説明

ソレノイドバルブおよび油圧制御装置

【課題】N/CタイプとN/Oタイプの両方に使うことのできる汎用性に優れたソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】スプール弁5の左側にはN/Cタイプの第1三方弁Aが設けられ、スプール弁5の右側にはN/Oタイプの第2三方弁Bが設けられる。このため、1つのソレノイドバルブ1においてN/CタイプとN/Oタイプの両方に使うことができ、汎用性に優れる。また、油圧切替供給手段7により、ソレノイドバルブ1をN/CタイプまたはN/Oタイプの一方に切り替えて用いることができる。さらに、第2三方弁Bの使用時(ソレノイドバルブ1をN/Oタイプとして用いる場合)に、アシスト油圧発生手段8によって第1F/B室A7へアシスト油圧を発生させることで、スプール3に右側に向かう「アシスト力」が加わる。このため、N/Oタイプ使用時におけるリターンスプリング4のバネ力の不足を「アシスト力」で補うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブとしても使用可能であり、且つノーマルオープンタイプのソレノイドバルブとしても使用可能な技術に関し、例えば、車両用自動変速機に用いて好適な技術に関する。
なお、以下の明細書中では、説明の便宜上、プランジャの移動方向を左右方向(軸方向)とし、左右方向のうち、
・プランジャがリニアソレノイドに近づく方向を右(軸方向の一方側)、
・プランジャがリニアソレノイドから離れる方向を左(軸方向の他方側)、
と称して説明するが(例えば、図1参照)、この左右方向は説明のためのものであって、実際の搭載方向を限定するものではない。
また、以下の明細書中では、
・ノーマルクローズ(ノーマリー・クローズ)をN/Cと称し、
・ノーマルオープン(ノーマリー・オープン)をN/Oと称し、
・フィードバックをF/Bと称して説明する。
【背景技術】
【0002】
スプール弁とリニアソレノイドとを結合してなるソレノイドバルブの一例を、図2、図3を参照して説明する。なお、この背景技術に用いる符号(図2および図3の符号)は、後述する[発明を実施するための形態]および[実施例]と同一機能物に同一符号を付したものである。
なお、以下では、N/Cタイプのスプール弁を第1三方弁Aと称し、N/Oタイプのスプール弁を第2三方弁Bと称して説明する。
【0003】
図2は、N/Cタイプのソレノイドバルブを示すものであり、第1三方弁Aと、この第1三方弁Aを駆動するリニアソレノイド6とを結合した構造を採用している(例えば、特許文献1参照)。
第1三方弁Aは、リニアソレノイド6の通電停止時に、リターンスプリング4の付勢力によりスプール3が右側に付勢された状態で、
・油圧の供給を受ける第1入力ポートA1と第1出力ポートA2の連通が遮断され、
・第1出力ポートA2と排出ポート10が連通するものである。
【0004】
第1三方弁Aは、出力油圧(第1出力ポートA2に生じる油圧)の上昇によりスプール3を右側へ押し戻すための第1F/B室A7を備えている。
第1出力ポートA2に出力油圧が発生すると、「第1F/B室A7の左側大径部(第1F/BランドA5)と第1F/B室A7の右側大径部(第1入力ポート開閉ランドA4)の直径差(面積差)」に「出力油圧が印加」されることで、スプール3を右側へ付勢する「第1F/B力」が生じる。
【0005】
このため、出力油圧は、
(i)リニアソレノイド6がスプール3を左へ押す「ソレノイド駆動力」と、
(ii)リターンスプリング4がスプール3を右へ押す「バネ力」と、
(iii)スプール3を右へ押す上述した「第1F/B力」と、
の釣り合いで決まる。
【0006】
図3に示すソレノイドバルブは、第2三方弁Bと、この第2三方弁Bを駆動するリニアソレノイド6とを結合した構造を採用している(例えば、特許文献2参照)。
第2三方弁Bは、リニアソレノイド6の通電停止時に、リターンスプリング4の付勢力によりスプール3が右側に付勢された状態で、
・油圧の供給を受ける第2入力ポートB1と第2出力ポートB2が連通し、
・第2出力ポートB2と排出ポート10の連通が遮断されるものである。
【0007】
第2三方弁Bは、出力油圧(第2出力ポートB2に生じる油圧)の上昇によりスプール3を左側へ押す第2F/B室B7を備えている。
第2出力ポートB2に出力油圧が発生すると、「第2F/B室B7の右側大径部(第2F/BランドB5)と第2F/B室B7の左側大径部(第2入力ポート開閉ランドB4)の直径差(面積差)」に「出力油圧が印加」されることで、スプール3を左側へ付勢する「第2F/B力」が生じる。
【0008】
このため、出力油圧は、
(i)リニアソレノイド6がスプール3を左へ押す「ソレノイド駆動力」と、
(ii)リターンスプリング4がスプール3を右へ押す「バネ力」と、
(iii)スプール3を左へ押す上述した「第2F/B力」と、
の釣り合いで決まる。
【0009】
しかしながら、従来の技術では、N/Cタイプのソレノイドバルブと、N/Oタイプのソレノイドバルブとが、別々に設けられていたため、汎用性がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4569371号公報
【特許文献2】特開2009−115289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、N/CタイプとN/Oタイプの両方に使うことのできる汎用性に優れたソレノイドバルブおよび油圧制御装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[請求項1の手段]
請求項1のスプール弁は、N/Cタイプの第1三方弁とN/Oタイプの第2三方弁の両方を備える。
このため、
(i)第1三方弁を用いてリニアソレノイドを通電制御することでN/Cタイプのソレノイドバルブとして利用することができ、
(ii)第2三方弁を用いてリニアソレノイドを通電制御することでN/Oタイプのソレノイドバルブとして利用することができる。
即ち、請求項1のソレノイドバルブは、N/CタイプとN/Oタイプの両方に使うことができ、汎用性に優れる。
【0013】
[請求項2の手段]
請求項2の油圧制御装置は、第1三方弁または第2三方弁の一方へ油圧を切り替えて供給する油圧切替供給手段を備える。
油圧切替供給手段により、第1三方弁に油圧を切り替えて供給することによって、N/Cタイプのソレノイドバルブとして利用することができる。
また、油圧切替供給手段により、第2三方弁に油圧を切り替えて供給することによって、N/Oタイプのソレノイドバルブとして利用することができる。
このように、油圧切替供給手段を切り替えることにより、N/CタイプとN/Oタイプを切り替えることができる。
【0014】
[請求項3の手段]
N/Cタイプのソレノイドバルブは、第1F/B室に発生する油圧により、スプールを右側へ押し戻す「第1F/B力」が生じる。
N/Oタイプのソレノイドバルブは、第2F/B室に発生する油圧により、スプールを左側へ付勢する「第2F/B力」が生じる。
このため、
(i)N/Cタイプの場合では、
「ソレノイド駆動力」=「第1F/B力(右方向の力)」+「バネ力」
でスプールの釣り合いがなされ、
(ii)N/Oタイプの場合では、
「ソレノイド駆動力」+「第2F/B力(左方向の力)」=「バネ力」
でスプールの釣り合いがなされる。
【0015】
「第1F/B力」はスプールを右側に付勢する力であり、「第2F/B力」はスプールを左側に付勢する力である。このため、リターンスプリングを共通のバネ力(バネ荷重)にすることができず、リターンスプリングはN/Cタイプに適した低いバネ力に設定されることになる。
すると、ソレノイドバルブをN/Oタイプとして使用する際に、リターンスプリングのバネ力が不足してしまう。
【0016】
そこで、請求項3の油圧制御装置は、第2三方弁の使用時に、第1F/B室へ所定のアシスト油圧を発生させるアシスト油圧発生手段を備える。
N/Oタイプとしてソレノイドバルブを使用する際に、第1F/B室にアシスト油圧が発生することで、スプールに右側に向かう「アシスト力」が加わる。このため、リターンスプリングのバネ力の不足を「アシスト力」で補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】N/CタイプとN/Oタイプに使用可能なソレノイドバルブの断面図である(実施例)。
【図2】N/Cタイプのソレノイドバルブの断面図である(従来例1)。
【図3】N/Oタイプのソレノイドバルブの断面図である(従来例2)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
ソレノイドバルブ1は、
・略円筒状のスリーブ2、このスリーブ2内で軸方向へ摺動自在に支持されるスプール3、このスプール3を軸方向の一方側へ付勢するリターンスプリング4を有するスプール弁5と、
・スリーブ2の一方側の端部に固定され、通電量が増加するに従いスプール3を軸方向の他端側へ駆動するリニアソレノイド6と、
を具備する。
【0019】
スプール弁5の図示左側にはN/Cタイプの第1三方弁Aが設けられ、スプール弁5の図示右側にはN/Oタイプの第2三方弁Bが設けられる。
第1、第2三方弁A、Bのスリーブ2は共通(1つ)である。
第1、第2三方弁A、Bのスプール3は共通(1つ)でも良いし、独立(2つ)でも良い。
第1三方弁Aは第1F/B室A7を備え、第2三方弁Bは、第2F/B室B7を備える。
そして、油圧制御装置は、第1三方弁Aまたは第2三方弁Bの一方へ油圧を切り替えて供給する油圧切替供給手段7を備える。
また、油圧制御装置は、第2三方弁Bの使用時に、第1F/B室A7へアシスト油圧を発生させるアシスト油圧発生手段8を備える。
【実施例】
【0020】
本発明が適用された具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。以下における実施例は具体的な一例を示すものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
なお、以下の実施例において上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
【0021】
この実施例に示すソレノイドバルブ1は、車両用自動変速機の油圧制御装置に搭載されるものであり、油圧制御を行なうスプール弁5と、このスプール弁5を駆動するリニアソレノイド6とを結合したものである。
【0022】
スプール弁5は、
・略円筒形状を呈する1本のスリーブ2と、
・このスリーブ2の内部で軸方向に摺動自在に支持される1本のスプール3と、
・このスプール3を右側(リニアソレノイド6が配置される側)へ付勢する1つのリターンスプリング4と、を備えて構成されるものであり、
左側にN/Cタイプの第1三方弁Aが設けられ、右側にN/Oタイプの第2三方弁Bが設けられる。
なお、以下では、第1三方弁Aの機能に関わる名称には「第1」を付して説明し、第2三方弁Bの機能に関わる名称には「第2」を付して説明する。
【0023】
先ず、スプール弁5の左側に設けられる第1三方弁Aを説明する。
第1三方弁Aにおけるスリーブ2(左側のスリーブ2)には、
・入力油圧の供給を受ける第1入力ポートA1、
・制御油圧の供給先(自動変速機の摩擦係合装置等)に油路を介して連通する第1出力ポートA2、
・低圧室(オイルパン等)に連通する排出ポート10、
・第1出力ポートA2に連通する第1F/BポートA3が設けられる。
なお、この実施例では、第1三方弁Aの排出ポート10は、第2三方弁Bの排出ポート10と共通に設けられている。
これらの各ポートは、スリーブ2の左側からスリーブ2の略中心(左右方向の中心)に向かって、第1F/BポートA3、第1入力ポートA1、第1出力ポートA2、排出ポート10の順で配置されている。
【0024】
第1三方弁Aにおけるスプール3(左側のスプール3)には、
・第1入力ポートA1の開度調整を行なう第1入力ポート開閉ランドA4、
・排出ポート10の開度調整を行なう排出ポート開閉ランド11、
・第1入力ポート開閉ランドA4より小径の第1F/BランドA5が設けられる。
なお、この実施例では、第1三方弁Aの排出ポート開閉ランド11は、第2三方弁Bの排出ポート開閉ランド11と共通に設けられている。
これらの各ランドは、スプール3の左側からスプール3の略中心(左右方向の中心)に向かって、第1F/BランドA5、第1入力ポート開閉ランドA4、排出ポート開閉ランド11の順で配置されている。
【0025】
そして、
・第1入力ポート開閉ランドA4と排出ポート開閉ランド11の間(スプール3の小径部の周囲空間)に、第1出力ポートA2に通じる第1分配室A6が形成され、
・第1入力ポート開閉ランドA4と第1F/BランドA5の間(スプール3の小径部の周囲空間)に第1F/BポートA3に通じる第1F/B室A7が形成される。
【0026】
ここで、第1入力ポートA1と第1入力ポート開閉ランドA4の位置関係、および排出ポート10と排出ポート開閉ランド11の位置関係は、第1三方弁AがN/Cタイプになるように設定されている。
【0027】
具体的に、第1入力ポートA1と第1入力ポート開閉ランドA4の位置関係、および排出ポート10と排出ポート開閉ランド11の位置関係は、
(i)リターンスプリング4の付勢力によりスプール3が右側に付勢されて停止している状態(リニアソレノイド6の通電が停止している状態)において、
・第1入力ポート開閉ランドA4が第1入力ポートA1を閉塞し、
・排出ポート開閉ランド11が排出ポート10を開き、
第1出力ポートA2が排出ポート10のみと連通し(第1出力ポートA2に出力油圧が発生しない状態)、
(ii)リニアソレノイド6の駆動力によりスプール3が左側へ少量移動する状態において、
・第1入力ポート開閉ランドA4が第1入力ポートA1を開き、
・排出ポート開閉ランド11が排出ポート10を開き、
第1出力ポートA2が第1入力ポートA1と排出ポート10の両方と連通し(連通度合がスプール3の移動位置によって変化して、第1出力ポートA2にスプール3の位置に応じた出力油圧が発生する状態)、
(iii)リターンスプリング4の付勢力に抗してスプール3が大きく左側へ駆動されている状態(リニアソレノイド6の駆動力が非常に大きい状態)において、
・第1入力ポート開閉ランドA4が第1入力ポートA1を開き、
・排出ポート開閉ランド11が排出ポート10を閉塞し、
第1出力ポートA2が第1入力ポートA1のみと連通する(第1出力ポートA2に最大油圧が発生する状態)ように設けられる。
【0028】
ここで、第1F/BランドA5のランド径は、上述したように、第1入力ポート開閉ランドA4のランド径より小径に設けられている。このため、第1F/B室A7に印加される油圧(第1出力ポートA2の発生油圧)が大きくなるに従って、第1入力ポート開閉ランドA4と第1F/BランドA5のランド差(径差)による圧差により、スプール3にはリニアソレノイド6の駆動力に抗する右向きの軸力(第1F/B力)が発生する。これにより、スプール3の変位が安定し、第1出力ポートA2の発生油圧が変動するのを抑えることができる。
【0029】
次に、スプール弁5の右側に設けられる第2三方弁Bを説明する。
第2三方弁Bにおけるスリーブ2(右側のスリーブ2)には、
・入力油圧の供給を受ける第2入力ポートB1、
・制御油圧の供給先(自動変速機の摩擦係合装置等)に油路を介して連通する第2出力ポートB2、
・低圧室(オイルパン等)に連通する排出ポート10、
・第2出力ポートB2に連通する第2F/BポートB3が設けられる。
なお、この実施例では、第2三方弁Bの排出ポート10は、上述したように、第1三方弁Aの排出ポート10と共通に設けられている。
これらの各ポートは、スリーブ2の略中心(左右方向の中心)からスリーブ2の右側に向かって、排出ポート10、第2出力ポートB2、第2入力ポートB1、第2F/BポートB3の順で配置されている。
【0030】
第2三方弁Bにおけるスプール3(右側のスプール3)には、
・第2入力ポートB1の開度調整を行なう第2入力ポート開閉ランドB4、
・排出ポート10の開度調整を行なう排出ポート開閉ランド11、
・第2入力ポート開閉ランドB4より小径の第2F/BランドB5が設けられる。
なお、この実施例では、第2三方弁Bの排出ポート開閉ランド11は、上述したように、第1三方弁Aの排出ポート開閉ランド11と共通に設けられている。
これらの各ランドは、スプール3の略中心(左右方向の中心)からスプール3の右側に向かって、排出ポート開閉ランド11、第2入力ポート開閉ランドB4、第2F/BランドB5の順で配置されている。
【0031】
そして、
・第2入力ポート開閉ランドB4と排出ポート開閉ランド11の間(スプール3の小径部の周囲空間)に、第2出力ポートB2に通じる第2分配室B6が形成され、
・第2入力ポート開閉ランドB4と第2F/BランドB5の間(スプール3の小径部の周囲空間)に第2F/BポートB3に通じる第2F/B室B7が形成される。
【0032】
ここで、第2入力ポートB1と第2入力ポート開閉ランドB4の位置関係、および排出ポート10と排出ポート開閉ランド11の位置関係は、第2三方弁BがN/Oタイプになるように設定されている。
【0033】
具体的に、第2入力ポートB1と第2入力ポート開閉ランドB4の位置関係、および排出ポート10と排出ポート開閉ランド11の位置関係は、
(i)リターンスプリング4の付勢力によりスプール3が右側に付勢されて停止している状態(リニアソレノイド6の通電が停止している状態)において、
・第2入力ポート開閉ランドB4が第2入力ポートB1を開き、
・排出ポート開閉ランド11が排出ポート10を閉塞し、
第2出力ポートB2が第2入力ポートB1のみと連通し(第2出力ポートB2に最大油圧が発生する状態)、
(ii)リニアソレノイド6の駆動力によりスプール3が左側へ少量移動する状態において、
・第2入力ポート開閉ランドB4が第2入力ポートB1を開き、
・排出ポート開閉ランド11が排出ポート10を開き、
第2出力ポートB2が第2入力ポートB1と排出ポート10の両方と連通し(連通度合がスプール3の移動位置によって変化して、第2出力ポートB2にスプール3の位置に応じた出力油圧が発生する状態)、
(iii)リターンスプリング4の付勢力に抗してスプール3が大きく左側へ駆動されている状態(リニアソレノイド6の駆動力が非常に大きい状態)において、
・第2入力ポート開閉ランドB4が第2入力ポートB1を閉塞し、
・排出ポート開閉ランド11が排出ポート10を開き、
第2出力ポートB2が排出ポート10のみと連通する(第2出力ポートB2に出力油圧が発生しない状態)ように設けられる。
【0034】
ここで、第2F/BランドB5のランド径は、上述したように、第2入力ポート開閉ランドB4のランド径より小径に設けられている。このため、第2F/B室B7に印加される油圧(第2出力ポートB2の発生油圧)が大きくなるに従って、第2入力ポート開閉ランドB4と第2F/BランドB5のランド差(径差)による圧差により、スプール3にはリターンスプリング4の付勢力に抗する左向きの軸力(第2F/B力)が発生する。これにより、スプール3の変位が安定し、第2出力ポートB2の発生油圧が変動するのを抑えることができる。
【0035】
リターンスプリング4は、スプール3を右側に付勢する筒状に螺旋形成された圧縮コイルスプリングである。
スリーブ2の左端には、調整ネジ12が螺合されており、この調整ネジ12とスプール3との間(バネ室)にリターンスプリング4が圧縮された状態で配置されている。そして、調整ネジ12の螺合量(ねじ込み量)によりリターンスプリング4の付勢力(バネ荷重)が調整できるようになっている。
【0036】
リニアソレノイド6は、通電量に応じた起磁力により、スプール3を左側へ変位させる駆動手段であり、通電により起磁力を発生するコイル21、コイル21の磁束ループを形成する固定磁気回路(ステータ22およびヨーク23)、およびコイル21の発生磁力(磁気吸引力)によってスプール3に左方向の変位力を与えるプランジャ24等を備えて構成される。
なお、図1に示すリニアソレノイド6の断面構造は、具体的な一例を示すものであって、限定されるものではない。
【0037】
リニアソレノイド6は、図示しない電子制御装置(AT−ECU)によって制御される。この電子制御装置は、デューティ比制御によってリニアソレノイド6へ与える駆動電流を制御するものであり、コイル21への通電量を制御することによって、第1出力ポートA2または第2出力ポートB2の出力油圧をコントロールする。
【0038】
なお、
(i)第1三方弁Aを用いる場合(ソレノイドバルブ1をN/Cタイプとして用いる場合)では、
「ソレノイド駆動力」=「第1F/B力(右方向の力)」+「バネ力」
でスプール3の釣り合いがなされ、
(ii)第2三方弁Bを用いる場合(ソレノイドバルブ1をN/Oタイプとして用いる場合)では、
「ソレノイド駆動力」+「第2F/B力(左方向の力)」=「バネ力」
でスプール3の釣り合いがなされるものである。
【0039】
この実施例のソレノイドバルブ1が組み付けられる油圧制御装置には、
・第1三方弁Aまたは第2三方弁Bの一方へ油圧を切り替えて供給する油圧切替供給手段7と、
・第2三方弁Bの使用時(ソレノイドバルブ1をN/Oタイプとして用いる場合)に、第1F/B室A7へ所定のアシスト油圧を発生させるアシスト油圧発生手段8と、
が設けられている。
【0040】
油圧切替供給手段7は、油圧発生源(オイルポンプ+レギュレータ)の発生した供給油圧を、第1入力ポートA1または第2入力ポートB1の一方へ切り替えて供給するものである。
そして、ソレノイドバルブ1をN/Cタイプとして用いる場合には、油圧切替供給手段7の切り替えによって、油圧発生源の発生した供給油圧を第1入力ポートA1に供給する。
また、ソレノイドバルブ1をN/Oタイプとして用いる場合には、油圧切替供給手段7の切り替えによって、油圧発生源の発生した供給油圧を第2入力ポートB1に供給する。
【0041】
アシスト油圧発生手段8は、第1F/BポートA3の連通先を、第1出力ポートA2または所定のアシスト油圧の発生源(例えば、上述した油圧発生源と油圧調整用オリフィス等を介して連通する油圧源)の一方へ切り替えるものである。
そして、ソレノイドバルブ1をN/Cタイプとして用いる場合には、アシスト油圧発生手段8の切り替えによって、第1F/B室A7に第1出力ポートA2の出力油圧を発生させる。
また、ソレノイドバルブ1をN/Oタイプとして用いる場合には、アシスト油圧発生手段8の切り替えによって、第1F/B室A7にアシスト油圧を発生させるものである。
【0042】
(実施例の効果1)
この実施例のソレノイドバルブ1におけるスプール弁5は、上述したように、N/Cタイプの第1三方弁AとN/Oタイプの第2三方弁Bの両方を備えるものである。
このため、
(i)第1三方弁Aを用いてリニアソレノイド6を通電制御することでN/Cタイプのソレノイドバルブ1として利用することができ、
(ii)第2三方弁Bを用いてリニアソレノイド6を通電制御することでN/Oタイプのソレノイドバルブ1として利用することができる。
即ち、この実施例のソレノイドバルブ1は、N/CタイプとN/Oタイプの両方に使うことができ、汎用性に優れる。
【0043】
(実施例の効果2)
この実施例の油圧制御装置は、上述したように、第1三方弁A(具体的には第1入力ポートA1)または第2三方弁B(具体的には第2入力ポートB1)の一方へ油圧を切り替えて供給する油圧切替供給手段7を備える。
この油圧切替供給手段7により、この実施例のソレノイドバルブ1を、「N/Cタイプのソレノイドバルブ1」または「N/Oタイプのソレノイドバルブ1」に切り替えて用いることができる。
【0044】
(実施例の効果3)
この実施例の油圧制御装置は、上述したように、第2三方弁Bの使用時(ソレノイドバルブ1をN/Oタイプとして用いる場合)に、アシスト油圧発生手段8によって第1F/B室A7へ所定のアシスト油圧を発生させる。
N/Oタイプとしてソレノイドバルブ1を使用する際に、第1F/B室A7にアシスト油圧を発生させることで、スプール3に右側に向かう「アシスト力」が加わる。このため、N/Oタイプ使用時におけるリターンスプリング4のバネ力の不足を「アシスト力」で補うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上記の実施例では、車両用自動変速機の油圧制御装置に用いられるソレノイドバルブ1に本発明を適用する例を示したが、自動変速機以外の他のソレノイドバルブ1に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 ソレノイドバルブ
2 スリーブ
3 スプール
4 リターンスプリング
5 スプール弁
6 リニアソレノイド
7 油圧切替供給手段
8 アシスト油圧発生手段
A 第1三方弁
A7 第1F/B室
B 第2三方弁
B7 第2F/B室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状のスリーブ(2)、このスリーブ(2)内で軸方向へ摺動自在に支持されるスプール(3)、このスプール(3)を軸方向の一方側へ付勢するリターンスプリング(4)を有するスプール弁(5)と、
前記スリーブ(2)の一方側の端部に固定され、通電量が増加するに従い前記スプール(3)を軸方向の他端側へ駆動するリニアソレノイド(6)と、
を具備し、
前記スプール弁(5)は、ノーマルクローズの第1三方弁(A)とノーマルオープンの第2三方弁(B)の両方を備えることを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のソレノイドバルブ(1)と、
前記第1三方弁(A)または前記第2三方弁(B)の一方へ油圧を切り替えて供給する油圧切替供給手段(7)と、
を備える油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御装置において、
前記第1三方弁(A)は、出力油圧の上昇により前記スプール(3)を軸方向の一方側へ付勢する第1フィードバック室(A7)を備え、
前記第2三方弁(B)は、出力油圧の上昇により前記スプール(3)を軸方向の他方側へ付勢する第2フィードバック室(B7)を備え、
当該油圧制御装置は、前記第2三方弁(B)の使用時に、前記第1フィードバック室(A7)へ所定のアシスト油圧を発生させるアシスト油圧発生手段(8)を備えることを特徴とする油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−241740(P2012−241740A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109753(P2011−109753)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】