説明

タイヤ製造用剛性コア

本発明は、タイヤの内面のための製造型を少なくとも部分的に構成する剛性コアであって、コアが横方向フェースを介して互いに並んで且つ接触状態に配置された複数個の円周方向に隣接したセグメント(10)を有し、少なくとも1つのセグメントの横方向フェースがコアの外部で半径方向に先細になっており、これらセグメントの各々が別々のセグメント(10)を固定する部材への取付け可能な部分(13)を有し、取付け部分(13)がセグメント(10)の各々の半径方向内端部のところに設けられ、少なくとも1つの発熱電気抵抗体(17)がセグメント(10)の各々の中に埋め込まれているような剛性コアに関する。電気抵抗体は、鋼管(16)中に延びる発熱抵抗線(17)を含み、セグメント(10)は、本質的に、鋼管(16)の融点よりも低い融点を有する種類の鋳鉄で作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造に関する。特に、本発明は、タイヤの製造の際の支持体として且つタイヤの内部キャビティの表面を成形する手段として用いられる本質的に剛性のコアに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1075928号明細書及びこの出願の分割出願であった欧州特許第1371479号明細書は、かかるコアを記載しており、コアの機能は、タイヤの内面のための製造型を少なくとも部分的に構成することにある。このコアは、多数のセグメントで構成されており、コアは、ビード相互間の空間を通ってタイヤの内部から取り出せるようになっている。これらセグメントは、これらの横方向フェースのところで互いに並んで且つ接触状態に配置されている。セグメントのうちの少なくとも1つの横方向フェースは、脱型を可能にするようコアの内部に向かって半径方向に先細になっている。
【0003】
上述の特許文献によれば、セグメントは、2つの別々の部分、即ち取り付け部分及び取り付け部分に連結された主要部分で作られ、各部分は、それ自体の要件に応える。主要部分の機能は、タイヤの内面を成形することであり、取り付け部分の機能は、種々のセグメントをロック部材に固定することであり、ロック部材は、1つのかかるコアを構成する種々のセグメントを互いにロックする。
【0004】
取り付け部分は、多数回の組み立て及び分解サイクルに耐えることができるかどうかで選択された第1の材料で作られている。この取り付け部分は、リム及び製造ステーションに据え付けられたグリッパに設けられている種々の他の操作部材によるセグメントの各々の掴み具合を最適化するよう設計されている。取り付け部分は、典型的には、所望の支承面及び形状の全てを作るために機械加工された鋼で作られている。
【0005】
セグメントの各々は、取り付け部分に連結されていて、第1の材料と同じではなく、鋳造性があるかどうか及び良好な熱伝導率を備えているかどうかで選択される第2の材料で作られた主要部分を更に有している。電気抵抗体も又、これらセグメントの各々の中に埋め込まれ又は成形される。この電気抵抗体は、熱伝導を促進するために半径方向外側ドームを形成している壁の内部に配置される。このセグメントは、電気エネルギーを抵抗体に供給することができるようにするコネクタを更に有する。主要部分は、典型的には、アルミニウム合金で作られている。
【0006】
米国特許第1,810,072号明細書は又、アルミニウムで作られた主要部分及びこれとは異なる材料で作られた取り付け部分を有する剛性コアを開示している。
【0007】
欧州特許第893237号明細書は又、同一の原理を利用していて、セグメントを互いにクランプする力を増大させるためにアルミニウムで作られた主要部分と鋼で作られた取り付け部分との膨張差を強調して述べている。
【0008】
上述の特許文献は全て、アルミニウムの鋳造性及び熱伝導率に鑑みて主要部品を製造するためにアルミニウムを用いた場合の利点を記載しており、これらの利点は、コアを用いて未完成状態のタイヤを硬化作業中定位置に保持する場合に有利に利用される。
【0009】
これら特許文献は又、特に熱膨張がコアを硬化プレス内に導入したときに生じた場合、コアの使用中に生じるクランプ力の大きさを強調して述べている。
【0010】
したがって、これら大きな力に耐えるために半径方向補強材を提供する提案がなされている。これら補強材は、欧州特許第893237号明細書に提案されているように横方向仕切り、米国特許第1,810,072号明細書及び欧州特許第1075928号明細書に示されているようにピラー又は欧州特許第1371479号明細書に示唆されているような円周方向仕切りの形態を取っている場合がある。
【0011】
しかしながら、高さと幅の比がますます小さくなっている乗用車用タイヤの迅速な開発により、主要部分の幅がその高さと比較して増大しているコアの構造が必要である。コアの閉鎖中並びに成形及び硬化作業中に主要部分に半径方向に作用する圧力は、ますます大きくなり、その結果、主要部分の内部構造体の補強の強化の必要性があることが当然推定される。
【0012】
さらに、アルミニウム合金の機械的性質は、温度の増大につれて低下するので、補強手段は、製作が容易ではない。或る特定の幾何学的形態では、どっしりとした中央部分でもコアの破損又は変形の原因となる閉鎖力に耐えるのには依然として十分でないことが分かっており、このどっしりとした中央部分は、内容積部の全体がアルミニウムを収容している中央部分のことを意味しており、それにより、当然のことながら、かかる中央部分は、これが意図されている使用にとって不適切になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第1075928号明細書
【特許文献2】欧州特許第1371479号明細書
【特許文献3】米国特許第1,810,072号明細書
【特許文献4】欧州特許第893237号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、この問題の解決に寄与する手段を提供することにある。
【0015】
本発明の剛性コアは、横方向フェースを介して互いに並んで且つ接触状態に配置された複数個の円周方向に隣接して位置するセグメントを有し、少なくとも1つのセグメントの横方向フェースは、コアから半径方向に遠ざかって先細になっている。セグメントの各々は、別々のセグメントを互いに固定するロック部材に取り付け可能な取り付け部分を有し、取り付け部分は、セグメントの各々の半径方向内縁部のところに設けられている。少なくとも1つの電気発熱抵抗体が、セグメントの各々を通って延びている。セグメントは、本質的に、ねずみ鋳鉄で作られている。
【0016】
コアのセグメントを構成するのに鋳鉄を用いることにより、セグメントの機械的強度が大幅に増大し、かくして、上述の問題が解決される。
【0017】
さらに、鋳鉄は、優れた鋳造性を有し、寸法的に非常に正確な形状を作ることができる。
【0018】
本発明の第1の実施形態では、電気発熱抵抗体は、セグメントの各々の鋳鉄の塊中に形成された中空チャネル内に配置される。
【0019】
本発明の第2の実施形態では、電気発熱抵抗体は、各セグメントの塊内に鋳造された鋼管内を延びる。鋼管は、鋼の融点が鋳鉄の融点よりも高いように選択されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】剛性コアの部分側面図である。
【図2】コアのセグメントのA‐A線矢視断面図である。
【図3】コアの部分斜視図であり、A‐A線に沿って取ったセグメントの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明は、本発明の実施形態に関する。
【0022】
本発明の第1の実施形態では、通常の鋳造技術、例えば砂型鋳造技術を用いてセグメントの鋳造中、中空チャネルが作られる。発熱抵抗体は、冷却及び砂からの取り出し後、中空チャネル内に配置される。また、装置の熱効率を向上させるようために、発熱抵抗体を収容したチャネルには、熱伝導に適した材料、例えばマグネシウムが充填されるのが良い。
【0023】
しかしながら、本発明の第1の実施形態によるセグメントの製造は、砂製造型の費用及びチャネルを形成する際に必要な特別な配慮により非常に費用が高くつくことが分かっている。というのは、チャネルをコアのセグメントの半径方向外面のできるだけ近くに差し向けることにより加えられた熱の熱的均一性に特定の注意を払わなければならないからである。この形状では、チャネルは、表面の曲率に合致する必要があると共にチャネルをホットスポットの回避のためには表面に近すぎるところに位置してはならず、熱損失を回避するためには表面から遠すぎるところに位置してもいけない。
【0024】
加うるに、この実施形態は、約10ミリメートル以下の直径のチャネルを作るよう用いることはできず、このことは、チャネルの数を減らして改善すると共にチャネル中の熱損失を減少させることによりコアの熱的反応性を増大させることが望ましいということを考慮した場合、深刻な欠点である。
【0025】
かくして、本発明の好ましい実施形態を構成し、発熱抵抗体が一般に鋼性の管内に前もって配置された別の手段が開発された。したがって、以下の説明は、特に、本発明のこの第2の実施形態に関する。
【0026】
図1は、例示として欧州特許1075928号明細書に記載されているようなセグメント10で構成された剛性コアの主要な輪郭を示している。この剛性コアは、表面11がタイヤの内面に一致している製造型を少なくとも部分的に構成している。
コアは、これらの横方向フェース10d1,10i1又は10d2,10i2のところで互いに並んで接触状態に配置された複数個の円周方向に隣接して位置するセグメント10d,10iを有している。少なくとも1つのセグメント10iの横方向フェース10i1,10i2は、このセグメント10iを内部から取り出すことによりコアを分解することができるようコアから遠ざかって先細になっている。実際には、コアは、2種類のセグメント、即ち、横方向フェース10d1,10d2がコアから半径方向に遠ざかって末広がりになっている末広がりセグメント10d及び横方向フェース10i1,10i2がコアから遠ざかって先細になっているいわゆる逆又は先細セグメント10iを有している。
【0027】
セグメント10の各々は、リム20に取り付け可能な取り付け部分13を有し、この取り付け部分は、セグメントの各々の半径方向内縁部のところに配置されている。リム20は、円周方向に連続している。欧州特許第1075928号明細書は、リムへのセグメントの取り付けの実施形態の一例を記載しており、読者は、この特定の機能に関する詳細についてはこの欧州特許を参照すると有用である。
【0028】
鋳造工場でのセグメントの鋳造中、鋼管16が図2に示されているようにセグメントの塊12中に成形される。発熱線17が、これら鋼管を通って延び、この発熱線には、リム20に連結されたコネクタ18を介して電気が供給される。一般に、発熱線は、発熱線が鋼管内に定位置に保持されるようマグネシウムの混合物中に埋め込まれる。上述したように、低温領域及びホットスポットの形成を回避しながら良好な熱の拡散を保証するよう、コアのセグメントの半径方向外側ドームを形成している壁11から正確な距離のところに発熱体を配置する構成になっている。
【0029】
かくして、各コアセグメントは、それ自体の加熱システムを有し、この加熱システムは、例えば、コアセグメント10の表面11の下に延びるコアの形態をしている。
【0030】
コアセグメントは、鋳鉄で作られている。この材料は、高温で優れた機械的強度を有し、コアセグメントは、コアが結合されて硬化装置内に導入されているとき、コアセグメント10に加わるクランプ力に耐えることができる。鋳鉄は又、非常に望ましい鋳造性を有し、例えば砂型を用いた従来の鋳造方法によりセグメントを作ることができる。
【0031】
鋳鉄の熱伝導性は、アルミニウムの熱伝導性よりも劣っているが、その熱エネルギー貯蔵能力は、非常に高い。その結果、全電気エネルギー消費量は、同等の寸法形状のアルミニウム型に供給されなければならなかった場合よりも少ない。
【0032】
鋳鉄の特性は、その炭素量で決まり、この炭素量は、鉄の質量に対して1.7%〜6.67%である。鋳鉄の融点は、これが含んでいる炭素及び珪素の質量パーセントに応じて1135℃〜1350℃である。一例として、炭素の含有量が5%であり、融点が1250℃という高い温度である鋳鉄で良好な結果が得られた。
【0033】
補強材14,15を追加してコアセグメント10の機械的強度を増大させるのが良い。
【0034】
発熱線17を収容した管16は、鋼、通常ステンレス鋼で作られる。鋼の融点は、主としてこれが含む炭素の割合に応じて、1150℃〜1480℃である。したがって、炭素含有量の低い鋼は、融点を上昇させるために選択され、或る程度の展性を鋼管に与えて発熱抵抗体を付形しやすくする。鋼管の直径は、5〜10mmであり、発熱体の熱応答性を向上させるためにこの直径をできるだけ小さくする構成がなされる。事実、良好な結果は直径6.5mmの管で得られた。
【0035】
鋳鉄と鋼の融点の差により、鋳鉄塊の鋳造中、コアセグメント10の塊12中に発熱抵抗体を埋め込むことが可能であり、この場合、電気抵抗体の形状及び性質がこの製造作業によって損なわれることはない。また、鋳鉄の融点と管を形成する鋼の融点の差が大きければ大きいほど、鋳造及び成形がそれだけ一層容易になることが分かり、その理由は、鋳鉄の鋳造中、管の幾何学的安定性が高いからである。
【0036】
事実、炭素含有量が0.5%であり、融点が1450℃という高い温度である鋼は、意図した用途にとって満足の行く特性を有している。
【0037】
しかしながら、融点が発熱抵抗体を収容した管を形成する材料の融点よりも低いように選択された等級の鋼でコアセグメントを作ることが可能である。それにもかかわらず、鋼は、鋳造するのが困難であり、その鋳造性は、鋳鉄の鋳造性よりも劣っていることが知られており、こうしたことにより、複雑な形状を持つ部品の製造が抑止される。
【0038】
したがって、互いに異なる融点を持つ一対の金属を選択し、これら金属のうちの少なくとも一方がコアの機械的応力に対処するのに十分良好な機械的性質を持つようにすれば、本発明の原理を同じように利用することができる。この点に関し、鋳鉄と鋼の組み合わせは、所望の特性を備え、有利なコストで具体化を可能にする。
【0039】
最後に、コアセグメントのフェース相互間の隙間がゼロであるのが良いことが観察される。これは、コア内に存在しているのは大部分が鋳鉄なので(鋼管の存在の作用効果は、無視できると見なされる)、セグメントの組み立てと硬化との間に生じる熱膨張が均一に生じるからである。したがって、ゴムが横方向フェースのところにおいてセグメント相互間から逃げ出るという問題はほとんど生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内面用の製造型を少なくとも部分的に定め、成形及び硬化作業中、未完成状態のタイヤを支持するよう設計された剛性コアであって、前記コアが横方向フェース(10d1,10i1;10d2,10i2)を介して互いに並んで且つ接触状態に配置された複数個の円周方向に隣接して位置するセグメント(10i,10d)を有し、少なくとも1つのセグメント(10i)の前記横方向フェース(10i1,10i2)が前記コアから半径方向に遠ざかって先細になっており、前記セグメントの各々が別々の前記セグメント(10)を互いに固定するロック部材(20)に取り付け可能な取り付け部分(13)を有し、前記取り付け部分(13)が前記セグメント(10)の各々の半径方向内縁部のところに設けられ、前記コア内に、少なくとも1つの電気発熱抵抗体(17)が前記セグメント(10)の各々の半径方向外側ドームを形成する前記壁(11)の内部に延びるチャネル内に配置されている、剛性コアにおいて、前記セグメント(10)の各々は、本質的に鋳鉄で作られている、剛性コア。
【請求項2】
前記発熱抵抗体(17)が延びる前記チャネルは、前記発熱抵抗体が収納されている前記コアセグメントの半径方向外面の曲率に合致している、請求項1記載の剛性コア。
【請求項3】
前記チャネルの直径は、10mm未満である、請求項2記載の剛性コア。
【請求項4】
前記電気抵抗体は、良好な熱導体である材料中に埋め込まれている、請求項1記載の剛性コア。
【請求項5】
前記電気抵抗体は、マグネシウム中に埋め込まれている、請求項4記載の剛性コア。
【請求項6】
前記電気抵抗体は、融点が前記鋳鉄の融点よりも高い材料で作られた管(16)内に配置され、前記管は、前記部分の成形作業中に前記鋳鉄中に埋め込まれる、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の剛性コア。
【請求項7】
前記管(16)は、鋼で作られている、請求項6記載の剛性コア。
【請求項8】
電気エネルギーを前記電気抵抗体(17)に供給するよう前記コアを電源に接続できるようにするコネクタ(18)が埋め込まれている、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の剛性コア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−540301(P2010−540301A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528362(P2010−528362)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063083
【国際公開番号】WO2009/047169
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】