説明

タンク用口金及びこの口金を備えたタンク並びにタンク組付方法

【課題】タンク本体に対する組付作業性を向上すると共に、タンク本体の開口部を画定する内壁と、この開口部に組付けられた口金との間を密閉するシール部材を適切な状態で配設することが可能なタンク用口金、及びこの口金を備えたタンク、並びにタンク組付方法を提供する。
【解決手段】タンク本体10に形成された開口部11に挿入される口金本体31と、口金本体31に配設され、口金本体31と開口部11を画定する内壁12との間を密閉可能であると共に、中空構造を有するシール部材と、シール部材の中空部分に圧力を付与する圧力付与部とを備え、前記シール部材は、前記圧力付与部から前記中空部分に付与された圧力により膨張し、口金本体31と開口部11を画定する内壁12との間を密閉するタンク用口金30である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク用口金、及びこの口金を備えたタンク、並びにタンク組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タンクの開口部には、口金が取付けられているが、このタンクの開口部を画定する内壁と、口金との間には、両者間を密閉するOリングが配設されている。このようなタンクとしては、例えば、開口部を有するタンク本体と、前記開口部を塞ぐように取付けられる口金と、前記タンク本体と前記口金との間に設けられ、前記タンク本体と前記口金との間をシールする第1のシール部材と、前記タンク本体と前記口金との間に設けられ、前記第1のシール部材と異なる位置に配置されて前記タンク本体と前記口金との間をシールする第2のシール部材と、前記口金に設けられ、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間で前記タンク本体と前記口金との間に形成される隙間に一端が開口し、他端が外気側に開口する連通経路と、を有する高圧タンクが紹介されている。この高圧タンクでは、口金と高圧タンクとの間を、内側オーリング及び外側オーリングでシールすることにより、タンク内の水素ガスが口金と高圧タンクとの間の間隙を介して大気へ漏れ出ることを抑制している。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−291434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記口金は、通常、当該口金の外周面に形成されたシール溝にOリングを配設した状態で、タンク本体の開口部に挿入されて組付けられる。ここで、前記口金と、前記開口部を画定する内壁面との間を、前記Oリングによって確実にシールするため、Oリングにはつぶし代が必要である。したがって、前記組付けの際には、前記口金は、通常、前記開口部を画定する内壁面に、前記Oリングの外周面を接触させながら開口部に圧入されることになる。このため、Oリングの外周面と、開口部を画定する内壁面との接触具合(押圧力)によっては、両者間に生じる摩擦によって、口金に配設されたOリングが捩れる場合があるが、開口部に口金を組付けた後に、前記Oリングの状態を目視することが困難であるため、仮にOリングが捩れた状態で口金が組付けられたとしても、これを検出することは困難である。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、タンク本体に対する組付作業性を向上すると共に、タンク本体の開口部を画定する内壁と、この開口部に組付けられた口金との間を密閉するシール部材を適切な状態で配設することが可能なタンク用口金、及びこの口金を備えたタンク、並びにタンク組付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため本発明は、タンク本体に形成された開口部に取付けられるタンク用口金であって、前記開口部に挿入される口金本体と、前記口金本体に配設され、当該口金本体と前記開口部を画定する内壁との間を密閉可能であると共に、中空構造を有するシール部材と、前記シール部材の中空部分に圧力を付与する圧力付与部と、を備えてなり、前記シール部材は、前記圧力付与部から前記中空部分に付与された圧力により膨張し、前記口金本体と、前記開口部を画定する内壁との間を密閉するタンク用口金を提供するものである。
【0006】
この構成を備えたタンク用口金は、シール部材が、圧力付与部から当該シール部材の中空部分に付与された圧力により膨張し、口金本体と、タンク本体に形成された開口部を画定する内壁との間を密閉する構成を備えている。すなわち、前記シール部材は、前記圧力が付与されていない状態では、前記開口部を画定する内壁との間を密閉状態にするほど当該内壁に押圧されていないことになる。したがって、前記タンク用口金を前記開口部に挿入する際に、当該タンク用口金が圧入されることがなく、シール部材と、前記開口部を画定する内壁との間に大きな摩擦が生じることを抑制することができる。このため、シール部材が、前記開口部を画定する内壁に引掛って捩れたり、外れたりすることを抑制することができ、シール部材を適切な状態に維持したまま、タンク本体の開口部に取付けることができる。そして、タンク用口金を前記開口部に取付けた後、前記圧力付与部から、前記シール部材の中空部分に圧力を加えることで、シール部材を膨張させ、当該開口部を画定する内壁に押圧させて、前記口金本体と、前記内壁との間を密閉することができるため、確実なシール(密閉)を行うことができる。
【0007】
また、本発明にかかるタンク用口金は、前記口金本体に、前記圧力付与部が配設されてなり、この圧力付与部から前記シール部材の中空部分に流体を導入するよう構成することもできる。このようにすることで、前記シール部材は、中空部分に導入された流体によって膨張し、前記口金本体と、タンク本体に形成された開口部を画定する内壁との間を密閉することができる。また、この構成の場合、前記シール部材は、前記口金本体の外周面に沿った環状を有し、その少なくとも一箇所に、前記圧力付与部から導入される流体を前記中空部分に導入する導入口を形成してもよい。
【0008】
そしてまた、この導入口には、弁体を配設することができる。この弁体は、所望により種々の弁体を選択することができるが、例えば、圧力付与部からシール部材の中空部分に導入された流体が、当該圧力付与部に戻ることを防止する逆止弁(一方向弁)を用いることができる。このような弁を用いることで、シール部材の中空部分に収容された流体が、前記導入口から漏れることを抑制でき、前記口金本体と、タンク本体に形成された開口部を画定する内壁との間の密閉状態を長期間にわたって維持することができる。また、前記開口部に取付けられたタンク用口金を取外す可能性がある場合は、例えば、流体の流れる方向を任意に変更可能な方向制御弁を用いてもよい。この方向制御弁を用いた場合は、シール部材によって、口金本体と、前記開口部を画定する内壁との間を密閉させる場合には、圧力付与部からシール部材の中空部分に流体が流れるように弁体を制御し、タンク用口金をタンク本体から取外したい場合は、シール部材の中空部分から圧力付与部方向に流体が流れるように弁体を制御して、シール部材を収縮させれば、タンク用口金をタンク本体から取外し易くすることができる。これは、例えば、タンク本体やタンク用口金のリサイクルを考慮した場合に有利である。
【0009】
さらにまた、前記導入口は、前記シール部材の内周面側に形成することができる。このように構成することで、シール部材の前記開口部を画定する内壁に対するシール面となる領域に、当該導入口が位置することがないため、シール性をさらに向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、タンク本体と、前述した本発明にかかるタンク用口金と、を備えてなるタンクを提供するものである。この構成を備えたタンクは、タンク本体に形成された開口部にタンク用口金を取付ける際に、前記シール部材が、前記開口部を画定する内壁との間を密閉状態にするほど当該内壁に押圧されないため、当該タンク用口金が前記開口部に圧入されることがない。したがって、シール部材と、前記開口部を画定する内壁との間に大きな摩擦が生じることを抑制することができ、シール部材が、前記開口部を画定する内壁に引掛って捩れることを抑制することができる。このため、シール部材が、適切な状態で配設され、タンク用口金と前記開口部を画定する内壁との間が確実に密閉される。そしてまた、前記タンク本体には、燃料電池で使用されるアノードガスを収容することもできる。
【0011】
そしてまた、本発明は、タンク本体に形成された開口部にタンク用口金を組付けるタンク組付方法であって、前記開口部に挿入される口金本体に、中空構造を有するシール部材を配設し、前記タンク用口金を構成する構成工程と、前記タンク用口金を、前記開口部に挿入する挿入工程と、前記挿入工程後、シール部材の中空部分に圧力を付与し、当該シール部材を膨張させて前記開口部を画定する内壁に密着させる密着工程と、備えたタンク組付方法を提供するものである。
【0012】
このタンク組付方法によれば、タンク本体に形成された開口部にタンク用口金を挿入した後、シール部材の中空部分に圧力を付与し、当該シール部材を膨張させて前記開口部を画定する内壁に密着させるため、前記開口部にタンク用口金を挿入する際に、前記シール部材が、前記開口部を画定する内壁との間を密閉状態にするほど当該内壁に押圧されることがない。したがって、前記挿入時に、タンク用口金が前記開口部に圧入されることがなく、前記シール部材と、前記開口部を画定する内壁との間に大きな摩擦が生じることを抑制することができる。このため、シール部材が、前記開口部を画定する内壁に引掛って捩れることを抑制することができ、シール部材を適切な状態に維持したまま、タンク本体の開口部に取付けることができる。そして、タンク用口金を前記開口部に取付けた後、前記圧力付与部から、前記シール部材の中空部分に圧力を加えることで、シール部材を膨張させ、当該開口部を画定する内壁に押圧させて、前記口金本体と、前記内壁との間を密閉することができるため、確実なシール(密閉)を行うことができる。
【0013】
また、本発明にかかるタンク組付方法では、前記密着工程は、前記シール部材の中空部分に流体を導入する工程を含むことができる。この場合、前記シール部材は、前記口金本体の外周面に沿って環状に配設されてなり、前記流体を当該シール部材の内周面側から導入することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるタンク用口金は、シール部材が、圧力付与部から当該シール部材の中空部分に付与された圧力により膨張し、口金本体と、タンク本体に形成された開口部を画定する内壁との間を密閉する構成を備えているため、タンク用口金を前記開口部に挿入する際に、当該タンク用口金が圧入されることがなく、シール部材と、前記開口部を画定する内壁との間に大きな摩擦が生じることを抑制することができる。したがって、シール部材が、前記開口部を画定する内壁に引掛って捩れたり、外れたりすることを抑制することができ、シール部材を適切な状態で配設することができる。また、前記開口部にタンク用口金を取付けた後、前記圧力付与部から、前記シール部材の中空部分に圧力を加えることで、シール部材を膨張させ、当該開口部を画定する内壁に押圧させて、前記口金本体と、前記内壁との間を密閉することができる。この結果、タンク本体に形成された開口部に取付けられた際に、当該開口部を画定する内壁との間を確実に密閉することができる。
【0015】
また、本発明にかかるタンクは、タンク本体に形成された開口部にタンク用口金を取付ける際に、シール部材と、前記開口部を画定する内壁との間に大きな摩擦が生じることを抑制することができる。したがって、シール部材が、前記開口部を画定する内壁に引掛って捩れたり、外れたりすることを抑制することができ、シール部材が、適切な状態で配設され、タンク用口金と前記開口部を画定する内壁との間を確実に密閉することができる。また、前記開口部にタンク用口金を取付けた後、シール部材を前記内壁に押圧させて、前記口金本体と、当該内壁との間を密閉することができる。この結果、タンク本体に収容された流体が外部に漏れ出すことを抑制することができ、信頼性の高いタンクを提供することができる。
【0016】
そしてまた、本発明にかかるタンク組付方法によれば、タンク本体に形成された開口部にタンク用口金を挿入した後、シール部材の中空部分に圧力を付与し、当該シール部材を膨張させて前記開口部を画定する内壁に密着させるため、前記挿入時に、タンク用口金が前記開口部に圧入されることがなく、シール部材が、前記開口部を画定する内壁に引掛って捩れたり、外れたりすることを抑制することができる。したがって、シール部材を適切な状態で配設することができ、タンク用口金と前記開口部を画定する内壁との間を確実に密閉させることができる。この結果、タンク本体に収容された流体が外部に漏れ出すことを抑制することができ、信頼性の高いタンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかるタンク用口金、及びこのタンク用口金を備えたタンク、並びにタンク組付方法について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態にかかるタンク用口金の斜視図、図2は、図1に示すII−II線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入していない状態を示す図、図3は、図1に示すII−II線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入してOリングを膨張させた状態を示す図、図4は、本発明の実施の形態にかかるタンク用口金とタンク本体を示す斜視図、図5は、本発明の実施の形態にかかるタンク用口金をタンク本体に取付けた状態を示す斜視図、図6は、図5に示すVI−VI線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入していない状態を示す図、図7は、図5に示すVI−VI線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入してOリングを膨張させた状態を示す図である。
【0019】
なお、前記各図では、説明を判りやすくするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。特に、図2及び図6では、Oリングの中空部分に空気を導入していない状態と、空気を導入して膨張させた状態との違いが判るように、Oリングのサイズを実際のものとは一致させずに記載してある。
【0020】
図1〜図7に示すように、本実施の形態にかかるタンク1は、内部に流体が収容されるタンク本体10と、タンク本体10に形成された開口部11に取付けられるタンク用口金30とを備えて構成されている。
【0021】
タンク用口金30は、タンク本体10の開口部11に挿入される口金本体31と、口金本体31に配設されると共に、中空構造を有するOリング32及び33と、Oリング32及び33の中空部分に空気を導入する空気導入部35を備えている。
【0022】
口金本体31は、その一端が、開口部11に挿入される挿入部36となっている。この挿入部36は、開口部11を画定する内壁12との間に若干の隙間が形成されるサイズを有する略円筒形を備えている。この挿入部36の外周面には、互いに間隔をおいて平行な2本のシール溝37及び38が外周に沿って形成されている。また、口金本体31の外周面であって、シール溝37及び38の間には、バックアップリング41及び42が配設されている。口金本体31のシール溝37及び38が形成されている位置よりも内径側には、後に詳述する空気導入部35が配設されている。
【0023】
Oリング32及び33は、例えば、ブチルゴム、EPDM、シリコンゴム等から形成された環状を有し、シール溝37及び38に各々配設されている。このOリング32及び33は、その内部に流体(本実施の形態では、空気)を収容可能な中空構造となっている。Oリング32及び33の内周面には、後に詳述する空気導入部35が各々接続され、空気導入部35から供給される空気を中空部分に導入する導入口43及び44が、各々配設されている。このOリング32及び33は、通常の状態では、図2及び図6に示すように、シール溝37及び38内に各々収納された状態となっている。一方、Oリング32及び33は、空気導入部35から導入口43及び44を介して中空部分に空気が導入されると、図3及び図7に示すように膨張し、開口部11を画定する内壁12に密着して口金本体31と内壁12との間を密閉する(シールする)ようになっている。
【0024】
また、導入口43及び44には、空気導入部35からOリング32及び33の中空部分へ空気を流通させるが、Oリング32及び33の中空部分から空気導入部35へは空気を流通させない一方向性の弁体(図示せず)が配設されている。すなわち、Oリング32及び33の中空部分に導入された空気は、導入口43及び44から再び外部に流出することが抑制されており、確実なシール性が維持される。
【0025】
空気導入部35は、口金本体31に形成された空気を流通させる流路を有している。この流路には、Oリング32及び33に各々配設された導入口43及び44が接続されている。この空気導入部35の先端は、空気入口39となっており、口金本体31のビード部分近傍に位置している。
【0026】
次に、本実施の形態にかかるタンクの組立方法の一例について、図面を参照して説明する。
【0027】
先ず、タンク用口金30を組み立てる。具体的には、口金本体31にパックアップリング41及び42を配設した後、シール溝37にOリング32を配設し、シール溝38にOリング33を配設する。この時、Oリング32及び33は、導入口43及び44が空気導入部35に接続されるようにシール溝37及び38内に各々配設する。この状態では、Oリング32及び33の中空部分には、空気導入部35から空気が導入されておらず、Oリング32及び33は、図2に示すように、中空部分から外側に向けて圧力が掛けられておらず、ほぼ全体がシール溝37及び38内に各々収納された状態となっている。また、Oリング32及び33に、仮に外部から圧力が掛けられたとしても、Oリング32及び33は、その圧力に応じて変形可能な状態となっている。
【0028】
次に、このタンク用口金30をタンク本体10の開口部11内に挿入する。この時、Oリング32及び33は、ほぼ全体がシール溝37及び38内に各々収納された状態となっているため、タンク用口金30を開口部11内に挿入する際に、Oリング32及び33の外周面が、開口部11を画定している内壁12に接触することが抑制され、あるいは接触したとしても、両者間に生じる摩擦は小さい。したがって、Oリング32及び33が、内壁12に引掛って捩れたり、外れたりすることを抑制することができ、Oリング32及び33は、開口部11に挿入される前と同様の状態、すなわち、最適な状態でシール溝37及び38内に維持されている。なお、この状態では、Oリング32及び33は、内壁12との間を密閉状態にするほど内壁12に密着されていない。(図6参照)。
【0029】
次いで、空気導入部35の空気入口39から空気を供給し、この空気を、導入口43及び44を介してOリング32及び33の中空部分に各々導入する。Oリング32及び33は、この導入された空気によって、内側(中空部分)から外側に向けて圧力がかけられて膨張し、図7に示すように、内壁12に確実に密着する。この時、Oリング32及び33は、捩れたり、外れたりすることなく、最適な状態を維持したままシール溝37及び38内に配設されており、口金本体31と内壁12との間を確実に密閉する。また、空気は、空気導入部35からOリング32及び33の中空部分に導入されるが、中空部分から空気導入部35に戻ることがないため、Oリング32及び33を効率よく短時間で膨張させることができると共に、Oリング32及び33による密閉を長期間にわたって維持することができる。さらに、導入口43及び44が、Oリング32及び33の内周面に配設されているため、導入口43及び44が、Oリング32及び33と、内壁12との密着に干渉することもない。
【0030】
なお、本実施の形態では、シール部材としてOリング32及び33を使用した場合について説明したが、これに限らず、シール部材は、中空構造を有し、この中空部分に付与された圧力によって膨張することで、口金本体31と開口部11を画定する内壁12との間を密閉することが可能であれば、その形状や材質等は、所望により任意により決定することができる。
【0031】
また、本実施の形態では、Oリング32及び33の中空部分に空気を導入することで、Oリング32及び33を膨張させる場合について説明したが、これに限らず、タンクの使用条件等、様々な状況や条件等に応じて、Oリング32及び33の中空部分に、他の気体や、液体、他の流動体を導入して、Oリング32及び33の中空部分に圧力を付与し、Oリング32及び33を膨張させてもよい。
【0032】
そしてまた、本実施の形態では、Oリング32及び33の各々1箇所に、導入口43及び44を配設した場合について説明したが、これに限らず、導入口43及び44の配設数は、所望により決定することができる。また、配設するOリング(シール部材)の数も2つに限らず、所望により、1つ、あるいは3つ以上としてもよいことは勿論である。
【0033】
さらにまた、本実施の形態では、Oリング32及び33の導入口43及び44に、一方向性の弁体を配設した場合について説明したが、これに限らず、空気導入部35からOリング32及び33の中空部分に流体を流す場合と、中空部分から空気導入部35に流体を流す場合とを選択することができる方向制御弁を用いてもよい。この場合、Oリング32及び33による密閉を行う場合は、空気導入部35からOリング32及び33の中空部分に流体を流すように弁体を制御し、タンク用口金30をタンク本体10の開口部11から取外す際には、中空部分から空気導入部35に流体を流すように弁体を制御して、Oリング32及び33を縮小させ、タンク用口金30を開口部11から簡単に取外せるようにすることもできる。これは、例えば、タンク本体10やタンク用口金30をリサイクルする場合に有利である。
【0034】
なお、本発明にかかるタンク1は、その内部に収容する流体の種類等は、特に限定されるものではないが、例えば、燃料電池で使用されるアノードガスを収容する高圧タンクとして使用することもできる。また、燃料電池としては、固体高分子電解質型燃料電池等が挙げられる。この燃料電池は、例えば、燃料電池自動車等に搭載することができるが、自動車以外に用いられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態にかかるタンク用口金の斜視図である。
【図2】図1に示すII−II線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入していない状態を示す図である。
【図3】図1に示すII−II線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入してOリングを膨張させた状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかるタンク用口金とタンク本体を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかるタンク用口金をタンク本体に取付けた状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示すVI−VI線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入していない状態を示す図である。
【図7】図5に示すVI−VI線に沿った拡大断面図であって、Oリングの中空部分に空気を導入してOリングを膨張させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1…タンク、10…タンク本体、11…開口部、30…タンク用口金、31…口金本体、35…空気導入部、36…挿入部、37、38…シール溝、32、33…Oリング、43、44…導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体に形成された開口部に取付けられるタンク用口金であって、
前記開口部に挿入される口金本体と、
前記口金本体に配設され、当該口金本体と前記開口部を画定する内壁との間を密閉可能であると共に、中空構造を有するシール部材と、
前記シール部材の中空部分に圧力を付与する圧力付与部と、
を、備えてなり、
前記シール部材は、前記圧力付与部から前記中空部分に付与された圧力により膨張し、前記口金本体と、前記開口部を画定する内壁との間を密閉するタンク用口金。
【請求項2】
前記圧力付与部は、前記口金本体に配設されてなり、前記シール部材の中空部分に流体を導入する請求項1記載のタンク用口金。
【請求項3】
前記シール部材は、前記口金本体の外周面に沿った環状を有し、その少なくとも一箇所に、前記圧力付与部から導入される流体を前記中空部分に導入する導入口が形成されてなる請求項2記載のタンク用口金。
【請求項4】
前記導入口に、弁体を配設してなる請求項3記載のタンク用口金。
【請求項5】
前記導入口は、前記シール部材の内周面側に形成されてなる請求項3または請求項4記載のタンク用口金。
【請求項6】
タンク本体と、
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のタンク用口金と、
を、備えてなるタンク。
【請求項7】
前記タンク本体に、燃料電池で使用されるアノードガスを収容してなる請求項6記載のタンク。
【請求項8】
タンク本体に形成された開口部にタンク用口金を組付けるタンク組付方法であって、
前記開口部に挿入される口金本体に、中空構造を有するシール部材を配設し、前記タンク用口金を構成する構成工程と、
前記タンク用口金を、前記開口部に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程後、シール部材の中空部分に圧力を付与し、当該シール部材を膨張させて前記開口部を画定する内壁に密着させる密着工程と、
を、備えたタンク組付方法。
【請求項9】
前記密着工程は、前記シール部材の中空部分に流体を導入する工程を含む請求項8記載のタンク組付方法。
【請求項10】
前記シール部材は、前記口金本体の外周面に沿って環状に配設されてなり、前記流体を当該シール部材の内周面側から導入する請求項9記載のタンク組付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−164089(P2008−164089A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355239(P2006−355239)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】