説明

タッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置

【課題】開口率の高いタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】各列に設けられたソース線(SL)と各行に設けられたゲート線(GL1、GL2)の交差部に、前記ソース線にソースが接続され、前記ゲート線にゲートが接続された薄膜トランジスタ(TFT11、TFT21)のドレインと共通電極線(CE)の間に液晶素子を備えた画素セル(PX)がマトリクス状に配置された画素部と、同一列の2つの隣接画素セル間に、前記隣接画素セルの各ゲート線にそれぞれゲートが接続され、直列接続された2つのタッチセンス用トランジスタ(TFT22、TFT12)および前記2つの隣接画素セル行で共用される機械的スイッチ(S)が当該列のソース線と共通電極線の間に接続されたタッチセンススイッチ部(SW)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクスディスプレイ装置に係り、特にタッチセンス機能を有するディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている液晶表示装置等においては、画面に指あるいはスタイラスと称される細い棒で触れることによって容量あるいは抵抗の変化を検出し、あるいは赤外線の反射を検出する等の種々の方式により、必要な情報入力や操作指令を与えるようにしたものがある。
【0003】
このうち、圧力による抵抗変化を利用する感圧式(機械式)タッチセンサは、表示装置表面のガラス基板上に感圧膜を貼ることになるが、この膜の透明度等の光学特性は必ずしも良好ではなく、表示品位を低下させ、視野角も狭くなるという問題がある。
【0004】
容量センサの場合にはノイズに弱く、光式では太陽光やゴミにより誤動作が起こるという問題がある。
【0005】
図1に機械的タッチセンサの構成を示す。この図においては、セル内に機械的スイッチを設けた例を示しており、アレイガラス1とカラーフィルタガラス2が対向して配置され, 両者間には圧力で変形可能なスペーサ3が画素の境界部に設けられている。アレイガラス1の上面には突起状をなすセンサ端子4が設けられ, その表面にはITO膜等の導電性膜5が形成されている。また, カラーフィルタガラス2の下面にもITO膜でなる共通電極6が形成されている。センサ端子4上のITO膜5と共通電極6の下面との間の距離は通常1〜4μmに設定されている。なお、この図では表示のための液晶やTFTなどは便宜上省略してある。
【0006】
このようなタッチセンサにおいては, カラーフィルタアレイ側から指やスタイラスで圧力をかけるとスペーサが圧縮され, 圧力がかかった部分のカラーフィルタ下側の共通電極であるITO膜6がセンサ端子4上のITO膜5と接触することによって短絡が起こり抵抗が下がる。これをセンスアンプ等で検出することにより、タッチがあった場所の特定が可能となる。
【0007】
図2は図1に示した構造の電気的接続関係を示す模式的回路図である。
【0008】
ここでは、行選択線であるゲート線GLにゲートが接続され、列選択線であるソース線SLにソースが接続された薄膜トランジスタ(TFT)のドレインと共通電極CEとの間に液晶素子ClcとスイッチSが接続され、該ドレインには補助容量CSの一端が接続され、他端は同一行の補助容量を共通に接続する補助容量線CSLに接続されている。
【0009】
スイッチSWは図1に示された、カラーフィルタガラス2下側のITO膜6とセンサ端子4上のITO膜5から成るものであり、図2の液晶素子ClcとスイッチSの接続点が図1のセンサ端子4およびその上のITO膜5に相当する。
【0010】
図2の構成において、ゲート線GLがハイとなって当該行が選択されると薄膜トランジスタTFTはオンとなっており、このときにスイッチSWがタッチにより短絡されると、画素電極4と共通電極CEが同電位となり、ソース線SLの電位は共通電極CEのレベルに変化する。このため、このソース線SLの電位変化をセンスアンプ等で検出することにより、当該画素にタッチがあったことが検出される。
【0011】
実際の表示装置では、各列のセンスアンプを動作させておき、ゲート線を上から順にスキャンすると、どの行と列で機械的スイッチが短絡したかを検出することができる。
【0012】
しかしながら、このような構成では液晶素子のすぐ近傍でスイッチを直接ショートさせることにより、表示品位に問題が生ずる場合がある。例えばノーマリーホワイトの液晶で黒画面の場合にスタイラスで押すことによりその部分の色が白くなることがある。
【0013】
また、スイッチに欠陥があった場合、タッチセンスができないばかりでなく、表示上も点欠陥になる。
【0014】
さらに、各画素内に機械的スイッチを設ける必要があることから、スイッチのための面積が必要となり、有効表示面積を狭め、開口率を低下させるという問題がある。
【特許文献1】特開2001‐75074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は面積効率が良く十分な開口率を確保することにより、表示品質の良好なタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかるタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置によれば、
各列に設けられたソース線と各行に設けられたゲート線の交差部に、前記ソース線にソースが接続され、前記ゲート線にゲートが接続された薄膜トランジスタのドレインと共通電極線の間に液晶素子を備えた画素セルがマトリクス状に配置された画素部と、
同一列の2つの隣接画素セル間に、前記隣接画素セルの各ゲート線にそれぞれゲートが接続され、直列接続された2つのタッチセンス用トランジスタおよび前記2つの隣接画素セル行で共用される機械的スイッチが当該列のソース線と共通電極線の間に接続されたタッチセンススイッチ部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置では、同一列の2つの隣接画素セル間に、各隣接画素セルの各ゲート線により活性化される2つのタッチセンス用トランジスタおよび2つの隣接画素セル行で共用される機械的スイッチが当該列のソース線と共通電極線の間に接続されたタッチセンススイッチ部を有しているため、上下の2つの画素で機械的スイッチが共用され、かつタッチ検出のために既存のゲート線を利用しているので、タッチセンスのために必要な面積が少なくて済み、開口率の高いアクティブマトリクス表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかるタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置の実施例を説明する。以下に示す実施例は限定的なものではない。
【0019】
図3は本発明にかかるタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置の一部を示す回路図である。ここでは、ある列について、n行と(n+1)行の画素セル、およびこれらの間に設けられた機械的スイッチの構成を示している。
画素PXnはソース線SLにソースが接続され、ゲートがゲート線GL1に接続された薄膜トランジスタTFT11と、この薄膜トランジスタTFT11のドレインと共通電極CEとの間に設けられた液晶素子Clc1と、薄膜トランジスタTFT11のドレインと補助容量線CSL1との間に設けられた補助容量CS1を備えている。
【0020】
同様に、画素PX(n+1)はソース線SLにソースが接続され、ゲートがゲート線GL2に接続された薄膜トランジスタTFT21と、この薄膜トランジスタTFT21のドレインと共通電極CEとの間に設けられた液晶素子Clc2と、薄膜トランジスタTFT21のドレインと補助容量線CSL2との間に設けられた補助容量CS2を備えている。
【0021】
これらのゲート線GL1とGL2は近接して平行に配設されており、このため、画素PXnと画素PX(n+1)は列方向に対称的な構成となっている。
【0022】
ゲート線GL1とGL2との間にはスイッチ部SWが形成されている。このスイッチ部SWはソース線SLにソースが接続され、ゲート線GL2にゲートが接続された薄膜トランジスタTFT22と、この薄膜トランジスタTFT22のトレインにソースが接続され、ゲート線GL1にゲートが接続された薄膜トランジスタTFT12と、この薄膜トランジスタTFT12のドレインと共通電極CE間に設けられた機械的スイッチSにより構成されている。
【0023】
この実施例においては、機械的スイッチSは上下の2画素、PXnとPX(n+1)で共用されることになる。
【0024】
ソース線の一端にはソース線を活性化して与えられた階調に応じた電圧を供給するソースドライバSDが設けられ、他端側にはソース線の電位変化を検出するセンスアンプSAが設けられている。
【0025】
次に、図3の構成における動作を説明する。
【0026】
通常の表示を行うときには、表示対象の画素のソース線に所望の階調データに応じた電圧が供給され、表示対象の画素のゲート線が活性化することにより、その画素の液晶素子が階調に応じた透過率となってその画素の表示が行われる。したがって、活性化されたゲート線が属する行の画素に対するデータを各ソース線に供給し、これを順次行毎に繰り返すことにより、画面全体の表示が行われる。
【0027】
タッチセンサとして用いるときには、各ソース線には一定の電位が与えられ、対となる2行のゲート線を同時に活性化すると、タッチによりスイッチが閉じている場合には、ソース線SLの電位が変化するため、タッチがあったことが検出される。
【0028】
実際の検出では、センスアンプをセンス状態に動作させておき、ゲートラインを上から順にスキャンしていくことで、どの行、どの列でタッチによるショートが起こったか検出でき、タッチ位置が特定できる。
【0029】
このようなソース線の電位変化検出は、ソースドライバにより行うこともでき、ソースドライバとセンスアンプの双方により行うこともできる。
【0030】
図4は、図3の構成をカラー構成としたタッチセンス機能付きカラー液晶表示装置の場合の動作を説明するタイミングチャートである。
【0031】
ここでは各ラインでRGBの各色の画素の読み出しを行い、2ライン毎にタッチの有無をセンスするようにしている。
【0032】
まず、プリチャージが各行のセンスの直前に、ソースドライバが共通電極CEとは逆層の位相の電圧をソース線SLに出力し、これらソース線に寄生する容量へ充電することにより行われる。
【0033】
これにより、各行のセンス時に対応する画素内の機械的スイッチがオンすれば、ソース線SLの電位は共通電位CEの電位に等しくなり、一方、各行のセンス時に対応する画素内の機械的スイッチがオフのままであれば、ソース線SLの電位はプリチャージ電圧と等しいままである。その後センスアンプSAはセンス後のソース線電圧を検出し、外部へそれに対応する電圧を出力する。
【0034】
図4における最初のセンス期間では、プリチャージ後にゲート線Nとゲート線N+1を同時にオンすると、赤のソース線のみの電位が低下したことが検出される。これにより、赤の画素にタッチがあったことが検出される。
【0035】
同様に、次のセンス期間ではゲート線N+2とゲート線N+3を同時にオンすると、緑のソース線のみの電位が低下したことが検出される。これにより、緑の画素にタッチがあったことが検出される。
【0036】
以上の実施例では機械的スイッチを構成する接触部としてITO膜を用いていたが、他の導電材料、例えば金属材料膜を用いることもできる。
【0037】
なお、本発明のタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置は、例えば携帯電話、デジタルカメラ、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)、自動車用ディスプレイ、デジタルフォトフレームまたはポータブルDVDプレーヤである電子装置などに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】機械式タッチセンサの典型的な構造を示す断面図である。
【図2】従来の画素内機械的スイッチを含む画素セルの構成を示す回路図である。
【図3】本発明にかかるタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置の構成を示す回路図である。
【図4】図3の構成をカラー構成にしたアクティブマトリクスディスプレイ装置における表示とタッチセンス動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 アレイガラス
2 カラーフィルタガラス
3 スペーサ
4 センサ端子
5、6 導電膜
CE 共通電極
Clc1、Clc2 液晶素子
CS1、CS2 補助容量
GL1,GL2 ゲート線
PXn、PX(n+1) 画素
S スイッチ(センサ)
SA センスアンプ
SD ソースドライバ
SL ソース線
SW スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各列に設けられたソース線と各行に設けられたゲート線の交差部に、前記ソース線にソースが接続され、前記ゲート線にゲートが接続された薄膜トランジスタのドレインと共通電極線の間に液晶素子を備えた画素セルがマトリクス状に配置された画素部と、
同一列の2つの隣接画素セル間に、前記隣接画素セルの各ゲート線にそれぞれゲートが接続され、直列接続された2つのタッチセンス用トランジスタおよび前記2つの隣接画素セル行で共用される機械的スイッチが当該列のソース線と共通電極線の間に接続されたタッチセンススイッチ部と、
を備えたタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置。
【請求項2】
前記各画素セルは、前記薄膜トランジスタのドレインと各行に設けられた補助容量線との間に補助容量を備えたことを特徴とする請求項1に記載のタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置。
【請求項3】
前記同一列の2つの隣接画素セルは、前記ゲート線に対して対称構造をなすことを特徴とする請求項1に記載のタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置。
【請求項4】
前記ソース線には、当該ソース線の電位変化を検出するセンスアンプが接続されたことを特徴とする請求項1に記載のタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置。
【請求項5】
前記同一列の2つの隣接画素セルの各ゲート線はタッチセンス時には同時に活性化されることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のタッチセンス機能付きアクティブマトリクスディスプレイ装置を備えた電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−15051(P2010−15051A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176069(P2008−176069)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(507100557)統▲宝▼光電股▲分▼有限公司 (23)
【氏名又は名称原語表記】TPO DISPLAYS CORPORATION
【Fターム(参考)】