説明

ダンプトラック用走行装置

【課題】 シャフトの撓みを防止して信頼性、耐久性を向上させると共に、シャフトベアリングを十分に潤滑する。
【解決手段】 スピンドル15の外周側にホイールベアリング16,17を介してホイール12を回転可能に支持すると共に、スピンドル15の内周側に走行用モータ18を配置し、走行用モータ18の回転軸18Bに連結したシャフト19の回転を、減速機20で減速してホイール12に伝達する。また、シャフト19の軸方向の中間部19Aを、スリーブ41とリテーナ42との間に設けられたシャフトベアリング44によって支持する。一方、スピンドル15の上部にスピンドル側給脂通路48を設け、リテーナ42にリテーナ側給脂通路49を設ける。ホイール12の回転時にスピンドル15の上面に飛散した潤滑油Gを、スピンドル側給脂通路48とリテーナ側給脂通路49を通じてシャフトベアリング44に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体重量が100トンを超えるような大型のダンプトラックの駆動輪を駆動させるためのダンプトラック用走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉱山で採掘した砕石物を運搬する大型のダンプトラックは、車体のフレーム上に起伏可能となったベッセル(荷台)を備え、このベッセルに砕石物等の重い荷物を多量に積載した状態で運搬するものである。
【0003】
ダンプトラックの走行装置は、通常、タイヤが装着されるホイールと、このホイールの内側に挿入された円筒状のスピンドルと、このスピンドルの外周面とホイールの内周面との間に設けられホイールを回転可能に支持するホイールベアリングと、前記スピンドルの一端側に配置され回転軸を回転駆動する回転源と、この回転源の回転軸に連結されスピンドルの内周側に挿通され前記スピンドルの軸方向の他端から突出したシャフトと、前記スピンドルの他端側に配置され潤滑油に浸された状態でシャフトからホイールに動力を伝達する減速機とを備えて構成されている。
【0004】
この場合、スピンドルの開口端側には、シャフトを回転可能に支持するシャフトベアリングが設けられ、このシャフトベアリングは、減速機と隣り合う位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0065169号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来技術による走行装置では、シャフトベアリングは、減速機に近いシャフトの先端側に配置されている。このように、シャフトベアリングが、シャフトの中間部よりも先端側に寄った位置に配置されることにより、シャフトが高速回転するときに、シャフトに作用する遠心力によってシャフトに撓みが生じ易く、シャフトの信頼性、耐久性が低下するという問題がある。
【0007】
これに対し、シャフトベアリングをシャフトの中間部に配置した場合には、シャフトベアリングに潤滑不良が生じるという問題がある。即ち、従来技術による走行装置では、シャフトベアリングが減速機と隣り合う位置に配置されることにより、ダンプトラックの走行時に減速機から潤滑油の供給を受けることができる。これに対し、シャフトベアリングをシャフトの中間部に配置した場合には、シャフトベアリングが減速機から離れた位置に配置されるため、減速機から潤滑油を供給することができなくなる。
【0008】
また、ダンプトラック用走行装置においては、潤滑油が走行装置内部で攪拌されることによって発生する温度上昇を抑制するため、走行装置内の潤滑油の油面は、シャフトベアリングよりも低い位置に設定されている。従って、シャフトベアリングが潤滑油に浸かることにより潤滑されることも期待できない。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、シャフトの撓みを防止して信頼性、耐久性を向上させると共に、シャフトベアリングを十分に潤滑することができるダンプトラック用走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため本発明は、タイヤが装着されるホイールと、このホイールの内側に挿入された円筒状のスピンドルと、前記スピンドルの外周面と前記ホイールの内周面との間に設けられ前記ホイールを回転可能に支持するホイールベアリングと、前記スピンドルの一端側に配置され回転軸を回転駆動する回転源と、前記回転源の回転軸に連結され前記スピンドルの内周側に挿通され前記スピンドルの軸方向の他端から突出したシャフトと、前記スピンドルの他端側に配置され潤滑油に浸された状態で前記シャフトからホイールに動力を伝達する減速機とを備えてなるダンプトラック用走行装置に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明の特徴は、前記シャフトの軸方向の中間部には、前記スピンドルの内周側に位置し前記スピンドルに対して前記シャフトを回転可能に支持するシャフトベアリングを設け、前記スピンドルの上部には、前記スピンドルの外周側と内周側との間を連通するスピンドル側給脂通路を形成し、前記ホイールの回転により前記スピンドルの上部に供給された潤滑油をこのスピンドル側給脂通路を用いて前記シャフトベアリングに導くことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記スピンドル側給脂通路は、前記シャフトベアリングと上,下方向で対向する位置に設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記スピンドルの内周側には、前記シャフトベアリングを保持するリテーナを設け、このリテーナには、前記スピンドル側給脂通路から流出した前記潤滑油を前記シャフトベアリングの転動面に導くリテーナ側給脂通路を形成したことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記リテーナの外周面には、前記リテーナ側給脂通路の一端側が開口すると共に、前記スピンドル側給脂通路から供給された潤滑油を前記リテーナ側給脂通路の一端側まで流下させるガイド溝を形成したことにある。
【0015】
請求項5の発明は、前記リテーナ側給脂通路は、その一端側の開口幅寸法を前記リテーナの前記ガイド溝の幅寸法よりも大きく設定したことにある。
【0016】
請求項6の発明は、前記リテーナの外周面には、前記スピンドル側給脂通路と前記リテーナ側給脂通路との間に位置して潤滑油を溜める中間油溜りを形成したことにある。
【0017】
請求項7の発明は、前記シャフトおよび/または前記リテーナには、前記シャフトベアリングの軸方向両側のうち前記回転源側に位置して、前記シャフトベアリングに供給された潤滑油が前記回転源側に流出する事を抑制する鍔部を設ける構成としたことにある。
【0018】
請求項8の発明は、前記シャフトベアリングは、前記シャフトと一緒に回転する内輪と、前記スピンドル側に固定された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられ前記内輪を回転可能に支持する転動体とからなり、前記シャフトベアリングの外輪には径方向に貫通した貫通穴を形成し、この貫通穴と前記リテーナの前記リテーナ側給脂通路とを連通させる構成としたことにある。
【0019】
請求項9の発明は、前記シャフトベアリングには、その軸方向両側のうち前記回転源側のみにシールを設ける構成としたことにある。
【0020】
請求項10の発明は、前記スピンドルの上部には、前記スピンドルの外周側に位置して前記スピンドル側給脂通路に供給する潤滑油を溜める初期油溜りを設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、ホイールの回転によりスピンドル上部に供給された潤滑油が、スピンドル側給脂通路を通じてシャフトベアリング転動面へ流入し、シャフトベアリングを潤滑する。シャフトベアリングを潤滑した潤滑油は、スピンドル内部へ排出される。これにより、減速機の潤滑油を利用してシャフトベアリングを適正に潤滑することができ、シャフトベアリングの耐久性を向上することができる。この結果、シャフトベアリングによって支持されたシャフトの撓みを長期に亘って防止することができ、その信頼性、耐久性を向上させることができる。
【0022】
請求項2の発明によれば、スピンドル上部からスピンドル側給脂通路に導かれた潤滑油は、スピンドル側給脂通路と上,下方向で対向するシャフトベアリングに向けて流下するので、充分な量の潤滑油によってシャフトベアリングを効率良く潤滑することができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、スピンドルの上部からスピンドル側給脂通路に導入された潤滑油を、リテーナ側給脂通路を通じて効率良くシャフトベアリングに供給することができ、シャフトベアリングの転動面を確実に潤滑することができる。しかも、リテーナを別部品とすることにより、シャフトベアリングを保持するためのスピンドルに対する加工を容易にすることができ、製造コストを低減することが可能となる。
【0024】
請求項4の発明によれば、リテーナの外周面に形成したガイド溝に沿って、大量の潤滑油をリテーナ側給脂通路へと案内し、効率良くシャフトベアリングを潤滑することができる。従って、リテーナ側給脂通路を、スピンドル側給脂通路の直下ではなく周方向に離間した位置に設けることが可能となる。この結果、リテーナの形状を、加工性や組立て性に優れた形状にすることができ、走行装置全体の製造コストの低減を図ることができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、スピンドル側給脂通路からガイド溝に供給された潤滑油を、リテーナ側給脂通路に効率的に導入することが可能となる。これにより、シャフトベアリングを安定的に潤滑することができ、シャフトベアリングの耐久性を向上することができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、リテーナの外周面に設けた中間油溜りに油を溜めることができ、ダンプトラックの走行状態に関わらず、シャフトベアリングに安定して潤滑油を供給することができる。これにより、シャフトベアリングの信頼性を向上させることが可能となる。
【0027】
請求項7の発明によれば、シャフトベアリングに供給された潤滑油が、シャフトベアリングを潤滑した後に回転源側へ流出したり、シャフトを伝って回転源側へ流出することを鍔部によって抑制することができる。
【0028】
請求項8の発明によれば、スピンドル側給脂通路からリテーナ側給脂通路に供給された潤滑油は、シャフトベアリングの外輪に設けた貫通穴を通過し、転動体の転動面に供給される。このように、シャフトベアリングにおいて最も潤滑油が必要とされる転動体の転動面に潤滑油を直接供給することができるので、シャフトベアリングの耐久性を高めることができる。
【0029】
請求項9の発明によれば、シャフトベアリングに供給された潤滑油が、シャフトベアリングを潤滑した後に回転源側へ流出したり、シャフトを伝って回転源側へ流出することを抑制できる。これにより、回転源として電動モータを使用する場合に、潤滑油の流入によって電動モータが破損するのを未然に防止することができ、走行装置の信頼性を高めることができる。さらに、シャフトベアリングを潤滑した潤滑油が、シャフトベアリングのうちシールが設けられていない側から排出されることにより、シャフトベアリングの転がり抵抗を低減することも可能となる。
【0030】
請求項10の発明によれば、スピンドル上に飛散した潤滑油を初期油溜りを利用して集め、効率良くスピンドル側給脂通路に導くことが可能となる。さらに、ダンプトラックの走行状態の変化により、スピンドルの上部に供給される潤滑油の供給量が低下した場合にも、初期油溜りに溜まった潤滑油を安定的にスピンドル側給脂通路へ供給することができる。これらにより、ダンプトラックの走行状態に関わらず、シャフトベアリングを適正に潤滑することができ、走行装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態による走行装置が適用されたダンプトラックを示す側面図である。
【図2】ダンプトラックを図1中の矢示II−II方向から拡大した状態で示す後面図である。
【図3】ダンプトラック用走行装置を図1中の矢示III−III方向からみた縦断面図である。
【図4】図3中のスピンドル、走行用モータ、シャフト、シャフトベアリング等を拡大して示す拡大縦断面図である。
【図5】図4中のリテーナを単体で示す斜視図である。
【図6】スピンドル、シャフト、リテーナ、シャフトベアリング等を図4中の矢示VI−VI方向からみた横断面図である。
【図7】スピンドル側給脂通路、リテーナ側給脂通路、ガイド溝、シャフトベアリング等の要部を図6中の矢示VII−VII方向から拡大して示す拡大縦断面図である。
【図8】第2の実施の形態によるスピンドル側給脂通路、初期油溜り、リテーナ側給脂通路、中間油溜り、シャフトベアリング等の要部を示す図7と同様な縦断面図である。
【図9】第3の実施の形態によるスピンドル側給脂通路、リテーナ側給脂通路、シャフトベアリング、貫通穴、シール等の要部を示す図7と同様な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るダンプトラック用走行装置の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
まず、図1ないし図7は本発明に係るダンプトラック用走行装置の第1の実施の形態を示している。
【0034】
図中、1はダンプトラックを示し、このダンプトラック1は、後述の前輪6および後輪7によって自走する車体2と、該車体2上に起伏可能に搭載されたベッセル3(荷台)とにより大略構成されている。
【0035】
ベッセル3は、砕石等の重い荷物を大量に積載する容器として形成され、その後側底部が、車体2の後端側にピン結合部4を介して起伏(傾転)可能に連結されている。また、ベッセル3の上部前側には、前方に張出す庇部3Aが一体に設けられ、車体2の前部側に配置されたキャビン5を庇部3Aによって上方から覆う構成となっている。
【0036】
車体2にはエンジン、発電機等(いずれも図示せず)が搭載され、該エンジンによって発電機を駆動することにより、この発電機から後述の走行用モータ18に電力が供給される構成となっている。
【0037】
6は車体2の前部側に回転可能に設けられた左,右の前輪で、これら左,右の前輪6は、ダンプトラック1の運転者によって操舵(ステアリング操作)される操舵輪を構成するものである。前輪6は後述の後輪7と同様に、2〜4メートルに及ぶ大きなタイヤ径(外径寸法)をもって形成されている。
【0038】
7は車体2の後部側に回転可能に設けられた左,右の後輪で、これら左,右の後輪7は、ダンプトラック1の駆動輪を構成し、後述の走行装置11によって回転駆動される。各後輪7は、2本のタイヤ7Aと、該各タイヤ7Aが装着される後述のホイール12等によって構成されるものである。
【0039】
8は車体2の後部下側に設けられた後輪7用のアクスルハウジングで、該アクスルハウジング8は、左,右の後輪7間を左,右方向に延びる筒状体として形成されている。アクスルハウジング8は、ショックアブソーバ(図示せず)を介して車体2の後部下側に取付けられ、アクスルハウジング8の左,右方向の両端側には、後述のスピンドル15が固定される構成となっている。
【0040】
次に、前記ダンプトラック1に取付けられて第1の実施の形態に適用される走行装置11について具体的に説明する。
【0041】
即ち、11はダンプトラック1の左,右の後輪7にそれぞれ設けられた走行装置で、該走行装置11は、後述のホイール12、スピンドル15、ホイールベアリング16,17、走行用モータ18、シャフト19、減速機20、シャフトベアリング44等により構成されている。そして、この走行装置11は、走行用モータ18の回転を減速機20によって減速し、駆動輪となる左,右の後輪7を大きな回転トルクをもって走行駆動するものである。なお、左,右の後輪7に設けられる走行装置11は同一の構成を有しているため、以下、左側の後輪7に設けられた走行装置11について説明する。
【0042】
12は後輪7のタイヤ7Aが装着されるホイールで、該ホイール12は、左,右方向に延びる円筒状に形成され2本のタイヤ7Aが並列に取付けられる円筒状のリム13と、該リム13の内周側に固定して設けられた車輪支持部材14とにより大略構成されている。
【0043】
前記車輪支持部材14は、リム13の軸方向(左,右方向)の中間部に位置し、後述のホイールベアリング16,17が取付けられるベアリング取付部14Aと、リム13の軸方向外側(アクスルハウジング8とは反対側)に位置し、後述の内歯車31を介してベアリング取付部14Aに固定された外側ドラム部14Bとにより構成されている。
【0044】
15はホイール12の内側に挿入されたスピンドルで、該スピンドル15は、アクスルハウジング8に固定され、後述のホイールベアリング16,17を介してホイール12を回転可能に支持するものである。ここで、スピンドル15は、全体として左,右方向に延びるテーパ状の円筒体として形成され、軸方向の一側(アクスルハウジング8側)に位置するテーパ状の大径筒部15Aと、軸方向の他側に位置する小径円筒部15Bとにより構成されている。スピンドル15の大径筒部15Aは、アクスルハウジング8にボルトを用いて固定され、小径円筒部15Bの外周側には、後述のホイールベアリング16,17が取付けられる構成となっている。
【0045】
ここで、大径筒部15Aの軸方向の一端側には、径方向内向きに突出するモータ取付座15Cが一体に形成され、このモータ取付座15Cには後述の走行用モータ18が取付けられる構成となっている。大径筒部15Aの軸方向中間部の内周側には、径方向内向きに突出する環状の取付フランジ15Dが一体に形成され、該取付フランジ15Dには後述の隔壁35が取付けられる構成となっている。
【0046】
一方、小径円筒部15Bの他端側は開口端となり、この小径円筒部15Bの他端側には、後述する2段目のキャリア34が取付けられる構成となっている。小径円筒部15Bの軸方向の中間部には、その内周側に環状の中間フランジ15Eが一体に設けられている。また、小径円筒部15Bの下部側で、かつ中間フランジ15Eよりも軸方向他側には、該小径円筒部15Bの下部側を径方向(上,下方向)に貫通する径方向孔15Fが穿設されている。さらに、小径円筒部15の上部側には、中間フランジ15Eの近傍で後述のシャフトベアリング44と対応する位置において、後述のスピンドル側給脂通路48が穿設されている。
【0047】
16,17はスピンドル15の外周面とホイール12の内周面との間に設けられた左,右のホイールベアリングを示し、これら左,右のホイールベアリング16,17は、ホイール12をスピンドル15周りに回転可能に支持するものである。そして、左,右のホイールベアリング16,17は、スピンドル15を構成する小径円筒部15Bの外周面と、ホイール12の車輪支持部材14を構成するベアリング取付部14Aの内周面との間に、軸方向(左,右方向)に離間して配置されている。
【0048】
18はスピンドル15の一端側に着脱可能に取付けられた回転源としての走行用モータで、該走行用モータ18は、車体2に搭載された発電機(図示せず)からの電力供給によって回転駆動される大型の電動モータにより構成されている。走行用モータ18は、その外周側に複数の取付フランジ18Aを有し、これらの取付フランジ18Aがスピンドル15のモータ取付座15Cにボルトを用いて着脱可能に取付けられている。ここで、走行用モータ18は、発電機から電力が供給されることにより回転軸18Bを正方向または逆方向に回転させ、該回転軸18Bに連結された後述のシャフト19を回転駆動するものである。
【0049】
19は走行用モータ18の回転軸18Bに連結されたシャフトを示し、該シャフト19は、走行用モータ18によって正方向または逆方向に回転駆動されるものである。シャフト19は、スピンドル15の内周側を左,右方向に延びる1本の長尺な棒状体により構成され、シャフト19の一端側は走行用モータ18の回転軸18Bに連結されている。一方、シャフト19の他端側は、スピンドル15を構成する小径円筒部15Bの他端側から突出し、シャフト19の他端部には後述の太陽歯車22が取付けられている。また、左,右のホイールベアリング16,17の間に位置するシャフト19の軸方向の中間部19A(図4,図7参照)は、後述のシャフトベアリング44によって回転可能に支持されている。
【0050】
次に、20はスピンドル15の他端側に配置された減速機を示し、該減速機20は、シャフト19を介して伝達された走行用モータ18の回転を減速し、減速して得られた大きな回転力(トルク)をもってホイール12を回転駆動するものである。ここで、減速機20は、後述する1段目の遊星歯車減速機構21と、2段目の遊星歯車減速機構29とにより構成されている。
【0051】
21は減速機20を構成する1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構21は、シャフト19の他端部にスプライン結合された太陽歯車22と、該太陽歯車22とリング状の内歯車23とに噛合する3個の遊星歯車24(1個のみ図示)と、該各遊星歯車24を支持ピン25を介して回転可能に支持するキャリア26とにより構成されている。
【0052】
この場合、キャリア26の外周側は、車輪支持部材14を構成する外側ドラム部14Bの開口端(軸方向外側の端面)にボルトを介して着脱可能に固定され、車輪支持部材14と一体に回転する。一方、キャリア26の内周側には、円板状の蓋板27が着脱可能に取付けられ、該蓋板27は、太陽歯車22と遊星歯車24の噛合部を点検する場合等においてキャリア26から取外されるものである。
【0053】
リング状の内歯車23は、太陽歯車22、各遊星歯車24等を径方向外側から取囲む短尺の筒形歯車として形成され、外側ドラム部14Bの内周面との間に小さな径方向隙間を介して相対回転可能に配置されている。そして、内歯車23の内周側に全周に亘って形成された内歯は、各遊星歯車24に常時噛合するものである。
【0054】
1段目の遊星歯車減速機構21は、走行用モータ18によってシャフト19と一体に太陽歯車22が回転すると、この太陽歯車22の回転を各遊星歯車24の自転運動と公転運動とに変換する。各遊星歯車24の自転(回転)は、リング状の内歯車23に減速した回転として伝えられ、この内歯車23の回転が後述のカップリング28を介して2段目の遊星歯車減速機構29に伝達される構成となっている。
【0055】
一方、各遊星歯車24の公転は、キャリア26の回転となって車輪支持部材14の外側ドラム部14Bに伝達される。しかし、車輪支持部材14は、後述する2段目の内歯車31と一体に回転するため、各遊星歯車24の公転は、内歯車31(車輪支持部材14)に同期した回転に抑えられるものである。
【0056】
28は1段目の内歯車23と一体に回転するカップリングで、該カップリング28は、1段目の遊星歯車減速機構21と2段目の遊星歯車減速機構29との間に位置する環状の板体として形成されている。カップリング28の外周側は、1段目の内歯車23にスプライン結合され、カップリング28の内周側は、後述する2段目の太陽歯車30にスプライン結合されている。
【0057】
そして、カップリング28は、1段目の内歯車23の回転を2段目の太陽歯車30に伝達し、この太陽歯車30を1段目の内歯車23と一体に回転させるものである。なお、カップリング28には、後述の潤滑油Gを流通させる複数の油穴(図示せず)等を形成してもよい。
【0058】
29は2段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構29は、シャフト19と車輪支持部材14との間に1段目の遊星歯車減速機構21を介して配設され、1段目の遊星歯車減速機構21と共にシャフト19の回転を減速するものである。この2段目の遊星歯車減速機構29は、シャフト19と同軸に配置されカップリング28と一体に回転する円筒状の太陽歯車30と、該太陽歯車30とリング状の内歯車31とに噛合する3個の遊星歯車32(1個のみ図示)と、該各遊星歯車32を支持ピン33を介して回転可能に支持するキャリア34とにより構成されている。
【0059】
ここで、2段目の内歯車31は、太陽歯車30、各遊星歯車32等を径方向外側から取囲む短尺の筒形歯車として形成され、車輪支持部材14を構成するベアリング取付部14Aと外側ドラム部14Bとの間に一体的に固着されている。そして、内歯車31の内周側に全周に亘って形成された内歯は、各遊星歯車32に常時噛合するものである。
【0060】
2段目のキャリア34の中心部には、スピンドル15の小径円筒部15B内に嵌合される円筒部34Aが一体形成され、該円筒部34Aは、小径円筒部15Bの内周側に着脱可能にスプライン結合されている。そして、円筒部34Aの内周側には、シャフト19が挿通されると共に後述の供給管路40が挿入される構成となっている。
【0061】
従って、2段目の遊星歯車減速機構29は、キャリア34の円筒部34Aがスピンドル15の小径円筒部15Bにスプライン結合されることにより、各遊星歯車32の公転(キャリア34の回転)が拘束される。従って、遊星歯車減速機構29の太陽歯車30がカップリング28と一体に回転すると、この太陽歯車30の回転は各遊星歯車32に伝えられ、各遊星歯車32は、内歯車31に噛合した状態で、公転せずに自転のみを行う。この結果、各遊星歯車32の自転は2段目の内歯車31に伝達され、この内歯車31を減速して回転させる。これにより、内歯車31が固定された車輪支持部材14に対し、1段目の遊星歯車減速機構21と2段目の遊星歯車減速機構29とで2段減速された大出力の回転トルクを伝達することができる構成となっている。
【0062】
ここで、車輪支持部材14の内部には潤滑油Gが貯留され、各遊星歯車減速機構21,29は、常に潤滑油Gに浸された状態で作動する構成となっている。この場合、潤滑油Gの油面は、スピンドル15を構成する小径円筒部15Bの最下部よりも低く、かつホイールベアリング16,17の下端側が浸る位置に設定されている。これにより、走行装置11の作動時に、潤滑油Gが各遊星歯車減速機構21,29によって攪拌されて温度上昇するのを抑えることができ、かつ潤滑油Gの攪拌抵抗(粘性抵抗)を抑えることができる構成となっている。
【0063】
35はスピンドル15内に設けられた隔壁を示し、該隔壁35は、環状の板体により形成され、その外周側がスピンドル15の取付フランジ15Dにボルトを用いて固定されている。隔壁35は、スピンドル15内を、軸方向一側に位置し走行用モータ18が収容されるモータ収容部36と、軸方向他側に位置し車輪支持部材14の内部と常時連通する筒状空間部37とに画成するものである。
【0064】
38はスピンドル15と車輪支持部材14との間を液密にシールするシール装置で、該シール装置38はフローティングシールにより構成されている。このシール装置38は、車輪支持部材14内に貯溜された潤滑油Gが外部に漏洩するのを抑えると共に、土砂、雨水等が車輪支持部材14内に侵入するのを防止するものである。
【0065】
39はスピンドル15の内部から車輪支持部材14の内部へと延びる回収管路で、この回収管路39は、車輪支持部材14内に貯溜された潤滑油Gを回収するものである。この回収管路39の基端側は潤滑ポンプ(図示せず)の吸込側に接続されている。また、回収管路39の先端側は、後述するリテーナ42の管路取付孔42Fを貫通した後、シャフト19の下側からL字型に下向きに屈曲し、スピンドル15の径方向孔15Fを通じて車輪支持部材14内に突出している。
【0066】
40は回収管路39の上側に配置されスピンドル15の内部から車輪支持部材14の内部へと延びる供給管路で、この供給管路40は、遊星歯車減速機構21,29に向けて潤滑油Gを供給するものである。供給管路40の基端側は潤滑ポンプ(図示せず)の吐出側に接続されている。また、供給管路40の先端側は、後述するリテーナ42の管路取付孔42Eを貫通し、さらにシャフト19の上側を軸方向に延び、スピンドル15の小径円筒部15Bを通じて車輪支持部材14内に突出している。
【0067】
車輪支持部材14内の潤滑油Gは、潤滑ポンプを作動させることにより回収管路39を通じて回収され、オイルクーラ(図示せず)によって冷却された後、供給管路40を通じて遊星歯車減速機構21,29に供給され、これら遊星歯車減速機構21,29を潤滑するものである。
【0068】
41はシャフト19の中間部19Aに位置決めされ、該シャフト19と一体的に設けられたスリーブで、該スリーブ41はシャフト19の一部を構成するものである。ここで、図7に示すように、スリーブ41は、全体として段付き円筒状に形成され、該スリーブ41は、シャフト19の軸方向の中間部19Aに位置する円筒状のベアリング嵌合部41Aと、該ベアリング嵌合部41Aよりも大径な円板状のスリーブ鍔部41Bと、ベアリング嵌合部41Aを挟んでスリーブ鍔部41Bとは反対側に位置する雄ねじ部41Cと、該雄ねじ部41Cの一部を軸方向に切欠いて形成された溝部41Dとにより構成されている。そして、スリーブ41は、その内周側がシャフト19の中間部19Aに圧入されることにより、シャフト19に一体化されるものである。
【0069】
42はスピンドル15の内周側に配置されたリテーナで、該リテーナ42は、後述のシャフトベアリング44の外輪44Bを保持するものである。ここで、図5ないし図7に示すように、リテーナ42は、全体として短尺な円筒体からなり、該リテーナ42は、後述するシャフトベアリング44の外輪44Bが嵌合するベアリング嵌合孔部42Aと、該ベアリング嵌合孔部42Aの内周側から径方向内側に張出す円板状のリテーナ鍔部42Bとにより構成されている。さらに、ベアリング嵌合孔部42Aの内周面には、後述のストップリング47を取付けるための環状溝部42Cが形成されている。
【0070】
ここで、リテーナ42には、軸方向に貫通する複数個のボルト挿通孔42Dが形成され、これら各ボルト挿通孔42Dに挿通したボルト43(図6参照)をスピンドル15の中間フランジ15Eに螺合することにより、リテーナ42がスピンドル15の内周側に固定される構成となっている。また、リテーナ42には、ベアリング嵌合孔部42Aを挟んで上,下に2個の管路取付孔42E,42Fが穿設され、上側の管路取付孔42Eには供給管路40の途中部位が取付けられ、下側の管路取付孔42Fには回収管路39の先端部位が取付けられる構成となっている。
【0071】
さらに、リテーナ42には、その外周面42Gからベアリング嵌合孔部42Aに向けて径方向に貫通する後述のリテーナ側給脂通路49が設けられ、リテーナ42の外周面42Gには、後述のガイド溝50が設けられる構成となっている。
【0072】
44はスリーブ41とリテーナ42との間に設けられたシャフトベアリングを示し、該シャフトベアリング44は、スリーブ41を介してシャフト19の中間部19Aを回転可能に支持するものである。シャフトベアリング44は、スリーブ41のベアリング嵌合部41Aに嵌合する内輪44Aと、リテーナ42のベアリング嵌合孔部42Aに嵌合する外輪44Bと、これら内輪44Aと外輪44Bとの間に回転可能に設けられた多数の転動体44Cとにより構成されている。この場合、シャフトベアリング44の軸方向の一側端面44Dは、スリーブ41のスリーブ鍔部41Bに当接し、シャフトベアリング44の軸方向の他側端面44Eは、後述のナット45によって軸方向に押圧される。
【0073】
ここで、シャフト19の中間部19Aは、シャフトベアリング44によって支持されるものである。このため、シャフト19の中間部19Aは、スリーブ41のベアリング嵌合部41Aの内周側に固定される。一方、シャフトベアリング44の内輪44Aは、スリーブ41のベアリング嵌合部41Aの外周側に嵌合された状態で、スリーブ41の雄ねじ部41Cにナット45を螺合することにより、スリーブ41のスリーブ鍔部41Bとナット45との間で軸方向に位置決めされる。なお、46はシャフトベアリング44の他側端面44Eとナット45との間に設けられた廻止め板で、該廻止め板46は、スリーブ41の溝部41Dとナット45に設けられた溝部45Aとに係合することにより、ナット45をスリーブ41に対して廻止めするものである。
【0074】
次に、リテーナ42のベアリング嵌合孔部42Aを、シャフトベアリング44の外輪44Bに嵌合させた状態で、リテーナ42の環状溝部42Cにストップリング47を取付ける。これにより、シャフトベアリング44の外輪44Bは、リテーナ鍔部42Bとストップリング47との間で軸方向に位置決めされる。この状態で、リテーナ42の各ボルト挿通孔42Dにボルト43を挿通し、これら各ボルト43をスピンドル15の中間フランジ15Eに螺合することにより、リテーナ42は、スピンドル15の内周側に固定される。
【0075】
これにより、シャフトベアリング44は、シャフト19の中間部19Aに固定されたスリーブ41と、スピンドル15の中間フランジ15Eに固定されたリテーナ42との間に設けられ、該シャフトベアリング44によってシャフト19の中間部19Aを支持することができる。このとき、スリーブ41に設けられたスリーブ鍔部41Bの外周縁と、リテーナ42に設けられたリテーナ鍔部42Bの内周縁とは、シャフトベアリング44の一側端面44Dにおいて微小な隙間をもって相対回転可能に対面する構成となっている。従って、前記スリーブ鍔部41Bとリテーナ鍔部42Bとは、シャフトベアリング44に供給された潤滑油Gが、内輪44Aと外輪44Bとの間から走行用モータ18に向けて流出するのを防止している。
【0076】
48はスピンドル15の小径円筒部15Bに設けられたスピンドル側給脂通路を示している。このスピンドル側給脂通路48は、走行装置11の作動時にスピンドル15の上面に飛散した潤滑油Gを、後述のリテーナ側給脂通路49へと流下させるものである。このスピンドル側給脂通路48は、小径円筒部15Bのうち左,右のホイールベアリング16,17の間で、シャフトベアリング44と上,下方向で対向する位置において、小径円筒部15Bの最上部から径方向下向きに穿設され、小径円筒部15Bの外部と内部とを連通させている。一方、スピンドル側給脂通路48の下端側開口部48Aは、リテーナ42の外周面42Gに対面している。
【0077】
49はスピンドル側給脂通路48とシャフトベアリング44との間に位置してリテーナ42に設けられたリテーナ側給脂通路である。このリテーナ側給脂通路49は、スピンドル側給脂通路48を通じてリテーナ42に流下した潤滑油Gを、シャフトベアリング44に供給するものである。図6および図7に示すように、リテーナ側給脂通路49は、供給管路40との干渉を避けるためにリテーナ42の最上部から周方向に離間した位置、即ちスピンドル側給脂通路48とは周方向で異なる位置に形成され、鉛直方向に対して傾斜した状態でリテーナ42の外周面42Gから内周面へと径方向に貫通している。
【0078】
リテーナ42の外周面42Gに開口したリテーナ側給脂通路49の一端側(上端側)は、リテーナ側給脂通路49よりも大径な円形状の大径開口部49Aとなり、この大径開口部49Aの内径寸法(開口幅寸法)Dは、後述するガイド溝50の幅寸法Wよりも大きく設定されている(D>W)。また、リテーナ側給脂通路49の他端側(下端側)は、シャフトベアリング44の内輪44Aと外輪44Bとの間の隙間に開口している。
【0079】
50はリテーナ42の外周面42Gに形成されたガイド溝で、該ガイド溝50は、スピンドル側給脂通路48からリテーナ42に導かれた潤滑油Gを、リテーナ側給脂通路49の大径開口部49Aへと流下させるものである。ここで、図6および図7に示すように、ガイド溝50は、リテーナ42の厚さ寸法よりも僅かに小さな幅寸法Wを有し、リテーナ42の外周面42Gに全周に亘って形成されている。
【0080】
これにより、走行装置11の作動時にスピンドル15(小径円筒部15B)の上面に飛散した潤滑油Gは、スピンドル側給脂通路48を通じてリテーナ42に流下した後、リテーナ42の外周面42Gに形成されたガイド溝50に沿ってリテーナ側給脂通路49の大径開口部49Aへと案内される。そして、潤滑油Gは、大径開口部49Aからリテーナ側給脂通路49に導入され、該リテーナ側給脂通路49を通じてシャフトベアリング44の内輪44Aと外輪44Bとの間に供給され、各転動体44Cの転動面を潤滑する構成となっている。
【0081】
第1の実施の形態による走行装置11は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0082】
まず、車体2に搭載された発電機(図示せず)から走行用モータ18に電力が供給されることにより、走行用モータ18が作動してシャフト19が回転する。このシャフト19の回転は、1段目の遊星歯車減速機構21の太陽歯車22から各遊星歯車24に減速されて伝達され、各遊星歯車24の回転は、内歯車23およびカップリング28を介して2段目の遊星歯車減速機構29の太陽歯車30に減速されて伝達される。
【0083】
そして、2段目の遊星歯車減速機構29の太陽歯車30の回転は、各遊星歯車32に減速されて伝達される。このとき、各遊星歯車32を支持するキャリア34は、スピンドル15の小径円筒部15Bにスプライン結合されているため、各遊星歯車32の公転(キャリア34の回転)は拘束される。
【0084】
これにより、各遊星歯車32の回転が、車輪支持部材14に固定された内歯車31に減速されて伝達され、ホイール12は、1段目の遊星歯車減速機構21と2段目の遊星歯車減速機構29とで2段減速された大出力の回転トルクをもって回転する。この結果、駆動輪となる左,右の後輪7が回転し、ダンプトラック1を走行させることができる。
【0085】
そして、この走行装置11の作動時において、シャフト19の中間部19Aをシャフトベアリング44によって支持することにより、シャフト19が高速回転したときに、シャフト19の偏心によって中間部19Aが大きく撓むのを抑え、シャフト19の耐久性を高めることができる。
【0086】
ここで、第1の実施の形態においては、シャフト19を支持するシャフトベアリング44に対し、常に適正な潤滑を行うことができるようになっており、以下、このシャフトベアリング44に対する潤滑作用について説明する。
【0087】
まず、走行装置11の作動時において、車輪支持部材14内に貯溜された潤滑油Gは、車輪支持部材14がスピンドル15に対して回転することにより、該スピンドル15を構成する小径円筒部15Bの上面に飛散する。そして、潤滑油Gは、小径円筒部15Bの上面からスピンドル側給脂通路48に導入され、該スピンドル側給脂通路48の下端側開口部48Aを通じてリテーナ42へと流下する。
【0088】
然るに、リテーナ42の外周面42Gにはガイド溝50が形成されているので、スピンドル側給脂通路48から流下した潤滑油Gは、ガイド溝50に沿ってリテーナ42の外周面42Gを流れ、リテーナ側給脂通路49の大径開口部49Aから該リテーナ側給脂通路49に導入される。
【0089】
リテーナ側給脂通路49に導入された潤滑油Gは、このリテーナ側給脂通路49を通じてシャフトベアリング44へと導かれ、その内輪44Aと外輪44Bとの間に供給された後、他側端面44Eからスピンドル15の小径円筒部15B内に流出する。これにより、シャフトベアリング44の各転動体44Cの転動面を効率良く潤滑することができ、シャフトベアリング44の耐久性、信頼性を高めることができる。
【0090】
このとき、図7に示すように、シャフト19の一部を構成するスリーブ41にはスリーブ鍔部41Bが設けられ、シャフトベアリング44を保持するリテーナ42にはリテーナ鍔部42Bが設けられ、スリーブ鍔部41Bの外周縁とリテーナ鍔部42Bの内周縁とは微小な隙間をもって対面している。
【0091】
これにより、リテーナ側給脂通路49を通じてシャフトベアリング44に供給された潤滑油Gは、シャフトベアリング44の一側端面44Dにおいてスリーブ鍔部41Bとリテーナ鍔部42Bとによって遮蔽されている。このため、潤滑油Gは、スピンドル15の小径円筒部15B内を走行用モータ18側へと流れることなく減速機20側へと流下し、径方向孔15Fを通じて車輪支持部材14内に戻ることができる。従って、シャフトベアリング44を潤滑した潤滑油Gが、走行用モータ18側へ流出したり、シャフト19を伝って走行用モータ18側へ流出してしまうのを、スリーブ鍔部41Bとリテーナ鍔部42Bとによって抑えることができ、電動モータからなる走行用モータ18を潤滑油Gから保護することができる。
【0092】
かくして、第1の実施の形態によれば、スピンドル15の小径円筒部15Bにスピンドル側給脂通路48を形成すると共に、リテーナ42にリテーナ側給脂通路49を設ける構成としている。従って、走行装置11の作動時にスピンドル15の上面に飛散した潤滑油Gは、スピンドル側給脂通路48、リテーナ側給脂通路49を通じてシャフトベアリング44に供給される。これにより、シャフトベアリング44の各転動体44Cの転動面を効率良く潤滑することができ、シャフトベアリング44の耐久性、信頼性を高めることができる。この結果、シャフトベアリング44によってその中間部19Aを支持されたシャフト19の撓みを長期に亘って防止し、シャフト19の信頼性、耐久性を向上させることにより、走行装置11全体の信頼性を高めることができる。
【0093】
この場合、スピンドル側給脂通路48は、シャフトベアリング44と上,下方向で対向する位置に設けられているので、スピンドル15の上面からスピンドル側給脂通路48に導かれた潤滑油Gは、リテーナ側給脂通路49を介して無駄なくシャフトベアリング44に供給され、この大量の潤滑油Gによってシャフトベアリング44を効率良く潤滑することができる。
【0094】
また、リテーナ42の外周面42Gにガイド溝50を設けることにより、スピンドル側給脂通路48からリテーナ42へと流下した潤滑油Gを、ガイド溝50に沿って無駄なくリテーナ側給脂通路49へと案内することができ、大量の潤滑油Gによって効率良くシャフトベアリング44を潤滑することができる。
【0095】
従って、リテーナ側給脂通路49を、スピンドル側給脂通路48の直下ではなく、周方向で任意の位置に設けることが可能となる。この結果、リテーナ42の形状を、加工性や組立て性に優れた形状にすることができ、走行装置11全体の製造コストの低減にも寄与することができる。
【0096】
さらに、リテーナ側給脂通路49の一端側に大径開口部49Aを設け、この大径開口部49Aの内径寸法Dを、ガイド溝50の幅寸法Wよりも大きく設定したので、ガイド溝50を流れる潤滑油Gを、大径開口部49Aを通じて効率的にリテーナ側給脂通路49に導入することが可能となる。これにより、大量の潤滑油Gによってシャフトベアリング44を安定的に潤滑することができ、シャフトベアリング44の耐久性を向上させることができる。
【0097】
また、シャフト19の一部を構成するスリーブ41にスリーブ鍔部41Bを設けると共に、シャフトベアリング44を保持するリテーナ42にリテーナ鍔部42Bを設ける構成としている。従って、リテーナ側給脂通路49を通じてシャフトベアリング44に供給された潤滑油Gが、走行用モータ18側へ流出したり、シャフト19を伝って走行用モータ18側へ流出してしまうのを、スリーブ鍔部41Bとリテーナ鍔部42Bとによって抑えることができ、電動モータからなる走行用モータ18を潤滑油Gから保護することができる。
【0098】
次に、図8は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、スピンドルの上部に潤滑油を溜める初期油溜りを設けると共に、リテーナの外周面に潤滑油を溜める中間油溜りを設けたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0099】
図中、51はスピンドル15の上部に設けられた初期油溜りを示し、この初期油溜り51は、スピンドル15を構成する小径円筒部15Bの上面に形成され、各遊星歯車減速機構21,29の作動時にスピンドル15の上面に飛散した潤滑油Gを溜めるものである。初期油溜り51は、スピンドル側給脂通路48よりも大きな内径寸法を有する円形状の有底穴として小径円筒部15Bの上面に凹設され、初期油溜り51の底面51Aには、スピンドル側給脂通路48の上端側が開口している。
【0100】
52はシャフトベアリング44を保持するリテーナを示し、該リテーナ52は、第1の実施の形態によるリテーナ42に代えて本実施の形態に用いたものである。ここで、リテーナ52は、全体として短尺な円筒体として形成され、該リテーナ52は、シャフトベアリング44の外輪44Bが嵌合するベアリング嵌合孔部52Aと、該ベアリング嵌合孔部52Aの内周側から径方向内側に張出す円板状のリテーナ鍔部52Bとにより構成されている。ベアリング嵌合孔部52Aの内周面には、ストップリング47を取付けるための環状溝部52Cが形成されている。
【0101】
一方、リテーナ52には、軸方向に貫通する複数個のボルト挿通孔(図示せず)が形成され、これら各ボルト挿通孔に挿通したボルトによって、リテーナ52がスピンドル15の中間フランジ15Eに固定される構成となっている。また、リテーナ52には、ベアリング嵌合孔部52Aを挟んで上,下に2個(下側のみ図示)の管路取付孔52Dが穿設されている。また、リテーナ52の外周面52Eには、後述の中間油溜り54が設けられている。
【0102】
53はリテーナ52に設けられたリテーナ側給脂通路で、該リテーナ側給脂通路53は、スピンドル側給脂通路48を通じてリテーナ52に流下した潤滑油Gを、シャフトベアリング44に供給するものである。リテーナ側給脂通路53は、第1の実施の形態によるリテーナ側給脂通路49と同様に、供給管路40との干渉を避けるためにリテーナ52の最上部から周方向に離間した部位に形成され、鉛直方向に対して傾斜した状態でリテーナ52の外周面52Eから内周面へと径方向に貫通している。
【0103】
リテーナ側給脂通路53の一端側(上端側)は、後述する中間油溜り54の底面54Aに開口し、リテーナ側給脂通路52の他端側(下端側)は、シャフトベアリング44の内輪44Aと外輪44Bとの間の隙間に開口している。
【0104】
54はリテーナ52の外周面52Eに設けられた中間油溜りを示し、該中間油溜り54は、スピンドル側給脂通路48とリテーナ側給脂通路52との間に配置され、潤滑油Gを溜めるものである。中間油溜り54は、リテーナ側給脂通路53よりも大きな内径寸法を有する円形状の有底穴として形成され、中間油溜り54の底面54Aには、リテーナ側給脂通路53の一端側が開口している。
【0105】
中間油溜り54は、スピンドル側給脂通路48を通じてリテーナ52の外周面52Eに流下した潤滑油Gが導入されることにより、その内部に常に一定量の潤滑油Gを保持し、シャフトベアリング44に対して安定的に潤滑油Gを供給するものである。
【0106】
第2の実施の形態による走行装置は上述の如き構成を有するもので、スピンドル15の上面に飛散した潤滑油Gを、スピンドル側給脂通路48、リテーナ側給脂通路53等を通じてシャフトベアリング44に供給するという基本的作用については、上述した第1の実施の形態と格別差異はない。
【0107】
然るに、第2の実施の形態によれば、スピンドル15の小径円筒部15Bの上面には初期油溜り51を設け、リテーナ52の外周面52Eには中間油溜り54を設ける構成としている。これにより、スピンドル15上に飛散した潤滑油Gを、初期油溜り51を利用して集めた状態でスピンドル側給脂通路48に導入することができ、スピンドル側給脂通路48からリテーナ52の外周面52Eに流下した潤滑油Gを、中間油溜り54を利用して集めた状態でリテーナ側給脂通路53に導入することができるので、大量の潤滑油Gを効率良くシャフトベアリング44に供給することができる。
【0108】
また、初期油溜り51、中間油溜り54に潤滑油Gを保持することができるので、ダンプトラック1の走行状態(走行姿勢)に関わらず、シャフトベアリング44に対して安定的に潤滑油Gを供給することができる。これにより、シャフトベアリング44の信頼性を一層高めることができる。
【0109】
次に、図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、シャフトベアリングの外輪にリテーナ側給脂通路に連通する貫通穴を設けると共に、シャフトベアリングの軸方向両側のうち走行用モータ側にシールを設けたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0110】
図中、61はシャフト19の中間部19Aに一体的に設けられたスリーブで、該スリーブ61は、第1の実施の形態によるスリーブ41に代えて本実施の形態に用いたものである。ここで、スリーブ61は、全体として段付き円筒状に形成され、該スリーブ61は、シャフトベアリング44(内輪44A)の内周側が嵌合するベアリング嵌合部61Aと、該ベアリング嵌合部61Aよりも僅かに大径な円板状をなしシャフトベアリング44の内輪44Aの軸方向端面が係合する係合段部61Bと、ナット45が螺合する雄ねじ部61Cと、廻止め板46が係合する溝部61Dとにより構成されている。
【0111】
62はシャフトベアリング44を保持するリテーナを示し、該リテーナ62は、第1の実施の形態によるリテーナ42に代えて本実施の形態に用いたものである。リテーナ62は、全体として短尺な円筒体からなり、該リテーナ62は、シャフトベアリング44の外輪44Bが嵌合するベアリング嵌合孔部62Aと、該ベアリング嵌合孔部62Aの内周側から径方向内側に張出しシャフトベアリング44の外輪44Bの軸方向端面が係合する係合段部62Bとにより構成されている。ベアリング嵌合孔部62Aの内周面には、ストップリング47を取付けるための環状溝部62Cが形成されている。
【0112】
ここで、リテーナ62には、軸方向に貫通する複数個のボルト挿通孔が形成され、これら各ボルト挿通孔に挿通したボルトによって、リテーナ62がスピンドル15の中間フランジ15Eに固定される構成となっている。また、リテーナ62には、ベアリング嵌合孔部62Aを挟んで上,下に2個(下側のみ図示)の管路取付孔62Dが穿設されている。
【0113】
63はリテーナ62に設けられたリテーナ側給脂通路で、該リテーナ側給脂通路63は、スピンドル側給脂通路48を通じてリテーナ62に流下した潤滑油Gを、シャフトベアリング44に供給するものである。リテーナ側給脂通路63は、第1の実施の形態によるリテーナ側給脂通路49と同様に、供給管路40との干渉を避けるためにリテーナ62の最上部から周方向に離間した部位に形成され、鉛直方向に対して傾斜した状態でリテーナ62の外周面62Eから内周面へと径方向に貫通している。
【0114】
64はシャフトベアリング44の外輪44Bに形成された貫通穴で、該貫通穴64は、外輪44Bを径方向に貫通し、リテーナ側給脂通路63に連通するものである。従って、リテーナ側給脂通路63に導入された潤滑油Gは、シャフトベアリング44の貫通穴64を通じて内輪44Aと外輪44Bとの間に供給され、各転動体44Cの転動面を直接的に潤滑する構成となっている。
【0115】
65はシャフトベアリング44の軸方向両側の端面のうち、走行用モータ18(図4参照)側に位置する一側端面44Dに設けられたシールを示している。このシール65は、内輪44Aと外輪44Bとの間の隙間に対応する環状の板体により形成され、内輪44Aと外輪44Bとの間の隙間を埋める状態で配置されている。一方、シャフトベアリング44の軸方向両側の端面のうち、減速機20(図4参照)側に位置する他側端面44Eでは、内輪44Aと外輪44Bとの間の隙間が開放されている。
【0116】
これにより、シャフトベアリング44の貫通穴64を通じて内輪44Aと外輪44Bとの間に供給された潤滑油Gをシール65によって遮蔽し、この潤滑油Gが走行用モータ18側へ流出してしまうのを抑えることができる構成となっている。
【0117】
第3の実施の形態による走行装置は上述の如き構成を有するもので、スピンドル15の上面に飛散した潤滑油Gは、スピンドル15のスピンドル側給脂通路48、リテーナ62のリテーナ側給脂通路63を通じてシャフトベアリング44の貫通穴64に導入される。これにより、潤滑油Gは、貫通穴64を通じてシャフトベアリング44の内輪44Aと外輪44Bとの間に供給され、各転動体44Cの転動面を直接的に潤滑することができるので、シャフトベアリング44の信頼性を一層高めることができる。
【0118】
この場合、シャフトベアリング44の軸方向両側の端面のうち、走行用モータ18側に位置する一側端面44Dにはシール65が配置され、該シール65によって内輪44Aと外輪44Bとの間の隙間が閉塞されている。一方、シャフトベアリング44の軸方向両側の端面のうち、減速機20側に位置する他側端面44Eでは、内輪44Aと外輪44Bとの間の隙間が開放されている。
【0119】
これにより、シャフトベアリング44の内輪44Aと外輪44Bとの間に供給された潤滑油Gは、シャフトベアリング44の一側端面44Dに配置されたシール65によって遮蔽されることにより、シャフトベアリング44の他側端面44Eから減速機20側へと流下する。従って、シャフトベアリング44を潤滑した潤滑油Gが、走行用モータ18側へ流出したり、シャフト19を伝って走行用モータ18側へ流出してしまうのを、シール65によって抑えることができ、電動モータからなる走行用モータ18を潤滑油Gから保護することができる。
【0120】
なお、第1の実施の形態では、スピンドル15(小径円筒部15B)の内周側に、シャフトベアリング44を保持するためにスピンドル15とは別部材からなるリテーナ42を取付け、スピンドル15のスピンドル側給脂通路48に導入された潤滑油を、リテーナ42に設けたリテーナ側給脂通路49を介してシャフトベアリング44に供給する場合を例示している。
【0121】
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばスピンドル15を構成する小径円筒部15Bの内周側にベアリング保持部を一体形成し、このベアリング保持部によってシャフトベアリング44を保持する構成としてもよい。この場合には、別部材からなるリテーナが不要となるので、スピンドルに設けたスピンドル側給脂通路のみを用いて潤滑油をシャフトベアリング44に供給することができる。
【0122】
また、第2の実施の形態では、リテーナ52の外周面52Eに中間油溜り54のみを設けた場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば中間油溜り54に加え、リテーナ52の外周面52Eに全周に亘ってガイド溝を設ける構成としてもよい。このことは、第3の実施の形態によるリテーナ62についても同様である。
【0123】
また、第1の実施の形態では、シャフト19の一部を構成するスリーブ41にスリーブ鍔部41Bを設けると共に、シャフトベアリング44を保持するリテーナ42にリテーナ鍔部42Bを設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばスリーブ鍔部41Bとリテーナ鍔部42Bのうちいずれか一方のみを設ける構成としてもよい。
【0124】
また、第1の実施の形態では、リテーナ側給脂通路49を、供給管路40との干渉を避けるためにリテーナ42の最上部から周方向に離間した部位に形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、リテーナ側給脂通路49をリテーナ42の最上部に設ける構成とし、一方、供給管路40および管路取付孔42Eをリテーナ42の最上部から周方向に離間した部位に設ける構成としてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0125】
さらに、上述した各実施の形態では、回転源として電動モータからなる走行用モータ18を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧モータ等を回転源として用いてもよいものである。
【符号の説明】
【0126】
1 ダンプトラック
2 車体
11 走行装置
12 ホイール
15 スピンドル
16,17 ホイールベアリング
18 走行用モータ(回転源)
18B 回転軸
19 シャフト
19A 中間部
20 減速機
21,29 遊星歯車減速機構
41,61 スリーブ
41B スリーブ鍔部(鍔部)
42,52,62 リテーナ
42B,52B リテーナ鍔部(鍔部)
42G,52E,62E 外周面
44 シャフトベアリング
44A 内輪
44B 外輪
44C 転動体
48 スピンドル側給脂通路
49,53,63 リテーナ側給脂通路
50 ガイド溝
51 初期油溜り
54 中間油溜り
64 貫通穴
65 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(7A)が装着されるホイール(12)と、このホイール(12)の内側に挿入された円筒状のスピンドル(15)と、前記スピンドル(15)の外周面と前記ホイール(12)の内周面との間に設けられ前記ホイール(12)を回転可能に支持するホイールベアリング(16),(17)と、前記スピンドル(15)の一端側に配置され回転軸(18B)を回転駆動する回転源(18)と、前記回転源(18)の回転軸(18B)に連結され前記スピンドル(15)の内周側に挿通され前記スピンドル(15)の軸方向の他端から突出したシャフト(19)と、前記スピンドル(15)の他端側に配置され潤滑油(G)に浸された状態で前記シャフト(19)からホイール(12)に動力を伝達する減速機(20)とを備えてなるダンプトラック用走行装置において、
前記シャフト(19)の軸方向の中間部(19A)には、前記スピンドル(15)の内周側に位置し前記スピンドル(15)に対して前記シャフト(19)を回転可能に支持するシャフトベアリング(44)を設け、
前記スピンドル(15)の上部には、前記スピンドル(15)の外周側と内周側との間を連通するスピンドル側給脂通路(48)を形成し、前記ホイール(12)の回転により前記スピンドル(15)の上部に供給された潤滑油(G)をこのスピンドル側給脂通路(48)を用いて前記シャフトベアリング(44)に導くことを特徴としたダンプトラック用走行装置。
【請求項2】
前記スピンドル側給脂通路(48)は、前記シャフトベアリング(44)と上,下方向で対向する位置に設ける構成としてなる請求項1に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項3】
前記スピンドル(15)の内周側には、前記シャフトベアリング(44)を保持するリテーナ(42),(52),(62)を設け、
前記リテーナ(42),(52),(62)には、前記スピンドル側給脂通路(48)から流出した前記潤滑油(G)を前記シャフトベアリング(44)の転動面に導くリテーナ側給脂通路(49),(53),(63)を形成してなる請求項1または2に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項4】
前記リテーナ(42)の外周面(42G)には、前記リテーナ側給脂通路(49)の一端側が開口すると共に、前記スピンドル側給脂通路(48)から供給された潤滑油(G)を前記リテーナ側給脂通路(49)の一端側まで流下させるガイド溝(50)を形成してなる請求項3に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項5】
前記リテーナ側給脂通路(49)は、その一端側の開口幅寸法(D)を前記リテーナ(42)の前記ガイド溝(50)の幅寸法(W)よりも大きく設定してなる請求項4に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項6】
前記リテーナ(52)の外周面(52E)には、前記スピンドル側給脂通路(48)と前記リテーナ側給脂通路(53)との間に位置して潤滑油(G)を溜める中間油溜り(54)を形成してなる請求項3に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項7】
前記シャフト(19)および/または前記リテーナ(42),(52)には、前記シャフトベアリング(44)の軸方向両側のうち前記回転源(18)側に位置して、前記シャフトベアリング(44)に供給された潤滑油(G)が前記回転源(18)側に流出する事を抑制する鍔部(41B),(42B),(52B)を設ける構成としてなる請求項3に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項8】
前記シャフトベアリング(44)は、前記シャフト(19)と一緒に回転する内輪(44A)と、前記スピンドル(15)側に固定された外輪(44B)と、前記内輪(44A)と前記外輪(44B)との間に設けられ前記内輪(44A)を回転可能に支持する転動体(44C)とからなり、
前記シャフトベアリング(44)の外輪(44B)には径方向に貫通した貫通穴(64)を形成し、この貫通穴(64)と前記リテーナ(62)の前記リテーナ側給脂通路(63)とを連通させる構成としてなる請求項3に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項9】
前記シャフトベアリング(44)には、その軸方向両側のうち前記回転源(18)側のみにシール(65)を設ける構成としてなる請求項8に記載のダンプトラック用走行装置。
【請求項10】
前記スピンドル(15)の上部には、前記スピンドル(15)の外周側に位置して前記スピンドル側給脂通路(48)に供給する潤滑油(G)を溜める初期油溜り(51)を設ける構成としてなる請求項1に記載のダンプトラック用走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−184040(P2011−184040A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14434(P2011−14434)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】