説明

タンク装置

【課題】内部に充填される流体の圧力が上昇し難いタンク装置を提供する。
【解決手段】内部に水素が充填され、外形が円柱状であるタンク本体11と、タンク本体11の一端側に設けられ、開弁しタンク本体11の水素を放出することで、タンク本体11の圧力を逃す常閉型のリリーフ弁20と、通電することでリリーフ弁20を開弁させる開弁手段と、タンク本体11の他端側に設けられ、低温部41と熱を受熱する高温部42との温度差に基づいて電力を発生するペルチェ素子50と、ペルチェ素子50の電力を開弁手段に供給する電力線51と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池を搭載し、その電力で走行する燃料電池車の開発が進められている。このような燃料電池車には、燃料電池の他、燃料電池に水素(流体)を供給する水素タンク(タンク装置)、空気を供給するコンプレッサ、燃料電池を経由するように冷媒を循環させる冷媒ポンプ、直流電力を交流電力に変換するPDU(Power Drive Unit)、走行用のモータ、モータの駆動力を駆動輪に伝達するドライブトレイン等も搭載される。
ここで、コンプレッサ、冷媒ポンプ、PDU、ドライブトレイン等の外部機器は、その作動に伴って発熱する。
【0003】
このような水素タンクは、内部に水素が高圧で充填されるタンク本体と、タンク本体の圧力が過剰に高圧とならないように、水素を外部に放出することで圧力を逃がす圧力逃がし弁(リリーフ弁)と、を備えている(特許文献1〜2)。
【0004】
そして、水素タンクから燃料電池に向かう水素が通流する水素供給流路には、複数の減圧弁(レギュレータ)が設けられる。そして、アクセル開度等に基づいて算出された発電要求量に従って水素の目標圧力を設定し、そして、前記減圧弁の二次側圧力が算出された目標圧力となるように、前記減圧弁を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−65469号公報
【特許文献2】特開2002−286138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記したようにコンプレッサ等の外部機器の発熱が水素タンクに入力されたりすると、水素が膨張し、水素タンクの圧力が上昇してしまう。このように、水素タンクの圧力が上昇してしまうと、前記した減圧弁の一次側圧力も上昇することになり、前記目標圧力よりも高い圧力で、水素が燃料電池に供給される虞がある。そして、このように高い圧力で水素が供給されると、水素が燃料電池で良好に消費されないばかりか、燃料電池の劣化に繋がる虞がある。
【0007】
ここで、制御範囲が広いワイドレンジの減圧弁を搭載する方法も考えられるが、このようなワイドレンジの減圧弁は非常に高価であるため、コストを要してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、内部に充填される流体の圧力が上昇し難いタンク装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、内部に流体が充填され、外形が円柱状であるタンク本体と、前記タンク本体の一端側に設けられ、開弁し前記タンク本体の流体を放出することで、前記タンク本体の圧力を逃す常閉型の圧力逃し弁と、通電することで前記圧力逃し弁を開弁させる開弁手段と、前記タンク本体の他端側に設けられ、低温部と熱を受熱する高温部との温度差に基づいて電力を発生するペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の電力を前記開弁手段に供給する電力線と、を備えることを特徴とするタンク装置である。
【0010】
このような構成によれば、タンク本体の他端側に設けられたペルチェ素子において、作動に伴って発熱するコンプレッサ等の外部機器の熱が高温部に受熱し、高温部と低温部との温度差に基づいて電力を発生すると、この電力が電力線を介して、開弁手段に供給される。そして、このようにして通電した開弁手段がタンク本体の一端側に設けられた圧力逃し弁を開弁する。そうすると、圧力逃し弁が、タンク本体の流体を外部に放出し、タンク本体の圧力を逃す。これにより、タンク本体の圧力が、外部機器の熱によって上昇し難くなる。
【0011】
したがって、タンク装置からの流体の圧力を制御するレギュレータは、ワイドレンジである必要はなく、レギュレータを含み流体の供給を受けるシステム(後記する実施形態では燃料電池システム)を簡便かつ安価で構成できる。また、前記レギュレータ等の一次側圧力が上昇し難いので、前記レギュレータによって、流体の圧力を適切に制御した後、流体を必要とする流体需要機器(後記する実施形態では燃料電池)に、供給できる。
【0012】
また、前記タンク装置において、前記開弁手段は、溶融することで前記圧力逃し弁の弁体を開弁方向に移動させる溶融金属体と、前記ペルチェ素子からの電力で前記溶融金属体を加熱するヒータと、を備えることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、ペルチェ素子からの電力がヒータに供給されると、ヒータが溶融金属体を加熱する。そして、溶融金属体が溶融すると圧力逃し弁の弁体が開弁方向に移動し、圧力逃し弁を開弁できる。
【0014】
また、前記タンク装置において、前記ヒータから熱が外部に放熱せず前記溶融金属体に伝達するように、外部から前記溶融金属体及び/又は前記ヒータを断熱する放熱防止用断熱部材を備えることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、放熱防止用断熱部材が、外部から溶融金属体及び/又はヒータを断熱するので、ヒータから熱を外部に放熱させず溶融金属体に伝達させることができる。
【0016】
また、前記タンク装置において、前記開弁手段は、前記ペルチェ素子からの電力で駆動し、前記圧力逃し弁の弁体を開弁方向に移動させるアクチュエータを備えることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、開弁手段のアクチュエータ(駆動体)がペルチェ素子からの電力で駆動することによって、圧力逃し弁の弁体を開弁方向に移動させることができる。
【0018】
また、前記タンク装置において、外部から前記ペルチェ素子の前記低温部に入熱しないように、外部から前記低温部を断熱する温度差形成用断熱部材を備えることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、温度差形成用断熱部材が、外部からペルチェ素子の低温部に入熱しないように、外部から前記低温部を断熱する。これにより、ペルチェ素子において、高温部と低温部と間で温度差が形成され易くなり、この温度差に基づいて電力が発生し易くなる。
【0020】
また、前記タンク装置において、前記タンク本体は、金属製であって、他端側に台座部を有しており、前記ペルチェ素子の前記低温部は、金属製の前記台座部に接触していることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、タンク本体が金属製であるから、その他端側の台座部は低温になり易い。そして、ペルチェ素子の低温部が、この低温となり易い金属製の台座部に接触しているので、ペルチェ素子において温度差が形成され易くなり、この温度差に基づいて電力が発生し易くなる。
【0022】
また、前記タンク装置において、前記タンク本体は、車両に搭載されており、前記ペルチェ素子の前記低温部は、前記車両の車体を構成する金属製の構成部品に設けられていることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、ペルチェ素子の低温部が、車両の車体を構成する金属製であって低温となり易い構成部品に設けられているので、ペルチェ素子において温度差が形成され易くなり、この温度差に基づいて電力が発生し易くなる。
【0024】
また、前記タンク装置において、前記タンク本体は、冷却用の冷媒が通流する冷媒回路を有する車両に搭載されており、前記ペルチェ素子の前記低温部は、前記冷媒回路の構成部品に設けられていることが好ましい。
【0025】
このような構成によれは、ペルチェ素子の低温部が、冷媒回路の低温となり易い構成部品に設けられているので、ペルチェ素子において温度差が形成され易くなり、この温度差に基づいて電力が発生し易くなる。
【0026】
また、前記タンク装置において、前記電力線は、耐熱層で被覆されていることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、電力線は耐熱層で被覆されているので、外部からの熱によって電力線が損傷し難くなる。
【発明の効果】
【0028】
これら本発明によれば、内部に充填される流体の圧力が上昇し難いタンク装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池車の側面図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料電池車及び水素タンクを後方から見た図である。
【図3】第1実施形態に係るリリーフ弁の側断面図であり、閉弁状態(通常時)を示している。
【図4】第1実施形態に係るリリーフ弁の側断面図であり、開弁状態(高温時)を示している。
【図5】第1実施形態に係るペルチェ素子の側断面図である。
【図6】第2実施形態に係るリリーフ弁を模式的に示す側面図である。
【図7】第3実施形態に係る燃料電池車及び水素タンクを後方から見た図である。
【図8】第3実施形態に係るペルチェ素子及びクロスメンバの断面図であり、図7のX1−X1線断面に対応している。
【図9】第3実施形態に係る燃料電池車の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0031】
≪燃料電池車の構成≫
図1に示すように、第1実施形態に係る燃料電池車100(車両、移動体)は、燃料電池スタック110(燃料電池)と、水素タンク1(タンク装置)と、減圧弁121と、コンプレッサ131と、希釈器132と、を備えている。
なお、燃料電池車100の具体的種類には、例えば、四輪車、三輪車、二輪車、一輪車、列車等がある。
【0032】
燃料電池スタック110は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。MEAは、電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟持するカソード及びアノードとを備えている。各セパレータには、溝や貫通孔からなるアノード流路111(燃料ガス流路)及びカソード流路112(酸化剤ガス流路)が形成されている。
【0033】
水素タンク1は、アノード流路111に供給される水素(燃料ガス)が充填されるタンクである。そして、水素タンク1は、配管121a、減圧弁121(レギュレータ)、配管121bを介して、アノード流路111の入口に接続されており、水素タンク1の水素が、配管121a等を通って、アノード流路111に供給されるようになっている。
【0034】
すなわち、配管121aと配管121bとで水素供給流路(燃料ガス供給流路)が構成されており、この水素供給流路に減圧弁121が設けられている。また、水素供給流路には、図示しないECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)によって開閉制御される常閉型の遮断弁も設けられている。なお、減圧弁及び遮断弁は、例えば、下流に向かって、一次遮断弁、一次減圧弁、二次遮断弁、二次減圧弁のように複数で設けられる。
【0035】
減圧弁121は、例えば、本願出願人による特開2004−185831号公報に記載されるように、配管121cから入力されるパイロット圧に基づいて、アノード流路111における水素の圧力と、カソード流路112における空気の圧力とがバランスするように、水素の圧力を下げる一次減圧弁である。なお、配管121cの上流端は、パイロット圧用の空気を導くため、カソード流路112に向かう空気が通流する配管131aに接続されている。
【0036】
アノード流路111の出口は、配管121dを介して、希釈器132に接続されている。そして、アノード流路111から排出されたアノードオフガスは、配管121dを通って、希釈器132に排出されるようになっている。
【0037】
コンプレッサ131は、配管131aを介して、カソード流路112の入口に接続されており、ECUからの指令に従って作動すると、酸素を含む空気を取り込んで圧縮し、これをカソード流路112に圧送するようになっている。なお、コンプレッサ131は、燃料電池スタック110や高圧バッテリ(図示しない)を電源としている。
【0038】
また、コンプレッサ131は作動すると作動熱を発生する熱源であり、本実施形態では、この作動熱の一部が水素タンク1に伝達する場合を例示する。すなわち、コンプレッサ131は、水素タンク1からみて発熱する外部機器である。なお、このように発熱する外部機器は、コンプレッサ131の他、ECU、冷媒ポンプ、高圧バッテリ、PDU、ドライブトレイン等、種々挙げられる。
【0039】
カソード流路112の出口は、配管132aを介して、希釈器132に接続されている。そして、カソード流路112から排出されたカソードオフガスは、配管132aを通って希釈器132に排出されるようになっている。
なお、配管132aには、ECUによって開度が制御される常開型の背圧弁(図示しない)が設けられている。すなわち、ECUは、燃料電池100の操作者による車両への出力要求量であるアクセル開度に基づいて、発電要求量、目標空気圧力、目標水素圧力を算出し、目標空気圧力となるように、背圧弁の開度及びコンプレッサ131の回転速度を制御するようになっている。
【0040】
希釈器132は、配管121dからのアノードオフガス中の水素を、配管132aからのカソードオフガスで希釈し、水素濃度を低減させるものであり、その内部に希釈空間を有している。そして、希釈後のガスは、配管132bを通って車外に排出されるようになっている。
【0041】
≪水素タンクの構成≫
次に、図2〜図5を参照して、水素タンク1(タンク装置)について具体的に説明する。
水素タンク1は、略円柱状の外形を有しており、燃料電池車100に対して横置きで搭載され、その軸方向は車幅方向(左右方向)に沿っている。水素タンク1は、タンク本体11と、タンク本体11の左端側(一端側)に設けられたリリーフ弁20(圧力逃し弁)と、を備えている。
なお、水素タンク1は、金属製のベルト(図示しない)を介して、燃料電池車100のサブフレーム(車体)を構成し車幅方向に延びるクロスメンバ(図示しない)に固定されている。
【0042】
<タンク本体>
タンク本体11は、アルミニウム合金等の金属製であって、その外形が円柱状で内部にタンク室12を有する殻状の構造体である。タンク室12は、水素が高圧で充填される空間であり、その圧力は、水素の残量・温度等に対応して変動する。また、タンク本体11は、その左端側(一端側)に、リリーフ弁20が螺合される円筒状の口金部13(ネック部)を有している。
【0043】
タンク本体11の外周面には、タンク本体11の強度を補強する補強層14が設けられている。補強層14は、例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)層から構成される。ただし、補強層14を備えない構成でもよい。
【0044】
タンク本体11は、その右端側(他端側)に、一体成形された円柱台状の台座部15(エンドボス)を備えている。そして、台座部15には、ペルチェ素子40の後記する低温部41が接触している。ここで、台座部15は、タンク本体11と同様に、金属製であるので、樹脂製等である場合と比較して、低温となり易い。これにより、ペルチェ素子40の後記する低温部41と高温部42との間で温度差が形成され易くなっている。
なお、台座部15と低温部41との間にはシリコーン等からなる伝熱層を介在させ、台座部15と低温部41との間において良好に伝熱させ、台座部15と低温部41との間における熱抵抗を低減させることが好ましい。
【0045】
<リリーフ弁>
リリーフ弁20は、常閉型の弁であって、開弁することでタンク室12の水素を外部に放出し、タンク本体11の圧力を逃がす、つまり、低下させるものである。また、リリーフ弁20は、車幅方向において左端側に配置されているので、前後からの衝突によって、燃料電池車100が前後方向で圧縮しても、リリーフ弁20は圧縮されず、保護されるようになっている。
【0046】
リリーフ弁20は、図3に示すように、口金部13に螺設されたバルブボディ21と、バルブボディ21内を軸方向で進退する弁体22(ピストン)と、弁体22を閉弁方向(右方向)に付勢する圧縮コイルばね23と、圧縮コイルばね23がバルブボディ21内に装填された状態を保持するキャップ24と、圧縮コイルばね23とキャップ24との間に介装された金属体31(溶融金属体)と、金属体31と圧縮コイルばね23との間に介装されたヒータ32(開弁手段)と、を備えている。
【0047】
なお、バルブボディ21には、ECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)によって開閉制御され、燃料電池スタック110への水素供給時等に開弁される常閉型の遮断弁(インタンク電磁弁)と、水素充電時に開弁する常閉型の逆止弁(いずれも図示しない)と、が設けられている。
【0048】
バルブボディ21は、通常時(閉弁時)に弁体22が着座する弁座21aを有すると共に、その内部には、開弁時に水素の放出通路となる第1ポート21b及び第2ポート21cが形成されている。
【0049】
弁体22は、一体成形された左側(一端側)の大径部22aと、大径部22aから右側(他端側)に延出した小径部22bと、を備えている。
【0050】
小径部22bは、通常時(閉弁時)において、バルブボディ21の弁座21aに着座し、第1ポート21bと第2ポート21cとを遮断する。このように第1ポート21bと第2ポート21cとが遮断されると、リリーフ弁20は閉弁状態となる(図3参照)。なお、通常時とは、タンク本体11内が定格圧力以下であって、金属体31が溶融していない状態である。
【0051】
一方、例えば、タンク本体11内が定格圧力よりも高くなり、弁体22が弁座21aから離座すると、第1ポート21bと第2ポート21cとが連通する。このように第1ポート21bと第2ポート21cとが連通すると、リリーフ弁20が開弁状態となる(図4参照)。
【0052】
<金属体>
金属体31は、所定温度以上に昇温した場合に溶融し、キャップ24に形成された流出路24aから外部に流出することで、キャップ24と圧縮コイルばね23との間にスペースを形成するための部品である。このような金属体31は、例えば、低融点金属(スズやインジウムの合金等)から形成されている。
【0053】
そして、スペースが形成されると、タンク本体11内の水素の圧力によって、弁体22が左にスライド、つまり、小径部22bが弁座21aから離座すると同時に、第1ポート21bと第2ポート21cとが連通し、リリーフ弁20が開弁状態となり、タンク本体11内の水素が、第1ポート21b、第2ポート21cを通って、外部に放出され、圧力が低下するようになっている。
【0054】
すなわち、金属体31は、溶融することでリリーフ弁20の弁体22を開弁方向に移動させる部品である。そして、リリーフ弁20を開弁させる開弁手段は、金属体31とヒータ32とを備えて構成されている。
【0055】
<ヒータ>
ヒータ32は、ペルチェ素子40からの電力で発熱し、金属体31を加熱する電気ヒータである。このようなヒータ32は、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータで構成される。そして、ヒータ32は、第1実施形態では、円板状を呈しており、金属体31と圧縮コイルばね23との間に配置されている。
【0056】
また、ヒータ32は、軸方向において金属体31に接触しており、ヒータ32の熱が金属体31に直接伝達するようになっている。ただし、ヒータ32の形状・配置はこれに限定されず、例えば、ヒータ32を円筒状とし、その中空部に金属体31を配置する構成としてもよいし、その他の形状として金属体31の径方向外側近傍に配置する構成としてもよい。
【0057】
<放熱防止用断熱部材>
放熱防止用断熱部材33は、筒状を呈しており、ヒータ32の外周面及び圧縮コイルばね23側の面に被さるように設けられている。このような放熱防止用断熱部材33は、例えば、発泡ウレタン樹脂で構成される。後記する温度差形成用断熱部材45(図5参照)についても同様である。
これにより、バルブボディ21に内蔵されたヒータ32は外部から断熱され、ヒータ32の熱が外部に放熱せず金属体31に良好に伝達し、金属体31が速やかに昇温するようになっている。
【0058】
ただし、放熱防止用断熱部材33の形状・配置はこれに限定されず、例えば、金属体31及びヒータ32の両方を断熱する構成としてもよい。
【0059】
<ペルチェ素子>
ペルチェ素子40は、図5に示すように、例えば、薄板状の半導体素子であって、その左面側(一面側)の低温部41と、その右面側(他面側)の高温部42と、断面視で低温部41と高温部42とをπ字形で接続するp型半導体43及びn型半導体44と、を備えている。なお、低温部41は、前記したように、金属製の台座部15に接触している。
【0060】
高温部42は外部に開放されており、コンプレッサ131等の発熱する外部機器の熱が、高温部42に受熱するようになっている。そして、このように高温部42に入熱し、低温部41と高温部42との間で温度差が形成されると、ゼーベック効果により、この温度差に基づいて、低温部41で起電力が発生し、この電力は、電力線51を通じて、ヒータ32に供給されるようになっている。
【0061】
この他、高温部42から右向きで立設する複数の熱交換フィンを備える構成とし、この熱交換フィンによって受熱量を増加させ、温度差が大きく形成されるようにしてもよい。
【0062】
<温度差形成用断熱部材>
温度差形成用断熱部材45は、発熱する外部機器の熱が、ペルチェ素子40の低温部41に入熱しないように、薄板状のペルチェ素子40及び台座部15の全側面を囲み、外部から低温部41及び台座部15を断熱している。これにより、低温部41と高温部42との間で温度差が形成され易く、そして、ペルチェ素子40において電力が発生しやすくなっている。
ただし、外部機器の熱を受熱する高温部42の受熱面(図5の右面)には、温度差形成用断熱部材45は設けられておらず、外部に開放されている。
【0063】
<電力線>
電力線51は、ペルチェ素子40の低温部41と、前記したヒータ32とを電気的に接続しており、低温部41で生成した電力をヒータ32に供給するケーブルである。なお、電力線51は、高熱・衝突等によって断線し難い位置、例えば、タンク本体11内や水素タンク1の上面に配置することが好ましい。
【0064】
また、電力線51は、耐熱層(図示しない)で被覆されている。これにより、外部からの熱によって電力線51が損傷にし難くなっており、ペルチェ素子40の電力が好適にヒータ32に供給されるようになっている。なお、耐熱層は、例えば、エポキシ樹脂等の耐熱性樹脂で形成される。
【0065】
≪水素タンクの動作・効果≫
このような水素タンク1によれば、次の動作・効果を得る。
コンプレッサ131等の外部機器の熱がペルチェ素子40の高温部42に入力されると、低温部41と高温部42との間で温度差が形成され電力が発生し、この電力が電力線51を通じてヒータ32に供給される。そうすると、ヒータ32が発熱して金属体31を加熱し、金属体31の温度が上昇する。そして、金属体31が所定温度以上になると溶融し始め、溶融したものは流出路24aを通って外部に流出する。
【0066】
そうすると、キャップ24とヒータ32との間にスペースが形成され、タンク室12の高圧の水素によって、ヒータ32、圧縮コイルばね23及び弁体22が左にスライドする。これにより、図4に示すように、弁体22が弁座21aから離座すると同時に、第1ポート21bと第2ポート21cとが連通し、タンク室12の水素が、第1ポート21b、第2ポート21cを通って、外部に放出され、圧力が低下する。
【0067】
このようにして、水素タンク1内の水素の圧力が上昇し難くなるので、図1に示す減圧弁121の一次側圧力が、コンプレッサ131の作動熱等の影響を受けて上昇することはない。すなわち、左端側のリリーフ弁20の反対側である右端側で、発熱する外部機器から水素タンク1に熱が入力されたとしても、ペルチェ素子40(熱電変換手段)によって熱を電力に変換し、リリーフ弁20を開弁でき、リリーフ弁20を両端側に設ける必要も無い。
【0068】
したがって、制御範囲が広範囲であるワイドレンジの減圧弁121を備える必要はなく、燃料電池車100を低コストで製造可能となる。そして、減圧弁121は、水素を適切な圧力に減圧・調整することができ、水素が適切な圧力でアノード流路111に供給され、想定外な高圧での水素供給による燃料電池スタック110の劣化も未然に防止される。また、水素が燃料電池スタック110をそのまま通り抜けることも低減され、燃料電池スタック110の燃費、つまり、水素の消費効率は高まる。
【0069】
≪変形例≫
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、後記する実施形態と組み合わせたり、次のように変更できる。
【0070】
前記した実施形態では、水素タンク1が移動体に搭載された構成を例示したが、その他に例えば、据え置き型の水素タンク1でもよい。
【0071】
前記した実施形態では、タンク室12に充填される流体が水素(気体)である構成を例示したが、その他の種類の気体(酸素、窒素、アルゴン、CNGガス等)や、液体でもよい。
【0072】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について、図6を参照して説明する。なお、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0073】
<リリーフ弁>
第2実施形態に係る水素タンク1は、リリーフ弁60を備えており、リリーフ弁60は、常閉型であって、電動式の弁装置である。リリーフ弁60は、第1ポート21bと第2ポート21cとを連通/遮断する弁体61と、弁体61を開弁方向/閉弁方向に動作させる電動式のアクチュエータ62(駆動装置)と、を備えている。すなわち、リリーフ弁60を開弁させる開弁手段は、アクチュエータ62を備えて構成されている。
【0074】
アクチュエータ62には電力線51が接続されており、ペルチェ素子40からの電力が電力線51を通じてアクチュエータ62に供給されるようになっている。そして、電力が供給されるとアクチュエータ62が作動し、弁体61を開弁方向に移動させ、リリーフ弁60が開くようになっている。
【0075】
ここで、アクチュエータ62が弁体61を開弁方向に移動させる具体的構成については特に限定はないが、例えば、次のようにできる。
(1)アクチュエータ62をソレノイドで構成し、通電するソレノイドで励磁する固定コアを設け、この励磁した固定コアが、弁体61と一体である可動コアを吸引することで、弁体61を開弁方向に移動させる構成とできる。
(2)また、アクチュエータ62を電動モータで構成すると共に、電動モータの駆動軸にピニオンを取り付け、このピニオンが弁体61と一体であるラックに噛合し、電動モータが回転すると、弁体61を開弁方向に移動させる構成とできる。
【0076】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の第3実施形態について、図7〜図9を参照して説明する。なお、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0077】
<ペルチェ素子の取付位置>
第3実施形態では、ペルチェ素子40を複数(ここでは、4つ)備えている(図8参照)。各ペルチェ素子40は、水素タンク1の右端側(他端側)において、サブフレーム70を構成し車幅方向に延び、四角筒状を呈する金属製(例えば熱伝導率の高い銅製)のクロスメンバ71(金属部品)の各面に取り付けられている。なお、各ペルチェ素子40の低温部41は、クロスメンバ71に接触している。
【0078】
サブフレーム70は、井桁状を呈しており、メインフレーム(図示しない)にボルト等で締結されており、燃料電池車100の車体の一部を構成している。ここで、水素タンク1の右端側(他端側)とは、軸方向(車幅方向)において、概ね、水素タンク1の中間位置よりも右方側の位置を意味する。
【0079】
また、クロスメンバ71は、図8に示すように、中空部72を有する四角筒状(筒状)で構成されており、中空部72を冷却用の冷媒が通流するようになっている。なお、クロスメンバ71の外周面に断熱層を設け、中空部72を通流する冷媒が外部機器の熱によって昇温し難い構成としてもよい。
【0080】
すなわち、燃料電池車100は、図9に示すように、冷却用の冷媒が通流する第1冷媒回路150及び第2冷媒回路160を備えている。
【0081】
第1冷媒回路150は、モータ151を冷却するために、モータ151とラジエータ152(放熱器)との間で冷媒を循環させる回路である。モータ151は、燃料電池スタック110(図1参照)や高圧バッテリ(図示しない)からの電力で駆動し、走行用の動力を発生する電動モータであり、駆動に伴って発熱する。
【0082】
そして、第1冷媒回路150に設けられた冷媒ポンプ153が駆動すると、冷媒が、冷媒ポンプ153、ラジエータ152、流量調整弁154、モータ151、冷媒ポンプ153…の順で循環するようになっている。流量調整弁154は、第1冷媒回路150を循環する冷媒の流量を調整する弁であり、例えば、バタフライ弁で構成される。
【0083】
第2冷媒回路160は、第1冷媒回路150に対して、流量調整弁154の上流の分岐点から分岐し、ペルチェ素子40の取り付けられた前記クロスメンバ71の中空部72(図8参照)を経由し、モータ151の下流の合流点で合流するように、冷媒を通流させる回路である。すなわち、モータ151と、ペルチェ素子40の取り付けられた前記クロスメンバ71とは、並列で配置されている。また、第2冷媒回路160には、冷媒の流量を調整する流量調整弁161が設けられている。
【0084】
このように、第3実施形態では、ペルチェ素子40の低温部41が、車体の構成部品かつ冷媒回路の構成部品であって、金属製で比較的に低温であるクロスメンバ71に接触し、そして、クロスメンバ71の中空部72に低温の冷媒が通流する構成であるので、低温部41が低温となり易い。これにより、低温部41と高温部42との間で温度差が形成され易くなり、低温部41において電力が発生し易くなる。
【0085】
≪第3実施形態−変形例≫
前記した実施形態では、金属製のクロスメンバ71の中空部72を冷媒が通流する構成を例示したが、その他に例えば、冷媒が通流しない構成でもよい。
【0086】
前記した実施形態では、ペルチェ素子40がクロスメンバ71に取り付けられた構成を例示したが、車体を構成する金属製の他の構成部品、例えば、サイドフレーム等に取り付けられた構成でもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 タンク装置(タンク装置)
11 タンク本体
15 台座部
20、60 リリーフ弁(圧力逃し弁)
22、61 弁体
31 金属体(溶融金属体、開弁手段)
32 ヒータ(開弁手段)
33 放熱防止用断熱部材
40 ペルチェ素子
41 低温部
42 高温部
45 温度差形成用断熱部材
51 電力線
62 アクチュエータ
71 クロスメンバ(車体の構成部品、冷媒回路の構成部品)
100 燃料電池車(車両)
150 第1冷媒回路
160 第2冷媒回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が充填され、外形が円柱状であるタンク本体と、
前記タンク本体の一端側に設けられ、開弁し前記タンク本体の流体を放出することで、前記タンク本体の圧力を逃す常閉型の圧力逃し弁と、
通電することで前記圧力逃し弁を開弁させる開弁手段と、
前記タンク本体の他端側に設けられ、低温部と熱を受熱する高温部との温度差に基づいて電力を発生するペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の電力を前記開弁手段に供給する電力線と、
を備える
ことを特徴とするタンク装置。
【請求項2】
前記開弁手段は、溶融することで前記圧力逃し弁の弁体を開弁方向に移動させる溶融金属体と、前記ペルチェ素子からの電力で前記溶融金属体を加熱するヒータと、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のタンク装置。
【請求項3】
前記ヒータから熱が外部に放熱せず前記溶融金属体に伝達するように、外部から前記溶融金属体及び/又は前記ヒータを断熱する放熱防止用断熱部材を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のタンク装置。
【請求項4】
前記開弁手段は、前記ペルチェ素子からの電力で駆動し、前記圧力逃し弁の弁体を開弁方向に移動させるアクチュエータを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のタンク装置。
【請求項5】
外部から前記ペルチェ素子の前記低温部に入熱しないように、外部から前記低温部を断熱する温度差形成用断熱部材を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項6】
前記タンク本体は、金属製であって、他端側に台座部を有しており、
前記ペルチェ素子の前記低温部は、金属製の前記台座部に接触している
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項7】
前記タンク本体は、車両に搭載されており、
前記ペルチェ素子の前記低温部は、前記車両の車体を構成する金属製の構成部品に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項8】
前記タンク本体は、冷却用の冷媒が通流する冷媒回路を有する車両に搭載されており、
前記ペルチェ素子の前記低温部は、前記冷媒回路の構成部品に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項9】
前記電力線は、耐熱層で被覆されている
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のタンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−76433(P2013−76433A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215416(P2011−215416)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】