説明

ターボチャージャ

【課題】部品点数を増やすことなく、可変ノズルを容易に組み付け可能なターボチャージャを提供する。
【解決手段】ターボチャージャのタービンは、タービンハウジング42の内部でタービンホイールが回転する。タービンハウジング42に固定される複数の固定ガイド56と、複数の固定ガイド56の径方向内側に環状に配置される複数の可動ガイド66とは、可変ノズル50を構成する。複数の可動ガイド66は、複数の固定ガイド56に対して周方向に回動することにより排気ガス通路83の開口面積を調節する。一部の固定ガイド561は内周側の辺に凸部571を有する。可動ガイド66の入口端681が固定ガイド561の最大規制壁581に当接して可動板62の回動が規制されることで、組み付け時に、可変ノズル50の最大開度位置での位置調整が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの過給システムに用いられるターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの排気ガスの流れによってタービンホイールを回転させ、このタービンホイールにシャフトを介して連結されているコンプレッサホイールを回転させることにより、吸気通路内の空気を燃焼室に過給し、エンジン出力を向上させるターボチャージャが知られている。その中で、排気ガス通路の幅などを可変とする可変ノズルは、タービンホイールに吹き付けられる排気ガスの流速を調整する機構を有している。
【0003】
可変ノズルを開閉することにより、(1)タービンホイールの入口から流入する排気ガスの流速を調整し、(2)タービンホイールの回転速度を調整する。(3)タービンホイールとシャフトを介して連結されているコンプレッサホイールの回転速度が調整されることにより、(4)エンジンの燃焼室に送り込まれる空気の量が調整される。
この結果、エンジン出力の向上とコンプレッサの過剰回転による燃焼室内の過剰圧防止が図れるようになる。
【0004】
可変ノズルが付いたターボチャージャの例として、特許文献1のターボチャージャは、開閉レバーの開閉角度を調整して排気ガスの流速を調整するものであり、開閉レバーの全開角度と全閉角度との回動範囲を規制するストッパが設定されている。
【0005】
特許文献2では、可変ノズルは、「タービンホイールの外側に位置し、気体(排気ガス)をタービンホイールへ案内可能な環状の内周側部材」と、「内周側部材の外側に隣接して位置し、内周側部材に対して円周方向に相対的に回動可能な環状の外周側部材」とから構成される。内周側部材および外周側部材の各々に設けられる複数の案内部の各々の間には気体通路が設けられる。固定された内周側部材に対して外周側部材が回動することで、内周側部材の案内部が外周側部材の気体通路を塞ぎ、気体の流れを遮断する。さらに、内周側部材に対する外周側部材の回動位置により、気体通路を通過する気体の流量を連続的に変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−199433号公報
【特許文献2】特開2009−228479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のターボチャージャは、開閉レバーの開閉角度を調整して排気ガスの流速を調整するものであり、開閉レバーの全開角度と全閉角度との回動範囲を規制するストッパが設定されている。開閉レバーとストッパが別部品であるため部品点数が多くなり、組付工数もかかる。
【0008】
特許文献2では、可変ノズルは、内周側部材と外周側部材との2部品で構成され、部品点数は少ない。しかし、部品の組立段階において内周側部材と外周側部材との回動位置関係が重要であるにもかかわらず、内周側部材と外周側部材との位置関係を規制するためのストッパが設けられていない。したがって、組立時に製品ごとにアクチュエータ等を用いて、内周側部材と外周側部材との位置関係を調整するための工数が必要となる。あるいは、位置調整のために別部品を追加する場合は、部品点数が増加する。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、部品点数を増やすことなく、可変ノズルを容易に組み付け可能なターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のターボチャージャは、吸気を圧縮するコンプレッサと、このコンプレッサに同軸に設けられて該コンプレッサと一体に回転するタービンホイールと、タービンホイールを収容するとともに該タービンホイール入口側に排気ガス入口通路を有するタービンハウジングと、複数の固定ガイドと、複数の可動ガイドと、ストッパ部とを備える。
複数の固定ガイドは、タービンハウジング内部でタービンホイールの径方向外側に環状に配置され、排気ガス通路を形成する。排気ガス通路は、排気ガス入口通路から径方向内側のタービンホイールに排気ガスを案内する
複数の可動ガイドは、タービンハウジング内部で複数の固定ガイドの径方向内側に環状に配置され、前記複数の固定ガイドに対して回動することにより、タービンホイール入口側の排気ガス通路の開口面積を調節可能である。
【0011】
そして、固定ガイドと可動ガイドとの相対位置を特定して排気ガス通路の最大開度位置または最小開度位置を規制するためのストッパ部が設けられる。このストッパ部は、例えば、タービンハウジング、複数の固定ガイド、及び、複数の可動ガイド、の少なくともいずれか一つに設けられる。
これにより、ストッパ部を利用して最大開度位置または最小開度位置を容易に調整することができる。したがって、組み付け時に製品ごとにアクチュエータ等を用いて、最大開度位置または最小開度位置を調整するための工数は必要とならず、位置調整のために別部品を追加する必要もない。よって、可変ノズルを容易に組み付けることができる。
【0012】
請求項2に記載のターボチャージャは、請求項1に記載のターボチャージャにおいて、複数の固定ガイドが環状の固定板に支持される。
ストッパ部は、タービンハウジング、固定板、複数の固定ガイド、及び、複数の可動ガイド、の少なくともいずれか一つに設けられる。
複数の固定ガイドは、タービンホイールを収容するタービンハウジングに直接設けることもできる。しかし、複数の固定ガイドを一体に支持する環状の固定板を設け、固定板をタービンハウジングに設置することにより、組立や修理等の作業性が向上する。この場合、ストッパ部を固定板に設けてもよい。
【0013】
さらに請求項3に記載のターボチャージャでは、複数の可動ガイドは環状の可動板に支持され、その可動板が複数の固定ガイドまたは固定板に対して回動することにより、複数の可動ガイドが排気ガス通路の開口面積を調節する。
ストッパ部は、タービンハウジング、固定板、可動板、複数の固定ガイド、及び、複数の可動ガイド、の少なくともいずれか一つに設けられる。
複数の可動ガイドを一体に支持する環状の可動板を設け、可動板を回動させることにより、組立や修理等の作業性が向上することに加え、駆動機構を単純にできる。すなわち、可動板のいずれか一箇所を所定角度動かせば、全部の可動ガイドを同時に動かすことができるようになる。この場合、ストッパ部を可動板に設けてもよい。
【0014】
また、請求項4に記載のターボチャージャは、請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボチャージャにおいて、ストッパ部が最大開度位置および最小開度位置の両方を規制する。
これにより、最大開度位置と最小開度位置の両方を位置調整して、可変ノズルを容易に組み付けることができる。
また、最大開度位置または最小開度位置の一方のみを規制する場合は、アクチュエータによって駆動される動作角度を一定とすることにより、他方の開度位置を定位置に設定する必要がある。それに対し、最大開度位置と最小開度位置の両方を規制する場合は、アクチュエータによって駆動される動作角度を利用する必要がない。したがって、アクチュエータの制御精度が要求されないので、制御を簡易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態によるターボチャージャの全体構成図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a):図1のB矢視によるタービン内部の模式図であり、可変ノズルおよびタービンホイール部分を示す。(b):(a)のC−P−C断面図である。
【図4】(a):図3(a)から可変ノズルだけを取り出した正面図である。(b):(a)のE−Q−E断面図である。
【図5】図3(b)のD−D断面図であり、(a):最大開度時、(b):最小開度時の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるターボチャージャにおける可変ノズル部分の模式図であり、(a):最大開度時、(b):最小開度時の模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態によるターボチャージャにおける可変ノズル部分の断面図であり、(a):最大開度時、(b):最小開度時の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるターボチャージャにおける可変ノズル部分の断面図であり、(a):最大開度時、(b):最小開度時の全体断面図である。
【図9】図8(a)、(b)の要部拡大図である。
【図10】本発明の第4実施形態によるターボチャージャにおける可変ノズル部分の断面図であり、(a):最大開度時の要部拡大断面図、(b):(a)のF−F断面図、(c):最小開度時の要部拡大断面図、(d):(c)のG−G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
最初に図1、図2を参照して、ターボチャージャの全体構成を説明する。ターボチャージャ1は、センターハウジング2の一方の側にコンプレッサ3を備え、他方の側にタービン4を備える。
【0017】
コンプレッサ3は、コンプレッサハウジング32に収容されるコンプレッサホイール31に複数枚のコンプレッサブレード31aが環状に配置される。コンプレッサホイール31は、後述するシャフト21と同軸に接続されて回転可能である。
コンプレッサハウジング32の内部には、コンプレッサホイール31に対しセンターハウジング2と軸方向反対側に吸気入口通路71が形成される。また、コンプレッサハウジング32の内部には、コンプレッサホイール31の径方向外側に送出通路72が形成され、この送出通路72に連通する渦巻き状のコンプレッサ通路73が形成される。吸気入口通路71からコンプレッサホイール31に取り込まれた吸気は、コンプレッサホイール31により過給され、圧縮空気となって送出通路72を経由しコンプレッサ通路73へ送り出される。
【0018】
タービン4は、タービンホイール41とタービンハウジング42とを備える。タービンホイール41には、複数枚のタービンブレード41aが環状に配置される。タービンホイール41は、後述するシャフト21と同軸に接続されて回転可能である。
タービンハウジング42は、タービンホイール41を収容する。タービンハウジング42の内部には、タービンホイール41に対しセンターハウジング2と軸方向反対側に延びる排気ガス出口通路82が設けられる。また、タービンハウジング42の内部には渦巻き状の排気ガス入口通路81が設けられる。
【0019】
タービンハウジング42内部のタービンホイール41の径方向外側に可変ノズル50が設けられる。可変ノズル50は、タービンホイール41に流入する排気ガス通路の開口面積を調節し、排気ガス入口通路81からタービンホイール41に吹き付けられる排気ガスの流速を調整する。
【0020】
シャフト21は、コンプレッサホイール31とタービンホイール41とを同軸に連結する。シャフト21は、センターハウジング2の内部で回転可能に軸受け22、23により支持される。軸受け22、23には油路24、25から潤滑油が供給される。
【0021】
次に、図3〜図6を参照して、可変ノズル50の詳細な構成を説明する。
可変ノズル50は、環状の固定板51、52と、環状の可動板61、62とから構成される。固定板51、52は、複数の固定ガイド56を支持する。可動板61、62は、複数の可動ガイド66を支持する。
固定板51、52は、ドーナッツ状の円板形状である。
固定板51は、タービンハウジング42の内壁42aにシャフト21の軸方向と直交して固定されている。固定板52は、タービンハウジング42の内壁42bにシャフト21の軸方向と直交して固定されている。固定板51と固定板52とは平行に配置されている。
【0022】
固定ガイド56は、タービンホイール41の径方向外側で固定板51、52に支持されて環状に配置される。固定ガイド56は、固定板51から固定板52に延びる方向について断面形状が一定である。固定ガイド56の断面形状は、排気ガスが流入する径方向外側から径方向内側に向かって傾斜して広がる湾曲した三角形状、あるいは羽根形をしている。言い換えれば、固定ガイド56は、外傾斜面56a、内周面56b、内傾斜面56cから構成される。そして、互いに隣接する固定ガイドの外傾斜面56aと内傾斜面56cとの間に排気ガス通路83を形成し、排気ガスを、排気ガス入口通路81に通じる径方向外側から、タービンホイール41に通じる径方向内側へ案内する。内周面56bは、固定板51および固定板52の内周面にほぼ一致している。
【0023】
固定ガイド56は、2種類の固定ガイド560および固定ガイド561を含む。固定ガイド561は内周側の辺に凸部571を有し、固定ガイド560は内周側の辺に凸部を有さない。計12個の固定ガイド56が周方向に等間隔に配置され、その中で全周を3等分する位置に3個の固定ガイド561が配置され、その他の位置に9個の固定ガイド560が配置されている。
【0024】
可動板61は、固定板51の径方向内側に配置され、固定板51に対して回動可能である。可動板62は、固定板52の径方向内側に配置され、固定板52に対して周方向に回動可能である。
可動ガイド66は、可動板61、62に支持されて、かつ固定ガイド56に対応して、環状に配置される。可動ガイド66は、可動板61から可動板62に延びる方向について断面形状が一定である。可動ガイド56の断面形状は、径方向内側から径方向外側に向かって広がる高さの低い三角形状をしている。言い換えれば、可動ガイド66は、外傾斜面66a、外周面66b、内傾斜面66cから構成される。外周面66bは、可動板61および可動板62の外周面にほぼ一致している。
【0025】
12個の固定ガイド56に対応して、12個の可動ガイド66が周方向に等間隔に配置されている。可動ガイド66が固定ガイド56に対して径方向内側で回動することで、排気ガス通路83の開口面積を調節する。可変ノズル50の組み付け時において、固定ガイド56と可動ガイド66との相対位置は、以下のようにして最大開度位置が調整される。
【0026】
排気ガス通路83の最大開度位置は、図5(a)に示すように、可動ガイド66の入口端681が、固定ガイド561の凸部571の最大規制壁581に当接すると、可動板62の回動が規制されることで調整される。すなわち、本実施形態では固定ガイド561の凸部571が「特許請求の範囲」に記載の「ストッパ部」を構成する。なお、入口端681は排気ガスの入口方向、すなわち図5(a)の時計回り方向の端部である。
最大開度位置において、可動ガイド66は、固定ガイド56の内周側の辺に重複して位置する。このとき、排気ガス通路83の開口面積は最大となる。また、固定ガイド56の外傾斜面56aと可動ガイド66の外傾斜面66aとは、段差なく滑らかに連続する。
排気ガス通路83の最小開度位置は、図5(b)に示すように、最大開度位置を調整した後、アクチュエータ91によって駆動される動作角度を一定とすることにより、定位置に設定される。最小開度位置では、可動ガイド66の入口端681は、固定ガイド561の最大規制壁581から離れ、排気ガス通路83の開口面積は最小となる。また、固定ガイド56の外傾斜面56aと可動ガイド66の外周面66bおよび外傾斜面66aとは、滑らかに連続する。
【0027】
ここで、アクチュエータ91の構成について説明する。アクチュエータ91は、タービンハウジング42に対してセンターハウジング2側に、図示しない支持部材によって支持される。アクチュエータ91の回転軸91aが所定角度だけ正回転または逆回転することにより、リンク部材92を介して駆動ピン93が移動し、駆動ピン93に結合された可動板62がタービン4の軸を中心に回動する。アクチュエータ91としては、例えばステッピングモータ、空圧または油圧駆動のアクチュエータが用いられる。
【0028】
アクチュエータ91による駆動は、図示しない制御装置により、(1)最大開度位置と最小開度位置の2ポジション制御、(2)最度開度位置と最小開度位置の他に1つ以上の有限の中間位置を選択可能なマルチポジション制御、(3)最度開度位置と最小開度位置の間の任意の位置を選択可能な無段階制御、等のバリエーションでの制御が可能である。
【0029】
(作用)
次にターボチャージャ1の作用を説明する。
排気ガス入口通路81から流入した排気ガスは、タービンホイール41に吹き付けられてタービンホイール41を回転させ、排気ガス出口通路82から排出される。排気ガスの流れによりタービンホイール41が回転すると、シャフト21とともにコンプレッサホイール31が回転し、吸気入口通路71から吸入した空気を加圧圧縮して、送出通路72、コンプレッサ通路73を経由してエンジンの燃焼室に送り込む。
【0030】
ここで、可変ノズル50を利用し、排気ガス通路83を最小開度位置と最大開度位置との間で段階または無段階に変更することで、排気ガスの流速を調整することができる。
最大開度位置では、図5(a)に破線矢印で示すように排気ガス通路83の開口面積は最大であり、流れが絞られないため流速が抑えられる。これにより、コンプレッサの過剰回転による燃焼室内の過剰圧を防止することができる。また、固定ガイド56の外傾斜面56aと可動ガイド66の外傾斜面66aとは、段差なく滑らかに連続するため、排気ガスの流入抵抗を小さくすることができる。
最小開度位置では、図5(b)に破線矢印で示すように排気ガス通路83の幅は最小となり、排気ガスの流速が速められる。よって、流速の速い排気ガスがタービンホイール41に吹き付けられて、タービンホイール41が速く回転することで、エンジン出力を向上させることができる。また、固定ガイド56の外傾斜面56aと可動ガイド66の外周面66bおよび外傾斜面66aとは、滑らかに連続するため、排気ガスの流入抵抗を小さくすることができる。
【0031】
(効果)
第1実施形態では、上記のように、可動ガイド66の入口端681を固定ガイド561の最大規制壁581に当接させた状態で、最大開度位置を容易に調整することができる。よって、別部品を用いて部品点数を増やすことなく、可変ノズル50を容易に組み付けることができる。
【0032】
また、マルチポジション制御または無段階制御で駆動する場合には、排気ガスの流速を連続的に変化させることができる。したがって、エンジン回転数などの条件に応じてきめ細かに可変ノズル50の開度を調整することができる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図7に基づいて説明する。第2実施形態は、固定ガイドおよび可動ガイドを除く構成については第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、固定ガイド56は、2種類の固定ガイド560および固定ガイド562を含む。固定ガイド562は内周側の辺に凹部572を有し、固定ガイド560は内周側の辺に凸部を有さない。計12個の固定ガイド56が周方向に等間隔に配置され、その中で全周を3等分する位置に3個の固定ガイド562が配置され、その他の位置に9個の固定ガイド560が配置されている。
【0034】
可動ガイド66は、2種類の可動ガイド660および可動ガイド662を含む。可動ガイド662は、固定ガイド562に対向する外周側の辺に凸部672を有し、可動ガイド660は外周側の辺に凸部を有さない。計12個の可動ガイド66が固定ガイド560、562に対応して配置される中で、3個の固定ガイド562に対応して、3個の可動ガイド662が配置される。
【0035】
排気ガス通路83の最大開度位置は、図7(a)に示すように、可動ガイド662の凸部672の入口端682が、固定ガイド562の凹部572の最大規制壁582に当接すると、可動板62の回動が規制されることで調整される。なお、入口端682は排気ガスの入口方向、すなわち図7(a)の時計回り方向の端部である。
排気ガス通路83の最小開度位置は、図7(b)に示すように、可動ガイド662の凸部672の出口端692が、固定ガイド562の凹部572の最小規制壁592に当接すると、可動板62の回動が規制されることで調整される。なお、出口端692は排気ガスの出口方向、すなわち図7(b)の反時計回り方向の端部である。
すなわち、本実施形態では、最大開度位置および最小開度位置の両方において、固定ガイド562の凹部572と、可動ガイド662の凸部672とが「特許請求の範囲」に記載の「ストッパ部」を構成する。
【0036】
第2実施形態では、上記のように、排気ガス通路83の最大開度位置または最小開度位置を容易に調整することができる。よって、別部品を用いて部品点数を増やすことなく、可変ノズル50を容易に組み付けることができる。
また、第1実施形態に比べ、排気ガス通路83の最大開度位置だけでなく最小開度位置も規制されるため、アクチュエータ91によって駆動される動作角度に基づき最小開度位置を定位置に設定する必要がない。したがって、アクチュエータ91の制御精度が要求されないので、制御を簡易にできる。
【0037】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるターボチャージャを図8、図9に基づいて説明する。第3実施形態は、固定ガイド、可動板、及び、タービンハウジングを除く構成については第1実施形態と同様である。
12個の固定ガイド56は、周方向に等間隔に配置される。12個の固定ガイド56の形状は一様である。
図8に示すように、可動板623は、全周を3等分する位置の内周側に3箇所の凸部633を有する。また、タービンハウジング423には、可動板623の凸部633に対応して、3箇所の凹状の周溝部433が設けられる。
12個の可動ガイド66は、周方向に等間隔に配置される。12個の可動ガイド66の形状は一様である。
【0038】
排気ガス通路83の最大開度位置は、図9(a)に示すように、可動板623の凸部633の入口端643が、タービンハウジング423の周溝部433の最大規制壁443に当接すると、可動板623の回動が規制されることで調整される。
排気ガス通路83の最小開度位置は、図9(b)に示すように、可動板623の凸部633の出口端653が、タービンハウジング423の周溝部433の最小規制壁453に当接すると、可動板623の回動が規制されることで調整される。
すなわち、本実施形態では、最大開度位置および最小開度位置の両方において、タービンハウジング423の周溝部433と、可動板623の凸部633とが「特許請求の範囲」に記載の「ストッパ部」を構成する。
【0039】
第3実施形態では、上記のように、排気ガス通路83の最大開度位置または最小開度位置を容易に調整することができる。よって、別部品を用いて部品点数を増やすことなく、可変ノズルを容易に組み付け可能となる。
また、第3実施形態では、第1または第2実施形態に比べてストッパ部を大きく設定することができるため、ストッパ部の強度が増す。
【0040】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるターボチャージャを図10に基づいて説明する。第4実施形態は、固定ガイド、可動ガイド、可動板、及び、タービンハウジングを除く構成については第1実施形態と同様である。
12個の固定ガイド56は、周方向に等間隔に配置される。12個の固定ガイド56の形状は一様である。
【0041】
図10にて、(b)は(a)のF−F断面図、(d)は(c)のG−G断面図である。
可動ガイド66は、2種類の可動ガイド660および可動ガイド664を含む。図10(b)、(d)に示すように、可動ガイド664は、タービンハウジング424に対向する辺に凸部674を有し、可動ガイド660は凸部を有さない。計12個の可動ガイド66が周方向に等間隔に配置され、その中で全周を3等分する位置に3個の可動ガイド664が配置され、その他の位置に9個の固定ガイド660が配置されている。可動ガイド66は、軸方向の一端を可動板61に支持される。軸方向の他端には可動ガイド66を支持する可動板はない。
また、タービンハウジング424には、可動ガイド664の凸部674に対応して、3箇所の凹状の底溝部434が設けられる。
【0042】
図10(a)、(b)に示す最大開度位置では、可動ガイド664の凸部674の入口端684が、タービンハウジング424の底溝部434の最大規制壁444に当接して、可動ガイド664の回動が規制されることで調整される。
図10(c)、(d)に示す最小開度位置では、可動ガイド664の凸部674の出口端694」が、「タービンハウジング424の底溝部434の最小規制壁454に当接して、可動ガイド664の回動が規制されることで調整される。
すなわち、本実施形態では、最大開度位置および最小開度位置の両方において、タービンハウジング424の底溝部434と、可動ガイド664の凸部674とが「特許請求の範囲」に記載の「ストッパ部」を構成する。
【0043】
第4実施形態では、上記のように、最大開度位置または最小開度位置を容易に調整することができる。よって、別部品を用いて部品点数を増やすことなく、可変ノズルを容易に組み付け可能となる。また、第4実施形態の底溝部434は、第3実施形態の周溝部433に比べ、加工が容易である。
【0044】
(その他の実施形態)
(ア)上記の実施形態において、固定ガイド56および可動ガイド66の数は、それぞれ12個であった。また、第1実施形態における固定ガイド561、第2実施形態における固定ガイド562および可動ガイド662、第3実施形態における周溝部433および可動板623の凸部633、第4実施形態における底溝部434および可動ガイド664の個数は、いずれも3個であった。本発明では、固定ガイドおよび可動ガイドの個数は、これらに限定されない。
【0045】
(イ)第1および第2実施形態では、固定ガイド56および可動ガイド66は、それぞれ、平行に配置される2枚の固定板51と52との間、及び、可動板61と62との間に支持された。しかし、それらの少なくとも一方について、板は片側1枚だけであってもかまわない。例えば、可動ガイドは駆動ピンに結合される可動板だけに支持されてもよい。
あるいは、固定ガイドおよび可動ガイドは、板に支持されなくてもよい。具体的には、固定ガイドは、タービンハウジングに直接固定されてもよい。可動ガイドは、回動可能にタービンハウジングに個別に設けられてもよい。
【0046】
(ウ)第3実施形態の図8、図9では、排気ガス出口通路82と反対側(図1の左側に相当)の可動板623およびタービンハウジング423についてのみストッパ部が図示されている。排気ガス出口通路側(図1の右側に相当)については、ストッパ部が設けられなくてもよいし、同様のストッパ部が設けられてもかまわない。
【0047】
(エ)第4実施形態の図10では、排気ガス出口通路82と反対側(図1の左側に相当)にストッパ部が設けられる形態を示したが、排気ガス出口通路側(図1の右側に相当)にストッパ部が設けられてもかまわない。
また、底溝部をタービンハウジングに設けるのではなく、固定板を固定ガイドよりも内周方向へ拡張して、その拡張部分に底溝部を設けてもよい。
【0048】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:ターボチャージャ、2:センターハウジング、21:シャフト、3:コンプレッサ、31:コンプレッサホイール、32:コンプレッサハウジング、4:タービン、41:タービンホイール、42、423、424:タービンハウジング、433:周溝部(ストッパ部)、434:底溝部(ストッパ部)、443、444:最大規制壁、453、454:最小規制壁、50:可変ノズル、51、52:固定板、56、560、561、562:固定ガイド、571:凸部(ストッパ部)、572:凹部(ストッパ部)、581、582:最大規制壁、592:最小規制壁、61、62、623:可動板、633:凸部(ストッパ部)、643:入口端、653:出口端、66、660、662、664:可動ガイド、672、674:凸部(ストッパ部)、681、682、684:入口端、692、694:出口端、81:排気ガス入口通路、82:排気ガス出口通路、83:排気ガス通路、91:アクチュエータ、92:リンク部材、93:駆動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気を圧縮するコンプレッサと、
前記コンプレッサに同軸に設けられて一体に回転するタービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するとともに、該タービンホイール入口側に排気ガス入口通路を有するタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内部で前記タービンホイールの径方向外側に環状に配置され、前記排気ガス入口通路から径方向内側の前記タービンホイールに排気ガスを案内する排気ガス通路を形成する複数の固定ガイドと、
前記タービンハウジング内部で前記複数の固定ガイドの径方向内側に環状に配置され、前記複数の固定ガイドに対して回動することで前記排気ガス通路の開口面積を調節可能な複数の可動ガイドと、
前記固定ガイドと前記可動ガイドとの相対位置を特定して前記排気ガス通路の最大開度位置または最小開度位置を規制するためのストッパ部と、
を備えることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記複数の固定ガイドは、環状の固定板に支持されることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記複数の可動ガイドは、環状の可動板に支持され、当該可動板が前記複数の固定ガイドまたは前記固定板に対して回動することにより、前記複数の可動ガイドが前記排気ガス通路の開口面積を調節することを特徴とする請求項1または2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記ストッパ部は、前記排気ガス通路の最大開度位置および最小開度位置の両方を規制することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−149306(P2011−149306A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10110(P2010−10110)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】