説明

タイヤ内発電装置

【課題】高電力を得ることができるタイヤ内発電装置を提供する。
【解決手段】車両走行時のタイヤに加わる遠心力の変化に応じて直線往復移動可能に設けられた発電用磁石6と、当該発電用磁石が発生する磁束を通すヨーク7と、ヨークに巻かれたコイル8とを備え、発電用磁石は、直線往復移動方向と交差する方向における一方側が一方の極に着磁されたとともに直線往復移動方向と交差する方向における他方側が他方の極に着磁され、ヨークは、発電用磁石の一方の極から磁束を取り込む磁束入口部7bと発電用磁石の他方の極に磁束を送る磁束出口部7cとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電力を得ることの可能なタイヤ内発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ内の温度や圧力を検出するTPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム)等のセンサ+無線を有するデバイスをタイヤ気室内に設置してタイヤモニタリングを実施する場合に、そのデバイスに電力を供給するタイヤ内発電装置が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−278923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のタイヤ内発電装置では、高電力を得ることができないという課題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、高電力を得ることができるタイヤ内発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るタイヤ内発電装置によれば、タイヤの気室内に取付けられる発電装置において、車両走行時のタイヤに加わる遠心力の変化に応じて直線往復移動可能に設けられた発電用磁石と、当該発電用磁石が発生する磁束を通すヨークと、ヨークに巻かれたコイルとを備え、発電用磁石は、直線往復移動方向と交差する方向における一方側が一方の極に着磁されたとともに直線往復移動方向と交差する方向における他方側が他方の極に着磁され、ヨークは、発電用磁石の一方の極から磁束を取り込む磁束入口部と発電用磁石の他方の極に磁束を送る磁束出口部とを備えたので、磁束密度が上がり、高電圧を発生して、高電力を得ることができるタイヤ内発電装置となる。
発電用磁石が、直線往復移動方向に沿った方向に複数の単位磁石同士を接着して構成され、単位磁石同士は、互いに異極に着磁された部分同士が接着されたので、1つ1つの単位磁石がヨークの横を直線往復移動方向に通過する毎に、ヨーク中を通過する磁束の向きが反転するので、磁束の反転速度が速くなり、高電圧を発生できる。
ヨークの磁束入口部及び磁束出口部は、発電用磁石の直線往復移動方向に沿った周面と対向する対向面を備え、対向面は、発電用磁石の周面の周方向に沿った方向の長さが発電用磁石の直線往復移動方向に沿った方向の長さよりも長い構成としたので、発電用磁石からの磁束をヨークに効率良く取り込むことができて、高電圧を発生できる。
ヨークのコイルの巻かれたコイル巻部の断面積Sは、以下の条件を満たすようにした。
φ<S×Bm<1.2×φ
但し、Bm;ヨークの最大飽和磁束密度、φ;発電用磁石の全磁束。
つまり、φ<S×Bmとしたことで、発電用磁石により発生する磁束を全てヨークに通すことができるようになり、S×Bm<1.2×φとしたことで、コイルの全長を短くできるようになる。
コイルの巻線として、断面矩形状の平角線を用いたので、巻線抵抗減少と巻数増加が図れ、巻線密度を向上できるので、発電効率が高まる。
発電用磁石の直線往復移動方向と直交するベース面を備えたベースと、ベース面より設けられて発電用磁石の直線往復移動を案内するガイド棒と、一端がベース面に固定されて他端がベース面と対向する発電用磁石の下面に固定された反発手段としてのコイルばねとを備え、コイルばねが、発電用磁石に所定の直線往復移動範囲内で直線往復移動を行わせるとともに、発電用磁石とベース面との衝突を防止したので、ガイド棒により発電用磁石が精度よく直線往復移動を行い、また、コイルばねを備えたので、タイヤの遠心力のON/OFFにより発電用磁石を直線往復移動させることができるので、効率的に高電圧を発生できる。
ヨークの対向面は、車が時速30kmでコイルばねが吊り合ったときの発電用磁石の直線往復移動方向の長さの中心位置と一致する位置に設けられたので、発電用磁石が、低速時においてヨークの弧状面を中心として直線往復移動方向に単振動を繰り返し、低速時においても効率的に発電できるようになる。
発電用磁石の直線往復移動方向と直交するベース面を備えたベースと、ベース面より設けられて発電用磁石の直線往復移動を案内するガイド棒と、ガイド棒のベース面とは反対側の端部に設けられて発電用磁石のガイド棒からの抜けを防止する抜け防止部と、ベース面に固定されて発電用磁石を反発させる反発用磁石とを備え、発電用磁石と反発用磁石との互いに向き合う面が同極に維持されるように、発電用磁石がガイド棒を回転中心として回転不能にガイド棒に取付けられたので、ガイド棒により発電用磁石が精度よく直線往復移動を行い、また、反発用磁石を備えたので、タイヤの遠心力のON/OFFにより発電用磁石を直線往復移動させることができるので、効率的に高電圧を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】タイヤ内発電装置を示す図(形態1)。
【図2】発電用磁石の断面図(形態1)。
【図3】発電用磁石と弧状面との関係を示す平面図(形態1)。
【図4】発電用磁石と弧状面との関係を示す断面図(形態1)。
【図5】タイヤ内発電装置を示す図(形態2)。
【図6】タイヤ内発電装置による発電状況を示すグラフ(実施例)。
【図7】時速30km走行時における蓄電量の変化を示すグラフ(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
形態1
図1に示すように、本形態1に係るタイヤ気室内に取付けられるタイヤ内発電装置1は、ベース2と、ガイド棒3と、リニアベアリング4と、反発手段5と、車両走行時のタイヤに加わる遠心力の変化に応じて直線往復移動可能に設けられた発電用磁石6と、当該発電用磁石6が発生する磁束を通すヨーク(軟磁性体)7と、ヨーク7に巻かれたコイル8とを備える。コイル8の両端は整流回路25に接続される。
【0008】
ベース2は、円板により形成される。発電用磁石6の移動を案内するガイド棒3は、丸棒により形成される。ガイド棒3は、ベース2を形成する円板の一方の円面により形成されたベース面18の円中心よりベース面18と直交する方向に延長するように設けられる。即ち、発電用磁石6の直線往復移動方向と直交するベース面18を備えたベース2と、一端がベース面18に固定され他端が発電用磁石6を貫通して発電用磁石6の直線往復移動を案内するガイド棒3とを備える。
このベース2及びガイド棒3は、一体に形成されたものでもよいし、個々の別体に形成されたものが互いに結合されて形成されたものでもよい。
【0009】
リニアベアリング4は、図示しないが、外筒と、外筒の内側に設けられた保持筒と、保持筒の内部に設けられた多数のボールとにより形成される。保持筒の内面には、筒の中心軸に沿った方向に延長する複数の溝が周方向に所定の間隔を隔てて形成されており、複数のボールが当該溝に沿って極めて円滑に無限循環運動を行う構造になっている。即ち、ガイド棒3が保持筒の筒孔を貫通するように、リニアベアリング4がガイド棒3に取付けられ、リニアベアリング4の保持筒の溝より露出するボールとガイド棒3の外周面とが摺動することで、ガイド棒3の外周面とボールとが転がり接触しながら低い転がり摩擦で相対移動を行うことができる。この転がり摩擦係数μは0.005である。
【0010】
発電用磁石6は、円の中心にリニアベアリング4の筒の外周面23に嵌め込まれる中心孔11を備えた円板形状の磁石である。発電用磁石6の中心孔11がリニアベアリング4の筒の外周面23に嵌め込まれて、発電用磁石6がリニアベアリング4と同心となるようにリニアベアリング4に固定される。これにより、車両走行時のタイヤに加わる遠心力の変化に応じて発電用磁石6がリニアベアリング4を介してガイド棒3上をガイド棒3の延長方向に直線往復移動可能に構成される。この場合、リニアベアリング4を備えているので、ガイド棒3との摩擦抵抗が少なくでき、発電用磁石6が精度良く直線往復移動を行う。
【0011】
発電用磁石6は、円の中心にリニアベアリング4の筒の外周面23に嵌め込まれる中心孔11を備えた複数個の円板形状の単位磁石15が直線往復移動方向に沿った方向(ガイド棒3に沿った方向)に積層された構成である。発電用磁石6は、図1に示すように、例えば、4枚の単位磁石15の円面同士が接着されて形成される4枚積層構造である。
単位磁石15は、発電用磁石6の直線往復移動方向と交差する方向における一方側が一方の極に着磁されたとともに直線往復移動方向と交差する方向における他方側が他方の極に着磁された構成である。具体的には、単位磁石15は、発電用磁石6の直線往復移動方向と直交する方向における一方側である円板の一方の半円部分15aが「N」極に着磁され、発電用磁石6の直線往復移動方向と直交する方向における他方側である円板の他方の半円部分15bが「S」極に着磁されたものである。
図2に示すように、単位磁石15同士は、互いに異極に着磁された半円部分の半円面15x;15y同士が接着される。
【0012】
反発手段5は、例えば、コイルばね5Aのような弾性体によって形成される。コイルばね5Aの一端がベース面18と連結され、コイルばね5Aの他端が発電用磁石6の下面6xと連結されることによって、発電用磁石6とベース2とがコイルばね5Aを介して連結される。よって、車の走行時の遠心力によってコイルばね5Aが伸縮することで、発電用磁石6がガイド棒3に沿って直線往復移動可能に構成される。即ち、このコイルばね5Aは、発電用磁石6に所定の直線往復移動範囲内で直線往復移動を行わせるとともに、発電用磁石6に遠心力が加わった際に発電用磁石6の下面6xとベース面18との衝突を防止するものである。
【0013】
ヨーク7は、コイルが巻かれるコイル巻部7aと、発電用磁石6の各単位磁石15の一方の極から磁束を取り込む磁束入口部7bと、発電用磁石6の各単位磁石15の他方の極に磁束を送る磁束出口部7cとを備え、発電用磁石6を構成する各単位磁石15の一方の極から磁束を取り込んで各単位磁石15の他方の極に磁束を送る磁束通路を形成する。
コイル巻部7aは、リングの孔の中心線に沿ってリングを半分に切ったような半円弧形状に形成される。磁束入口部7bはコイル巻部7aの一端に設けられ、磁束出口部7cはコイル巻部7aの他端に設けられる。ヨーク7は、下端がベースに固定された支柱71;72の上端に固定される。
図2に示すように、一方の支柱71は、発電用磁石6の一方の半円部分の半周面61の周方向中央と対向するように設けられ、他方の支柱72は、発電用磁石6の他方の半円部分の半周面62の周方向中央と対向するように設けられる。コイル巻部7aは、半円弧が発電用磁石6の円周面と対向し、一端の下部と一方の支柱71の上端とが接着剤などで固定され、他端の下部と他方の支柱72の上端とが接着剤などで固定される。
磁束入口部7b及び磁束出口部7cは、発電用磁石6の直線往復移動方向に沿った周面と対向する対向面を備え、対向面は、発電用磁石6の周面の周方向に沿った方向の長さが発電用磁石6の直線往復移動方向に沿った方向の長さよりも長い。具体的には、図3に示すように、磁束入口部7bは、一方の支柱71の上端に固定されたコイル巻部7aの一端より突出し、単位磁石15の一方の半円部分15aの半周面15dの周方向に沿って延長して当該半周面15dと対向する対向面としての弧状面75を備える。磁束出口部7cは、他方の支柱72の上端に固定されたコイル巻部7aの他端より突出し、単位磁石15の他方の半円部分15bの半周面15eの周方向に沿って延長して当該半周面15eと対向する対向面としての弧状面76を備える。
【0014】
コイル8は、ヨーク7のコイル巻部7aの外周面にコイル巻部7aの一端側から他端側に向けて螺旋状にN回(例えば1000回)巻き回された構成である。
【0015】
以上のように構成されたタイヤ内発電装置1は、ベース2の他方の円面が、タイヤ気室内であって例えばトレッド面の裏面に相当する位置に固定される。そして、車を走行させると、タイヤ内振動でもっともエネルギーの高い遠心力の変動により、発電用磁石6がガイド棒3の延長方向に直線往復移動を行う。タイヤ内の遠心力F=m×V/r(mはタイヤ内発電装置1の質量、Vは車輪速度、rはタイヤ半径)は、接地時以外においては、V/rにより決まり、接地時には0になる。この遠心力により、コイルばね5Aが反発し、発電用磁石6がガイド棒3の延長方向に直線往復移動を行う。そして、発電用磁石6の単位磁石15がヨーク7の弧状面75;76の横を上下方向に通過する毎にヨーク7の中を通過する磁束の向きが反転し、磁束がコイル8を横切るたびに、電圧が発生する。この電圧が整流回路25を通して充電回路26に充電され、デバイス27に供給される。
尚、ヨーク7の両端の弧状面75;76の横を上下方向に通過する単位磁石15の磁極が変わる毎に、弧状面75;76が磁束入口部になったり磁束出口部になったりする。
【0016】
形態1によれば、発電用磁石6が、異極同士を接着してガイド棒3の棒に沿った方向に積層された複数個の単位磁石15により構成されたので、1つ1つの単位磁石15がヨーク7の弧状面75;76の横を直線往復移動方向に通過する毎に、ヨーク7の中を通過する磁束の向きが反転するので、磁束の反転速度が速くなる。磁束の反転する速度とコイル8の両端に発生する電圧の大きさとが比例するので、高電圧を発生するタイヤ内発電装置1を提供できる。
【0017】
尚、磁束の反転する速度は、ガイド棒3の延長方向に沿った方向の単位磁石15の厚さaと弧状面75;76の厚さbとが薄いほど早くなるので、形態1においては、図2に示すように、単位磁石15の厚さaとヨーク7の弧状面75;76の厚さbとを薄くすることが望ましい。
【0018】
ヨーク7は、磁束入口部7b及び磁束出口部7cとして機能する弧状面75;76を有したので、単位磁石15からの磁束をヨーク7に効率良く取り込むことができて、高電圧を発生できる。
【0019】
形態1によれば、発電用磁石6が、リニアベアリング4に保持され、ガイド棒3に沿って直線往復移動可能に構成されたので、リニアベアリング4により発電用磁石6が移動する際の摩擦抵抗を少なくでき、かつ、ガイド棒3により発電用磁石6が精度よく直線往復移動を行うので、発電用磁石6がスムーズに直線往復移動し、効率的に高電圧を発生できる高品質のタイヤ内発電装置1を提供できる。
【0020】
形態1によれば、反発手段5としてのコイルばね5Aを備えたので、タイヤの遠心力のON/OFFにより発電用磁石6を直線往復移動させることができ、効率的に高電圧を発生できる。
【0021】
形態1において、好ましくは、ヨーク7の弧状面75;76のベース面18からの位置は、車が時速30kmでコイルばね5Aが吊り合ったときの発電用磁石6の直線往復移動方向の長さの中心位置と一致する位置に設ける。これにより、発電用磁石6が、低速時においてヨーク7の弧状面75;76を中心として直線往復移動方向に単振動を繰り返すので、低速時においても効率的に発電できるようになる。
【0022】
形態1において、好ましくは、図4に示すように、単位磁石15(発電用磁石6)の円の半周面15d;15eとヨーク7の弧状面75;76との間の最短距離Xを、単位磁石15(発電用磁石6)の円の外径寸法の10%以下程度に形成する。これにより、漏洩磁束を少なくできて、高電圧を発生できるようになる。
【0023】
形態1において、好ましくは、ヨーク7のコイル8の巻かれたコイル巻部7aの断面積Sが、以下の条件を満たすようにした。
φ<S×Bm<1.2×φ
但し、Bm;ヨークの最大飽和磁束密度、φ;発電用磁石の全磁束。
このように、φ<S×Bmとしたことで、発電用磁石により発生する磁束を全てヨークに通すことができるようになり、S×Bm<1.2×φとしたことで、コイルの全長を短くできるようになる。よって、装置の小型化が図れ、発電効率が高まる。
【0024】
形態1において、好ましくは、コイル8の巻線として、断面矩形状の平角線を用いる。これにより、巻線抵抗減少と巻数増加が図れ、巻線密度を向上できるので、発電効率が高まる。
【0025】
形態1において、好ましくは、リニアベアリング4のボールを、非磁性体、例えば、セラミックや樹脂により形成する。これにより、ボールの動きが発電用磁石6の磁力によって妨げられることを防止でき、発電用磁石6をスムーズに直線往復移動させることができるようになる。
【0026】
形態1において、好ましくは、ガイド棒3を、非磁性の材料により形成する。これにより、ガイド棒3と発電用磁石6とが引き合うのを防止できて、発電用磁石6をスムーズに直線往復移動させることができるようになる。
【0027】
形態1において、好ましくは、ガイド棒3を、非導電性の材料により形成する。これにより、ガイド棒3に発生する渦電流をなくすことができ、ガイド棒3による力学的損失をなくすことができる。
【0028】
形態1において、好ましくは、発電用磁石6を、残留磁束密度の高いネオジウム磁石により形成する。これにより、大きい反発力、安定した高電圧を得ることができる。
【0029】
形態1の実施例
・タイヤサイズ:225/55R17を用いた。
・発電用磁石6は、厚さaが1.25mm、φ10mmの円板形状のネオジウム磁石により形成された単位磁石15を4個積層して作成したものを用いた。
・単位磁石15(発電用磁石6)の円の半周面15d;15eとヨーク7の弧状面75;76との間の最短距離Xは、0.2mmとした。
・コイル8は、線径φ0.2mm、全長11.7m、抵抗5Ω、1000回巻した。
・非磁性のセラミック製のボールを備えたリニアベアリングを用いた。
・走行速度を30km/hとして、蓄電圧が0Vから安定するまで走行させた。
・安定した電圧とデバイスの負荷(R=500Ω)とにより、発電量(W=V/R)を算出した。
・実施例により発生した電圧のグラフを図6に示した。走行中の蓄電圧の状況を図7に示した。
・図7からわかるように、30km/h走行において、23mWが得られた。
【0030】
形態2
コイルばね5Aの代わりに、磁気ばねとして作用して発電用磁石6を反発させる反発手段5としての反発用磁石5Bを用いた。
図5に示すように、ガイド棒3の他端に設けられて発電用磁石6のガイド棒3からの抜けを防止する抜け防止部80と、ベース面18に固定されて発電用磁石6を反発させる反発用磁石5Bとを備えた。
反発用磁石5Bは、ガイド棒3が貫通する中心孔81を備えた円板形状に形成され、中心孔81にガイド棒3を通して円板面82とベース面18とが接着される。反発用磁石5Bの円板の外周径はベース2の円板の外周径よりも小さい。発電用磁石6と反発用磁石5Bとの互いに向かい合う半円部分の半円面同士は同極に形成され、これにより、発電用磁石6が反発用磁石5Bに近づいた場合に発電用磁石6が反発用磁石5Bにより反発して反発用磁石5Bより離れる方向に移動するので、発電用磁石6に遠心力が加わった際に発電用磁石6と反発用磁石5Bとの衝突は防止される。
反発用磁石5Bを用いる場合には、発電用磁石6と反発用磁石5Bとがくっついてしまうことを防止するため、発電用磁石6と反発用磁石5Bとの互いに向き合う面が同極に維持されるように、発電用磁石6がガイド棒3を回転中心として回転不能にガイド棒3に取付けられた回り止め構造を設ける。回り止め構造は、例えば、図5に示すように、ガイド棒3にガイド棒3の軸方向に沿って延長する回り止め溝90を形成し、発電用磁石6の中心孔11にはこの回り止め溝90内に嵌り込む係合片91を設ければよい。
【0031】
尚、図示しないが、発電用磁石6をリニアベアリング4により保持すれば、互いに向かい合う反発用磁石5Bと発電用磁石6との面をより正確に平行に保てるため、最大の反発力を得ることができる。この場合、リニアベアリング4を非磁性の材料により形成することにより、反発用磁石5Bと発電用磁石6との間に引力が生じるのを防止でき、反発用磁石5Bによる反発力を最大にできるので、反発用磁石5Bと発電用磁石6とが接触して発電用磁石6がヨーク7の弧状面75;76を横切らなくなって発電されない状態となることを防止できる。
【0032】
形態3
形態2の場合において、発電用磁石6は、反発用磁石5Bに近い側に位置される単位磁石15の円板の厚さが、反発用磁石5Bに遠い側に位置される単位磁石15の円板の厚さよりも厚いもの、例えば、5/3程度のものを用いる。これにより、発電用磁石6と反発用磁石5Bとの間に作用する反発力が大きくなるので、タイヤ内発電装置1が取付けられているタイヤの内面の裏側に位置するトレッド面が接地しているとき(遠心力OFF時)の位置エネルギーを最大限に稼ぐことができ、遠心力発生時に発電用磁石6がヨーク7の弧状面75;76を横切る速度を速くできるので、高い電圧を発生できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のタイヤ内発電装置1によれば、タイヤ内の温度や圧力タイヤ情報、例えば、タイヤにかかる圧力、路面の滑りやすさを検出し、これらタイヤの動的な状態を連続送信するために高電力を必要とするデバイスに安定して電力を供給できるようになる。
【0034】
尚、発電用磁石6を1つの単位磁石15により形成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 タイヤ内発電装置、2 ベース、3 ガイド棒、5A コイルばね(反発手段)、5B 反発用磁石(反発手段)、6 発電用磁石、7 ヨーク、8 コイル、
15 単位磁石、75;76 弧状面(対向面)、80 抜け防止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの気室内に取付けられる発電装置において、車両走行時のタイヤに加わる遠心力の変化に応じて直線往復移動可能に設けられた発電用磁石と、当該発電用磁石が発生する磁束を通すヨークと、ヨークに巻かれたコイルとを備え、発電用磁石は、直線往復移動方向と交差する方向における一方側が一方の極に着磁されたとともに直線往復移動方向と交差する方向における他方側が他方の極に着磁され、ヨークは、発電用磁石の一方の極から磁束を取り込む磁束入口部と発電用磁石の他方の極に磁束を送る磁束出口部とを備えたことを特徴とするタイヤ内発電装置。
【請求項2】
発電用磁石が、直線往復移動方向に沿った方向に複数の単位磁石同士を接着して構成され、単位磁石同士は、互いに異極に着磁された部分同士が接着されたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ内発電装置。
【請求項3】
ヨークの磁束入口部及び磁束出口部は、発電用磁石の直線往復移動方向に沿った周面と対向する対向面を備え、対向面は、発電用磁石の周面の周方向に沿った方向の長さが発電用磁石の直線往復移動方向に沿った方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタイヤ内発電装置。
【請求項4】
ヨークのコイルの巻かれたコイル巻部の断面積Sは、以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタイヤ内発電装置。
φ<S×Bm<1.2×φ
但し、
Bm;ヨークの最大飽和磁束密度
φ;発電用磁石の全磁束
【請求項5】
コイルの巻線として、断面矩形状の平角線を用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のタイヤ内発電装置。
【請求項6】
発電用磁石の直線往復移動方向と直交するベース面を備えたベースと、ベース面より設けられて発電用磁石の直線往復移動を案内するガイド棒と、一端がベース面に固定されて他端がベース面と対向する発電用磁石の下面に固定された反発手段としてのコイルばねとを備え、コイルばねが、発電用磁石に所定の直線往復移動範囲内で直線往復移動を行わせるとともに、発電用磁石とベース面との衝突を防止したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のタイヤ内発電装置。
【請求項7】
ヨークの対向面は、車が時速30kmでコイルばねが吊り合ったときの発電用磁石の直線往復移動方向の長さの中心位置と一致する位置に設けられたことを特徴とする請求項6に記載のタイヤ内発電装置。
【請求項8】
発電用磁石の直線往復移動方向と直交するベース面を備えたベースと、ベース面より設けられて発電用磁石の直線往復移動を案内するガイド棒と、ガイド棒のベース面とは反対側の端部に設けられて発電用磁石のガイド棒からの抜けを防止する抜け防止部と、ベース面に固定されて発電用磁石を反発させる反発用磁石とを備え、発電用磁石と反発用磁石との互いに向き合う面が同極に維持されるように、発電用磁石がガイド棒を回転中心として回転不能にガイド棒に取付けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のタイヤ内発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−213531(P2010−213531A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59416(P2009−59416)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】