説明

タイヤ用モールドのためのカバー要素及び支持要素の製造方法

タイヤ用モールドの支持ブロック(12)に取り付けられるようになったカバー要素(22)を製造する方法であって、次のステップ、即ち、重ね合わされた粉末塗膜を選択的に溶融させることによってカバー要素(22)及びカバー要素(22)のための少なくとも1つの聞く書支持要素(36)を含む中間要素(34)を製作するステップを有し、カバー要素(22)及び局所的支持要素(36)は、一体品として作られており、次に、カバー要素(22)を支持要素(36)から分離するステップを有する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用加硫モールドの分野、特にセグメント化形式のモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
セグメント化モールドは、互いに比較的密接して配置されると疑似ドーナツ形の成形空間を形成する数個の別々の部品から成る。具体的に言えば、セグメント化モールドは、タイヤのサイドウォールを成形する2つの側方シェルと、シェル相互間に位置していて、タイヤのトレッドバンドを成形する数個の周辺セグメントとを有している。これら部品の全ては、適当な機構体により適正な幾何学的運動によって互いに密接配置される。後でタイヤになる素材としての生又は未硬化のプレフォームは、幾何学的寸法形状及び正確なアーキテクチャを得ると共にトレッドバンドにトレッドパターンを与えるために、モールドにしっかりと押し付けられ、そしてこれに当てられた状態で保持されなければならない。
【0003】
トレッドバンドのトレッドパターンを形成するため、モールドのセグメントは、セグメントの半径方向内面から突き出た要素を有し、これら要素は、タイヤのトレッドバンド上に成形されるべきトレッドパターンのネガを形成する。
【0004】
同一のモールドがトレッドパターンについて種々の設計例を備えたタイヤを製造することができるようにするため、例えば、欧州特許第0523958号明細書から、モールドセグメントを多数の要素、即ち、第1にタイヤのトレッドバンドの全体的曲率を定める包括的形状の支持ブロック及び第2に支持ブロックに取り付けられると共にタイヤトレッドバンドのトレッドパターンを形成するようになった複数個の内張り要素で構成することが慣例として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0523958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献に記載された内張り要素は、成形により、例えば、スチールの鋳造により得られる。したがって、内張り要素は、製造するのに費用が高くつく中実且つ重量のある要素である。
【0007】
本発明の注目に値する目的は、経済的であり且つ実施するのが簡単な内張り要素の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の要旨は、タイヤ用モールドの支持ブロックに取り付けられるようになった内張り要素を製造する方法であって、
‐重ね合わされた粉末層の選択的溶融によって、内張り要素及び内張り要素を局所的に支持する少なくとも1つの局所的支持要素を有する中間要素を製作するステップを有し、内張り要素及び局所的支持要素は、一体品として作られ、
‐内張り要素を支持要素から分離するステップを有することを特徴とする方法にある。
【0009】
内張り要素は、粉末の重ね合わされた粉末層の選択的溶融によって作られる。選択的溶融がレーザを用いて実施される場合、これは、レーザ焼結と通称されている。このコンポーネント製造技術の利点は、コンポーネントの形状をコンピュータによりモデル化することができ、しかも、コンポーネントをこのモデルに基づく焼結によって容易に製造できるということにある。具体的に説明すると、コンポーネントのモデルの入っているコンピュータによってレーザを制御することができ、次に、重ね合わされた粉末層の連続焼結によってコンポーネントを製造することができる。モールド内張りの製造の場合、この技術は、これにより小型の内張り要素、例えばブレード又はストリップを製造できるので特に好適である。
【0010】
しかしながら、内張り要素は、曲率がタイヤの曲率と実質的に同一であるタイヤ用モールドの支持ブロックに取り付けられるようになっている場合、内張り要素は、支持ブロックの曲率と相補する曲率をもつベース面を有することが必要である。換言すると、内張り要素のベース面は、平坦ではなく、湾曲している。
【0011】
しかしながら、レーザ焼結技術では、溶融粉末層を互いに上に重ね合わせて内張り要素を一層ごとに製作する必要がある。押し固め手段が各粉末層に所望の密度を与える。したがって、溶融粉末層は、平べったい層である。
【0012】
したがって、ベース面が平坦ではなく湾曲していう内張り要素を製作するためには、或る場合には、上側の層が下側の層により画定される空間よりも広い空間にわたって延びることが必要であり、このことは、これら層のうちの幾つかが特に押し固め手段の作用中、これらの下に支持体がない状態で突き出ることを意味している。この場合、これら層の相互結合結果が品質不良のものであり、このようにして得られた内張り要素が欠陥のあるものであるという恐れが生じる。
【0013】
本発明の方法により、中間要素を形成するよう内張り要素を局所的に支持する少なくとも1つの局所的支持要素を用いることによりこの問題を解決することができる。この支持要素は、レーザ焼結ステップの実施後に内張り要素から分離されるようになっている。
【0014】
支持要素は、レーザ焼結製造中に非支持状態で突き出る恐れのある内張り要素の部分を支持するよう設計されている。
【0015】
このようにして得られる内張り要素は、極めて良好な品質のものであると共に支持ブロックの形状を相補する所望の形状を有することができる。
【0016】
本発明の方法は、次の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有するのが良い。
‐支持要素は、溶融粉末層の重ね合わせ方向に実質的に平行な方向に内張り要素を支持するよう設計される。上述したように、溶融粉末層は、重ね合わせ方向に互いに重ね合わされる。一般に、これら層は、実質的に水平であり、このことは、重ね合わせ方向が実質的に垂直であることを意味している。その結果、内張り要素が部分的に非支持状態で突き出る場合、重力又は突き出ている部分に対する押し固め手段の機械的作用により生じる力が実質的に垂直であり、従って、重ね合わせ方向に平行である。したがって、支持要素は、溶融粉末層の重ね合わせ方向に実質的に平行な方向に内張り要素を支持するよう設計されることが有利である。
‐分離に先立って、局所的支持要素は、内張り要素と接触状態にある一端部及び溶融粉末層のうちのベース層の一部をなす反対側の端部を有する。溶融粉末層のベース層の意味する内容は、第1の溶融粉末層であり、即ち、焼結された中間要素全体が載る下側層である。したがって、このベース層が応動すべき非支持状態の突き出しに起因して生じる力に関し、支持要素が内張り要素をベース層に連結することが好ましい。
‐中間要素は、実質的に平坦なベース面を有する。ベース面は、第1の溶融粉末層により構成されるので、ベース面は、実質的に平坦である。
‐溶融粉末層は各々、事実上、その全体が、真下の溶融粉末層と一線をなして位置する。換言すると、重ね合わせ方向に沿う真下の溶融粉末層上への溶融層の投影像がこの下側の層の内側に収まる。この場合、非支持状態で突き出る中間要素の層が存在しないということが保証される。というのは、各層は、下に位置する層によって全体が支持されるからである。
‐中間要素は、内張り要素を支持要素から分離しやすいようにする手段を有する。この方法は、内張り要素を支持要素から分離するステップを有するので、この分離を容易にする手段を設けることが好ましい。
‐分離を容易にする手段は、中間要素の局所的厚さ減少部、中間要素の厚さと比較して薄い仕切り又は中間要素に設けられたプレカットから成る。
‐内張り要素は、網目状に配置されたリブから成り、各リブは、重ね合わせ層により定められた平面に実質的に垂直である内張り要素のリブは、タイヤのトレッドバンドに溝を形成するようになっている。
‐この方法は、支持要素に当初連結されている内張り要素の表面を研磨する最終ステップを更に有する。
【0017】
本発明のもう1つの要旨は、上述の方法を実施することにより得られる中間要素にある。
【0018】
本発明の内容は、添付の図面を参照して例示的に与えられているに過ぎない以下の説明を読むと良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】支持ブロック及び本発明の方法を実施することにより得られた1組の内張り要素を有するタイヤ用の加硫モールドの一セグメントの斜視図である。
【図2】図1に示された内張り要素の詳細図である。
【図3】図2の内張り要素を有する本発明の中間要素の斜視図である。
【図4】図3の要素の詳細図である。
【図5】図4の要素の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、製造の予備段階におけるタイヤ用の加硫モールド(図示せず)のセグメント(全体が参照符号10で示されている)を示している。
【0021】
タイヤを加硫するセグメント化モールドは、図1に示されたセグメントと同一又はほぼ同一のセグメントを複数個有している。セグメントは、周方向に互いに並んで位置決めされており、かくして、タイヤのトレッドバンドを成形する筒体を構成する。
【0022】
したがって、所与の一セグメント10は、タイヤのトレッドバンドの一部を形成するようになっている。
【0023】
セグメント10は、支持ブロック12及び支持ブロック12に取り付けられた内張り組立体14を有している。
【0024】
例えば中実スチール(鋼)で作られた支持ブロック12は、特に、内張り組立体14のための支持体を形成する半径方向内側の表面16を有している。この表面16は、実質的に滑らかであり、その全体的形状は、成形中、この支持ブロックに向いたタイヤトレッドバンドの部分の全体的形状と実質的に同一である。換言すると、表面16は、タイヤの軸線を含む半径方向平面に曲率を有すると共にタイヤの軸線に垂直な半径方向平面内に曲率を有し、これら曲率は、タイヤの曲率と実質的に同一である。
【0025】
内張り組立体14は、セグメント10に向いたタイヤのトレッドバンド部分にトレッドパターンを形成するようになった複数個の内張り要素18を含む。
【0026】
種々の形式の内張り要素18は、組立体14を構成し、例えば、図1に示されている組立体14は、タイヤに対して実質的に周方向に差し向けられると共にトレッドバンドの表面のところに形成される溝を形成するようになったブレード20又は周方向に差し向けられたストリップ24及びタイヤに対して軸方向に差し向けられた1組のフィン26を含む櫛状部22を有している。フィン26は、ショルダ領域でタイヤトレッドバンドの縁のところに位置する溝を形成するようになっている。
【0027】
内張り要素18の大抵のものは、互いに接合され、例えばフィン26を備えたストリップ24と同様に格子を形成している。
【0028】
図2は、櫛状部22の細部を示している。櫛状部22のフィン26は、ブロック12の表面16に接触するようになった縁28を有することに注目されるのが良い。この目的のため、フィン26の縁28の形状は、湾曲しており、表面16の形状と実質的に相補する。
【0029】
ストリップ24は、フィン26と実質的に直交しており、このストリップは、モールドの周方向に延びている。かくして、ストリップ24は、ブロック12の表面16に接触するようになったベース30を有し、この場合、ストリップのベースは、タイヤの周方向曲率とほぼ同じ曲率を有している。
【0030】
ベース30及びフィン26の縁28で形成される組立体は、櫛状部22のベース面32を形成し、このベース面は、支持ブロックに接触するようになっている。このベース面は、平坦ではなく、ブロック12の表面16の曲率と実質的に同一の曲率を有している。
【0031】
内張り要素18を形成する櫛状部22は、本発明の方法を用いて、粉末層の連続レーザ焼結により製作され、中間段階は、図3、図4及び図5に示された中間要素34の製作である。
【0032】
中間要素34は、レーザ焼結により一体品として製作される。この中間要素は、第1に、内張り要素18、この場合櫛状部22を有すると共に第2に支持要素36を有し、これら支持要素36は、中間要素34が想像上のベース平面40に含まれるベース面38を有するよう配置されている。したがって、ベース面38は、平坦であり且つ平面40に垂直な方向Dと直交している。
【0033】
中間要素34は、方向Dに重ね合わされた粉末層の連続溶融によって製作される。要素34のベース面38は、溶融される最初の層である。
【0034】
各支持要素36は、フィン26の下縁28と接触状態にある上縁42及び中間要素34のベース面38の一部をなす反対側の下縁44を有している。支持要素36は、平面40に垂直な平面内に含まれるリブ又は垂直仕切りの形態をしている。
【0035】
支持要素36は、中間要素34の任意所与の断面が、ベース平面40に平行な平面内において、ほぼ全体として、所与の断面とベース平面40との間に位置する中間要素の恣意的に取ったどの断面とも一線をなすよう配置されている。
【0036】
かくして、内張り要素22とは異なり、方向Dにおいて非支持状態で突き出る中間要素34の部分が存在しない。換言すると、中間要素上のあらゆる箇所は、荷重をベース面38上に伝える要素34の一部によって方向Dに支持される。
【0037】
支持要素36を内張り要素22、この場合、櫛状部22から分離しやすくするため、内張り要素22の縁28と支持要素36の上縁42との結合部は、この分離を容易にするよう設計された手段を構成する。
【0038】
図4及び図5に示された第1の実施形態によれば、分離手段は、仕切り36が内張り要素22に合体する仕切り36の厚さ減少部から成る。この厚さ減少部は、中間要素34の破断線を形成する。
【0039】
図2及び図3に示された第2の実施形態によれば、内張り要素22の縁28と支持要素36の上縁42との結合部は、プレカット線に沿って連続して位置するミシン穴から成る。このミシン穴は、プレカット手段を形成する。さらに、垂直方向プレカット線50もまた、支持要素36を容易に幾つかの小片に切断しやすくするよう支持要素36に設けられている。切断ステップの実施後、要素22の縁28を研磨して予備ミシン穴に起因するでこぼこをなくすことが必要な場合がある。
【0040】
本発明をセグメント化型のタイヤ用モールドと関連して説明した。当然のことながら、本発明は、セグメント化型のモールドには限定されず、内張り要素が取り付けられる支持ブロックを有する任意形式のモールドに利用できる。
【0041】
さらに、説明した例では、支持要素は、仕切り又はリブの形態をしている。これら要素は、任意恣意的な形状のものであって良く、特に、支持パッドとして形作られても良い。
【0042】
最後に、説明した例では、内張り要素全体は、支持要素により支持されるが、支持要素が支持パッドである場合にそうであるように内張り要素を局所的に又はとびとびの箇所で支持する支持要素は、本発明の範囲に依然として含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用モールドの支持ブロック(12)に取り付けられるようになった内張り要素(18,22)を製造する方法であって、
‐重ね合わされた粉末層の選択的溶融によって、前記内張り要素(18,22)及び前記内張り要素(18,22)を局所的に支持する少なくとも1つの局所的支持要素(36)を有する中間要素(34)を製作するステップを有し、前記内張り要素(18,22)及び前記局所的支持要素(36)は、一体品として作られ、
‐前記内張り要素(18,22)を前記支持要素(36)から分離するステップを有する、方法。
【請求項2】
前記支持要素(36)は、前記溶融粉末層の重ね合わせ方向に実質的に平行な方向(D)に前記内張り要素(18,22)を支持するよう設計されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記分離に先立って、前記局所的支持要素(36)は、前記内張り要素と接触状態にある一端部(42)及び前記溶融粉末層のうちのベース層の一部をなす反対側の端部(44)を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記中間要素(34)は、実質的に平坦なベース面(38)を有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融粉末層は各々、事実上、その全体が、真下の前記溶融粉末層と一線をなして位置している、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記中間要素(34)は、前記内張り要素(18,22)を前記支持要素(36)から分離しやすいようにする手段を有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
分離を容易にする前記手段は、前記中間要素(34)の局所的厚さ減少部、前記中間要素(34)の厚さと比較して薄い仕切り、又は前記中間要素に設けられたプレカットから成る、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記内張り要素(18,22)は、網目状に配置されたリブから成り、各リブは、前記重ね合わせ層により定められた平面に実質的に垂直である、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記支持要素(36)に当初連結されている前記内張り要素(18,22)の表面(28)を研磨する最終ステップを更に有する、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一に記載の方法を実施することにより得られる中間要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−513911(P2012−513911A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542873(P2011−542873)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052638
【国際公開番号】WO2010/072960
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】