説明

ソレノイドの通電制御装置

【課題】ソレノイドに流れる電流を検出するタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとのずれを抑制可能なソレノイドの通電制御装置を提供する。
【解決手段】ソレノイドの通電制御装置100は、ソレノイド50に流れる電流の電流値の取得用の電流取得用タイマ10と、当該電流取得用タイマ10の計数結果に基づいて、ソレノイド50の通電を制御するスイッチング素子51を駆動するPWM信号の1周期内において予め設定された回数だけ電流値を取得する電流値取得部11と、PWM信号の出力用のPWM制御用タイマ20と、1周期内に取得された電流値に基づき、次の1周期にスイッチング素子51に通電する通電時間を設定し、当該設定した通電時間に応じたPWM信号を出力するPWM制御部21と、PWM制御用タイマ20の計時結果に基づき、電流取得用タイマ10の計時値を更新する計時値更新部41と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドの電流を制御する通電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁の開閉制御やアクチュエータの駆動にソレノイドが利用されている。このようなソレノイドの通電制御はPWM制御により行われる。このような技術として下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の電流制御装置は、検出手段と、A/D変換手段と、制御手段と、平均電流演算手段とを備えて構成される。検出手段は一定周期で生成されたPWM信号にて通電制御されるソレノイドに実際に流れた電流を検出する。A/D変換手段は予め設定されたA/D変換周期毎に、検出手段により検出結果をデジタル値に変換する。制御手段はA/D変換手段によりデジタル値に変換された検出電流値が目標電流値となるようにPWM信号のデューティ比を制御する。平均電流演算手段は検出電流値をPWM信号の所定周期分だけ取り込み、当該取り込んだ検出電流値を算術平均することにより、所定周期内の平均電流値を算出する。電流制御装置は算出された平均電流値と目標電流値とに基づきPWM信号のデューティ比を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−308107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、平均電流演算手段は専用の発振子にて生成されたクロック信号に基づき動作する。また、A/D変換手段及び制御手段は、このクロック信号とは異なる別の発振子にて生成されたクロック信号に基づき動作する。すなわち、A/D変換手段及び制御手段は同一の発振子からのクロック信号により同期して動作し、平均電流演算手段はA/D変換手段及び制御手段とは異なる発振子からのクロック信号により、A/D変換手段及び制御手段とは非同期に動作する。このため、A/D変換手段及び制御手段のクロック信号が、平均電流演算手段のクロック信号の整数倍にならない場合には、ソレノイドに流れた電流を検出するタイミングや当該検出された電流に係る電流値をA/D変換をするタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとがずれる可能性がある。したがって、適切にソレノイドの通電を行うことができなくなる。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ソレノイドに流れる電流を検出するタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとのずれを抑制し、適切にソレノイドの通電を行うことが可能なソレノイドの通電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るソレノイドの通電制御装置の特徴構成は、
ソレノイドに流れる電流の電流値を取得するタイミングを規定する時間を計時する電流取得用タイマと、
前記電流取得用タイマの計数結果に基づいて、前記ソレノイドの通電を制御するスイッチング素子を駆動するPWM信号の1周期内において予め設定された回数だけ前記電流値を取得する電流値取得部と、
前記PWM信号を出力するタイミングを規定する時間を計時するPWM制御用タイマと、
前記1周期内に取得された電流値に基づき、次の1周期に前記ソレノイドに通電する電流値を演算すると共に、当該演算された電流値に基づき前記次の1周期に前記スイッチング素子に通電する通電時間を設定し、前記PWM制御用タイマの計時結果に基づいて前記設定した通電時間に応じたPWM信号を出力するPWM制御部と、
前記PWM制御用タイマの計時結果に基づき、前記電流取得用タイマの計時値を更新する計時値更新部と、
を備えている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、PWM制御用タイマを基準に電流取得用タイマを調整することができる。したがって、ソレノイドに流れる電流を検出するタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとのずれを抑制することができるので、適切にソレノイドの通電を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記計時値更新部は、前記PWM制御用タイマの計時結果が前記PWM信号を出力するタイミングを規定する値になった場合に、前記電流取得用タイマの計時値を予め設定された値に更新すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、PWM信号の周期毎に、当該PWM制御用タイマに同期して電流用取得タイマの計時値を調整することができる。したがって、ソレノイドに流れる電流を検出するタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとのずれを抑制することができる。
【0011】
或いは、前記PWM制御用タイマは、前記PWM信号の1周期を規定する時間も計時し、前記計時値更新部は、前記PWM制御用タイマの計時結果が前記PWM信号の1周期を前記電流値が取得される回数で等分した値になった毎に、前記電流取得用タイマの計時値を予め設定された値を用いて演算した値に更新する構成としても良い。
【0012】
このような構成とすれば、ソレノイド電流の検出を行う毎に、当該PWM制御用タイマに同期して電流用取得タイマの計時値を調整することができる。したがって、ソレノイドに流れる電流を検出するタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとのずれを抑制することができる。
【0013】
また、前記スイッチング素子の通電時間を設定する電流制御期間が、前記計時値更新部により短縮されないように構成されてあると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、確実に電流制御期間を設けることができるので、ソレノイドの通電制御を適切に行うことが可能となる。
【0015】
また、前記PWM信号の1周期内における最終の電流値が取得されてから、前記PWM信号の次の1周期内における最初の電流値が取得されるまでに、前記PWM信号の次の1周期に前記ソレノイドに通電する電流値が演算されると共に、前記PWM信号の次の1周期に前記スイッチング素子に通電する通電時間が設定され、前記PWM信号の次の1周期が開始される構成とすると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、ソレノイドに流れる電流を検出するタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとのずれを抑制しつつ、スイッチング素子に通電する通電時間を設定することが可能となる。したがって、ソレノイドの通電制御を適切に行うことができる。
【0017】
また、前記PWM信号の1周期内において前記電流値取得部が前記電流値を取得する回数をカウントする回数カウント部が備えられ、前記PWM制御部は、前記PWM信号の1周期内に前記電流値の取得回数が予め設定された回数に満たない場合、前記PWM信号の次の1周期に前記スイッチング素子に通電する通電時間を、今回と同じ通電時間に設定すると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、予め設定された回数だけ電流値が取得できず、次のPWM信号の周期でソレノイドに通電する電流が演算できない場合であっても、次の1周期に暫定的にスイッチング素子に通電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ソレノイドの通電制御装置の概略構成を模式的に示した図である。
【図2】ソレノイドの通電制御に係るタイムチャートである。
【図3】第1の実施形態に係る計時値の補正について模式的に示した図である。
【図4】第1の実施形態に係る計時値の補正について模式的に示した図である。
【図5】第1の実施形態に係る計時値の補正について模式的に示した図である。
【図6】第1の実施形態に係る計時値の補正に関するフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係る計時値の補正について模式的に示した図である。
【図8】第2の実施形態に係る計時値の補正に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係るソレノイドの通電制御装置(以下「通電制御装置」とする)100は、ソレノイドに流れる電流の電流値を取得するタイミングと、ソレノイドの通電を制御するPWM信号を出力するタイミングとを同期させる機能を備えている。このようなソレノイドは、例えば電磁弁の開閉制御やアクチュエータの駆動に利用される。本通電制御装置100は、このようなソレノイドを制御対象とする。
【0021】
〔第1の実施形態〕
本通電制御装置100の第1の実施形態について説明する。図1にはソレノイド50の通電を制御する通電制御装置100の構成が模式的に示される。図2には通電制御装置100による処理のタイムチャートの一例が示される。図1に示されるように、通電制御装置100は、電流取得用タイマ10、電流値取得部11、PWM制御用タイマ20、PWM制御部21、回数カウント部31、計時値更新部41の各機能部を備えて構成される。各機能部はCPUを中核部材としてソレノイド50に通電する種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0022】
電流取得用タイマ10は、ソレノイド50に流れる電流の電流値を取得するタイミングを規定する時間を計時する。詳細は後述するが、後述する電流値取得部11は、図2(c)に示されるように、所定の周期TI毎にソレノイド50に流れる電流を検出する。電流取得用タイマ10は、この所定の周期TIに対応する周波数で時間を計時するタイマに相当する。本実施形態では、電流取得用タイマ10は、図2(b)に示されるように、所定の周期TIで、計時値を所定の値(例えば「XI」)から0まで減じながら計時する。計時値が0になると、リセットされ、改めて前記所定の値から0まで減じながら計時する。電流取得用タイマ10は、このような計時を繰り返し行う。
【0023】
電流値取得部11は、電流取得用タイマ10の計数結果に基づいて、ソレノイド50の通電を制御するスイッチング素子51を駆動するPWM信号の1周期内において予め設定された回数だけ電流値を取得する。ソレノイド50は、一端にスイッチング素子51が接続され、他端は電源Vに接続される。スイッチング素子51は、例えばFETを用いて構成することが可能である。この場合、ソース端子は接地され、ドレーン端子にソレノイド50が接続される。ゲート端子には、後述するPWM制御部21から所定の周波数からなるPWM信号が伝達される。これにより、スイッチング素子51が駆動される。
【0024】
電流値取得部11に接続された電流検出部11Aは、ソース端子とアースとの間に設けられる。これにより、スイッチング素子51がオン状態となった際にソレノイド50に流れる電流を検出することが可能となる。このようなソレノイド50に流れる電流が図2(a)に示される。
【0025】
電流検出部11Aは、PWM信号の1周期(図2(g)の「TP」)内において、予め設定された回数だけ電流値を検出する。このような電流値の検出の周期が、上述の電流取得用タイマ10の周期TIに相当する。本実施形態ではPWMの1周期内において電流値を検出する回数は4回とする。このように検出された4回分の電流値は、検出の都度、電流値取得部11に伝達される。電流値取得部11では検出された電流値をA/D変換し、デジタル変換された電流値を取得する。
【0026】
なお、PWM信号の1周期内において電流値取得部11が電流値を取得する回数は、回数カウント部31によりカウントされる。このような取得回数は、図2(d)に示される。回数カウント部31により4回までカウントされると、カウント値はリセットされ、改めて1回からカウントする。
【0027】
PWM制御用タイマ20は、PWM信号を出力するタイミングを規定する時間を計時する。上述のようにPWM信号は所定の周波数を有する。本実施形態では、詳細は後述するがPWM制御部21は、図2(g)に示されるように、所定の周期TPに対応する周波数からなるPWM信号を出力する。PWM制御用タイマ20は、PWM信号のオンデューティからオフデューティに切り替えるまでの時間、及びオフデューティからオンデューティに切り替えるまでの時間を計時するタイマに相当する。本実施形態では、電流取得用タイマ10は、図2(e)に示されるように、PWM信号のオンデューティからオフデューティに切り替えるまでの時間を所定の値(例えば「XP1」)から0まで減じながら計時した後、オフデューティからオンデューティに切り替えるまでの時間を所定の値(例えば「XP2」)から0まで減じながら計時する。PWM制御用タイマ20は、このような計時を繰り返し行う。
【0028】
PWM制御部21は、PWM信号の1周期内に取得された電流値に基づき、PWM信号の次の1周期にソレノイド50に通電する電流値を演算すると共に、当該演算された電流値に基づき次の1周期にスイッチング素子51に通電する通電時間を設定し、PWM制御用タイマ20の計時結果に基づいて設定した通電時間に応じたPWM信号を出力する。上述のように、電流値取得部11は、PWM信号の1周期内において4回、デジタル変換された電流値を取得する。PWM制御部21は、この4回分の電流値を使ってPWM信号の次の1周期においてソレノイド50に通電する電流値を演算する。この演算は、ソレノイド50により開弁される電磁弁の開度や、アクチュエータの駆動指令値に基づき行われる。このような演算は、公知であるので説明は省略する。
【0029】
PWM制御部21は、このように演算して求めた電流値により通電時間を設定する。この通電時間は、PWM信号のオンデューティに相当する。PWM制御部21は、PWM制御用タイマ20の計時結果(オフデューティからオンデューティに切り替えるまでの時間の計時値)が0になった時点がPWM信号の出力タイミングに相当し(図2(f)参照)、PWM信号をローレベルからハイレベルに切り替える(図2(g)参照)。
【0030】
ここで、図2に示されるように、PWM信号の周期(周期TP)と、ソレノイド電流を取得する周期(周期TI)とは異なり、位相もずれている。このような位相のずれは、ソレノイド50の仕様上、ゼロにすることはできない。しかしながら、位相のずれはソレノイド50に通電するにあたり、大きくなりすぎても小さくなりすぎても支障がでる場合がある。このため、本通電制御装置100の計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果に基づき、電流取得用タイマ10の計時値を更新する。
【0031】
本実施形態では、計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果がPWM信号を出力するタイミングを規定する値になった場合に、電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値に更新する。ここで、上述のようにPWM制御用タイマ20が計時する周期(周期TP)と、電流取得用タイマ10が計時する周期(周期TI)とは、位相のずれがあり、このずれは予め設定されている。本実施形態ではこのような予め設定された位相のずれをC0とする。PWM信号を出力するタイミングを規定する値になった場合とは、本実施形態では、オフデューティからオンデューティに切り替えるまでの時間の計時値がゼロになった時点である。よって、PWM制御部21は、PWM制御用タイマ20の計時結果において、オフデューティからオンデューティに切り替えるまでの時間の計時値がゼロになった時にPWM信号を切り替える。したがって、計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果がゼロになった場合に、電流取得用タイマ10の計時値をC0に更新する。
【0032】
電流取得用タイマ10の更新について、具体的に図3を用いて説明する。図3は図2のt9の近傍におけるPWM制御用タイマ20の計時値(図3(a)参照)と、電流取得用タイマ10の計時値(図3(b)参照)とを示したものである。ここで、本例ではt9における電流取得用タイマ10の計時値がC1であるとする。PWM制御用タイマ20の計時値(a)がゼロになると(#01)、計時値更新部41は電流取得用タイマ10の計時値を予め設定されてある位相のずれをC0に更新する(#02)。電流取得用タイマ10は、その後、更新されたC0からゼロまで計時する。これにより、電流取得用タイマ10の計時値を、PWM制御用タイマ20の計時値に対して調節することができるので、予め設定されてある位相のずれを維持することが可能となる。
【0033】
また、例えば、図4のように、PWM制御用タイマ20の計時値(a)がゼロになった時の電流取得用タイマ10の計時値がC0よりも小さい場合であっても、PWM制御用タイマ20の計時値(a)がゼロになった時に(#01)、計時値更新部41が電流取得用タイマ10の計時値を予め設定されてある位相のずれをC0に更新する(#02)。これにより、電流取得用タイマ10が、更新されたC0からゼロまで計時するので、予め設定されてある位相のずれを維持することができる。
【0034】
このように、計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時値(a)がゼロになった時の電流取得用タイマ10の計時値が予め設定されたる位相のずれC0と比較することなく更新するので、処理負荷も軽減できる。
【0035】
なお、図5のように、PWM制御用タイマ20の計時値(a)がゼロになった時の電流取得用タイマ10の計時値C1が、たまたまC0であった場合でも、PWM制御用タイマ20の計時値(a)がゼロになった時に(#01)、計時値更新部41が電流取得用タイマ10の計時値を予め設定されてある位相のずれをC0に更新する(#02)構成とすることも可能である。係る場合、位相のずれがC0であるか否かを判定する必要がないので、処理負荷を軽減できる。
【0036】
ここで、図2に戻り、PWM制御部21がPWM信号の次の1周期の電流値を制御するように、スイッチング素子51の通電時間を設定する電流制御期間I0が設けられている。この電流制御期間I0は、ソレノイド50の通電を適切に行うために必要であるので、計時値更新部41により短縮されないように構成されている。したがって、計時値更新部41により電流取得用タイマ10の計時値が更新され、元の値から小さくしても、少なくとも電流制御期間I0を確保することが可能となる。
【0037】
ここで、電流取得用タイマ10の計時値によっては、PWM信号の1周期内において電流値取得部11が電流値を取得する回数が予め設定された回数に満たない場合がある。係る場合には、PWM制御部21は、次の1周期にソレノイド50に通電する電流の電流値を演算することができないので、PWM信号の次の1周期にスイッチング素子51に通電する通電時間を、今回と同じ通電時間に設定する。これにより、次の1周期もとりあえずはソレノイド50に通電することが可能となる。よって、弁が閉じられたままとなったり、アクチュエータが駆動しないといった問題がなくなる。
【0038】
また、本実施形態では、PWM信号の1周期内における最終の電流値が取得されてから、PWM信号の次の1周期内における最初の電流値が取得されるまでに、PWM信号の次の1周期にソレノイド50に通電する電流値が演算されると共に、PWM信号の次の1周期にスイッチング素子51に通電する通電時間が設定され、PWM信号の次の1周期が開始される。すなわち、図2に示されるようにPWM信号の1周期内における最終の電流値が取得されるt6と、PWM信号の次の1周期内における最初の電流値が取得されるt10との間に、次の周期に通電する電流値が演算される電流制御期間I0(t7からt8までの間)が設けられると共に、スイッチング素子51に通電する通電時間が設定され、PWM制御部21により通電が開始される(t9)。
【0039】
次に、本通電制御装置100による処理を図6のフローチャートを用いて説明する。まず、PWM制御部21からPWM信号が出力される(ステップ#01)。この出力は、例えば上位システムからの通電開始命令に基づき行われる。このPWM信号の出力に合わせて、PWM制御用タイマ20が計時を開始する(ステップ#02)。
【0040】
電流検出部11Aは、PWM制御部21によるPWM信号の出力後、所定時間が経過するソレノイド50に流れる電流を検出し、電流値取得部11が検出された電流値に基づきデジタル変換された電流値を取得する(ステップ#03)。回数カウント部31は、電流値取得部11による電流値の取得回数nを1に設定する(ステップ#04)。電流取得用タイマ10は、計時を開始する(ステップ#05)。
【0041】
この時、PWM制御用タイマ20の計時値がゼロであれば(ステップ#06:No)、PWM制御部21は次のPWM信号の周期においてソレノイド50に通電する電流値を、今回の周期においてソレノイド50に通電した電流値に設定する(ステップ#07)。その後、ステップ#01から処理を継続する。
【0042】
ステップ#06において、PWM制御用タイマ20の計時値がゼロでなく(ステップ#06:Yes)、電流取得用タイマ10の計時値がゼロになっていなければ(ステップ#08:No)、処理が保留される。一方、電流取得用タイマ10の計時値がゼロになっていれば(ステップ#08:Yes)、電流値取得部11により電流値が取得される(ステップ#09)。これにより、回数カウント部31は、電流値取得部11による電流値の取得回数nに1を加える(ステップ#10)。
【0043】
回数カウント部31によりカウントされる電流値取得部11による電流値の取得回数nが4でなければ(ステップ#11:No)、電流取得用タイマ10の計時値をリセットする(ステップ#12)。一方、回数カウント部31によりカウントされる電流値取得部11による電流値の取得回数nが4であれば(ステップ#11:Yes)、電流取得用タイマ10の計時値をリセットし、計時を開始する(ステップ#12)。そして、回数カウント部31は、電流値の取得回数nを1に設定する(ステップ#13)。
【0044】
これまでの処理により、PWM信号の1周期において4回分の電流値が取得できたので、PWM制御部21は次の1周期においてソレノイド50に通電する電流値を演算し(ステップ#14)、スイッチング素子51に通電する通電時間を設定する(ステップ#15)。
【0045】
この状態において、PWM制御用タイマ20の計時値がゼロになれば(ステップ#16:Yes)、PWM制御部21はPWM信号を出力する(ステップ#17)。これにより、PWM制御用タイマ20の計時値がリセットされる(ステップ#18)。その後、PWM制御用タイマ20が計時を開始する(ステップ#19)。
【0046】
計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時値がゼロになった際の電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値t0に設定する(ステップ#20)。その後、ステップ#06から処理が継続される。
【0047】
ステップ#16において、PWM制御用タイマ20の計時値がゼロでなく(ステップ#16:No)、電流取得用タイマ10の計時値もゼロでなければ(ステップ#21:No)、処理が保留される。一方、電流取得用タイマ10の計時値もゼロであれば(ステップ#21:Yes)、ステップ#20から処理が継続される。
【0048】
このように本通電制御装置100は、PWM制御用タイマ20を基準に電流取得用タイマ10を調整することができる。したがって、ソレノイド50に流れる電流を検出するタイミングと、PWM信号を出力するタイミングとのずれを抑制することができるので、適切にソレノイド50の通電を行うことが可能となる。
【0049】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明に係る通電制御装置100の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、計時値更新部41が、PWM制御用タイマ20の計時結果がPWM信号を出力するタイミングを規定する値になった場合に、電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値に更新するとして説明した。本実施形態に係る通電制御装置100は、電流取得用タイマ10の計時値を更新するタイミングが上記第1の実施形態と異なる。通電制御装置100の構成は、上記第1の実施形態において示した図1に示した構成と同様であるので説明は省略し、以下では、差異を中心に説明する。
【0050】
本実施形態に係る計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果がPWM信号の1周期を電流値が取得される回数で等分した値になった毎に、更新する。PWM制御用タイマ20は、上述のようにPWM信号を出力するタイミングを規定する時間を計時する。また、本実施形態では、PWM制御用タイマ20は、PWM信号の1周期を規定する時間も計時する。PWM信号の1周期をTPとし、その1周期の中で電流値取得部11によりソレノイド50の電流値が取得される回数を4回とすると、本実施形態に係る計時値更新部41はPWM制御用タイマ20の計時値がTP/4×n倍(ただし、n=1,2,3,4)になる毎に電流取得用タイマ10の計時値を更新する。したがって、本実施形態ではPWM信号の1周期において、電流取得用タイマ10の計時値が4回更新されることになる。なお、PWM信号の1周期は予め設定されているので、容易に演算して求めることができる。
【0051】
また、計時値更新部41は、電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値を用いて演算した値に更新する。本実施形態に係る電流取得用タイマ10の更新について、図7を用いて説明する。図7の最上段には、1周期(周期TP)分のPWM信号が示される。通電制御装置100は、t1でソレノイド50の通電制御を開始したとする。
【0052】
この場合、電流取得用タイマ10は、PWM信号の周期TPの1/4に対応する値(例えば「X1」とする)からゼロまで減じながら計時する。t1から周期TPの1/4が経過しt21に達すると、計時値更新部41はt21の時点において、電流取得用タイマ10が次の期間に計時する値(「X2」とする)を演算する。このX2は以下の(1)式で求められる。
【0053】
【数1】

ただし、C1はt21の時点での電流取得用タイマ10の計時値であり、C0は予め設定されている位相のずれである。また、kは予め設定されたゲインである。例えば1未満の値にすると、電流取得用タイマ10の誤差をいち早く収束することが可能となる。
【0054】
計時値更新部41は、このようにt21において、電流取得用タイマ10が次の期間に計時する値を演算する。そして、t3における電流取得用タイマ10の計時値を当該演算して求めたX2に更新する。その後、電流取得用タイマ10は、予め設定された値(C0及びk)を用いて演算した値(X2)からゼロまで減じながら計時する。t22になると、計時値更新部41は、更に次の期間に電流取得用タイマ10が計時する値(「X3」とする)を演算する。このX3は以下の(2)式で求められる。
【0055】
【数2】

ただし、C2はt22の時点での電流取得用タイマ10の計時値である。C0及びkについては、上述の(1)式と同様の値が用いられる。
【0056】
以下、同様に、t6において計時する値(「X4」とする)、更には、PWM信号の次の周期におけるt10において計時する値(「X5」とする)を、以下に示される式を用いて演算する。
【数3】

【数4】

【0057】
このように、本実施形態に係る計時値更新部41は順次、次の期間において電流取得用タイマ10が計時する値を演算する。これにより、PWM制御用タイマ20を基準にして、電流取得用タイマ10の誤差を相対的に小さくすることが可能となる。したがって、PWM制御と電流値の取得とを同期することが可能となる。
【0058】
次に、本実施形態に係る本通電制御装置100による処理を図8のフローチャートを用いて説明する。まず、PWM制御部21からPWM信号が出力される(ステップ#01)。この出力は、例えば上位システムからの通電開始命令に基づき行われる。このPWM信号の出力に合わせて、PWM制御用タイマ20が計時を開始する(ステップ#02)。
【0059】
電流検出部11Aは、PWM制御部21によるPWM信号の出力後、所定時間が経過するソレノイド50に流れる電流を検出し、電流値取得部11が検出された電流値に基づきデジタル変換された電流値を取得する(ステップ#03)。回数カウント部31は、電流値取得部11による電流値の取得回数nを1に設定する(ステップ#04)。電流取得用タイマ10は、計時を開始する(ステップ#05)。
【0060】
この時、PWM制御用タイマ20の計時値がPWM信号の周期のn/4倍であれば(ステップ#06:Yes)、計時値更新部41はその時点の電流取得用タイマ10の計時値を用いて次の期間に電流取得用タイマ10が計時する値を演算する(ステップ#07)。
一方、ステップ#06において、PWM制御用タイマ20の計時値がPWM信号の周期のn/4倍に達していなければ(ステップ#06:No)、処理が保留される。
【0061】
そして、電流取得用タイマ10の計時値がゼロになっていれば(ステップ#08:Yes)、電流値取得部11により電流値が取得される(ステップ#09)。これにより、回数カウント部31は、電流値取得部11による電流値の取得回数nに1を加える(ステップ#10)。
【0062】
計時値更新部41により、電流取得用タイマ10の計時値が上述により演算された値に更新される(ステップ#11)。この時、電流値取得部11がスイッチング素子51の通電時間を設定する電流制御期間は短縮されないようにする。回数カウント部31によりカウントされる電流値取得部11による電流値の取得回数nが4でなければ(ステップ#12:No)、ステップ#05から処理が継続される。一方、回数カウント部31によりカウントされる電流値取得部11による電流値の取得回数nが4であれば(ステップ#12:Yes)、電流取得用タイマ10の計時値をリセットし、計時を開始する(ステップ#13)。そして、回数カウント部31は、電流値の取得回数nを1に設定する(ステップ#14)。
【0063】
これまでの処理により、PWM信号の1周期において4回分の電流値が取得できたので、PWM制御部21は次の1周期においてソレノイド50に通電する電流値を演算し(ステップ#15)、スイッチング素子51に通電する通電時間を設定する(ステップ#16)。
【0064】
この状態において、PWM制御用タイマ20の計時値がゼロになれば(ステップ#17:Yes)、PWM制御部21はPWM信号を出力する(ステップ#18)。これにより、PWM制御用タイマ20の計時値がリセットされる(ステップ#19)。その後、PWM制御用タイマ20が計時を開始し(ステップ#20)、ステップ#06から処理が継続される。
【0065】
ステップ#17において、PWM制御用タイマ20の計時値がゼロでなく(ステップ#17:No)、電流取得用タイマ10の計時値もゼロでなければ(ステップ#21:No)、処理が保留される。一方、電流取得用タイマ10の計時値もゼロであれば(ステップ#21:Yes)、ステップ#03から処理が継続される。
【0066】
このようにして通電制御装置100は、スイッチング素子51のPWM制御とソレノイド50に通電される電流値の取得とを同期させることができるので、ソレノイド50の通電を適切に行うことが可能となる。
【0067】
〔その他の実施形態〕
上記第1の実施形態では、計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果がPWM信号を出力するタイミングを規定する値になった場合に、電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値に更新し、上記第2の実施形態では計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果がPWM信号の1周期を電流値が取得される回数で等分した値になった毎に、電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値を用いて演算した値に更新するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果がPWM信号の1周期を電流値が取得される回数で等分した値になった毎に、電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値に更新する構成とすることも可能である。また、計時値更新部41は、PWM制御用タイマ20の計時結果がPWM信号を出力するタイミングを規定する値になった場合に、電流取得用タイマ10の計時値を予め設定された値を用いて演算した値に更新する構成とすることも当然に可能である。
【0068】
上記実施形態では、スイッチング素子51の通電時間を設定する電流制御期間が、計時値更新部41により短縮されないように構成されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。計時値更新部41が、電流制御期間を短縮するように構成することも当然に可能である。
【0069】
上記実施形態では、PWM制御部21は、PWM信号の1周期内に電流値の取得回数が予め設定された回数に満たない場合、PWM信号の次の1周期にスイッチング素子51に通電する通電時間を、今回と同じ通電時間に設定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。PWM制御部21は、PWM信号の1周期内に電流値の取得回数が予め設定された回数に満たない場合、予め設定された通電時間に設定することも可能である。
【0070】
本発明は、ソレノイドの電流を制御する通電制御装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
10:電流取得用タイマ
11:電流値取得部
20:PWM制御用タイマ
21:PWM制御部
31:回数カウント部
41:計時値更新部
50:ソレノイド
51:スイッチング素子
100:通電制御装置(ソレノイドの通電制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドに流れる電流の電流値を取得するタイミングを規定する時間を計時する電流取得用タイマと、
前記電流取得用タイマの計数結果に基づいて、前記ソレノイドの通電を制御するスイッチング素子を駆動するPWM信号の1周期内において予め設定された回数だけ前記電流値を取得する電流値取得部と、
前記PWM信号を出力するタイミングを規定する時間を計時するPWM制御用タイマと、
前記1周期内に取得された電流値に基づき、次の1周期に前記ソレノイドに通電する電流値を演算すると共に、当該演算された電流値に基づき前記次の1周期に前記スイッチング素子に通電する通電時間を設定し、前記PWM制御用タイマの計時結果に基づいて前記設定した通電時間に応じたPWM信号を出力するPWM制御部と、
前記PWM制御用タイマの計時結果に基づき、前記電流取得用タイマの計時値を更新する計時値更新部と、
を備えるソレノイドの通電制御装置。
【請求項2】
前記計時値更新部は、前記PWM制御用タイマの計時結果が前記PWM信号を出力するタイミングを規定する値になった場合に、前記電流取得用タイマの計時値を予め設定された値に更新する請求項1に記載のソレノイドの通電制御装置。
【請求項3】
前記PWM制御用タイマは、前記PWM信号の1周期を規定する時間も計時し、
前記計時値更新部は、前記PWM制御用タイマの計時結果が前記PWM信号の1周期を前記電流値が取得される回数で等分した値になった毎に、前記電流取得用タイマの計時値を予め設定された値を用いて演算した値に更新する請求項1に記載のソレノイドの通電制御装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子の通電時間を設定する電流制御期間が、前記計時値更新部により短縮されないように構成されてある請求項1から3のいずれか一項に記載のソレノイドの通電制御装置。
【請求項5】
前記PWM信号の1周期内における最終の電流値が取得されてから、前記PWM信号の次の1周期内における最初の電流値が取得されるまでに、前記PWM信号の次の1周期に前記ソレノイドに通電する電流値が演算されると共に、前記PWM信号の次の1周期に前記スイッチング素子に通電する通電時間が設定され、前記PWM信号の次の1周期が開始される請求項1から4のいずれか一項に記載のソレノイドの通電制御装置。
【請求項6】
前記PWM信号の1周期内において前記電流値取得部が前記電流値を取得する回数をカウントする回数カウント部が備えられ、
前記PWM制御部は、前記PWM信号の1周期内に前記電流値の取得回数が予め設定された回数に満たない場合、前記PWM信号の次の1周期に前記スイッチング素子に通電する通電時間を、今回と同じ通電時間に設定する請求項1から5のいずれか一項に記載のソレノイドの通電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−70175(P2013−70175A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206274(P2011−206274)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】