説明

タッチセンサ

【課題】 簡易な構成を有し、環境変化等の影響を受けることなく、正確な位置検出が可能なタッチセンサを提供する。
【解決手段】 上下左右に4分割された領域A〜Dにそれぞれ光ファイバー2が配設されるとともに、各光ファイバー2の一端に発光器3、他端に受光器4が設けられる。押圧による光ファイバー2の変形を受光器4により検出し、押圧位置情報を得る。各受光器4は、光ファイバー2の変形度合いを光量変化又は光のスペックルの状態変化として捉える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばノート型パーソナルコンピュータ等において座標入力装置として使用されるタッチセンサ(いわゆるタッチパッド)に関するものであり、光ファイバーを用いた新規なタッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるパーソナルコンピュータ等、各種コンピュータ装置においては、画像表示装置(モニタ)に表示された画面上に座標点を示すカーソルやポインタ等を任意の位置に移動させたり、範囲指定等を行う座標入力装置としてポインティングデバイスが用いられている。特に、例えばノート型のパーソナルコンピュータ等においては、前記ポインティングデバイスとして、タッチパッドが多用されている。
【0003】
前記タッチパッドは、タッチセンサを組み込んだもので、厚さが薄いこと等の利点を有する。また、タッチセンサは、前記タッチパッドに限らず、各種機器において、入力デバイスとして用いられている。
【0004】
ところで、従来のタッチセンサにおける入力方式としては、電気的特性、例えば抵抗値の変化を検出する抵抗膜方式(感圧方式)のものが大部分である。抵抗膜方式のタッチセンサは、透明抵抗体が形成されたガラス板や樹脂フィルムを2枚以上重ねることにより座標入力面が構成され、例えば手指によりその表面をなぞることにより、位置検出が行われる。すなわち、前記座標入力面を指等で押圧指示することにより、前記ガラス板あるいは樹脂フィルムに形成された2枚の透明抵抗体が接触する。その際、これら透明抵抗体に通電してその抵抗値の変化を検出することにより、その接触箇所が決定され、位置座標に変換される。
【0005】
このように、従来のタッチセンサは、電気的特性により電圧変化を行い、位置検出に対応するものが主流であるが、この場合、環境(温度)等による特性の変化が問題になっている。温度や湿度等、環境が変化することにより透明抵抗体の抵抗値等の電気的特性が変化すると、正確な位置検出の妨げとなる虞れがある。
【0006】
そこで、他の方式のタッチセンサが種々検討されており、例えば光ファイバーを用いたタッチセンサ(座標入力装置)も提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1記載の座標入力装置では、横軸方向及び縦軸方向に一定間隔に配列された複数の光ファイバコアのそれぞれの一方の端から、発光素子より光を入射し、これら複数の光ファイバコアのそれぞれの他端に設けられた受光素子により、各ファイバコアを通過した光の強度を検出する。この受光素子により検出された光量に応じて、光ファイバコアの長手方向にほぼ垂直な圧力が印加された光ファイバコアを特定して、その圧力が印加された箇所の座標を求める。この特許文献1に記載されるような光ファイバを用いたタッチセンサでは、前記電気的特性を利用したタッチセンサとは異なり、環境の変化による影響を受けることがない。
【特許文献1】特開平8−234895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の座標入力装置は、光ファイバを縦横に張り巡らせる必要があることから、構成が複雑なものとなり、特にノート型パーソナルコンピュータのタッチパッド等の用途には適していない。
【0008】
本発明は、このような従来のものの有する欠点を解消するために提案されたものであり、光ファイバーを用いながらも簡易な構成を有する全く新規なタッチセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明に係るタッチセンサは、上下左右に4分割された領域にそれぞれ光ファイバーが配設されるとともに、各光ファイバーの一端に発光器、他端に受光器が設けられ、押圧による光ファイバーの変形を前記受光器により検出し、押圧位置情報を得ることを特徴とする。
【0010】
本発明のタッチセンサでは、4組の光学系、すなわち光ファイバー、発光器、及び受光器によって位置検出が行われる。各光学系においては、光ファイバーの変形に基づく光量変化、光のスペックルの状態変化により押圧が検出される。このとき、押圧位置から各光学系までの距離により、光ファイバーの変形度合いが異なり、これが検出結果に反映される。したがって、各光学系における変形度合い(検出結果)の差に基づいて、押圧位置が算出される。
【0011】
このように、本発明のタッチセンサは、先の特許文献1記載の発明と同様、光ファイバーの変形に基づいて位置検出を行うものであるが、特許文献1記載の発明のように光ファイバーを縦横に張り巡らせる必要がなく、前記4組の光学系を設置するだけでよい。したがって、装置構成が大幅に簡略化され、例えばノート型パーソナルコンピュータのタッチパッド等の用途に最適なタッチセンサが実現される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタッチセンサによれば、簡易な構成を有し、例えばノート型のパーソナルコンピュータ等に適したタッチセンサを提供することが可能である。また、本発明によれば、環境変化等の影響を受けることなく、正確な位置検出が可能なタッチセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適用したタッチセンサについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用したタッチセンサの概略構成を模式的に示すものである。すなわち、本実施形態のタッチセンサでは、方形状のタッチセンサ部1を上下左右に4等分し、この4分割された各領域A〜Dに検出用の光学系を設けている。
【0015】
各光学系は、それぞれ光ファイバー2と、この光ファイバー2に光を入射する発光器3と、前記発光器2より照射され光ファイバー2を通過した光を検出する受光器4とから構成されている。また、各光ファイバー2は、4分割されたそれぞれの領域においてほぼ直角に屈曲されており、各領域を中心部分を含めて可能な限り広くカバーするような配置とされている。
【0016】
ここで、発光器3は、光源となるものであれば如何なるものであってもよく、例えば発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)等が使用可能である。また、受光器4も光検出し得るものであれば如何なるものであってもよく、例えば、CCDやフォトダイオード等が使用可能である。光ファイバー2も、通常の光ファイバーが使用可能であり、通常は光が透過するコアと、その周囲に配されコア材料より屈折率が小さい材料からなるクラッドとから構成される。
【0017】
前記光ファイバー2は、図2に示すように、タッチセンサ部1の上下に配されるベース部5と上カバー6との間に配されており、この上カバー6の上から指等で押圧することにより、その検出が行われる。したがって、ベース部5にはある程度硬質な材料が用いられ、上カバー6には丈夫なプラスチックフィルム等、シート状のものが用いられる。
【0018】
次に、本実施形態のタッチセンサにおける検出原理について説明する。図3(a)に示すように、光ファイバー2にコヒーレントな光(例えばレーザ光)等を入射すると、光ファイバー2内で全反射を繰り返して伝搬する。このとき、異なった伝搬路を経て到達した光は、各々位相が異なるため、受信端では図3(a)右側に示すような光のスペックル(斑点)を生ずる。
【0019】
このとき、例えば図3(b)に示すように光ファイバー2に振動が加わったり、図3(c)に示すように圧力が加わると、伝搬する光の伝搬路が微妙に変化し、各図右側に示すようにスペックルの状態が変化する。そこで、このスペックルの状態変化を受光器4で捉え、これに基づいて検出信号を発生する。
【0020】
あるいは、光ファイバー2の曲げ(つぶれ)による光の伝送損失による光量変化を検出する方式を採用してもよい。光ファイバー2を曲げると、光がコアの外に放出される。これに基づく光量変化を検出するようにすれば、簡単に押圧を検出することができる。
【0021】
前記いずれかの原理によって、各光学系において押圧の有無を検出するが、領域A〜Dのうちの何れの領域の光学系で押圧信号が検出されたかにより、押圧位置を把握することができる。また、単に押圧の有無だけでなく、押圧による光ファイバー2の変形度合いに基づいて、より詳細な位置を算出することも可能である。
【0022】
例えば、図1において、点xを押圧したとする。このとき、領域A〜Dの各光学系の光ファイバー2までの距離が異なることから、これら4本の光ファイバー2の変形度合い(つぶれ具合や曲げ具合)が異なる。そこで、各光学系における検出信号の差分を算出することにより、前記点xの位置確認を行うことができる。
【0023】
また、押圧力の強弱により光ファイバー2のつぶれ具合や曲げ具合等の変形の度合いも変わるので、本実施形態のタッチセンサでは、加えた力の強弱も読み取ることが可能である。これまでのタッチセンサでは、タッチの有無や座標検出しか行えなかったので、これは本発明のタッチセンサの大きな利点である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したタッチセンサの一例を模式的に示す平面図である。
【図2】タッチセンサ部の概略断面図である。
【図3】本発明のタッチセンサにおける検出原理を説明する図であり、(a)は通常の状態、(b)は振動が加わった状態、(c)は圧力が加わった状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0025】
1 タッチセンサ部
2 光ファイバー
3 発光器
4 受光器
5 ベース部
6 上カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下左右に4分割された領域にそれぞれ光ファイバーが配設されるとともに、各光ファイバーの一端に発光器、他端に受光器が設けられ、
押圧による光ファイバーの変形を前記受光器により検出し、押圧位置情報を得ることを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記各光ファイバーは、各領域において略直角に屈曲されていることを特徴とする請求項1記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記各光ファイバーは、ベースと上カバーの間に配されていることを特徴とする請求項1又は2記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記各受光器は、光ファイバーの変形度合いを光量変化又は光のスペックルの状態変化として捉えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記各光ファイバーの変形度合いの差に基づいて前記押圧位置情報が算出されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のタッチセンサ。
【請求項6】
前記各光ファイバーの変形度合いに基づいて押圧力の強弱が検出されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のタッチセンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−11497(P2006−11497A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183203(P2004−183203)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】