説明

ターボチャージャの排気バイパス弁

【課題】回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる排気バイパス弁を提供すること。
【解決手段】タービン入口側流路3とタービン出口側流路4を連通する短絡流路5と、この短絡流路5を開閉するバルブフラップ6とを備え、該バルブフラップ6が開閉して前記タービン入口側流路3を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁1において、前記バルブフラップ6はその片側を回転中心側として回動自在に支持され、同他側が前記短絡流路5から離間接近して該短絡流路5が開閉され、前記バルブフラップ6と対向する前記短絡流路5の開口縁部、または該短絡流路5と対向する前記バルブフラップ6側面の少なくとも一方は、前記他側縁部にテーパ部10を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はターボチャージャの排気バイパス弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャにおいて、タービンに過剰なガスが流入するのを防止する目的で、排気バイパス弁を設ける場合がある。排気バイパス弁とは、タービン入口とタービン出口を短絡する流路の開閉を行なう弁である。
【0003】
排気バイパス弁には構造が容易なスイング式の弁を用いる場合が多い。図30に従来のターボチャージャの排気バイパス弁201を示した。隔壁202により隔てられたタービン入口側流路203とタービン出口側流路204とが、短絡流路205により短絡され、排気バイパス弁201は、短絡流路205に対して蓋をするように被うバルブフラップ206を備える。バルブフラップ206は腕206aにより片持ち支持され、腕206aはシャフト207を回動中心として支持されている。シャフト207にはレバー208の一端が固定されており、レバー208の他端側がアクチュエータ209によって駆動されることで開閉する。すなわち、アクチュエータ209のシャフト209aが伸張すると、レバー208がシャフト207を揺動中心としてタービン入口側流路203から離間する方向に移動し、それに伴ってシャフト207に固定されたバルブフラップ206も同様にタービン入口側流路203から離間する方向へ移動し、図31のように短絡流路205が開く。アクチュエータ209のシャフト209aが収縮すると、レバー208がシャフト207を揺動中心としてタービン入口側流路203方向へ移動し、それに伴ってシャフト207に固定されたバルブフラップ206も同様にタービン入口側流路203方向へ移動し、図30のように短絡流路205が閉じる。閉じた状態では、バルブフラップ206の封止面206bが隔壁202側面と密着することで短絡流路205が閉塞される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−274833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気バイパス弁201の開度を絞って流量を制御しようとした場合、バルブフラップ206には大きなガス圧が作用する。一方、ターボチャージャはエンジンの排ガスにより駆動されるが、エンジンの排ガスの圧力は変動するため、バルブフラップ206には変動荷重が作用することになる。
【0006】
空圧駆動のアクチュエータ209は空気バネとなっているため、バルブフラップ206に変動荷重が作用すると、荷重の変動幅に応じただけの伸縮をすることになる。この伸縮が大きいと、弁は僅かな開閉動作を繰返すこととなり、結果的にシャフト207などの摺動部に摩耗が発生する場合がある。弁のシャフト207が摩耗すると、ガタの増加による制御性の悪化などを生じる場合があるため、摩耗を低減する構造とすることが望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる排気バイパス弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の第1態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップはその片側を回転中心側として回動自在に支持され、同他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、前記バルブフラップと対向する前記短絡流路の開口縁部、または該短絡流路と対向する前記バルブフラップ側面の少なくとも一方は、前記他側縁部にテーパ部を備えたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0009】
本態様によれば、回転軸から遠い側に、テーパ加工により圧力低下領域が形成される。このためバルブフラップへの作用力、特にモーメントを低減できる。
【0010】
また、本発明の第2態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップは片側を回転中心側として、他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、前記短絡流路は、前記タービン入口側流路から前記バルブフラップの回転中心側縁部に向けて設けられているターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0011】
本態様によれば、短絡流路がバルブフラップの回転中心側に傾斜していることにより、バルブフラップの回転中心に近い側に圧力の高い圧力増加領域が形成される。これによりバルブフラップを回転させるモーメントが低減する。
【0012】
また、本発明の第3態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップは片側を回転中心側として、他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、前記短絡流路は、前記タービン入口側流路におけるガスの流れ方向から戻る方向に同ガスを導くターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0013】
すなわち、本態様ではタービン入口側流路から短絡流路へ流れるガスは、鈍角をなして(90度を超えて)流れ方向が転回される。これにより、短絡流路内に及ぶ動圧を低減できるため、バルブフラップに作用する変動荷重が低減する。
【0014】
また、前記態様では、前記バルブフラップと対向する前記短絡流路の開口縁部、または該短絡流路と対向する前記バルブフラップ側面の少なくとも一方は、前記他側縁部にテーパ部を備えていてもよい。
【0015】
このようにすれば、回転軸から遠い側に、テーパ加工により圧力低下領域が形成されるので、バルブフラップへの作用力、特にモーメントを低減できる。
【0016】
また、本発明の第4態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、タービン入口側流路から前記短絡流路に分岐する分岐部の上流側の角に、前記タービン入口側流路内側に向けて突出する突起が設けられたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0017】
本態様によれば、突起によりタービン入口側流路を絞ることによって流速が加速し、動圧が増加する。この結果、短絡流路には静圧が及ぶようになり、バルブフラップに作用する圧力変動が抑制される。
【0018】
また、本発明の第5態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップはタービン入口側流路の上流側を回転中心側として、他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、タービン入口側流路から前記短絡流路に分岐する分岐部の上流側の角に、前記タービン入口側流路の内側と前記短絡流路の内側との両方に向けて突出する突起が設けられたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0019】
本態様によれば、突起によりタービン入口側流路を絞ることによって流速が加速し、動圧が増加する。この結果、短絡流路には静圧が及ぶようになり、バルブフラップに作用する圧力変動が抑制される。さらに短絡流路内のガス流がバルブフラップの回転中心に近い側に向くこととなり、高い圧力が生じる位置が回転中心に近い側に寄り、モーメントを低減させることができる。
【0020】
また、本発明の第6態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップが全閉または全閉に近い位置にある場合に該バルブフラップを開く方向に付勢する付勢手段を備えたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0021】
本態様によれば、バルブフラップが絞られた状態で、付勢手段によってバルブフラップの回転軸周りに対する剛性が増加する。したがってバルブフラップが受ける荷重が増加した場合に、荷重変動による弁の回転角変動が低減する。
【0022】
前記態様では、前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、前記レバーに対し、前記回転軸とアクチュエータの作用点との間に、前記付勢手段によって付勢力が与えられるようにされてもよい。
【0023】
このようにすれば、バルブフラップがガスから受ける荷重の方向とバネからレバーが受ける荷重の方向がほぼ一致する配置であるため、バルブフラップの回転軸と、該回転軸を支持するブッシュとの間の片当たりが低減される。
【0024】
前記態様では、前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、前記レバーに対し、前記回転軸と前記付勢手段が付勢力を与える位置との間に、前記アクチュエータの作用点が位置するようにしてもよい。
【0025】
このようにすれば、バルブフラップの回転軸周りの剛性をさらに高めることができる。
【0026】
前記態様では、前記レバーの一端に錘が設けられているようにしてもよい。
【0027】
バルブフラップが受ける変動荷重はエンジンの回転数と相関がある。また、上記付勢手段によるバルブフラップの回転角変動の抑制効果は、バルブフラップの回転軸周りの固有振動数よりもバルブフラップが受ける変動荷重の周波数が小さい場合に多く現れる。本構成では、レバーの一端、すなわち上端側または下端側のいずれか一方に錘を追加することにより、バルブフラップの回転軸周りの剛性を維持して、固有振動数を低減することができる。その結果、より低いエンジンの回転数で高い摩耗低減降下が得られる。錘はレバーと一体であっても別体であってもよい。
【0028】
また、本発明の第7態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、エンジントルクが大きい条件下で、且つガスの圧力変動の周波数がバルブフラップの回転軸周りの固有振動数よりも小さい場合に、バルブフラップを全閉に制御する制御部を備えたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0029】
より詳細には、制御部にはエンジントルク及びガス圧が入力され、これらの値に応じてバルブフラップを開閉するアクチュエータを制御する。エンジントルクはガス圧から判断しても良い。ガス圧の変動は、エンジン回転数から判定することもできる。制御部は、ガス圧変動が固有値を超えたところでバルブフラップを開とすることができる。
エンジントルクが大きい条件では、ガスの圧力変動が大きくなり、このためバルブフラップが受ける荷重変動が大きくなる。またバルブフラップの回転軸周りの固有振動数と変動荷重の周波数が一致すると、共振により摩耗の増加、バルブフラップの破損などの可能性が増す。本構成では、バルブフラップが受ける変動荷重の周波数が固有振動数以下となる場合にはバルブフラップを全閉で維持する。これにより、この共振の発生が回避されるとともに、高い摩耗低減降下が得られる。
【0030】
また、本発明の第8態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップは錘を備えたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0031】
すなわち、従来よりもバルブフラップが重くなるように構成する。バルブフラップは通常ガタを持って組み付けられている。本構成では、バルブフラップの重量を増加させることでバルブフラップの移動速度を抑制して衝撃荷重を低減する。錘はレバーと一体であっても別体であってもよい。また一体型として肉厚を増加させることで、バルブフラップの強度が増加し、破損などのリスクが低減する。
【0032】
前記第6態様では、前記付勢手段は重ね板バネである構成にしてもよい。
【0033】
重ね板バネは減衰性が高く、バルブフラップが受ける変動荷重の位相と回転軸周りの回転角変動の位相がずれ、回転角変動が抑制される。
【0034】
前記第6態様または前記構成では、前記付勢手段の弾性力を減衰させる減衰手段を備えていてもよい。
【0035】
バネの減衰性が高く、バルブフラップが受ける変動荷重の位相と回転軸周りの回転角変動の位相がずれ、回転角変動が抑制される。減衰手段としては、ゴム、樹脂等を採用できる。
【0036】
また、本発明の第9態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、前記レバーに対して、前記回転軸を挟んで前記アクチュエータの作用点と逆側に前記バルブフラップが設けられたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0037】
本態様では、バルブフラップが受ける荷重の方向とアクチュエータの作用点(ジョイント)がレバーに及ぼす荷重の方向とが略一致するため、回転軸と回転軸を支持するブッシュとの片当たりが低減される。
【0038】
前記態様では、前記バルブフラップが全閉または全閉に近い位置にある場合に該バルブフラップを開く方向に付勢する付勢手段を備えていてもよい。
【0039】
バルブフラップが絞られた状態で、バルブフラップの回転軸周りに対する剛性が増加する。したがってバルブフラップが受ける荷重が増加した場合に、荷重変動による弁の回転角変動が低減する。
【0040】
また、本発明の第10態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、前記回転軸に沿った方向で見た場合に、前記レバーに対して前記バルブフラップと前記アクチュエータの作用点が同じ側に位置しているターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0041】
本態様によれば、レバーにおけるアクチュエータの作用点(すなわちアクチュエータのジョイント接触点)とバルブフラップとの位置が近づくことにより、オーバーハングが低減し、ブッシュと回転軸との片当たりが低減する。
【0042】
また、本発明の第11態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、ブッシュと、該ブッシュを支持する固定側部材とを備え、前記ブッシュ長手方向の少なくとも一端部には、前記ブッシュと前記固定側部材の少なくとも一方側に、前記ブッシュが前記固定側部材に接触する接触面積を拡大させる接触面積拡大部を備えたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0043】
本態様によれば、ブッシュのエッジ部近傍で回転軸とブッシュとの接触面積が拡大するため、摩耗深さを低減できる。接触面積拡大部としては、面取り形状、R形状等である。
【0044】
前記態様では、前記ブッシュを支持する固定側部材を備え、該ブッシュ長手方向の少なくとも一端部には、前記ブッシュと前記固定側部材との間に隙間が形成されていてもよい。
【0045】
このようにブッシュ背面に隙間が形成されていることにより、ブッシュのエッジ部近傍で固定側部材(ハウジング等)との接触面積を拡大できる。
【0046】
また、本発明の第12態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、先端が前記バルブフラップを支持するとともに基端側が回動自在に支持された腕を備え、該腕と前記バルブフラップとの間に、弾性体を備えたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0047】
通常、バルブフラップの密着性を上げるために、バルブフラップはガタを持って腕と組み付けられている。ここには隙間が形成されるためにガスの圧力変動が作用するとバルブフラップと腕とが衝突する。その際に大きな衝撃荷重が発生すると、回転軸角変動も大きくなる。本構成ではバルブフラップと腕との間に弾性体が介在しているため、回転角変動が抑えられる。
【0048】
また、本発明の第13態様は、タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、先端が前記バルブフラップを支持するとともに基端側が回動自在に支持された腕を備え、該腕と前記バルブフラップとの間に、高減衰性材料を備えたターボチャージャの排気バイパス弁を提供する。
【0049】
通常、バルブフラップの密着性を上げるために、バルブフラップはガタを持って腕と組み付けられている。ここには隙間が形成されるためにガスの圧力変動が作用するとバルブフラップと腕とが衝突する。その際に大きな衝撃荷重が発生すると、回転軸角変動も大きくなる。本構成ではバルブフラップと腕との間に高減衰性材料が介在しているため、回転角変動が抑えられる。
【発明の効果】
【0050】
本発明のターボチャージャの排気バイパス弁によれば、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
[第1実施形態]
図1に本発明の第1実施形態に係る排気バイパス弁1を示した。また、図2は排気バイパス弁1の一部を破断した上面図である。図示の排気バイパス弁1は、隔壁2により隔てられたタービン入口側流路3とタービン出口側流路4とが、短絡流路5により短絡される構成となっている。排気バイパス弁1は、短絡流路5に対して蓋をするように被うバルブフラップ6を備える。バルブフラップ6は腕6aにより片持ち支持され、腕6aはシャフト7を回動中心として支持されている。シャフト7にはまたレバー8の一端が固定されており、レバー8の他端側がアクチュエータ9によって駆動されることで開閉する。シャフト7はブッシュ13により回動自在に支持されており、ブッシュ13はハウジング(固定側部材)14に対して嵌合されている。図1の紙面の手前から奥に向かって、アクチュエータ9,レバー8,バルブフラップ6が並んでいる。また、バルブフラップ6と腕6aとの間には回り止めが施されている。
【0052】
アクチュエータ9はレバー8に回動自在に固定され、アクチュエータ9の駆動力をレバー8に伝達する作用点としてのジョイント9aと、ジョイント9aをアクチュエータ本体9bから離間接近させるシャフト9cとを備える。ジョイント9aはピン9dを介してレバー8の一側面に回動自在に固定されている。アクチュエータ9のシャフト9cが伸張すると、レバー8がシャフト7を回転軸としてタービン入口側流路3から離間する方向に移動し、それに伴ってシャフト7に固定されたバルブフラップ6も同様にシャフト7を回転軸としてタービン入口側流路3から離間する方向へ移動し、短絡流路5が開いてタービン入口側流路3とタービン出口側流路4とが連通する。アクチュエータ9のシャフト9cが収縮すると、レバー8がシャフト7を揺動中心としてタービン入口側流路3方向へ移動し、それに伴ってシャフト7に固定されたバルブフラップ6も同様にタービン入口側流路3方向へ移動し、短絡流路5が閉じる。閉じた状態では、バルブフラップ6の封止面6bが隔壁2側面と密着することで短絡流路5が閉塞される。
【0053】
隔壁2の短絡流路5周壁は、そのタービン出口側流路4側かつシャフト7の回転中心から遠い側の縁部に、テーパ部10を備える。すなわち、タービン入口側流路3側からタービン出口側流路4側に向けて、短絡流路5の流路断面積が徐々に拡大するように、短絡流路5の周壁角部に面取り加工が施された状態となっている。これにより、テーパ部10とバルブフラップ6との間にタービン入口側流路3からタービン出口側流路4へ短絡するガス流を加速させる圧力低下領域11が形成される。
【0054】
本構成により、排気バイパス弁1の開度を絞った場合、タービン入口側流路3からタービン出口側流路4へ流れる排ガスは、圧力低下領域11を通過する際に圧力が低下する。その結果、従来と比較し、バルブフラップ6への作用力、特にモーメントが低減する。したがって、結果的に排気ガスの圧力変動時に生じる作用力の変動幅も低減させることができる。これにより、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。
【0055】
また、図3に示したように、短絡流路5と対向するバルブフラップ6の封止面6bにテーパ部12を設けても良い。すなわち、バルブフラップは通常平面であるが、本変形例のバルブフラップ6には、シャフト7の回転中心から遠い側に、短絡流路5と対向する面の角が面取り状態とされたテーパ部12を備えている。これにより、上記と同様に、テーパ部10及びテーパ部12により圧力低下領域11が形成され、同様の効果を得ることができる。
なお、図4に示したように、通常円形のバルブフラップ6を四角形に形成しても良い。
【0056】
[第2実施形態]
図5に本発明の第2実施形態に係る排気バイパス弁21を示した。なお、バルブフラップ6等の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であり、同様の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態においては、隔壁22により隔てられたタービン入口側流路3とタービン出口側流路4とが、短絡流路25により短絡された構成となっている。
【0057】
短絡流路25は、タービン入口側流路3からタービン出口側流路4に向けて、シャフト7の回転軸中心側に近づくように傾斜している。これにより、シャフト7に近い側における短絡流路25のタービン出口側流路4周壁縁部に圧力増加領域30が形成される。
【0058】
本構成によれば、短絡流路25がバルブフラップ6のシャフト回転中心方向に傾斜していることで、バルブフラップ6のシャフト回転中心に近い側に圧力の高い領域(圧力増加領域30)が発生するため、バルブフラップ6を回転させるモーメントを低減させることができる。したがって排気ガスの圧力変動時に生じる作用力の変動幅も低減させることができ、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。
【0059】
なお、図6に示したように、短絡流路25に対して上記実施形態のテーパ部10を組み合わせても良い。すなわち、本変形例では、短絡流路25のタービン出口側流路4側開口部であってシャフト7から遠い側の縁部にテーパ部10が形成されており、テーパ部10により圧力低下領域11が形成される。
【0060】
[第3実施形態]
図7に本発明の第3実施形態に係る排気バイパス弁31を示した。なお、バルブフラップ6等の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であり、同様の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態においては、隔壁32により隔てられたタービン入口側流路3とタービン出口側流路4とが、短絡流路35により短絡された構成となっている。
【0061】
タービン入口側流路3は、排気バイパス弁31近傍において排気バイパス弁31のバルブフラップ6の封止面6bと略平行であり、短絡流路35はタービン入口側流路3から分岐してタービン出口側流路4に短絡している。短絡流路35はタービン入口側流路3の流れから戻る向きに傾斜している。すなわちガスは90度を超えて流れ方向を転回してタービン入口側流路3から短絡流路35へ流入する。
【0062】
本構成によれば、短絡流路35にタービン入口側流路3の流れ方向から戻る方向の傾斜をつけることにより、隔壁32内の短絡流路35に及ぶ動圧を低減することができるため、バルブフラップ6に作用する変動荷重を低減することができる。したがって排気ガスの圧力変動時に生じる作用力の変動幅も低減させることができ、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。
【0063】
[第4実施形態]
図8に本発明の第4実施形態に係る排気バイパス弁41を示した。なお、バルブフラップ6等の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であり、同様の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0064】
本実施形態においては、隔壁42により隔てられたタービン入口側流路3とタービン出口側流路4とが、短絡流路45により短絡された構成となっている。タービン入口側流路3は、排気バイパス弁41近傍において排気バイパス弁41のバルブフラップ6封止面6bと略平行であり、短絡流路45はタービン入口側流路3から分岐してタービン出口側流路4に短絡している。タービン入口側流路3には、短絡流路45へ分岐する上流側の角に、タービン入口側流路3の流路断面積を絞るようにタービン入口側流路3の流路中心側に向けて張り出す突起49が設けられている。
【0065】
本構成によれば、タービン入口からタービンに入る主流の流れに対し、突起49により流路が絞られていることにより、流速が加速し、主流の動圧が増加する。その結果、隔壁42に設けられた短絡流路45に静圧が及ぶようになり、バルブフラップ6に作用する圧力の変動を抑制することができる。したがって排気ガスの圧力変動時に生じる作用力の変動幅も低減させることができ、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。
【0066】
また、図9に示したように、突起49の代わりにタービン入口側流路3と短絡流路45の両方に向けて張り出す突起49’を設けても良い。すなわち、突起49’は、短絡流路45へ分岐する上流側の角に、短絡流路45とタービン入口側流路3の両方の流路断面積を絞るように、タービン入口側流路3の内側かつ短絡流路45内側に向けた斜め方向に突出する。
本変形例によっても、上記と同様突起49’により流路が絞られていることにより、流速が加速し、主流の動圧が増加する。その結果、隔壁42に設けられた短絡流路45に静圧が及ぶようになり、バルブフラップ6に作用する圧力の変動を抑制することができる。さらに図のように短絡流路45内のガス流れがシャフト7の回転中心に近い側を向くことで、高い圧力が生じる位置をシャフト回転中心に近い側に寄せることができ、圧力変動の低減とモーメントの低減の両方を達成できる。
【0067】
[第5実施形態]
図10に本発明の第5実施形態に係る排気バイパス弁51を示した。
なお、バルブフラップ6等の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であり、同様の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0068】
本実施形態の排気バイパス弁51では、レバー8と隔壁2との間に、バネ(付勢手段)52が設けられている。バネ52の一端はレバー8に接触し、他端は固定側(ハウジング)のバネ受け53に固定されている。レバー8長手方向に沿って、シャフト7,バネ52の接触位置、アクチュエータ9先端のジョイント9aがこの順で並んでいる。
図10に示した開状態では、バネ52は伸張した状態であり、図11のようにバルブフラップ6を全閉近くに絞ると、バネ52が収縮してバルブフラップ6を開く方向に付勢する。
【0069】
バルブフラップ6が受ける荷重が増加した場合、バネ52の付勢力によってバルブフラップ6のシャフト7回りの回転に対する剛性が増加することで、荷重変動によるバルブフラップ6の回転角変動を低減することができる。その結果、シャフト7とシャフト7を支持するブッシュ13との間での滑り距離が低減し、摩耗を防止することができる。また、バルブフラップ6がガスから受ける荷重の方向とバネ52からレバー8が受ける荷重の方向がほぼ一致しているため、シャフト7とブッシュ13の間の片当たりを低減できる。すなわち、図12(1)に示したようにバネがない場合にはアクチュエータ9により引く力とガス圧の方向とが逆であるため、ブッシュ13内でシャフト7が傾く方向に力が作用する。本実施形態では図12(2)に示したようにバネ52による付勢力によりこの傾き方向の力が低減する。
【0070】
なお、バネ52としては弾性体であればいかなるものでも良い。例えば板バネでも良い。
【0071】
[第6実施形態]
図13に本発明の第6実施形態に係る排気バイパス弁61を示した。図示の排気バイパス弁61は、上記第5実施形態と比較し、バネの位置が異なるものである。すなわち、本実施形態においては、上記レバー8(第1実施形態参照)と比較して長いレバー62を有し、レバー62と隔壁2との間には、バネ(付勢手段)63が設けられている。バネ63の一端はレバー62に接触し、他端は固定側(ハウジング)のバネ受け64に固定されている。レバー62上で、シャフト7,アクチュエータ9先端のジョイント9a、バネ63の接触位置、がこの順で並んでいる。図13に示した開状態では、バネ63は伸張し、図14に示したようにバルブフラップ6を全閉近くに絞ると、バネ63は収縮してバルブフラップ6を開く方向に付勢する。
他の構成については上記第5実施形態と同様であり、同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
バルブフラップ6が受ける荷重が増加した場合、バネ63の付勢力によってバルブフラップ6のシャフト7周り回転に対する剛性が増加することで、荷重変動によるバルブフラップ6の回転角変動を低減することができる。特に上記第5実施形態と比較し、バルブフラップ6のシャフト7周りの剛性を高めることができる。その結果、シャフト7とシャフト7を支持するブッシュ13との間での滑り距離が低減し、摩耗を防止することができる。また、バルブフラップ6がガスから受ける荷重の方向とバネ63からレバー8が受ける荷重の方向がほぼ一致しているため、シャフト7とブッシュ13の間の片当たりを低減できる。
【0073】
なお、上記第5実施形態と同様、バネ63としては弾性体であればいかなるものでも良い。例えば板バネでも良い。
【0074】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係る排気バイパス弁について図15を参照して説明する。本実施形態は上記第5または第6実施形態に対し、レバーに質量(錘)を追加した構成である。以下においては、第5実施形態に質量を追加した場合について説明する。なお、第5実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図15に示した排気バイパス弁71は、上記レバー8(第5実施形態参照)と比較して長いレバー72を有し、レバー72の下端には質量(錘)73が固定されている。すなわち、レバー72長手方向に沿って、下から質量73,シャフト7,バネ52の接触位置、がこの順で並んでいる。
【0076】
バルブフラップ6が受ける変動荷重は、エンジンの回転数と相関がある。また、バルブフラップ6の回転角度変動の抑制効果は、バルブフラップ6のシャフト7周りの固有振動数よりバルブフラップ6が受ける変動荷重の周波数が小さい場合に大きく現れる。本実施形態では、レバー72に質量73を追加することにより、バルブフラップ6のシャフト周りの剛性を維持して、固有振動数を低減することができる。この結果、より低いエンジン回転数から高い摩耗低減効果を得ることができる。
【0077】
なお、図16に示したように、レバー72の上端に質量73を設けても同様の効果を得ることができる。
【0078】
[第8実施形態]
本実施形態の排気バイパス弁の制御構成図を図17に示した。なお、全体の構成は上記第1実施形態と同様であり、同様の構成には同一の符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態においては、アクチュエータ9を制御する制御部80を備え、制御部80には、エンジントルク検出センサ81及びガス圧検出センサ82の出力が与えられる。制御部80は、エンジントルクが大きい条件下で、且つガスの圧力変動の周波数がバルブフラップ6の回転軸周りの固有振動数よりも小さい場合に、バルブフラップ6を全閉に制御する。制御部80は、ガス圧変動が固有値を超えたところでバルブフラップ6を開とする。
【0079】
エンジントルクが大きい条件では、ガスの圧力変動が大きくなるため、バルブフラップ6が受ける荷重変動が大きくなる。また、バルブフラップ6のシャフト7周りの固有振動数と変動荷重の周波数が一致すると、共振により摩耗の増加、弁の破損などのリスクが増す。この共振の発生を回避するため、および摩耗低減効果を高めるために、制御部80は、バルブフラップ6が受ける変動荷重の周波数が固有振動数以下になる場合には弁を全閉で維持し、固有振動数を超え共振のリスクがなくなった場合に弁を開くように制御する。その結果、摩耗の低減、弁破損の回避を達成できる。
【0080】
なお、エンジントルクはガス圧から判断しても良い。ガス圧の変動は、エンジン回転数から判定することもできる。
【0081】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態に係る排気バイパス弁について図18を参照して説明する。本実施形態は上記第5または第6実施形態に対して変形を加えたものである。以下においては、第5実施形態に質量を追加した場合について説明する。なお、第5実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0082】
図18に示した本実施形態の排気バイパス弁91は、バルブフラップ6(第5実施形態参照)と比較して肉厚が厚く質量が大きいバルブフラップ96を備える。すなわちバルブフラップ96は錘を内包した構成となっている。
【0083】
バルブフラップ96と腕6aとは、通常ガタを持って組み立てられている。そのため、レバー8の動きを抑制するようにバネ(第5実施形態におけるバネ52等)などを追加すると、荷重変動にともなうバルブフラップ96と腕6aとの間の衝撃荷重が増加する可能性がある。本実施形態では、バルブフラップ96の質量を増すことで、移動速度を抑制して衝撃荷重を低減することができる。したがって、回転角変動が抑えられ、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。また、バルブフラップ96の肉厚を増すことで、バルブフラップ96の強度が増加し、破損などのリスクが低減する。
【0084】
[第10実施形態]
次に、本発明の第10実施形態に係る排気バイパス弁について図19を参照して説明する。本実施形態は上記第5乃至第9実施形態に対して変形を加えたものである。以下においては、第5実施形態に対し変形を加えた例について説明する。なお、第5実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
本実施形態では、上記第5実施形態におけるバネ52の代わりに、重ね板バネを用いる。
図19(1)及び同図のA−A線に沿った断面図である図19(2)に示したように、本実施形態の排気バイパス弁101では、バネ52の代わりに重ね板バネ102が用いられる。重ね板バネ102は、レバー8とバネ受け53との間に配置され、一側がレバー8に接し、他側がバネ受け53に固定されている。
【0086】
本例では、バネの減衰性を高めることで、バルブフラップ6が受ける変動荷重の位相と弁のシャフト7周りの回転角変動の位相をずらして、回転角変動を抑制する。その結果、摩耗の低減効果を高めることができる。
【0087】
また、図20(1)及び同図のB−B線に沿った断面図である図20(2)に示したように、バネ52の両端に減衰性の高い材料(ゴム、樹脂など)のシート(減衰手段)103を挟むようにしても良い。なお、バネ52の代わりに板バネを使用しても良い。
【0088】
これにより、バネ52の減衰性が高まり、回転角変動をより効果的に抑制することができ、高い摩耗の低減効果を得ることができる。
【0089】
[第11実施形態]
図21に本発明の第11実施形態に係る排気バイパス弁111を示した。
なお、バルブフラップ6等の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であり、同様の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
排気バイパス弁111は、レバー8とバルブフラップ6の腕6aとがなす角が鈍角、特に略直線状に沿って配置されている。
【0090】
これにより、バルブフラップ6が受ける荷重の方向とジョイント9aがレバー8に及ぼす荷重の方向が略一致するため、シャフト7とシャフト7を支持するブッシュの片当たりを低減することができる。すなわち、図22に示したように、アクチュエータ9により閉じようとする力と、バルブフラップ6に作用するガス圧とが同じ方向であるため、シャフト7を傾ける方向に作用する力(図12(1)参照)が発生しない。したがって、回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。
【0091】
さらに、上記第5実施形態と同様にバネ52を設けても良い。本バネ52は、レバー8に対してアクチュエータ9とは逆側に配置され、バルブフラップ6が絞られた場合に弁を開ける方向に付勢するものである。これにより、バルブフラップ6が受ける荷重が増加した場合、バネ52の付勢力によってバルブフラップ6のシャフト7回りの回転に対する剛性が増加することで、荷重変動によるバルブフラップ6の回転角変動を低減することができる。
【0092】
[第12実施形態]
図23に本発明の第12実施形態に係る排気バイパス弁121を示した。本実施形態は上記第5乃至第11実施形態に対して変形を加えたものである。なお、第5実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
なお、バルブフラップ6等の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であり、同様の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態では、バルブフラップ6、レバー8、及びアクチュエータ9のジョイント9aの接触位置がバルブフラップ6に近づくよう、ジョイント9aとレバー8の接続ピンがレバー8よりフラップに近い側に配置されている。
【0093】
これにより、シャフト7とブッシュ13の間で発生する片当たり荷重を低減することができる。その結果、摩耗低減効果を高めることができる。すなわち、図24に示したように、図12(1)と比較してオーバーハング(符号X1→符号X2)が低減するため、シャフト7をブッシュ13内で傾ける方向に作用する力が低減する。したがって回転軸の摩耗を低減して制御性の悪化を防止することができる。
【0094】
また、上記第1乃至第11実施形態及び上記図23の例において、シャフト7を支持するブッシュのエッジ部にテーパまたはRを設けてもよい。この場合の詳細を図25に示した。シャフト7は、ハウジング(固定側部材)124の孔125に嵌合した略円筒状のブッシュ126を介して回転自在に支持されている。ブッシュ126は、孔125の一側開口縁部を被うフランジ127と、シャフト7が挿入される貫通孔128と、を有する。さらにブッシュ126の貫通孔128の両端開口縁部に、それぞれ面取り部129が形成されている。
【0095】
図26は面取り部129の代わりにR部130が形成された例である。また、図27はブッシュ126の外周壁と、ハウジング124の壁部との間であってブッシュ126の両端部に位置してそれぞれ隙間部131が形成されている。隙間部131はハウジング124の壁部が削られていることにより形成されている。
【0096】
上記各図に示したように、面取り部129,R部130,隙間部131を形成することにより、エッジ部近傍での接触面積が拡大し、その結果摩耗深さを低減でき、摩耗発生によるガタの増加を抑制することができる。
【0097】
なお、ブッシュ126は、図28のようにフランジ127を備えていなくても良い。
【0098】
[第13実施形態]
次に、本発明の第13実施形態に係る排気バイパス弁140について図29を参照して説明する。なお、バルブフラップ6等の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であり、同様の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
図29に示したように、排気バイパス弁140はバルブフラップ6と腕6aとの間にバネ(弾性体)141が挟み込まれた状態となっている。バネの代わりに高減衰性材料のシートを使用しても良い。
【0099】
通常、バルブフラップ6と隔壁2との密着性を上げるため、バルブフラップ6はガタを持って腕6aと組み立てられているが、隙間があるためガスの圧力変動が作用するとバルブフラップ6と腕6aとが衝突する。その際には大きな衝撃荷重が発生する場合があり、シャフト7の回転角変動も大きくなる。本実施形態では、バネ141が設けられていることにより、回転角変動が抑えられ、摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図2】同排気バイパス弁の上面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る排気バイパス弁の変形例について示した断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る排気バイパス弁の変形例について示した正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る排気バイパス弁の変形例について示した断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る排気バイパス弁の変形例について示した断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る排気バイパス弁について示した図であり、バルブフラップが開いた状態を示した断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る排気バイパス弁について示した図であり、バルブフラップが閉じた状態を示した断面図である。
【図12】(1)比較例として示した排気バイパス弁上面図である。(2)本実施形態の排気バイパス弁上面図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係る排気バイパス弁について示した図であり、バルブフラップが開いた状態を示した断面図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係る排気バイパス弁について示した図であり、バルブフラップが閉じた状態を示した断面図である。
【図15】本発明の第7実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図16】本発明の第7実施形態に係る排気バイパス弁の変形例について示した断面図である。
【図17】本発明の第8実施形態に係る排気バイパス弁の制御部概略構成図である。
【図18】本発明の第9実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図19】本発明の第10実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図20】本発明の第10実施形態に係る排気バイパス弁の変形例について示した断面図である。
【図21】本発明の第11実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図22】同排気バイパス弁上面図である。
【図23】本発明の第12実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図24】同排気バイパス弁上面図である。
【図25】本発明の第12実施形態に係り、排気バイパス弁のバルブフラップを回動自在に支持する軸受部について示した断面図である。
【図26】本発明の第12実施形態に係り、排気バイパス弁のバルブフラップを回動自在に支持する軸受部について示した断面図である。
【図27】本発明の第12実施形態に係り、排気バイパス弁のバルブフラップを回動自在に支持する軸受部について示した断面図である。
【図28】本発明の第12実施形態に係り、排気バイパス弁のバルブフラップを回動自在に支持する軸受部について示した断面図である。
【図29】本発明の第13実施形態に係る排気バイパス弁について示した断面図である。
【図30】従来の排気バイパス弁について示した図であり、バルブフラップが閉じた状態を示した断面図である。
【図31】従来の排気バイパス弁について示した図であり、バルブフラップが開いた状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 排気バイパス弁
2 隔壁
3 タービン入口側流路
4 タービン出口側流路
5 短絡流路
6 バルブフラップ
6a 腕
6b 封止面
7 シャフト
8 レバー
9 アクチュエータ
9a ジョイント
9b アクチュエータ本体
9c シャフト
9d ピン
10 テーパ部
11 圧力低下領域
12 テーパ部
13 ブッシュ
14 ハウジング(固定側部材)
21 排気バイパス弁
22 隔壁
25 短絡流路
30 圧力増加領域
31 排気バイパス弁
32 隔壁
35 短絡流路
41 排気バイパス弁
42 隔壁
45 短絡流路
49 突起
49’ 突起
51 排気バイパス弁
52 バネ(付勢手段)
53 バネ受け
61 排気バイパス弁
62 レバー
63 バネ(付勢手段)
64 バネ受け
71 排気バイパス弁
72 レバー
73 質量(錘)
80 制御部
81 エンジントルク検出センサ
82 ガス圧検出センサ
91 排気バイパス弁
96 バルブフラップ
101 排気バイパス弁
102 重ね板バネ
103 シート(減衰手段)
111 排気バイパス弁
121 排気バイパス弁
124 ハウジング(固定側部材)
125 孔
126 ブッシュ
127 フランジ
128 貫通孔
129 面取り部
130 R部
131 隙間部
140 排気バイパス弁
141 バネ(弾性体)
201 排気バイパス弁
202 隔壁
203 タービン入口側流路
204 タービン出口側流路
205 短絡流路
206 バルブフラップ
206a 腕
206b 封止面
207 シャフト
208 レバー
209 アクチュエータ
209a シャフト
X1 オーバーハング
X2 オーバーハング



【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップはその片側を回転中心側として回動自在に支持され、同他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、前記バルブフラップと対向する前記短絡流路の開口縁部、または該短絡流路と対向する前記バルブフラップ側面の少なくとも一方は、前記他側縁部にテーパ部を備えた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項2】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップは片側を回転中心側として、同他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、前記短絡流路は、前記タービン入口側流路から前記バルブフラップの回転中心側縁部に向けて設けられている、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項3】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップは片側を回転中心側として、同他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、前記短絡流路は、前記タービン入口側流路におけるガスの流れ方向から戻る方向に同ガスを導く、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項4】
前記バルブフラップと対向する前記短絡流路の開口縁部、または該短絡流路と対向する前記バルブフラップ側面の少なくとも一方は、前記他側縁部にテーパ部を備えた、請求項3に記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項5】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記タービン入口側流路から前記短絡流路に分岐する分岐部の上流側の角に、前記タービン入口側流路内側に向けて突出する突起が設けられた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項6】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップは前記タービン入口側流路の上流側を回転中心側として、他側が前記短絡流路から離間接近して該短絡流路が開閉され、
前記タービン入口側流路から前記短絡流路に分岐する分岐部の上流側の角に、前記タービン入口側流路の内側と前記短絡流路の内側との両方に向けて突出する突起が設けられた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項7】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップが全閉または全閉に近い位置にある場合に該バルブフラップを開く方向に付勢する付勢手段を備えた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項8】
前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、
前記レバーに対し、前記回転軸とアクチュエータの作用点との間に、前記付勢手段によって付勢力が与えられる、請求項7に記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項9】
前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、
前記レバーに対し、前記回転軸と前記付勢手段が付勢力を与える位置との間に、前記アクチュエータの作用点が位置する、請求項7に記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項10】
前記レバーの一端に錘が設けられている、請求項7から9のいずれかに記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項11】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
エンジントルクが大きい条件下で、且つガスの圧力変動の周波数が前記バルブフラップの回転軸周りの固有振動数よりも小さい場合に、前記バルブフラップを全閉に制御する制御部を備えた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項12】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップは錘を備えた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項13】
前記付勢手段は重ね板バネである、請求項7から10のいずれかに記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項14】
前記付勢手段の弾性力を減衰させる減衰手段を備えた、請求項7から10のいずれかまたは請求項13に記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項15】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、
前記レバーに対して、前記回転軸を挟んで前記アクチュエータの作用点と逆側に前記バルブフラップが設けられた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項16】
前記バルブフラップが全閉または全閉に近い位置にある場合に該バルブフラップを開く方向に付勢する付勢手段を備えた、請求項15に記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項17】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップの回転軸に固定されたレバーと、該レバーに駆動力を作用して該レバーを前記回転軸周りに回動させることで前記バルブフラップを開閉させるアクチュエータとを備え、
前記回転軸に沿った方向で見た場合に、前記レバーに対して前記バルブフラップと前記アクチュエータの作用点が同じ側に位置している、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項18】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
前記バルブフラップの回転軸を軸支するブッシュを備え、該ブッシュ長手方向の少なくとも一端部には、前記回転軸に接触する接触面積を拡大させる接触面積拡大部を備えた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項19】
前記ブッシュを支持する固定側部材を備え、該ブッシュ長手方向の少なくとも一端部には、前記ブッシュと前記固定側部材との間に隙間が形成されている、請求項18に記載のターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項20】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
先端が前記バルブフラップを支持するとともに基端側が回動自在に支持された腕を備え、該腕と前記バルブフラップとの間に、弾性体を備えた、ターボチャージャの排気バイパス弁。
【請求項21】
タービン入口側流路とタービン出口側流路を連通する短絡流路と、この短絡流路を開閉するバルブフラップとを備え、該バルブフラップが開閉して前記タービン入口側流路を流動するガスが前記タービン出口側流路へ短絡されるターボチャージャの排気バイパス弁であって、
先端が前記バルブフラップを支持するとともに基端側が回動自在に支持された腕を備え、該腕と前記バルブフラップとの間に、高減衰性材料を備えた、ターボチャージャの排気バイパス弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−203835(P2009−203835A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45196(P2008−45196)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】