説明

ゼンマイ駆動機構

【課題】初期状態からの使用期間の経過に応じ、表示などの動作や強制的に運転を停止する動作をなすことのできる機構を備えたゼンマイ駆動機構を提供する。
【解決手段】巻き締められたゼンマイばね11が伸びる際に発する駆動力を、出力軸4から回転運動として取り出すことのできるゼンマイ駆動機構において、ゼンマイばね11を巻き締めることによって上記の駆動力を蓄えることができ、この駆動力の放出により回転運動がなされる駆動手段1と、出力軸へ上記の回転運動を伝達する伝達手段2と、上記の伝達に当たり、回転運動を増減速可能な調速手段3とを備えたものであり、上記の各手段1〜3に加え、駆動手段1の回転運動を受けて、一定周期毎にステップ動作をなすことのできるステップ手段5を備えたことを特徴とする、ゼンマイ駆動機構を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ゼンマイばねを用いて駆動力を出力することのできるゼンマイ駆動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】登録実用新案第3085084号公報
【特許文献2】特開2004−190581号公報
【0003】
従来から、ゼンマイばねの付勢力を駆動力として利用した駆動機構は広く利用されている。例えば、特許文献1に記載の考案のように、ミニカーなどの走行させて遊ぶための玩具に組み込んで用いる駆動装置が存在している。これは、ミニカーの車輪を走行方向とは逆に回すことにより、ゼンマイばねを巻き締め、これによってゼンマイばねに蓄積された駆動力を解放させた際に、車輪を走行方向に回動させることができるものである。
【0004】
また、特許文献2にあっては、ゼンマイと制動部とを有するゼンマイ機構において、被動体との接続態様の自由度を広げるとともに、機構のコンパクト化を図ったゼンマイ駆動機構が提案されている。ところが、いずれのものにあっても、ゼンマイから駆動力を取り出すに止まり、同時にゼンマイのエネルギーを他の用途に用いる機構を提案するものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、ゼンマイから駆動力を取り出すに止まらず、同時にゼンマイのエネルギーを他の用途に用いることができる機構を提供せんとするものである。
【0006】
より具体的には、一つの主たる用途にゼンマイの駆動力を使用する場合にあって、使用期間の経過を示す機構や、使用回数によってゼンマイの駆動を停止できる機構があると便利な場合がある。
【0007】
上記のことに鑑み、本願発明は、ゼンマイの主たる駆動力の出力とは別に、例えば、表示などの動作をさせたり、強制的にゼンマイ駆動による運転を停止する動作など、補助的な動作を、初期状態からの使用期間の経過に応じてなすことのできる機構を備えたゼンマイ駆動機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、巻き締められたゼンマイばね11が伸びる際に発する駆動力を、出力軸4から回転運動として取り出すことのできるゼンマイ駆動機構において、ゼンマイばね11を巻き締めることによって上記の駆動力を蓄えることができ、この駆動力の放出により回転運動がなされる駆動手段1と、出力軸へ上記の回転運動を伝達する伝達手段2と、上記の伝達に当たり、回転運動を増減速可能な調速手段3とを備えたものであり、上記の各手段1〜3に加え、駆動手段1の回転運動を受けて、一定周期毎にステップ動作をなすことのできるステップ手段5を備えたことを特徴とする、ゼンマイ駆動機構を提供する。
【0009】
また、本願の請求項2に記載の発明は、上記各手段1〜3の回転運動の伝達がギアによりなされたものであり、上記のステップ手段5は、少なくとも、部分ギア52bとステップ動作ギア54とを備えたものであって、部分ギア52bは、駆動手段1の回転運動の伝達を受けて回転するものであり、かつ、部分ギア52bが1回転するうちの所定範囲でのみ、ステップ動作ギア54に回転運動の伝達がなされるものであることを特徴とする、請求項1に記載のゼンマイ駆動機構を提供する。
【0010】
また、本願の請求項3に記載の発明は、上記のステップ手段5は、第1伝達ギア51と、ステップ発生ギア52と、第2伝達ギア53と、上記ステップ動作ギア54との各ギアにより構成されたものであって、上記の順で各ギアが噛み合うことで、回転運動の伝達がなされるものであり、ステップ発生ギア52は、従動ギア52aと上記の部分ギア52bとを備え、各ギア52a,52bが連動するものであり、従動ギア52aは全周に歯が形成されており、部分ギア52bは、上記一定周期毎のステップ動作に対応して、第2伝達ギア53と噛み合う範囲にのみ歯が形成されており、ステップ動作ギア54は、このステップ動作ギア54の動作と連動して、駆動手段1の累積回転回数が所定値に達したことを示す表示55a,55b,55cをなすものであり、この表示55a,55b,55cは、ステップ動作ギア54の上記回転運動の伝達による回転と共に、順次移動するものであり、第1伝達ギア51は、駆動手段1においてゼンマイばね11の駆動力を受けて回転運動する駆動ギア13の回転運動を、ステップ発生ギア52のうちの従動ギア52aに伝達するものであり、第2伝達ギア53は、ステップ発生ギア52の回転運動を、上記の部分ギア52bの歯と噛み合った際にのみ、ステップ動作ギア54に伝達するものであることを特徴とする、請求項2に記載のゼンマイ駆動機構を提供する。
【0011】
また、本願の請求項4に記載の発明は、制動手段6が設けられたものであって、上記の制動手段6は、ステップ動作ギア54と少なくとも一方の回転方向において連動するカム61と、カム61と、駆動手段1、伝達手段2、調速手段3のいずれかの一部とを直接的あるいは間接的に連結する制動部材62とを備えたものであり、制動部材62は、上記のように駆動ギア13の累積回転回数が所定値に達した際に、上記のカム61によって移動させられることで、上記手段1〜3の一部に対し、制動作用を及ぼすことを特徴とする、請求項2または3に記載のゼンマイ駆動機構を提供する。
【0012】
また、本願の請求項5に記載の発明は、上記の制動部材62の、一端に上記のカム61に押圧される受動部62aが、他端に伝達手段2を構成する伝達ギアの歯に噛み合うことのできる歯を有する噛合部62bが、中間に支点62cが設けられたことを特徴とする、請求項4に記載のゼンマイ駆動機構を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1に記載の発明は、駆動手段1の回転運動を受けて、一定周期毎にステップ動作をなすことのできるステップ手段5を備えたことにより、ゼンマイの主たる駆動に加えて、例えば初期状態からの使用期間の経過に応じた動作をなすことのできるゼンマイ駆動機構を提供することができたものである。
【0014】
また、本願の請求項2に記載の発明は、上記の効果に加え、部分ギア52bが1回転するうちの所定範囲でのみ、ステップ動作ギア54に回転運動の伝達がなされるものとすることにより、比較的簡易な構造でステップ動作をなすことができるゼンマイ駆動機構を提供することができたものである。
【0015】
また、本願の請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、駆動手段の累積回転回数が所定値に達したことを表示することができるゼンマイ駆動機構を提供することができたものである。これにより、使用者に、累積回転回数を知らせることができたり、何らかの注意を与えたりする機能をゼンマイ駆動機構に付与することができたものである。
【0016】
また、本願の請求項4または5に記載の発明は、上記請求項2または3に記載の発明の効果に加え、駆動ギア13の累積回転回数が所定値に達した際に、上記のカム61によって移動させられることで、駆動手段1、伝達手段2、調速手段3のいずれかの一部に対し、制動作用を及ぼすことにより、その駆動を自動的に停止させるなどの制動機能を付加したゼンマイ駆動機構を提供することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態の一例をとりあげて説明する。図1及び図2は、本例のゼンマイ駆動機構の構成を示す図である。なお、図示したものは、駆動に直接関係する要素のみを抜き出したものであって、ケーシングや、出力軸に接続される被駆動部分の記載を省略している。
【0018】
本例のゼンマイ駆動機構は、駆動手段1、伝達手段2及び調速手段3、出力軸4、そして、ステップ手段5、制動手段6を備える。
【0019】
駆動手段1は駆動源としてのゼンマイばね11を備えたものである。このゼンマイばね11はハンドル12により巻き締めることが可能なものとされており、このように巻き締めることによって駆動力が蓄えられる。なお、ゼンマイばね11を巻き締めるための手段は、本例のようなハンドル12に限られず、ケーシングの一部を回転可能としておき、この部分を回転させるものとしても良く、種々の形態で実施が可能である。
【0020】
ゼンマイばね11が巻き締められることにより蓄えられた駆動力は、ゼンマイばね11が元の状態へと戻ろうとして伸びる際に放出される。なお、本例のゼンマイ駆動機構ではゼンマイばね11を完全に巻き締めた状態において、1時間程度かけて駆動力が放出されるものとされている。
また、このゼンマイばね11と一体に駆動ギア13が設けられている。本例では、この駆動ギア13として平歯車が用いられており、上記の駆動力を受けて回転運動をする。
【0021】
上記駆動手段1の回転運動は、駆動ギア13から伝達手段2を介して出力軸4に伝達される。本例における伝達手段2は、駆動ギア13の回転運動を増減速し、出力軸4の回転数を使用目的に応じた適切な値に調整するための調速手段3も兼ねたものとされている。
本例における伝達手段2及び調速手段3は、種々の径を有するギアが組み合わされたものとされている。具体的には、各々小径のギアと大径のギアとが一体とされたものであって、第1伝達ギア21、第2伝達ギア22、第3伝達ギア23の3つのギアからなる。ここで、入力側のギアは小径、出力側のギアは大径とされており、駆動ギア13、第1伝達ギア21、第2伝達ギア22、第3伝達ギア23、出力軸4の順に回転運動が伝達されるうちに増速される。
【0022】
また、出力軸4は、図示はしないが、回転エネルギーを必要とする他の部材や要素などの種々の被駆動部分に接続される。
【0023】
なお、駆動手段1や伝達手段2及び調速手段3には、フライホイールやクラッチなどを付加することで、各手段1〜3における回転運動を増強したり途中で切断可能なものとしても良い。また、本例のゼンマイ駆動機構では、ギア(平歯車)の噛み合わせによって回転運動が伝達されるものであるが、これに限らず、ベルトやチェーン、ローラーによって伝達されるものであっても良い。
【0024】
次に、特に被駆動部分に、回転運動を与えた回数や時間を計数し、また、表示することができるようにしておくことが、駆動機構を種々の用途に用いる場合に便利である。そこで、本例においてはステップ手段5を備えたことにより、これを実現するものとし、また同時に、制動手段6を設けることにより、伝達手段2の回転運動を停止するものとしている。
【0025】
本例のステップ手段5は、駆動手段1の回転運動を受けて、一定周期毎にステップ動作をなすものである。このステップ手段5は、第1伝達ギア51と、ステップ発生ギア52と、第2伝達ギア53と、ステップ動作ギア54の各ギアにより構成されたものであり、駆動手段1における駆動ギア13の回転運動が、第1伝達ギア51、ステップ発生ギア52、第2伝達ギア53、ステップ動作ギア54の順に伝達がなされる。
【0026】
上記のステップ発生ギア52は、従動ギア52aと部分ギア52bとが一体とされたものである。なお、この従動ギア52aと部分ギア52bとは、連動する関係にあれば良く、必ずしも本例のように一体でなくても良い。本例では、図2に示すように、ステップ発生ギア52が厚み方向において二つの領域に分けられたものであって、図示下方側の領域が従動ギア52a、図示上方側の領域が部分ギア52bとされている。従動ギア52aの外周には全周に歯が形成されている。これに対して、部分ギア52bの外周には一部にのみ歯が形成されている。
【0027】
そして、本例における第1伝達ギア51と第2伝達ギア53とは、同一軸線上に形成されたものであるが、各々別個に回転可能なものとされている。第1伝達ギア51は、駆動ギア13の回転運動を従動ギア52aに伝達するものである。そして、第2伝達ギア53は、部分ギア52bの回転運動をステップ動作ギア54に伝達するものである。
【0028】
ここで上記のように、部分ギア52bは一部にのみ歯が形成されているに止まるため、この歯と第2伝達ギア53の歯とが噛み合った際にのみ回転運動の伝達がなされる。また、ステップ動作ギア54は、第2伝達ギア53の回転運動が伝達されて回転するものである。よって、部分ギア52bが1回転するうちの所定範囲において、部分ギア52bの歯と第2伝達ギア53の歯とが噛み合った場合にのみ、ステップ動作ギア54に回転運動の伝達がなされる。これがすなわちステップ動作である。このような部分ギア52bによる構成を採用することにより、比較的簡易な構造でステップ動作をなすことができる。
【0029】
本例のステップ動作ギア54には、図示上方に表示板55が重ねて配位されている。この表示板55は、ステップ動作ギア54と連動して、駆動手段1の累積回転回数が所定値に達したことを示す表示55a,55b,55cがされたものである。詳しくは、図1に示すように、最終段階表示55aとして例えば赤色の表示、事前案内表示55bとして例えば黄色の表示、通常段階表示55cとして例えば青色の表示が、表示板55の表面に付されており、上記のステップ動作ギア54のステップ動作(回転)に伴い、表示板55が連動し、これらの表示55a,55b,55cがケーシングに設けられた表示窓(図示しない)に現れるものとされているが、回転回数を示す数字を順に記載してもよく、その表示形態は種々変更して実施し得る。
このステップ動作ギア54と表示板55との連動は、両者を固定してしまうものでもよいが、この例では、ラチェット構造などの介在により、ステップ動作ギア54が図示反時計回りの回転をしている際には連動するが、表示板55だけを図示反時計回りの回転させてもステップ動作ギア54が連動しないものとされている。
なお、本例では、後述する制動手段6との関係で、ステップ動作ギア54とは別に表示板55が設けられたものとしたが、これに限られず、ステップ動作ギア54の表面に直接、上記の表示55a,55b,55cが付されたものであっても良い。
【0030】
なお、上記のステップ動作は、例えば最終的な表示が必要な時間がx時間であり、ゼンマイばね11を一度巻き締めてから伸び切るまでの運転時間がy時間である場合は、初期状態から上記の表示のうちで最終段階表示55aが現れるまでの、ステップ動作ギア54の回転角度に対してy/xだけの角度分のステップ動作がなされ、駆動手段1の累積使用時間がxに達した際に、上記の最終段階表示55a(赤色)が示される。またそれに先立ち事前案内表示55b(黄色)が示される。
【0031】
本例におけるステップ発生ギア52の部分ギア52bは、概略図である図3(A)(B)に示すように、従動ギア52aに対して略同径であって、外周の歯の構成を変えたものとしたが、形態はこれに限られるものではなく、例えば、図3(C)(D)に示すように、平歯車である従動ギア52aの一方側の面に歯だけを設け、この部分を部分ギア52bとして機能させても良い。つまり、部分ギア52bは必ずしも円盤状のものでなくても良く、扇状やその他種々の形態での実施が可能である。
【0032】
次に、制動手段6について説明する。この制動手段6は、上記のように所定累積回数に達した場合に、ゼンマイ駆動機構の運転を強制的に停止させるためのものである。この制動手段6は、ステップ動作ギア54に対応して少なくとも一方の回転方向(図示反時計回り)に連動するカム61と、カム61と伝達手段2とを連結する制動部材62とを備えたものである。本例では、上記の表示板55に一体に設けられているが、独立して単独に設けることもできる。
【0033】
カム61は、図1に示すように、一部が径方向に突出した突出部61aを有するものである。また、制動部材62は、上記のように駆動ギア13の累積回転回数が所定値に達した際に、上記のカム61の突出部61aによって押圧され、伝達手段2の一部に当接するものである。本例では、図1に示すように、制動部材62がアーム状の形態を有しており、一端がカムに当接する受動部62aとされており、他端が、伝達部材2を構成するギアのうち、第3伝達ギア23の歯に噛み合い可能な歯が形成された噛合部62bとされている。そして、中間には支点62cが形成されている。この支点62cには、図示はしないがばねが組み込まれており、受動部62aがカム61の表面に当接し、かつ、噛合部62bが第3伝達ギア23とは離れる方向に、制動部材62を常時付勢している。
【0034】
上記の構成により、ステップ動作ギア54がステップ動作により段階的に回転していくと、カムの突出部61aにより、制動部材62の受動部62aが順次押圧される。すると、支点62cの存在により制動部材62が梃子状の動作をなす。そして、駆動ギア13の累積回転回数が所定値に達した際には、噛合部62bに形成された歯が、第3伝達ギア23の歯に噛み合い、回転を止める。これにより、噛合部62bが第3伝達ギア23の歯に噛み合い、強制的に伝達手段2の回転を停止させることができる。
【0035】
ここで、本例のゼンマイ駆動機構における、ステップ手段5と制動手段6との関係を、図4と共に説明する。
まず、運転開始時は図4(A)に示す状態である。この際、表示板55はステップ動作ギア54のステップ動作R1に連動して、図示矢印方向にステップ動作R2をなす。この際には制動部材62の噛合部62bと第3伝達ギア23とは離れている。また、表示板55の表示は通常段階表示55c(青色)から事前案内表示55b(黄色)へと順次移行する。
【0036】
そして、ステップ動作ギア54に連動して表示板55が最終段階表示55a(赤色)を示すところまで回転すると、上記に説明した通り、制動手段6が作動して伝達手段2の回転を停止させる(図4(B)参照)。
【0037】
上記の制動状態を解除するには、図4(C)に示すように、表示板55を図示反時計回りR3に強制的に回転させ、運転開始時の位置に戻す。この際、カム61は表示板55と一体に形成されたものであるため、カム61も回転する。これにより、カム61の突出部61aによる制動部材62の受動部62aの押圧が解除され、伝達手段2の回転が可能な状態に復帰し、図4(A)に示した状態に戻る。なお、ステップ動作ギア54と表示板55との間にはラチェット構造などが介在することから、上記のように表示板55を回転させた際にもステップ動作ギア54は連動しない。
【0038】
上記に説明したように、本例の制動手段6は、伝達手段2の動作を停止させるものであるが、制動部材62を、駆動手段1、伝達手段2、調速手段3のいずれかの一部とを直接的あるいは間接的に連結するものとし、各手段1〜3のいずれかに制動作用を及ぼすものとしても良い。また、制動作用は本例のように即時になされるものであっても良いし、表示板55が最終段階表示55a(赤色)を示してから後に、遅れてなされるものであっても良い。
【0039】
また、例えば、制動部材62が、ハンドル12を回転できないように固定することで制動作用をなすことが考えられる。この場合は、次回のハンドル12の回転ができなくなるにすぎず、既に巻かれたゼンマイばね11が完全に伸び切るまでは運転が継続される。そして、次回はハンドル12の固定状態を解除しない限り、ゼンマイばね11を巻き締めることができず、運転を継続することができない。なお、この場合、表示板55が回転し続けると、最終段階表示55aが窓から隠れて見えなくなってしまう可能性があるため、最終段階表示55aが示された後においては、表示板55とステップ動作ギア54あるいは第2伝達ギア53との間が空回りすること等により、表示板55の回転を停止させる機構を備えたものとすることが望ましい。
【0040】
また、本例のゼンマイ駆動機構では、上記のように、ステップ手段5が累積回転回数に応じた表示などを示し、それと共に制動手段6を動作させるものとしたが、これに限られるものではなく、上記の表示か制動手段6の動作かのいずれかのみをステップ手段5により行うものとしても良い。この表示のみを行う場合の例を図5に示す。
【0041】
この実施例では、カム61や制動部材62は設けられておらず、表示板55の外周に突出するようにストッパー突起71が設けられ、このストッパー突起71に当接可能な当接部72がケーシングなどに設けられたものである。なお、この実施例においても、ラチェット構造などの介在により、ステップ動作ギア54と表示板55とは別個に回転可能とされている。
【0042】
まず、運転開始からしばらく経過した状態を図5(A)に示す。この状態では、図4(A)に示したものと同様に、表示板55はステップ動作ギア54のステップ動作R4に連動して、図示矢印方向にステップ動作R5をなす。ストッパー突起71も同じくステップ動作R5をなす。
【0043】
そして、ステップ動作ギア54に連動して表示板55が最終段階表示55a(赤色)を示すところまで回転すると、ストッパー突起71が当接部72に当接して、表示板55の回転が停止する(図5(B)参照)。ただし、この実施例では、図4に示した実施例とは異なり、表示板55の回転が停止した状態でも、駆動手段1のゼンマイばねが伸び切るまでステップ動作ギア54のステップ動作R4は継続する。
【0044】
次に運転を開始する際には、表示板55を図示時計回りR5に強制的に回転させ、図5(C)に示す状態とする。この際においても、表示板55とステップ動作ギア54とは連動しない構造としておくことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本願発明の実施の形態の一例に係るゼンマイ駆動機構の構成を示す斜視図である。
【図2】同ゼンマイ駆動機構の構成を示す側面図である。
【図3】(A)はステップ発生ギアの一実施形態の概略平面図であり、(B)は同概略側面図である。(C)はステップ発生ギアの他の実施形態の概略平面図であり、(D)は同概略側面図である。
【図4】(A)〜(C)共、同ゼンマイ駆動機構の動作を示す説明図である。
【図5】(A)〜(C)共、本願発明の他の実施の形態の一例に係る同ゼンマイ駆動機構の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 駆動手段
11 ゼンマイばね
13 駆動ギア
2 伝達手段
3 調速手段
4 出力軸
5 ステップ手段
51 第1伝達ギア
52 ステップ発生ギア
52a 従動ギア
52b 部分ギア
53 第2伝達ギア
54 ステップ動作ギア
55a 最終段階表示
55b 事前案内表示
55c 通常段階表示
6 制動手段
61 カム
62 制動部材
62a 受動部
62b 噛合部
62c 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き締められたゼンマイばね(11)が伸びる際に発する駆動力を、出力軸(4)から回転運動として取り出すことのできるゼンマイ駆動機構において、
ゼンマイばね(11)を巻き締めることによって上記の駆動力を蓄えることができ、この駆動力の放出により回転運動がなされる駆動手段(1)と、
出力軸へ上記の回転運動を伝達する伝達手段(2)と、
上記の伝達に当たり、回転運動を増減速可能な調速手段(3)とを備えたものであり、
上記の各手段(1〜3)に加え、駆動手段(1)の回転運動を受けて、一定周期毎にステップ動作をなすことのできるステップ手段(5)を備えたことを特徴とする、ゼンマイ駆動機構。
【請求項2】
上記各手段(1〜3)の回転運動の伝達がギアによりなされたものであり、
上記のステップ手段(5)は、少なくとも、部分ギア(52b)とステップ動作ギア(54)とを備えたものであって、
部分ギア(52b)は、駆動手段(1)の回転運動の伝達を受けて回転するものであり、
かつ、部分ギア(52b)が1回転するうちの所定範囲でのみ、ステップ動作ギア(54)に回転運動の伝達がなされるものであることを特徴とする、請求項1に記載のゼンマイ駆動機構。
【請求項3】
上記のステップ手段(5)は、第1伝達ギア(51)と、ステップ発生ギア(52)と、第2伝達ギア(53)と、上記ステップ動作ギア(54)との各ギアにより構成されたものであって、
上記の順で各ギアが噛み合うことで、回転運動の伝達がなされるものであり、
ステップ発生ギア(52)は、従動ギア(52a)と上記の部分ギア(52b)とを備え、各ギア(52a,52b)が連動するものであり、
従動ギア(52a)は全周に歯が形成されており、
部分ギア(52b)は、上記一定周期毎のステップ動作に対応して、第2伝達ギア(53)と噛み合う範囲にのみ歯が形成されており、
ステップ動作ギア(54)は、このステップ動作ギア(54)の動作と連動して、駆動手段(1)の累積回転回数が所定値に達したことを示す表示(55a,55b,55c)をなすものであり、この表示(55a,55b,55c)は、ステップ動作ギア(54)の上記回転運動の伝達による回転と共に、順次移動するものであり、
第1伝達ギア(51)は、駆動手段(1)においてゼンマイばね(11)の駆動力を受けて回転運動する駆動ギア(13)の回転運動を、ステップ発生ギア(52)のうちの従動ギア(52a)に伝達するものであり、
第2伝達ギア(53)は、ステップ発生ギア(52)の回転運動を、上記の部分ギア(52b)の歯と噛み合った際にのみ、ステップ動作ギア(54)に伝達するものであることを特徴とする、請求項2に記載のゼンマイ駆動機構。
【請求項4】
制動手段(6)が設けられたものであって、
上記の制動手段(6)は、ステップ動作ギア(54)と少なくとも一方の回転方向において連動するカム(61)と、
カム(61)と、駆動手段(1)、伝達手段(2)、調速手段(3)のいずれかの一部とを直接的あるいは間接的に連結する制動部材(62)とを備えたものであり、
制動部材(62)は、上記のように駆動ギア(13)の累積回転回数が所定値に達した際に、上記のカム(61)によって移動させられることで、上記手段(1〜3)の一部に対し、制動作用を及ぼすことを特徴とする、請求項2または3に記載のゼンマイ駆動機構。
【請求項5】
上記の制動部材(62)の、一端に上記のカム(61)に押圧される受動部(62a)が、他端に伝達手段(2)を構成する伝達ギアの歯に噛み合うことのできる歯を有する噛合部(62b)が、中間に支点(62c)が設けられたことを特徴とする、請求項4に記載のゼンマイ駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−16709(P2007−16709A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199852(P2005−199852)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(392005469)モリテックスチール株式会社 (12)
【Fターム(参考)】