表第11族金属単体であってもよい。特には、Ag単体若しくは、Agを主成分とする合金が望ましい。
【0239】
また、塊状体含有層403を構成する塊状体403aを圧電材料で構成することにより、高圧力下で使用した場合において、塊状体含有層403に高い圧縮力が加わっても、塊状体403aを構成する圧電材料が、圧縮力に対して変形できる。このため、応力が集中することがなく、圧電体層1にクラックが生じるのを抑制できる。
【0240】
塊状体含有層403を構成する塊状体403aは、金属材料と圧全材料とからなることが好ましい。これは前述の、金属材料が低ヤング率のため、変位を拘束しない点と、圧電材料が高い圧縮力下で変形できる点からである。
【0241】
塊状体含有層403を構成する金属材料と内部電極402の主成分が同一であることが好ましい。上記金属材料と内部電極402の主成分を同一としておくことにより、圧電体層1と内部電極402及び該金属材料を同時焼成することができ、安価な積層型圧電素子を製造することができる。これに加え、金属材料の主成分を内部電極402の主成分と同じにしておくことにより、焼成時に内部電極402と金属材料の収縮のミスマッチによりデラミネーションが生じるのを抑制できる。
【0242】
また、塊状体含有層403を構成する圧電材料と圧電体層1の主成分とが同じであることが好ましい。塊状体含有層403を構成する圧電材料と圧電体層1の主成分を同じにしておくことにより、圧電体層1と内部電極402及び塊状体含有層403を同時焼成することができ、安価な積層型圧電素子を製造することができる。これに加え、焼成時に圧電体層1と塊状体含有層403の収縮のミスマッチによるデラミネーションの発生を抑制できる。
【0243】
塊状体含有層403を形成するための無機ペーストは次のようにして作製する。塊状体403aを金属材料により構成する場合には、銀や、銀を主成分とする銀−パラジウムなどの合金等の金属粉末に、バインダー、可塑剤等を添加混合して、無機ペーストを作製する。また、塊状体403aを圧電材料により構成する場合には、PZT等の仮焼粉末に、バインダー、可塑剤等を添加混合して、無機ペーストを作製する。さらに、塊状体403aを金属材料と圧電材料とから構成する場合には前記銀や銀を主成分とする銀−パラジウムなどの合金等の金属粉末とPZT等の仮焼粉末に、バインダー、可塑剤等を添加混合して、無機ペーストを作製する。
【0244】
無機ペースト中にアクリルビーズ等の有機物を含有させておくことにより、任意の空隙率をもった塊状体含有層403を形成することができる。これにより、所望とする空隙率をもった該塊状体含有層403を形成することができる。
【0245】
図35に示すように、塊状体含有層403をなす無機ペーストが印刷されたグリーンシートの両隣に内部電極402をなす導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを互いに逆の極になるように積層する。これにより、隣り合う異極の内部電極402間に積層配置された2つの圧電体層401aと、これらの圧電体層401a間に配置され、塊状体403aが複数点在してなる塊状体含有層403とからなる複合層411を形成することができる。
【0246】
さらに、積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に、中央部の圧電体層1を形成するグリーンシートよりも層厚が厚い複数のグリーンシートを積層しておくことにより、中央部の圧電体層よりも層厚が厚い複数の圧電体層を含む応力緩和領域を形成することができる。この応力緩和層に前述ように、塊状体含有層403をなす無機ペーストが印刷されたグリーンシートの両隣に内部電極402をなす導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを互いに逆の極になるように積層する。これにより応力緩和領域に複合層411を備えた積層体410を作製することができる。
【0247】
(他の実施形態2)
図36は、他の実施形態2にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、図37は、図36における圧電体層と内部電極との積層状態を示す部分斜視図である。
【0248】
図36,37に示すように、本実施形態の積層型圧電素子は、複数の圧電体層511aと複数の内部電極512とをほぼ交互に積層してなる積層体513を有し、該積層体513の対向する側面に一対の外部電極515が配設されている。
【0249】
本実施形態の積層型圧電素子は、図36,37に示すように、複数の塊状体含有層(小断面積圧電体層)511bを備えている。この塊状体含有層511bは、積層方向に隣り合う2つの圧電体層511a,511a間に点在した6つの塊状体(部分圧電体層)511cにより構成されている。
【0250】
図38(a)は、積層体513の積層方向に垂直でかつ塊状体含有層511bを含む平面
で切ったときの断面を示す断面図であり、図38(b)は、図38(a)における塊状体含有層511bに対して積層方向に隣り合う圧電体層511aを含み積層方向に垂直な平面で切ったときの断面を示す断面図である。
【0251】
塊状体含有層511bを含みかつ圧電体層の積層方向に垂直な平面で積層体513を切ったときの断面の面積に対してこの断面内における圧電体の面積(図38(a)中のハッチ
ング部分)が占める割合をXbとし、塊状体含有層511bに隣り合う圧電体層511aを含みかつ圧電体層の積層方向に垂直な平面で積層体513を切ったときの断面の面積に対して該断面内における圧電体の面積(図38(b)中のハッチング部分)の占める割合を
Xaとする。このとき、塊状体含有層511bにおける割合Xbは、積層方向の両側に隣り合う圧電体層511aにおける割合Xaよりも小さくなっている。
【0252】
割合Xa及びXbは、少なくとも(Xb/Xa)<1の関係にあればよいが、好ましくは(Xb/Xa)<0.8、より好ましくは0.1<(Xb/Xa)<0.7、さらに好ましくは0.2<(Xb/Xa)<0.5の関係にあるのがよい。また、割合Xaは、好ましくは0.8〜1.0、より好ましくは0.95〜1.0の範囲にあるのがよい。割合Xbは、好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.1〜0.5の範囲にあるのがよい。これにより、塊状体含有層511bによる応力緩和効果が十分に得られるとともに、塊状体含有層511bに起因する素子の強度低下を抑制することができる。塊状体含有層511bにおける上記割合Xb及び圧電体層511aにおける上記割合Xaは、上記した空隙率の測定方法と同様にして測定することができる。
【0253】
本実施形態にかかる積層型圧電素子は、次にようにして評価することもできる。図39は、積層体513の積層方向に平行な平面で積層体513を切ったときの断面を示す断面図である。ここで、圧電体層の積層方向に平行な平面で積層体513を切ったときの断面内における塊状体含有層511bにおいて、この塊状体含有層511bの面積に対して圧電体の面積が占める割合をYbとし、圧電体層の積層方向に平行な平面で積層体513を
切ったときの断面内における塊状体含有層511bに隣り合う圧電体層511aにおいて、この圧電体層511aの面積に対して圧電体の面積が占める割合をYaとする。このとき、塊状体含有層511bにおける割合Ybは、積層方向の両側に隣り合う圧電体層511aにおける割合Yaよりも小さくなっている。
【0254】
割合Ya及びYbは、少なくとも(Yb/Ya)<1の関係にあればよいが、好ましくは(Yb/Ya)<0.8、より好ましくは0.1<(Yb/Ya)<0.7、さらに好ましくは0.2<(Yb/Ya)<0.5の関係にあるのがよい。また、割合Yaは、好ましくは0.8〜1.0、より好ましくは0.95〜1.0の範囲にあるのがよい。割合Ybは、好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.1〜0.5の範囲にあるのがよい。これにより、塊状体含有層511bによる応力緩和効果が十分に得られるとともに、塊状体含有層511bに起因する素子の強度低下を抑制することができる。塊状体含有層511bにおける上記割合Yb及び圧電体層511aにおける上記割合Yaは、上記した空隙率の測定方法と同様にして測定することができる。
【0255】
本実施形態にかかる積層型圧電素子では、塊状体含有層511bが配設されていることで、塊状体含有層511b周辺の圧電体層511aの変位が小さくなり、塊状体含有層511bから離れた圧電体層511a周辺の変位が大きくなって、素子内に変位の大きい箇所と小さい箇所を分散させることができる。このような塊状体含有層511bを素子内に配置することで、素子に加わる応力を分散させることができる。これにより、応力集中による素子変形の抑圧が緩和されることで素子全体の変位を大きくすることができるだけでなく、素子の変形による応力集中を抑制でき、高電界、高圧力下で長期間連続駆動させた場合でも優れた耐久性が得られる。
【0256】
塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cは、圧電体層511a,11a間にほぼ均一に配設されていることが好ましい。複数の塊状体511cが圧電体層511a,11a間にほぼ均一に配設されているときには、素子変形に伴う応力が一部に集中することがなく、塊状体含有層511bが素子の断面全域にわたって圧電体層の応力緩和層として作用する。
【0257】
素子変形の際に塊状体511cに応力が加わると、加わった圧力の方向に応じて結晶構造が変形する圧電結晶としての応力緩和機能が発現する。そのため、塊状体511cを点在して配置することで、応力を緩和する箇所が増加する。これにより、塊状体511c内でクラックが生じるのを抑制できる。
【0258】
塊状体含有層511bは、積層体513における積層方向の両端に配設された2つの内部電極間の略中央に配設されているのが好ましい。積層体513における積層方向両端に位置する内部電極間の略中央(すなわち、活性層の略中央)は大きな応力が集中しやすい部位であるため、少なくともこの部位に塊状体含有層511bを配設することで素子の耐久性を向上させることができる。
【0259】
上記した内部電極間の略中央の次に重要な配設部位は、積層方向両端に位置する内部電極間の略中央と、積層方向の一端及び他端に位置する内部電極との略中央である(すなわち、活性層の端部から活性層の長さの約1/4隔てた位置)。以下、同様の考え方に基づいて塊状体含有層511bを配置していくのが好ましい。
【0260】
また、積層型圧電素子を燃料噴射装置等に用いる場合、一端に噴射孔を有する収納容器に素子が収納される。この場合、素子の一端側は収納容器の内壁に当接しているので、固定端となる一方で、素子の他端側(収納容器の噴射孔側)は自由端となって自由に伸縮可能となっている。このような場合、固定端側よりも自由端側により大きな応力がかかる傾
向にあるので、自由端側に塊状体含有層511bをより多く配置してもよい。
【0261】
さらに、本発明では、図39に示すように、塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cの一部は、該塊状体511cの厚み方向の両端が隣接する両側の圧電層11aに接しており、塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cの残部は、該塊状体511cの厚み方向の一端のみが圧電体層511aに接していることが望ましい。
【0262】
塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cは、その厚み方向の両端もしくは一端が、隣接する両側の圧電体層11に接している。一端のみが圧電体層511aに接している塊状体511cが存在することで、当該塊状体含有層511bに隣り合う圧電体層511aの自由度がより大きくなるので、変位量を高めるとともに、応力緩和効果も高めることができる。
【0263】
積層方向に平行な平面で積層体513を切ったときの断面内における塊状体511cの幅Wは、積層方向に隣接する圧電体層511aに近づくにつれて漸次小さく又は大きくなるような形状であるのがよい。図39の場合、塊状体511cの幅Wは、厚み方向の中央付近で最大となり、積層方向の両側の圧電体層511aにそれぞれ近づくにつれて漸次小さくなっている。
【0264】
積層型圧電素子が駆動、変位する時に発生する応力を緩和する機能を得るためには、積層型圧電素子が駆動変形したときに、圧電体と内部電極512の界面において発生する応力を一点集中させずに緩和する必要がある。この応力緩和機能をさらに高めるため、塊状体含有層511bを構成する複数の塊状体511cの幅Wを、隣接する圧電体層511aの近傍領域において、圧電体層511aに近づくにつれて漸次小さくまたは漸次大きくし、応力の一点集中を抑制している。
【0265】
また、図39に示すように、塊状体含有層511bにおいて、隣り合う複数の塊状体511c間には空隙11dが存在することが望ましい。複数の塊状体511cの間に空隙11dが存在すると、応力がかかった際に、空隙の部分があることで塊状体511cが変形して応力を分散緩和することができる。また、塊状体含有層511bに接する圧電体11aが圧電変位する際、空隙の部分があることで、圧電体11aを部分的にクランプすることになり、全面でクランプするときよりも圧電体11aの束縛される力が小さくなるので、圧電体層511aが変位しやすくなって変位量を大きくすることができる。
【0266】
本実施形態の積層型圧電素子は、図39に示すように、圧電体層の積層方向に垂直な方向に複数の空隙11dが点在していることも大きな特徴である。複数の空隙11dは、積層方向の長さがほぼ均一であるのが好ましい。これにより、素子の幅方向(積層方向に垂直な方向)全体にわたってほぼ均一に応力緩和効果を付与することができる。空隙11dの長さ(積層方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜2.0μm程度であるのがよい。空隙11dの長さが0.1〜10μmであることにより、素子の駆動時における塊状体511cによる緩衝効果が低下するのを抑制するとともに、素子の強度が低下するのを抑制できる。また、塊状体511cの長さの好ましい範囲は、上記した空隙11dの好適範囲と同様である。
【0267】
また、塊状体含有層511bにおいて、隣り合う複数の塊状体511c間に空隙ではなく、ガラス層や樹脂などが存在していてもよい。これにより、塊状体含有層511bに接する圧電体11aに応力が集中するのを抑制できるので、変位量が大きくなるとともに応力一点集中を避けることができる。これにより、素子の変位がより大きくなり、かつ、耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。
【0268】
ガラス成分としては、例えば鉛アルカリけい酸ガラスを例示できる。鉛アルカリけい酸ガラスを用いることで圧電体層との界面強度が高く、積層型圧電素子の製造工程における破損を低減できるという効果がある。また、ガラス成分としては、例えばシリカガラスを用いてもよい。シリカガラスも鉛アルカリけい酸ガラスと同様に圧電体層との界面強度が高く、積層型圧電素子の製造工程における破損を低減できるという効果がある。樹脂成分としては、例えばエポキシ樹脂を例示できる。エポキシ樹脂を用いることで効果的に応力の集中を緩和できるという効果がある。樹脂成分としては、例えばポリイミド樹脂を用いてもよい。ポリイミド樹脂を用いることで高温環境下でも駆動できるという効果がある。
【0269】
ガラス成分及び樹脂成分の少なくとも一方を隣り合う複数の塊状体511c間に存在させるには、以下のようにすればよい。即ち、ガラス層を形成する場合は、塊状体含有層511bを圧電セラミックスの仮焼粉末とガラス成分の粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して圧電体・ガラス混合ペーストを作製し、これをグリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。更に銀−パラジウム等の内部電極512を構成する金属粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。そして、塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートと内部電極512を構成する導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを所定の順序で複数積層し、所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成して積層体513が作製される。
【0270】
また、樹脂層を形成する場合は、塊状体含有層511bを圧電セラミックスの仮焼粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して圧電体・ガラス混合ペーストを作製し、これをグリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。更に銀−パラジウム等の内部電極512を構成する金属粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって印刷する。そして、塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートと内部電極512を構成する導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを所定の順序で複数積層し、所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成して積層体513が作製される。その後に、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などのペーストを塊状体含有層511bの空隙に注入する。注入方法は、樹脂ペーストを含ませたハケを用いて積層体513の側面から表面張力によって空隙に浸透させる、または樹脂ペーストを満たした浴槽に積層体513を浸漬した後に真空容器に入れ、減圧環境下で空隙に樹脂を浸透させる等の方法によって、塊状体含有層511bに樹脂を浸透させた後に、加熱昇温して樹脂を硬化させる事ができる。
【0271】
次に、本発明の積層型圧電素子の製法の一例を説明する。まず、圧電セラミックスの仮焼粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーを用いて周知の方法でセラミックグリーンシートを作製する。
【0272】
次に、塊状体含有層511bは圧電セラミックスの仮焼粉末にバインダー及び可塑剤等を添加混合して圧電体ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。バインダー及び可塑剤と圧電体粉末との比を変えることや、スクリーンのメッシュの度数を変えることや、スクリーンのパターンを形成するレジスト厚みを変えることで、塊状体含有層511bの厚みおよび塊状体含有層511b中の空隙等を変化させることができる。この圧電体ペーストに用いる圧電セラミックスの粉末は、焼成工程での収縮差による割れを防止するために、圧電体層511aと同じ粉末を使用することが望ましい。塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートを、必要枚数分準備する。
【0273】
次に、銀−パラジウム等の内部電極512を構成する金属粉末にバインダー及び可塑剤
等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。上記と同様にして内部電極512の厚みおよび内部電極中の空隙等を変化させることができる。そして、導電性ペーストが印刷されたグリーンシート及び塊状体含有層511b用のペーストが印刷されたグリーンシートを所定の順序で複数積層し、所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成することによって積層体513が作製される。
【0274】
その後、積層型圧電素子の側面に内部電極512と外部電極515間の圧電体部分に溝を形成して、この溝内に、圧電体511よりもヤング率の低い、樹脂またはゴム等の絶縁体を形成する。ここで、前記溝は内部ダイシング装置等で積層体513の側面に形成される。他の部位は上記と同様にして形成すればよい。
【0275】
なお、本実施形態における塊状体含有層は、図40(a)や図40(b)に示す形態であってもよい。すなわち、図40(a)に示すように、塊状体含有層21bがランダムに配設され
た複数の塊状体21cからなるような形態であってもよく、また、図40(b)に示すよう
に、塊状体含有層4031bが、圧電体層中に複数の空隙(又は樹脂層)531cがランダムに存在するような形態であってもよい。
【0276】
また、上記実施形態では、図37に示すように内部電極512bが6つの塊状体からなる形態を例に挙げて説明したが、本実施形態では塊状体の大きさ、個数、配置状態等は特に限定されない。したがって、内部電極512bは、大きさの異なる多数の塊状体がランダムに配設されたものであってもよい。また、上記実施形態では、塊状体含有層511bが、内部電極512を介さずに、積層方向の両側の圧電体層511aと隣り合っている場合を例に挙げて説明したが、塊状体含有層511bが、内部電極512aを介して、積層方向の両側の圧電体層511aと隣り合っている形態であってもよい。
【0277】
(他の実施形態3)
以下、本実施形態にかかる積層型圧電素子について詳細に説明する。図41(a)は、本
実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、図41(b)は、図41(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。図42は、図41(a)における本発明の実施形態における外部電極615と積層体615の側面との接合部分の拡大断面図である。
【0278】
図41(a)、(b)に示すように、本実施形態の積層型圧電素子は、複数の圧電体層11と複数の金属層12(12a,12b)とを交互に積層してなる積層体615を有し、該積層体615の対向する側面に一対の外部電極615が配設されている。
【0279】
本実施形態の積層型圧電素子は、図41(a)、(b)に示すように、複数の金属層612のうちの少なくとも一層が、圧電体層11間に空隙を介して互いに離隔された複数のセラミック塊状体(圧電体領域)12cと空隙を介して互いに離隔された複数の金属塊状体(金属領域)12dからなる塊状体含有層612bである。
【0280】
このような塊状体含有層612bが少なくとも1層存在することで、積層型圧電素子全体の変位を大きくすることができるだけでなく、積層型圧電素子の耐久性を向上させることができる。金属層612の少なくとも一層を塊状体含有層612bとしたことで、塊状体含有層612b周辺の圧電体層は変位が小さくなり、金属層612a周辺の圧電体層11は変位が大きくなって、素子内に変位の大きい箇所と小さい箇所を分散させることができる。このような金属層を素子内に配置することで、素子変形による応力を分散させることができる。
【0281】
さらに、塊状体含有層612bが空隙を介して互いに離隔された複数のセラミック塊状体と空隙を介して互いに離隔された複数の金属塊状体で構成されているので、素子に応力が加わった時に応力緩和効果が大きい。その理由は、互いに空隙を介して離隔して配置され、自由度の高くなったセラミック塊状体は応力が加わると、圧電結晶内のイオンの配置が移動して応力方向に応じて結晶の変形が発生し、応力を緩和することができるからである。
【0282】
同様に互いに空隙を介して離隔して配置され、自由度の高くなった金属塊状体は、応力が加わると、変形して応力を緩和することができる。そして、イオンの配置移動によるセラミック塊状体の緩和効果は速度が速く、金属の変形による金属塊状体の緩和は、イオンの移動速度よりは遅いけれどもイオンの移動距離よりも変形距離が大きい。このため、急激な応力に対してはセラミック塊状体が高速度に追随した応力緩和を可能となり、大きな応力や常時加わる応力に対しては金属塊状体が優れた応力緩和効果を示し、耐久性の優れた素子とすることができる。
【0283】
セラミック塊状体が吸収しきれない大きな応力が加わった時には、主に、金属塊状体が緩和効果を主に発現させ、高速の応力にはセラミック塊状体が緩和効果をそれぞれ対応できる。
【0284】
また、塊状体含有層612bを構成する複数のセラミック塊状体612c、複数の金属塊状体612dは、圧電体層間にほぼ均一に、点在していることが好ましい。複数のセラミック塊状体612c、金属塊状体612dが圧電体層間にほぼ均一に点在しているときには、素子変形に伴う応力が一部に集中することを抑制できる。
【0285】
金属塊状体とセラミック塊状体が互いに接した領域を有している場合には、緩和効果がより大きくなる。セラミック塊状体が、金属塊状体を包み込んでいたり、逆に、金属塊状体がセラミック塊状体を包み込んでいる場合には、セラミック塊状体612cと金属塊状体612dとを積層体の積層方向に直列につないだような形態となる。積層方向に加わる応力に対して緩和効果を直列に接続したような効果が生まれ、高速の応力に追随することができる。高速で変位可能なイオンの配置で緩和効果を発現できるので、特に、連続的な応力の繰り返しに対して、緩和効果が大きくなる。また、セラミック塊状体と金属塊状体が積層方向に垂直な方向に隣接している場合には、セラミック塊状体と金属塊状体の緩和効果が積層方向に垂直な方向に並列に接続したような効果が生まれ、様々な方向からの応力を緩和することができる。
【0286】
図41(a)、(b)に示す本実施形態では、塊状体含有層612bは、積層体615中に複数存在している。各塊状体含有層612bは、複数の圧電体層611および複数の金属層612aを介して配置されており、かつ、積層体615の厚み方向に規則的に配置されている。
【0287】
また、塊状体含有層612bを構成する複数のセラミック塊状体612cと複数の金属塊状体612dの比率を変化させることで、圧電体611の変位の大きさを制御できるので、圧電体11の厚みを変える必要がなく、量産性に優れた構造とすることができる。
【0288】
積層方圧電素子を安定した変位で駆動させるためには、塊状体含有層612bは積層型圧電素子が駆動する加重に対して容易には変形しないようにするのがよい。塊状体含有層612bは、複数のセラミック塊状体612cと複数の金属塊状体612dからなるので、加重に対する変形状態をその分布によって調整することが可能となる。
【0289】
セラミック塊状体612cが占める体積V1と金属塊状体612dが占める体積V2の
関係は、V1>V2であることが望ましい。また、塊状体含有層612bにおける、空隙の体積V3を考慮した場合はV3>V2であることが好ましく、V3>V1>V2であることがさらに好ましい。これにより、素子の変位がより大きくなり、かつ、耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。
【0290】
また、図42に示すように、塊状体含有層612bに積層方向両側に隣り合う金属層612eが、当該金属層612eに積層方向両側に隣り合う金属層(塊状体含有層612b及び金属層612f)よりも空隙が少ないことが望ましい。これにより、空隙の少ない緻密な金属層612eの端部と外部電極615との間の接触面積が大きくなって導電材料の拡散が生じやすくなる。この拡散による接合(拡散接合)により、外部電極615の積層体615の側面との接合強度を高めることができる。金属層612eの空隙率は、金属層612fなどの他の金属層の空隙率の95%以下であるのが好ましく、90%以下であるのがより好ましい。
【0291】
さらに、本発明では、塊状体含有層612bに積層方向両側に隣り合う金属層612eが、当該金属層612eに積層方向両側に隣り合う金属層(塊状体含有層612b及び金属層612f)よりも厚みが大きいことが望ましい。これにより、厚みの大きい金属層612eの端部と外部電極615との間の接触面積が大きくなって導電材料の拡散が生じやすくなる。この拡散による接合(拡散接合)により、外部電極615の積層体15の側面との接合強度を高めることができる。金属層612eの厚みは、金属層612fなどの他の金属層の厚みの105%以上であるのが好ましく、110%以上であるのがより好ましい。
【0292】
また、図42に示すように、外部電極615の一部15cが塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体11の間に入り込んでいることが望ましい。このように外部電極615の一部15cが隣り合う圧電体11,11間の一部の領域に入り込んでいることで、積層体615の側面から積層体615中に杭を打ち込んだような構造となる。これにより、外部電極615と積層体615との接合強度が増し、高電解、高圧力下で長期間連続駆動させた場合であっても、外部電極615が積層体615側面から剥離するといった問題が生じるのを防ぐことができる。このため、一部の金属層612aと外部電極615との接続信頼性が向上する。
【0293】
外部電極615が積層体615の側面から隣り合う圧電体611,611間の一部の領域に入り込む深さDは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であるのがよい。深さDがこの範囲にあることで、十分なアンカー効果が得られる。
【0294】
図42に示す本実施形態における外部電極615は、積層体615の側面に垂直な方向に積層された複数の層615a,615bからなる。これらのうち、積層体615の側面側に位置する外部電極層15aは、外表面側に位置する外部電極層615bよりもガラス材料の含有量が多いことが望ましい。積層体615の側面に近接した外部電極層15a中のガラス成分が多いことにより、外部電極615の一部615cが、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣り合う圧電体11の間に入り込みやすくなり、外部電極615と積層体615との接合強度をさらに高めることができる。また、外表面側に位置する外部電極層15bに含まれるガラス成分が外部電極層15aよりも少なくなることで、外部電極615に半田付けにより接続されるリード線の接合強度を高めることができる。これは、半田がガラス成分に対して濡れ性が低いことに起因する。
【0295】
図43は、積層体615を積層方向に垂直な方向に塊状体含有層612bを含む平面で切ったときの断面図である。図43に示すように、圧電体層611,611間に入り込んでいる外部電極615の一部615cが、塊状体含有層612bを構成するセラミック塊
状体612cと金属塊状体612dに接している(接合している)。このように外部電極615の一部615cがセラミック塊状体612cと金属塊状体612dの両方に接していることにより、以下の効果がある。
【0296】
すなわち、外部電極615の導電成分は金属塊状体612dの金属成分と濡れ性が良いので、外部電極615の一部が金属塊状体612dに接していると、これらが強固に接合される。また、外部電極615のガラス成分はセラミック塊状体612cの圧電体と濡れ性がよいので、外部電極615の一部がセラミック塊状体612cに接していると、これらが強固に接合される。さらに、外部電極615の一部が、前述のように、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体611、611間に入り込んでいるので、この入り込んでいる部分で隣接する圧電体11同士をつなぎ止めているため、素子を大きな変位量で駆動させた場合においても、積層体615が塊状体含有層612bを介して剥離するのを防ぐ効果がある。
【0297】
また、素子の駆動時に積層体615が伸縮し変形することにより生じる積層体615と外部電極615との界面での応力は、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体層611,611間に入り込んだ外部電極615の一部615cを介して、圧電体層11に伝播する。この伝播した応力に応じて、外部電極615の一部15cに接する圧電体がの結晶構造が変化し、応力が吸収される。
【0298】
特に、外部電極615の一部615cが金属を主成分とするので、金属自体が変形して応力を緩和する効果が得られるとともに、外部電極615の一部615cがこれに接する圧電体を押圧する力が大きいので、圧電体の結晶構造変化を生じさせやすい。
【0299】
また、圧電体層611が空隙に接した部分では、電圧が印加されず、応力に応じて圧電体が変形できる空間として機能する。このため、結晶構造変化により新たに生じた圧電体内の応力は、空隙に接した部分で緩和されるという、新たな緩和機能を生じさせることができる。
【0300】
さらに、外部電極615の一部15cをセラミック塊状体612cと金属塊状体612d間に枝わかれさせながら侵入させることで、応力を分散させる効果が高まり、さらに応力緩和効果を高くすることができる。これらのことにより、外部電極615と積層体615との接合信頼性がより高められ、耐久性が高く長寿命の積層型圧電素子が得られる。
【0301】
また、積層型圧電素子の表面に外装樹脂(不図示)を被覆し、外装樹脂の一部を隣り合う2つの圧電体層611,611間の一部の領域に入り込ませるのが好ましい。外部電極615の一部だけでなく、外装樹脂の一部も塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体611、611間に入り込んでいるときには、この入り込んでいる部分で隣接する圧電体611同士をつなぎ止めているため、素子を大きな変位量で駆動させた場合においても、積層体615が塊状体含有層612bを介して剥離するのを防ぐ効果がある。
【0302】
さらに、素子の駆動時に積層体615が伸縮し変形することにより生じる積層体615と外装樹脂との界面での応力は、塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの圧電体層611,611間に入り込んだ外装樹脂の一部を介して、圧電体層611に伝播する。この伝播した応力に応じて、外装樹脂の一部に接する圧電体の結晶構造が変化し、応力が吸収される。
【0303】
特に、圧電層間に入り込んでいる外装樹脂の一部は主成分が樹脂であるので、樹脂自体が変形して応力緩和するだけでなく、外装樹脂に接する圧電体を被覆することができる。
これにより、圧電体の結晶構造変化による体積変化を吸収して、新たな応力発生を抑止することができる。
【0304】
さらに、圧電体層611が空隙に接した部分では、圧電体が周囲の雰囲気の酸素濃度や湿度に応じて酸化還元され、積層型圧電素子の長期間の使用において圧電特性が変化することがあるが、外装樹脂の一部が入り込んでいることにより使用環境の影響を抑制することができる。これにより、圧電体の応力緩和機能が耐久性の高いものとなり、被覆部材と積層体との接合信頼性がより高められ、長寿命の積層型圧電素子が得られる。
【0305】
本実施形態の積層型圧電素子は上記と同様にして製造できる。まず、上記と同様の手順で積層体を作製する。次に、ガラス粉末に、バインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製し、これをシート状に成形し、乾燥した(溶媒を飛散させた)シートの生密度を6〜9g/cm3に制御し、このシートを、柱状積層体615の外部電極形成面に転写する。これを、ガラスの軟化点よりも高い温度、且つ銀の融点(965℃)以下の温度で、且つ積層体615の焼成温度(℃)の4/5以下の温度で焼き付けを行う。これにより、銀ガラス導電性ペーストを用いて作製したシート中のバインダー成分が飛散消失し、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極615を形成することができる。
【0306】
このとき、外部電極615を構成するペーストを多層のシートに積層してから焼付けを行っても、1層ごとに積層しては焼付けを行っても良いが、多層のシートに積層してから一度に焼付けを行う方が量産性に優れている。そして、層ごとにガラス成分を変える場合は、シートごとにガラス成分の量を変えたものを用いればよいが、圧電体11に最も接した面にごく薄くガラスリッチな層を構成したい場合は、積層体615にスクリーン印刷等の方法でガラスリッチなペーストを印刷した上で、多層のシートを積層する方法が用いられる。このとき、印刷に代えて5μm以下のシートを用いても良い。
【0307】
なお、銀ガラス導電性ペーストの焼き付け温度は、ネック部を効果的に形成し、銀ガラス導電性ペースト中の銀と金属層612を拡散接合させ、また、外部電極615中の空隙を有効に残存させ、さらには、外部電極615と柱状の積層体615側面とを部分的に接合させるという点から、500〜800℃の範囲に設定するのが望ましい。また、銀ガラス導電性ペースト中のガラス成分の軟化点は、500〜800℃であるのが望ましい。焼き付け温度が800℃以下である場合には、有効な3次元網目構造をなす多孔質導電体を形成することができる。好ましくは、ガラスの軟化点の1.2倍以内の温度で焼き付けを行うのがよい。一方、焼き付け温度が500℃以上の場合には、金属層612端部と外部電極615の間で十分に拡散接合がなされ、ネック部が形成される。
【0308】
次に、外部電極615を形成した積層体615をシリコーンゴム溶液に浸漬するとともに、シリコーンゴム溶液を真空脱気することにより、積層体615の溝内部にシリコーンゴムを充填し、その後シリコーンゴム溶液から積層体615を引き上げ、積層体615の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、溝内部に充填、及び積層体615の側面にコーティングしたシリコーンゴムを硬化させることにより、本発明の積層型圧電素子が完成する。
【0309】
次に本実施形態の他の製法を説明する。まず、上述と同じように積層体615が作製される。その後、外部電極層615aとなる銀を主成分とした導電剤粉末とガラス粉末にバインダー、可塑剤及び溶剤を加えて作製した導電性ペーストを、外部電極615を形成する積層体615側面にスクリーン印刷等によって印刷する。その後、所定の温度で乾燥、焼き付けを行う。次に、外部電極層615bとなる銀を主成分とした導電剤粉末と必要に応じて微量のガラス粉末にバインダー、可塑剤及び溶剤とを加えて作製した導電性ペーストを、外部電極層15aの上に重ねてスクリーン印刷等によって印刷する。その後、所定
の温度で乾燥、焼き付けを行うことによって、外部電極層615aの外側に外部電極層615bを設けた外部電極615を形成することができる。
【0310】
なお、外部電極層615a及び615bを形成する各々の導電性ペースト中に含まれるガラス量を調整することにより、外部電極615aのガラス量を多くし、外部電極層615bのガラス量を少なくした外部電極615を形成することができる。なお、外部電極層15aを印刷、乾燥したのち、その上に外部電極層615bを印刷、乾燥し、同時に焼き付けを行い、外部電極層615aと615bからなる外部電極615を形成してもよい。ここでは、外部電極615が2層の場合を示したが、それ以上の層数であっても構わない。
【0311】
ここで、前記ガラス成分は、圧電体層11との接合強度を高め、且つ、圧電体層11,11間に効果的に侵入させるという点から、酸化鉛若しくは酸化珪素の少なくとも1種を含む軟化点800℃以下のガラスであるのが望ましい。また、前述した以外に、ガラス成分は、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリけい酸ガラス、アルミノほうけい酸塩ガラス、ほうけい酸塩ガラス、アルミノけい酸塩ガラス、ほう酸塩ガラス、りん酸塩ガラス、鉛ガラス等を用いることができる。
【0312】
例えば、ほうけい酸塩ガラスとしては、SiO240〜70質量%、B2O32〜30質量%Al2O30〜20質量%、MgO、CaO、SrO、BaOのようなアルカリ土類金属酸化物を総量で0〜10質量%、アルカリ金属酸化物0〜10質量%含有するものを使用することができる。また、上記ほうけい酸塩ガラスに、5〜30質量%のZnOを含むようなガラスとしても構わない。ZnOは、ほうけい酸塩ガラスの作業温度を低下させる効果がある。
【0313】
また、りん酸塩ガラスとしては、P2O540〜80質量%、Al2O30〜30質量%、B2O30〜30質量%、ZnO0〜30質量%、アルカリ土類金属酸化物0〜30質量%、アルカリ金属酸化物0〜10質量%を含むようなガラスを使用することができる。
【0314】
また、鉛ガラスとしては、PbO30〜80質量%、SiO20〜70質量%、Bi2O30〜30質量%、Al2O30〜20質量%、ZnO0〜30質量%、アルカリ土類金属酸化物0〜30質量%、アルカリ金属酸化物0〜10質量%を含むようなガラスを使用することができる。
【0315】
また、外部電極615を構成する導電剤は、耐酸化性があり、ヤング率が低く、安価であるという点から、銀を主成分とすることが望ましい。なお、耐エレクトロマイグレーション性を高めるという点から、微量の白金若しくはパラジウムを添加してもよい。
【実施例1】
【0316】
(ガスセンサ)
ガスセンサ素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y2O3含有−ZrO2)粉末を主成分とするジルコニア粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0317】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表1の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。このとき、発熱体を形成する部分については、従来からのセラミックヒータにあるように発熱が集中するように、折り返して蛇行した形状に発熱体パタ
ーンを印刷した。塊状体含有層45を形成するための導電性ペーストには、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y2O3含有−ZrO2)粉末を金属粉末に対して1質量%添加した。ついで、図16に示す形状になるように各グリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0318】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い塊状体含有層45が形成され、比較的緻密な金属層47が形成された。セラミック層55中にはあらかじめ、白金ペーストを印刷した金属パターン57を形成し積層した。これにより、ヒータ一体型酸素センサが得られた。
【0319】
この後、ヒータに電圧を印加することで、ガスセンサ素子温度を700℃に保ち、次に、水素、メタン、窒素、酸素の混合ガスを用いて、空燃比12の混合ガスをセンサに吹付けて、センサが起電力を生じるかでセンサが機能しているかを確認した。その後、空燃比12と23の混合ガスを0.5秒間隔で1×109回数交互にセンサに吹付けて、空燃比の差で起電力が変化することを確認した。その後、空燃比12の混合ガスをセンサに吹付けて、センサが起電力を生じるか否かでセンサが機能しているかを確認した。結果を表1に示す。
【0320】
【表1】
【0321】
表1より、金属層45が緻密である試料No.1は、センサを機能させる固体電解質であるセラミック層43に金属層45を介してガスを供給することができないので起電力が生じず、酸素センサとして機能しなかった。一方、試料No.2〜11は酸素センサとして機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率が85%以上で、これらの金属ペースト層の質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属層45,47の銀の質量百分率Xが90%以上で、質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5,6
,10,11が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例2】
【0322】
(フィルタ)
フィルタ素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのコーディエライト(5モル%Y2O3含有−コーディエライト)粉末を主成分とするコーディエライト粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0323】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表1の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。塊状体含有層63を形成するための導電性ペーストには、平均粒径が0.4μmのコーディエライト(5モル%Y2O3含有−コーディエライト)粉末を金属粉末に対して1質量%添加した。
【0324】
その後、図19に示す形状になるようにグリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0325】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成してフィルタ素子を得た。この後、実験的に合成した排気ガスを供給して、400℃に保った状態でフィルタ特性を測定した。その後、400℃の連続運転を1000時間行い、再びフィルタ特性を測定した。結果を表2に示す。
【0326】
【表2】
【0327】
表2より、金属層63が緻密な電極層になった試料No.1は、フィルタとして機能しなかった。一方、試料No.2〜11はフィルタとして機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5,6,10,11が最も優れた耐久性を有してい
た。
【実施例3】
【0328】
(燃料電池)
燃料電池素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y2O3含有−ZrO2)粉末を主成分とするジルコニア粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0329】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表1の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。
【0330】
その後、図17に示す形状になるようにグリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜
1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63,65が形成され、比較的緻密な金属層73,77が形成された。
【0331】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極を形成した。まず、主成分が銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面の外部電極69を形成する箇所にスクリーン印刷した。その後、これを600〜800℃で焼成して外部電極を形成し燃料電池素子を得た。
【0332】
この後、空気極側に酸素を、燃料極側に水素を供給して、800℃に保った状態で発電の出力密度を測定した。その後、800℃の連続運転を1000時間行い、再び発電の出力密度を測定した。結果を表3に示す。
【0333】
【表3】
【0334】
表3より、金属層63,65が緻密な電極層になった試料No.1は、発電機能させる固体電解質であるセラミック層67に金属層63,65を介して酸素も水素も供給することができないので、起電力が生じず、燃料電池として機能しなかった。一方、試料No.2〜11は燃料電池として機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5,6,10,11が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例4】
【0335】
(積層型圧電素子)
積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末を主成分とする原料粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表4〜表5の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。塊状体含有層95を形成するための金属ペースト層には、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末を金属粉末に対して1質量%添加した。尚、表4は、表4(1)と表4(2)に分けて示している。
【0336】
【表4】
【0337】
【表5】
【0338】
次に、図25の形状になるように各グリーンシートを積層して積層成形体を得た。駆動領域については、金属層の層数が100となるように積層し、セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0339】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い塊状体含有層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成された。
【0340】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極を形成した。まず、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面の外部電極101を形成する箇所にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成し外部電極を形成した。これにより、積層型圧電素子を得た。
【0341】
その後、外部電極101にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極101にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、試料No.32以外のすべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位が得られた。この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動させる試験を行った。結果を表6に示す。
【0342】
【表6】
【0343】
表4〜表5から、試料No.1,33では、連続駆動により積層界面にはがれが生じた。さらに圧電アクチュエータの高速応答性を確認するために駆動周波数を150Hzから徐々に上昇させていくと、1kHz以上で、素子がうなり音を発することがわかった(耳で聞こえた)。さらに、うなり音が発生する素子において、駆動周波数を確認するためにヨコガワ製オシロスコープDL1640Lでパルス波形を確認すると、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認できた。なお、試料No.32では、金属層のクッション効果により圧電体の変位変形は、金属層が変形して吸収したため、素子全体では変形が生じなかった。
【0344】
これらに対して、本発明の実施例である試料番号No.2〜31では、1×109回連続駆動させた後も素子変位量があまり低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有していた。
【0345】
また、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が2〜10%であるものは耐久性が優れていた。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3〜5%の試料No.4,9,10,15,16,
21,22,27,28が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例5】
【0346】
(積層型圧電素子)
図45に示す形状となるように、実施例4と同様の手順で表5に示す試料No.1〜14
の積層型圧電素子を作製した。図44は、焼成前の積層成形体を示す断面図である。図44に示すように、積層型圧電素子の積層方向の両端側に低率金属ペースト層95がそれぞれ配置されるようにした。低率金属ペースト層およびこれの両側の金属ペースト層における金属組成は表5に示す通りである。得られた試料No.1〜14について実施例4と同様
の評価を行った。結果を表5に示す。試料No.1はサイクル試験により特性が低下した。
他の試料は良好な結果であった。特に、金属ペースト層の質量百分率Xが高い方がよい結果が得られる傾向にあった。
【実施例6】
【0347】
図32に示すような積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのPZTを主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体層1になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0348】
次に、このセラミックグリーンシートの片面に内部電極402を形成するための銀−パラジウム合金(銀90質量%、パラジウム10質量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により4μmの厚みで形成した。さらに、一部のセラミックグリーンシートの片面には塊状体含有層403を形成するために銀粉末に平均粒径0.5μmのアクリルビーズを銀粉末100体積%に対して200体積%になるように加え、さらにバインダーを加えて形成した無機ペーストをスクリーン印刷法により4μmの厚みで形成した。
【0349】
ついで、内部電極402を形成するための導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシート20層に対して1層の割合で塊状体含有層403が形成されるように、各セラミックグリーンシートを積層した。内部電極402を形成するための導電性ペーストが印刷されたグリーンシートは300枚であり、塊状体含有層403を形成するための無機ペーストは14枚であった。塊状体含有層ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートの積層方向外側の両隣には、内部電極402が互いに異極になるように導電性ペーストの印刷されたセラミックグリーンシートを積層した。得られた積層成形体を所定の温度で脱脂し、980〜1100℃で焼成して積層焼成体を得た。ついで、得られた積層焼成体を平面研削盤にて研削し、積層体410を得た。
【0350】
次に、外部電極4を形成するための銀ガラス導電性ペーストを積層体410の側面に30μmの厚みでスクリーン印刷によって形成し、700℃にて30分焼き付けを行うことにより、外部電極4を形成した。得られた素子において、塊状体含有層403の空隙率は80%、内部電極402の空隙率は20%であった。塊状体含有層403には銀が点在して分布し、これらの銀の間には空隙が形成されていた。
【0351】
その後、外部電極4にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極4にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図32に示すような積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電アクチュエータに160Vの直流電圧を印加したところ、積層方向に変位量40μmが得られた。さらに、この積層型圧電アクチュエータを室温で0〜+160Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験行った。得られた結果を表7に示す。
【0352】
【表7】
【0353】
表7に示すように、本発明の積層型圧電アクチュエータ(試料番号1)では、連続駆動前と同様の変位量40μmが得られ、また、積層体410には異常は見られなかった。
【0354】
一方、本発明の請求範囲外である試料番号2の塊状体含有層403及び複合層411のない積層型圧電アクチュエータでは、5×107サイクルで圧電体にクラックが生じていた。これは、駆動時にはたらく応力を圧電体層1が十分に吸収できずに、圧電体層1にクラックが生じたものであると考えられる。
【実施例7】
【0355】
次に、塊状体含有層403の構成及び複合層411の配置を変化させた以外は、実施例6と同様の積層型圧電アクチュエータを作製した。評価結果を表7に示す。
【0356】
なお、試料番号3、4は、塊状体含有層403を構成する塊状体403aの材料を変化させた以外は、実施例1と同様にして積層型圧電アクチュエータを作製した。(試料番号3、4の概略断面図は図46)また、試料番号5は、両方の端部側から5番目の内部電極402の次に複合層を配置した以外は、実施例1と同様にして、内部電極402の20層に対して1層の割合で複合層411を形成した積層型圧電アクチュエータを作製した。(試料番号5の概略断面図は図47)さらに、試料番号6は、両方の端部側から8層の圧電体1cを300μm厚みで構成した応力緩和領域を設け、この応力緩和領域において、両方の端部側から5番目の内部電極402の次に複合層を形成した以外は実施例1と同様にして積層型圧電アクチュエータを作製した。ただし、複合層411を構成する圧電体層401a、1aの厚みはそれぞれ150μmとした。(試料番号6の概略断面図は図48)
これらの積層型圧電アクチュエータを室温で0〜+160Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験行った。結果を表8に示す。
【0357】
【表8】
【0358】
表8より、本発明の積層型圧電アクチュエータである試料番号1、3、4、5、6は、1×109回連続駆動した場合においても、連続駆動前と同様の変位量が得られ、高信頼性を備えた圧電アクチュエータであることが分かった。
【実施例8】
【0359】
上記で作製した試料番号1〜6の積層型圧電アクチュエータについて、さらに駆動電圧を上げ、室温で0〜+200Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験行った。結果を表9に示す。
【0360】
【表9】
【0361】
表9より、本発明の請求範囲外である試料番号2の塊状体含有層3及び複合層411のない積層型圧電アクチュエータでは、3×105サイクルで圧電体にクラックが生じていた。一方、本発明の積層型圧電アクチュエータである試料番号1、3〜6は、駆動後の変位量の改善効果が見られ、高信頼性を備えた圧電アクチュエータであることが分かった。
【実施例9】
【0362】
図36に示すような積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックスの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0363】
このセラミックグリーンシートの片面に、銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5重量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法によりレジスト厚み20μmの製版で、10μmの厚さとなるように印刷を行い、形成したシートを300枚積層し、焼成した。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で焼成した。
【0364】
このとき、複数の塊状体からなる塊状体含有層を形成する部分は、次のようにした。試料No1〜4については圧電体層と同一材料の圧電セラミックスの仮焼粉末にバインダーを加えた圧電体ペーストを作製し、レジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。試料No.5ついては圧電体層と同一材料の圧電セラミックスの仮焼粉末と同一重量の銀粉末を混合した粉末にバインダーを加えた混合ペーストを作製し、レジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層は、試料No.1,2については、積層体における50層目、100層目、200層目、250
層目に配置し、試料No.3,4、5については、積層体における50層目、100層目、150層目、200層目、250層目に配置した。試料No.6では塊状体含有層は設けなかった。また、試料No.1,4では、次のような手順で、小断面層における隣り合う塊状体間にエポキシ樹脂成分が存在するようにした。すなわち、1000℃で焼成した後に、エポキシ樹脂のペーストを塊状体含有層の空隙に注入した。注入方法は、樹脂ペーストを含ませたハケを用いて積層体の側面から表面張力によって空隙に浸透させた後に、加熱昇温して樹脂を硬化させた。なお、塊状体含有層は、図37に示すように6つの塊状体を配置したものとした。
【0365】
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、バインダーを銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製し、このようにして作製した銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成し、乾燥後、離型フィルムより剥がして、銀ガラス導電性
ペーストのシートを得た。
【0366】
そして、前記銀ガラスペーストのシートを積層体513の側面に転写して積層し、700℃で30分焼き付けを行い、外部電極515を形成した。
【0367】
その後、外部電極515にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極515にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図36に示すような形態の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。
【0368】
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。さらに、この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験を行った。結果は表10に示すとおりである。
【0369】
【表10】
【0370】
この表9から、比較例である試料番号No.6は、積層界面にかかる応力が一点に集中して負荷が増大して剥離が生じるとともに、うなり音やノイズ発生が生じた。これに対して、本発明の実施例である試料番号1〜5は、1×109回連続駆動させた後も、素子変位量が著しく低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有しており、優れた耐久性を有した圧電アクチュエータを作製できた。
【0371】
特に、応力緩和層(塊状体含有層)と応力集中層(緻密な層)を、他の圧電体を介して隣同士に配置させた試料No.2は素子の変位量を大きくすることができるだけでなく、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。さらに、応力緩和層を、圧電体を介して50層ごとに規則的に配置した試料No.3,4、5は、素子の変位量を最も大きくすることができるだけでなく、素子変位量がほとんど変化せず、極めて耐久性に優れていたことから、素子変位量が安定した積層型アクチュエータとすることができた。特に試料No.5は、圧電体層と同一材料の圧電セラミックスの仮焼粉末と同一重量の銀粉末を混合した粉末にバインダーを加えた混合ペーストを印刷した上に銀の融点960℃よりも高温の焼成を行ったことで、混合ペースト中の銀が全て圧電体を介してとなりあう金属層に拡散した。このため、試料中で最も空隙率の大きい応力緩和層(塊状体含有層)を形成することができ、素子変位量が極めて安定した積層型アクチュエータとすることができた。
【実施例10】
【0372】
図41に示すような積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0373】
このセラミックグリーンシートの片面に、銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5重量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により形成したシートを300枚積層し焼成して積層体615を得た。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で行った。
【0374】
このとき、金属層612aを形成するグリーンシートには、導電性ペーストをレジスト厚み20μmの製版で、10μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層612bを形成するグリーンシートには、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤からなるセラミック塊状体用ペーストをレジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。その後、80℃で20分間乾燥後、金属塊状体を形成する部分に、金属層612aの形成に用いた導電性ペーストをレジスト厚み5μmの製版で、5μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層612bは、50層目、100層目、150層目、200層目、250層目になるように配置した。塊状体含有層612bは、図41(b)に示すよ
うに10個のセラミック塊状体612dと10個の金属塊状体612cを配置したものとした。
【0375】
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部のバインダーを添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製した。この銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成し、乾燥後、離型フィルムから剥がして、銀ガラス導電性ペーストのシートを得た。そして、このシートを積層体615の側面に転写して積層し、700℃で30分焼き付けを行い、外部電極615を形成した。
【0376】
その後、外部電極615にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極615にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図41に示すような形態の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを得た。
【0377】
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチ
ュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験を行った。結果は表11に示すとおりである。
【0378】
なお、試料1は全ての金属層を金属成分のみで形成し(塊状体含有層なし)、試料2−9には50層目、100層目、150層目、200層目、250層目に塊状体含有層を配置した。また、試料2−9の塊状体含有層はAg−Pd合金で構成した。試料2−9の塊状体含有層には、隣り合う圧電体層に達する空隙が存在していた。
【0379】
表11中の「セラミック塊状体の配置状態」とは、セラミック塊状体の厚み方向の両端が隣接する両側の圧電体層に接するように配置されている層を示している。表11中の「金属塊状体の配置状態」とは、金属塊状体の厚み方向の両端が隣接する両側の圧電体層に接するように配置されている層を示している。
【0380】
【表11】
【0381】
この表11から、比較例である試料番号1は、積層界面にかかる応力が一点に集中して
負荷が増大して剥離が生じるとともに、うなり音やノイズ発生が生じた。これに対して、本発明の実施例である試料番号1〜9は、1×109回連続駆動させた後も、素子変位量が著しく低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有していた。
【0382】
特に、セラミック塊状体が占める体積V1、金属塊状体が占める体積V2、空隙が占め
る体積V3の関係が、V3>V1>V2を満足する試料番号2〜5、8、9では素子の変位量を大きくすることができ、セラミック塊状体または、金属塊状体の厚み方向の両端が隣接する両側の圧電体層に接している試料番号2〜7では、素子の変位量がほとんど変化せず、素子変位量が安定した積層型アクチュエータとすることができた。
【実施例11】
【0383】
図41に示すような積層型圧電素子からなる圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
【0384】
このセラミックグリーンシートの片面に、銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5重量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により形成したシートを300枚積層し、焼成して積層体を得た。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で行った。
【0385】
このとき、金属層612aを形成するグリーンシートには、導電性ペーストをレジスト厚み20μmの製版で、10μmの厚さとなるように印刷を行った。塊状体含有層612bを形成するグリーンシートには、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤からなるセラミック塊状体用ペーストをレジスト厚み10μmの製版で5μmの厚さとなるように印刷を行った。その後、80℃で20分間乾燥後、金属塊状体を形成する部分に、金属層612aの形成に用いた導電性ペーストをレジスト厚み5μmの製版で、5μmの厚さとなるように印刷を行った。さらに、金属層612eを形成するグリーンシートには、銀−パラジウム合金にバインダーを加えた導電性ペーストをレジスト厚み30μmの製版で、15μmの厚さになるように印刷を行った。
【0386】
塊状体含有層612bは、50層目、100層目、150層目、200層目、250層目になるように配置し、また、塊状体含有層612bの積層方向両側に位置する金属層は、緻密な金属層612eとなるように配置した。塊状体含有層612bは、図41(b)に
示すように10個のセラミック塊状体と10個の金属塊状体を配置したものとした。
【0387】
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部のバインダーを添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製した。このペーストを積層体615の側面にスクリーン印刷によって印刷し、乾燥させた。その後、その上に重なるように、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末にバインダーを添加して作製した導電性ペーストを印刷し、乾燥した後、700℃で30分焼き付けを行った。これにより、外部電極層615a及び615bを備えた外部電極615を形成した。
【0388】
その後、外部電極615にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極615にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図41に示すような形態の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。
【0389】
なお、このとき塊状体含有層612bの積層方向両側に隣り合う金属層612eはその他の金属層612aに対して、1.3倍の厚みであり、さらに空隙率は4/5倍であった。また、外部電極615の一部が塊状体含有層612bの積層方向両側に隣接する2つの
圧電体11の間に平均で深さ20μm入り込んでいた。また外部電極615については、積層体615の側面に位置する外部電極層15aがその外側に位置する外部電極層615bよりもガラス材料の含有量が多かった。
【0390】
その後、外部電極615にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極615にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、圧電アクチュエータを得た。(試料番号10)
すなわち、試料番号10の素子は、外部電極615を積層体615側面側の層の方がガラス成分の多い2層構造とし、塊状体含有層612bの積層方向両側に位置する金属層612eを他の金属層612aよりも厚みを大きく、空隙率を小さくし、また、外部電極の一部を塊状体含有層612bの積層方向両側に位置する圧電体11の間の一部の領域に入り込ませたものである。
【0391】
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。この圧電アクチュエータを室温で0〜+200Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験を行った。結果は表2に示すとおりである。なお、試料番号10は、上記記述以外については実施例10の試料番号2と同じである。
【0392】
【表12】
【0393】
この表12から、試料番号10のアクチュエータは、高電界、高圧力下で高速で連続運転しても、一部の外部電極615が積層体615側面から剥離し、変位特性が低下するといった問題が生じることはなかった。
【符号の説明】
【0394】
11 塊状体含有層
11a 第2金属ペースト層(高率金属ペースト層)
13 金属層
13a 第1金属ペースト層
15 セラミック層
15a セラミックグリーンシート
17 セラミック部材
17a 積層成形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とし、この第1金属ペースト層に隣り合う前記両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させることを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1金属ペースト層における質量百分率XをXL、積層方向に隣り合う第2金属ペースト層における質量百分率XをXHとするとき、XH−0.1≧XL≧XH−30を満足するように質量百分率XH及び質量百分率XLを設定することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項3】
前記複数の金属ペースト層における質量百分率Xを85≦X≦100の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項4】
前記積層成形体を作製する工程において、前記第1金属ペースト層を複数配置することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1金属ペースト層以外の複数の金属ペースト層を介して前記複数の第1金属ペースト層をそれぞれ配置することを特徴とする請求項4に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項6】
前記複数の第1金属ペースト層を前記積層成形体の積層方向に所定の規則にしたがって配置することを特徴とする請求項4に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項7】
前記第1金属ペースト層と第1金属ペースト層以外の金属ペースト層とを交互に配置することを特徴とする請求項4に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項8】
金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、前記一部の領域にセラミック粉末を含有させることを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項9】
前記一部の領域における質量百分率Xを積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くすることを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項10】
前記一部の領域以外の他の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xと同じにすることを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項11】
前記金属成分M1を周期表第11族元素とし、他の金属成分として周期表第10族元素含むことを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項12】
前記金属成分M1を銀とし、前記他の金属成分をパラジウムとすることを特徴とする請求項11に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項13】
前記金属ペースト層に白金を配合することを特徴とする請求項12に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項14】
金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが高い第2金属ペースト層とし、
前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項15】
金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い低率金属ペースト層とし、
前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項16】
金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層の一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、
前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項17】
金属成分M1を含む金属層と、
空隙を介して互いに離隔して配置された複数のセラミック塊状体を含み、前記金属層より空隙が多い塊状体含有層と、
前記金属層と前記塊状体含有層に挟まれたセラミック層と、からなる3層構造を含むことを特徴とするセラミック部材。
【請求項18】
前記塊状体含有層は空隙を介して互いに離隔して配置された複数の金属塊状体をさらに含み、前記金属塊状体は金属成分M1を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項19】
少なくとも2つの前記3層構造を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項20】
前記金属層を共有する2つの3層構造からなる5層構造を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項21】
前記塊状体含有層を共有する2つの3層構造からなる5層構造を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項22】
前記金属層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYとし、前記塊状体含有層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYcとするとき、Yc>Yの関係を満たしていることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項23】
前記塊状体含有層は前記金属層よりも空隙率が高いことを特徴とする請求項25に記載のセラミック部材。
【請求項24】
前記質量百分率は、前記塊状体含有層の質量百分率Ycをピークとし、この塊状体含有層から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層にわたって漸次減少していることを特徴とする請求項17記載のセラミック部材。
【請求項25】
前記塊状体含有層は、積層方向に隣り合う両側の金属層よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項26】
前記塊状体含有層は、積層方向に隣り合う両側の金属層よりも電気抵抗が高いことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項27】
複数の前記塊状体含有層が所定の規則に従って配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項28】
複数の前記塊状体含有層が、塊状体含有層以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項27に記載のセラミック部材。
【請求項29】
前記塊状体含有層と前記金属層とが交互に配置されていることを特徴とする請求項27に記載のセラミック部材。
【請求項30】
前記複数の金属層の積層方向両端に、前記塊状体含有層がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項31】
前記複数の金属層に電気的に接続された一対の外部電極を備え、前記塊状体含有層が正極であることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項32】
前記塊状体含有層は、前記金属塊状体と前記セラミック塊状体が互いに接した領域を有していることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項33】
前記塊状体含有層を構成する前記金属塊状体及び前記セラミック塊状体は、当該塊状体含有層に隣接する圧電体層に近づくにつれて積層方向に垂直な方向の幅が漸次小さく又は大きくなることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項34】
前記塊状体含有層において、前記セラミック塊状体が占める体積V1及び前記金属塊状
体が占める体積V2がV1>V2の関係を満たすことを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項35】
前記塊状体含有層において、前記金属塊状体が占める体積V2及び前記空隙が占める体積V3がV3>V2の関係を満たすことを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項36】
前記塊状体含有層において、前記セラミック塊状体が占める体積V1、前記金属塊状体が占める体積V2及び前記空隙が占める体積V3がV3>V1>V2の関係を満たすことを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項37】
前記金属成分M1が銀であり、前記塊状体含有層に白金が含まれていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項38】
前記複数のセラミック塊状体の一部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記セラミック塊状体の厚み方向の両端が接しており、前記複数のセラミック塊状体の残部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記セラミック塊状体の厚み方向の一端のみが接していることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項39】
前記複数の金属塊状体の一部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記金属塊状体の厚み方向の両端が接しており、前記複数の金属塊状体の残部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記金属塊状体の厚み方向の一端のみが接していることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項40】
前記塊状体含有層が、前記積層体の積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項41】
前記塊状体含有層が、前記積層体の一方の端部側又は両方の端部側に、中央部の圧電体層よりも層厚が厚い複数の圧電体層を含む応力緩和領域を備え、該応力緩和領域に前記塊状体含有層が配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項42】
前記複数の金属層に電気的に接続された一対の外部電極を備え、前記塊状体含有層に対して積層方向の両側に隣り合う2つの金属層は互いに異なる極の外部電極に接続されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項43】
請求項17〜42のいずれかに記載のセラミック部材を備えたことを特徴とする積層型圧電素子。
【請求項44】
請求項17に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項45】
請求項17に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とする燃料電池素子。
【請求項46】
請求項17に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とするフィルタ素子。
【請求項47】
噴出孔を有する容器と、請求項43に記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に充填された液体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から噴射するように構成されたことを特徴とする噴射装置。
【請求項48】
高圧燃料を蓄えるコモンレールと、
このコモンレールに蓄えられた燃料を噴射する請求項47に記載の噴射装置と、
前記コモンレールに高圧の燃料を供給する圧力ポンプと、
前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットと、
を備えたことを特徴とする燃料噴射システム。
【請求項1】
金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とし、この第1金属ペースト層に隣り合う前記両側の第2金属ペースト層にセラミック粉末を含有させることを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1金属ペースト層における質量百分率XをXL、積層方向に隣り合う第2金属ペースト層における質量百分率XをXHとするとき、XH−0.1≧XL≧XH−30を満足するように質量百分率XH及び質量百分率XLを設定することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項3】
前記複数の金属ペースト層における質量百分率Xを85≦X≦100の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項4】
前記積層成形体を作製する工程において、前記第1金属ペースト層を複数配置することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1金属ペースト層以外の複数の金属ペースト層を介して前記複数の第1金属ペースト層をそれぞれ配置することを特徴とする請求項4に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項6】
前記複数の第1金属ペースト層を前記積層成形体の積層方向に所定の規則にしたがって配置することを特徴とする請求項4に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項7】
前記第1金属ペースト層と第1金属ペースト層以外の金属ペースト層とを交互に配置することを特徴とする請求項4に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項8】
金属成分M1を含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、前記一部の領域にセラミック粉末を含有させることを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項9】
前記一部の領域における質量百分率Xを積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くすることを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項10】
前記一部の領域以外の他の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xと同じにすることを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項11】
前記金属成分M1を周期表第11族元素とし、他の金属成分として周期表第10族元素含むことを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項12】
前記金属成分M1を銀とし、前記他の金属成分をパラジウムとすることを特徴とする請求項11に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項13】
前記金属ペースト層に白金を配合することを特徴とする請求項12に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項14】
金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが高い第2金属ペースト層とし、
前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項15】
金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い低率金属ペースト層とし、
前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項16】
金属成分M1を含む合金粉末及び金属成分M1からなる金属粉末の少なくとも一方を含有する複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層の一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くし、
前記積層成形体を焼成する工程において、前記合金粉末及び金属粉末の少なくとも一方の融点以上の温度で焼成することを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項17】
金属成分M1を含む金属層と、
空隙を介して互いに離隔して配置された複数のセラミック塊状体を含み、前記金属層より空隙が多い塊状体含有層と、
前記金属層と前記塊状体含有層に挟まれたセラミック層と、からなる3層構造を含むことを特徴とするセラミック部材。
【請求項18】
前記塊状体含有層は空隙を介して互いに離隔して配置された複数の金属塊状体をさらに含み、前記金属塊状体は金属成分M1を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項19】
少なくとも2つの前記3層構造を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項20】
前記金属層を共有する2つの3層構造からなる5層構造を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項21】
前記塊状体含有層を共有する2つの3層構造からなる5層構造を含むことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項22】
前記金属層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYとし、前記塊状体含有層に含まれる金属成分総量に対する金属成分M1の質量百分率をYcとするとき、Yc>Yの関係を満たしていることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項23】
前記塊状体含有層は前記金属層よりも空隙率が高いことを特徴とする請求項25に記載のセラミック部材。
【請求項24】
前記質量百分率は、前記塊状体含有層の質量百分率Ycをピークとし、この塊状体含有層から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層にわたって漸次減少していることを特徴とする請求項17記載のセラミック部材。
【請求項25】
前記塊状体含有層は、積層方向に隣り合う両側の金属層よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項26】
前記塊状体含有層は、積層方向に隣り合う両側の金属層よりも電気抵抗が高いことを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項27】
複数の前記塊状体含有層が所定の規則に従って配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項28】
複数の前記塊状体含有層が、塊状体含有層以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項27に記載のセラミック部材。
【請求項29】
前記塊状体含有層と前記金属層とが交互に配置されていることを特徴とする請求項27に記載のセラミック部材。
【請求項30】
前記複数の金属層の積層方向両端に、前記塊状体含有層がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項31】
前記複数の金属層に電気的に接続された一対の外部電極を備え、前記塊状体含有層が正極であることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項32】
前記塊状体含有層は、前記金属塊状体と前記セラミック塊状体が互いに接した領域を有していることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項33】
前記塊状体含有層を構成する前記金属塊状体及び前記セラミック塊状体は、当該塊状体含有層に隣接する圧電体層に近づくにつれて積層方向に垂直な方向の幅が漸次小さく又は大きくなることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項34】
前記塊状体含有層において、前記セラミック塊状体が占める体積V1及び前記金属塊状
体が占める体積V2がV1>V2の関係を満たすことを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項35】
前記塊状体含有層において、前記金属塊状体が占める体積V2及び前記空隙が占める体積V3がV3>V2の関係を満たすことを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項36】
前記塊状体含有層において、前記セラミック塊状体が占める体積V1、前記金属塊状体が占める体積V2及び前記空隙が占める体積V3がV3>V1>V2の関係を満たすことを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項37】
前記金属成分M1が銀であり、前記塊状体含有層に白金が含まれていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項38】
前記複数のセラミック塊状体の一部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記セラミック塊状体の厚み方向の両端が接しており、前記複数のセラミック塊状体の残部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記セラミック塊状体の厚み方向の一端のみが接していることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項39】
前記複数の金属塊状体の一部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記金属塊状体の厚み方向の両端が接しており、前記複数の金属塊状体の残部は、積層方向に隣接する両側の前記圧電体層に、前記金属塊状体の厚み方向の一端のみが接していることを特徴とする請求項18に記載のセラミック部材。
【請求項40】
前記塊状体含有層が、前記積層体の積層方向の一方の端部側又は両方の端部側に配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項41】
前記塊状体含有層が、前記積層体の一方の端部側又は両方の端部側に、中央部の圧電体層よりも層厚が厚い複数の圧電体層を含む応力緩和領域を備え、該応力緩和領域に前記塊状体含有層が配置されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項42】
前記複数の金属層に電気的に接続された一対の外部電極を備え、前記塊状体含有層に対して積層方向の両側に隣り合う2つの金属層は互いに異なる極の外部電極に接続されていることを特徴とする請求項17に記載のセラミック部材。
【請求項43】
請求項17〜42のいずれかに記載のセラミック部材を備えたことを特徴とする積層型圧電素子。
【請求項44】
請求項17に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項45】
請求項17に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とする燃料電池素子。
【請求項46】
請求項17に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とするフィルタ素子。
【請求項47】
噴出孔を有する容器と、請求項43に記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に充填された液体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から噴射するように構成されたことを特徴とする噴射装置。
【請求項48】
高圧燃料を蓄えるコモンレールと、
このコモンレールに蓄えられた燃料を噴射する請求項47に記載の噴射装置と、
前記コモンレールに高圧の燃料を供給する圧力ポンプと、
前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットと、
を備えたことを特徴とする燃料噴射システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公開番号】特開2012−209554(P2012−209554A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67645(P2012−67645)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2008−501785(P2008−501785)の分割
【原出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2008−501785(P2008−501785)の分割
【原出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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