説明

センサ装置

【課題】感知部を有する多角形板状をなすセンサチップを、アンダーフィル樹脂を介して基板にフリップチップ実装してなるセンサ装置において、センサチップの感知部および突起電極に加わる応力を、極力低減する。
【解決手段】感知部11を有する多角形の板状をなし一面に突起電極12を有するセンサチップ10を、アンダーフィル樹脂30を介して基板20に搭載し、突起電極12と基板20とを電気的に接合してなるセンサ装置であって、アンダーフィル樹脂30を、センサチップ10の一面における突起電極12以外の部位であって角部以外の部位に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシングを行う感知部を有する多角形板状をなすセンサチップを、基板に
フリップチップ実装してなるセンサ装置に関し、特にチップ−基板間にアンダーフィル樹脂を介在させた構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフリップチップ実装としては、多角形の板状をなすチップであって一面に当該一面より突出する突起電極を有するチップと、チップを搭載する基板と、を備え、基板にチップの一面を対向させた状態で、電極と基板とを電気的に接合してなるものが挙げられる。
【0003】
ここで、さらに、チップの一面と基板との間に、アンダーフィル樹脂を介在させ、このアンダーフィル樹脂によってチップと基板との機械的接合強度を補強することが一般に行われている。
【0004】
具体的に、このようなフリップチップ実装技術として、従来では、フリップチップ実装
後にアンダーフィル樹脂をチップと基板の隙間全面に流し込む工法が主流である。また、その他にもアンダーフィル樹脂を矩形状チップの四隅に注入するようにしたものが提案されており(特許文献1参照)、それによれば、基板−チップ間の線膨張係数差に起因する電極に加わる応力を低減することが可能となるとされている。
【0005】
また、特許文献2、特許文献3には、アンダーフィル樹脂を、チップの外周の全周に塗布することによって、チップ内周部への樹脂の流れ込み防止、樹脂量の低減によるコスト削減が見込めるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−78431号公報
【特許文献2】特開2003−234633号公報
【特許文献3】特開2004−83761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の方法では、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)センサとしてのセンサチップを用いた場合、下記のような問題がある。このようなセンサチップにおいては、感知部は、力学量が印加されたときに変位する可動部を有し、この可動部の変位に基づいて印加力学量を検出するものであるため、センサチップに加わる応力が微小なものであっても、感知部や電極に影響が大きいものとなる。
【0008】
この点を考慮すると、上記特許文献1のように、アンダーフィル樹脂をチップの四隅に塗布することは、当該四つの角部がアンダーフィル樹脂のフィレットで固定されてしまうこととなり、さらに塗布形状のばらつきにより樹脂の硬化収縮力が四隅で不均一になり、センサチップの感度に大きく影響する恐れがある。
【0009】
また、上記特許文献2、3のように、アンダーフィル樹脂をチップの外周の全周に塗布する場合、センサチップと基板との間にてアンダーフィル樹脂で囲まれた空間が密閉された空間となり、当該空間の内部圧力と外部の圧力との圧力差による応力がセンサチップに加わる。すると、その応力によりチップ変形が発生し、感知部や突起電極に応力が加わってしまう。
【0010】
ここで、アンダーフィル樹脂を用いないことでセンサチップへの応力を低減することも考えられるが、その場合は、チップの突起電極に応力が集中してしまい、突起電極の信頼性が低下することが考えられる。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、センシングを行う感知部を有する多角形板状をなすセンサチップを、アンダーフィル樹脂を介して基板にフリップチップ実装してなるセンサ装置において、センサチップの感知部および突起電極に加わる応力を、極力低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、感知部(11)を有する多角形の板状をなし一面に突起電極(12)を有するセンサチップ(10)を、アンダーフィル樹脂(30)を介して基板(20)に搭載し、突起電極(12)と基板(20)とを電気的に接合してなるセンサ装置であって、アンダーフィル樹脂(30)を、センサチップ(10)の一面における突起電極(12)以外の部位であって角部以外の部位に設けたことを特徴とする。
【0013】
それによれば、アンダーフィル樹脂(30)を、センサチップ(10)の一面における突起電極(12)以外の部位に設けるから、アンダーフィル樹脂(30)によって突起電極(12)に加わる応力を低減することができる。
【0014】
また、センサチップ(10)の角部がアンダーフィル樹脂(30)により固定されると、アンダーフィル樹脂(30)のフィレットによってセンサチップ()に加わる応力が大きくなりがちだが、本発明では、アンダーフィル樹脂(30)を角部以外の部位に設けているので、そのような懸念を回避することができる。よって、本発明によれば、センサチップ(10)の感知部(11)および突起電極(12)に加わる応力を、極力低減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、感知部(11)を有する多角形の板状をなし一面に突起電極(12)を有するセンサチップ(10)を、アンダーフィル樹脂(30)を介して基板(20)に搭載し、突起電極(12)と基板(20)とを電気的に接合してなるセンサ装置であって、アンダーフィル樹脂(30)を、センサチップ(10)の一面における突起電極(12)以外の部位に設けるとともに、センサチップ(10)の一面の外周にて当該一面の内周を囲むように環状に配置し、アンダーフィル樹脂(30)または基板(20)に、センサチップ(10)の一面と基板(20)との間のアンダーフィル樹脂(30)で囲まれた空間と外部とを連通させるリーク孔(40、41)が設けられていることを特徴とする。
【0016】
それによれば、アンダーフィル樹脂(30)を、センサチップ(10)の一面における突起電極(12)以外の部位に設けるから、アンダーフィル樹脂(30)によって突起電極(12)に加わる応力を低減できる。
【0017】
また、センサチップ(10)の一面と基板(20)との間にてアンダーフィル樹脂(30)で囲まれた空間が、リーク孔(40、41)によって密閉されずに外部と連通するので、当該空間の内部圧力と外部の圧力との圧力差が発生せず、従来のように当該圧力差によりセンサチップ(10)に加わる応力、およびその応力によるチップ変形が実質的に無くなる。このように、本発明によれば、センサチップ(10)の感知部(11)および突起電極(12)に加わる応力を、極力低減することができる。
【0018】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係るセンサ装置の概略断面図、(b)は(a)中のセンサチップの斜視図、(c)は(b)中のセンサチップの下面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は第1実施形態に係るセンサ装置の製造方法を示す工程図である。
【図3】第1実施形態におけるアンダーフィル樹脂の配置形態の他の例を示す平面図である。
【図4】第1実施形態におけるアンダーフィル樹脂の配置形態の他の例を示す平面図である。
【図5】(a)は本発明の第2実施形態に係るセンサ装置の概略斜視図、(b)は(a)中のセンサチップの概略平面図である。
【図6】(a)、(b)、(c)は第2実施形態に係るセンサ装置の製造方法を示す工程図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るセンサ装置の要部を示す分解斜視図である。
【図8】(a)、(b)、(c)、(d)は本発明の第4実施形態に係るセンサ装置の製造方法を示す工程図である。
【図9】(a)、(b)、(c)、(d)は本発明の第5実施形態に係るセンサ装置の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
図1において、(a)は本発明の第1実施形態に係るセンサ装置の概略断面構成を示す図、(b)は(a)中のセンサチップ10の斜視図、(c)は(b)に示されるセンサチップ10の一面(センサチップ10における(a)中の下面)図である。
【0022】
本実施形態のセンサ装置は、大きくは、感知部11を有する多角形の板状をなすチップであって一面に当該一面より突出する突起電極12を有するセンサチップ10と、センサチップ10を搭載する基板20と、センサチップ10の一面と基板20との間に介在するアンダーフィル樹脂30とを備えて構成されている。
【0023】
センサチップ10は、シリコン半導体などよりなり、一般的な半導体プロセスやエッチングなどにより形成されるMEMSセンサである。ここで、感知部11は、たとえば圧力や加速度、角速度などの力学量が印加されたときに変位する可動部を有するものであり、この場合、この可動部の変位に基づいて印加力学量を検出する。このような微細加工された可動部を有する感知部11の場合には、センサチップ10に加わる応力が微小であっても、影響されやすい。
【0024】
具体的には、センサチップ10は、薄肉とされ圧力により歪変位するダイアフラムを感知部11とする圧力センサチップや、加速度あるいは角速度により変位する櫛歯状の可動電極および固定電極よりなる梁構造体を感知部11とする加速度センサチップあるいは角速度センサチップなどである。なお、それ以外にも、センサチップ10は、MEMSを用いて作製された熱式流量センサチップ、湿度センサチップなどであってもよい。
【0025】
また、センサチップ10は、ウェハ状態にて半導体プロセスにより形成され、ダイシング工程を経てチップに個片化されるものであり、角部を有する平面多角形の板状、たとえば矩形板状、六角形板状などの形状をなす。ここでは、センサチップ10は一般的な平面矩形の板状をなしている。
【0026】
そして、このセンサチップ10の一面(図1(c)に示されるセンサチップ10の面)、つまり、センサチップ10における基板20に対向する面には、突起電極12が備えられている。
【0027】
この突起電極12は、たとえばスタッドバンプ法やメッキなどにより形成された金や銅のバンプ、あるいは、はんだバンプなどよりなる突起状のものであり、センサチップ10の一面より外方に突出している。この突起電極12はセンサチップ10と外部とを電気的に接続するものであり、突起電極12を介して感知部11と外部との電気的信号のやり取りが可能とされている。
【0028】
また、基板20としては、プリント基板やセラミック基板などの一般的な配線基板などが挙げられるが、リードフレームなどであってもよい。また、この基板20は単層基板でも多層基板であってもよい。
【0029】
そして、図1に示されるように、基板20とセンサチップ10の一面とが対向して配置されており、センサチップ10の突起電極12と基板20とは、加圧・加熱による圧着などによって電気的および機械的に接合されている。
【0030】
具体的には、基板20における突起電極12との接続部位には、導体よりなるランドなどが設けられており、このランドと突起電極12とが接合されている。これにより、センサチップ10と基板20とが電気的に接続され、センサチップ10は、基板20から信号を受けたり、基板20によって制御されたりするようになっている。
【0031】
そして、センサチップ10の一面と基板20との間には、機械的接合の補強の目的で、アンダーフィル樹脂30が介在しているが、本実施形態では、このアンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面における突起電極12以外の部位であって、角部以外の部位に設けられている。
【0032】
具体的に図1に示される例では、アンダーフィル樹脂30は、矩形状のセンサチップ10の一面における四個の角部には位置せずに当該角部より離れており、感知部11と同様に、センサチップ10の中央部付近に配置されている。そして、そのアンダーフィル樹脂30の外側に、アンダーフィル樹脂12とは離れた状態で、突起電極12が配置された形とされている。
【0033】
ここで、アンダーフィル樹脂30としては、耐環境性、流れ込みを考慮すると高いフィラー含有量、高いチクソ性を持つことが好ましい。具体的にはフィラー含有量は80%以上、チクソ指数に関しては2以上あることが好ましい。たとえば、アンダーフィル樹脂30としては、エポキシ樹脂にシリカフィラーを含有させたものが挙げられる。
【0034】
次に、図1に示されるセンサ装置の製造方法について、図2を参照して述べる。図2は、本製造方法の各工程を(a)、(b)、(c)の順に示す工程図であり、各工程におけるワークの斜視図を示している。
【0035】
まず、図2(a)に示されるように、ディスペンスや印刷などによって、基板20側にアンダーフィル樹脂30を供給する。この際、アンダーフィル樹脂30の供給箇所は、上記したように、センサチップ10の一面における突起電極12以外の部位であってセンサチップ10の角部以外の部位に相当する箇所である。
【0036】
また、図2(b)に示されるように、半導体プロセスにより形成されたセンサチップ10に対して、その一面に突起電極12となるバンプを形成する。その後、図2(c)に示されるように、基板20上にセンサチップ10の一面を対向させて搭載する。そして、加圧・加熱により突起電極12と基板20とを接合するとともに、アンダーフィル樹脂30を加熱硬化させる。こうして、センサチップ10が基板20に実装され、センサ装置ができあがる。
【0037】
ところで、本実施形態においては、センシングを行う感知部11を有する多角形板状をなすセンサチップ10を、アンダーフィル樹脂30を介して基板20にフリップチップ実装してなるセンサ装置において、アンダーフィル樹脂30を、センサチップ10の一面における突起電極12から離れた部位に設けるから、アンダーフィル樹脂30によって突起電極12に加わる応力を低減できる。
【0038】
また、仮にセンサチップ10の角部がアンダーフィル樹脂30により固定されると、センサチップ10の角部には、アンダーフィル樹脂30のフィレットが当該角部の端面にはみ出して形成される。そして、このアンダーフィル樹脂30のフィレットによってセンサチップ10に加わる応力が大きくなりがちである。
【0039】
しかし、本実施形態では、アンダーフィル樹脂30を角部以外の部位に設け、アンダーフィル樹脂30と角部を離しているので、そのような懸念を回避できる。よって、本実施形態によれば、アンダーフィル樹脂30によってセンサチップ10の感知部11および突起電極12に加わる応力を、極力低減することができる。
【0040】
なお、上記図1に示される例では、センサチップ10は矩形板状であったが、多角形板状であればよく、たとえば、それ以外にも上記したように六角形板状であってもよい。この場合にも、センサチップ10の一面と基板20との間において、アンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面における突起電極12よりも離れた部位であって、六個の角部以外の部位に設けられていればよい。
【0041】
また、図3、図4は、それぞれ本実施形態におけるアンダーフィル樹脂30の配置形態の他の例を示す平面図であり、センサチップ10の一面を示している。
【0042】
上記図1に示される例では、センサチップ10の一面の中央部付近に1個のドット状のアンダーフィル樹脂30が配置されていたが、図3に示される例では、突起電極12以外であって角部以外の部位に、複数個のアンダーフィル樹脂30がドット状に配置されている。
【0043】
また、図4に示される例では、上記2つのドット状配置に対して、ライン状配置の例を示すもので、アンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面の中央部に中心を持つクロスライン形状に配置されている。
【0044】
このように、本実施形態のセンサ装置においては、センサチップ10と基板20との間にて、アンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面における突起電極12および角部から離れて設けられていればよく、上記の各図に示される配置形態に限定されるものではない。
【0045】
(第2実施形態)
図5において、(a)は本発明の第2実施形態に係るセンサ装置の概略斜視構成を示す図、(b)は(a)に示されるセンサチップ10の一面を示す概略平面図である。本実施形態では、上記第1実施形態に比べて、アンダーフィル樹脂30の配置形態が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0046】
図5に示されるように、本実施形態でも、アンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面における突起電極12以外の部位に設けられ、突起電極12から離れていることは、上記同様である。しかし、本実施形態では、さらに、アンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面の外周にて当該一面の内周を囲むように環状に配置されたものとなっている。
【0047】
この場合、センサチップ10の一面と基板20との間には、環状のアンダーフィル樹脂30の内周に当該アンダーフィル樹脂30で囲まれた空間が形成されるが、本実施形態では、図5(b)に示されるように、アンダーフィル樹脂30には、当該空間と当該空間の外部とを連通させるリーク孔40を設けている。
【0048】
ここでは、センサチップ10の一面の外周に環状に配置されたアンダーフィル樹脂30は、全周に設けられたものではなく、一部が切り離された環とされており、この切り離された部分がリーク孔40を構成している。なお、このリーク孔40の位置は、環状のアンダーフィル樹脂30のうちの任意の位置に設ければよく、その数も任意である。
【0049】
次に、図5に示されるセンサ装置の製造方法について、図6を参照して述べる。図6は、本製造方法の各工程を(a)、(b)、(c)の順に示す工程図であり、各工程におけるワークの斜視図を示している。
【0050】
まず、図6(a)に示されるように、半導体プロセスにより形成されたセンサチップ10に対して、その一面に突起電極12となるバンプを形成する。次に、図6(b)に示されるように、基板20上にセンサチップ10の一面を対向させて搭載し、加圧・加熱により突起電極12と基板20とを接合する。
【0051】
次に、図6(c)に示されるように、ディスペンサK1によって、センサチップ10の一面と基板20との間にてセンサチップ10の一面の外周部分に、アンダーフィル樹脂30を供給する。この際、アンダーフィル樹脂30は、上記リーク孔40の部分には供給しない。
【0052】
その後、アンダーフィル樹脂30を加熱硬化させる。こうして、センサチップ10が基板20に実装され、センサ装置ができあがる。なお、本実施形態のセンサ装置は、センサチップ10の実装後にアンダーフィル樹脂30の供給を行ったが、上記第1実施形態の図2と同様に、樹脂供給後にチップ実装を行ってもよい。
【0053】
ところで、本実施形態においても、センシングを行う感知部11を有する多角形板状をなすセンサチップ10を、アンダーフィル樹脂30を介して基板20にフリップチップ実装してなるセンサ装置において、アンダーフィル樹脂30を、センサチップ10の一面における突起電極12から離れた部位に設けるから、アンダーフィル樹脂30によって突起電極12に加わる応力を低減できる。
【0054】
また、センサチップ10の一面と基板20との間にてアンダーフィル樹脂30で囲まれた空間が、リーク孔40によって密閉されずに外部と連通するので、当該空間の内部圧力と外部の圧力との圧力差が発生せず、従来のように当該圧力差によりセンサチップ10に加わる応力、およびその応力によるチップ変形が実質的に無くなる。よって、本実施形態によれば、センサチップ10の感知部11および突起電極12に加わる応力を、極力低減することができる。
【0055】
(第3実施形態)
図7は本発明の第3実施形態に係るセンサ装置の要部構成を示す図であり、センサチップ10と基板20とを分解して示す斜視図である。本実施形態は、上記第2実施形態と同様に、アンダーフィル樹脂30を環状に配置し、リーク孔41を設けた構成とするものであるが、リーク孔41の構成が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0056】
図7に示されるように、本実施形態でも、アンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面における突起電極12以外の部位に設けられているが、本実施形態のアンダーフィル樹脂30は、センサチップ10の一面の外周にて当該外周の全周に環状に配置されたものとされている。
【0057】
そして、本実施形態では、環状のアンダーフィル樹脂30の内周に位置する基板20の部分に、当該基板20のセンサチップ10側の面からそれとは反対側の面に貫通する孔41を設け、これをリーク孔41としている。
【0058】
そして、このリーク孔41により、上記したアンダーフィル樹脂30で囲まれた空間と当該空間の外部とが連通されるので、上記第2実施形態と同様、当該空間の内外の圧力差が発生しない。そのため、本実施形態によれば、センサチップ10の感知部11および突起電極12に加わる応力を、極力低減することができる。
【0059】
このようなリーク孔41は、たとえば基板20に対してプレスなどによる穴あけ加工を施すことにより形成される。また、この基板20に設けるリーク孔41は、上記したリーク孔としての効果を奏するものであればよく、その数や形状等は特に限定されるものではない。
【0060】
この本実施形態のセンサ装置の製造においては、あらかじめリーク孔41を形成した基板20を用いればよい。そのような基板20を用いれば、上記図6と同様に、センサチップ10の実装後にアンダーフィル樹脂30の供給を行うことで製造できるし、上記図2と同様に、樹脂供給後にチップ実装を行う方法でも製造することができる。
【0061】
(第4実施形態)
ところで、上記実施形態において、センサチップ10の突起電極12と基板20とを接合するときには、一般に加圧・加熱を行うが、この接合は、超音波を印加して接合部分の洗浄を行いながら行うのが一般的である。
【0062】
このとき、基板20側にアンダーフィル樹脂30を供給しているために、実装時に、この超音波を付与するとアンダーフィル樹脂30によっては形状が変わってしまう。そのため、この超音波の印加を抑制することが好ましい。
【0063】
本発明の第4実施形態は、この超音波抑制を目的とした好ましい製造方法を提供するものであり、図8(a)、(b)、(c)、(d)はその製造方法を示す工程図である。まず、基板20にアンダーフィル樹脂30を供給し(図8(a)参照)、センサチップ10の一面に突起電極12を形成する(図8(b)参照)。
【0064】
次に、基板20におけるチップ搭載面、および、センサチップ10の一面にプラズマを照射し、プラズマ洗浄を行う。なお、このプラズマ洗浄は、半導体プロセスで一般に用いられるプラズマ洗浄装置により行える。このプラズマ洗浄を行うことで、これら基板20やセンサチップ10における各表面の有機物や、下地金属の拡散物を除去することができ、実装時の超音波の印加による洗浄が不要となり、結果、実装時の印加エネルギーを抑えることができる。
【0065】
このプラズマ洗浄を行った後は、基板20上にセンサチップ10の一面を対向させて搭載し、加圧・加熱により突起電極12と基板20とを接合するとともに、アンダーフィル樹脂30を加熱硬化させる(図8(d)参照)。こうして、本実施形態においてもセンサ装置ができあがる。
【0066】
なお、図8に示される製造方法は、上記第1実施形態のようにアンダーフィル樹脂30の供給後にチップ実装を行う場合の例であるが、上記第2実施形態においても適用できる。この場合、図8において、アンダーフィル樹脂30を供給せずに基板20およびセンサチップ10の一面にプラズマ洗浄を行い、センサチップ10を実装した後に、当該樹脂30の供給を行えばよい。
【0067】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態は、上記第4実施形態と同様に、上記超音波抑制を目的とした好ましい製造方法を提供するものであり、図9(a)、(b)、(c)、(d)はその製造方法を示す工程図である。
【0068】
まず、基板20のチップ搭載面における突起電極12と接続される部位に、ナノペースト50を供給しておく(図9(a)参照)。このナノペースト50は、たとえば銀や銅などの粒径がナノメートルオーダーのフィラーが樹脂に含有されたものである。
【0069】
そして、図9(b)、(c)に示されるように、一面に突起電極12を形成したセンサチップ10を、基板20の上に搭載し、加圧・加熱などにより接合する。このとき、突起電極12と基板20との間に介在するナノペースト50により、実装時の印加エネルギーを抑えることができる。
【0070】
その後は、図9(d)に示されるように、ディスペンサK1によって、センサチップ10の一面と基板20との間にてセンサチップ10の一面の外周部分に、アンダーフィル樹脂30を供給する。そして、アンダーフィル樹脂30を加熱硬化させれば、センサ装置ができあがる。
【0071】
なお、この図9に示される製造方法は、上記第2実施形態や上記第3実施形態のようにセンサチップ10の実装後にアンダーフィル樹脂30の供給を行う場合の例であるが、上記第1実施形態に用いてもよい。この場合、ナノペースト50を基板20に供給するときに、これと一緒にアンダーフィル樹脂30を基板20に供給してやればよい。
【符号の説明】
【0072】
10 センサチップ
11 感知部
12 突起電極
20 基板
30 アンダーフィル樹脂
40 リーク孔
41 リーク孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知部(11)を有する多角形の板状をなすチップであって一面に当該一面より突出する突起電極(12)を有するセンサチップ(10)と、
前記センサチップ(10)を搭載する基板(20)と、を備え、
前記基板(20)に前記センサチップ(10)の前記一面を対向させた状態で、前記突起電極(12)と前記基板(20)とを電気的に接合してなり、
前記センサチップ(10)の前記一面と前記基板(20)との間に、アンダーフィル樹脂(30)を介在させてなるセンサ装置であって、
前記アンダーフィル樹脂(30)は、前記センサチップ(10)の一面における前記突起電極(12)以外の部位であって、角部以外の部位に設けられていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
感知部(11)を有する多角形の板状をなすチップであって一面に当該一面より突出する突起電極(12)を有するセンサチップ(10)と、
前記センサチップ(10)を搭載する基板(20)と、を備え、
前記基板(20)に前記センサチップ(10)の前記一面を対向させた状態で、前記突起電極(12)と前記基板(20)とを電気的に接合してなり、
前記センサチップ(10)の前記一面と前記基板(20)との間に、アンダーフィル樹脂(30)を介在させてなるセンサ装置であって、
前記アンダーフィル樹脂(30)は、前記センサチップ(10)の一面における前記突起電極(12)以外の部位に設けられるとともに、前記センサチップ(10)の一面の外周にて当該一面の内周を囲むように環状に配置されており、
前記アンダーフィル樹脂(30)または前記基板(20)には、前記センサチップ(10)の前記一面と前記基板(20)との間の前記アンダーフィル樹脂(30)で囲まれた空間と外部とを連通させるリーク孔(40、41)が設けられていることを特徴とするセンサ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−186770(P2010−186770A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28185(P2009−28185)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】