説明

タイヤ把持装置

【課題】把持位置がタイヤ中心に案内されるタイヤ把持装置を提供する。
【解決手段】ロボットアーム先端11aの中心位置合せされた固定の第1ベース部材12に、タイヤの回転中心軸O1に略垂直な方向に移動可能な第2ベース部材13を支持し、第2ベース部材13にタイヤの回転中心軸方向に移動可能な複数のアーム部材14を設け、タイヤ外周面に圧接してタイヤを把持する位置とタイヤ外周面から離間する位置へ複数のアーム部材14を移動する第1駆動手段15と、複数のアーム部材をタイヤの外周面と対向する位置へタイヤの回転中心軸方向に移動させる第2駆動手段16と、アーム部材によって把持されたタイヤの回転中心軸線O1上に第1ベース部材の中心O2位置を合わせる位置調整手段20を有し、第1位置に配置されたタイヤの位置に追従してアーム部材がタイヤを把持した後に、位置調整手段でタイヤの回転中心軸線上に第1ベース部材の中心を位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両組み立てラインに設置された搬送ロボットのロボットアーム先端に取り付けられるタイヤ把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両組み付けラインでは、各工程において必要な部品を組付けロボットや人員によって車体に組み付けることで車両を生産している。組み付け部品の1品目となるタイヤは、特殊な車両を除いては、通常、ホイールに装着された状態で車両の前後それぞれ1本ずつ、計4本装着されるとともに、スペアタイヤが1本、トランクなどに装備される。タイヤやホイールは、車両が異なるとサイズが異なる場合があるので、車両に対応するタイヤ毎に積層してタイヤセットとされている。このようなタイヤセットは、搬送手段で第1の位置となる分離位置まで搬送され、供給位置近傍に配置されたタイヤ把持装置によって把持されて1本ずつに分離されて、第2の位置となる供給位置へと搬送される。
【0003】
タイヤ把持装置は、積層されたタイヤの最下位のものから分離するものがある。このタイプのタイヤタイヤ把持装置は、タイヤ積層方向に移動可能なアームの先端に固定されたベース部材に、把持・離間する方向に開閉自在なアーム部材を備えていて、最下位のタイヤよりも上方のタイヤをアーム部材で把持して一括して持ち上げ、最下位のタイヤを払い出している。
【0004】
一方、特許文献1には、積層された最上位のタイヤのホイールにアーム部材を挿入して外径方向に移動させることでタイヤを内側から把持してタイヤを分離するタイヤ把持装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−229754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のようなタイヤ把持装置では、最下位のタイヤ以外のタイヤを一括して持ち上げるので、アーム部材やベース部材への負荷が大きく故障の要因となってしまう。またタイヤがアーム部材で把持する位置からずれていると、持ち上げているときの重量バランスが不均一となって、アーム部材やベース部材に対する負荷が大きく、これも故障の要因となってしまう。
【0007】
特許文献1においては、アーム部材をホイールの内部に挿入するので、タイヤに径方向へのずれが生じていると、ホイール内にアーム部材を挿入する際にホイールとアーム部材が干渉してホイールの傷つきが生じることや、タイヤのずれが大きい場合にはタイヤの把持不良の要因となってしまう。
【0008】
本発明は、タイヤがアーム部材による把持位置からずれている場合でも良好にタイヤを把持できて、ロボットアーム作動時の重量バランスが安定して耐久性のよいタイヤ把持装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明では、車両に装着されるタイヤを第1の位置から第2の位置へ搬送する搬送ロボットのロボットアーム先端に取り付けられるタイヤ把持装置であって、ロボットアーム先端の中心と自身の中心とを所定の位置に位置合わせして固定された第1のベース部材と、第1のベース部材に支持されて、タイヤの回転中心軸に略垂直な方向に移動可能な第2のベース部材と、第2のベース部材から延出し、タイヤの回転中心軸方向に移動可能な複数のアーム部材と、複数のアーム部材がタイヤ外周面に圧接してタイヤを把持する位置と、複数のアーム部材がタイヤ外周面から離間する位置とを占めるように、第2のベース部材を移動させる第1の駆動手段と、第2のベース部材に設けられ、タイヤの外周面と対向する位置へ複数のアーム部材をタイヤの回転中心軸方向に移動させる第2の駆動手段と、アーム部材によって把持されたタイヤの回転中心軸線上に第1のベース部材の中心の位置を合わせる位置調整手段を有し、第1の位置に配置されたタイヤの位置に追従してアーム部材がタイヤを把持した後に、位置調整手段がタイヤの回転中心軸線上に第1のベース部材の中心の位置を合わせることを特徴としている。 請求項2の発明では、請求項1に記載のタイヤ把持装置において、位置調整手段は、第1のベース部材と第2のベース部材の間に介装され、第1のベース部材と第2のベース部材とを平面上において互いに直交する方向に移動可能に支持するスライド支持部材と、スライド支持部材をスライド移動させて、第1のベース部材の中心と第2のベース部材の中心とを所定の位置に位置決めする位置決め手段とを備え、第1の位置に配置されたタイヤの位置に追従してタイヤの回転中心軸線上に第2のベース部材の中心の位置を合うように複数のアーム部材がタイヤを把持し、ロボットアームが可動してタイヤを持上げた後に、位置決め手段がタイヤの回転中心軸線上に第1および第2のベース部材の中心の位置を合わせることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のタイヤ把持装置において、位置調整手段は、タイヤの回転中心軸線上に、ロボットアームの先端の中心と第1および第2のベース部材の中心の位置とを合わせることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタイヤ把持装置において、位置調整手段は、エアシリンダーで作動し、第1の位置に配置されたタイヤの位置に追従してアーム部材がタイヤを把持する際は、エアシリンダーのエアは解放されてエアシリンダーは伸縮自在に許容されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロボットアーム先端の中心と自身の中心とを所定の位置に位置合わせして固定された第1のベース部材に支持されて、タイヤの回転中心軸に略垂直な方向に移動可能な第2のベース部材に、タイヤ回転中心軸方向に移動可能に設けた複数のアーム部材は、第2の駆動手段によりタイヤの外周面と対向する位置へ移動し、第1の駆動手段により第2のベース部材が把持する方向に移動することで、タイヤをその外周面側から把持する。このとき、タイヤが径方向にずれていても、第1の位置に配置されたタイヤの位置に追従してアーム部材がタイヤを把持した後に、位置調整手段がタイヤの回転中心軸線上に第1のベース部材の中心の位置を合わせるので、タイヤが径方向にずれていても、第1の位置に配置されたタイヤの位置にアーム部材が追従するので、確実にタイヤを把持することができる。また、タイヤの把持後に、位置調整手段がタイヤの回転中心軸線上に第1のベース部材の中心の位置を合わせるので、ロボットアーム作動時の重量バランスが安定して耐久性が向上する。
【0013】
本発明によれば、第1のベース部材と第2のベース部材の間に介装され、第1のベース部材と第2のベース部材とを平面上において互いに直交する方向に移動可能に支持するスライド支持部材をスライド移動させて、第1のベース部材の中心と第2のベース部材の中心とを所定の位置に位置決めする位置決め手段が、第1の位置に配置されたタイヤの位置に追従してタイヤの回転中心軸線上に第2のベース部材の中心の位置を合うように複数のアーム部材がタイヤを把持して持上げた後に作動して、タイヤの回転中心軸線上に第1および第2のベース部材の中心の位置を合わせるので、ロボットアーム可動時の重量バランスが安定し、良好な分離動作を行える。
【0014】
本発明によれば、位置調整手段は、タイヤの回転中心軸線上に、ロボットアームの先端の中心と第1および第2のベース部材の中心の位置とを合わせるので、よりロボットアーム可動時の重量バランスが安定し、良好な分離動作を行える。
【0015】
本発明によれば、位置調整手段はエアシリンダーで作動し、第1の位置に配置されたタイヤの位置に追従してアーム部材がタイヤを把持する際に、エアシリンダーのエアが解放されてエアシリンダーが伸縮自在に許容されているので、簡素な構造で位置調整手段を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は車両組み付けラインにおけるタイヤ分離エリア1を示す。このタイヤ分離エリア1は、タイヤストレージ2に複数のタイヤセット3が積層状態で保管されている。保管されているタイヤセット3は、搬送経路4を介して1セットずつエリアAに向かって搬送される。本形態において、タイヤセット3は、図示しない車両の前輪用と後輪用及びスペア用のタイヤ5が積載されたものである。
【0017】
搬送経路4の終端4aは、エリアAに配置されている。終端4aの近傍には、搬送経路4で搬送されてくるタイヤセット3を1本ずつのタイヤ5に分離するタイヤ把持装置10が配置されている。タイヤ把持装置10の近傍には、タイヤ把持装置10によって分離された各タイヤ5をタイヤ組付エリアへ供給する複数の搬送経路6,7,8の始端6a,7a,8aが配置されている。
【0018】
タイヤ把持装置10は、搬送経路4の終端4aと搬送経路6,7,8の始端6a,7a,8aを含むエリアA内で、旋回とタイヤ積層方向(図2矢印C方向)に可動するロボットアーム11を備えている。本形態では、タイヤセット3が位置する終端4aを第1の位置となる分離位置とし、積層されたタイヤセット3から分離されたタイヤ5を搬送する始端6a,7a,8aを第2の位置となる供給位置としている。つまり、ロボットアーム11は、積層されたタイヤ5が位置する第1の位置と積層されたタイヤ5から分離されたタイヤ5を搬送する第2の位置及びタイヤ積層方向(図2矢印C方向)に可動するように構成されている。
【0019】
図2,図3に示すように、タイヤ把持装置10は、ロボットアーム11の先端11aにタイヤ把持ユニット100が装着されている。タイヤ把持ユニット100は、ロボットアーム11の先端11aに固定された第1のベース部材12と、第1のベース部材12に支持されて、矢印Bで示す把持または離間する方向(以下「開閉方向B」と記す)に開閉自在な第2のベース部材13と、第2のベース部材13から延出し、タイヤの回転中心軸方向Cに移動可能に設けられた4つのアーム部材14,14,14,14と、各アーム部材14がタイヤ外周面5aに圧接してタイヤ5を外周側の四方から把持するクランプ位置と各アーム部材14がタイヤ外周面5aから離間するアンクランプ位置を占めるように、第2のベース部材13を開閉方向Bに移動させる第1の駆動手段15と、積層されたタイヤ5のうち任意のタイヤ5の外周面5aと対向する位置へ各アーム部材14を回転中心軸方向Cに移動させる第2の駆動手段16,16,16,16と、各アーム部材14によって把持されたタイヤ5の回転中心O1上に、ロボットアームの先端11aと一体的な第1のベース部材12の中心O2の位置を合わせる位置調整手段20を有している。そして、このタイヤ把持装置10では、各アーム部材14によるタイヤ5の把持後に、位置調整手段20でタイヤ5の回転中心O1と第1のベース部材12の中心O2の平面上での位置を合わせるように構成されている。
【0020】
このような構成とすると、図4に示すように、ロボットアーム11の先端11aに固定された第1のベース部材12に支持されて開閉方向Bに開閉自在な第2のベース部材13に設けた複数のアーム部材14が、第2の駆動手段16によりそれぞれ任意のタイヤの外周面5aと対向する位置へ移動される。そして第1の駆動手段15により第2のベース部材13がクランプ位置へ移動するとタイヤ5が複数のアーム部材14によってその外周側から把持される。このとき、積層されたタイヤ5が開閉方向Bにずれていても、第1のベース部材12と第2のベース部材13が相対的に移動してタイヤ5の位置に追従するので、アーム部材14の位置に自由度を持たせる事ができる。このため、タイヤ5の位置に合わせてアーム部材14が径方向に移動するので、良好にタイヤ外周面5aを把持することができる。また、タイヤ5の把持に際し、タイヤ5の位置に応じて第2のベース部材13と一緒にアーム部材14が開閉方向Bに移動して、タイヤの回転中心O1と第1のベース部材12の中心O2がずれた状態で把持された場合でも、アーム部材14によって把持されたタイヤ5の回転中心O1と第1のベース部材の中心O2の位置合わせが、アーム部材14によるタイヤ5の把持後に位置調整手段20によって行われるため、ロボットアーム11の可動時の重量バランスが安定し、良好な分離動作を行える。
【0021】
次にタイヤ把持ユニット100の構成について説明する。
【0022】
タイヤ把持ユニット100を構成する第1のベース部材12は、図2,図6に示すように板状部材であって、ロボットアーム11の先端11aの中心O3と、自身の中心O2とが一致するように先端11aに固定されて一体化されている。
【0023】
第2のベース部材13は、図5に示すように、開閉方向Bにおいて二分割された右ベース部材13Aと左ベース部材13Bで構成されていて、ラックアンドピニオン機構18によって開閉方向Bにスライド自在とされている。このようなスライド自在な第2のベース部材13は、図6に示すように、第1のベース部材12と第2のベース部材13の間に介装されたスライド支持部材21を構成する支持部22にレールとスライダーで構成された周知のスライド機構19Aを介して開閉方向Bに移動可能に支持されている。
【0024】
第2のベース部材13の四隅には、図3,図5に示すように、ロッド状のアーム部材14がそれぞれ紙面垂直方向(回転軸線方向C)に摺動自在に支持されている。アーム部材14の先端14aは、図2,図6に示すように、第2のベース部材13よりもタイヤ側となる下方に位置している。各アーム部材の先端14aには、タイヤ外周面5aに当接する把持部材17がアーム部材14の軸線を中心に回転自在に装着されている。各把持部材17は、弾性部材となるゴムで構成されている。なお、各把持部材17は鉄でもよく、また、鉄の回りに弾性部材となるゴムを配設してもよい。
【0025】
第2のベース部材13の四隅には、図3,図4に示すように第2の駆動手段16がそれぞれ配置されている。第2の駆動手段16は、内部にピントンを有するエアシリングー16aと、ピストンによって往復動する可動ロッド16bでそれぞれ構成されていて、アーム部材14と可動ロッド16bの移動方向が同一方向となるように配置されている。エアシリングー16aは第2のベース部材13に固定され、各可動ロッド16bの先端は各アーム部材14の先端14a寄りに固定されている。
【0026】
第2のベース部材13を開閉方向Bに移動する第1の駆動手段15は、図3,図5に示すよう、内部にピントンを有するエアシリングー15aと、ピストンによって往復動する可動ロッド15bでそれぞれ構成されている。エアシリングー15aは、ブラケットを介して支持部22に固定されている(図6参照)。可動ロッド15bは一方のベース部材となる右ベース部材13Bに固定されている。第1の駆動手段15は、第2のベース部材13の移動方向と可動ロッド15bの移動方向が同一方向となるように配置されている。
【0027】
位置調整手段20は、図3,図6に示すように、第1のベース部材12と第2のベース部材13の間に介装され、第1のベース部材12と第2のベース部材13とを平面上において互いに直交する方向に移動可能に支持するスライド支持部材21と、スライド支持部材21をスライド移動させて、第1のベース部材12の中心O2と第2のベース部材13の中心O4とを所定位置に位置決めする位置決め手段とを有する。位置決め手段は、スライド支持部材21を第2のベース部材13の中心04で保持する位置決め手段25と、図6に示すように第1のベース部材11をスライド支持部材21の中心05で保持する位置決め手段30とを有している。この位置調整手段20は、タイヤ5の回転中心軸線O1上に、ロボットアームの先端11aの中心O3と第1および第2のベース部材の中心O2,O4の位置とを合わせるものである。
【0028】
スライド支持部材21は、図7に示すように、開閉方向Bに延びる長板状の支持部22と、支持部22と直交する矢印Dで示す方向(以下「直交方向D」と記す)に長い板状の可動部23で構成されている。可動部23は、支持部22上に配置されているともに、レールとスライダーで構成された周知のスライド機構19Bを介して支持部22上を開閉方向Bに移動可能に支持されている。可動部23の上面には第1のベース部材12が配置されている。可動部23は、レールとスライダーで構成された周知のスライド機構19Cを介して第1のベース部材12を直交方向Dに移動可能に支持している。
【0029】
位置決め手段25は、支持部22の両端22a,22bにそれぞれ配置されている。位置決め手段25は、内部にピントンを有するエアシリングー25aと、ピストンによって往復動する可動ロッド25bでそれぞれ構成されている。各エアシリングー25aは、支持部22の上面にブラケット26,26を介してそれぞれ固定されている。可動ロッド25bの先端は、それぞれタイヤ幅方向となる開閉方向Bに位置する可動部23の側面23a、23bに当接している。このため、可動ロッド25bは可動部23を両側から挟み込んでいて、可動部23の開閉方向Bへの移動に規制を与えるように配置されている。
【0030】
位置決め手段30は、直交方向Dに位置する可動部23の両端23c,23dにそれぞれ配置されている。位置決め手段30は、内部にピントンを有するエアシリングー30aと、ピストンによって往復動する可動ロッド30bでそれぞれ構成されている。各エアシリングー30aは可動部23にブラケット27,27を介してそれぞれ固定されている。可動ロッド30bの先端は、それぞれ直交方向Dに位置する第1のベース部材12の側面12a,12bに当接している。このため、可動ロッド30bは第1のベース部材12を両側から挟み込んでいて、第1のベース部材12の直交方向Dへの移動に規制を与えるように配置されている。
【0031】
図2,図6に示すように、第2のベース部材13の下部には、積層されたタイヤ5の位置を検知するタイヤ検知手段28が設けられている。タイヤ検知手段28は最上位のタイヤ5の側面5bに当接する検知ローラ28aがタイヤ積層方向Cに移動自在に支持されていて、ロボットアーム11が下降してこの検知ローラ28aがタイヤ5によって押し上げられると、その上昇位置を検知スイッチ28bで検知(オン)することで、把持するタイヤ5の回転軸線方向での位置を検知している。
【0032】
図8に示すように、第1の駆動手段15には、エアシリンダー15a内に空気を供給する配管51,52が接続されている。第1の駆動手段15は、配管51に空気が供給されるとタイヤ5を把持する方向に第1のベース部材12を移動し、配管52に空気が供給されるとタイヤ5を把持しない方向に第1のベース部材12を移動するように作動する。また、第1の駆動手段15には、第1のベース部材12をクランプ位置でロック状態するための空気をエアシリンダー15a内に空気を供給する配管53が接続されている。
【0033】
第2の駆動手段16には、各エアシリンダー16a内に空気を供給する配管54,55が接続されている。第2の駆動手段16は、配管54に空気が供給されると各アーム部材14をタイヤ5に向かって下降し、配管55に空気が供給されると各アーム部材14を上昇するように作動する。
【0034】
位置決め手段25,30には、各エアシリンダー25a、30a内にそれぞれ空気を供給する配管56,57が接続されている。位置決め手段25,30は、配管56に空気が供給されると各可動ロッド25b,30bを各シリンダー25a,30aから突出させて可動部23と第1のベース部材12の移動を規制し、配管57に空気が供給されると可動ロッド25b,30bを各シリンダー25a,30a内に引き戻して可動部23と第1のベース部材12が開閉方向Bと直交方向Cに相対的に移動自在となるように作動する。
【0035】
配管51〜57は、高圧の空気供給源58とそれぞれ接続している。配管51,52と空気供給源58の間には、経路切換手段となる電磁ソレノイド61が配置され、配管53と空気供給源58の間には駆動手段となる電磁ソレノイド62が配置されている。配管54,55と空気供給源58の間には、経路切換手段となる電磁ソレノイド63が配置され、配管56,57と空気供給源58の間には経路切換手段となる電磁ソレノイド64が配置されている。電磁ソレノイド61,63,64は、図示しない制御手段によってその作動が制御されることで、配管の一方を開放し、他方を閉鎖することで経路を切り替える。電磁ソレノイド62は、図示しない制御手段によって作動されると、配管53を開いて空気をエアシリンダー15a内に供給する。
【0036】
本形態に係るタイヤ把持装置10は、第1の位置(図2参照)に配置されたタイヤ5の位置に追従してタイヤ5の回転中心軸線O1上に第2のベース部材13の中心O4の位置を合うように、第1の駆動手段15が作動して各アーム部材14でタイヤ5が把持し、ロボットアーム11が可動して各アーム部材14で把持したタイヤ5を持上げた後に、位置決め手段25,30が作動して、タイヤ5の回転中心軸線O1上に第1および第2のベース部材の中心O2,O4の位置を合わせるように設定されている。また、第1の位置に配置されたタイヤ5の位置に追従してタイヤ5を把持する際は、第2の駆動手段16の各エアシリングー16aのエアは解放されて、可動ロッド16bが伸縮自在に許容されている。
【0037】
本発明に係るタイヤ把持装置10では、複数のアーム部材14を把持位置へ移動する方向へ第1の駆動手段15が作動してから所定時間T経過した後に、ロボットアーム11が積層されたタイヤ5から離間する方向に可動するように設定されている。所定時間Tは、制御手段に設定されていて、タイヤ検知手段28によってタイヤ5が検知されてからタイヤ把持装置10で把持する最小径のタイヤ5を把持する時間として設定されている。
【0038】
次にタイヤ把持装置10の動作について説明する。
タイヤ把持装置10は、図2に示すように搬送経路4の終端4aにタイヤセット3が搬送されてくると、その上部に位置するようにロボットアーム11を可動するとともにタイヤセット3に向かって下降させる。ロボットアーム11の下降に伴いタイヤ把持ユニット100も下降する。すると、図9に示すように下降途中でタイヤ検知手段28の検知ローラ28aがタイヤセット3の最上位のタイヤ5の側面5bによって押し上げられて検知スイッチ28bがオンする。検知スイッチ28bがオンすると、ロボットアーム11の下降が停止し、停止信号をトリガーして図示しないタイマーが作動するとともに、図4に示すよう各アーム部材14を任意のタイヤ5の外周面5aと対向する位置へと移動すべく第2の駆動手段16を作動する。ここでは、電磁ソレノイド63を作動して配管54を開き、各エアシリングー16aに空気を供給してアーム部位14を下降する。各アーム部材14がタイヤ外周面5aと対向すると、第1の駆動手段15を作動して各アーム部材14をクランプ位置へ移動する。つまり、ここでは電磁ソレノイド61を作動して配管51を開き、エアシリングー15aに空気を供給する。これにより第2のベース部材13が図4において内側へ移動し、これに設けられている各アーム部位14をクランプ位置へ移動する。アーム部位14がクランプ位置を占めると、電磁ソレノイド63を作動して配管53を開き、アーム部位14をクランプ位置でロック状態とする空気圧をエアシリングー15aに供給する。これによりタイヤセット3の任意のタイヤ5が複数のアーム部材14によって四方から把持状態でロックされる。この状態では、把持されたタイヤ5の回転中心軸線O1と第2のベース部材13の中心O4とが一致してアーム部材14によって保持される。
【0039】
このとき、位置決め手段25,30は、電磁ソレノイド64によって配管57が開かれてアンロック状態とされているので、各アーム部材14は、図3に示すように、開閉方向(タイヤ幅方向)B及び直交方向Cに移動自在となっている。このため、積層されたタイヤセット3のタイヤ5が開閉方向Bにずれていても、第1のベース部材12と第2のベース部材13が相対的に開閉方向Bと直交方向Cに移動するので、アーム部材14の位置に自由度を持たせる事ができる。よってタイヤ5の位置に追従するようにアーム部材14が移動し、良好にタイヤ外周面5aを把持することができる。
【0040】
これら動作と平行してタイマーで時間を計測していて、所定時間Tが経過すると、制御手段は各アーム部材14を上昇すべく第2の駆動手段16を作動する。つまり、ここでは電磁ソレノイド63を作動して配管55を開き、各エアシリングー16aに空気を供給してアーム部位14を上昇する。
【0041】
アーム部位14が上昇すると、位置決め手段25,30は、電磁ソレノイド64によって配管56が開かれることで作動する。これにより各エアシリングー25a、30a内に空気が供給され、各可動ロッド25b、30bが図7に示すように可動部23と第1のベース部材12とをそれぞれ両側から挟み込みロック状態とする。この位置決め手段25のロック動作により、タイヤ5を把持しているアーム部材14が設けられた第2のベース部材13の中心O4と支持部22の中心O5の位置合わせが行われるとともに、支持部22に対する可動部23の開閉方向Bへの移動がロックされる。また、位置決め手段30のロック動作により、可動部23の中心O5と第1のベース部材13の中心O2の位置合わせが行われるとともに、可動部23に対する第1のベース部材13の直交方向Dへ移動がロックされる。ロボットアーム11の先端11aと第1のベース部材13とは、互いの中心O2、O3を一致させて互いに固定されている。このため、ロボットアーム11の先端11aの中心O3と第1のベース部材13の中心O2とを一致させることで、タイヤ5の回転中心軸線O1からスライド支持部材21の中心O5までの全ての位置合わせがされた状態でロックされる。
【0042】
このため、タイヤ5の把持に際し、タイヤ5の位置に応じて第2のベース部材13と一体的にアーム部材14が開閉方向Bに移動してタイヤ5の回転中心軸線O1と第1のベース部材12の中心O2位置がずれた状態で把持された場合でも、図4に示すようにアーム部材14によって把持されたタイヤ5の回転中心軸線O1と第1のベース部材13の中心O2の平面上での位置を合わせが、アーム部材14によるタイヤ5の把持後に位置調整手段20によって行われるため、ロボットアーム11の可動時の重量バランスが安定し、良好な分離動作を行える。
【0043】
また、各アーム部材14をタイヤ把持位置へ移動する方向へ第1の駆動手段15が作動してから所定時間T経過した後に、積層されたタイヤ5からアーム部材14で把持されたタイヤ5を離間する上昇方向にロボットアーム11が可動するので、異なる径のタイヤ5が積層されていた場合でも、所定時間T経過するまではロボットアーム11は可動しないので、異径タイヤが積層されていても確実にアーム部材14で把持することができ、良好な分離動作を行える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るタイヤ分離装置が配備された車両組み付けラインの一例を示す平面図である。
【図2】本発明に係るタイヤ分離装置の要部構成を示す正面図である。
【図3】本発明に係るタイヤ分離装置の要部構成を示す平面図である。
【図4】第2のベース部材と第1の駆動手段の構成を示す平面図である。
【図5】本発明に係るタイヤ分離装置の要部構成を示す側面図である。
【図6】第1及び第2のベース部材と調整手段の関係を示す拡大図である。
【図7】調整手段の構成を示す平面図である。
【図8】調整手段の構成を示す正面図である。
【図9】第1、第2の駆動手段と第1、第2の保持手段の配管構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
5 タイヤ
11 ロボットアーム
11a 先端
12 第1のベース部材
13 第2のベース部材
14 複数のアーム部材
15 第1の駆動手段
16 第2の駆動手段
20 位置調整手段
21 スライド支持部材
25,30 第1の位置決め手段
B 把持または離間する方向(開閉方向)
C 回転中心軸方向
O1 タイヤの回転中心軸線
O2 第1のベース部材の中心
O3 先端の中心
O4 第2のベース部材の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されるタイヤを第1の位置から第2の位置へ搬送する搬送ロボットのロボットアーム先端に取り付けられるタイヤ把持装置であって、
前記ロボットアーム先端の中心と自身の中心とを所定の位置に位置合わせして固定された第1のベース部材と、
前記第1のベース部材に支持されて、前記タイヤの回転中心軸に略垂直な方向に移動可能な第2のベース部材と、
前記第2のベース部材から延出し、前記タイヤの回転中心軸方向に移動可能な複数のアーム部材と、
前記複数のアーム部材が前記タイヤ外周面に圧接して前記タイヤを把持する位置と、前記複数のアーム部材が前記タイヤ外周面から離間する位置とを占めるように、前記第2のベース部材を移動させる第1の駆動手段と、
前記第2のベース部材に設けられ、前記タイヤの外周面と対向する位置へ前記複数のアーム部材を前記タイヤの回転中心軸方向に移動させる第2の駆動手段と、
前記アーム部材によって把持されたタイヤの回転中心軸線上に前記第1のベース部材の中心の位置を合わせる位置調整手段を有し、
前記第1の位置に配置された前記タイヤの位置に追従して前記アーム部材が前記タイヤを把持した後に、前記位置調整手段が前記タイヤの回転中心軸線上に前記第1のベース部材の中心の位置を合わせることを特徴とするタイヤ把持装置。
【請求項2】
前記位置調整手段は、
前記第1のベース部材と第2のベース部材の間に介装され、第1のベース部材と第2のベース部材とを平面上において互いに直交する方向に移動可能に支持するスライド支持部材と、
前記スライド支持部材をスライド移動させて、前記第1のベース部材の中心と前記第2のベース部材の中心とを所定の位置に位置決めする位置決め手段とを備え、
前記第1の位置に配置された前記タイヤの位置に追従して前記タイヤの回転中心軸線上に前記第2のベース部材の中心の位置を合うように前記複数のアーム部材が前記タイヤを把持し、前記ロボットアームが可動して前記タイヤを持上げた後に、前記位置決め手段が前記タイヤの回転中心軸線上に前記第1および第2のベース部材の中心の位置を合わせることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ把持装置。
【請求項3】
前記位置調整手段は、
前記タイヤの回転中心軸線上に、前記ロボットアームの先端の中心と前記第1および第2のベース部材の中心の位置とを合わせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ把持装置。
【請求項4】
前記位置調整手段は、エアシリンダーで作動し、
前記第1の位置に配置された前記タイヤの位置に追従して前記アーム部材が前記タイヤを把持する際は、前記エアシリンダーのエアは解放されて前記エアシリンダーは伸縮自在に許容されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のタイヤ把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94796(P2010−94796A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270254(P2008−270254)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】