説明

ターボチャージャ(過給器)用流量制限装置

【課題】より多くのエネルギーが、各排気プロセス期間の間回収されるターボチャージャ用流量制限装置を提供すること。
【解決手段】
本発明のターボチャージャ用流量制御装置(100)は、ターボチャージャの入口の流量を可変的に制限する可変配置の流量制限装置(102)を有する。制御装置(312)は、ターボチャージャ入口(301)のセンサ圧力(300)に基づいて流量制限装置の位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャの流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンとディーゼルの内燃機関用のターボチャージャは、従来公知の装置である。ターボチャージャは、吸引した空気流を圧縮しエンジンの燃焼室に流す。これは、エンジンから出た排気ガスの熱と容積流を用いて、行う。具体的には、エンジンから出た排気ガスは、ターボチャージャのタービン・ハウジング内に流され、ハウジング内で排気ガス駆動タービンを回転する。この排気ガス駆動タービンは、シャフトの一端に搭載される。このシャフトは、その他端に搭載される半径方向のエアコンプレッサのシャフトと共通である。かくして、タービンの回転運動により、エアコンプレッサは、ターボチャージャのコンプレッサ・ハウジング内で回転する。このコンプレッサ・ハウジングは、排気ハウジングから分離している。エアコンプレッサの回転動作により、取り込まれた空気は、コンプレッサ・ハウジング内に入り、所望の圧力に圧縮され、その後燃料と混合され、エンジンの燃焼室内で燃焼する。
【0003】
取り込まれた空気が圧縮される量は、タービン・ハウジングを通る排気ガスの量を調整することにより制御される。この調整は、排気ゲートにより、或いはタービンにタービン・ハウジングを介して接続される排気ガスチャネル(即ち通路)を選択的に開閉することにより、行われる。このような調整可能な排気ガスチャネルを有するターボチャージャは、産業界では可変形状ターボチャージャ(Variable Geometry Turbbocharger (VGT))と称する。VGTは、通常タービン・ハウジング内で、排気ガス・ソースとタービンとの間に配置された可動部材を有する。この可動部材は、タービン・ハウジング外から適宜の駆動機構で活性化され、排気ガスからタービンへの体積流量を、その時のエンジンの動作状態(例、エンジン速度、エンジン負荷、ブースト(コンプレッサ)圧力あるいはエンジンにかかる差圧)の要求により、増減する。排気ガスをタービンに流す体積流量を増減することは、タービン・シャフトの反対側に搭載されたコンプレッサにより生成される取り込み空気圧力を、増減する。
【0004】
現在公知のVGTは、特許文献1に記載されている。VGTは、内燃機関が準備段階モードあるいは遷移動作モードのいずれかにある時に、内燃機関と共に動作する。これは、エンジン動作パラメータと称し、例えばエンジンの回転速度、一定あるいは変動する負荷である。
【0005】
従って、従来のVGTは、所定の最適設計ポイントを超えたエンジンの動作範囲に渡って、タービンの入口形状を排気ガス流の特性に合わせるので、近年では極めて一般的となっている。これによれば、固定形状のターボチャージャが最初に設計された。この結果、(特に排気ガス再循環システムと組み合わせて、)放出粒子が減少し、特に低速でのより高い圧力となり、低負荷状態となる。それ故に利用可能なトルクが増大し、エンジンの動作範囲の低速領域での加速度の向上につながる。さらに、ターボチャージャのラグ(反応遅れ)性能は、大幅に改善された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6158956号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし問題は残る。VGTは、エンジン動作状態に応じてターボチャージャの形状を変えることができるが、利用可能なエネルギの利点を全て享受している訳ではない。より多くのエネルギーが、各排気プロセス期間の間回収されると、タービンにより吸収されるエネルギーの量が増加し、それ故に、ターボチャージャは、同一のエンジン動作状態の下で、より多くのパワーを取り出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は特許請求の範囲に記載したとおりである。流量制限装置の動きは、その瞬間のエンジンの状態に依存して制御されるために、エネルギーの取り出しが改善される。さらに、往復運動するアクチュエータと流量制限装置との間に、旋回(回転)リンクを具備することにより、流量制限装置の速い応答が得られる。
本明細書において、旋回と回転は同義で使用(翻訳)している。即ち、旋回とは、360度未満の回転を意味し、回転とは360度以上の旋回を意味するからである。
【0009】
特に本発明は、排気ガス流がパルス状になる性質を考慮に入れており、従来のVGTで知られる動作ポイントの変化のみに応答するものではない。このようなエンジンの排気バルブの動作は、次のようなものである。即ち、排気プロセスの間、大量のガス質量流と圧力が、バルブが開き始めた低圧値から、バルブの開放期間の前半の前のピークに達するまで、観測できるようにする。この前半では、ガス流は、排気プロセスの開始時と同一条件にまで消失する。このように高いパルス状の流れは、直接タービンに、排気マニホールドとタービン・ハウジングを介して、送られる。本発明は、エンジンの排気パルスの周波数に等しい周波数で、タービンの形状を変えて、どのようなエンジン状態に対しても、利用可能な一定なタービン入口圧力の最大値を達成する。その結果、ターボチャージャ(大幅に変動する圧力と質量流量の高いパルス状の流体を含む)に対する実際の入口条件(圧力)が、有効に利用できる。
【0010】
本発明のACTは、実際の内燃機関に対するより正確な応答を提供できる。この応答は、空気の吸気、圧縮、燃焼、膨張、排気を伴う動作の周期的性質に合っている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、能動的制御のターボチャージャの構成要素の展開図である。
【図1B】図1Bは、ターボチャージャの構成要素の側面断面図である。
【図2】図2は、能動的制御のターボチャージャとアクチュエータの側面図である。
【図3A】図3Aは、電子制御システムのブロック図である。
【図3B】図3Bは、制御のフローチャート図である。
【図4A−C】図4A−Cは、動作状態にある能動的制御フローを表す図である。
【図5A】図5Aは、エンジンの状態(エンジン速度Neng)に応じた、VGT流量制限装置の移動量(%で表した開口面積)を表す図である。
【図5B】図5Bは、あるエンジン状態に対し、クランク角(crank angle (CA))に対する、本発明の流量制限装置の移動量(%で表した開口面積)を表す図である。
【図5C】図5Cは、クランク角CAと、排気ガス圧力Psを表すグラフである。
【図6】図6は、回転ベーンの流量制限装置部材の実施例の部品展開図である。
【図7A】図7Aは、回転ベーンの斜視図である。
【図7B】図7Bは、図7Aの回転ベーンの側面図である。
【図8】図8は、完全に開いた状態(半径方向に対し40度傾いた状態)にある回転ベーン・リングの組立体の正面図である。
【図9A】図9Aは、図8の配置位置Aにある隣接するベーンの相対位置を表す図である。
【図9B】図9Bは、図8の配置位置Bにある隣接するベーンの相対位置を表す図である。
【図10】図10は、ほぼ閉鎖状態(半径方向に対し90度傾いた状態)にある回転ベーン・リングの組立体の正面図である。
【図11A】図11Aは、図10の配置位置Cにある隣接するベーンの相対位置を表す図である。
【図11B】図11Bは、図10の配置位置Dにある隣接するベーンの相対位置を表す図である。
【図12A】図12Aは、混合流ロータを具備した状態の回転ベーン・リングを表す図である。
【図12B】図12Bは、図12Aの配置位置Eにおける隣接するベーンの側面斜視図である。
【図12C】図12Cは、図12Bの配置位置Eにおける隣接するベーンの上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によれば、可変且つ軽量の流量制限部材が、タービン・ハウジング内で、主排気ガス・ソースとタービン・ブレードとの間に配置される。流量制限部材は、タービン・ハウジング内で軸方向に配置される。流量制限部材は、回転するヨークに取り付けられ、このヨークが適宜のアクチュエータに取り付けられる。センサが具備され、入口での質量流量と圧力レベルとを監視し、流量制限部材の軸方向配置位置を測定する。この情報は、コントローラに流されて、このコントローラが、排気圧力レベルの周波数と振幅に軸方向のノズル動作の位相を合わせる。その結果、エンジンの排気バルブの開閉を考慮に入れた、内燃機関に用いられるターボチャージャのタービンの入口におけるパルス状の排気ガスの流れを能動的に制御するシステムと方法を提供できる。
【実施例】
【0013】
図1A、1Bに、本発明の装置の詳細が示されている。ターボチャージャ100は、様々な配置位置を取りうる、細い(直径1.5mm)の円筒状の流量制限装置102を有する。この流量制限装置102は、タービン渦巻き104の壁内の開口内に突出する。流量制限装置102は、その長手軸が、挿入点で、タービン渦巻き104内でガス流の方向に直交するよう、向けられる。流量制限装置102は、タービン渦巻き104内に、その長手軸に平行に移動できる適宜の長さがある。この長さは、タービン渦巻き104の断面積が、流量制限装置102が完全に引っ込んだ時に得られる断面積の17.3%になるような長さである。
【0014】
いかなる時点でも、タービン渦巻き104内に突出しない流量制限装置102の後部部分は、円筒状の同心の内側と外側にある固定ガイド106,108の間を移動するよう制限される。外側固定ガイド106は、最小のクリアランスでもって、流量制限装置102の外側直径の周囲に適合する。内側固定ガイド108は、流量制限装置102の内側と同一直径を有し、流量制限装置102の内側にきっちりと適合して、流量制限装置102がスライドする担持表面を提供する。内側ガイド108は、タービン渦巻き104の壁に取り付けられて、組立体を一体に保持する。
【0015】
タービン渦巻き104から離れ、外側端部に向かって、流量制限装置102は、半径方向に対向した、第1と第2の外側突起部116を有する。この外側突起部116により、ヨーク114の受けアーム121a、121bへの取り付けが可能となる。外側突起部116は、流量制限装置102とヨーク114との間に適合して、ヨーク114の回転(旋回)運動を、流量制限装置102の往復運動に変換するのを、補助する。
【0016】
ヨーク114は、半円形状の受けアーム121a、121bから下方向に伸びる搭載アーム123を有し、搭載アーム123と受けアーム121a、121bの結合(接合)領域の回転ピン118の周囲で、回転する。搭載アーム123は、回転ピンの下方向に向かって、1本のテーパ状レバーとして伸びる。ヨーク114の搭載アーム123は、上方の半円形部分よりも若干短く、より少ないアクチュエータの動きで、流量制限装置102に必要とされる線形移動ができるような比率を提供する。
【0017】
図1a、1b、2において、回転ピン118は、ヨーク114のネックに挿入された回転ベアリング122を貫通する。この回転ベアリング122は、ヨーク114を、タービン渦巻き104と外側固定ガイド106の両方に取り付ける。
【0018】
図2を参照すると、ヨーク114の搭載アーム123の底部部分は、断面が円形のピン200を有する。このピン200は、アクチュエータ204に連結されるレバー202を搭載する。アクチュエータ204は、電気力学的振動装置である。この振動装置が往復振動運動を提供する。この往復運動をヨーク114が回転運動に変換する。この回転運動が、流量制限部材の線形動作に変換される。この変換は、流量制限装置102の内側の外側突起部116の手段と内側固定ガイド108の軸方向のガイドにより行われる。
【0019】
装置を効果的に動作させるために、本発明は、電子制御システムを、図3Aに示すよう具備する。図3Aは、エンジン302とターボチャージャ100との間に、排気導管301を有する開放ループ制御システムを示す。従来のVGTの特徴であるコンプレッサの圧力トランデューサ306以外に、本発明のシステムは、エンジン302とターボチャージャ100のタービン渦巻き104の口との間の排気導管301に、タービン入口の圧力を瞬時に測定する圧力センサ300を有する。この圧力センサ300により測定された測定値は、エンジン制御ユニット312に送られる。このエンジン制御ユニット312が、信号を生成し、それがアクチュエータ204に送られる。アクチュエータ204は、測定された圧力に応じて、流量制限装置102を動かす。
【0020】
能動フロー制御の原理を図4A−4Cに示す。図4Aは、排気バルブ400が開放された直後で排気ガス圧力が低い状態を示す。流量制限装置102は、さらにタービン渦巻き104内に動く。これにより、排気ガスが流れる断面積402が制限されて、ガス圧を上げる。図4Bにおいて、排気バルブ400は完全に開いた状態で、排気ガス圧力はピーク状態にある。流量制限装置102は戻り、ガスが流れる断面積402がより大きくなる。これにより、既に高い入口圧力が、エンジンの動作限界を超えるのを阻止する。図4Cにおいて、排気バルブ400は閉じられ、流量制限部材406は、さらにタービン渦巻き104内に移動し圧力レベルを高い状態に維持する。入口圧力を増加させることにより、より多くの仕事がタービン・モータにより吸収され、より多くの仕事が、従来のVGTよりも各パルス・サイクル毎に行われる。
【0021】
図5Cは、走行サイクルの間の3本のシリンダに対する質量流量(m)と排気ガス圧力(Ps)の変動を示す。同図によれば、1個の排気バルブ・パルス内でパルスの開始時のガス圧力はパルスの終了時のそれと同じで、その間にピークがある。これに追従するために、流量制限部材の動きは、サイン波形の制御入力に追従し、その結果、それ自身サイン波形の動きをする。エンジン動作状態が、排気バルブ・パルスの周期の長さと必要な入口圧力を決定する。それ故に、ECUは、このエンジン動作状態を用いて、あらゆる瞬間の後のサイン波形の振幅と周波数を決定し、それを排気バルブ・パルスの位相を合わせる。いかなる圧力変動も、例えばあらゆる数のシリンダとタイミングにより引き起こされる圧力変動も、本発明の制御方式で吸収可能である。
【0022】
図5Aは、走行状態に応じたVGT流量制限装置の移動量を示す。個々のラインは、一定の空気/燃料比率(air/fuel ratio (AFR))を示し、各グラフは、1個のコンプレッサ出口あるいはエンジン入口のマニホールド(ブースト)圧力に対応し、それ自身はエンジン負荷の測量値でもある。同図から分かるように、あるAFRに対しては、VGTの開放スロート(のど)面積は、エンジン速度(Neng)と共に増加するが、あるエンジン速度に対しては一定である。図5Bは、VGTグラフの特定の点に対する、本発明の能動制御ターボチャージャ(Active Control Turbocharger (ACT))の移動量を示す。ある状態においては、最大のACT移動量は、等価の一定のVGT移動量と等しい。排気ガス圧力に関するさらに収集された情報は、クランク角に対するACT流量制限装置の余分のサイン波形変動を引き起こす、すなわち時間と共に変動する。このことは、図5Aの矢印Aから分かる。図5は、この動作ポイントにおけるACTの開放スロート面積の範囲を示す。別の構成として、流量制限装置の移動は、これらの入力に応答するためにアクチュエータのダイナミック・キャパシティに依存して、サイン波形以外の波形も採用することもあり、平均値として或いは他の適宜の変調系として、VGT値の近傍で変動してもよい。
【0023】
動作中における4個の基本的な制御ステップを図3Bに示す。第1ステップ(350)は、VGT装置に対するものと同一であり、コンプレッサの圧力(Pcompressor)が検出される。第2ステップ(352)においては、ACTの流量制限装置102は、VGTの流量制限装置がある状態(Xvgt)でとるような配置位置をとる。第3ステップ(354)は、関連変動値の測定値からの瞬時の排気ガス圧力(Pexhaust)を得る。第4ステップ(356)において、流量制限装置の配置位置は、Pexhaustに従ってXvgtに関連して変わる。しかし、以上とは異なる如何なる適宜の制御方式も採用できる。
【0024】
本発明の流量制限部材は、適宜のVGT装置を用いて実現することもできる。サイズ、重量、形状の要件により、さまざまな適宜の装置が形成できる。これらの装置は、スライドする壁、スライドする管状ピストン、回転するベーン、固定ベーンを具備するスライドする壁を含む。回転するベーン(羽根)の構成においては、一連のベーンが、タービンの周囲に配置され、タービンの周囲で、空気流がタービン・ブレードに入る開口部に、配置される。排気バルブが完全に開いて排気ガス圧力が高い時には、ベーンは、空気流に平行な方向を向いて開口を塞がないようにしている。排気ガス圧力が低く、ベーンが空気流に対し鋭角で傾いている時には、ブレードへの開口を制限し、ガス圧力を高める。
【0025】
図6−11Bは、回転ベーンのACT構成を示す。図6に示すように、ベーン・リング600は、複数のベーン(羽根)602を有し、ベーン回転ピン606の手段と回転機構ディスク608により、混合流タービン604に適合するよう構成される。ベーン回転ピン606は、軸方向アーム610(タービンの軸方向に平行な方向に伸びる)と半径方向内側向きアーム612とを有する。半径方向内側向きアーム612の先端616は、非回転動作部分に当てて、固定される。軸方向アーム610は、回転機構ディスク608の孔618に挿入される。各ベーン602は、軸方向ベーン・アーム614に取り付けられる。この軸方向ベーン・アーム614は、半径方向内側向きアーム612の先端616に搭載される。回転機構ディスク608が回転すると、ベーン回転ピン606も、固定された先端616上で回転する。これにより今度は、対応する軸方向ベーン・アーム614が、中心軸(タービンの軸方向に平行な軸)の周囲で回転し、ベーン602の方向角を変化させる。これは、図8、10、12a−12Cに示す。
【0026】
図7A、7Bに示すように、各ベーンは、混合流タービン604内で混合流量ロータに面する内側翼表面700と、それに対向する外側翼表面702とからなる。各ベーンは、チェンバを有さずに構成される。各ベーンは、上部(半径方向で最内側)から底部(半径方向で最外側)に向かって断面積が広がる張った(末広がりの)形状を有する。その結果、底部表面704の面積は、上部表面706の面積より、16.7%大きい。断面積の増加は、ベーン602の弦の長さを、入口空気流に面する一定のリーディング・エッジ708から伸ばすことにより達成できる。かくして、張った方向に対し、各ベーン602は、一定のリーディング・エッジ708幅を有し、一方、トレーリング・エッジ710は、上部表面706から底部表面704方向に、混合流ロータの方向に向かって進む。これにより、ベーン602に、くさび形状トレーリング・エッジ710が形成できる。
【0027】
この実施例によれば、ベーン・リング600は、62mmの半径方向の環状リング領域内に等間隔に配置された15枚のベーン602を具備する。図8−11Bに示すように、このベーン・リング600の組み立てにより、ベーン・リング600の軸方向の回転が、完全開放状態から閉鎖状態まで可能となる。完全開放状態では、ベーン602の外側翼表面702の面は、半径方向から40度の方向を向き、閉鎖状態では80度の方向を向いている。ここに示す実施例の最適の角度範囲は、40−80度であるが、ある実施例では、最適の角度範囲は、入力状態に依存する。例えばタービンからエンジンに供給されるエネルギー量に依存する。一般的に、ターボチャージャは、ベーンが半径に対し60度と70度の間傾いている時が、最も効率的である。
【0028】
図12A−12Cに示すように、ベーン・リング600は、タービン渦巻き104内で混合流ロータ1202の上流側に配置される。その結果、混合流ロータ1202のブレード1204に到達するために、排気ガスが、ベーン602の間のギャップ1206を通るようにしなければならない。排気バルブ・サイクルの排気バルブが開いた直後で排気ガス圧力が低い時には、回転機構ディスク608が回転し、半径に対する角度が高く、排気ガスが流れるギャップ1206が制限され、これによりガス圧が上がる。逆に、排気バルブが完全に開いた状態で排気ガス圧力がそのピークにある時には、角度は小さく、隣接するベーン602間のギャップ1206は、より大きな断面積を提供し、その間をガスが流れる。これにより、高い入口圧力がエンジンの動作限界を超えることがない。
【0029】
各ベーン602は傾斜して、混合流ロータ1202のリーディング・エッジに適合している。この傾斜角(混合流タービン604の面に対し)は、混合流ロータ1202のコーン(円錐台)角に等しい。図7Bに示す実施例においては、混合流ロータ1202のコーン角は50°であり、従って傾斜角は40°である。これにより、ベーン・ノズルの方向は、混合流ロータ1202のリーディング・エッジの方向に正確に向いている。
【0030】
VGTをACTに改造できるが、これは、流量制限装置を追加することによりあるいは適宜の制御システムを追加することにより、可能である。
【0031】
使用される制御システムは、さまざまな方法で変更可能である。例えば圧力センサ300を、エンジン302とタービン渦巻き104の間で、排気マニホールド内あるいはタービン内の排気導管301内に配置することも可能で、これにより、タービンの瞬間入口圧力を表す変化を検出する。例えば、質量流量(mass flow rate)である。別の構成として、排気バルブ開放期間の間で、流量制限装置102を活性化することも可能である。この操作は、ECUに、カムシャフトの回転に基づいて、別の排気バルブの開閉からのタイミング信号を送信することにより行われる。流量制限装置102のサイン波形の動きの振幅を決定するために、この方法は、圧力センサ300の使用あるいは以前使用されたシステムの校正のいずれかを必要とする。
【0032】
さらに装置を追加して、本発明の制御システムをより高級化することができる。追加される装置は、例えば、エンジンにかかる差圧を測定するセンサ、図3aに示すLVDT(線形変形可能な差分トランスフォーマ(Linear Variable Differential Transformer))の流量制限装置の配置位置トランデューサ304である。これにより、ACTの閉鎖ループ・フィードバック制御が可能となる。可能な制御フローを表すフローチャートを図3Bに示す。
【0033】
上記の装置および構成要素は、適宜の材料および適宜の方法により形成することができる。例えば、外側ガイド、内側ガイド、ヨークは、アルミ合金6082−T6から形成することができる。流量制限装置は、軽量材料、例えばカーボンファイバの強化プラスチックから形成できる。
【0034】
VGTに対する本発明の利点は、流量面積は、駆動サイクルを通していつでも、最適化可能であり、安定した正圧力がタービン内で、あるエンジン状態に対し得られる。これは、各ガス・パルスのエネルギーを利用し、タービンからの高い平均パワーが得られることになる。流量制限装置は、タービン入口で一定の最大圧力を形成し、これは、タービンの回転運動の特性に利点を与える。本発明の方法の利点は、燃費を改善し、パワー出力を高め、さらに排気ガスを改善し、トルクとその遅れを改善する。さらに、本発明の構成要素は、疲労強度が大きく、軽量である。これにより、少なくとも60Hz、例えば20−80Hzの領域におけるアクチュエータ入力の高速応答を可能とし、ダンピングを回転ヨークにより提供できる。
【0035】
上記の説明は、車のエンジンに使用される能動制御流のターボチャージャの使用を例に説明したが、特性サイクルで動作する如何なるエンジンと組み合わせて、ACTを使用することができる。
【0036】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【符号の説明】
【0037】
100 ターボチャージャ
102 流量制限部材
104 タービン渦巻き
106 外側ガイド
108 内側ガイド
114 ヨーク
116 外側突起部
118 回転ピン
121 受けアーム
122 回転ベアリング
123 搭載アーム
200 ピン
202 レバー
204 アクチュエータ
300 圧力センサ
301 排気導管
302 エンジン
304 配置位置トランデューサ
306 圧力トランデューサ
312 エンジン制御ユニット
400 排気バルブ
402 断面積
406 流量制限部材
600 ベーン・リング
602 ベーン(羽根)
604 混合流タービン
606 ベーン回転ピン
608 回転機構ディスク
610 軸方向アーム
612 半径方向内側向きアーム
614 軸方向ベーン・アーム
616 先端
618 孔
700 内側翼表面
702 外側翼表面
704 底部表面
706 上部表面
708 リーディング・エッジ
710 トレーリング・エッジ
1202 混合流ロータ
1204 ブレード
1206 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 流量制限装置の配置位置により、ターボチャージャの入口の流量を制限する配置位置が変更可能な流量制限装置と、
(B) 前記流量制限装置の配置位置を変更するアクチュエータと、
(C) 排気ガスのパラメータの値を検出するセンサと、
(D) 前記検出された排気ガスのパラメータの値に基づいて、前記流量制限装置の配置位置を決めるために、前記アクチュエータを制御するコントローラとを有し、
上記コントローラは、エンジン排気サイクル中の流量制限装置の配置位置を変更するようにアクチュエータを制御するものである
ことを特徴とするエンジンで使用するためのターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項2】
排気ガスのパラメータは時間と共に変わり、排気ガスのパラメータは排気ガス圧力、瞬時の排気ガス圧力、ターボチャージャの入口圧力、ターボチャージャの瞬時の入口圧力、排気ガスの最大流量、排気バルブの開度、排気バルブの位置またはカムシャフトの回転角度のいずれかを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項3】
排気ガスのパラメータは排気ガス圧力または瞬時の排気ガス圧力を含み、 コントローラは、流量制限装置の配置位置の変更を一つ以上のエンジン排気サイクル中のエンジンの排気圧力レベルの周波数と振幅に合わせるようにアクチュエータを制御するものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項4】
流量制限装置は、排気ガス流路内で配置位置が変更可能であり、コントローラは、排気ガスのパラメータの値がしきい値より低いとき、排気ガス流路の断面積を減少するように流量制限装置の配置位置を変更するようにアクチュエータを制御するものである
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項5】
コントローラは、排気ガスのパラメータの値がしきい値より高いとき、排気ガス流路の断面積を増加するように流量制限装置の配置位置を変更するようにアクチュエータを制御するものである
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項6】
コントローラは、エンジンの排気サイクル中に時間に依存するように流量制限装置の配置位置を変更するようにアクチュエータを制御するものである
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項7】
コントローラは、エンジン排気サイクル中に流量制限装置の配置位置をサイン波形状に変更するようにアクチュエータを制御するものである
ことを特徴とする請求項6に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項8】
エンジン負荷またはエンジン速度を検知するためのセンサを有し、コントローラは、エンジンサイクル中の流量制限装置の配置位置を決定するために、検出されたエンジン負荷またはエンジン速度を使用するものである
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項9】
流量制限装置の配置位置は、エンジンサイクル中にゼロ位置から最大位置まで変位するものである
ことを特徴とする請求項8に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項10】
閉鎖されたループ位置制御のための流量制限装置配置位置センサを有する
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のターボチャージャ用流量制御装置。
【請求項11】
(A) ターボチャージャの入口の排気ガスのパラメータを表す変数を検出するステップと、
(B) 前記検出された排気ガスのパラメータを表す変数に基づいて、流量制限装置の配置位置を制御するステップと
を有し、
流量制限装置の配置位置は、エンジンからターボチャージャへの排気ガス流れの断面積の大きさを決定し、流量制限装置の配置位置の制御は、エンジン排気サイクル中の流量制限装置の配置位置を変更することを含む
ことを特徴とするターボチャージャがエンジンと共に使用されるときターボチャージャの入口の流量を制御する方法。
【請求項12】
(C) 前記流量制限装置の配置位置を検出するステップと、
(D) 前記検出された配置位置に基づいて、配置位置を修正するステップと
を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
修正は、開放されたループ制御システムを使用して行われる
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流量制限装置は、エンジン負荷またはエンジン速度に応じて、制御されることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
排気ガスのパラメータの値がしきい値より低いとき、排気ガス流路の断面積を減少するように流量制限装置の配置位置を変更する
ことを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
排気ガスのパラメータの値がしきい値より高いとき、排気ガス流路の断面積を増加するように流量制限装置の配置位置を変更する
ことを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の流量制限装置を有する
ことを特徴とするターボチャージャ。
【請求項18】
請求項17に記載されたターボチャージャを有する
ことを特徴とする車又はエンジン。
【請求項19】
請求項11ないし16のいずれか1項に記載された方法を実行するインストラクションを有する
ことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項20】
請求項19に記載されたプログラムを記憶する
ことを特徴とするコンピュータで読みとり可能な媒体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公開番号】特開2012−36907(P2012−36907A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258302(P2011−258302)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2007−543928(P2007−543928)の分割
【原出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(507181383)インペリアル イノベーションズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】