説明

センサ付き転がり軸受装置

【課題】外輪の軌道面と転動体との接触面の大きさに応じて、転動体に作用する荷重を適切に検出することができるセンサ付き転がり軸受装置を提供する
【解決手段】センサ付き転がり軸受装置は、転がり軸受1と超音波センサ2とを備える。転がり軸受1は、内周に軌道面11uが形成された外輪11と、外周に軌道面14uが形成された内輪12と、外輪11及び内輪12の軌道面11u,14uと接触して転動する玉15とを備える。また、超音波センサ2は、振動子22〜24を振動させることにより、外輪11の軌道面11uへ超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波の反射波を受信するための振動面Qを有する。そして、超音波センサ2が、複数の振動子22〜24を備えるとともに、反射波の振幅に基づいて、複数の振動子22〜24のうち振動させる振動子を選択することにより、振動面Qの大きさを変化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサを備えたセンサ付き転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車において、発進時や加速時に駆動輪をスピンさせないための駆動力制御や、コーナリング時の横滑りを抑制するための制動力制御等が行われている。このような制御に有効に使用できる情報を得ること等を目的として、転がり軸受の転動体に作用する荷重を検出するために、荷重を検出するセンサ付き転がり軸受装置が知られている。
【0003】
上述のセンサ付き転がり軸受装置として、例えば、転がり軸受と、超音波センサとを備え、超音波の反射波(エコー)に基づいて、転がり軸受に作用する荷重を検出することが知られている。より具体的には、転がり軸受は、軌道面(軌道)が形成された軌道輪である外輪及び内輪と、軌道面と接触して転動する転動体とを備え、超音波センサは、振動子を振動させることにより、外輪の軌道面へ超音波を発信するとともに、外輪の軌道面における超音波の反射波を受信する。即ち、外輪の軌道面のうち、軌道面と転動体が接触している接触部へ入射した超音波は、外輪から転動体へ透過し、一方、外輪の軌道面のうち、軌道面と転動体が接触していない非接触部へ入射した超音波は、反射波として超音波センサへ反射する。従って、反射波の振幅(エコー強度)によって、外輪の軌道面と転動体との接触面の大きさ(面積)が表されるため、反射波に基づいて、転動体に作用する荷重(転動体荷重)を検出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−177932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、転動体に作用する荷重が小さい場合は、転動体に作用する荷重を精度良く検出することが困難であり、転動体に作用する荷重が大きい場合は、転動体に作用する荷重を確実に検出することが困難であった。即ち、外輪の軌道面と転動体との接触面の大きさによって、転動体に作用する荷重を適切に検出することができない可能性があるという問題があった。
【0005】
より具体的には、図10(a)に示すように、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面Nが大きい場合は、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面Tが大きい場合(即ち、転動体に作用する荷重が大きい場合)においては、転動体に作用する荷重を確実に検出することができる。しかし、図10(b)に示すように、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面Tが小さい場合(即ち、転動体に作用する荷重が小さい場合)においては、分解能が低いため、転動体に作用する荷重を精度良く検出することが困難である。
【0006】
一方、図10(c)に示すように、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面Nが小さい場合は、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面Tが小さい場合においては、分解能が高いため、転動体に作用する荷重を精度良く検出することができる。しかし、図10(d)に示すように、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面Tが大きい場合(即ち、転動体に作用する荷重が大きい場合)においては、転動体に作用する荷重を確実に検出することが困難である。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外輪の軌道面と転動体との接触面の大きさに応じて、転動体に作用する荷重を適切に検出することができるセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、内周に軌道面が形成された外輪と、外周に軌道面が形成された内輪と、外輪及び内輪の各々の軌道面の一部と接触して転動する転動体とを備える転がり軸受と、振動子を振動させることにより、外輪の軌道面へ超音波を発信するとともに、外輪の軌道面における超音波の反射波を受信するための振動面を有する超音波センサとを備えるセンサ付き転がり軸受装置であって、超音波センサは、複数の振動子を備えるとともに、反射波の振幅に基づいて、複数の振動子のうち振動させる振動子を選択することにより、振動面の大きさを変化させることを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、超音波センサは、複数の振動子を備えるとともに、反射波に基づいて、複数の振動子のうち振動させる振動子を選択することにより、振動面の大きさを変化させる。このため、反射波の振幅が、外輪の軌道面と転動体との接触面が大きいことを表している場合は、(即ち、反射波の振幅が小さい場合は、)例えば、振動面を大きくして、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面を大きくすることができる。また、反射波の振幅が、外輪の軌道面と転動体との接触面が小さいことを表している場合は、(即ち、反射波の振幅が大きい場合は、)例えば、振動面を小さくして、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面を小さくすることができる。従って、例えば、外輪の軌道面と転動体との接触面が大きい場合においては、入射面を大きくして、反射波の振幅に基づいて転動体に作用する荷重を確実に検出することができ、外輪の軌道面と転動体との接触面が小さい場合においては、入射面を小さくして、反射波の振幅に基づいて転動体に作用する荷重を精度良く検出することができる。その結果、外輪の軌道面と転動体との接触面の大きさに応じて、転動体に作用する荷重を適切に検出することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置であって、超音波センサは、反射波の振幅に基づいて、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面の全てが、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面に含まれているか否かを検出することを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、反射波の振幅に基づいて、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面の全てが、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面に含まれているか否かを検出する。このため、接触面の全てが、入射面に含まれていない場合、例えば、転動体に作用する荷重を確実に検出するために振動面を大きくすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のセンサ付き転がり軸受装置であって、超音波センサは、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面の全てが、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面に含まれていない場合、振動面を大きくすることを特徴とする。
【0013】
同構成によれば、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面の全てが、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面に含まれていない場合、振動面を大きくする。このため、振動面を大きくすることによって入射面を大きくして、接触面の全てが入射面に含まれるようにすることができる。従って、外輪の軌道面と転動体との接触面が大きい場合において、例えば、反射波の振幅に基づいて転動体に作用する荷重を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外輪の軌道面と転動体との接触面の大きさに応じて、転動体に作用する荷重を適切に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下に本発明に係る第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中の矢印U及びSは、左右方向を示すとともに、矢印U,Sの各々は、車体側方向、車輪側方向を示している。
【0016】
本実施形態に係るセンサ付き転がり軸受装置(以下、単に「軸受装置」と言う場合がある。)は、自動車用のセンサ付きハブユニットとして使用されるものである。この軸受装置は、図1の全体構成に示すように、転がり軸受1と、転がり軸受1に取り付けられた超音波センサ2とを備えている。
【0017】
(転がり軸受の構成)
転がり軸受1は、車体(不図示)に固定される固定側軌道輪である外輪11と、外輪11の内側において車輪(不図示)とともに回転する回転側軌道輪である内輪12と、外輪11と内輪12の間に設けられた2列の転動体である玉15,16とを備えている。なお、本実施形態においては、内輪12は、ハブ軸13と内輪部材14とから構成されている。
【0018】
外輪11は、その内周に2列(即ち、内列と外列)の軌道面11u,11sが環状に形成されている円筒部11aと、車体側に形成されるとともに、ボルト(不図示)を用いて車体に取り付けられるフランジ部11bとを有している。
【0019】
内輪12を構成するハブ軸13は、外輪11内に所定間隔を空けて設けられるとともに、外周に1列の軌道面13sが環状に形成されている略円柱状の軸部13aと、軸部13aの車輪側外周に形成されるとともに、ボルト6を用いて車輪が取り付けられる円盤状のフランジ部13bとを有している。さらに、本実施形態においては、ハブ軸13は、軸部13aの車体側に形成されるとともに、おねじが切られたおねじ部13cを有している。
【0020】
内輪12を構成する内輪部材14は、環状に形成されるとともに、ハブ軸13と同様に、外輪11内に所定間隔を空けて設けられるとともに、外周に1列の軌道面14uが環状に形成されている。この内輪部材14は、ハブ軸13の軸部13aの外周に嵌められるとともに、おねじ部13cに螺合されたナット7によって、ハブ軸13に固定されている。従って、内輪12(ハブ軸13と内輪部材14)は、車輪とともに回転する。
【0021】
玉15は、外輪11と内輪部材14(内輪12)の間において、外輪11及び内輪部材14の各々に形成された軌道面11u,14uの一部と接触している。また、玉16は、外輪11とハブ軸13(内輪12)の間において、外輪11及びハブ軸13の各々に形成された軌道面11s,13sと接触している。そして、内輪12が回転することにより、玉15は、外輪11の軌道面11uと内輪部材14の軌道面14uにおいて転動するとともに、玉16は、外輪11の軌道面11sとハブ軸13の軌道面13sにおいて転動する。
【0022】
以上のように構成された転がり軸受1において、外輪11の軌道面11uと玉15とは、図3に示すように、楕円形状の接触面Tで接触し、この接触面Tの大きさ(面積)は、玉15に作用する(玉15にかかる)荷重(以下、「転動体荷重」という。)に応じて異なる。なお、転動体荷重を検出する際は、接触面Tの大きさは変化せずに一定であるものとする。
【0023】
(超音波センサの構成)
超音波センサ2は、図1及び図2に示すように、ケース21内に大きさの異なる複数の振動子(超音波探触子)22〜24が設けられたものであって、超音波を発信するとともに反射波(以下、「エコー」という。)を受信するための振動面Qを有している。
【0024】
振動子22〜24の各々は、圧電体に電極が形成されたものであって、振動面Qとなる円形状の底面22a〜24aを有している。これらの振動子22〜24のいずれかに電圧を印加すると圧電効果により振動して、振動面Q(底面22a〜24aのいずれか)から超音波が発信される。また、底面22a〜24aは、超音波のエコーを受信すると圧電効果により、エコーの振幅に対応した電圧を発生させる。
【0025】
底面22a〜24aは、大きさ(面積)がそれぞれ異なり、それらの底面22a〜24aのうち、底面22aが最も小さく、底面24aが最も大きい。また、底面23aは、底面22aよりも大きく、底面24aよりも小さい。よって、振動子22〜24のうち、振動させる振動子を選択することによって、振動面Qの大きさを変化させることができる。
【0026】
以上のように構成された超音波センサ2は、振動子22〜24の何れかを振動させることにより軌道面11uへ超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波のエコーを受信する。そして、超音波センサ2は、エコーの振幅、およびエコー比を検出して、検出されたエコー比を転動体荷重検出部(不図示)へ出力する。
【0027】
より具体的には、底面22a〜24aのいずれかである振動面Qから発信された超音波は、外輪11の軌道面11uへ入射する。軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nの大きさ(面積)は、振動面Qの大きさに対応しており、図3に示すように、超音波を発信するための振動面Qが大きいほど、入射面Nも大きい。なお、入射面Nは、少なくとも軌道面11uの一部であって、入射面Nには、軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの少なくとも一部が含まれている。ここで、軌道面11uへ発信された超音波は、軌道面11uにおいて、透過または反射する。即ち、軌道面11uのうち、軌道面11uと玉15が接触している接触部へ入射した超音波は、外輪11から玉15へ透過するとともに、軌道面11uと玉15が接触していない非接触部へ入射した超音波は、エコーとして超音波センサ2へ反射する。従って、入射面Nに含まれる接触面Tにおいては、超音波が外輪11から玉15へ透過し、一方、接触面Tを除いた入射面Nにおいては、超音波のエコーが超音波センサ2へ反射するため、超音波センサ2は、入射面Nにおける接触面Tの大きさに応じた(即ち、転動体荷重に応じた)エコーを受信する。
【0028】
また、エコー比〔%〕は、エコーの振幅を用いて表すことができるものであって、100×(H0−H1)/H0を計算することにより算出することができる。ここで、H0は、超音波センサ2が受信するエコーの最も大きい振幅であって、H1は、超音波センサ2が受信するエコーの最も小さい振幅である。より具体的には、H0は、入射面Nに接触面Tが含まれていない場合の(例えば、図2に示す軌道面11uにおいて転動する2つの玉15の間に超音波を発信した場合の)、超音波のエコーの振幅であって、接触面Tの大きさによらず略一定である。一方、H1は、入射面Nの中央に接触面Tが含まれる場合の、超音波のエコーの振幅であって、入射面Nにおける接触面Tの大きさに応じたエコーの振幅である。従って、軌道面11uと玉15との接触面Tが小さければ、入射面Nにおける接触面Tの大きさに応じたエコーの振幅は大きく、エコー比は小さくなり、一方、軌道面11uと玉15との接触面Tが大きければ、入射面Nにおける接触面Tの大きさに応じたエコーの振幅は小さく、エコー比は大きくなる。
【0029】
また、エコー比と転動体荷重との関係は、超音波が発信される振動面Qの大きさにより異なっており、振動面Qである底面22aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P1と、転動体荷重との関係を、図4(a)に示す。また、振動面Qである底面23aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P2と、転動体荷重との関係を、図4(b)に示すとともに、振動面Qである底面24aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P3と、転動体荷重との関係を、図4(c)に示す。なお、図4のグラフの破線部分は、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないことによって、エコー比の変化量〔%〕に対する転動体荷重の変化量〔kN〕の割合が大きく、エコー比から転動体荷重を確実に検出することができない部分である。
【0030】
(センサ付き転がり軸受装置の動作)
次に、超音波センサ2が超音波を発信するとともに、エコーを受信する際の、本実施形態に係る軸受装置の動作について、図5を参照しながら説明する。
【0031】
まず、超音波センサ2が、振動子22を振動させることにより振動面Qである底面22aから超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波のエコーを底面22aで受信することにより、エコー比P1を検出する(ステップS1)。ステップS1において、底面22aから超音波を発信した場合、軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nは、図3に示すように小さい。
【0032】
次いで、超音波センサ2は、エコーの振幅に基づいて、外輪11の軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nに含まれているか否かを検出する(ステップS2)。
【0033】
より具体的には、ステップS2においては、エコー比P1が、例えば、33%以上であれば、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないと判断するとともに、33%未満であれば、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていると判断する。このような判断を行うことによって、超音波センサ2は、軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、超音波が入射する入射面Nに含まれているか否かを検出する。
【0034】
例えば、図3に示すように、転動体荷重が大きい場合の接触面Tの全ては、振動面Qである底面22aから超音波を発信した場合の入射面N(即ち、ステップS1における入射面N)に含まれていない。この場合、底面22aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P1は、図4(a)に示す33%以上となり、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないと判断することができる。即ち、超音波センサ2は、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないことを検出する。
【0035】
一方、図3に示すように、転動体荷重が小さい場合の接触面Tの全ては、振動面Qである底面22aから超音波を発信した場合の入射面Nに含まれている。この場合、底面22aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P1は、図4(a)に示す33%未満となり、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが入射面Nに含まれていると判断することができる。よって、超音波センサ2は、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが入射面Nに含まれていることを検出する。
【0036】
次いで、ステップS2において、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないと判断された場合、超音波を発信するとともにエコーを受信するための振動面Qを大きくする。より具体的には、超音波センサ2は、振動子23を振動させることにより底面22aよりも大きい振動面Qである底面23aから超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波のエコーを底面23aで受信することにより、エコー比P2を検出する(ステップS3)。ステップS3において、底面23aから超音波を発信した場合、軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nは、図3に示すように、ステップS1における入射面Nよりも大きい。
【0037】
次いで、再度、超音波センサ2は、エコーの振幅に基づいて、外輪11の軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nに含まれているか否かを検出する(ステップS4)。
【0038】
より具体的には、ステップS4においては、ステップS2と同様に、エコー比P2が、例えば、28%以上であれば、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないと判断するとともに、28%未満であれば、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていると判断する。
【0039】
例えば、図3に示すように、転動体荷重が大きい場合の接触面Tの全ては、振動面Qである底面23aから超音波を発信した場合の入射面N(即ち、ステップS3における入射面N)に含まれていない。この場合、底面23aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P2は、図4(b)に示す28%以上となり、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないと判断することができる。
【0040】
一方、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが、振動面Qである底面23aから超音波を発信した場合の入射面Nに含まれている場合、底面23aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P2は、図4(b)に示す28%未満となり、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていると判断することができる。
【0041】
次いで、ステップS4において、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないと判断された場合、超音波を発信するとともにエコーを受信するための振動面Qをさらに大きくする。より具体的には、超音波センサ2は、振動子24を振動させることにより底面22a〜24aのうち最も大きい振動面Qである底面24aから超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波のエコーを底面24aで受信することにより、エコー比P3を検出する(ステップS5)。ステップS5において、底面24aから超音波を発信した場合、軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nは、図3に示すように大きく、転動体荷重が大きい場合の接触面Tの全てを含んでいる。
【0042】
そして、超音波センサ2によって検出されたエコー比が、転動体荷重検出部へ出力され、転動体荷重検出部が、エコーに基づいて、転動体荷重を検出する(ステップS6)。より具体的には、ステップS2において接触面Tの全てが入射面Nに含まれていると判断された場合は、超音波センサ2によって検出されたエコー比P1が、転動体荷重検出部へ出力され、図4(a)に示すエコー比P1と転動体荷重の関係を用いて、転動体荷重が検出される。また、ステップS4において接触面Tの全てが入射面Nに含まれていると判断された場合は、超音波センサ2によって検出されたエコー比P2が、転動体荷重検出部へ出力され、図4(b)に示すエコー比P2と転動体荷重の関係を用いて、転動体荷重が検出される。さらに、ステップS4において接触面Tの全てが入射面Nに含まれていないと判断された場合は、ステップS5において超音波センサ2によって検出されたエコー比P3が、転動体荷重検出部へ出力され、図4(c)に示すエコー比P3と転動体荷重の関係を用いて、転動体荷重が検出される。
【0043】
本実施形態においては、上述のごとく、超音波センサ2が、エコーの振幅に基づいて、複数の振動子22〜24のうち振動させる振動子を選択する(切り替える)ことにより、超音波を発信するとともにエコーを受信するための振動面Qの大きさを変化させる点に特徴がある。なお、本実施形態においては、振動面Qを大きくして、振動面Qの大きさを変化させている。
【0044】
本実施形態の軸受装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)超音波センサ2は、複数の振動子22〜24を備えるとともに、エコーの振幅に基づいて、複数の振動子22〜24のうち振動させる振動子を選択することにより、振動面Qの大きさを変化させる(即ち、振動面Qを大きくする)。このため、ステップS1,S3において受信したエコーの振幅が、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが大きいことを表している場合は、(即ち、エコーの振幅が小さく、エコー比が大きい場合は、)ステップS3,S5において振動面Qを大きくして、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nを大きくすることができる。従って、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが大きい場合においては、入射面Nを大きくして、エコーの振幅に基づいて転動体荷重を確実に検出することができる。また、エコーの振幅が、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが小さいことを表している場合は、(即ち、エコーの振幅が大きく、エコー比が小さい場合は、)振動面Qを大きくせずに、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nの大きさを維持して転動体荷重を検出することができる。従って、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが小さい場合においては、入射面Nを小さいままにして、エコーの振幅に基づいて転動体荷重を精度良く検出することができる。その結果、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tの大きさに応じて、転動体荷重を適切に検出することができる。
【0045】
(2)また、超音波センサ2は、ステップS1,S3において受信したエコーの振幅に基づいて、ステップS2,S4において、外輪11の軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nに含まれているか否かを検出する。このため、接触面Tの全てが、入射面Nに含まれていない場合、転動体荷重を確実に検出するために振動面Qを大きくすることができる。
【0046】
(3)また、超音波センサ2は、外輪11の軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nに含まれていない場合、振動面Qを大きくする。このため、振動面Qを大きくすることによって入射面Nを大きくして、接触面Tの全てが入射面に含まれるようにすることができる。従って、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが大きい場合において、エコーに基づいて転動体荷重を確実に検出することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、軸受装置の全体構成、転がり軸受1の構成、および超音波センサ2の構成については、上述の第1の実施形態と同様であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0048】
第1の実施形態においては、超音波センサは、振動面Qを大きくして、振動面Qの大きさを変化させていたが、本実施形態においては、超音波センサ2が、振動面Qを小さくして、振動面Qの大きさを変化させている点に特徴がある。即ち、接触面Tの全てが入射面Nに含まれることを条件に、入射面Nを小さくすることで、エコーの振幅に基づいて転動体荷重を精度良く検出することができる。なお、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれることを示すエコー比は、予め実測して得ることができる。
【0049】
図6(a)のグラフは、振動面Qである底面24aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P3と転動体荷重との関係を表し、エコー比P3と転動体荷重との関係を用いて転動体荷重を検出することができる。しかし、接触面Tの全てが入射面Nに含まれていれば、振動面Qである底面23aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P2と転動体荷重との関係を用いて転動体荷重を検出する方が、転動体荷重を精度良く検出できる。図6(a)のグラフの破線部分は、図6(b)のグラフに示すエコー比P2と転動体荷重との関係を用いた方が転動体荷重を精度良く検出することができることを示している。同じく、図6(b)のグラフは、エコー比P2と転動体荷重との関係を表し、エコー比P2と転動体荷重との関係を用いて転動体荷重を検出することができる。しかし、接触面Tの全てが入射面Nに含まれていれば、振動面Qである底面22aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P1と転動体荷重との関係を用いて転動体荷重を検出する方が転動体荷重を精度良く検出できる。図6(b)のグラフの破線部分は、図6(c)のグラフに示すエコー比P1と転動体荷重との関係を用いた方が転動体荷重を精度良く検出することができる部分を示している。よって、図6のグラフの破線部分に対応するエコー比は、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれるエコー比を示している。
【0050】
超音波センサ2が超音波を発信するとともに、エコーを受信する際の、本実施形態に係る軸受装置の動作について、図7を参照しながらより具体的に説明する。
まず、超音波センサ2が、振動子24を振動させることにより振動面Qである底面24aから超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波のエコーを受信することにより、エコー比P3を検出する(ステップS11)。ステップS11において、底面24aから超音波を発信した場合、軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nは、図3に示すように大きい。
【0051】
次いで、エコーの振幅に基づいて、振動子23を振動させることにより振動面Qが小さくなる場合に、外輪11の軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nに含まれるか否かを検出する(ステップS12)。
【0052】
より具体的には、ステップS12においては、エコー比P3が、例えば、18%未満であれば、振動子23を振動させることにより振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれると判断する。一方、18%以上であれば、振動子23を振動させることにより振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれないと判断する。このような判断を行うことによって、超音波センサ2は、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、超音波を入射する入射面Nに含まれるか否かを検出する。
【0053】
例えば、図3に示すように、振動子23を振動させることにより振動面Qが底面24aの大きさから底面23aの大きさへ小さくなる場合に、転動体荷重が小さい場合の接触面Tの全ては、振動面Qである底面23aから超音波を発信した場合の入射面Nに含まれる。この場合、底面24aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P3は、図6(a)に示す18%未満となり、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、超音波が入射する入射面Nに含まれると判断することができる。即ち、超音波センサ2は、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが入射面Nに含まれることを検出する。
【0054】
一方、図3に示すように、振動子23を振動させることにより振動面Qが底面24aの大きさから底面23aの大きさへ小さくなる場合に、転動体荷重が大きい場合の接触面Tの全ては、振動面Qである底面23aから超音波を発信した場合の入射面Nに含まれない。この場合、底面24aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P3は、図6(a)に示す18%以上となり、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、超音波が入射する入射面Nに含まれないと判断することができる。即ち、超音波センサ2は、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uにおいて、接触面Tの全てが入射面Nに含まれないことを検出する。
【0055】
次いで、ステップS12において、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれると判断された場合、超音波を発信するとともにエコーを受信するための振動面Qを小さくする。より具体的には、超音波センサ2は、振動子23を振動させることにより底面24aよりも小さい振動面Qである底面23aから超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波のエコーを底面23aで受信することにより、エコー比P2を検出する(ステップS13)。ステップS13において、底面23aから超音波を発信した場合、軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nは、図3に示すように、ステップS11における入射面Nよりも大きい。
【0056】
次いで、再度、超音波センサ2は、エコーの振幅に基づいて、振動子22を振動させることにより振動面Qが小さくなる場合に、外輪11の軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nに含まれるか否かを検出する(ステップS14)。
【0057】
より具体的には、ステップS14においては、ステップS12と同様に、エコー比P2が、例えば、18%未満であれば、振動子22を振動させることにより振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれると判断する。一方、18%以上であれば、振動子22を振動させることにより振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれないと判断する。
【0058】
例えば、図3に示すように、振動子22を振動させることにより振動面Qが底面23aの大きさから底面22aの大きさへ小さくなる場合に、転動体荷重が小さい場合の接触面Tの全ては、振動面Qである底面22aから超音波を発信した場合の入射面Nに含まれる。この場合、底面23aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P2は、図6(b)に示す18%未満となり、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、超音波が入射する入射面Nに含まれると判断することができる。
【0059】
一方、振動子22を振動させることにより振動面Qが底面23aの大きさから底面22aの大きさへ小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれない場合、振動面Qである底面23aから発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比P3は、図6(b)に示す18%以上となる。従って、振動面Qが小さくなる場合に、軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、超音波が入射する入射面Nに含まれないと判断することができる。
【0060】
次いで、ステップS14において、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれると判断された場合、超音波を発信するとともにエコーを受信するための振動面Qを小さくする。より具体的には、超音波センサ2は、振動子22を振動させることにより底面23aよりも小さい振動面Qである底面22aから超音波を発信するとともに、軌道面11uにおける超音波のエコーを底面22aで受信することにより、エコー比P1を検出する(ステップS15)。ステップS15において、底面22aから超音波を発信した場合、軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nは、図3に示すように、転動体荷重が小さい場合の接触面Tの全てを含んでいる。
【0061】
そして、超音波センサ2によって検出されたエコー比が、転動体荷重検出部へ出力され、転動体荷重検出部が、エコーの振幅に基づいて、転動体荷重を検出する(ステップS16)。より具体的には、ステップS12において、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれないと判断された場合は、超音波センサ2によって検出されたエコー比P3が、転動体荷重検出部へ出力され、図6(a)に示すエコー比P3と転動体荷重の関係を用いて、転動体荷重が検出される。また、ステップS14において、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれないと判断された場合は、超音波センサ2によって検出されたエコー比P2が、転動体荷重検出部へ出力され、図6(b)に示すエコー比P2と転動体荷重の関係を用いて、転動体荷重が検出される。さらに、ステップS14において、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれると判断された場合は、ステップS15において超音波センサ2によって検出されたエコー比P1が、転動体荷重検出部へ出力され、図6(c)に示すエコー比P1と転動体荷重の関係を用いて、転動体荷重が検出される。
【0062】
本実施形態の軸受装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(4)超音波センサ2は、複数の振動子22〜24を備えるとともに、エコーの振幅に基づいて、複数の振動子22〜24のうち振動させる振動子を選択することにより、振動面Qの大きさを変化させる(即ち、振動面Qを小さくする)。このため、ステップS11,S13において受信したエコーの振幅が、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが小さいことを表している場合は、ステップS13,S15において振動面Qを小さくしている。即ち、ステップS11,S13において受信したエコーの振幅が大きく、エコー比が小さい場合は、ステップS13,S15において振動面Qを小さくして、入射面Nを小さくすることができる。従って、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが小さい場合においては、入射面Nを小さくして、エコーに基づいて転動体荷重を精度良く検出することができる。また、エコーの振幅が、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが大きいことを表している場合は、(即ち、エコーの振幅が小さく、エコー比が大きい場合は、)振動面Qを小さくせずに、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nの大きさを維持して転動体荷重を検出することができる。従って、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが大きい場合においては、入射面Nを大きいままにして、エコーの振幅に基づいて転動体荷重を確実に検出することができる。その結果、上記(1)と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(5)また、ステップS12,S14において超音波センサ2は、ステップS11,S13において受信したエコーの振幅に基づいて、複数の振動子22〜24のうち振動させる振動子を選択することにより振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれるか否かを検出する。このため、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが、入射面Nに含まれる場合、転動体荷重を精度良く検出するために振動面Qを小さくすることができる。
【0064】
(6)また、超音波センサ2は、複数の振動子22〜24のうち振動させる振動子を選択することにより振動面Qが小さくなる場合に、外輪11の軌道面11uと玉15が接触する接触面Tの全てが、外輪11の軌道面11uにおいて超音波が入射する入射面Nに含まれる場合、振動面Qを小さくする。このため、振動面Qを小さくすることによって、接触面Tの全てが入射面Nに含まれたまま入射面Nを小さくすることができる。従って、外輪11の軌道面11uと玉15との接触面Tが小さい場合において、エコーの振幅に基づいて転動体荷重を精度良く検出することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。例えば、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0066】
・軌道面11uにおいて接触面Tの全てが入射面Nに含まれているか否かを判断するためのエコー比や、振動させる振動子を選択することにより振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれるか否かを判断するためのエコー比は、上記実施形態の数値に限られない。
【0067】
・振動子の個数や配置や、底面の形状等は適宜変更してもよい。より具体的には、図8に示すように、超音波センサ2を構成しても良い。即ち、超音波センサ2は、ケース21内に、複数(5つ)の振動子(超音波探触子)25〜29が設けられたものであって、楕円形状である接触面Tの長手方向において、振動子25を挟むように振動子26,27を配置し、さらに振動子25〜27を挟むように、振動子28,29を配置してもよい。そして、これら振動子25〜29の各々が、振動面Qとなる四角形状の底面25a〜29aを有していてもよい。
【0068】
・また、振動させる振動子は1つでなくてもよい。より具体的には、上記実施形態においては振動子22〜24のいずれかを振動させることにより振動面Q(底面22a〜24aのいずれか)であったが、振動子25、振動子25〜27、または振動子25〜29を振動させることにより、振動面Q(底面25a、底面25a〜27a、または底面25a〜29a)から超音波を発信してもよい。即ち、複数の振動子のうち振動させる振動子を選択することにより、振動面Qの大きさを変化させることができればよい。
【0069】
・また、接触面Tの楕円形状に合わせて、振動面Q(底面25a、底面25a〜27a、または底面25a〜29a)が長方形状であってもよい。即ち、上記実施形態においては振動面Q(底面22a〜24aのいずれか)の形状は円形状であったが、振動面Qの形状を長方形状にすることで、振動子25、振動子25〜27、または振動子25〜29を振動させることにより、図9に示すように、入射面Nに対する接触面Tの割合を大きくして、転動体荷重をさらに精度良く検出することができる。
【0070】
・上記実施形態においては、振動させる振動子を選択するためや、接触面Tの全てが入射面Nに含まれているか否かを検出するためや、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれるか否かを検出するために、エコー比を用いたが、上記H1のエコーの振幅を用いてもよい。即ち、振動させる振動子を選択するためや、接触面Tの全てが入射面Nに含まれているか否かを検出するためや、振動面Qが小さくなる場合に、接触面Tの全てが入射面Nに含まれるか否かを検出するためには、入射面Nにおける接触面Tの大きさに応じたエコーの振幅を用いればよい。
【0071】
・上記実施形態においては、超音波センサ2は1つであったが、複数の超音波センサ2を備えてもよい。例えば、転動体荷重の三分力荷重を検出するために、3つの超音波センサ2を備えてもよい。
【0072】
・上記実施形態においては、転がり軸受1の転動体は玉15,16であったが、転動体として円錐ころを用いた転がり軸受であってもよい。また、上記実施形態においては、軸受装置は、自動車用のセンサ付きハブユニットであったが、その他の軸受装置であってもよい。
【0073】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について、その効果とともに以下に追記する。
(付記1)前記超音波センサは、前記反射波の振幅に基づいて、複数の前記振動子のうち振動させる振動子を選択することにより前記振動面が小さくなる場合に、前記外輪の軌道面と前記転動体が接触する接触面の全てが、前記外輪の軌道面において前記超音波が入射する入射面に含まれるか否かを検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【0074】
同構成によれば、反射波の振幅に基づいて、複数の振動子のうち振動させる振動子を選択することにより振動面が小さくなる場合に、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面の全てが、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面に含まれるか否かを検出する。このため、振動面が小さくなる場合に、接触面の全てが、入射面に含まれる場合、例えば、転動体に作用する荷重を精度良く検出するために振動面を小さくすることができる。
【0075】
(付記2)前記超音波センサは、複数の前記振動子のうち振動させる振動子を選択することにより前記振動面が小さくなる場合に、前記外輪の軌道面と前記転動体が接触する接触面の全てが、前記外輪の軌道面において前記超音波が入射する入射面に含まれる場合、前記振動面を小さくすることを特徴とする請求項1乃至請求項3、付記1のいずれかに記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【0076】
同構成によれば、複数の振動子のうち振動させる振動子を選択することにより振動面が小さくなる場合に、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面の全てが、外輪の軌道面において超音波が入射する入射面に含まれる場合、振動面を小さくする。このため、振動面を小さくすることによって、接触面の全てが入射面に含まれたまま入射面を小さくすることができる。従って、外輪の軌道面と転動体との接触面が小さい場合において、例えば、反射波に基づいて転動体に作用する荷重を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサ付き転がり軸受装置の概略構成図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る軌道面における接触面と入射面を説明するための模式図。
【図4】(a)(b)(c)第1の実施形態に係る、振動面から発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比と、転動体荷重との関係を説明するためのグラフ。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るセンサ付き転がり軸受装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図6】(a)(b)(c)第2の実施形態に係る、振動面から発信された超音波のエコーを用いて算出されるエコー比と、転動体荷重との関係を説明するためのグラフ。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るセンサ付き転がり軸受装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図8】本発明の別例に係るセンサ付き転がり軸受装置の、超音波センサを説明するための概略構成図。
【図9】本発明の別例に係る軌道面における接触面と入射面を説明するための模式図。
【図10】(a)(b)(c)(d)外輪の軌道面において超音波が入射する入射面と、外輪の軌道面と転動体が接触する接触面とを説明するための模式図。
【符号の説明】
【0078】
N…入射面、Q…振動面、T…接触面、1…転がり軸受、2…超音波センサ、11…外輪、11u…軌道面、12…内輪、14u…軌道面、15…玉(転動体)、22〜29…振動子、22a〜29a…底面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に軌道面が形成された外輪と、外周に軌道面が形成された内輪と、前記外輪及び内輪の各々の軌道面の一部と接触して転動する転動体とを備える転がり軸受と、
振動子を振動させることにより、前記外輪の軌道面へ超音波を発信するとともに、前記外輪の軌道面における前記超音波の反射波を受信するための振動面を有する超音波センサと
を備えるセンサ付き転がり軸受装置であって、
前記超音波センサは、複数の前記振動子を備えるとともに、前記反射波の振幅に基づいて、複数の前記振動子のうち振動させる振動子を選択することにより、前記振動面の大きさを変化させることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
前記超音波センサは、前記反射波の振幅に基づいて、前記外輪の軌道面と前記転動体が接触する接触面の全てが、前記外輪の軌道面において前記超音波が入射する入射面に含まれているか否かを検出することを特徴とする請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項3】
前記超音波センサは、前記外輪の軌道面と前記転動体が接触する接触面の全てが、前記外輪の軌道面において前記超音波が入射する入射面に含まれていない場合、前記振動面を大きくすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサ付き転がり軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−92436(P2009−92436A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261332(P2007−261332)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】