説明

セラミック電子部品およびその製造方法

【課題】外部電極と金属端子とを接合する半田が低融点化しないセラミック電子部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックコンデンサ10は、セラミック素子1と、セラミック素子1の両端部にそれぞれ取り付けられた金属端子5,6とを備えている。金属端子5,6は、その接合部5a,6aを半田溶湯に繰り返し浸漬して、接合部5a,6aのSn含有被覆膜14が、半田7に置換されたものである。半田7の材料としては、Sn含有率が12重量%以下の半田が用いられる。こうして、金属端子5,6は、接合部5a,6aをSn含有率が12重量%以下の半田(Sn含有被覆膜)7で被覆し、かつ、引出し端子部5b,6bをSn含有率が60重量%以上のSn含有被覆膜14で被覆したものとなる。そして、金属端子5,6の接合部5a,6aを、別途用意した接合用の半田7により、セラミック素子1の外部電極3,4に接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンデンサやインダクタなどのセラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品には金属端子タイプのものがあり、例えば、スイッチング電源のスナバ回路やテレビ受像機の水平共振回路などの中高圧用途で使用されている。金属端子タイプのセラミック電子部品は、セラミック素子の外表面に形成された一対の外部電極に、金属端子が半田付けされることにより構成されている。このときの半田は、比較的融点が高い高温半田が用いられることが多い。これは、金属端子タイプのセラミック電子部品が実装基板に半田付けされる際、半田付け温度で外部電極と金属端子とを接合している半田が溶融してしまうことを防止するためである。また、金属端子としては、表面にSnめっきが施されたリード線が用いられることがある(特許文献1の段落番号0028を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−51421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、表面にSnめっきが施されたリード線を外部電極に半田付けすると、リード線のSnめっきが半田に溶融するため、半田の組成が変化して低融点化するおそれがあった。そして、この状態でセラミック電子部品を実装基板に半田付けすると、そのときの半田付け温度で外部電極とリード線とを接合している半田が溶融してしまうことがあった。このように半田が溶融してしまうと、溶融した半田がリード線を伝わって垂れ、外観不良が生じたり、セラミック素子とリード線との接続信頼性が低下したりするという不具合があった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、外部電極と金属端子とを接合する半田が低融点化しないセラミック電子部品およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、
セラミック素体と、セラミック素体の外表面上に設けた一対の外部電極と、を有するセラミック素子と、
一対の外部電極のそれぞれに半田によって接合された金属端子と、を備え、
金属端子は、母材と、母材の表面を被覆したSn含有被覆膜と、で構成されるとともに、半田と接合される接合部と、接合部を除く引出し端子部と、を有し、
金属端子の接合部のSn含有被覆膜におけるSn含有率が12重量%以下であり、金属端子の引出し端子部のSn含有被覆膜におけるSn含有率が60重量%以上であること、
を特徴とする、セラミック電子部品である。
【0007】
この発明では、金属端子の接合部のSn含有被覆膜の組成が、外部電極と金属端子とを接合する接合用の半田の組成に近い(望ましくは同一である)。また、引出し端子部のSn含有被覆膜のSnが接合用の半田に溶け込んでも、その量は少ない。従って、接合用の半田の組成がほとんど変化しないため、接合用の半田が低融点化するおそれがなくなる。つまり、金属端子の接合部近傍の固相線温度を高いまま維持することができる。一方、金属端子の引出し端子部のSn含有被覆膜は、Sn含有率が60重量%以上であるため、セラミック電子部品を実装基板に半田付け実装するときの半田付け温度は従来と同様の温度であり、セラミック電子部品を実装基板に半田付け実装する際に、外部電極と金属端子とを接合している半田が溶融するという心配はなくなる。
【0008】
また、この発明は、
Sn含有率が60重量%以上のSn含有被覆膜にて母材の表面を被覆した金属端子の接合部を、Sn含有率が12重量%以下の半田溶湯に繰り返し浸漬して、接合部のSn含有被覆膜の組成を前記半田溶湯の組成に近づける工程と、
金属端子の接合部を半田により、セラミック素子の外表面上に設けた外部電極に接合する工程と、
を備えたことを特徴とする、セラミック電子部品の製造方法である。
【0009】
この発明では、金属端子の接合部を半田溶湯に繰り返し浸漬して、接合部のSn含有被覆膜を半田に置換することによって、接合部のSn含有被覆膜におけるSn含有率が12重量%以下で、かつ、引出し端子部の表面を被覆したSn含有被覆膜におけるSn含有率が60重量%以上である金属端子が容易に得られる。従って、低コストで量産に適したセラミック電子部品の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、金属端子の接合部のSn含有被覆膜の組成が外部電極と金属端子とを接合する接合用の半田の組成に近く、また、引出し端子部のSn含有被覆膜のSnが接合用の半田に溶融しても、その量は少なく、接合用の半田の組成がほとんど変化しない。この結果、外部電極と金属端子とを接合する接合用の半田が低融点化しないセラミック電子部品が得られる。
【0011】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第1の実施形態のセラミック電子部品を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示したセラミック電子部品の断面図である。
【図3】セラミック素体の分解斜視図である。
【図4】図1に示したセラミック電子部品の製造方法を説明するための模式図である。
【図5】本発明に係る第2の実施形態のセラミック電子部品を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明に係る第1の実施形態のセラミックコンデンサについて、製造方法と共に説明する。図1は金属端子タイプのセラミックコンデンサ10の外観斜視図であり、図2はその断面図であり、図3はセラミック素体2の分解斜視図である。セラミックコンデンサ10は、セラミック素子1と、セラミック素子1の両端部にそれぞれ取り付けられた金属端子5,6と、セラミック素子1および金属端子5,6の一部を被覆した樹脂外装材8と、を備えている。
【0014】
セラミック素子1は、セラミック素体2と、セラミック素体2の外表面上に形成された一対の外部電極3,4とを有している。セラミック素体2は、図3に示すように、内部電極パターン22,23を表面に形成したセラミックグリーンシート20c〜20hと、電極パターンが形成されていない外層用セラミックグリーンシート20a,20b,20i,20jとを積み重ねて構成した積層体である。セラミックグリーンシート20a〜20jの材料としては、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3などの主成分からなる誘電体セラミックに、周知の有機バインダや有機溶剤が添加されているものが用いられる。また、これらの主成分にMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものを用いてもよい。セラミックグリーンシート20c〜20gの厚みは、焼成後の内部電極パターン22,23間のセラミック層の厚みが0.5〜10μmになるように設定することが好ましい。
【0015】
内部電極パターン22,23は、セラミックグリーンシート20c〜20h上に、例えばスクリーン印刷などにより導電性ペーストを塗布して形成される。内部電極パターン22はセラミックグリーンシート20c,20e,20gの左辺に露出している。内部電極パターン23はセラミックグリーンシート20d,20f,20hの右辺に露出している。そして、内部電極パターン22,23は、積層された状態ではセラミックグリーンシート20c〜20gを間にして対向するように配置されている。この対向部分により所定の電気特性が得られる。なお、インダクタの場合には、このような対向パターンではなく、螺旋状のコイル導体パターンがセラミック素体2内に配設される。内部電極パターン22,23の材料としては、例えばNi,Cu,Ag,Pd,Ag−Pd合金,Au、もしくは、これらのいずれか一つを主成分とする合金が用いられる。内部電極パターン22,23の厚みは、焼成後に0.3〜2.0μmになるように設定することが好ましい。
【0016】
以上のセラミックグリーンシート20a〜20jは、図3に示すように積層されてセラミック積層体とされる。このとき、必要に応じてセラミック積層体を静水圧プレスなどにより積層方向にプレスしてもよい。次に、セラミック積層体を所定のサイズにカットした後、バレル研磨してセラミック積層体のコーナー部および稜部に丸みを形成する。次に、セラミック積層体を焼成する。焼成温度はセラミックグリーンシート20a〜20jや内部電極パターン22,23の材料にもよるが、900〜1300℃であることが好ましい。こうして、セラミック素体2が形成される。
【0017】
次に、セラミック素体2の両端部にそれぞれ外部電極3,4が形成される。この外部端子電極3,4を形成する際には、予めセラミック素体2の両端部に焼結金属やめっき、スパッタ、蒸着などによって外部端子電極下地層が形成される。外部端子電極下地層の材料としては、例えばNi,Cu,Ag,Pd,Ag−Pd合金,Au、もしくは、これらのいずれか一つを主成分とする合金が用いられる。外部端子電極下地層はめっき層で被覆されている。めっき層の材料としては、例えばNi,Cu,Au,Sn、もしくは、これらのいずれか一つを主成分とする合金が用いられる。外部端子電極下地層の厚みは、10〜50μmになるように設定することが好ましい。めっき層一層当たりの厚みは、1〜10μmになるように設定することが好ましい。
【0018】
次に、浸漬法により、セラミック素体2の両端面にそれぞれ、外部電極用導電性ペーストを塗布し、700〜900℃の温度で焼き付けて外部電極3,4を形成する。なお、セラミック積層体を焼成する前に、外部電極用導電性ペーストをセラミック積層体に塗布し、セラミック積層体の焼成と同時に外部電極3,4を焼き付ける方法であってもよい。
【0019】
次に、金属端子5,6についてその作成方法とともに説明する。金属端子5,6としてはそれぞれ、母材の芯線12と、芯線12の表面をSnめっきで被覆したSn含有被覆膜14とで構成されたリード線が用いられる。芯線12の材質としてはFe,Cu、またはこれらの合金などが用いられる。芯線12は通常、径が0.3〜1mmで、長さが10〜60mmのものが用いられる。Sn含有被覆膜14の材質としては、Sn含有率が60重量%以上のもの、例えば98Sn−2Bi,97.5Sn−2.5Ag,97.5Sn−2.5Cu,95Sn−5Pb,60Sn−40Pbなどが用いられる。また、Sn含有被覆膜14の厚みは0.1〜5μmであることが好ましい。さらに、リード線5,6は、セラミック素子1の外部電極3,4と接合することになる接合部5a,6aと、実装基板に実装されることになる引出し端子部5b,6bとを有している。接合部5a,6aはリード線5,6の長さの1〜10%を占めるように設計することが好ましい。
【0020】
図4に示すように、このリード線5,6は、その接合部5a,6aを半田溶湯7a,7b,7c,7dに順に浸漬される。これにより、接合部5a,6aのSn含有被覆膜14が、半田7に置換される。半田7の材料としては、セラミックコンデンサ10を実装基板に実装する際の半田付け温度に耐える必要があるため、固相線温度が240℃以上のものが好ましく、Sn含有率が12重量%以下の半田、例えばSn−1.5Ag−97.5Pb(固相線温度309℃/液相線温度309℃),5Sn−95Pb(固相線温度316℃/液相線温度322℃),5Sn−1.5Ag−93.5Pb(固相線温度296℃/液相線温度301℃),8Sn−6Ag−86Pb(固相線温度240℃/液相線温度260℃),8Sn−2Ag−90Pb(固相線温度285℃/液相線温度295℃),10Sn−90Pb(固相線温度268℃/液相線温度301℃),10Sn−2Ag−88Pb(固相線温度268℃/液相線温度290℃),12Sn−2Ag−10Sb−76Pb(固相線温度240℃/液相線温度240℃)などが用いられる。
【0021】
複数の半田溶湯7a,7b,7c,7dを用いるのは、Sn含有被覆膜14の半田溶湯7a,7b,7c,7dへの溶け込み量が最初の浸漬は多く、後の浸漬ほど少なくなることを考慮したものである。すなわち、最初の半田溶湯7aがSn含有被覆膜14によって一番汚染され、最後の半田溶湯7dが一番汚染されないため、半田溶湯7dの浸漬後の接合部5a,6aを被覆している半田7は、その組成がほとんど元の組成のままであり、確実に低融点化されていないものである。この半田溶湯7a,7b,7c,7dは、リード線5,6を所定の数量処理する毎に、液交換が行われる。
【0022】
こうして、接合部5a,6aをSn含有率が12重量%以下の半田(Sn含有被覆膜)7で被覆し、かつ、引出し端子部5b,6bをSn含有率が60重量%以上のSn含有被覆膜14で被覆したリード線5,6が容易に得られる。次に、リード線5,6の接合部5a,6aを、別途用意した外部電極3,4と金属端子5,6とを接合する接合用の半田7により、セラミック素子1の外部電極3,4に接合する。接合用の半田7は、Sn含有率が12重量%以下の半田であり、Sn含有被覆膜14の組成はこの接合用の半田7の組成に近い。また、引出し端子部5b,6bのSn含有被覆膜14のSnは、接合用の半田7に溶け込むことはほとんどないため、接合用の半田7の組成は変化せず、低融点化するおそれがない。
【0023】
次に、セラミック素子1とリード線5,6の一部を被覆するように外装用樹脂にディップした後、乾燥させて樹脂外装材8を形成する。樹脂外装材8の材質としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などが用いられる。
【0024】
こうして得られた金属端子タイプのセラミックコンデンサ10は、リード線5,6の接合部5a,6aの半田7のSn含有率が12重量%以下と低く、固相線温度が240℃以上と高い。一方、引出し端子部5b,6bのSn含有被覆膜14は、Sn含有率が60重量%以上であるため、コンデンサ10を実装基板に半田付けするときの半田付け温度は従来と同様の温度である。従って、実装基板に半田付け実装したときの半田付け温度で外部電極3,4とリード線5,6とを接合している半田7が溶融してしまうことはなく、従来の外観不良が生じたり、セラミック素子1とリード線5,6との接続信頼性が低下したりするという不具合を解消できる。
【0025】
(第2の実施形態)
図5は第2の実施形態の金属端子タイプのセラミックコンデンサ10Aの外観斜視図である。なお、図5において前記第1の実施形態のコンデンサ10と同一の部品および同一の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0026】
コンデンサ10Aは、セラミック素子1と、セラミック素子1の表裏にそれぞれ取り付けられた金属端子5,6と、セラミック素子1および金属端子5,6の一部を被覆した樹脂外装材8と、を備えている。セラミック素子1は、セラミック素体2と、セラミック素体2の表裏面上に形成された一対の外部電極3,4とを有している。セラミック素体2は、内部電極を有さないセラミック単板である。
【0027】
板状の金属端子5,6は、前記第1の実施形態で説明した方法と同様の方法で作成したものであり、接合部5a,6aをSn含有率が12重量%以下の半田(Sn含有被覆膜)7で被覆し、かつ、引出し端子部5b,6bをSn含有率が60重量%以上のSn含有被覆膜14で被覆している。そして、金属端子5,6の接合部5a,6aを、別途用意した外部電極3,4と金属端子5,6とを接合する接合用の半田7により、セラミック素子1の外部電極3,4に接合する。このとき、引出し端子部5b,6bのSn含有被覆膜14のSnが接合用の半田7に溶け込むことはほとんどないため、接合用の半田7の組成が変化せず、低融点化するおそれがない。
【0028】
以上の構成からなるセラミックコンデンサ10Aは、前記第1の実施形態のコンデンサ10と同様の作用効果を奏する。
【0029】
(他の実施形態)
なお、この発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。セラミック電子部品としては、コンデンサの他にインダクタ、圧電部品、サーミスタなどであってもよい。セラミック素体の材料として、PZT系セラミックなどの圧電体セラミックを用いた場合は圧電部品となる。スピネル系セラミックなどの半導体セラミックを用いた場合はサーミスタとなる。フェライトなどの磁性体セラミックを用いた場合はインダクタとなる。
【符号の説明】
【0030】
1 セラミック素子
2 セラミック素体
3,4 外部電極
5,6 リード線(金属端子)
5a,6a 接合部
5b,6b 引出し端子部
7 半田(Sn含有被覆膜)
10,10A セラミックコンデンサ
12 芯線(母材)
14 Sn含有被覆膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック素体と、前記セラミック素体の外表面上に設けた一対の外部電極と、を有するセラミック素子と、
前記一対の外部電極のそれぞれに半田によって接合された金属端子と、を備え、
前記金属端子は、母材と、前記母材の表面を被覆したSn含有被覆膜と、で構成されるとともに、前記半田と接合される接合部と、前記接合部を除く引出し端子部と、を有し、
前記金属端子の接合部のSn含有被覆膜におけるSn含有率が12重量%以下であり、前記金属端子の引出し端子部のSn含有被覆膜におけるSn含有率が60重量%以上であること、
を特徴とする、セラミック電子部品。
【請求項2】
Sn含有率が60重量%以上のSn含有被覆膜にて母材の表面を被覆した金属端子の接合部を、Sn含有率が12重量%以下の半田溶湯に繰り返し浸漬して、前記接合部のSn含有被覆膜の組成を前記半田溶湯の組成に近づける工程と、
前記金属端子の接合部を半田により、セラミック素子の外表面上に設けた外部電極に接合する工程と、
を備えたことを特徴とする、セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−192803(P2010−192803A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37698(P2009−37698)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】