説明

タービンブレード用ダンパ/シールアセンブリ

【課題】 ダンパ(34)およびシール(30)に最も有利な材料を使用するとともに、ダンパおよびシールの最も有利な配置を有するシール/ダンパアセンブリを提供する。
【解決手段】 タービンブレード用ダンパ/シールアセンブリは、共に最も径方向外側の非ガス流路面と接触するシール(30)およびダンパ(34)を含む。シールは、塑性変形可能な材料から製造されるとともにダンパのリセス(38)内に入れ子式に設けられる。ダンパは、動作時に発生する振動エネルギを吸収する剛性材料から製造される。ダンパ内のリセスは、ダンパとシールとを共に最も径方向外側の非ガス通路面に配置することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンのシール/ダンパアセンブリに関し、特に、入れ子式のシール/ダンパアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガスタービンエンジンは、タービンロータの周辺部に沿って複数のタービンブレードが取り付けられたタービンアセンブリを含む。各々のタービンブレードは、動作時の移動や膨張に対応するために隣接するタービンブレードから一定距離で離間されている。ブレードは、典型的にロータに取り付けられる根部と、プラットフォームと、このプラットフォームから径方向外向きに延在するエアフォイルを含む。
【0003】
熱ガスがタービンブレードのプラットフォームの下側に達すると問題が生じる。プラットフォーム上を流れる熱ガスは、シールによって隣接するタービンブレードの間から漏れないようになっている。このようにしているのは、プラットフォームの下側の部品が、一般に熱ガスの高い温度で長期間動作するように設計されていないからである。このシールは、典型的に隣接するタービンブレード間でかつプラットフォームの内側面に入れ子式に設けられた金属製シートである。また、このシールは、プラットフォームの内側面と一致してタービンブレードのプラットフォームの下に熱ガスが侵入するのを防ぐために典型的に可撓性を有する。一般的に、シールは、径方向外側に位置するタービンブレードのプラットフォームの内側面に接して配置される。
【0004】
シールに加えて、隣接するタービンブレードの間にダンパを設けて潜在的に有害な振動を散逸させることが一般的である。ダンパは、タービンブレードからの振動を散逸させるために十分な質量および剛性を提供する寸法に設けられる。タービンブレードの振動は、ダンパとタービンブレードのプラットフォームの内側面との摩擦接触によって伝達される。ダンパは、プラットフォームの内側面の最も径方向外側部分に配置された場合に最大の利点および減衰を提供する。
【0005】
不都合なことに、ダンパとシールは、両方ともプラットフォームの内側面に接して配置された場合に最大の利点を提供するように機能する。しかし、内側面に直接隣接して配置することができるのはシールとダンパのいずれか一方のみであることは明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在提案されている解決策では、シールおよびダンパの両方として機能する単一部品が提供されている。このような装置では、ダンパとシールの両方の所望位置が得られる。しかし、シールとダンパの材料特性は、異なる機能に対応するように妥協して設定される。すなわち、シール材料は、要求される減衰特性を提供するために所望の可撓性を有さず、ダンパ材料は、シールの可撓性をいくらか提供するために最も有利な減衰特性を提供しない。好適な減衰特性と好適なシール特性との間の妥協によって、両方の機能の性能が所望よりも低くなっている。
【0007】
従って、それぞれの機能に最も有利な材料を使用するとともに、ダンパおよびシールの最も有利な配置を提供するシール/ダンパアセンブリの開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タービンブレード用のダンパ/シールアセンブリであり、このダンパ/シールアセンブリは、シールとダンパの両方がタービンブレードの内部における最も径方向外側の面に配置されるようにダンパ内に入れ子式に設けられたシールを含む。
【0009】
ダンパ/シールアセンブリは、隣接するタービンブレードの間の間隙に熱ガスが侵入するのを防止するシールを含む。このシールは、プラットフォームの内側面に接触して熱ガスの流れを遮断するように間隙にわたって延在する。ダンパは、シールが入れ子式に設けられるリセスを含む。ダンパのリセスの両側には、タービンブレードの最も内側の面と接触する面がそれぞれ含まれる。ダンパの面は、動作時にタービンブレードより発生する振動エネルギを吸収する摩擦接触を提供する。
【0010】
ダンパ/シールアセンブリは、ダンパとシールの両方が内側面に隣接するようにタービンブレードのキャビティ内に組み付けられる。ダンパとシールは、キャビティ内の最も径方向外側位置に設けられることで共に最大の利点を提供する。
【0011】
本発明のダンパ/シールアセンブリは、シールとダンパに異なる材料を使用することを可能にし、かつシールとダンパの両方の最適配置を提供する。シールは、熱ガスの侵入を防止する所望のシールを提供する塑性変形可能な材料を含み、ダンパは、動作時に発生する振動エネルギを吸収するために必要な高密度の剛構造体を提供する。
【0012】
従って、本発明のダンパ/シールアセンブリは、それぞれの機能に最も有効な材料、およびダンパおよびシールの最も有効な配置を提供する。
【0013】
本発明の上述およびその他の特徴は、以下の実施形態および図面によって最もよく理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、タービンアセンブリ10は、複数の隣接するタービンブレード12を含む。各々のタービンブレード12は、タービンロータ(図示省略)の径方向スロットに嵌め込まれる根部14を含む。根部14の径方向外側にはプラットフォーム16があり、プラットフォーム16は、外側面18と内側面20とを有する。内側面20は、外側面18の径方向内側に配置される。エアフォイル22が、プラットフォーム16から上向きに延在する。
【0015】
熱ガス24が、エアフォイル22の周囲および外側面18にわたって流れる。隣接するタービンブレード12の間には、間隙26が延びている。間隙26は、タービンブレード12の間の接触を防止する。ダンパ/シールアセンブリ28は、熱ガス24が間隙26に入り込んでプラットフォーム16の下面に達するのを防ぐシール30を含む。シール30は、隣接するタービンブレード12の間に形成されるキャビティ32内に配置される。シール30は、プラットフォーム16の内側面20と接して熱ガスの流れを遮断するように間隙26にわたって延在する。タービンブレード12のキャビティ32は、ダンパ/シールアセンブリ28を整列および位置決めするナブ(nub)36を含む。
【0016】
図2では、ダンパ/シールアセンブリ28が、ダンパ34とシール30の両方が内側面20に隣接するようにタービンブレード12のキャビティ32内に組み付けられている。ダンパ34とシール30は、共にキャビティ32内の最も径方向外側位置に設けられることで最大の利点を提供する。最も径方向外側位置は、ダンパ34が内側面20と摩擦接触する位置である。ダンパ34と内側面20との間の摩擦接触は、運転時に発生する振動エネルギを吸収して散逸させる。ダンパ34の軸方向配置は、振動減衰性能を実質的に最大化する。好ましくは、ダンパ34は振動減衰性能が最大となるようにキャビティ32内に配置される。ダンパ34は、最も前方位置で図示されているが、当業者であれば本明細書の開示から分かるようにダンパ34の他の配置も本発明に含まれる。
【0017】
図3,図4を参照すると、シール30がダンパ34のリセス38内に入れ子式に収容されている。リセス38は、シール30およびダンパ34の一部が共にプラットフォーム16の内側面20に接することを可能にする。リセス38は、ダンパ34の頂面に沿って軸方向に延びる。シール30は、ダンパ34に嵌合してシール30とダンパ34を互いに対して固定するフィンガ44を含む。シール30は、ダンパ34との嵌合によってダンパに対して位置決めされ、これにより隣接するタービンブレード12の間の間隙26に対して位置決めされる。
【0018】
ダンパ34は、本体部50と、この本体部50の前方に延在してシール30の前部を支持するシール保持アーム52と、を含む。ダンパ34には、リセス38の両側に摩擦面46が設けられている。摩擦面46は、シール30と共通の平面に沿って内側面20と摩擦接触している。ダンパ34は、内側面20に対してダンパ/シールアセンブリ28を配置および固定するためにキャビティ32に対応する保持特徴部54を含む。ダンパ34の両側で本体50から突出する整列特徴部56も含まれる。補強部58が、ダンパ34の両側で摩擦面46を延在させており、これらの補強部58は摩擦面46を補強する。
【0019】
ダンパ34は、動作時に発生する熱負荷および遠心荷重によって塑性変形しない材料から製造される。さらに、ダンパ34に使用される材料は、熱容量に加えて所望の振動減衰性能を提供するように選択される。ダンパ34は、プラットフォーム16の内側面20に接した状態で遠心荷重を受ける。ダンパの所望の形状が開示されているが、当業者であれば本明細書の開示によってダンパ34の異なる形状および特徴部も本発明に含まれるとともに特定用途の必要条件によって決まることが分かるであろう。
【0020】
シール30は、ダンパ34の保持アーム52に嵌まる前部60を含む金属製の薄いシートである。フィンガ44は、ダンパ34に嵌合してシール30をリセス38内に入れ子式に保持する。シール30は、熱ガス24がタービンブレード12の下側に侵入するのを防止する所望のシールを提供するために、可撓性を有して内側面20に一致することが好ましい。後部62が、軸方向後方に延在するとともに、軸方向に延びる間隙26の形状と一致してこれを密閉するように内側に延在する。シール30に使用される材料は、特定用途に関連する圧力および温度に耐えるように、かついくらかの塑性変形を許容するように選択される。シールは、熱負荷および遠心荷重に応じて塑性変形して内側面20の形状に一致してこれに嵌る。塑性変形は、熱ガス24の侵入に対する所望のシールを提供する。
【0021】
図5には、隣接するタービンブレード12によって画成されるキャビティ32内に設けられたダンパ/シールアセンブリ28が示されている。摩擦面46が内側面20と接触する。ダンパ34は、タービンブレード12の非ガス流路側の最も径方向外側部分において最も有効に機能する。ダンパ34とタービンブレード12の内側面20との間の摩擦接触により、動作時に発生する振動が減衰される。シール30は、軸方向の間隙26に沿って内側面20に配置される。リセス38は、軸方向の間隙26の全長にわたって、隣接するタービンブレード12の内側面20に沿ってシール30の連続的な接触を可能にするとともに、ダンパ34の有効な最も径方向外側位置を提供する。
【0022】
本発明のダンパ/シールアセンブリ28は、シール30とダンパ34に異なる材料を使用することを可能にし、かつシール30とダンパ34の両方の最適配置を提供する。シール30は、熱ガス24の侵入を防止する所望のシールを提供する塑性変形可能な材料を含み、ダンパ34は、動作時に発生する振動エネルギを吸収するために必要な高密度の剛構造体を提供する。
【0023】
本発明の好適実施例を開示したが、当業者であれば分かるように、所定の改良も本発明の範囲内である。よって、本発明の真の範囲および内容を判断するためには請求項の検討が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】隣接するタービンブレードアセンブリの斜視図である。
【図2】タービンブレード内のダンパ/シールアセンブリの側面図である。
【図3】ダンパ/シールアセンブリの分解図である。
【図4】ダンパ/シールアセンブリの斜視図である。
【図5】ダンパ/シールアセンブリの配置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0025】
30…シール
34…ダンパ
38…リセス
44…フィンガ
46…摩擦面
50…本体部
52…シール保持アーム
54…保持特徴部
56…整列特徴部
58…補強部
60…前部
62…後部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間されているとともに、外側面の径方向内側に設けられた内側面をそれぞれ含む複数のタービンブレードと、
前記内側面に隣接して配置された部分を含むダンパと、
前記ダンパに入れ子式に設けられるとともに前記内側面に隣接して配置されたシールと、を含むことを特徴とするタービンアセンブリ。
【請求項2】
前記ダンパは、前記シールが内部に入れ子式に設けられたリセスを含むことを特徴とする請求項1記載のタービンアセンブリ。
【請求項3】
前記シールは、前記ダンパに嵌まるタブ部分を含むことを特徴とする請求項1記載のタービンアセンブリ。
【請求項4】
前記ダンパは、前記複数の各タービンブレードに対して該ダンパを整列させる整列特徴部を含むことを特徴とする請求項3記載のタービンアセンブリ。
【請求項5】
前記整列特徴部は、外向きに突出するナブを含むことを特徴とする請求項4記載のタービンアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のタービンブレードは、それぞれ前部と後部とを含み、前記の内側面と外側面とはこれらの部分の間に延在しており、前記ダンパは前記前部に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1記載のタービンアセンブリ。
【請求項7】
前記シールは、金属製の薄いシートを含むことを特徴とする請求項1記載のタービンアセンブリ。
【請求項8】
前記ダンパは、成形された質量部を含むことを特徴とする請求項1記載のタービンアセンブリ。
【請求項9】
前記のダンパとシールとは、両方とも最も径方向外側位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のタービンアセンブリ。
【請求項10】
隣接するタービンブレードは、前記ダンパとシールとが内部に配置されるキャビティを画成していることを特徴とする請求項1記載のタービンアセンブリ。
【請求項11】
前記ダンパは、前記キャビティの最も前方部分に配置されていることを特徴とする請求項10記載のタービンアセンブリ。
【請求項12】
前記複数のタービンブレードは、前記キャビティ内で前記ダンパを位置決めする整列特徴部をそれぞれ含むことを特徴とする請求項11記載のタービンアセンブリ。
【請求項13】
タービンブレードの内側面と接する接触面を含むダンパと、
前記ダンパに入れ子式に設けられるとともにタービンブレードの内側面と接するシールと、を含むことを特徴とするタービンブレード用ダンパ/シールアセンブリ。
【請求項14】
前記ダンパは、前記シールが内部に入れ子式に設けられた凹部を含むことを特徴とする請求項13記載のタービンブレード用ダンパ/シールアセンブリ。
【請求項15】
前記接触面によって前記ダンパにわたって画定される平面を含み、前記シールの面が前記平面内に配置されていることを特徴とする請求項13記載のタービンブレード用ダンパ/シールアセンブリ。
【請求項16】
前記ダンパは、前記タービンブレードの内側面に対応する保持特徴部を含むことを特徴とする請求項13記載のタービンブレード用ダンパ/シールアセンブリ。
【請求項17】
前記シールの面と前記ダンパの接触面とは、前記タービンブレードの最も径方向外側の非ガス流路面と接していることを特徴とする請求項13記載のタービンブレード用ダンパ/シールアセンブリ。
【請求項18】
本体と、該本体から延在するとともにリセスによって互いに離間された少なくとも2つの摩擦面と、を有するダンパと、
フィンガが突出する前部と、少なくとも部分的に前記フィンガと同方向に突出する後部と、を有するシールと、を含むことを特徴とするダンパ/シールアセンブリ。
【請求項19】
前記シールは、前記ダンパに嵌るタブ部分を含むことを特徴とする請求項18記載のダンパ/シールアセンブリ。
【請求項20】
前記シールは、前記本体のリセス内に嵌るように設けられていることを特徴とする請求項19記載のダンパ/シールアセンブリ。
【請求項21】
前記少なくとも2つの摩擦面と前記シールの面とは共通の平面を成すことを特徴とする請求項20記載のダンパ/シールアセンブリ。
【請求項22】
本体と、
前記本体から延在するとともにリセスによって互いに離間された少なくとも2つの摩擦面と、を含むことを特徴とするダンパ。
【請求項23】
前記本体から長手方向に延在する少なくとも1つのフィンガを含むことを特徴とする請求項22記載のダンパ。
【請求項24】
前記少なくとも2つの摩擦面は、前記本体に沿って長手方向に延在していることを特徴とする請求項22記載のダンパ。
【請求項25】
前記本体から側方に延在する少なくとも1つのラグを含むことを特徴とする請求項22記載のダンパ。
【請求項26】
前記本体の両側にそれぞれ配置された少なくとも2つのラグを含むことを特徴とする請求項22記載のダンパ。
【請求項27】
フィンガが突出する前部と、
少なくとも部分的に前記フィンガと同方向に突出する後部と、を含むことを特徴とするシール。
【請求項28】
平面を画定する本体部を含み、前記フィンガが該平面に対して少なくとも部分的に横向きに突出していることを特徴とする請求項27記載のシール。
【請求項29】
前記本体部の共通の側から横向きに突出する少なくとも2つのフィンガを含むことを特徴とする請求項28記載のシール。
【請求項30】
前記少なくとも2つのフィンガは、一定距離で離間されていることを特徴とする請求項29記載のシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−77759(P2006−77759A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202609(P2005−202609)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】