説明

ターボ圧縮機及び冷凍機

【課題】軸受の損傷防止、長寿命化を図ることができるターボ圧縮機及びそのターボ圧縮機を備えた冷凍機を提供することを目的とする。
【解決手段】軸周りに回転自在に支持された回転軸23に、上記軸方向において互いに所定の距離で離間すると共に互いの背面側が対向する向きに固定された第1インペラ21a及び第2インペラ22aを有するターボ圧縮機であって、第1インペラ21aと第2インペラ22aとの間において、回転軸23を上記軸周りに回転自在に支持する正面組合せのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bを有するという構成を採用する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を複数のインペラにて圧縮可能なターボ圧縮機及び該ターボ圧縮機を備える冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水等の冷却対象物を冷却あるいは冷凍する冷凍機として、冷媒を圧縮して排出するターボ圧縮機を備えるターボ冷凍機等が知られている。
ターボ冷凍機等が備えるターボ圧縮機は、一般的に回転軸に取付けられるインペラを軸周りに回転させて冷媒の圧縮を行う圧縮機構を備えている。従来、このような圧縮機構の回転軸を軸周りに回転自在に支持する軸受として、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の軸受が知られている。
【0003】
特許文献1には、圧縮機軸(回転軸)を背面合せのアンギュラ玉軸受で支持する構成が開示されている。回転軸をアンギュラ玉軸受で支持することにより、回転軸にかかるスラスト方向の力に耐えうることができ、且つ、動力損失が少なく、効率的に動力を伝達することができる構成となっている。
また、特許文献2には、圧縮段(圧縮機構)を2つ備え、これらの圧縮機構にて冷媒を順次圧縮するターボ圧縮機が開示されている。このターボ圧縮機は、2つのインペラが同一の回転軸に互いの背面側が対向する向きに固定されており、当該回転軸を2つのインペラの間においてジャーナル軸受によって支持することで、当該回転軸にかかるオーバーハング荷重を低減させる構成となっている。
【特許文献1】特開2002−303298号公報
【特許文献2】特開2007−177695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ターボ圧縮機においては、圧縮比が大きくなると吐出温度が高くなり容積効率が低下してしまうことから、上記特許文献2に記載のように圧縮機構を複数段に分けて冷媒の圧縮を行う場合がある。このようなターボ圧縮機においては、多数のケーシングを組み合わせることで製造されており、回転軸はそれらケーシングを挿通する形で取付けられる。
しかしながら、それらケーシング同士を組み合わせるためのケーシングのインロー部の不可避的な隙間による集積誤差に起因する偏芯により、回転軸の芯がずれてしまい、当該回転軸を支える軸受において回転軸の傾きに対する許容量を超えてしまう場合がある。特に、特許文献1に開示されている背面合せのアンギュラ玉軸受では、支持剛性が高いものの、傾きに対する許容量が小さいため問題となる。また、多数のケーシングの組合せにより軸受間距離が長くなってしまった場合、ギア反力等による撓みが発生しやすくなり回転軸が傾くため問題となる。
したがって、軸受には、当該傾きによる負荷が常態で作用することになり、当該作用による疲労及び損傷を受けて短寿命となってしまう懸念がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、軸受の損傷防止、長寿命化を図ることができるターボ圧縮機及びそのターボ圧縮機を備えた冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、軸周りに回転自在に支持された回転軸に、上記軸方向において互いに所定の距離で離間すると共に互いの背面側が対向する向きに固定された第1インペラ及び第2インペラを有するターボ圧縮機であって、上記第1インペラと上記第2インペラとの間において、上記回転軸を上記軸周りに回転自在に支持する正面組合せのアンギュラ玉軸受を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第1インペラと第2インペラとの間において回転軸を支持することによってオーバーハング荷重を低減させると共に、アンギュラ玉軸受によってラジアル方向のみならずスラスト方向の荷重も受けることができ、さらに、正面組合せのアンギュラ玉軸受を採用することで、回転軸の傾きに対する許容量を大きくすることができる。
【0007】
また、本発明では、上記回転軸の一端側が、第1構造体に上記正面組合せのアンギュラ玉軸受を介して支持され、上記回転軸の他端側が、上記第1構造体とは異なる第2構造体に支持されるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、多数の構造体の組合せによって回転軸が異なる構造体に支持される場合に、回転軸に発生しやすい偏芯による傾きに対応することができる。
【0008】
また、本発明では、上記正面組合せのアンギュラ玉軸受に、上記正面組合せの間において上方から潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、正面組合せの場合にその間において上方から潤滑剤を供給すると、アンギュラ玉軸受の肩おとし外輪及び内輪の組合せ構造により、軸方向において内側から外側に向うにつれて潤滑剤の流路が下方に勾配するように形成されるため、当該正面組合せのアンギュラ玉軸受に対する潤滑剤供給を円滑に且つ一箇所から行うことができる。
【0009】
また、本発明では、圧縮された冷媒を冷却液化する凝縮器と、液化された上記冷媒を蒸発させて冷却対象物から気化熱を奪うことによって上記冷却対象物を冷却する蒸発器と、上記蒸発器にて蒸発された上記冷媒を圧縮して上記凝縮器に供給する圧縮機とを備える冷凍機であって、上記圧縮機として、上記記載のターボ圧縮機を備えるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、軸受の損傷防止、長寿命化を図ることができるターボ圧縮機を備える冷凍機が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸周りに回転自在に支持された回転軸に、上記軸方向において互いに所定の距離で離間すると共に互いの背面側が対向する向きに固定された第1インペラ及び第2インペラを有するターボ圧縮機であって、上記第1インペラと上記第2インペラとの間において、上記回転軸を上記軸周りに回転自在に支持する正面組合せのアンギュラ玉軸受を有するという構成を採用することによって、第1インペラと第2インペラとの間において回転軸を支持することによってオーバーハング荷重を低減させると共に、アンギュラ玉軸受によってラジアル方向のみならずスラスト方向の荷重も受けることができ、さらに、正面組合せのアンギュラ玉軸受を採用することで、回転軸の傾きに対する許容量を大きくすることができる。
したがって、本発明では、回転軸の傾きに対してロバスト性が向上し、軸受の損傷防止、高寿命化を図ることができるターボ圧縮機を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるターボ冷凍機(冷凍機)S1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるターボ冷凍機S1は、例えば空調用の冷却水を生成するためにビルや工場に設置されるものであり、図1に示すように、凝縮器1と、エコノマイザ2と、蒸発器3と、ターボ圧縮機4とを備えている。
【0012】
凝縮器1は、気体状態で圧縮された冷媒である圧縮冷媒ガスX1が供給され、この圧縮冷媒ガスX1を冷却液化することによって冷媒液X2とするものである。この凝縮器1は、図1に示すように、圧縮冷媒ガスX1が流れる配管R1を介してターボ圧縮機4と接続されており、冷媒液X2が流れる配管R2を介してエコノマイザ2と接続されている。なお、配管R2には、冷媒液X2を減圧するための膨張弁5が設置されている。
【0013】
エコノマイザ2は、膨張弁5にて減圧された冷媒液X2を一時的に貯留するものである。このエコノマイザ2は、冷媒液X2が流れる配管R3を介して蒸発器3と接続されており、エコノマイザ2にて生じた冷媒の気相成分X3が流れる配管R4を介してターボ圧縮機4と接続されている。なお、配管R3は、冷媒液X2をさらに減圧するための膨張弁6が設置されている。また、配管R4は、ターボ圧縮機4が備える後述する第2圧縮段22に気相成分X3を供給するようにターボ圧縮機4と接続されている。
【0014】
蒸発器3は、冷媒液X2を蒸発させて水等の冷却対象物から気化熱を奪うことによって冷却対象物を冷却するものである。この蒸発器3は、冷媒液X2が蒸発されることによって生じる冷媒ガスX4が流れる配管R5を介してターボ圧縮機4と接続されている。なお、配管R5は、ターボ圧縮機4が備える後述する第1圧縮段21と接続されている。
【0015】
ターボ圧縮機4は、冷媒ガスX4を圧縮して上記圧縮冷媒ガスX1とするものである。このターボ圧縮機4は、上述のように圧縮冷媒ガスX1が流れる配管R1を介して凝縮器1と接続されており、冷媒ガスX4が流れる配管R5を介して蒸発器3と接続されている。
【0016】
このように構成されたターボ冷凍機S1においては、配管R1を介して凝縮器1に供給された圧縮冷媒ガスX1は、凝縮器1によって液化冷却されて冷媒液X2とされる。
冷媒液X2は、配管R2を介してエコノマイザ2に供給される際に膨張弁5によって減圧され、減圧された状態にてエコノマイザ2において一時的に貯留された後、配管R3を介して蒸発器3に供給される際に膨張弁6によってさらに減圧され、さらに減圧された状態にて蒸発器3に供給される。
蒸発器3に供給された冷媒液X2は、蒸発器3によって蒸発されて冷媒ガスX4とされ、配管R5を介してターボ圧縮機4に供給される。
ターボ圧縮機4に供給された冷媒ガスX4は、ターボ圧縮機4によって圧縮されて圧縮冷媒ガスX1とされ、再び配管R1を介して凝縮器1に供給される。
なお、冷媒液X2がエコノマイザ2に貯留されている際に発生した冷媒の気相成分X3は、配管R4を介してターボ圧縮機4に供給され、冷媒ガスX4と共に圧縮されて圧縮冷媒ガスX1として配管R1を介して凝縮器1に供給される。
そして、このようなターボ冷凍機S1では、蒸発器3にて冷媒液X2を蒸発される際に、冷却対象物から気化熱を奪うことによって、冷却対象物の冷却あるいは冷凍を行う。
【0017】
続いて、本実施形態の特徴部分である上記ターボ圧縮機4についてより詳細に説明する。
図2は、ターボ圧縮機4の水平断面図である。
図3は、ターボ圧縮機4の垂直断面図である。
図4は、ターボ圧縮機4が備える圧縮機ユニット20を拡大した垂直断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態におけるターボ圧縮機4は、モータユニット10と、圧縮機ユニット20と、ギアユニット30とを備えている。
【0018】
モータユニット10は、図2及び図3に示すように、出力軸11を有すると共に圧縮機ユニット20を駆動させるための駆動源となるモータ12と、該モータ12を囲むと共に上記モータ12を支持するモータハウジング13とを備えている。
なお、モータ12の出力軸11は、モータハウジング13に固定される第1軸受14と第2軸受15とによって回転可能に支持されている。
また、モータハウジング13は、ターボ圧縮機4を支持する脚部13aを備えている。そして、脚部13aの内部は、中空とされており、ターボ圧縮機4の摺動部位に供給される潤滑油が回収されると共に貯留される油タンク40として用いられる。
【0019】
圧縮ユニット20は、冷媒ガスX4(図1参照)の流通する流路を形成すると共に当該流路において冷媒ガスX4を多段圧縮するものであり、冷媒ガスX4を吸入して圧縮する第1圧縮段21と、第1圧縮段21にて圧縮された冷媒ガスX4をさらに圧縮して圧縮冷媒ガスX1(図1参照)として排出する第2圧縮段22とを備えている。
【0020】
第1圧縮段21は、図4に示すように、スラスト方向から供給される冷媒ガスX4に速度エネルギを付与してラジアル方向に排出する第1インペラ21aと、第1インペラ21aによって冷媒ガスX4に付与された速度エネルギを圧力エネルギに変換することによって圧縮する第1ディフューザ21bと、第1ディフューザ21bによって圧縮された冷媒ガスX4を第1圧縮段21の外部に導出する第1スクロール室21cと、冷媒ガスX4を吸入して第1インペラ21aに供給する吸入口21dを備えている。
なお、第1ディフューザ21b、第1スクロール室21c及び吸入口21dの一部は、第1インペラ21aを囲う第1ハウジング21eによって形成されている。
【0021】
第1インペラ21aは、回転軸23に固定され、回転軸23がモータ12の出力軸11から回転動力を伝達されて回転されることによって回転駆動される。
【0022】
第1ディフューザ21bは、第1インペラ21aの周囲に環状に配置されている。そして、本実施形態のターボ圧縮機4において、第1ディフューザ21bは、第1ディフューザ21bにおける冷媒ガスX4の旋回速度を低減させて速度エネルギを効率的に圧力エネルギに変換する複数のディフューザベーン21fを備えるベーン付ディフューザである。
【0023】
また、第1圧縮段21の吸入口21dには、第1圧縮段21の吸入容量を調節するためのインレットガイドベーン21gが複数設置されている。
各インレットガイドベーン21gは、第1ハウジング21eに固定された駆動機構21hによって冷媒ガスX4の流れ方向からの見かけ上の面積が変更可能なように回転可能とされている。
【0024】
第2圧縮段22は、第1圧縮段21にて圧縮されると共にスラスト方向から供給される冷媒ガスX4に速度エネルギを付与してラジアル方向に排出する第2インペラ22aと、第2インペラ22aによって冷媒ガスX4に付与された速度エネルギを圧力エネルギに変換することによって圧縮して圧縮冷媒ガスX1として排出する第2ディフューザ22bと、第2ディフューザ22bから排出された圧縮冷媒ガスX1を第2圧縮段22の外部に導出する第2スクロール室22cと、第1圧縮段21にて圧縮された冷媒ガスX4を第2インペラ22aに導く導入スクロール室22dとを備えている。
なお、第2ディフューザ22b、第2スクロール室22c及び導入スクロール室22dの一部は、第2インペラ22aを囲う第2ハウジング22eによって形成されている。
【0025】
第2インペラ22aは、上記回転軸23に第1インペラ21aと背面合わせとなるように固定され、回転軸23がモータ12の出力軸11から回転動力を伝達されて回転されることによって回転駆動される。
【0026】
第2ディフューザ22bは、第2インペラ22aの周囲に環状に配置されている。そして、本実施形態のターボ圧縮機4において、第2ディフューザ22bは、第2ディフューザ22bにおける冷媒ガスX4の旋回速度を低減させて速度エネルギを効率的に圧力エネルギに変換するディフューザベーンを備えないベーンレスディフューザである。
【0027】
第2スクロール室22cは、圧縮冷媒ガスX1を凝縮器1に供給するための配管R1と接続されており、第2圧縮段22から導出した圧縮冷媒ガスX1を配管R1に供給する。
【0028】
なお、第1圧縮段21の第1スクロール室21cと、第2圧縮段22の導入スクロール室22dとは、第1圧縮段21及び第2圧縮段22とは別体で設けられる外部配管(不図示)を介して接続されており、該外部配管を介して第1圧縮段21にて圧縮された冷媒ガスX4が第2圧縮段22に供給される。この外部配管には、上述の配管R4(図1参照)が接続されており、エコノマイザ2にて発生した冷媒の気相成分X3が外部配管を介して第2圧縮段22に供給される構成となっている。
【0029】
また、回転軸23は、第1圧縮段21と第2圧縮段22との間の空間50において第2圧縮段22の第2ハウジング22eに固定される第3軸受24(詳しくは後述)と、モータユニット10側において第2ハウジング22eに固定される第4軸受25(図2参照)とによって回転可能に支持されている。なお、回転軸23は、第1インペラ21a及び第2インペラ22aがそれら背面側が対向する向きに固定される設計上、第4軸受25側から第3軸受24側に向うにつれて径が段階的に小径になるように形成される。
なお、ここで第2ハウジング22eとは、多数のケーシング(構造体)の組合せの総称のことをいう。したがって、より厳密には、第3軸受24が固定される部位と第4軸受25が固定される部位とは、各々異なるケーシングに固定されることとなる。
【0030】
ギアユニット30は、図2に示すように、モータ12の出力軸11の回転動力を回転軸23に伝達するためのものであり、モータユニット10のモータハウジング13と圧縮機ユニット20の第2ハウジング22eとによって形成される空間60に収納されている。
このギアユニット30は、モータ12の出力軸11に固定される大径歯車31と、回転軸23に固定されると共に大径歯車31と噛み合う小径歯車32とによって構成されており、出力軸11の回転数に対して回転軸23の回転数が増加するようにモータ12の出力軸11の回転動力を回転軸23に伝達する。
【0031】
また、ターボ圧縮機4は、軸受(第1軸受14,第2軸受15,第3軸受24,第4軸受25)、インペラ(第1インペラ21a,第2インペラ22a)とハウジング(第1ハウジング21e,第2ハウジング22e)との間、及びギアユニット30等の摺動部位に油タンク40に貯留された潤滑油(潤滑剤)を供給する潤滑油供給装置(潤滑剤供給装置)70を備えている。なお、図面において潤滑油供給装置70は、一部のみが図示されている。
なお、第3軸受24が配置される空間50とギアユニット30が収納される空間60とは、第2ハウジング22eに形成された貫通孔80によって接続されており、さらに空間60と油タンク40とは接続されている。このため、空間50,60に供給されて摺動部位から流れ落ちた潤滑油は、油タンク40に回収される。
【0032】
続いて、回転軸23を軸周りに回転自在に支持する第3軸受24の構成について図5を参照して説明する。
図5は、図4における第3軸受24の要部拡大概略図である。
第3軸受24は、第1インペラ21aと第2インペラ22aとの間において、回転軸23を軸周りに回転自在に支持する正面合わせのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bを有する構成となっている。また、第3軸受24は、正面合わせのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの間からその両者に潤滑油を供給する流路を形成する間座101を有している。間座101は、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの間において取付けられる構成となっている。
【0033】
第3軸受24は、回転軸23に一体的に設けられた回転軸スリーブ23Aを介して回転軸23を支持する構成となっている。回転軸スリーブ23Aは、第1インペラ21aの背面側に設けられた第1ラビリンスシール21e1と、第2インペラ22aの背面側に設けられた第2ラビリンスシール22e1との間に配設される。
第3軸受24の内輪は、その厚さ方向(スラスト方向)において、回転軸スリーブ23Aと、回転軸スリーブ23Aに取付けられるロックナット23Bとによって固定される。
一方、第3軸受24の外輪は、その厚さ方向(スラスト方向)において、第2圧縮段隔壁22e2と、第2圧縮段隔壁22e2及び第2ラビリンスシール22e1との間に固定された軸押さえ部材22e3とによって固定される。
【0034】
また、第3軸受24上方には、潤滑油供給装置70が設けられており、本実施形態では、上側の第2圧縮段隔壁22e2を垂直下方に貫通して潤滑油供給装置70の供給管70aが間座101に接続されている。さらに、下側の第2圧縮段隔壁22e2には潤滑剤を排出する排出孔70bが下側の間座101と連通して設けられる構成となっている。
【0035】
次に、このように構成されたターボ圧縮機4の動作及び第3軸受24の作用について説明する。
【0036】
まず、潤滑油供給装置70によって、図2及び図3に示すように、ターボ圧縮機4の摺動部位に油タンク40から潤滑油が供給され、その後モータ12が駆動される。そして、モータ12の出力軸11の回転動力がギアユニット30を介して回転軸23に伝達され、これによって圧縮機ユニット20の第1インペラ21aと第2インペラ22aとが回転駆動される。
【0037】
第1インペラ21aが回転駆動されると、図4に示すように、第1圧縮段21の吸入口21dが負圧状態となり、流路R5からの冷媒ガスX4が吸入口21dを介して第1圧縮段21に流入する。
第1圧縮段21の内部に流入した冷媒ガスX4は、第1インペラ21aにスラスト方向から流入し、第1インペラ21aによって速度エネルギを付与されてラジアル方向に排出される。
第1インペラ21aから排出された冷媒ガスX4は、第1ディフューザ21bによって速度エネルギを圧力エネルギに変換されることで圧縮される。第1ディフューザ21bから排出された冷媒ガスX4は、第1スクロール室21cを介して第1圧縮段21の外部に導出される。
そして、第1圧縮段21の外部に導出された冷媒ガスX4は、外部配管を介して第2圧縮段22に供給される。
【0038】
第2圧縮段22に供給された冷媒ガスX4は、導入スクロール室22dを介してスラスト方向から第2インペラ22aに流入し、第2インペラ22aによって速度エネルギを付与されたラジアル方向に排出される。
第2インペラ22aから排出された冷媒ガスX4は、第2ディフューザ22bによって速度エネルギを圧力エネルギに変換されることでさらに圧縮されて圧縮冷媒ガスX1とされる。
第2ディフューザ22bから排出された圧縮冷媒ガスX1は、第2スクロール室22cを介して第2圧縮段22の外部に導出される。
そして、第2圧縮段22の外部に導出された圧縮冷媒ガスX1は、流路R1を介して凝縮器1に供給される。
【0039】
このとき、回転軸23には、第1インペラ21a及び第2インペラ22aの駆動によりラジアル荷重及びスラスト荷重が作用する。
第3軸受24は、図5に示すように、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bで構成されているため、ラジアル荷重だけでなくスラスト荷重も受けることができる。また、第3軸受24は、第1インペラ21a及び第2インペラ22aの間において回転軸23を支持する構成であるため、第2インペラ22a手前側(図2において第2インペラ22a左側)で回転軸23を支持する構成と比べて、オーバーハング量を低減することができ、回転軸23にかかるオーバーハング荷重を低減することができる。
【0040】
また、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bは、正面組合せの構成であるため、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの転動体の作用線が、それぞれ所定の接触角で内側に漸次近接するように形成される。したがって、正面組合せの構成は、背面組合せと比べて作用点距離が小さくなるためモーメント荷重による負荷能力は劣るものの、本実施形態ではこれを意図的に選択することにより、曲げのラジアル剛性を低くして回転軸23の芯のズレを吸収できる許容量を大きくし、回転を円滑にさせることができる。この作用は、本実施形態のターボ圧縮機4のような複数のケーシングで構成されて、ケーシングの寸法精度や、それらケーシングの組合せ精度及び回転軸23の径の小ささ等に起因する回転軸23の傾き及び撓みが大きくなる場合に特に効果がある。
【0041】
さらに、潤滑油供給装置70が上方からアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの正面組合せの間において潤滑油を供給すると、潤滑油は、先ず供給管70aを介して間座101に供給された後、間座101設けられた流路を介してアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bのそれぞれに供給されることとなる。
正面組合せの場合にその間においてその上方から潤滑油を供給すると、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの肩おとし外輪及び内輪の組合せ構造により、軸方向において内側から外側に向うにつれて潤滑油の流路R(図5参照)が下方に勾配するように形成されるため、当該構成上の高低差を利用して該正面組合せのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bに対する潤滑油供給を円滑に且つ一箇所から容易に行うことができる。また、上方において潤滑油の供給を受け、上記作用により転動体、転動体と外輪との間及び転動体と内輪との間において円滑に潤滑油が供給された状態で、それらが回転駆動することによって、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの周全体に亘って潤滑油が容易に供給されることとなる。
なお、供給された潤滑油は、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの軸方向における外側、または、排出孔70bを介して空間50に排出され、図3に示す、貫通孔80、空間60を経て油タンク40に再び回収されることとなる。
【0042】
したがって、上述した本実施形態によれば、軸周りに回転自在に支持された回転軸23に、上記軸方向において互いに所定の距離で離間すると共に互いの背面側が対向する向きに固定された第1インペラ21a及び第2インペラ22aを有するターボ圧縮機4であって、第1インペラ21aと第2インペラ22aとの間において、回転軸23を上記軸周りに回転自在に支持する正面組合せのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bを有するという構成を採用することによって、第1インペラ21aと第2インペラ22aとの間において回転軸23を支持することでオーバーハング荷重を低減させると共に、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bによってラジアル方向のみならずスラスト方向の荷重も受けることができ、さらに、正面組合せのアンギュラ玉軸受を採用することで、回転軸の傾きに対する許容量を大きくすることができる。
したがって、本発明では、回転軸23の傾きに対してロバスト性が向上し、第3軸受24の損傷防止、高寿命化を図ることができるターボ圧縮機4を提供することができる効果がある。
【0043】
また、本実施形態では、回転軸23の一端側が、第2ハウジング22eを構成するケーシングに正面組合せのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bを介して支持され、上記回転軸の他端側が、上記ケーシングとは異なる第2ハウジング22eを構成するケーシングに第4軸受25を介して支持されるという構成を採用することによって、多数のケーシングの組合せによって回転軸23が異なるケーシングに支持される場合に、回転軸23に発生しやすい偏芯による傾きに対応することができる。
【0044】
また、本実施形態では、正面組合せのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bに、上記正面組合せの間において上方から潤滑油を供給する潤滑油供給装置70を有するという構成を採用することによって、正面組合せの場合にその間において上方から潤滑油を供給すると、アンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bの肩おとし外輪及び内輪の組合せ構造により、軸方向において内側から外側に向うにつれて潤滑油の流路Rが下方に勾配するように形成されるため、当該正面組合せのアンギュラ玉軸受100A及びアンギュラ玉軸受100Bに対する潤滑油供給を円滑に且つ一箇所から行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、圧縮された冷媒ガスX4を冷却液化する凝縮器1と、液化された冷媒ガスX4を蒸発させて冷却対象物から気化熱を奪うことによって上記冷却対象物を冷却する蒸発器3と、蒸発器3にて蒸発された冷媒ガスX4を圧縮して凝縮器1に供給する圧縮機とを備えるターボ冷凍機S1であって、上記圧縮機として、上記記載のターボ圧縮機4を備えるという構成を採用することによって、軸受の損傷防止、長寿命化を図ることができるターボ圧縮機4を備えるターボ冷凍機S1が得られる。
【0046】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態におけるターボ冷凍機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態におけるターボ冷凍機が備えるターボ圧縮機の水平断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるターボ冷凍機が備えるターボ圧縮機の垂直断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるターボ圧縮機が備える圧縮機ユニットを拡大した垂直断面図である。
【図5】本発明の実施形態における第3軸受を示す図4における要部拡大概略図である。
【符号の説明】
【0048】
S1……ターボ冷凍機(冷凍機)、1……凝縮器、3……蒸発器、4……ターボ圧縮機、21……第1圧縮段、21a……第1インペラ、21b……第1ディフューザ、22e……第2ハウジング、21f……ディフューザベーン、22……第2圧縮段、22a……第2インペラ、22b……第2ディフューザ、23……回転軸、24……第3軸受、25……第4軸受、70……潤滑油供給装置(潤滑剤供給装置)、100A,100B……アンギュラ玉軸受、101……間座、X1……圧縮冷媒ガス(冷媒)、X2……冷媒液(冷媒)、X3……気相成分(冷媒)、X4……冷媒ガス(冷媒)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転自在に支持された回転軸に、前記軸方向において互いに所定の距離で離間すると共に互いの背面側が対向する向きに固定された第1インペラ及び第2インペラを有するターボ圧縮機であって、
前記第1インペラと前記第2インペラとの間において、前記回転軸を前記軸周りに回転自在に支持する正面組合せのアンギュラ玉軸受を有することを特徴とするターボ圧縮機。
【請求項2】
前記回転軸の一端側が、第1構造体に前記正面組合せのアンギュラ玉軸受を介して支持され、
前記回転軸の他端側が、前記第1構造体とは異なる第2構造体に支持されることを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機。
【請求項3】
前記正面組合せのアンギュラ玉軸受に、前記正面組合せの間において上方から潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を有することを特徴とする請求項1または2に記載のターボ圧縮機。
【請求項4】
圧縮された冷媒を冷却液化する凝縮器と、液化された前記冷媒を蒸発させて冷却対象物から気化熱を奪うことによって前記冷却対象物を冷却する蒸発器と、前記蒸発器にて蒸発された前記冷媒を圧縮して前記凝縮器に供給する圧縮機とを備える冷凍機であって、
前記圧縮機として、請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボ圧縮機を備えることを特徴とする冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−185715(P2009−185715A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27074(P2008−27074)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】