説明

タンパク質キナーゼの阻害剤

本発明は、式(I)


(式中、R、R、R、R、G、およびQは、本明細書において規定されている)を有する化合物を目的とする。本発明の化合物は、タンパク質キナーゼの阻害剤として有用である。本発明はまた、上記式による化合物を含んでいる組成物も目的とする。本発明はまた、タンパク質キナーゼの開(open)コンホメーションを安定化する化合物、開コンホメーションにある結晶化されたタンパク質キナーゼ、およびこれらの使用も目的とする。本明細書に記載されている化合物および組成物は、炎症性状態または炎症性疾患を処置および予防するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2004年12月7日に出願された米国仮出願番号第60/633,726号の優先権(benefit)を主張する。これは、参照してその全体が本発明に組み込まれる。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、タンパク質キナーゼのコンホメーションモジュレータとして有用な、式Iの化合物に関する。これらの化合物はまた、タンパク質キナーゼの阻害にも有用である。本発明はまた、前記化合物を含んでいる組成物、およびタンパク質キナーゼ媒介状態を処置するか、またはタンパク質キナーゼを阻害するための、式Iの化合物の様々な使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
タンパク質キナーゼは、細胞プロセスの機能において死活にかかわる役割を果たす。特定の分子経路の活性化および不活性化は多くの場合、1またはそれ以上のタンパク質のリン酸化または脱リン酸化によって制御されている。
【0004】
例えばマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、例えばp38キナーゼは、様々なストレス刺激に応答して活性化される。これは、炎症促進サイトカイン、内毒素、紫外線、および浸透圧衝撃を包含するが、これらに限定されるわけではない。p38の4つのイソ型が記載されてきた。αおよびβ形態が、炎症細胞中に発現され、TNF−α生産のキーメディエーターであると考えられている。細胞中のp38αおよびβの阻害は、結果としてTNF−αの発現レベルの減少を生じ、このような阻害剤は、炎症性疾患の動物モデルにおいて有効である。
【0005】
p38の数多くの小分子阻害剤は、当業界において公知である。これらの化合物は、p38キナーゼの表面上の離散位置を結合することによって、これらの効果を及ぼすと考えられている。例えばあるいくつかのp38阻害剤は、TNF−αおよびIL−1の生産を遮断し、ほかの阻害剤は、これらの二次的生物効果の多くを直接妨害しうる。
【0006】
タンパク質は、いくつかの異なるコンホメーションにおいて存在しうる。これらのコンホメーションは、様々な方法において互いに異なることがある。例えば、これらのコンホメーションは、様々な三次元構成において存在する、異なる特異的アミノ酸を有しうる。より全体的な観点において、タンパク質は、その全体的な第三構造の異なる構成において存在しうる。例えばあるいくつかのタンパク質は、「開」コンホメーションおよび「閉」コンホメーションの両方において存在しうる。
【0007】
タンパク質キナーゼの開コンホメーションを安定化しうる化合物は、キナーゼの作用を研究するためのツールとして貴重であろう。このような化合物はまた、多くの理由から、例えば薬品発見のためのツールとしても有用であろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の第一の態様は、式Iの化合物に関する。
【0009】
本発明の第二の態様は、式Iの化合物および適切なキャリヤまたは賦形剤を含んでいる組成物に関する。
【0010】
本発明の第三の態様は、タンパク質キナーゼの活性の阻害または調節方法であって、タンパク質キナーゼと式Iの化合物とを接触させる工程を含む方法に関する。
【0011】
本発明の第四の態様は、タンパク質キナーゼのコンホメーションの同定方法であって、式Iの化合物と錯体化されたタンパク質キナーゼの結晶を形成する工程を含む方法に関する。
【0012】
本発明の第五の態様は、タンパク質キナーゼへ結合するか、またはこれを阻害しうる化合物の同定方法に関する。
【0013】
本発明の第六の態様は、開コンホメーションを有するタンパク質キナーゼの結晶構造に関する。
【0014】
本発明の第七の態様は、式Iの化合物と錯体化された結晶化タンパク質キナーゼに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、タンパク質キナーゼへ結合し、タンパク質中にコンホメーション変化を誘発し、したがってタンパク質上のアロステリック部位が暴露されて安定化される化合物を提供する。このアロステリック部位は、第二化合物が結合してタンパク質の機能に影響を与えうるタンパク質キナーゼの区域である。このアロステリック部位の表示は、例えばタンパク質キナーゼを阻害しうる化合物を同定または設計するために有用である。
【0016】
本発明の化合物はまた、あるいくつかの実施形態において、タンパク質キナーゼの阻害剤としても有用である。いくつかの実施形態における本発明の化合物は、次のキナーゼの1またはそれ以上の阻害剤として有用である:DDR2、EphA1、EphA2、EphA3、EphA5、EphA7、EphA8、c−RAF、Flt1、Flt3、Hck、JNK2α2、JNK3α3、JNK3、KDR、Lck、Lyn、MINK、MKK6、Mnk2、MuSK、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p70S6K、Pyk2、Ret、ROCKI、TAK1、Tie2、TrkA、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、FGFR2、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrc。別の実施形態において、この化合物は、次のキナーゼの1またはそれ以上の阻害剤である:c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrc。別の実施形態において、本発明による化合物は、次のキナーゼの1またはそれ以上の阻害剤である:c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、およびTrkB。
【0017】
さらにほかの実施形態において、本発明の化合物は、タンパク質キナーゼ媒介炎症およびほかの障害の処置において有用である。これは、骨吸収、受容者に対する移植片の反応、アテローム性動脈硬化症、関節炎、変形性関節症、関節リウマチ、痛風、乾癬、局所炎症性疾患状態、成人呼吸窮迫症候群、喘息、慢性肺炎症性疾患、慢性閉塞性肺疾患、心臓再灌流損傷、腎性再灌流損傷、血栓、糸球体腎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、多発性硬化症、内毒素性ショック、骨粗鬆症、アルツハイマー病、鬱血性心不全、アレルギー、癌、および悪液質を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0018】
本発明の第一の態様は、式I:
【0019】
【化4】

の化合物、または薬学的に受容可能なその塩(式中、
は、R−LまたはR−Lであり;
およびRは、水素、C1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、およびC1−6ジアルキルアミノからなる群から独立して選択されるか、あるいはまた、RおよびRは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5〜8員環を形成し;
は、
【0020】
【化5】

(式中、XおよびXは、独立して(CR(ここで、nは、各々の存在において独立して1、2、または3である)であり、Zは、−O−、−NH−、−HN−SO−、−NHC(O)−、−S−、−S(O)−、−SO−、または−C(O)−である)であり;
は、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノ、アミノカルボニル、C1−6アルキルアミノカルボニル、C1−6ジアルキルアミノカルボニル、フェニル、およびメトキシフェニルからなる群から独立して選択された1またはそれ以上の基で場合により置換された、1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を含有する5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環であり;
は、−O−、−S−、−CH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH(OH)−、−C(O)−、−CX−、または−CXH−(ここで、Xはハロゲンである)であり;
は、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、オキソチオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ピペラジニル、またはピペリジニルであり;そして
は、(CR10(ここで、RおよびR10の各々の存在は、HおよびC1−4アルキルからなる群から独立して選択され、mは、1、2、または3である)であり;
Qは、各々が場合により、R11およびR12の1またはそれ以上で置換された5員ヘテロアリール環のジラジカル(diradical)であり、;
Gは、場合により置換されたC1−3アルキレンのリンカー、C=O、−C(O)NH−、または単結合であり;
およびRは、各々の存在において独立して、水素、C1−4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、アミノカルボニル、C1−4アルキルアミノカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、C1−4アルキルアミノメチル、およびC1−4アルキルアミノカルボニルメチルであり;
11は、独立して、各々が場合により1個〜3個のフェニル基で置換されたC3−10アルキルまたはC3−10ハロアルキル;場合により1またはそれ以上のC1−3アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、またはチオケトで置換されたC3−7シクロアルキル;場合により置換されたC3−10シクロヘテロアルキル;場合により一部または全部がハロゲン化されていてもよく、かつ場合により1個〜3個のC1−5アルキル基またはフェニル基で置換されたC3−10分岐アルケニル;場合により1個〜3個のC1−3アルキル基で置換されたC5−7シクロアルケニル;シアノ;またはC1−4アルコキシカルボニルであり;そして
12は、C1−5アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アミノ、C1−5アルキルアミノ、C1−5ジアルキルアミノ、または場合により置換されたフェニルである)。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、式Iの化合物を目的とする(式中、
は、R−LまたはR−Lであり;
およびRは、水素、C1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、およびC1−6ジアルキルアミノからなる群から独立して選択されるか、あるいはまたRおよびRは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5〜8員環を形成し;
は、
【0022】
【化6】

(式中、XおよびXは、独立して(CR(ここで、nは、各々の存在において独立して1、2、または3である)であり、Zは、−O−、−NH−、−HN−SO−、−NHC(O)−、−S−、−S(O)−、−SO−、または−C(O)−である)であり;
は、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノカルボニル、C1−6アルキルアミノカルボニル、およびC1−6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から独立して選択された1またはそれ以上の基で場合により置換された1、2、または3窒素原子を含有する5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環であり;
は、−O−、−S−、−CH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH(OH)−、−C(O)−、−CX−、または−CXH−(ここで、Xはハロゲンである)であり;
は、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、オキソチオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ピペラジニル、またはピペリジニルであり;そして
は、(CR10(ここで、RおよびR10の各々の存在は、HおよびC1−4アルキルからなる群から独立して選択され、mは、1、2、または3である)であり;
Qは、場合により、R11およびR12の1またはそれ以上で置換された5員ヘテロアリールのジラジカルであり;
Gは、場合により置換されたC1−3アルキレンのリンカー、C=O、または単結合であり;
およびRは、各々の存在において独立して水素、C1−4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、アミノカルボニル、C1−4アルキルアミノカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、C1−4アルキルアミノメチル、およびC1−4アルキルアミノカルボニルメチルであり;
11は、独立して、各々が場合により1個〜3個のフェニル基で置換されたC3−10アルキルまたはC3−10ハロアルキル;場合により1またはそれ以上のC1−3アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、またはチオケトで置換されたC3−7シクロアルキル;場合により置換されたC3−10シクロヘテロアルキル;場合により一部または全部がハロゲン化されていてもよく、かつ場合により1個〜3個のC1−5アルキル基またはフェニル基で置換されたC3−10分岐アルケニル;場合により1個〜3個のC1−3アルキル基で置換されたC5−7シクロアルケニル;シアノ;またはC1−4アルコキシカルボニルであり;そして
12は、C1−5アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アミノ、C1−5アルキルアミノ、C1−5ジアルキルアミノ、または場合により置換フェニルである)。
【0023】
一実施形態において、本発明は、式I(式中、RはR−Lである)の化合物を目的とする。別の実施形態において、RはR−Lである。
【0024】
一実施形態において、Lは、−CH−である。別の実施形態において、Lは、−O−である。ほかの実施形態において、Lは、−CH(OH)−、−C(O)−、−CHX−、および−CX−からなる群から選択される。
【0025】
一実施形態において、Lは、メチレン、エチレン、またはプロピレンである。別の実施形態において、Lは、その置換基とともに、C3−6分岐アルキレンリンカーである。
【0026】
一実施形態において、Rは、各々が場合により置換された4−ピリジルオキシまたは3−ピリジルオキシである。
【0027】
一実施形態において、RおよびRは、水素、C1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、およびC1−6ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される。適切なRおよびR基は、水素、メチル、エチル、プロピル、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、クロロエトキシ、ジクロロエトキシ、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、およびジイソプロピルアミノを包含するが、これらに限定されるわけではない。別の実施形態において、RおよびRは、どちらも水素である。
【0028】
別の実施形態において、RおよびRはともに、1つの環を形成し、この場合、前記環は、フェニル環と融合され、これによって二環式環系を形成する。適切な環は、炭環式、ヘテロ環式、アリール環、非芳香族環、ヘテロアリール環などを包含する。ほかの実施形態において、RおよびRは、3〜6員環を形成する。例えば一実施形態において、R、R、およびフェニル環はともに、ナフチル環を形成する。RおよびRによって形成されたほかの適切な環系は、テトラヒドロナフチル、キノリニル、イソキノリニルなどを包含する。
【0029】
別の実施形態において、Qは、各々が場合によりR11およびR12の1またはそれ以上で置換されたピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、フラン、またはチオフェンジラジカルであってもよい。例えば上記実施形態の各々において、Qは、各々が場合によりR11およびR12の1またはそれ以上で置換されたチエニル、ピラゾリル、およびチアゾリルからなる群から選択される。あるいくつかの実施形態において、5員ヘテロ環は、C1−5アルキル基、好ましくは第三ブチル基で置換される。ほかの置換基は、メチル、エチル、およびイソプロピルを包含するが、これらに限定されるわけではない。別の実施形態において、Qは、場合により置換されたチエニルであり、例えば5位において、C1−5アルキル基で置換されている。
【0030】
ほかの実施形態において、Qは、ウレアが2位へ結合され、Gが3位へ結合されたチエニル基である。あるいはまたQは、ウレアが3位へ結合され、Gが2位へ結合されたチエニル基である。
【0031】
別の実施形態において、Qは、C1−5アルキル基で置換されたピラゾリルである。
【0032】
一実施形態において、Gは、場合により置換されたメチレン、エチレンのリンカー、またはプロピレンリンカーである。別の実施形態において、Gは、−CH−、−CHCH−、または−CHCHCH−である。代替実施形態において、Gは、単結合である。別の実施形態において、Gは、−(O)−である。
【0033】
一実施形態において、Rは、
【0034】
【化7】

である。別の実施形態において、Rは、
【0035】
【化8】

である。ほかの適切な実施形態において、XおよびXは、どちらも非置換C1−3アルキレン基である。ほかの実施形態において、XおよびXは、どちらも非置換エチレンである。あるいくつかの実施形態において、Zは、−NHC(O)−、−S(O)−、および−NHS(O)−からなる群から選択される。
【0036】
の適切な値は、モルホリニル、チオモルホリニル、オキソチオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、オキソピペラジニル、オキソジアゼパニル、およびジオキソチアジアゼパニルを包含する。ほかの適切な基は、1−オキソチオモルホリニル、1,1−ジオキソチオモルホリニル、4−モルホリニル、3−オキソピペラジニル、5−オキソ−1,4−ジアゼパニル、および1,1−ジオキソ[1,2,5]チアジアゼパニルを包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0037】
ほかの適切なR基は、次のものを包含する:
【0038】
【化9】

ほかの適切なR基は、次のものを包含する:
【0039】
【化10】

ほかの適切なR基は、次のものを包含する:
【0040】
【化11】

別の実施形態において、Rは、場合により上に記載されているように置換された1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を含有する、5または6員ヘテロアリール環である。例えばRは、1または2窒素原子を含有する5または6員環であってもよく、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノ、アミノカルボニル、C1−6アルキルアミノカルボニル、またはC1−6ジアルキルアミノカルボニルによって置換されてもよい。あるいはまた、Rは、場合により置換されたフェニル環である。
【0041】
一実施形態において、Rは、1、2、または3窒素原子を含有する6員環である。この6員環は場合により、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、およびアルコキシアルキルからなる群から選択された1またはそれ以上の置換基で置換されていてもよい。ほかの特定の実施形態において、Rは、ピリジル基、例えば2−ピリジル、3−ピリジル、または4−ピリジルである。
【0042】
別の実施形態において、Rは、1、2、または3ヘテロ原子、例えば窒素、硫黄、および酸素、およびこれらの組み合わせを含有する9員二環式ヘテロアリール環である。このヘテロアリール環は場合により、アミノ、アミノカルボニル、C1−6アルキルアミノカルボニル、およびC1−6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択された1またはそれ以上の置換基で置換されてもよい。
【0043】
ほかの適切なR基は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イル、3,5−ジクロロピリジン−4−イル、フェニル、および3,4−ジフルオロフェニルを包含する。
【0044】
別の実施形態において、Rは、モルホリニルまたはチオモルホリニルである。あるいはまた、Rは、テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロフラニルである。ほかの実施形態において、Rは、オキソチオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ピペラジニル、またはピペリジニルである。R基の各々は、場合により置換されてもよい。あるいくつかの実施形態において、R基は場合により、メチル、エチル、およびプロピルからなる群から独立して選択された1、2、または3置換基で置換されている。
【0045】
別の実施形態において、Lは、O、S、または−CH−である。別の実施形態において、Lは、−SCH−または−CHS−である。別の実施形態において、Lは、−CH(OH)−または−C(O)−である。さらなる実施形態において、Lは、−CX−または−CXH−(ここでXはハロゲンである)である。別の実施形態において、Lは、単結合である。
【0046】
別の実施形態において、Lは、(CR10(ここで、RおよびRの各々の存在は水素であり、mは、1、2、または3である)である。別の実施形態において、Lは、C1−4アルキル基で置換されたメチレン、エチレン、またはプロピレンである。別の実施形態において、Lは、メチレンリンカーである。
【0047】
本発明の別の実施形態は、式I(式中、Zは、S、S(O)、またはS(O)であり、XおよびXは、どちらも非置換エチレンである)の化合物を目的とする。
【0048】
別の実施形態において、QはGおよびRとともに、次のものから選択された基を形成する:
【0049】
【化12】

別の実施形態において、RおよびRは、水素、C1−4アルキル、ハロゲン、アミノ、C1−4アルキルアミノ、アミノカルボニル、C1−4アルキルアミノカルボニル、およびC1−4アルコキシカルボニルからなる群から独立して選択される。ほかの実施形態において、RおよびRの適切な値は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、クロロ、フルオロ、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ヒドロキシ、プロピルアミノ、メチルアミノカルボニル、メトキシカルボニル、およびエトキシカルボニルを包含する。
【0050】
別の実施形態において、RおよびR10は、水素、メチル、エチル、およびプロピルからなる群から独立して選択される。別の実施形態において、RおよびR10は、水素、メチル、およびエチルなる群から独立して選択される。
【0051】
別の実施形態において、R11は、C3−10アルキルおよびC3−10ハロアルキルからなる群から選択される。別の実施形態において、R11は、場合により1またはそれ以上のC1−3アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、またはチオケトで置換されたC3−7シクロアルキルである。別の実施形態において、R11は、場合により置換されたC3−10シクロヘテロアルキルである。さらに別の実施形態において、R11は、各々が場合により1個〜3個のC1−5アルキル基で置換されたC3−10分岐アルケニルおよびC3−10分岐ハロアルケニルからなる群から選択される。さらに別の実施形態において、R11は、場合により1個〜3個のC1−5アルキル基で置換されたC5−7シクロアルケニル;シアノ;およびC1−4アルコキシカルボニルからなる群から選択される。R11の適切な値は、プロピル、ブチル、ヘキシル、クロロブチル、シクロプロピル、シクロヘキシル、シクロヘキサノニルなどを包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0052】
別の実施形態において、R12は、C1−5アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−5アルコキシ、アミノ、C1−5アルキルアミノ、およびC1−5ジアルキルアミノからなる群から選択される。別の実施形態において、R12は、フェニルおよび置換フェニルからなる群から選択される。R12の適切な値は、メチル、エチル、ブチル、フルオロ、ブロモ、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、およびフェニルを包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0053】
本発明の範囲内に入る化合物の第一下位分類は、式I(式中、Rは、場合により置換されたピリジルオキシであり;Qは場合により置換されたチエニルである)の化合物を包含する。
【0054】
化合物のこの第一下位分類の範囲内の一実施形態において、Rは、C1−5アルキル、C1−5アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、C1−5アルキルアミノ、C1−5ジアルキルアミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシ、アミノカルボニル、およびC1−5アルコキシカルボニルからなる群から選択された1または2置換基を有する4−ピリジルオキシである。この第一下位分類の別の実施形態において、Rは、非置換4−ピリジルオキシである。
【0055】
この第一下位分類の範囲内の別の実施形態において、Qは、非置換チエニルである。あるいくつかの実施形態において、このチエニル基は、2位または3位においてウレアのNへ結合されている。ほかの実施形態において、このチエニル基は、5位においてC1−5アルキル基、例えば第三ブチル基で置換されている。
【0056】
この第一下位分類の範囲内の別の実施形態において、Rは、各々が場合により置換されたモルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、1−オキソチオモルホリン−4−イル、および1,1−ジオキソチオモルホリン−4−イルからなる群から選択される。
【0057】
この第一下位分類の範囲内の別の実施形態において、Gは、CH、CHCH、C(O)、およびCHC(O)からなる群から選択される。
【0058】
本発明の範囲内に入る化合物の第二下位分類は、式I(式中、Rは、場合により置換されたピリジルオキシであり;Rは、各々が場合により置換されたモルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、1−オキソチオモルホリン−4−イル、および1,1−ジオキソチオモルホリン−4−イルからなる群から選択された基である)の化合物を包含する。
【0059】
本発明の範囲内に入る化合物の第三下位分類は、式I(式中、Rは、場合により置換されたピリジルオキシであり;Gは、CHおよびC(O)からなる群から選択される)の化合物を包含する。この第三下位分類の範囲内において、別の実施形態は、RおよびRが水素であるような化合物を包含する。
【0060】
別の実施形態において、本発明は、次の式の1つを有する、式Iによる化合物を目的とする:
【0061】
【化13】

(式中、R、R、R、G、およびRは、上に規定されているとおりである)。
【0062】
本発明のほかの実施形態は、式I(式中、Rは、3,5−ジクロロピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル基を形成する)の化合物を包含する。
【0063】
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル基を形成し:
は、ピリジン−4−イルメチル基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チアゾール−5−イル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−3−イル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、2−オキソピペラジン−4−カルボニル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1−オキシド−4−カルボニル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−3−イル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、2−オキソピペラジン−4−カルボニル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル基を形成し;
は、ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−4−カルボニル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、2−オキソピペラジン−4−カルボニル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル基を形成し;
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ基であり、GおよびRはともに、1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル基を形成し;そして
は、2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシであり、基GおよびRはともに、チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル基を形成し;式中、先行の下位基のいずれかは、場合により置換されていてもよい。
【0064】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたアッセイにしたがって決定された場合、2μMの濃度で、少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%のタンパク質キナーゼに対する阻害効果を有する、式Iの化合物を目的とする。本発明はまた、上に記載された化合物の下位分類のいずれか1つの化合物であって、本明細書に記載されたアッセイにしたがって決定された場合、2μMの濃度で、少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%のタンパク質キナーゼに対する阻害効果を有する化合物を目的とする。一実施形態において、本発明はまた、上に記載された化合物の下位分類のいずれか1つの化合物であって、2μMの濃度で、少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%のタンパク質キナーゼに対する阻害効果を有し、前記キナーゼが、セリン−トレオニンキナーゼである化合物も目的とする。代替実施形態において、本発明はまた、上に記載された化合物の下位分類のいずれか1つの化合物であって、2μMの濃度で、少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%のタンパク質キナーゼに対する阻害効果を有し、前記キナーゼが、チロシンキナーゼである化合物も目的とする。もう一実施形態において、本発明はまた、上に記載された化合物の下位分類のいずれか1つの化合物であって、2μMの濃度で、少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%のタンパク質キナーゼに対する阻害効果を有し、前記キナーゼが、マイトジェン活性化されたタンパク質キナーゼである化合物も目的とする。
【0065】
非限定例として、本発明の一実施形態は、式I(式中、Rは、4−ピリジルオキシであり;Qは場合により置換されたチエニルである)の化合物であって、2μMの濃度で、少なくとも80%だけタンパク質キナーゼを阻害し、前記タンパク質キナーゼが、DDR2、EphA1、EphA2、EphA3、EphA5、EphA7、EphA8、c−RAF、Flt1、Flt3、Hck、JNK2α2、JNK3α3、JNK3、KDR、Lck、Lyn、MINK、MKK6、Mnk2、MuSK、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p70S6K、Pyk2、Ret、ROCKI、TAK1、Tie2、TrkA、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、FGFR2、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択される化合物を目的とする。別の実施形態において、このタンパク質キナーゼは、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択される。
【0066】
別の実施形態において、本発明は、式I(式中、Rは、場合によりC1−4アルキル、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、C1−4ハロアルキル、およびC1−4アルコキシのうちの1個〜3個で置換されたピリジルオキシである)の化合物であって、2μMの濃度で少なくとも75%だけタンパク質キナーゼを阻害し、前記タンパク質キナーゼが、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、およびTrkBからなる群から選択される化合物を目的とする。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、式I(式中、Rは、場合によりC1−4アルキル、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、C1−4ハロアルキル、およびC1−4アルコキシのうちの1個〜3個で置換されたピリジルオキシである)の化合物であって、2μMの濃度で少なくとも75%だけタンパク質キナーゼを阻害する化合物を目的とする。
【0068】
本明細書において開示された方法および組成物において有用な適切な化合物の例は、次のものを包含する:
1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−[1,2,5]チアジアゼパン−5−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;
1−[5−tert−ブチル−3−(3−オキソ−ピペラジン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;
1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;
1−[5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−[1,4]ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルメトキシ)フェニル)ウレア;
1−(2−tert−ブチル−4−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チアゾール−5−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1−オキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルメチル)フェニル)ウレア;
1−(2−tert−ブチル−4−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チアゾール−5−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;および
薬学的に受容可能なその塩。
【0069】
本発明はまた、式Iによる化合物の塩も包含する。塩という用語は、式Iによる化合物の酸および/または塩基付加塩のことを言う。酸付加塩は、式Iによる化合物へ適切な酸を付加することによって形成することができる。塩基付加塩は、式Iによる化合物へ適切な塩基を付加することによって形成することができる。前記酸または塩基は、式Iによる前記化合物を、実質的に劣化も分解も破壊もしない。適切な塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、蓚酸塩、および琥珀酸塩を包含する。ほかの適切な塩は、ナトリウム、カリウム、炭酸塩、およびトロメタミン塩を包含する。
【0070】
同様に、本発明は、立体異性体ならびに光学異性体、例えば鏡像異性体の混合物、ならびに個々の鏡像異性体およびジアステレオマーを包含すると考えられ、このことは、この系列の選択された化合物における構造対称性の結果として生じると理解すべきである。
【0071】
式Iの化合物はまた、溶媒和(水和を包含する)されていてもよい。水和は、これらの化合物、またはこれらの化合物を含んでいる組成物の製造の間に発生しうるか、または水和は、これらの化合物の吸湿性によって経時的に発生しうる。
【0072】
式Iの範囲内のあるいくつかの化合物は、「プロドラッグ」と呼ばれる誘導体であってもよい。「プロドラッグ」という表現は、公知の直接作用性薬品の誘導体を示す。これの誘導体は、この薬品と比較した場合、向上した送達特徴、および治療値を有し、酵素的または化学的プロセスによって活性薬品に転換される。プロドラッグは本発明の化合物の誘導体であり、これらは、代謝的に劈開可能な(cleavable)基を有し、ソルボリシスによって、または生理条件下に、生体内で薬学的に活性な本発明の化合物になる。例えばこの発明の化合物のエステル誘導体は、生体内で活性なことが多いが、試験管内では活性でない。この発明の化合物のほかの誘導体は、これらの酸および酸誘導体形態の両方において活性を有するが、この酸誘導体形態は多くの場合、溶解性、組織適合性、または哺乳類有機体における遅延放出という利点を提供する(Bundgard,H.,Design of Prodrugs,pp.7−9、21−24,Elsevier,Amsterdam 1985参照)。プロドラッグは、当業者に周知の酸誘導体、例えば親酸と適切なアルコールとの反応によって調製されたエステル、または親酸化合物とアミンとの反応によって調製されたアミドを包含する。この発明の化合物上で懸垂する酸性基に由来する単純脂肪族または芳香族エステルは、好ましいプロドラッグである。いくつかの場合、二重エステル型プロドラッグ、例えば(アシルオキシ)アルキルエステルまたは((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルを調製することが望ましい。
【0073】
あらゆる変数が、あらゆる成分または式Iにおいて1回以上存在する時、各存在におけるその定義は、ほかに指摘されていなければ、1回おきの存在においてその定義から独立している。同様に、置換基および/または変数の組み合わせは、このような組み合わせの結果として、安定化合物を生じさえすれば受容可能である。
【0074】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルキル」という用語は、鎖長がほかに制限されていなければ、10炭素までの直鎖および分岐鎖の両方、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、ペンチル、1−メチルブチル、イソブチル、ペンチル、t−アミル(CHCH(CHC−)、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、またはデシルのことを言う。
【0075】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルケニル」という用語は、鎖長がほかに制限されていなければ、2〜10炭素原子の直鎖または分岐鎖のことを言い、これは、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、ペンテニル、1−ヘキセニル、および2−ヘキセニルを包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0076】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルキニル」という用語は、鎖長がほかに制限されていなければ、2〜10炭素原子の直鎖および分岐鎖のことを言い、この場合、この鎖中の炭素原子の2つの間に少なくとも1つの三重結合があり、これは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−メチル−2−ブチニル、1−メチル−3−ブチニル、2−メチル−3−ペンチニル、ヘキシニル、およびヘプチニルを包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0077】
本発明において置換基としてアルケニルまたはアルキニル部分がある例では、不飽和連結、すなわちビニレニルまたはセチレニル連結は好ましくは、窒素、酸素、または硫黄部分に直接付着されていない。
【0078】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「シクロアルキル」という用語は、3〜14、好ましくは3〜10炭素原子を含有するシクロアルキル基のことを言う。典型例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびビシクロ[2.2.2]オクチルである。
【0079】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「シクロアルケニル」という用語は、3〜14、好ましくは3〜10炭素原子、および1個〜3個の炭素−炭素二重結合を含有するシクロアルケニル基のことを言う。典型例は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、およびシクロヘクスジエニルを包含する。
【0080】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルキレン」という用語は、ほかの指摘がなければ、1〜15炭素原子、好ましくは1〜10炭素原子、より好ましくは1〜6炭素原子を有する、非分岐飽和炭化水素鎖のジラジカルのことを言う。この用語は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−CHCHCH−)、ブチレンなどの基によって例示される。
【0081】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルケニレン」という用語は、ほかの指摘がなければ、2〜15炭素原子、好ましくは1〜10炭素原子、より好ましくは2〜6炭素原子を有し、かつビニル不飽和の少なくとも1、好ましくは1〜6部位を有する、非分岐不飽和炭化水素鎖のジラジカルのことを言う。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン(−CHCH=CH−、−CH=CHCH−)などの基によって例示される。
【0082】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルコキシ」という用語は、酸素原子へ連結された上記アルキル基のいずれかのことを言う。典型例は、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、第二−ブチルオキシ、およびt−ブチルオキシである。
【0083】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルケニルオキシ」という用語は、酸素原子へ連結された上記アルケニル基のいずれかのことを言う。典型例は、エテニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、ペンテニルオキシ、およびヘキセニルオキシを包含する。
【0084】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アリール」という用語は、環部分に6〜14炭素、好ましくは環部分に6〜10炭素を含有する単環式または二環式芳香族基のことを言う。典型例は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、またはフルオレニルを包含する。
【0085】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用されているような「アラルキル」または「アリールアルキル」という用語は、アリール置換基を有する、上に規定されているようなC1−6アルキル基、例えばベンジル、フェニルエチル、または2−ナフチルメチルのことを言う。
【0086】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「ヘテロアリール」という用語は、5〜14環原子を有し;6、10、または14π電子が環状アレーにおいて共有され;かつ炭素原子および1個、2個、3個、または4個の酸素、窒素、または硫黄原子を含有する基のことを言う。ヘテロアリール基の例は、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアントレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾキサゾリル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シノリニル、プテリジニル、4αH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル、フェノキサジニル、およびテトラゾリル基である。さらなるヘテロアリールは、A.R.KatritzkyおよびC.W.Rees,eds.,Comprehensive Heterocyclic Chemistry:The Structure,Reactions,Synthesis and Use of Heterocyclic Compounds,Vol.1−8,Pergamon Press,NY(1984)に記載されている。
【0087】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「アルキレンジオキシ」という用語は、1アルキレン基および2酸素原子を含有する環のことを言い、特にC1−4アルキレンジオキシである。アルキレンジオキシ基は場合により、ハロゲン(特にフッ素)で置換されていてもよい。典型例は、メチレンジオキシ(−OCHO−)またはジフルオロメチレンジオキシ(−OCFO−)を包含する。
【0088】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素のことを言う。
【0089】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「モノアルキルアミン」または「モノアルキルアミノ」という用語は、基NH(ここで、1つの水素は、上に規定されているようにアルキル基によって置換されている)のことを言う。
【0090】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「ジアルキルアミン」または「ジアルキルアミノ」という用語は、基NH(ここで、両方の水素は、上に規定されているようにアルキル基によって置換されている)のことを言う。
【0091】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「ヒドロキシアルキル」という用語は、これらの1またはそれ以上の水素が、1またはそれ以上のヒドロキシル部分によって置換されている上記アルキル基のいずれかのことを言う。
【0092】
本明細書において用いられているような「アシルアミノ」という用語は、式−NRC(O)R(ここで、RおよびRは独立して水素であるか、または上に規定されているようなアルキル基である)の部分のことを言う。
【0093】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「ハロアルキル」という用語は、これらの1またはそれ以上の水素が、1またはそれ以上のハロ部分によって置換されている上記アルキル基のいずれかのことを言う。典型例は、フルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロエチル、およびトリフルオロエチルを包含する。
【0094】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「ハロアルケニル」という用語は、これらの1またはそれ以上の水素が、1またはそれ以上のハロ部分によって置換されている上記アルケニル基のいずれかのことを言う。典型例は、フルオロエテニル、ジフルオロエテニル、およびトリクロロエテニルを包含する。
【0095】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「ハロアルキニル」という用語は、これらの1またはそれ以上の水素が、1またはそれ以上のハロ部分によって置換されている上記アルキニル基のいずれかのことを言う。典型例は、フルオロエチニル、トリフルオロエチニル、およびトリクロロエチニルを包含する。
【0096】
本明細書において、単独でまたは別の基の一部として用いられているような「カルボキシアルキル」という用語は、これらの1またはそれ以上の水素が、1またはそれ以上のカルボン酸部分によって置換されている上記アルキル基のいずれかのことを言う。
【0097】
「ヘテロ原子」という用語は、本明細書において、酸素原子(「O」)、硫黄原子(「S」)、または窒素原子(「N」)を意味するために用いられている。ヘテロ原子が窒素である時、これは、NR部分(ここで、RおよびRは互いから独立して、水素またはアルキル基であるか、またはこれらが結合している窒素とともに、飽和または不飽和の5員環、6員環、または7員環を形成する)を形成しうると認められるであろう。
【0098】
「オキシ」という用語は、酸素(O)原子を意味する。
【0099】
「チオ」という用語は、硫黄(S)原子を意味する。
【0100】
一般に、かつほかに規定されていなければ、本明細書において用いられている「場合により置換された」という語句は、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオール、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C3−6シクロヘテラルキル、C3−6シクロヘテロアルケニル、C6−10アリール、5〜10員ヘテロアリール、C1−6アルコキシ、C3−6アルケニルオキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキレンジオキシ、C1−6アルコキシ(C1−6)アルキル、C6−10アリール(C1−6)アルキル、C6−10アリール(C2−6)アルケニル、C6−10アリール(C1−6)アルコキシ、C1−6アミノアルキル、C1−6アミノアルコキシ、C1−6ヒドロキシアルキル、C2−6ヒドロキシアルコキシ、モノ(C1−4)アルキルアミノ、ジ(C1−4)アルキルアミノ、C2−6アルキルカルボニルアミノ、C2−6アルコキシカルボニルアミノ、C2−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、(C1−6)アルコキシ(C2−6)アルコキシ、モノ(C1−4)アルキルアミノ(C2−6)アルコキシ、ジ(C1−4)アルキルアミノ(C2−6)アルコキシC2−10モノ(カルボキシアルキル)アミノ、ビス(C2−10カルボキシアルキル)アミノ、アミノカルボニル、C6−14アリール(C1−6)アルコキシカルボニル、C2−6アルキニルカルボニル、C1−6アルキルスルホニル、C2−6アルキニルスルホニル、C6−10アリールスルホニル、C6−10アリール(C1−6)アルキルスルホニル、C1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルスルホンアミド、C6−10アリールスルホンアミド、C6−10アリール(C1−6)アルキルスルホンアミド、アミジノ、グアニジノ、C1−6アルキルイミノアミノ、ホルミルイミノアミノ、C2−6カルボキシアルコキシ、C2−6カルボキシアルキル、およびカルボキシ(C1−6)アルキルアミノからなる群から独立して選択された1またはそれ以上の置換基で場合により置換されている1または複数の基のことを言う。
【0101】
「場合により置換された」という語句が、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基に関連して用いられる時、本明細における「場合により置換された」という語句は、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオール、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C3−6シクロヘテラルキル、C3−6シクロヘテロアルケニル、C6−10アリール、5〜10員ヘテロアリール、C1−6アルコキシ、C3−6アルケニルオキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキレンジオキシ、C1−6アルコキシ(C1−6)アルキル、C6−10アリール(C1−6)アルキル、C6−10アリール(C2−6)アルケニル、C6−10アリール(C1−6)アルコキシ、C1−6アミノアルキル、C1−6アミノアルコキシ、C1−6ヒドロキシアルキル、C2−6ヒドロキシアルコキシ、モノ(C1−4)アルキルアミノ、ジ(C1−4)アルキルアミノ、C2−6アルキルカルボニルアミノ、C2−6アルコキシカルボニルアミノ、C2−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、(C1−6)アルコキシ(C2−6)アルコキシ、モノ(C1−4)アルキルアミノ(C2−6)アルコキシ、ジ(C1−4)アルキルアミノ(C2−6)アルコキシC2−10モノ(カルボキシアルキル)アミノ、ビス(C2−10カルボキシアルキル)アミノ、C6−14アリール(C1−6)アルコキシカルボニル、C2−6アルキニルカルボニル、C1−6アルキルスルホニル、C2−6アルキニルスルホニル、C6−10アリールスルホニル、C6−10アリール(C1−6)アルキルスルホニル、C1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルスルホンアミド、C6−10アリールスルホンアミド、C6−10アリール(C1−6)アルキルスルホンアミド、アミジノ、グアニジノ、C1−6アルキルイミノアミノ、ホルミルイミノアミノ、C2−6カルボキシアルコキシ、C2−6カルボキシアルキル、およびカルボキシ(C1−6)アルキルアミノからなる群から独立して選択された1またはそれ以上の置換基で場合により選択されている1またはそれ以上の前記基のことを言う。
【0102】
詳細な定義は、上で用いられたすべての用語について示されていないが、各用語は、当業者によって理解される。
【0103】
(組成物)
本発明による組成物は、上に規定されているような式Iの化合物、および1またはそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含んでいる製薬組成物を含んでいる。本発明の好ましい組成物は、上に列挙された1またはそれ以上の実施形態から選択された1つの化合物、および1またはそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含んでいる製薬組成物である。式Iの1またはそれ以上の化合物を含んでいる製薬組成物は、先行技術において周知であるように、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,USAのような公知の編集物を参照して配合することができる。
【0104】
本発明の一実施形態において、この組成物は、上に列挙された個々の実施形態の1またはそれ以上から選択された化合物を含んでいる。別の実施形態において、この組成物は、上に挙げられた特定の化合物または下位群のいずれかからなる群から選択された化合物;および薬学的に受容可能なこれの塩を含んでいる。
【0105】
一実施形態において、本発明の組成物は、約0.001mg〜約1,000mgの式Iの化合物を含んでいる。別の実施形態において、本発明の組成物は、約0.01mg〜約10mgの式Iの化合物を含んでいる。別の実施形態において、本発明の組成物は、約0.1mg〜約500mgの式Iの化合物を含んでいる。別の実施形態において、この組成物は、式Iの化合物の量を、炎症性状態、炎症性疾患、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、または結腸癌、非小細胞肺癌、および前立腺癌を包含する癌を処置または予防するのに十分な量において含んでいる。各組成物における化合物の量は、この製薬組成物の特定の目的に応じて様々であってもよい。一般的にではあるが、常にというわけではなく、疾患または状態を予防するために用いられる組成物は、疾患または状態を処置するために用いられる組成物よりも少量の化合物を有する。
【0106】
本発明の製薬組成物は、本発明の化合物の有利な効果を経験しうるあらゆる動物へ投与することができる。このような動物のうち第一のものはヒトである。ただし本発明はそのように限定されるものではない。ほかの適切な動物は、イヌ科動物、ネコ科動物、イヌ、ネコ、家畜、ウマ、蓄牛、ヒツジなどを包含する。
【0107】
本発明の製薬組成物は、これらの意図された目的を達成するあらゆる手段によって投与することができる。例えば投与は、皮下、静脈内、筋肉内、腹膜内、口腔内、または目経路、直腸的、非経口的、組織内、膣内、局所的(粉末、軟膏、滴、または経皮パッチによってなど)、または経口または鼻腔スプレーとしてであってもよい。投与される投薬量は、受容者の年齢、健康、および体重、もしあるとすれば、同時処置の種類、処置頻度、および所望の効果の種類によるであろう。
【0108】
薬理学的に活性な化合物に加えて、新しい製薬調製物は、薬学的に用いることができる調製物へのこれらの活性化合物の加工処理を容易にする賦形剤および助剤を含んでいる、薬学的に受容可能な適切なキャリヤを含有してもよい。
【0109】
本発明の製薬調製物は、それ自体公知の方法で、例えば従来の混合、顆粒化、糖衣錠製造、溶解、または凍結乾燥方法によって製造される。このようにして、経口使用のための製薬調製物は、活性化合物と固体賦形剤とを組み合わせ、結果として生じた混合物を場合により磨砕し、顆粒混合物を加工処理することによって得ることができ、所望であるかまたは必要ならば、適切な助剤を添加した後、タブレットまたは糖衣錠コアを得ることができる。
【0110】
製薬賦形剤は、当業界において周知である。適切な賦形剤は、充填剤、例えば糖類、例えばラクトースもしくはスクロース、マンニトールもしくはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウムもしくはリン酸水素カルシウム、ならびに例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドンを用いたバインダー、例えばデンプンペーストを包含する。所望であれば、崩壊剤を添加することができる。例えば上記デンプン、およびまたカルボキシメチル−デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、またはこれの塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。助剤は、とりわけ流量調節剤および潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸またはこれらの塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアには、所望であれば胃液に抵抗性がある適切なコーティングが備えられている。この目的のために、濃縮糖類溶液を用いることができる。これらは場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。胃液に抵抗性があるコーティングを生成するために、適切なセルロース調製物、例えばアセチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチル−セルロースフタレートの溶液が用いられる。染料または顔料が、例えば識別のため、または活性化合物用量の組み合わせを特徴付けるために、タブレットまたは糖衣錠コーティングへ添加されてもよい。
【0111】
経口的に用いることができるほかの製薬調製物は、ゼラチン製の押しばめ(push−fit)カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールもしくはソルビトールからできている、密閉されたソフトカプセルを包含する。押しばめカプセルは、充填剤例えばラクトース、バインダー例えばデンプン、および/または潤滑剤例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム、および場合により安定剤と混合されてもよい顆粒の形態にある活性化合物を含有しうる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は好ましくは、適切な液体、例えば脂肪油もしくは液体パラフィン中に溶解または縣濁される。これに加えて、安定剤が添加されてもよい。
【0112】
非経口投与に適した配合物は、水溶性形態、例えば水溶性塩、アルカリ溶液、およびシクロデキストリン包含錯体中の活性化合物の水溶液を含んでいる。特に好ましいアルカリ塩は、例えばトリス、コリン水酸化物、ビス−トリスプロパン、N−メチルグルカミン、またはアルギニンを用いて調製されたアンモニウム塩である。
【0113】
この発明の化合物はまた、生理的に受容可能な希釈剤、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース、およびほかの薬学的に受容可能な糖溶液を包含する滅菌液もしくはこれらの混合物、アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコール、グリコール、例えばプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール、グリセロールケタール、例えば2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、エーテル、例えばポリ(エチレングリコール)400、薬学的に受容可能な油、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくはグリセリド、または薬学的に受容可能な界面活性剤、例えば石鹸または洗剤をともうか、またはともなわないアセチル化脂肪酸グリセリド、縣濁剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース、乳化剤、または製薬アジュバント中の注射可能な投薬形態として非経口的に投与されてもよい。すべての場合、この形態は、無菌であるべきであり、容易な注射針通過性(syringability)が存在する程度まで流体であるべきである。これは製造および保存条件下に安定であるべきであり、微生物、例えば細菌および菌類の汚染作用に対して保存されるべきである。
【0114】
本発明の配合物中で有用な薬学的に受容可能な油は、石油、動物性、植物性、または合成起源のものを包含し、これは、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、オリーブ油、ひまわり油、ペトロラタム、および鉱油を包含する。用いることができる脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸を包含するが、一方で、本発明において有用な脂肪酸エステルは、エチルオレエートおよびイソプロピルミリステートを包含しうる。適切な石鹸は、脂肪酸アルカリ金属、アンモニウム、およびトリエタノールアミン塩を包含する。受容可能な洗剤は、カチオン性洗剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド、アルキルピリジニウムハライド、およびアルキルアミンアセテート、およびアニオン性洗剤、例えばアルキル、アリール、およびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル、およびモノグリセリドスルフェート、およびスルホスクシネートを包含する。有用な非イオン性洗剤は、脂肪アミン酸化物、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマーを包含しうる。両性洗剤は、アルキル−β−アミノプロピオネート、および2−アルキルイミダゾリン第四塩、およびこれらの混合物を包含しうる。
【0115】
この発明の非経口組成物は、一実施形態において、溶液状の本明細書に記載された活性化合物約0.5〜約25重量%を含有する。滅菌注射可能溶液もしくは縣濁液の形態の非経口組成物はまた好ましくは、等張性媒質中の約0.05%〜約5%縣濁剤も含有するであろう。緩衝剤および防腐剤が添加されてもよい。適切な界面活性剤もまた、添加されてもよい。これらの界面活性剤は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および酸化プロピレンとプロピレングリコールとの縮合によって形成された、疎水性塩基での酸化エチレンの高分子量付加物を含んでいてもよい。
【0116】
これに加えて、適切な油性注射縣濁液としてのこれらの活性化合物の縣濁液が投与されてもよい。適切な脂溶性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエートもしくはトリグリセリドもしくはポリエチレングリコール−400を含んでいる。水性注射縣濁液は、この縣濁液の粘度を増す物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、および/またはデキストランを含有しうる。場合により、この縣濁液はまた、安定剤を含有してもよい。
【0117】
経口投与用の液体投薬量は、薬学的に受容可能なエマルジョン、溶液、縣濁液、シロップ、およびエリキシルを包含する。これらの活性化合物に加えて、この液体投薬形態は、当業界において通常用いられている不活性希釈剤、例えば水もしくはほかの溶媒、可溶化剤、および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽(germ)油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含有してもよい。
【0118】
これらの活性化合物に加えて、縣濁液は、縣濁剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、およびこれらの混合物を含有してもよい。
【0119】
局所投与は、肺および目の表面を包含する皮膚または粘膜への投与を含む。吸入用組成物を包含する局所投与用組成物は、加圧されていてもよく、非加圧であってもよい乾燥粉末として調製されてもよい。非加圧粉末組成物において、細かく分割された形態の活性成分は、例えば直径100マイクロメートルまでのサイズを有する、より大きいサイズの薬学的に受容可能な不活性キャリヤと混合して用いられてもよい。適切な不活性キャリヤは、糖例えばラクトースを包含する。望ましくは活性成分のこれらの粒子の少なくとも95重量%は、0.01〜10マイクロメートルの範囲内の有効粒子サイズを有する。
【0120】
あるいはまた、この組成物は加圧されてもよく、圧縮ガス、例えば窒素または液化ガス推進薬を含有していてもよい。この液化推進薬媒質、および実際には総組成物は好ましくは、これらの活性成分が実質的な程度までまったくその中に溶解しないようなものである。この加圧組成物はまた、界面活性剤を含有していてもよい。この界面活性剤は、液体または固体非イオン性界面活性剤であってもよく、または固体アニオン性界面活性剤であってもよい。ナトリウム塩の形態にある固体アニオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0121】
局所投与のさらなる形態は、目に対してである。本発明のこれらの化合物および組成物は、薬学的に受容可能な眼科ビヒクル中に送達される。したがってこれらの化合物は、これらの化合物を、目の角膜および内部区域、例えば前眼房、後眼房、ガラス体、房水、ガラス体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜、および強膜へ浸透させうるのに十分な時間、目の表面との接触に維持される。この薬学的に受容可能な眼科ビヒクルは、例えば軟膏、植物油、またはカプセル化材料であってもよい。
【0122】
直腸または膣投与用組成物は好ましくは、本発明の化合物と、適切な非刺激性賦形剤もしくはキャリヤ、例えば室温で固体であるが体温で液体であり、したがって直腸または膣腔において融解し、薬品を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコール、または座薬ワックスとを混合することによって調製することができる座薬である。
【0123】
本発明の組成物はまた、リポソームの形態でも投与することができる。当業界において公知であるように、リポソームは一般に、リン脂質またはほかの液体物質に由来する。リポソームは、水性媒質中に分散される一または多ラメラ水和液晶によって形成される。リポソームを形成しうるあらゆる非毒性の生理的に受容可能な代謝可能な脂質を用いることができる。リポソーム形態における本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、防腐剤、賦形剤などを含有しうる。好ましい脂質は、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当業界において公知である(例えばPrescott,Ed.,Meth.Cell Biol.14:33(1976)参照)。
【0124】
別の実施形態において、本発明は、式Iの化合物およびキャリヤを含んでいる組成物であって、前記キャリヤがアッセイに適した組成物を目的とする。このようなキャリヤは、固体キャリヤおよび液体キャリヤを包含しうる。アッセイに適した組成物は、無菌であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。アッセイに適したキャリヤの例は、ジメチルスルホキシド、エタノール、ジクロロメタン、メタノールなどを包含する。別の実施形態において、組成物は、式Iの化合物およびキャリヤを含み、この場合この化合物は、p38を阻害するのに適した量にある。
【0125】
本発明の別の態様は、式Iによる化合物およびタンパク質キナーゼ、例えばc−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcの1またはそれ以上を含んでいる組成物を目的とする。
【0126】
(これらの化合物および組成物の使用)
本発明の追加の態様は、タンパク質キナーゼにおけるコンホメーション変化の誘発方法であって、このコンホメーション変化が、前記タンパク質キナーゼ上のアロステリック部位を暴露する方法を目的とする。本明細書において開示された発明以前には、このアロステリック部位が暴露および/または安定化されたままであり、同定することができ、さらには例えば本明細書に記載された方法において用いることができるように、小さい分子を有するタンパク質キナーゼにおけるコンホメーション変化を誘発および安定化させることは可能でなかった。タンパク質キナーゼにおけるこのコンホメーション変化は、上に記載された式Iによる化合物によって誘発することができる。このコンホメーション変化は、本明細書において「開形態」と呼ばれているタンパク質の形態につながる。別の実施形態において、式Iの化合物は、DDR2、EphA1、EphA2、EphA3、EphA5、EphA7、EphA8、c−RAF、Flt1、Flt3、Hck、JNK2α2、JNK3α3、JNK3、KDR、Lck、Lyn、MINK、MKK6、Mnk2、MuSK、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p70S6K、Pyk2、Ret、ROCKI、TAK1、Tie2、TrkA、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、FGFR2、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択された1またはそれ以上のキナーゼの開形態を安定化することができる。別の実施形態において、このキナーゼは、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択される。
【0127】
タンパク質キナーゼの開コンホメーションは、式Iの化合物によって安定化することができる。あるいくつかの実施形態において、式Iの化合物は、タンパク質キナーゼの結晶化を可能にするのに十分なほど、タンパク質キナーゼの開コンホメーションを安定化することができる。ほかの実施形態において、式Iの化合物は、公知方法、例えばNMR方法、またはX線回折方法を用いて、タンパク質キナーゼの構造の解明を可能にするのに十分なほどタンパク質キナーゼの開コンホメーションを安定化することができる。
【0128】
一実施形態において、コンホメーション変化は、タンパク質キナーゼと、p38タンパク質キナーゼ中にコンホメーション変化を誘発させうる化合物とを接触させることによって、タンパク質キナーゼ中に誘発される。適切な化合物は、式Iによる化合物を含んでいる。誘導因子化合物は、この化合物にタンパク質キナーゼのコンホメーション変化を実施させうるための時間、タンパク質キナーゼとともに適切な媒質中でインキュベーションすることができる。あるいくつかの実施形態において、p38タンパク質キナーゼおよび化学的誘導因子は、約1、5、10、20、30、60、または100分間インキュベーションされる。
【0129】
モジュレータは、タンパク質キナーゼ例えばp38と、適切な媒質中で接触しうる。
【0130】
一実施形態において、本発明の化合物は、次の媒質中でタンパク質キナーゼのコンホメーション変化を誘発するために用いられる:50μLの24mM トリス−HCl緩衝液、pH7.5であって、13mM MgCl、12%グリセロール、2%DMSO、2mM DTT、2.5Ciのγ−[33P]ATP(1000Ci/ミリモル;1Ci=37GBq)(AmershamBiosciense)、10M ATP(AmershamBiosciense)、および2M GST−ATF2を含有する媒質。
【0131】
あるいくつかの実施形態において、コンホメーション変化を誘発し、安定化する化合物は、次のように記載されている領域においてタンパク質キナーゼへ結合する。
【0132】
タンパク質キナーゼ上のアロステリック部位は、一実施形態において、Asp−Phe−Gly(DFG)モチーフ(motive)の近くのポケットである。これの大きいコンホメーション変化が、阻害剤の結合のために一般に必要とされる。この領域は、Pargellisら、“Inhibition of p38 MAP Kinase by utilizing a novel allosteric binding site”,Nature Structural Biology 9(4):268−272(2002)において、p38について記載されている。これは、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。一実施形態において、アロステリック部位は、その閉コンホメーションにおいてセリン−トレオニン(Ser−Thr)キナーゼにおいてDFGモチーフによって占められている疎水性ポケットである。この疎水性ポケットは、式Iの化合物によって占められていてもよく、その結果、開コンホメーションを有するタンパク質キナーゼを生じる。一実施形態において、DFGモチーフは、閉コンホメーションにおけるその位置と比べて、約1〜約20Åだけシフトされる。別の実施形態において、DFGモチーフは、約5〜約15Å、または約9〜約10Åシフトされる。一実施形態において、このアロステリック部位は、DDR2、EphA1、EphA2、EphA3、EphA5、EphA7、EphA8、c−RAF、Flt1、Flt3、Hck、JNK2α2、JNK3α3、JNK3、KDR、Lck、Lyn、MINK、MKK6、Mnk2、MuSK、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p70S6K、Pyk2、Ret、ROCKI、TAK1、Tie2、TrkA、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、FGFR2、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択されたタンパク質上の、DFGモチーフ、または類似モチーフ、または相同モチーフの近くのアロステリック部位である。別の実施形態において、このアロステリック部位は、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択されたタンパク質上の、DFGモチーフ、または類似モチーフ、または相同モチーフの近くのアロステリック部位である。
【0133】
(開形態における結晶化されたキナーゼ)
別の態様において、本発明は、開形態において結晶化されたタンパク質キナーゼを目的とする。開形態における結晶化されたタンパク質キナーゼは、例えば前記タンパク質キナーゼへ結合する化合物を設計または同定するために用いることができる。タンパク質キナーゼの開形態は、あるいくつかの実施形態において、タンパク質の開形態を安定化する化合物と錯体化される。このような化合物の一例は、式Iによる化合物である。
【0134】
別の実施形態において、本発明は、式Iによる化合物とともに開形態において結晶化されたタンパク質キナーゼを目的とする。別の実施形態において、本発明は、式Iによる化合物とともに開形態において結晶化されたタンパク質キナーゼであって、DDR2、EphA1、EphA2、EphA3、EphA5、EphA7、EphA8、c−RAF、Flt1、Flt3、Hck、JNK2α2、JNK3α3、JNK3、KDR、Lck、Lyn、MINK、MKK6、Mnk2、MuSK、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p70S6K、Pyk2、Ret、ROCKI、TAK1、Tie2、TrkA、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、FGFR2、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択されたキナーゼタンパク質を目的とする。別の実施形態において、本発明は、式Iによる化合物とともに開形態において結晶化されたタンパク質キナーゼであって、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択されたキナーゼタンパク質を目的とする。
【0135】
別の実施形態において、式Iの化合物とともに開形態において結晶化されたタンパク質キナーゼは、セリン−トレオニンキナーゼである。別の実施形態において、このタンパク質キナーゼは、マイトジェン活性化されたタンパク質キナーゼである。
【0136】
別の態様において、本発明は、開形態において結晶化されたp38タンパク質キナーゼを目的とする。開形態における結晶化p38キナーゼは、例えばp38へ結合する化合物を設計または同定するために用いることができる。このタンパク質の開形態は好ましくは、このタンパク質の開形態を安定化する化合物と錯体化される。このような化合物の一例は、式Iによる化合物である。
【0137】
本発明による開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼの一例は、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p38キナーゼのヒト形態、および実施例1〜4のいずれか1つの化合物とともに共結晶化されたこれらの相同突然変異体を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0138】
開形態における結晶化タンパク質キナーゼの一例は、ヒトp38アルファMAPキナーゼである。
【0139】
一実施形態において、本発明は、開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼを提供する。開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼは、本明細書に記載されているような特徴を有する。一実施形態において、開形態における前記結晶化p38タンパク質キナーゼの空間群は、好ましくは六角形である。前記空間群の単位細胞寸法は、a、b、c、α、β、およびγによって規定され、この場合、aは、約67Å〜約68Åであり、bは、約76Å〜約77.00Åであり、cは、約76Å〜約77.00Åであり、好ましくはこれらは、それぞれ67.57、76.63、および76.58であり、αは約90度であり、βは約90度であり、γは約90度である。
【0140】
開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼはまた、Matthewの係数によって特徴付けることができる。本発明による開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼのあるいくつかの実施形態において、Matthewの係数は、1ダルトン(Da)あたり約2.2Å〜1ダルトンあたり約2.4Åである。好ましくはMatthewの係数は、1ダルトンあたり約2.3Åである。ほかの実施形態において、溶媒含量は、約44%〜約50%、好ましくは約46%〜約48%、好ましくは約47%である。
【0141】
本明細書において用いられているように、「p38タンパク質キナーゼ」という用語は、天然および組換えにより生産されたp38タンパク質キナーゼ;p38タンパク質キナーゼの天然、合成、および組換え生物活性ポリペプチド断片;ハイブリッド融合タンパク質およびダイマーを包含する、p38タンパク質キナーゼもしくはこれの断片の生物活性ポリペプチド変異体;システイン置換類似体を包含する、p38タンパク質キナーゼまたはこれの断片もしくは変異体の生物活性ポリペプチド類似体を包含する。このp38タンパク質キナーゼは、当業界において公知のあらゆる手段によって発生および/または単離されてもよい。p38タンパク質キナーゼおよびp38タンパク質キナーゼの生産方法は、すべてが参照して本明細書に完全に組み込まれているものにおいて開示されている。
【0142】
相同体は、自然の突然変異またはヒトの操作のどちらかからの、1またはそれ以上のアミノ酸置換、欠失、または付加を含みうるタンパク質である。このようにして、例として、結晶質開形態におけるp38タンパク質キナーゼは、自然の突然変異またはヒトの操作のどちらかからの、1またはそれ以上のアミノ酸置換、欠失、または付加を含みうる。示されているように、変更は、好ましくは小さい種類のもの、例えばタンパク質の折り畳みまたは活性に有意な影響を与えない保存的アミノ酸置換である(表1参照)。
【0143】
【表1】

本発明の一実施形態において、開形態において結晶化されたp38タンパク質キナーゼは、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換であるが、20以上でない保存的アミノ酸置換を含有するアミノ酸配列を有するp38タンパク質キナーゼのアミノ酸配列を含むか、あるいはまたこれからなる。ほかの実施形態において、開形態において結晶化されたp38タンパク質キナーゼは、ヒトp38タンパク質キナーゼのアミノ酸配列を含む。これは少なくとも1つであるが、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以上でない保存的アミノ酸置換を含有する。
【0144】
p38タンパク質キナーゼの対照アミノ酸配列と少なくとも例えば95%「同一」であるアミノ酸配列を有するタンパク質とは、このタンパク質配列が、p38タンパク質キナーゼの対照アミノ酸の各100アミノ酸あたり5つまでのアミノ酸改変を含みうること以外、このタンパク質のアミノ酸配列は、対照配列と同一であるものとする。換言すれば、対照アミノ酸配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を得るために、対照配列におけるアミノ酸残基の5%までが、欠失されているか、または別のアミノ酸で置換されていてもよく、または対照配列における総アミノ酸残基の5%までのいくつかのアミノ酸が、この対照配列中に挿入されてもよい。対照配列のこれらの改変は、対照アミノ酸配列のアミノまたはカルボキシ末端位置において、または個別に対照配列における残基中に、または対照配列内の1またはそれ以上の隣接基中に散在した、これらの末端位置間のどこかで発生しうる。
【0145】
実際問題として、いずれかの特定ポリペプチドまたはタンパク質が、例えばある一定のp38タンパク質キナーゼのアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかは従来、公知のコンピュータプログラム、例えばBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)を用いて決定することができる。特定配列が本発明による対照配列と例えば95%同一であるかどうかを決定するために、Bestfitまたはほかのいずれかのアラインメントプログラムを用いる時、これらのパラメーターは当然ながら、同一性のパーセンテージが、対照アミノ酸配列の全長にわたって計算され、かつ対照配列中のアミノ酸残基の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように設定される。
【0146】
一実施形態において、結晶化タンパク質キナーゼは、式Iによる化合物の少なくとも1つの分子と錯体化される。ほかの実施形態において、開形態におけるタンパク質キナーゼは、1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−[1,2,5]チアジアゼパン−5−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;1−[5−tert−ブチル−3−(3−オキソ−ピペラジン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;1−[5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−[1,4]ジアゼパン−1−カルボニル)−チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;および薬学的に受容可能なその塩からなる群から選択された化合物と錯体化される。ほかの実施形態において、開形態におけるタンパク質キナーゼは、上に挙げられた本発明の特定の化合物または下位群のいずれかから選択された化合物と錯体化される。
【0147】
(結晶化開形態キナーゼの調製方法)
本発明の別の態様は、式Iの化合物と共結晶化された、開形態における結晶化タンパク質キナーゼの調製方法を目的とする。本発明は、開形態における結晶化タンパク質キナーゼの調製方法を提供する。好ましくはこの方法は、開形態における結晶化タンパク質キナーゼであって、原子配位を含む前記タンパク質キナーゼの三次元構造の決定を可能にするのに十分なほど高い分解能(resolution)でX線を回折するタンパク質キナーゼを生産する。この三次元構造は、本明細書に記載されているように、本発明のいくつかの方法において有用である。一実施形態において、このタンパク質キナーゼは、DDR2、EphA1、EphA2、EphA3、EphA5、EphA7、EphA8、c−RAF、Flt1、Flt3、Hck、JNK2α2、JNK3α3、JNK3、KDR、Lck、Lyn、MINK、MKK6、Mnk2、MuSK、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p70S6K、Pyk2、Ret、ROCKI、TAK1、Tie2、TrkA、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、FGFR2、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択される。別の実施形態において、このタンパク質キナーゼは、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択される。
【0148】
一実施形態において、本発明は、式Iの化合物と共結晶化された、開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼの調製方法を目的とする。本発明は、式Iの化合物と共結晶化された、開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼの調製方法を提供する。好ましくはこの方法は、開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼであって、原子配位を含む前記p38タンパク質キナーゼの三次元構造の決定を可能にするのに十分なほど高い分解能でX線を回折するタンパク質キナーゼを生産する。この三次元構造は、本明細書に記載されているように、本発明のいくつかの方法において有用である。具体的には、式Iによる化合物と錯体化された組換え非グリコシル化ヒトp38αタンパク質キナーゼの結晶化方法が提供される。
【0149】
前記タンパク質キナーゼは、適切な源、例えば真核細胞または組織から得ることができる。一般に、p38タンパク質キナーゼまたはこれの一部分を含んでいるタンパク質は、可溶形態で十分な純度で単離され、結晶化のために濃縮される。ポリペプチドは場合により、(結晶化を妨げることがある)凝集の欠如についてアッセイされる。この精製されたポリペプチドは好ましくは、次の要因の少なくとも1つの種々の条件下に結晶化される:pH、緩衝剤、緩衝濃度、塩、ポリマー、ポリマー濃度、ほかの沈殿剤、およびp38タンパク質キナーゼまたはこれの一部分の濃度。例えばBlundellら、Protein Crystallography,Academic Press,London(1976);McPherson,The Preparation and Analysis of Protein Crystals,Wiley Interscience,N.Y.(1982)参照。この結晶化p38タンパク質キナーゼは場合により、キナーゼ活性についてテストされる。異なるサイズおよび形状の結晶はさらに、X線回折への適合性についてテストされうる。
【0150】
あるいくつかの実施形態において、結晶化溶液のpHは、約6〜8、好ましくは約6.5〜8である。別の実施形態において、この溶液のpHは、約7.5である。
【0151】
結晶化溶液は場合により、緩衝剤を含有しうる。緩衝剤は、当業界において周知である。緩衝剤の例は、ホスフェート、カコジレート、アセテート、イミダゾール、トリスHCl、およびナトリウムHEPESを包含する。
【0152】
あるいくつかの実施形態において、緩衝濃度は、約10ミリモル(mM)〜約200mMである。
【0153】
この塩は、当業界において周知のイオン塩である。塩の例は、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、および酢酸カルシウムを包含する。
【0154】
結晶化溶液は、ポリマーを含有しうる。本発明において有用なポリマー例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)ほかを包含するが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。このポリマーの平均分子量は、約200〜約100,000である。このポリマーの平均分子量に適したほかの値は、約200〜約10,000を包含する。
【0155】
このポリマーの濃度は、結晶化に適した溶液中のポリマーの濃度である。あるいくつかの実施形態において、このポリマーの濃度は、約1%〜50%である。ほかの実施形態において、このポリマーの濃度は、約1%、5%、10%、20%、25%、30%、または40%である。
【0156】
結晶化に適した溶液は場合により、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、硫酸リチウム、蟻酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、蟻酸マグネシウム(Mg(HCO)、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム;NHPO;および2−プロパノールからなる群から選択された1またはそれ以上の追加作用物質を含んでいる。
【0157】
あらゆる適切な結晶化方法が、開形態におけるp38タンパク質キナーゼまたはその断片を結晶化するために用いられる。適切な方法は、縣滴、蒸気拡散方法、マイクロバッチ、シッティングドロップ(sitting drop)、および透析を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0158】
あるいくつかの実施形態において、これらの結晶は、約1時間〜約24時間成長させられる。
【0159】
本発明によれば、開形態における結晶化p38タンパク質キナーゼの1つの調製実施形態は、次のようなプロセスを用いる。結晶化のために、タンパク質は、25mMトリス−HCl、pH7.5、100mM NaCl、10mM MgCl、10mM DTT、および5%グリセロールに対して透析され、YM−10膜を有するAmicon攪拌限外濾過セルを用いて16mg/mlに濃縮される。これらのサンプルアリコートは、液体窒素中にフラッシュ凍結され、−80℃で保存される。式Iによる化合物で飽和されたタンパク質は、3:2のタンパク質:溶液容量比で、貯蔵器溶液(10〜20%PEG4000、0.1Mカコジル酸、pH6、および50mM n−オクチル−β−D−グリコシド洗剤)と混合される。この混合物の縣滴またはシッティングドロップが、貯蔵器溶液の上に置かれ、結晶が蒸気拡散によって成長させられた。本発明のほかの実施形態は、これらの成分の比が、+/−10%だけ変えられる同様な手順を含む。ほかの実施形態において、タンパク質キナーゼは、p38αおよびp38βからなる群から選択される。
【0160】
本発明にしたがって成長させられた結晶は、少なくとも10Å分解能、例えば0.15〜10.0Å、またはその中のあらゆる範囲の値、例えば1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、または3.5までX線を回折し、結晶構造を決定するには、3.5Åまたはそれ以上の分解能が好ましい。しかしながら、より低い分解能を有する回折パターン、例えば25〜3.5Åも有用である。
【0161】
本発明のあるいくつかの実施形態によれば、成長の間、これらの結晶のいくつかは、場合により除去され、洗浄され、生物活性についてアッセイされる。
【0162】
ほかの実施形態において、多重同型置換のために用いられる重原子誘導体は、データ収集の間、これらの結晶を水銀試薬とともに浸漬するか、または結晶を気体キセノン(Xe)雰囲気中に置くことによって得ることができる(Schiltzら、J.Appl.Cryst.27:950−960(1994))。適切な水銀試薬は、ナトリウムp−クロロメルキュリベンジルスルホネート(PCMBS)を含んでいる。水銀試薬の濃度は、約0.1mM〜約0.5mMである。
【0163】
本発明の追加の態様は、タンパク質キナーゼ、例えばp38タンパク質キナーゼ、および式Iによる化合物を含んでいる組成物である。ほかの実施形態において、この組成物はさらに、開形態におけるキナーゼ、例えばp38タンパク質キナーゼの結晶化に適した媒質も含んでいる。この結晶化に適した媒質は、緩衝剤、pH調節剤、塩、ポリマー、沈殿剤、およびこれらの混合物を包含しうるが、これらに限定されるわけではない。
【0164】
本発明の別の実施形態は、式Iによる化合物、タンパク質キナーゼ、および結晶化に適したキャリヤを含んでいる組成物を目的とする。例えば一実施形態において、この組成物は、式Iによる化合物、タンパク質キナーゼ、および水を含んでいる。この組成物は場合によりさらに、次のもの:緩衝剤、pH調節剤、塩、ポリマー、沈殿剤、およびこれらの混合物の1またはそれ以上を含んでいてもよい。
【0165】
本発明による適切な組成物は、式Iによる化合物;p38MAPキナーゼ、c−RAF、Flt3、JNK、Lck、Lun、Tie2、およびTRKからなる群から選択されたタンパク質キナーゼ;水;および緩衝剤を含んでいる。別の実施形態において、この組成物は、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択されたタンパク質キナーゼ;式Iによる化合物;および適切な結晶化媒質を含んでいる。
【0166】
別の適切な組成物は、式Iによる化合物;p38MAPキナーゼ、c−RAF、Flt3、JNK、Lck、Lun、Tie2、およびTRKからなる群から選択されたタンパク質キナーゼ;水;トリス−HCl;および緩衝剤を含んでいる。
【0167】
別の適切な組成物は、式Iによる化合物;p38MAPキナーゼ、c−RAF、Flt3、JNK、Lck、Lun、Tie2、およびTRKからなる群から選択されたタンパク質キナーゼ;水;グリセロール;および緩衝剤を含んでいる。
【0168】
別の適切な組成物は、1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−[1,2,5]チアジアゼパン−5−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア、1−[5−tert−ブチル−3−(3−オキソ−ピペラジン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]−ウレア、1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア、および1−[5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−[1,4]ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレアからなる群から選択された化合物;タンパク質キナーゼ;水;および緩衝剤を含んでいる。別の適切な組成物は、本明細書に記載された特定の実施形態または下位群のいずれかから選択された化合物;タンパク質キナーゼ;水;および緩衝剤を含んでいる。
【0169】
(薬品の同定または設計方法)
本発明の別の態様は、タンパク質キナーゼのアロステリック部位へ結合するか、またはその中に嵌め込まれる分子を設計または同定する方法を目的とする。タンパク質キナーゼのアロステリック部位へ結合するか、またはその中に嵌め込まれる分子を設計または同定することによって、前記分子を、あるいくつかのタンパク質キナーゼ媒介疾患および状態についての効果的な処置また予防へと開発することができる。アロステリック部位へ結合するか、またはその中に嵌め込むことによって、分子は、タンパク質キナーゼの正常な機能を阻害する。タンパク質キナーゼの正常な機能を阻害することによって、この分子は、前記状態を予防または処置するのに効果的である。本発明の1つの態様は、分子の設計および同定方法であって、前記分子の設計および同定プロセスの使用を含み、前記分子がタンパク質キナーゼのアロステリック部位へ結合するか、またはその中に嵌め込まれる方法を目的とする。
【0170】
このアロステリック部位の静電ポテンシャルマップは、本発明による分子の同定または設計プロセスにおいて有用なアロステリック部位についての情報を明らかにする。例えば、このアロステリック部位のあるいくつかの部分は、より電気陰性であり、一方、ほかの区域は、より電気陽性である。この分子とアロステリック部位との間の引力相互作用を増すために、この分子の電気陰性部分が、アロステリック部位の電気陽性部分と相互作用することができるように、およびこの分子の電機陽性部分が、アロステリック部位の電気陰性部分と相互作用することができるように、化合物を同定または設計することが望まれるであろう。このアロステリック部位の静電ポテンシャルのほかの表示は、当業界において公知の方法を用いて決定することができる。
【0171】
このアロステリック部位の親油性ポテンシャルマップは、本発明による分子の同定または設計プロセスにおいて有用なアロステリック部位についての情報を明らかにする。例えばこのアロステリック部位のあるいくつかの部分は、より親油性であり、一方、ほかの区域は、より親水性である。この分子とアロステリック部位との間の引力相互作用を増すために、この分子の親油性部分が、アロステリック部位の親油性部分と相互作用することができるように、およびこの分子の親水性部分が、アロステリック部位の親水性部分と相互作用することができるように、化合物を同定または設計することが望まれるであろう。このアロステリック部位の親油性ポテンシャルのほかの表示は、当業界において公知の方法を用いて決定することができる。
【0172】
このアロステリック部位の追加の特徴は、本明細書に記載された方法による分子の同定または設計のための指針を与える。したがってあるいくつかの実施形態において、アロステリック部位と相互作用する、少なくとも1つの芳香族またはヘテロアリール部分、例えばチオフェン部分を含有する分子を同定または設計することが有利である。
【0173】
本発明の追加の態様は、アロステリック部位へ結合するか、またはその中に嵌め込まれる分子であって、このアロステリック部位の1またはそれ以上のアミノ酸との1またはそれ以上の相互作用を形成する分子を同定または設計することである。
【0174】
別の実施形態において、本発明にしたがって同定または設計された分子は、20マイクロメートル(μM)またはそれ以下の予測された親和性を有する。ほかの実施形態において、この分子は、1μMまたはそれ以下の予測された親和性を有する。ほかの好ましい実施形態において、この分子は、1μM、100nM、10nM、または1nM未満の予測された親和性を有する。
【0175】
別の実施形態において、本発明にしたがって同定または設計された分子は、約−6〜約−16kcal/モルの計算された結合自由エネルギーを有する。ほかの実施形態において、この分子は、約−10〜約−14kcal/モルの計算された結合自由エネルギーを有する。ほかの実施形態において、この分子は、約−8〜約−12kcal/モルの計算された結合自由エネルギーを有する。このような計算は、通常の技術者の技術を用いて行なわれる。例えば、Aqvistら、Accounts Chemical Research 35(6):358−365(2002)およびこれに引用された文献参照。これは、参照して本明細書に組み込まれる。
【0176】
別の実施形態において、本発明にしたがって設計または同定された化合物の予想された結合エネルギーは、約−10kcal/モル〜約−15kcal/モルである。ほかの適切な範囲は、約−10kcal/モル〜約−30kcal/モル、または約−35kcal/モルを包含する。一実施形態において、1つの分子またはその断片の予測された結合エネルギーは、米国特許第6,735,530B1号に記載されている方法にしたがって計算される。これは、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。
【0177】
別の実施形態において、本発明にしたがって同定または設計された分子は、20マイクロメートル(μM)またはそれ以下の親和性を有する。ほかの実施形態において、この分子は、1μMまたはそれ以下の親和性を有する。ほかの好ましい実施形態において、この分子は、100nM、10nM、または1nM未満の親和性を有する。このような測定は、当業者の技術の範囲内にある。適切なアッセイは、本明細書に記載されている。一実施形態において、この分子は、本明細書に記載されたアッセイのいずれか1つにおいて決定されたように上に列挙された親和性値のいずれか1つを有する。
【0178】
(これらの化合物および組成物のさらなる使用)
本発明のさらなる態様は、式Iの化合物の使用方法を目的とする。
【0179】
式Iによる化合物は、タンパク質キナーゼ媒介状態の処置または予防に有用である。一実施形態において、本発明は、タンパク質キナーゼ媒介状態を処置、予防、または改善する方法であって、式Iによる化合物の有効量を、このような処置を必要としている被験者に投与することを含む方法を目的とする。本発明の一実施形態において、この方法は、上に列挙された個々の実施形態の1またはそれ以上から選択された化合物を用いる。別の実施形態において、このタンパク質キナーゼ媒介状態は、DDR2、EphA1、EphA2、EphA3、EphA5、EphA7、EphA8、c−RAF、Flt1、Flt3、Hck、JNK2α2、JNK3α3、JNK3、KDR、Lck、Lyn、MINK、MKK6、Mnk2、MuSK、p38α、p38β、p38γ、p38δ、p70S6K、Pyk2、Ret、ROCKI、TAK1、Tie2、TrkA、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、FGFR2、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択されたキナーゼの1またはそれ以上によって媒介された状態である。別の実施形態において、このタンパク質キナーゼは、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、TrkB、Ab11、Akt1、CK2−アルファ1、c−MET、EGFR、EphB4、ERK2、FGFR1、GSK3−ベータ、IGF1R、IRAK4、Lck、LynA、MAPKAP−K2、PDGFR−ベータ、PKA、PKC−アルファ、およびSrcからなる群から選択される。別の実施形態において、このタンパク質キナーゼ媒介状態は、c−RAF、Flt3、JNK3a3、JNK3、Lck、Lyn、p38α、p38β、p38γ、p38δ、Tie2、およびTrkBからなる群から選択されたキナーゼの1またはそれ以上によって媒介された状態である。
【0180】
ほかの実施形態において、式Iによる化合物は、キナーゼ媒介状態の処置または予防のために有用である。一実施形態において、本発明は、キナーゼ媒介状態を処置、予防、または改善する方法であって、式Iによる化合物の有効量を、このような処置を必要としている被験者に投与することを含む方法を目的とする。本発明の一実施形態において、この方法は、上に列挙された個々の実施形態の1またはそれ以上から選択された化合物を用いる。
【0181】
一実施形態において、この状態または疾患は、p38αによって媒介される。
【0182】
本発明の別の実施形態は、炎症性状態の処置または予防を目的とする。一実施形態において、本発明は、炎症性状態または疾患を処置、予防、または改善する方法であって、式Iによる化合物の有効量を、このような処置を必要としている被験者に投与することを含む方法を目的とする。本発明の一実施形態において、この方法は、上に列挙された個々の実施形態の1またはそれ以上から選択された化合物を用いる。
【0183】
本明細書において開示された方法の被験者は好ましくは、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、七面鳥、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、およびモルモットを包含するがこれらに限定されるわけではない動物であり、より好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0184】
本発明において用いられている「キナーゼ媒介状態」という用語は、タンパク質キナーゼがある役割を果たすことが知られているあらゆる疾患またはほかの有害な状態を意味する。これは、インターロイキンまたはTNF、特にTNF−α過剰生産によって引起こされることが知られている状態を包含するが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。このような状態は、非限定的に、炎症性疾患、自己免疫病、慢性閉塞性肺疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、癌(例えば結腸癌、非小細胞肺癌、および前立腺癌)、感染病、神経変性病、アレルギー、脳卒中における再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成障害、器官低酸素症、血管肥厚化、心臓肥大、トロンビン誘発血小板凝集、およびプロスタグランジンエンドペルオキシダーゼシンターゼ−2に関連した状態を包含する。
【0185】
処置または予防することができる炎症性疾患は、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、アレルギー、および成人呼吸窮迫症候群を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0186】
本発明の化合物は、増殖因子依存性脈管形成にともなって生じる疾患、例えば癌、黄斑変性、および関節炎を予防または処置するために用いることができる。このような増殖因子脈管形成は、アンジオポエチン1、脈管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、および血小板由来増殖因子(PDGF)によって媒介されうる。
【0187】
処置または予防されうる自己免疫病は、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、バセドウ病、自己免疫胃炎、糖尿病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、または受容者に対する移植片の疾患を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0188】
処置または予防されうる破壊性骨障害は、骨粗鬆症、変形性関節症、および多発性骨髄腫関連骨障害を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0189】
処置または予防されうる増殖性疾患は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポジ肉腫、および多発性骨髄腫を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0190】
処置または予防されうる脈管形成障害は、充実性腫瘍、眼の新血管新生(neovasculization)、小児血管腫(haemangiomas)を包含する。
【0191】
処置または予防されうる感染病は、敗血症、敗血性ショック、および細菌性赤痢を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0192】
処置または予防されうるウイルス病は、急性肝炎感染(A型肝炎、B型肝炎、およびC型肝炎)、およびCMV網膜炎を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0193】
この発明の化合物によって処置または予防されうる神経変性病は、アルツハイマー病、パーキンソン病、および外傷によって引起こされる脳虚血または神経変性病を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0194】
本発明の化合物および組成物は、アレルギーの処置および/または予防に用いることができる。一実施形態において、この化合物または組成物は、アレルギー反応の炎症性症状を処置または予防するために用いられる。別の実施形態において、この化合物または組成物は、アレルゲンによって引起こされた呼吸器炎症性応答を処置または予防するために用いられる。
【0195】
別の実施形態において、本発明の化合物または組成物は、癌、例えば結腸癌、非小細胞肺癌、および前立腺癌を処置するために用いられる。一実施形態において、この化合物または組成物は、慢性炎症と関連した癌を処置するために用いられる。これは、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌、中皮腫、卵巣癌、および胃癌を包含するが、これらに限定されるわけではない。別の実施形態において、この化合物または組成物は、腫瘍形成を遮断することによって癌を処置するために用いられる。別の実施形態において、この化合物または組成物は、転移を阻害することによって癌を処置するために用いられる。別の実施形態において、この化合物または組成物は、アポトーシスを誘発することによって癌を処置するために用いられる。
【0196】
「p38媒介状態」はまた、脳卒中における虚血/再灌流、心臓発作、心筋虚血、器官低酸素症、血管肥厚化、心臓肥大、およびトロンビン誘発血小板凝集も包含する。
【0197】
式Iの化合物はさらに、健康な被験者が炎症性状態またはp38媒介状態を発症するのを阻害または予防するために、被験者に投与されてもよい。炎症性状態またはp38媒介状態を有していないが、それを発症するかもしれない被験者が、この状態を予防または阻害するために、式Iによる化合物が投与されてもよい。換言すれば、式Iの化合物は、炎症性またはp38媒介状態または疾患の発症を予防または阻害する予防薬として用いられてもよい。この方法によれば、式Iによる化合物は、炎症性またはp38媒介状態または疾患の有意な発現を防止するのに有効な用量で投与される。被検者の体の中またはそれの上の式Iの化合物の存在は、炎症性またはp38媒介状態または疾患の発症を予防または阻害する。
【0198】
本発明の化合物は、約0.01mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜100mg/kg体重、より好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kg体重の投薬量範囲内の有効量で投与されてもよい。本発明の化合物は、単一の一日用量で投与されてもよく、または総一日投薬量が、例えば一日2、3、または4回の分割用量で投与されてもよい。炎症性状態およびp38媒介状態の処置における当業者なら、ここに示されたテスト結果からの有効一日量を決定することができるであろう。正確な投薬量および投薬頻度は、当業者に周知であるように、用いられる式Iの特定化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重症度、および特定の患者の年齢、体重、および一般的な健康状態、ならびに個人が受けているかもしれないほかの薬物療法に応じる。これらの投薬量は、患者の必要条件、処置されている状態の重症度、および用いられている化合物に応じて様々に変えられてもよい。一般に処置は、この化合物の最適用量よりも少ない、より小さい投薬量で開始される。その後、投薬量は、これらの条件下に最適な効果に到達するまで、小さいインクリメントで増加される。便宜上、総一日投薬量は、所望であれば一日の間に、ポーションに分けて投与されてもよい。
【0199】
治療的有効量は、疾患の処置のために哺乳動物に投与される時、この疾患のためにこのような処置を実施するのに十分な化合物の量を意味すると理解される。治療的有効量は、化合物、疾患、およびその重症度、および処置される哺乳動物の年齢、体重などに応じて様々であろう。
【0200】
さらには、これらの投薬量は、特定の用途にしたがって様々に変えることができる。例えば、十分に発症した炎症性状態を有する被験者を処置する時、被験者が炎症性状態を発症するのを予防するために用いられる量と比べて、より多量の式Iの化合物が用いられてもよい。
【0201】
すべての投与の事例において、式Iの化合物は、前記化合物、および本明細書に記載されているような薬学的に受容可能な賦形剤を含んでいる製薬組成物として投与することができると理解される。あるいはまた、式Iの化合物は、適切であれば純粋物質として投与されてもよい。
【0202】
本発明の追加の態様において、式Iの化合物は、単独で、または1またはそれ以上の追加の抗炎症剤と組み合わせて用いられてもよい。本発明の化合物が、1またはそれ以上の追加の抗炎症剤とともに用いられる時、本発明の化合物は、式Iの化合物および1またはそれ以上の追加の抗炎症剤を含んでいる製薬組成物が動物に投与されるように、ほかの1または複数の抗炎症剤とともに配合されてもよい。あるいはまた式Iの化合物は、1またはそれ以上の追加の抗炎症剤を含んでいる組成物とは別個の製薬組成物として投与することもできる。
【0203】
本発明の化合物はまた、薬品発見アッセイにおいても有用である。式Iの化合物は、抗炎症剤として、またはタンパク質キナーゼ、例えばP38キナーゼの阻害剤としてのほかの化合物の有効性および/または効能を決定するために、アッセイにおいて用いられてもよい。これらのアッセイは、生体内および試験管内アッセイを包含する。本発明の化合物は、対照として用いることができるか、または新しい有用な抗炎症化合物、またはキナーゼ、例えばP38キナーゼの新しい有用な阻害剤を発見するためのリード化合物として用いることができる。さらには式Iの化合物は、タンパク質キナーゼ、例えばP38タンパク質との結晶化錯体を形成するために用いられてもよい。
【0204】
これらの化合物はまた、試験管内または生体内でのタンパク質キナーゼの阻害においても用いることができる。タンパク質キナーゼを阻害するために用いられる式Iの化合物の量は、生体内で用いられる時、試験管内と比べて必ずしも同じでなくてもよい。例えば特定化合物の薬物動力学および薬力学などの要因は、生体内でタンパク質キナーゼを阻害する時に、より多量かまたはより少量の式Iの化合物が用いられることを必要とすることがある。したがって本発明の追加の態様は、タンパク質キナーゼの阻害方法であって、タンパク質キナーゼと式Iによる化合物とを接触させる工程を含む方法である。本発明のこの態様の一実施形態において、この方法は、細胞と式Iの化合物とを接触させる工程であって、前記細胞がタンパク質キナーゼを有する工程を含む。本発明の別の実施形態において、この方法は、式Iの化合物を被験者へ、タンパク質キナーゼを阻害するのに十分な量で投与する工程であって、前記被験者がタンパク質キナーゼを有するか、または発現する工程を含む。一実施形態において、本発明の化合物は、次の媒質:50μLの24mM トリス−HCl緩衝液、pH7.5であって、13mM MgCl、12%グリセロール、2%DMSO、2mM DTT、2.5Ciのγ−[33P]ATP(1,000Ci/ミリモル;1Ci=37GBq)(AmershamBiosciense)、10M ATP(AmershamBiosciense)、および2M GST−ATF2を含有する媒質中でタンパク質キナーゼを阻害するために用いられる。
【0205】
本発明の別の実施形態において、式Iの化合物は、タンパク質キナーゼ、例えばP38を阻害または調節するため、炎症性状態または疾病の処置または予防のため、またはタンパク質キナーゼ媒介状態の処置または予防のために用いられることになる製薬組成物を調製するために用いることができる。
【0206】
別の実施形態において、本明細書に記載されている方法のいずれか1つは、上に挙げられた本発明の特定の化合物または下位群のいずれかから選択された化合物、および薬学的に受容可能なその塩を用いる。
【0207】
式Iによる化合物の生物活性は、当業界において公知の方法を用いて前記化合物をテストすることによって決定することができる。例えば、1またはそれ以上の公知アッセイによって、化合物が炎症性状態を予防、処置、または阻害する能力を評価することができる。
【0208】
一実施形態において、1またはそれ以上の公知アッセイを用いて、化合物がp38キナーゼの活性を阻害または調節する能力を評価することができる。1つの公知アッセイは、テスト化合物によるEGF受容体ペプチドのp38触媒されたリン酸化の阻害についてテストすることである。EGF受容体ペプチドは、公開された米国特許出願公報第2003/0149037号(Salituroら)に記載されており、p38−触媒されたキナーゼ反応におけるホスホリル受容体である。このテスト化合物の阻害活性は、テスト化合物の存在下、およびテスト化合物の非存在下で、EGF受容体ペプチドのリン酸化の限度を比較することによって決定することができる。
【0209】
化合物のp38阻害活性のテストのための第二アッセイは、ATPアーゼ活性の阻害についてのテストである。このアッセイは、化合物が活性化p38のATPアーゼ活性を阻害する能力を決定する。p38 ATPアーゼ活性の産物、すなわちADPは、HPLC分析によって定量化される。
【0210】
第三アッセイは、化合物がp38キナーゼ活性を阻害する能力をテストするもう1つのアッセイである。このアッセイは、下の実施例セクションに詳細に記載されているように、γ−[33P]ATPからの33PのGST−ATF−2基質、アミノ酸19−96(Upstate,NY,USA)中への組み込みを測定する。この組み込みは、p38によって触媒される。阻害化合物の存在下において、γ−[33P]ATPからの33PのGST−ATF−2基質へのp38触媒された組み込みは、より低い。
【0211】
化合物がp38を阻害する能力をテストするために用いることができる別のアッセイは、MKK6によるp38の活性化動力学を測定するアッセイである。上流キナーゼMKK6によるp38の活性化は、例えばELISAを用いて特徴決定される。テスト化合物は、p38キナーゼで予めインキュベーションされる。
【0212】
化合物がリポ多糖体(LPS)によって引起こされたTNFα分泌を阻害する能力をテストするアッセイもまた、用いることができる。このようなアッセイは、当業者に公知であり、一例は下に詳細に記載されている。
【0213】
さらに、タンパク質のp38MAPキナーゼ族は、少なくとも4つの異なるイソ型:α、β、γ、およびδを含むと理解される。p38MAPキナーゼのほかの名称は、サイトカイン抑制抗炎症薬品結合タンパク質(CSBP)、CSBPキナーゼ、およびストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)を包含するが、これらに限定されるわけではない。p38MAPキナーゼの配列は、次の米国特許:第5,783,664号;第5,777,097号;第5,955,366号;第6,033,873号;第5,869,043号;第6,444,455B1号;第5,948,885号;および第6,376,214B1号に開示されている。
【0214】
式Iによる化合物のキナーゼ活性を決定するために用いられる追加のアッセイは、実施例セクションにおいて下に列挙されている。
【0215】
(化合物の調製方法)
本発明における使用のための化合物は、次の説明において概要が示されている方法にしたがって合成することができる。本発明における使用のための化合物は、当業界において公知の手順を用いて合成することができる。次の一般図式は、本発明の化合物を調製するために用いられる合成方法を例証する。
【0216】
本発明の化合物は、下に記載された方法の少なくとも1つを用いて調製することができる。式I(式中、GはC(O)またはCHである)の化合物は、次の図式に示されている一般的方法Iにしたがって調製することができる:
【0217】
【化14】

(式中、GはCHまたはC(O)であり;Q、X、X、およびZは、上に規定されているとおりであり;R13は、式Iに示されているように、R、R、およびRとともにフェニル基である)。工程aは、エステルを加水分解するために塩基、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いる。その結果として生じた酸はついで、工程bにおいて、ホスゲンと反応させられて環状無水物を形成し、これはついで、適切なアミン、R13−NHと反応させられて、カルボン酸(ここでGはC(O)である)を形成する。このカルボン酸はついで、
【0218】
【化15】

と反応させられて、式I(式中、GはC(O)である)による化合物を形成する。所望であれば、この化合物は場合によりさらに、C(O)をCHへ還元するために、還元剤、例えばBH−THFと、工程(e)において反応させることができる。あるいくつかの実施形態において、カップリング剤が、工程dにおいて用いられてもよい。適切なカップリング剤は、EDCI、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、および酸、例えばHClを含んでいる。
【0219】
例えば式I(式中、GはC(O)またはCHである)による化合物は、次の図式にしたがって調製することができる:
【0220】
【化16】

(式中、R13、X、X、およびZは、上に規定されている)。工程aは、塩基、例えば水酸化カリウムを用いる。工程bは、COClを用いる。工程cは、適切なアミン、R13−NHを用いる。工程dは、式
【0221】
【化17】

のアミンを用いる。工程eは、BH−THFを用いる。適切な触媒またはカップリング剤、例えば酸、EDCI、または1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを、工程dにおけるアミンの形成を実施するために用いることができる。
【0222】
別の例として、式I(式中、GはC(O)またはCHである)による化合物は、次の図式にしたがって同様に調製することができる:
【0223】
【化18】

(式中、R13、X、X、およびZは、上に規定されているとおりである)。
【0224】
別の方法、すなわち方法IIにおいて、式I(式中、GはC(O)であり、Rは、
【0225】
【化19】

である)による化合物は、次の図式に示されているように調製することができる:
【0226】
【化20】

(式中、Q、R13、X、およびXは、式Iについて規定されているとおりである)。方法IIにおいて、工程aは、この化合物と塩基、例えばNaOHまたはKCOとを反応させて酸を形成し、これはついで、適切なアミン
【0227】
【化21】

と反応させられて、アミドを形成する工程を含む。このアミドはついで、2,2,2−トリフルオロエチルクロロホルメートと反応させられてカルバメートを形成する。このカルバメートはついで、アミンR13−NHと反応させられて、式Iの化合物を形成する。
【0228】
例えば式Iによる化合物は、次のように、方法IIにしたがって調製することができる:
【0229】
【化22】

この場合、工程aは、アミノエステルとKOHとを反応させ、ついでその結果生じたアミノ酸は、EDCIおよびHOBTと反応させられ;ついでアミノアミドと
【0230】
【化23】

とを反応させ;ついでR13−NHとカルバメートとを反応させることによってウレアを形成する。
【0231】
対応出発アミンは、商業的に入手しうるか、または文献に報告されている方法によって調製することができる。当然ながら、当業界において周知のほかの方法および手順が、式Iのあるいくつかの化合物を調製するために用いられてもよい。
【0232】
当然ながら、当業界において公知のほかの方法および手順が、式Iのあるいくつかの化合物を調製するために用いられてもよい。
【0233】
次の実施例は、本発明の方法、化合物、および組成物を例証するが、限定的ではない。ほかの適切な修正例、および当業者には明白な、通常遭遇する多様な条件およびパラメーターの適応例は、本発明の精神および範囲内にある。
【0234】
H−NMRスペクトルは、標準的手順にしたがって記録された。有意ピークは、プロトン数、多重性(s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;m、多重線;br s、広幅一重線)、および1または複数の結合定数(ヘルツ)の順に表にされている。
【実施例】
【0235】
次の説明は、式Iによるあるいくつかの化合物、およびこれらの化合物を調製するためのあるいくつかの中間体を調製するために用いられた手順を示す。
【0236】
(実施例1)
1−(5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−[1,2,5]チアジアゼパン−5−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0237】
【化24】

(実施例2)
1−(5−tert−ブチル−3−(3−オキソ−ピペラジン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0238】
【化25】

(実施例3)
1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア
【0239】
【化26】

(実施例4)
1−(5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−[1,4]ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0240】
【化27】

(実施例5)
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0241】
【化28】

ジオキサン(30mL)中の6−tert−ブチル−1H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(3,7g、15ミリモル)の溶液へ、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミド(3.4g、14ミリモル)を添加し、この反応混合物を90℃で4時間加熱した。これらの揮発性物質を減圧下に蒸発させると、粗生成物を生じ、これは、さらなる精製を行なわずに次の工程で用いられた。
【0242】
THF(70mL)中の5−tert−ブチル−2−(3−(4−ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレイド)チオフェン−3−カルボン酸(約14ミリモル)の溶液へ、チオモルホリン−1,1−ジオキシド(2.27g、16.8ミリモル、1.2当量)、HOBt(2.08g、15.4ミリモル、1.1当量)、EDCI(3.22g、16.8ミリモル、1.2当量)を添加し、この混合物を、室温で16時間攪拌した。これらの揮発性物質を、減圧下に蒸発させると粗生成物を生じ、これを、飽和炭酸水素ナトリウム(3×40mL)および酢酸エチル(150mL)で抽出した。有機相を乾燥し、エタノール(40mL)で希釈した。回転蒸発器を用いてこの溶液を濃縮した時、固体の沈殿が発生した。この固体を、エタノール(70mL)で消化し、濾過し、エタノールで洗浄すると生成物を生じ、これを、真空下70℃で24時間乾燥した(収率=7.2g、82%)。
【0243】
【化29】

(実施例6)
1−(5−tert−ブチル−3−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0244】
【化30】

BALアルデヒド樹脂(0.5g、1ミリモル/g、0.5ミリモル)を、20mLシリンジ反応器に入れた。DMF(3mL)中の5%AcOH中4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミド(243mg、1.0ミリモル)の溶液を、シリンジに装入し、このシリンジを、2時間振とうした。DMF(2mL)中の5%AcOH中NaBH(OAc)(212mg、1.0ミリモル)の溶液を、シリンジへ添加した。室温で2時間振とうした後、DMF(2mL)中の5%AcOH中NaBH(OAc)(212mg、1.0ミリモル)の追加溶液を、シリンジへ添加し、この反応物を一晩振とうした。この樹脂を、DMF中の5%AcOH(2×10mL)、DMF(2×10mL)、DCM(2×10mL)、DCM中10%ジイソプロピルエチルアミン(2×10mL)、DCM(4×10mL)で洗浄し、真空乾燥した。
【0245】
第二アミン樹脂(0.25ミリモル)を、ジオキサン(4mL)中の6−tert−ブチル−1H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(113mg、0.50ミリモル)の溶液で処理し、反応混合物を100℃で16時間加熱した。この樹脂を、THF(2×4mL)、DCM(4×4mL)で洗浄し、真空下に乾燥した。
【0246】
樹脂(0.1ミリモル)上の酸中間体を、EDCI(96mg、0.5ミリモル)、HOBt(68mg、0.5ミリモル)、およびDCM(2mL)中の第二アミン(75.1mg、0.5ミリモル)で室温で3時間処理し、DCM(2×4mL)、MeOH(2×4mL)、およびDCM(3×4mL)で洗浄し、真空下に乾燥した。
【0247】
上で調製された樹脂(0.1ミリモル)を、3分間5mLシリンジ中で50%TFA/DCM(2mL)で処理し、劈開(cleavage)溶液を濾過した。この樹脂をDCM(1mL)で洗浄し、組み合わされた溶液を、穏やかな(mild)加熱下、窒素吹き付けによって蒸発させると生成物が生じ、これを、酢酸エチル/水性NaHCOで抽出した。有機相を乾燥し、蒸発させると、所望の生成物を白色固体として生じた(収率=44.5mg)。
【0248】
【化31】

(実施例7)
1−(5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0249】
【化32】

この実施例の化合物は、実施例6において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゼパンの代わりに、1,4−ジアゼパン−5−オンを用いた。
【0250】
【化33】

(実施例8)
1−(5−tert−ブチル−3−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0251】
【化34】

この実施例の化合物は、実施例6において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゼパンの代わりに、ピペラジン−2−オンを用いた。
【0252】
【化35】

(実施例9)
1−(5−tert−ブチル−2−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0253】
【化36】

4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミド(3.4g、14ミリモル)を、ジオキサン(30mL)中の6−tert−ブチル−1H−チエノ[3,2−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(分子量=225.26、3.7g、15ミリモル)の溶液で処理し、反応混合物を、90℃で8時間加熱した。
【0254】
これらの揮発性物質を、減圧下に蒸発させると粗生成物を生じた。THF(70mL)中の5−tert−ブチル−3−(3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレイド)チオフェン−2−カルボン酸(1.4ミリモル)の溶液へ、チオモルホリン−1,1−ジオキシド(2.27g、16.8ミリモル、1.2当量)、HOBt(2.08g、15.4ミリモル、1.1当量)、EDCI(3.22g、16.8ミリモル、1.2当量)を添加し、この混合物を室温で16時間攪拌した。これらの揮発性物質を、減圧下に蒸発させると粗生成物を生じ、これを、飽和炭酸水素ナトリウム(3×50mL)および酢酸エチル(150mL)で抽出した。有機相を乾燥し、濃縮すると粗生成物を生じ、これを、MeOH(30mL)中に溶解した。固体沈殿物を濾過し、メタノール(20mL)で洗浄し、乾燥すると、所望生成物を生じた(6.0g、73%)。
【0255】
【化37】

(実施例10)
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0256】
【化38】

1mLのTHF中の尿酸(60.6mg、0.147ミリモル、1当量)、EDCI(34.2mg、0.178ミリモル、1.2当量)、およびHOBt(21.2mg、0.157ミリモル、1.1当量)が入っているガラス瓶へ、チオモルホリン(0.015mL、0.158ミリモル、1.1当量)を添加した。このガラス瓶に蓋をし、反応混合物を、室温で攪拌した。21時間後、反応溶液を酢酸エチルで希釈し、飽和NaHCO(×1)、水(×1)、およびブライン(×1)で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去した。93:7のジクロロメタン:メタノールを用いた分取TLCによる精製が、オフホワイト固体として60.8mg(83%)の所望の生成物を生じた。
【0257】
【化39】

(実施例11)
1−(5−tert−ブチル−3−(モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0258】
【化40】

反応を上(方法1)のように実施すると、淡黄色固体として86%の所望の生成物を生じた。
【0259】
【化41】

(実施例12)
1−(5−tert−ブチル−2−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0260】
【化42】

この実施例の化合物は、実施例8において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、6−tert−ブチル−1H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオンの代わりに、6−tert−ブチル−1H−チエノ[3,2−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオンを用いた。
【0261】
【化43】

(実施例13)
1−(5−tert−ブチル−2−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0262】
【化44】

この実施例の化合物は、実施例7において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、1,1−ジオキソ−1,2,5−チアジアゼパンの代わりに、1,4−ジアゼパン−5−オンを用いた。
【0263】
【化45】

(実施例14)
1−(5−tert−ブチル−2−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0264】
【化46】

この実施例の化合物は、実施例6において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、6−tert−ブチル−1H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオンの代わりに、6−tert−ブチル−1H−チエノ[3,2−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオンを用いた。
【0265】
【化47】

(実施例15)
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルメトキシ)フェニル)ウレア
【0266】
【化48】

第二アミン樹脂(0.25ミリモル)を、ジオキサン(4mL)中の6−tert−ブチル−1H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(113mg、0.50ミリモル)の溶液で処理し、この反応混合物を90℃で3時間加熱した。この樹脂を、THF(2×4mL)、DCM(4×4mL)で洗浄し、真空下に乾燥した。樹脂(0.1ミリモル)上の酸中間体を、EDCI(96mg、0.5ミリモル)、HOBt(68mg、0.5ミリモル)、およびDCM(2mL)中のチオモルホリン1,1−ジオキシド(68mg、0.5ミリモル)で、室温で3時間処理し、DCM(2×3mL)、THF(2×3mL)、DCM(3×3mL)で洗浄し、真空下に乾燥した。
【0267】
上で調製された樹脂結合中間体へ、THF(3mL)中の4−ピリジンメタノール(54.5mg、0.4ミリモル)およびトリフェニルホスフィン(79mg、0.3ミリモル)を添加した。このシリンジをドライアイス中で数分間冷却した後、THF(1mL)中のジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD、71mg、0.35モリモル)の溶液を、シリンジへ添加し、このシリンジを室温で16時間振とうした。この樹脂を、THF(4×4mL)、MeOH(4×4mL)、DCM(4×4mL)で洗浄し、高真空下に乾燥した。
【0268】
上で調製された樹脂(0.1ミリモル)を、3分間5mLシリンジ中で50%TFA/DCM(2mL)で処理し、劈開溶液を濾過した。この樹脂をDCM(1mL)で洗浄し、組み合わされた溶液を、穏やかな加熱下、窒素吹き付けによって蒸発させると生成物が生じ、これを、酢酸エチル/水性NaHCOで抽出した。有機相を乾燥し、蒸発させると粗生成物を生じた(所望の化合物は、主要成分プラス約20%フェノール副生成物であり、これは、次の工程によって除去した)。
【0269】
この粗生成物を、MeOH中のPS−TBS樹脂(100mg)とともに2時間攪拌した。反応物を濾過し、濾過物を濃縮すると所望の生成物が生じた(収率=9.0mg)。
【0270】
【化49】

(実施例16)
1−(2−tert−ブチル−4−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チアゾール−5−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0271】
【化50】

第二アミン樹脂(0.1ミリモル)を、ジオキサン(2mL)中の2−tert−ブチル−4H−チアゾロ[5,4−d][1,3]オキサジン−5,7−ジオン(45mg、0.20ミリモル)の溶液で処理し、この反応混合物を90℃で3時間加熱した。この樹脂を、THF(2×3mL)、DCM(4×3mL)で洗浄し、真空下に乾燥した。
【0272】
樹脂(0.05ミリモル)上の酸中間体を、EDCI(48mg、0.25ミリモル)、HOBt(12.34mg、0.25ミリモル)、およびジクロロメタン(2mL)中のチオモルホリン1,1−ジオキシド(34mg、0.25ミリモル)で、3時間室温で処理し、ジクロロメタン(2×3mL)、THF(2×3mL)、ジクロロメタン(3×3mL)で洗浄し、真空下に乾燥した。
【0273】
上で調製された樹脂(0.05ミリモル)を、50%TFA:ジクロロメタン(2mL)で3分間5mLシリンジ中で処理し、劈開溶液を濾過した。この樹脂をジクロロメタン(1mL)で洗浄し、組み合わされた溶液を、穏やかな加熱下、窒素吹き付けによって蒸発させると生成物が生じ、これを、酢酸エチル:水性NaHCOで抽出した。有機相を乾燥し、蒸発させると粗生成物を生じ、これを、分取SFCによって精製すると、所望の生成物を固体として生じた。
【0274】
【化51】

(実施例17)
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1−オキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0275】
【化52】

反応は、オキソチオモルホリンを用いて上(方法1)のように実施すると(J.Org.Chem.1962、27、282−284)、83%の所望の生成物をオフホワイト固体として生じた。
【0276】
【化53】

(実施例18)
1−(5−tert−ブチル−2−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0277】
【化54】

この実施例の化合物は、実施例9において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミドの代わりに、4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミンを用いた。
【0278】
【化55】

(実施例19)
1−(5−tert−ブチル−2−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0279】
【化56】

この実施例の化合物は、実施例12において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミドの代わりに、4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミンを用いた。
【0280】
【化57】

(実施例20)
1−(5−tert−ブチル−2−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0281】
【化58】

この実施例の化合物は、実施例6において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミドの代わりに、4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミンを用いた。
【0282】
【化59】

(実施例21)
1−(5−tert−ブチル−2−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0283】
【化60】

この実施例の化合物は、実施例7において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミドの代わりに、ニルアミン(nylamine)を用いた。
【0284】
【化61】

(実施例22)
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0285】
【化62】

4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルオキシ)ベンゼンアミン。60mLのDMF中の4−アミノフェノール(2.185g、20.0ミリモル、1当量)が入っているガラス瓶へ、t−BuOK(2.468g、22.0ミリモル、1.1当量)、ついで3,4,5−トリクロロピリジン(3.653g、20.0ミリモル、1当量)を添加した。このフラスコに凝縮器を取り付け、混合物を窒素下80℃で攪拌した。反応混合物を冷却した後、酢酸エチル(600mL)で希釈し、水(3×150mL)およびブラインで洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を真空下に除去した。粗材料をシリカゲル上に吸収し、2,500mLの1:1ヘキサン:酢酸エチルを用いたフラッシュカラム(7.5×12cmシリカ)によって精製すると、4.6348g(91%)の生成物を淡黄色結晶質固体として生じた。
【0286】
5−tert−ブチル−2−(3−(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレイド)チオフェン−3−カルボン酸
【0287】
【化63】

THF中の6−tert−ブチル−1H−チエノ[2,3−d][1,3]オキサジン−2,4−ジオンおよび4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルオキシ)ベンゼンアミンが入っているガラス瓶に蓋をし、80℃で攪拌した。約6時間後、反応物を冷却し、十分な溶媒を真空下に除去すると、油残渣が残った。ジクロロメタンを添加すると(約10mL)、生成物が沈殿し、混合物を少なくとも1時間そのままにしておいた。混合物を濾過し(濾紙;真空吸引)、これらの固体をジクロロメタンで洗浄した。フィルター上の固体、およびフラスコ中に残留する固体は、アセトン中に溶解することによって収集した。溶媒を真空下に除去すると、89%の生成物が白色の細かい結晶質固体として生じた。
【0288】
反応を上(方法1)のように実施すると、91%の所望の生成物が、淡黄色油として生じた。
【0289】
【化64】

(実施例23)
1−(5−tert−ブチル−3−(モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0290】
【化65】

この実施例の化合物は、実施例11において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、4−(ピリジン−4−イルオキシ)アニリンの代わりに、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミドを用いた。
【0291】
【化66】

(実施例24)
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルメチル)フェニル)ウレア
【0292】
【化67】

この実施例の化合物は、実施例5において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミドの代わりに、4−(ピリジン−4−イルメチル)アニリンを用いた。
【0293】
【化68】

(実施例25)
1−(2−tert−ブチル−4−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チアゾール−5−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア
【0294】
【化69】

この実施例の化合物は、実施例18において用いられた手順と類似の手順を用いて調製した。ただし、4−(ピリジン−4−イルオキシ)アニリンの代わりに、4−(4−アミノフェノキシ)−N−メチルピコリンアミドを用いた。
【0295】
【化70】

(実施例26)
これらの化合物の生物活性
ヒト非活性化p38キナーゼ(分子量=43kDa)を、本明細書に記載されたプロトコルにしたがって精製した。薬品は、Calbiochemから購入した。蛍光特徴決定は、Cary Eclipse(Varian Analytical Instruments,Walnut Creek,CA)を用いて実施した。研究グレードCM5センサーチップおよびカップリング試薬(N−エチル−N’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、および1MエタノールアミンHCl、pH8.5)は、Biacore AB(Upsala,Sweden)から購入した。バイオセンサー分析は、Biacore3000SPR器具を用いて実施した。動力学分析は、Molecular Devices分光計(Molecular Devices Corporation,CA,USA)で実施した。
【0296】
p38キナーゼアッセイ:p38のタンパク質キナーゼ活性は、γ−[33P]ATPからの33PのGST−ATF−2基質、アミノ酸19−96(Upstate,NY,USA)中への組み込みを測定することによって決定した。これらの反応は、50μLの24mM トリス−HCl緩衝液、pH7.5であって、13mM MgCl、12%グリセロール、2%DMSO、2mM DTT、2.5Ciのγ−[33P]ATP(1,000Ci/ミリモル;1Ci=37GBq)(AmershamBiosciense)、10M ATP(AmershamBiosciense)、および2M GST−ATF2を含有するものの最終容積中で実施された。化合物を、10nM p38とともに30℃で20分間前インキュベーションした。これらの反応は、GST−ATF2およびATPの添加によって開始し、30℃で70分間インキュベーションし、その後10μLの600mMリン酸の添加によって停止させた。リン酸化基質を、ホスホセルロース96−ウエルプレート(Millipore MAPHNOB 10)で捕獲し、100mMリン酸で洗浄し、BeckmenCoulter LS6500液体シンチレーションカウンターで計数した。
【0297】
Ab1キナーゼ活性:25μLの最終反応容積において、Able(m)(5−10mU)を、mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、50μM EAIYAAPFAKKK、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0298】
CHK2キナーゼ活性:25mlの最終反応容積において、CHK2(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、200mM KKKVASRSGLYRSPSMPENLNRPR、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0299】
c−RAFキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、c−RAF(h)(5−10mU)を、25mM トリスpH7.5、0.02mM EGTA、0.66mg/mlミエリン塩基性タンパク質、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0300】
cSRCキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、cSRC(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、250μM KVEKIGEGTYGVVYK(Cdc2ペプチド)、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0301】
EphB4キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、EphB4(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、10mM MnCl、0.1mg/mlポリ(Glue,Tyr)4:1、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、フィルターマットA上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0302】
Flt3キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、Flt3(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、50μM EAIYAAPFAKKK、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5mLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10mLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0303】
GSK3βキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、GSK3β(h)(5−10mU)を、8μM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、20mM YRRAAVPPSPSLSRHSSPHQS(p)EDEEE(リンGS2ペプチド)、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、50mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0304】
IGF−1Rキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、IGF−1R(h)(5−10mU)を、50mM トリス pH7.5、0.1mM EGTA、0.1mM NaVO、0.1%β−メルカプトエタノール、250μM KKKSPEGYVNIEFG、10mM MnCl、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0305】
JNK2α2キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、JNK2α2(h)(5−10mU)を、50mM トリス pH7.5、0.1mM EGTA、0.1%β−メルカプトエタノール、3μM ATF2、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0306】
JNK3キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、JNK3(h)(5−10mU)を、50mM トリス pH7.5、0.1mM EGTA、0.1%β−メルカプトエタノール、250μM ペプチド、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0307】
Lckキナーゼ活性:25mlの最終反応容積において、Lck(h)(5−10mU)を、50mM トリス pH7.5、0.1mM EGTA、0.1mM NaVO、250μM KVEKIGEGTYGVVYK(Cdc2ペプチド)、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0308】
Lynキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、Lyn(h)(5−10mU)を、50mM トリス pH7.5、0.1mM EGTA、0.1mM NaVO、0.1%β−メルカプトエタノール、0.1mg/mlポリ(Glue、Tyr)4:1、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、フィルターマットA上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0309】
MAPKAP−K2キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、MAPKAP−K2(h)(5−10mU)を、50mM Na−β−グリセロホスフェート pH7.5、0.1mM EGTA、30mM KKLNRTLSVA、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0310】
Metキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、Met(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、250μM KKKSPEGYVNIEFG、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0311】
PDGFRβキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、PDGFRβ(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、0.1mg/mlポリ(Glu,Tyr)4:1、10mM MnCl、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、フィルターマットA上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0312】
PKAキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、PKA(b)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、30μM LRRASLG(ケンプチド)、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、50mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0313】
PKCαキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、PKCα(h)(5−10mU)を、20mM HEPES pH7.4、0.03%トリトンX−100、0.1mM CaCl、0.1mg/mlホスファチジルセリン、10μg/mlジアシルグリセロール、0.1mg/mlヒストンH1、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0314】
SAPK2aキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、SAPK2a(h)(5−10mU)を、25mM トリス pH7.5、0.02mM EGTA、0.33mg/mlミエリン塩基性タンパク質、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0315】
SAPK2bキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、SAPK2b(h)(5−10mU)を、25mM トリス pH7.5、0.02mM EGTA、0.33mg/mlミエリン塩基性タンパク質、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0316】
SAPK3キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、SAPK3(h)(5−10mU)を、25mM トリス pH7.5、0.02mM EGTA、0.33mg/mlミエリン塩基性タンパク質、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0317】
SAPK4キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、SAPK4(h)(5−10mU)を、25mM トリス pH7.5、0.02mM EGTA、0.33mg/mlミエリン塩基性タンパク質、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。10μLの反応物を、P30フィルターマット上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0318】
Tie2キナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、Tie2(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、0.5mM MnCl、0.1mg/mlポリ(Glu,Tyr)4:1、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、フィルターマットA上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0319】
TrkBキナーゼ活性:25μlの最終反応容積において、TrkB(h)(5−10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、0.1mg/mlポリ(Glu,Tyr)4:1、10mM MgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pモル、必要に応じた濃度)でインキュベーションする。反応は、MgATPミックスの添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、反応を、5μLの3%リン酸溶液の添加によって停止させる。ついで10μLの反応物を、フィルターマットA上へ点在させ、乾燥およびシンチレーション計数に先立って、75mMリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄する。
【0320】
化合物3についてのタンパク質キナーゼ阻害結果を、次の表に示す。
【0321】
【表2】

実施例1、2、および4の化合物ついてのキナーゼ阻害活性を、次の表に示す。
【0322】
【表3】

実施例1および2の化合物はまた、2つの細胞系、MCF−7およびU266に対して細胞成長阻害活性についてもテストされた。10%FBSが補足され、RPMI1640培地中に縣濁されたJurkat細胞を、1ウエルあたり200mLの容積中1ミリリットルあたり10,000細胞の密度で、96ウエルプレートにピペットで入れた。細胞を、5%CO中に37℃で一晩平衡させておいた。ついで細胞を、テスト化合物の存在下、0.03μM〜10μMの範囲の濃度で(1/2 log希釈において)、24時間インキュベーションした。インキュベーション時間の後、細胞を、WST−1(Biovision)またはAlamar Blue(BioSourse)のどちらかを用いて、生存能力について評価した。処理された細胞からの値を、対照細胞からの値と比較し、値を対照パーセントとして表示した。実施例1および2の化合物および10μM未満のIC50値。
【0323】
実施例3の化合物についてのタンパク質キナーゼ阻害結果を、次の表に示す。
【0324】
【表4】

【0325】
【表5】

さらには、いくつかのこれらの化合物を、Flt3、KDR、Tie2、およびp38を阻害する活性についてテストした。これらの化合物は、受容可能な生物活性、例えばFlt3については1μM未満、KDRについては>10〜0.1μM未満、Tie2については>10〜1μM未満、およびp38については1μM未満のIC50を示す。
【0326】
今やこの発明を完全に説明したので、同じことを、条件、配合、およびほかのパラメーターの幅広い同等の範囲内で、本発明の範囲またはこれのあらゆる実施形態に影響を与えることなく実施することができることは、当業者によって理解されるであろう。本明細書に引用されたすべての特許および出版物は、参照してその全体が完全に本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物、または薬学的に受容可能なその塩であって、式中、
は、R−LまたはR−Lであり;
およびRは、水素、C1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、およびC1−6ジアルキルアミノからなる群から独立して選択されるか、あるいはまた、RおよびRは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5〜8員環を形成し;
は、
【化2】

であって、式中、XおよびXは、独立して(CRであり、ここで、nは、各々の存在において独立して1、2、または3であり、Zは、−O−、−NH−、−HN−SO−、−NHC(O)−、−S−、−S(O)−、−SO−、または−C(O)−であり;
は、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノ、アミノカルボニル、C1−6アルキルアミノカルボニル、C1−6ジアルキルアミノカルボニル、フェニル、およびメトキシフェニルからなる群から独立して選択された1またはそれ以上の基で場合により置換された、1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を含有する5員または6員のアリールまたはヘテロアリール環であり;
は、−O−、−S−、−CH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH(OH)−、−C(O)−、−CX−、または−CXH−であり、ここで、Xはハロゲンであり;
は、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、オキソチオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ピペラジニル、またはピペリジニルであり;そして
は、(CR10であり、ここで、RおよびR10の各々の存在は、HおよびC1−4アルキルからなる群から独立して選択され、mは、1、2、または3であり;
Qは、各々が、R11およびR12の1またはそれ以上で場合により置換された5員ヘテロアリール環のジラジカルであり、;
Gは、場合により置換されたC1−3アルキレンのリンカー、C=O、−C(O)NH−、または単結合であり;
およびRは、各々の存在において独立して、水素、C1−4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、アミノカルボニル、C1−4アルキルアミノカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、C1−4アルキルアミノメチル、およびC1−4アルキルアミノカルボニルメチルであり;
11は、独立して、各々が場合により1個〜3個のフェニル基で置換されたC3−10アルキルまたはC3−10ハロアルキル;場合により1またはそれ以上のC1−3アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、またはチオケトで置換されたC3−7シクロアルキル;場合により置換されたC3−10シクロヘテロアルキル;場合により一部または全部がハロゲン化されていてもよく、かつ場合により1個〜3個のC1−5アルキル基またはフェニル基で置換されたC3−10分岐アルケニル;場合により1個〜3個のC1−3アルキル基で置換されたC5−7シクロアルケニル;シアノ;またはC1−4アルコキシカルボニルであり;そして
12は、C1−5アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アミノ、C1−5アルキルアミノ、C1−5ジアルキルアミノ、または場合により置換されたフェニルである、
化合物。
【請求項2】
は、R−Lであり、Rはピリジル基であり、Lは、−CH−、−O−、−C(O)−、および−S−からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、R−Lであり、Rはピリジル基であり、Lは−O−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Qは、C1−5アルキル基で置換されたチエニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Qは、C1−5アルキル基で置換されたピラゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
は、
【化3】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
は、モルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、1−オキソチオモルホリン−4−イル、および1,1−ジオキソチオモルホリン−4−イルからなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
は、モルホリニル、チオモルホリニル、オキソチオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、オキソピペラジニル、オキソジアゼパニル、およびジオキソチアジアゼパニルからなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
およびXは、独立してメチレン、エチレン、またはプロピレンである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
Gは−C(O)−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
およびRは、水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
およびRは、水素、C1−4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、およびアミノからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
は、場合により置換されたピリジルオキシであり;Qは、場合により置換されたチエニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
は、場合により置換されたピリジルオキシであり;Qは、場合により置換されたピラゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−[1,2,5]チアジアゼパン−5−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;
1−[5−tert−ブチル−3−(3−オキソ−ピペラジン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;
1−[5−tert−ブチル−3−(1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレア;および
1−[5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−[1,4]ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル]−3−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]ウレアからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルメトキシ)フェニル)ウレア;
1−(2−tert−ブチル−4−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チアゾール−5−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1−オキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(2−オキソピペラジン−4−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(1,2,5−チアジアゼパン−1,1−ジオキシド−5−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−2−(5−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボニル)チオフェン−3−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(3,5−ジクロロピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(モルホリン−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;
1−(5−tert−ブチル−3−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チオフェン−2−イル)−3−(4−(ピリジン−4−イルメチル)フェニル)ウレア;および
1−(2−tert−ブチル−4−(チオモルホリン−1,1−ジオキシド−4−カルボニル)チアゾール−5−イル)−3−(4−(2−(メチルカルバモイル)ピリジン−4−イルオキシ)フェニル)ウレア;または薬学的に受容可能なこれらの塩
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
タンパク質キナーゼ;および請求項1に記載の化合物を含む組成物。
【請求項18】
炎症性状態または炎症性疾患の処置または予防の方法であって、請求項1に記載の化合物を、前記炎症性状態または炎症性疾患の処置または予防に十分な量で、このような処置または予防を必要としている被験者へ投与することを含む方法。
【請求項19】
タンパク質キナーゼ媒介状態またはタンパク質キナーゼ媒介疾患の処置または予防の方法であって、請求項1に記載の化合物を、前記タンパク質キナーゼ媒介状態またはタンパク質キナーゼ媒介疾患の処置または予防に十分な量で、このような処置または予防を必要としている被験者に投与することを含む方法。
【請求項20】
前記状態または疾患が癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
開コンホメーションにおけるタンパク質キナーゼの結晶形態の調製方法であって、請求項1に記載の化合物の存在下で前記タンパク質キナーゼを結晶化する工程を含む方法。
【請求項22】
前記タンパク質キナーゼの前記結晶形態は、前記タンパク質キナーゼの三次元原子構造を決定するための使用に適している、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2008−523072(P2008−523072A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545572(P2007−545572)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044143
【国際公開番号】WO2006/062984
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(505454144)ルーカス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】