説明

セルロースアシレートフィルムの製造方法

【課題】厚み方向のレタデーション値が高いフィルムを得る。
【解決手段】エンドレスに走行する流延ドラム上にセルロースアシレート及び溶媒を含むドープを流延することにより形成した流延膜を流延ドラムから剥ぎ取り湿潤フィルム38とする。テンタ13は、異なる温度の第1〜第3乾燥領域A1〜A3で構成される。湿潤フィルム38の両側端部に複数のピンを差し込み保持した後、テンタ13内を搬送する間に乾燥してフィルム20とする。第1乾燥領域A1では湿潤フィルム38の幅を狭め、第2乾燥領域A2では幅を維持し、第3乾燥領域A3では幅を拡げる。また、第2乾燥領域A2は、第1乾燥領域A1よりも30℃以上100℃以下の範囲内で高くする。これにより湿潤フィルム38に収縮力が作用し、面方向及び厚み方向の分子配向が制御されるため厚み方向のレタデーション値が高いフィルム20が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の偏光板の保護を目的として利用される保護フィルムや光学補償フィルム、或いは視野角拡大フィルム等の光学用途に係わるセルロースアシレートフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースアシレートフィルム(以下、フィルムと称する)は、透明度が高く、強靭性や難燃性に優れることから、古くから写真感光用フィルムのベース等に利用されている。最近では、セルロースアシレートの中でもセルローストリアセテートを用いたフィルムが注目されている。セルローストリアセテートフィルムは、上記の特徴に加えて光学的な等方性に優れるため、例えば、液晶表示装置の光学補償を目的とした位相差フィルムとして利用されている。
【0003】
位相差フィルムは、一般的に溶液製膜方法で作られている。溶液製膜方法とは、セルロースアシレートと溶媒と添加剤とを含むポリマー溶液(ドープ)をエンドレスに走行している支持体上に流延して流延膜を形成した後、支持体から流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとしてから、これを乾燥してフィルムとする方法である。溶液製膜方法は、熱ダメージを与えることなく製膜することができるため、完成したフィルムは透明度が高く、優れた光学特性を持つ。
【0004】
ところで、位相差フィルムには、その用途に応じて様々な特性が求められており、その中の1つに厚み方向のレタデーション値の高さがある。液晶表示装置を構成する位相差板と対比して位相差フィルムのレタデーション値は低く、数値間に差があるが、光学補償を実現する上ではこの差を小さくすることが好ましいためである。そこで、厚み方向のレタデーション値を高くする方法として、例えば、特許文献1には、レタデーション上昇剤を含ませる方法が提案されている。また、レタデーション値はフィルムの分子配向に影響を受けることが知られている。そこで、例えば、特許文献2では、乾燥工程での乾燥温度と、ここに送るフィルムの残留溶媒量との関係を好適に調節することで分子配向を制御する方法が提案されている。この他にも、特許文献3では、表面温度を所定範囲としてフィルムを加熱することによりフィルムの結晶化を進める方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000−284124号公報
【特許文献2】特開平7−108547号公報
【特許文献3】特開平7−112446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにレタデーション上昇剤を用いる場合、レタデーション上昇剤は、流延膜や湿潤フィルムを乾燥する際に溶媒と共に蒸発しやすい。このため、レタデーション上昇剤を多量に用いるとフィルムの着色等が懸念される。また、特許文献2、3は、いずれも面方向に対する分子配向を調節する方法であるため、厚み方向のレタデーション値を調節することができない。フィルムの厚み方向における分子配向を制御するには、例えば、厚み方向に対して張力を付与することが有効であると推察できるが、実際に行うことは難しく課題が残る。
【0006】
そこで、本発明の目的は、レタデーション上昇剤を過剰に用いることなく厚み方向のレタデーション値を高くしたフィルムを製造することができる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの製造方法は、エンドレスに走行する支持体の上に、セルロースアシレート及び溶媒を含むドープを流延して流延膜を形成する工程と、支持体から流延膜を剥ぎ取り湿潤フィルムとする工程と、走行するクリップにより湿潤フィルムの両側端部を保持して幅を狭めながら乾燥する第1乾燥工程と、クリップにより湿潤フィルムの両側端部を保持して幅を維持しながら、第1乾燥工程の乾燥温度よりも30℃以上100℃以下の範囲内で高くして乾燥する第2乾燥工程と、クリップにより湿潤フィルムの両側端部を保持して幅を拡げながら乾燥する第3乾燥工程とを有することを特徴とする。
【0008】
第1乾燥工程の乾燥温度を50℃以上80℃以下とし、第2乾燥工程の乾燥温度を115℃以上130℃未満とし、第3乾燥工程の乾燥温度を125℃以上140℃未満とすることが好ましい。
【0009】
第3乾燥工程における拡幅率を0.1%以上5.0%未満とすることが好ましい。
【0010】
ドープは、化2の一般式で表されるレタデーション上昇剤をドープの全量に対して0.1重量%以上3.0重量%以下の割合で含むことが好ましい。
【化2】

【0011】
支持体の表面温度が−10℃以上10℃以下であり、流延膜を冷却によりゲル化して自己支持性を持たせて剥ぎ取ることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、レタデーション上昇剤を過剰に用いることなく厚み方向のレタデーション値を高くしたフィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし、ここに挙げる形態はあくまで本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、本実施形態で用いるフィルム製造設備10は、ストックタンク11と、流延室12と、テンタ13と、乾燥室15と、冷却室16と、巻取室17等から構成されている。
【0015】
ストックタンク11は、モータ11aで回転する攪拌翼11bとストックタンク11の外周面に設けられたジャケット11cとが備えられており、フィルム20の原料となるドープ21を貯留する。ジャケット11cは、ジャケット11cの内部に温度を調節した伝熱媒体が供給され、ストックタンク11の内部温度を所定の範囲内で調節する。攪拌翼11bはモータ11aで回転し、ドープ21におけるポリマー等の凝集物の発生を抑制する。これによりストックタンク11に貯留されるドープ21は、その温度が略一定となるように調整され、均一な品質が保持される。ストックタンク11の下流には、ポンプ25と濾過装置26とが備えられている。なお、ドープ21については後で詳細に説明する。
【0016】
流延室12には、ドープ21を流延する流延ダイ30と、支持体として作用する流延ドラム32と、流延されるドープ21の近傍を減圧する減圧チャンバ34と、流延室12の内部温度を調整する温調設備35と、剥取ローラ36と、流延ドラム32に伝熱媒体を供給する伝熱媒体循環装置37と、凝縮器(コンデンサ)39と、回収装置40とが備えられている。
【0017】
流延ダイ30は、ドープ21の吐出口が形成されており、この吐出口が流延ドラム32に向って開口した状態で設置されている。流延ダイ30の材質は、電解質水溶液やジクロロメタン、メタノール等の混合液に対して耐腐食性が高いこと、熱膨張率が低いこと等の特性を有するものが好適である。また、流延ダイ30の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。このような流延ダイ30を用いれば、流延ドラム32の上にスジ及びムラのない流延膜33を形成することができる。
【0018】
流延ドラム32は、図示しない駆動装置により円筒の軸を中心にエンドレスで回転する。流延ドラム32は円筒形状或いは円柱状であり、その表面には十分な耐腐食性と強度とを持たせるためにクロムめっき処理が施されている。また、流延ドラム32の内部には、伝熱媒体の流路が形成されている。この伝熱媒体は、流延ドラム32に取り付けられた伝熱媒体循環装置37から供給される。流路に伝熱媒体を通過又は循環させることにより流延ドラム32の表面温度が所望の温度に保持される。なお、本発明では、支持体として流延ドラム32に替わり、回転ローラに掛け渡されて無端で走行する流延バンドを用いても良い。
【0019】
減圧チャンバ34は、流延ダイ30の剥取ローラ36側に設置されており、流延ダイ30から流延ドラム32の間に形成されるドープ21の流れ(流延ビード)の背面側を所望の圧力に減圧する。ここで言う流延ビードの背面側とは、後で流延ドラム32の表面に接触する面である。剥取ローラ36は、流延ドラム32から剥ぎ取られる流延膜33を支持する。凝縮器39は、ドープ21や流延膜33の内部から蒸発した溶媒を含むガスを凝縮液化するものであり、回収装置40は、この凝縮液化した有機溶媒を回収するためのものである。なお、回収された溶媒は再生装置で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
【0020】
テンタ13は、湿潤フィルム38の両側端部を保持するための複数のピンを備えた乾燥装置である。テンタ13に送られた湿潤フィルム38は、その内部を搬送される間に乾燥が進められてフィルム20とされる。なお、テンタ13に関しては別図を示して後で詳細に説明する。
【0021】
耳切装置43は、内部にカッタが備えられており、フィルム20の両側端部を所定の位置で切断する。耳切装置43には、上記フィルムの切断片をチップ状に細かくするクラッシャ44が接続されている。
【0022】
乾燥室15には、多数のローラ47と乾燥時に蒸発した溶媒の吸着回収装置48とが備えられており、ここでフィルム20の乾燥が十分に行なわれる。乾燥室15に併設された冷却室16は、フィルム20を略室温まで冷却する。強制除電装置(除電バー)49は、フィルム20の帯電圧を適宜調節する。本実施形態では、強制除電装置49の下流にナーリング付与ローラ50を設けてフィルム20に対してナーリングを付与する。巻取室17の内部には、フィルム20を巻き取るための巻取ローラ51と、フィルム20に押圧するためのプレスローラ52とが備えられている。
【0023】
次に、上記のフィルム製造設備10によりフィルム20を製造する方法の一例を説明する。ストックタンク11では、ジャケット11cの内部に伝熱媒体が流されて、ドープ21の温度が25〜35℃に調整される。また、攪拌翼11bを常時回されて、ドープ21の品質が均一に保持される。ポンプ25によりストックタンク11から濾過装置26に向かって適宜適量のドープ21が送られて、ドープ21中の不純物が取り除かれる。
【0024】
流延ドラム32は、駆動装置により所定の回転速度で連続的に回転している。また、流延ドラム32の内部にある流路に伝熱媒体循環装置37から伝熱媒体が供給されて、その表面温度が−10℃以上10℃以下の範囲内で略一定に保持される。流延に供するドープ21の温度は30〜35℃であることが好ましい。流延ダイ30の吐出口から流延ドラム32の上にドープ21が流延される。流延ドラム32の表面に到達したドープ21は速やかに冷やされて、短時間のうちにゲル状の流延膜33が形成される。流延ドラム32の上に滞在する時間が長くなるほど冷却が進み、流延膜33のゲル化がより促進される。このように表面を冷却させ流延ドラム32を支持体とすれば、短時間のうちに自己支持性を持つ流延膜33を形成することができるので製膜速度の向上が実現できる。自己支持性を持たせた流延膜33は、剥取ローラ36で支持された状態で流延ドラム32から剥ぎ取られ、湿潤フィルム38とされる。
【0025】
流延室12の内部温度は、温調設備35により10〜30℃の範囲内で略一定となるように調節される。また、本実施形態では、流延室12の内部に存在するドープ21や流延膜33から蒸発した溶媒ガスを凝縮器39により凝縮液化した後、回収装置40に回収し、さらに再生装置で再生させてドープ調製用溶媒として再利用する。
【0026】
テンタ13では、その入口付近で湿潤フィルム38の両側端部にピンが差し込まれ、湿潤フィルム38の両側端部が保持される。湿潤フィルム38はテンタ13の内部を搬送される間に、乾燥が進められてフィルム20となる。テンタ14の出口付近において、フィルム20の両側端部からピンが抜かれて保持が解放される。
【0027】
テンタ13の下流にクリップテンタを設けてフィルム20を乾燥しても良い。クリップテンタは、フィルム20の両側端部を把持する把持手段として複数のクリップを備えた乾燥装置である。各クリップは、無端で走行するチェーンに取り付けられており、このチェーンの動きに応じてクリップテンタ内を移動する。クリップテンタでは、多数のクリップによりフィルム20の両側端部が把持した後、その内部を搬送する間に乾燥をよりいっそう促進させる。フィルム20を搬送する際に対面するクリップの間隔を拡げてフィルム20の幅方向に張力を付与する。フィルム20を幅方向に延伸しその分子配向を調節することにより特に面方向のレタデーション値を制御することができる。クリップテンタに送る直前のフィルム20の残留溶媒量は、50〜150重量%であることが好ましい。本発明の残留溶媒量とは、フィルム中に残留する溶媒量を乾量基準で示したものである。残留溶媒量は、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をxとし、乾燥した後のサンプルの重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出される。
【0028】
フィルム20は耳切装置43に送られ、その両側端部が切断される。両側端部が切断されたフィルム20は、乾燥室15と冷却室16とを経由して巻取室17内の巻取ローラ51で巻き取られる。完成したフィルム20は、その幅方向が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。本発明は、フィルム20の幅が2500mmより大きい場合にも効果がある。また、フィルム20の厚みが20μm以上100μm以下の薄手の場合にも適用することができる。なお、フィルム20の厚みは、20μm以上80μm以下であることが好ましく、特に好ましくは30μm以上70μm以下である。
【0029】
図2に示すように、テンタ13は複数のピン60を備えたピンプレート61を備えている。ピン60は湿潤フィルム38を保持するためのものである。各ピンプレート61は無端で走行するチェーン62に取り付けられており、チェーン62の走行に伴いテンタ13の内部を移動する。チェーン62は、湿潤フィルム38の搬送路の両側端部に設置されており、湿潤フィルム38を挟んで対称の位置にある。テンタ13の入口付近では、湿潤フィルム38の両側端部に各ピン60が差し込まれ、湿潤フィルム38の両側端部が保持される。
【0030】
図3に示すように、チェーン62は、湿潤フィルム38の乾燥経路の両側端部に設置された1対のレール63に巻き掛けられている。レール63の間隔は予め任意に調節されており、この間隔を調節することにより湿潤フィルム38に対する拡縮が制御される。チェーン62は、図示しないチェーンスプロケットにより回転駆動され、レール63をエンドレスで走行する。
【0031】
本実施形態のテンタ13は、レールの間隔が適宜調節された第1乾燥領域A1、第2乾燥領域A2、第3乾燥領域A3から構成されている。第1乾燥領域A1では、テンタ13の出口に向かうに従ってレールの間隔が徐々に縮められており、ピンプレート61が移動すると湿潤フィルム38の幅が徐々に狭められる。第2乾燥領域A2では、レールの間隔が略一定に保持されており、湿潤フィルム38の幅が維持される。第3乾燥領域A3では、テンタ13の出口に向かうに従ってレールの間隔が徐々に拡げられており、ピンプレート61が移動すると湿潤フィルム38の幅が徐々に拡げられる。
【0032】
また、各乾燥領域A1〜A3には、乾燥風を供給するための乾燥装置(図示しない)が備えられており、温調された乾燥風が供給され内部温度が調節される。ここで、第2乾燥領域A2の内部温度は、第1乾燥領域A1よりも30℃以上100℃以下の範囲内で高くする。温度を抑えた第1乾燥領域A1では、分子をランダムに配向させずに湿潤フィルム38の乾燥が進められる。次に、所定の温度差で高温に設定された第2乾燥領域A2では、湿潤フィルム38の乾燥が一気に進められるため湿潤フィルム38から溶媒が急速に蒸発して湿潤フィルム38に対して収縮力が働く。これにより湿潤フィルム38の面方向及び厚み方向における分子配向が制御されることから、完成したフィルム20はその厚み方向のレタデーション値が高い。なお、第1乾燥領域A1と第2乾燥領域A2との温度差が100℃を超えれば、湿潤フィルムに働く収縮力が大きすぎるために寸法変形等が懸念されると共に、発泡するおそれがあり好ましくない。その一方で、温度差が30℃未満では、十分に収縮力を働かせることができないために分子配向の制御が難しい。
【0033】
厚み方向のレタデーション値を高めるには、各乾燥領域での乾燥温度を調節することが有効である。具体的には、第1乾燥領域A1の乾燥温度を50℃以上80℃以下とし、第2乾燥領域A2の乾燥温度を115℃以上130℃未満とし、第3乾燥工程A3の乾燥温度を125℃以上140℃未満とすることが有効である。各領域の設定温度は、第1、第2乾燥領域間での温度差を所定の範囲内としていれば特に限定されず、適宜選択すれば良い。各乾燥領域の乾燥温度は、使用する乾燥装置の温度設定をコントロールすることにより容易に制御可能である。例えば、所定の温度に調節した乾燥風を供給する方法や、乾燥装置としてヒータを用いる場合には、その加熱温度を所定の範囲とすれば良い。なお、各乾燥領域には温度計を設置して、常時その温度を測定し、この測定値に基づいて乾燥温度を調節することが好ましい。
【0034】
また、湿潤フィルム38の厚み方向の分子配向を制御するには、湿潤フィルム38の残留溶媒量が20重量%以上50重量%以下であって、湿潤フィルム38の膜面温度が60℃以上80℃以下のときに、1秒あたりの昇温時間を3℃以上5℃以下として湿潤フィルム38を加熱することが有効である。第1乾燥領域A1と第2乾燥領域A2との間で行なえば、非常に優れた分子配向制御の効果を発揮する。ここで、湿潤フィルム38の残留溶媒量が50重量%を超えると収縮力が大きくなり前述のようにフィルムの寸法変形が懸念される。その一方で、残留溶媒量が20重量%未満のように乾燥が進んだ状態では、収縮力が働かず分子配向を制御することが難しい。湿潤フィルム38の膜面温度は、湿潤フィルム38の搬送路近傍に温度計を設置することで容易に測定することができる。なお、上記の昇温時間は、湿潤フィルム38の膜面温度を指すが、湿潤フィルム38の膜面温度は乾燥領域の設定温度と略同等である。このため、乾燥領域における温度制御を行なえば上記条件を実現できる。
【0035】
本発明における残留溶媒量とは、フィルム中に残留する溶媒量を乾量基準で示したものである。その測定方法は、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出したものとする。
【0036】
第1及び第2乾燥領域A1、A2により制御した湿潤フィルム38の状態を保持することを目的として、第3乾燥領域A3では、湿潤フィルム38の拡幅率を0.1%以上5.0%未満とすることが好ましい。この拡幅率は、第3乾燥領域A3入り口での湿潤フィルム38の幅W1と、第3乾燥領域A3から送り出される幅W4とにより{(W4−W3)/W3}×100で表される。なお、第1乾燥領域A1における湿潤フィルム38の幅を狭める割合は特に限定されない。
【0037】
本発明では、レタデーション上昇剤を過剰に用いずとも厚み方向のレタデーション値を高めたフィルムを得ることができる。このため、フィルム20の弾性率が低下することもない。また、本実施形態のようにゲル状の流延膜を形成する際、ゲル化を効率良く進めることができるので製膜速度の高速化が期待できる。
【0038】
本発明で得られるフィルム20は、厚み方向でのレタデーション値Rthが高いため位相差フィルムとして好適に利用できる。フィルム20は、面方向でのレタデーション値Reが5nm以上50nm以下であり、厚み方向でのレタデーション値Rthが70nm以上300nm以下である。Re及びRthは、フィルム20の厚みをd(nm)、搬送方向での屈折率をnx(nm)、幅方向での屈折率をny、厚み方向での屈折率をnzとするとき、下記式で表される。なお、フィルム20における分子の配向度は、フィルム20の一部を切り欠いたものをサンプルとし、これをラマン分光分析、赤外分光分析等の分析装置にかけることにより分子と分子との結合具合として測定することができる。
式(1):Re=(nx−ny)×d
式(2):Rth=[{(nx+ny)/2}−nz]×d
【0039】
以下、本発明に係わるドープについて説明する。
【0040】
本発明では、フィルムの原料となるポリマーとしてセルロースアシレートが好適である。セルロースアシレートとしては、より透明度が高いフィルムを得ることができる等の理由からセルローストリアセテート(TAC)が特に好ましい。また、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBはセルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。ここで、TACの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。ただし、本発明に用いることができるポリマーは、セルロースアシレートに限定されるものではない。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0041】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0042】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、2位のアシル置換度と称する)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、3位のアシル置換度と称する)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下、6位のアシル置換度と称する)である。
【0043】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0044】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは、0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れた溶液(ドープ)を作製することができる。特に、非塩素系有機溶媒を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0045】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿、パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
【0046】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定はされない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステル等が挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等が挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等がより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0047】
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)等が挙げられる。なお、本発明においてドープとは、ポリマーを溶媒に溶解または分散させることで得られるポリマー溶液または分散液を意味している。
【0048】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく、ジクロロメタンが最も好ましい。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度、及び光学特性等の物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は溶媒全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0049】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的としてジクロロメタンを使用しない溶媒組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル、及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル、及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−、及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶媒として用いることができる。
【0050】
ドープには、レタデーション上昇剤を含ませても良い。レタデーション上昇剤としては、化3の一般式で表されるものが好適に用いられる。このレタデーション上昇剤は、ドープの全量に対して0.1重量%以上3.0重量%以下の割合で含ませることが好ましい。このようにレタデーション値の添加量を抑えても、本発明では、厚み方向の分子配向を好適に制御することでレタデーション値を高めることができる。なお、レタデーション上昇剤を添加する割合が3.0重量%を超えればドープの粘度が低下するため流延途中で液切れする等、安定にドープを流延することが難しい。
【0051】
【化3】

【0052】
このほかにも、ドープには、可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤等の各種添加剤を添加しても良い。各添加剤は単独でも、2種類以上を併用しても良く、所望の用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0053】
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒、可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤等の添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0054】
本発明の溶液製膜方法では、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時に共流延させて積層させる同時積層共流延、または、複数のドープを逐次に共流延して積層させる逐次積層共流延を行うことができる。なお、両共流延を組み合わせてもよい。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いてもよいし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いてもよい。ただし、共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましく、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
【0055】
流延ダイ、減圧室、支持体等の構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0056】
以下に、本発明に係る実施例を挙げて、本発明の効果について説明する。なお、ここに示す実施例及び比較例は、本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0057】
〔フィルム製造〕
フィルム製造設備10において、表面にクロムめっき及び鏡面加工処理が施され、直径1000mmの円筒状の流延ドラム32の表面上に、ドープ21を乾燥厚み80μmで流延して流延膜33を形成した。自己支持性を有する流延膜33を剥取ローラ36で支持しながら剥ぎ取り湿潤フィルム38を得た。
【0058】
テンタ13では、その入口付近で湿潤フィルム38の両側端部にピン60を差し込み保持した後、残留溶媒量が46重量%の湿潤フィルム38を第1乾燥領域に送り乾燥した。続けて、残留溶媒量が25重量%である湿潤フィルム38を第2乾燥領域に送り乾燥してフィルム20とした。実施例1では、第1乾燥領域A1の乾燥温度T1を75℃とし、第2乾燥領域A2の乾燥温度T2を120℃とした。したがって、第1乾燥領域と第2乾燥領域との乾燥温度差であるΔ(T2−T1)は45℃である。また、第3乾燥領域A3の乾燥温度T3を130℃とした雰囲気下で、湿潤フィルム38を幅方向に1%延伸しながら乾燥させた。
【0059】
テンタ13の下流に設置した耳切装置43でフィルム20の両側端部を切断した後、乾燥室15において複数のローラ47に巻き掛け搬送する間に、フィルム20の乾燥を十分に促進させた。冷却室16においてフィルム20を略室温となるまで冷却した後、強制除電装置49により帯電圧を調節した。そして、ナーリング付与ローラ50でナーリングを付与したフィルム20を巻取室17に送り、プレスローラ52で押し圧を加えながら巻取ローラ51に巻き取ってロール状のフィルム20を得た。
【0060】
〔ドープ〕
実施例1で使用したドープの原料は以下の通りである。
セルローストリアセテート 100重量部ジクロロメタン 320重量部メタノール 83重量部1−ブタノール 3重量部可塑剤A 7.6重量部可塑剤B 3.8重量部UV剤a 0.7重量部UV剤b 0.3重量部微粒子 0.05重量部
レタデーション上昇剤 2重量部
【0061】
上記のセルローストリアセテートは、置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2重量%、ジクロロメタン溶液中の6重量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mm、標準偏差0.5mmの粉体であり、可塑剤Aは、トリフェニルフォスフェートであり、可塑剤Bは、ジフェニルフォスフェートであり、UV剤aは、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、UV剤bは、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールであり、クエン酸エステル化合物はクエン酸とモノエチルエステルとジエチルエステルとトリエチルエステルとの混合物であり、微粒子は平均粒径が15nm、モース硬度が約7の二酸化ケイ素である。そして、レタデーション上昇剤として、化3に示す化合物をフィルムとしたときの全重量に対して1.7重量%となるように添加した。
【0062】
完成したフィルム20の厚み方向におけるレタデーション値Rthm、及び面方向におけるレタデーション値Reを求め、フィルムが製品レベルを満足する場合を○、一方で、Rth、Reの値が製品レベルを満足しない場合を×として、本発明の効果を評価した。その結果、実施例1では、Rth=90nm、Re=7nmであり、位相差フィルムとして好適なフィルムが得られた(○)。なお、上記のレタデーション値のうち、Rth及びReは、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)により求めた。
【実施例2】
【0063】
実施例2では、テンタ13において、第1乾燥領域及び第2乾燥領域に送る湿潤フィルム38の残留溶媒量が順に48重量%、30重量%であり、第1乾燥領域A1の乾燥温度T1が70℃、第2乾燥領域A2の乾燥温度T2が122℃である以外は、全て実施例1と同様にフィルムを製造した。なお、Δ(T2―T1)は52℃である。その結果、Rth及びReがいずれも高い値を示し、製品レベルを満足するフィルムが得られた(○)。
【実施例3】
【0064】
実施例3では、テンタ13において、第1乾燥領域及び第2乾燥領域に送る湿潤フィルム38の残留溶媒量が順に48重量%、25重量%であり、第1乾燥領域A1の乾燥温度T1は75℃、第2乾燥領域A2の乾燥温度T2は105℃である以外は、全て実施例1と同様にフィルムを製造した。なお、Δ(T2―T1)は30℃である。その結果、Rth及びReがいずれも高い値を示し、製品レベルを満足するフィルムが得られた(○)。
【実施例4】
【0065】
実施例4では、テンタ13において、第1乾燥領域及び第2乾燥領域に送る湿潤フィルム38の残留溶媒量が順に46重量%、25重量%であり、第1乾燥領域A1の乾燥温度T1が75℃、第2乾燥領域A2の乾燥温度T2が135℃である以外は、全て実施例1と同様にフィルムを製造した。なお、Δ(T2―T1)は60℃である。その結果、Rth及びReがいずれも高い値を示し、製品レベルを満足するフィルムが得られた(○)。
【0066】
〔比較例1〕
比較例1では、テンタ13において、第1乾燥領域及び第2乾燥領域に送る湿潤フィルム38の残留溶媒量が順に46重量%、25重量%であり、第1乾燥領域A1の乾燥温度T1は75℃、第2乾燥領域A2の乾燥温度T2は100℃である以外は、全て実施例1と同様にフィルムを製造した。なお、Δ(T2―T1)は25℃である。その結果、Reは若干の低下に留まったが、Rthは大幅に低くなり、完成したフィルムは製品レベルを満足することができなかった(×)。
【0067】
〔比較例2〕
比較例2では、テンタ13において、第1乾燥領域及び第2乾燥領域に送る湿潤フィルム38の残留溶媒量が順に46重量%、25重量%であり、第1乾燥領域A1の乾燥温度T1は75℃、第2乾燥領域A2の乾燥温度T2は90℃である以外は、全て実施例1と同様にフィルムを製造した。なお、Δ(T2―T1)は15℃である。その結果、Reは若干の低下に留まったが、Rthは大幅に低くなり、完成したフィルムは製品レベルを満足することができなかった(×)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】フィルム製造設備の概要を示す説明図である。
【図2】テンタによる湿潤フィルム保持部の一部を切り欠いた拡大図である。
【図3】本実施形態で用いるテンタの概略図である。
【符号の説明】
【0069】
10 フィルム製造設備
13 テンタ
20 フィルム
21 ドープ
32 流延ドラム
33 流延膜
36 剥取ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスに走行する支持体の上に、セルロースアシレート及び溶媒を含むドープを流延して流延膜を形成する工程と、
前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取り湿潤フィルムとする工程と、
走行するクリップにより前記湿潤フィルムの両側端部を保持して幅を狭めながら乾燥する第1乾燥工程と、
前記クリップにより前記湿潤フィルムの両側端部を保持して幅を維持しながら、前記第1乾燥工程の乾燥温度よりも30℃以上100℃以下の範囲内で高くして乾燥する第2乾燥工程と、
前記クリップにより前記湿潤フィルムの両側端部を保持して幅を拡げながら乾燥する第3乾燥工程とを有することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1乾燥工程の乾燥温度を50℃以上80℃以下とし、
前記第2乾燥工程の乾燥温度を115℃以上130℃未満とし、
前記第3乾燥工程の乾燥温度を125℃以上140℃未満とすることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第3乾燥工程における拡幅率を0.1%以上5.0%未満とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ドープは、化1の一般式で表されるレタデーション上昇剤を前記ドープの全量に対して0.1重量%以上3.0重量%以下の割合で含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【化1】

【請求項5】
前記支持体の表面温度が−10℃以上10℃以下であり、前記流延膜を冷却によりゲル化して自己支持性を持たせて剥ぎ取ることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−238443(P2008−238443A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78688(P2007−78688)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】