説明

チェーンテンショナ

【課題】駆動スプロケットと従動スプロケットとに巻き掛けられるチェーンの一方側を走る一方側チェーン部分と他方側を走る他方側チェーン部分の両方に対しテンションを常に作用させることのできるチェーンテンショナを提供すること。
【解決手段】所定の軸間距離を隔てて配される駆動スプロケット12と従動スプロケット13とに無端状に巻き掛けられる伝動用ローラチェーン14の張りを調整するチェーンテンショナ30であって、伝動用ローラチェーン14の上側チェーン部分14aに接触して転動する上側転動ローラ31と、伝動用ローラチェーン14の下側チェーン部分14bに接触して転動する下側転動ローラ32と、これら上側転動ローラ31及び下側転動ローラ32を共に対応するチェーン部分14a,14bに押し付け付勢する付勢手段33とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンの張りを調整するチェーンテンショナに関し、特に、濾材再生式エアフィルタ装置の駆動部における動力伝達手段として用いられているチェーン伝動機構に付設されて好適なチェーンテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルや地下鉄、工場などの空調用の空気清浄装置として、濾材面に付着した塵埃を吸引ノズルで吸引・除去するようにした濾材再生式エアフィルタ装置が広く用いられている。
この濾材再生式エアフィルタ装置は、濾材の洗浄・交換などの保守作業の必要がなく、濾材が常に新しい状態に保たれるため、捕集効率が安定するという利点がある。
【0003】
図4(a)に示すように、この種の濾材再生式エアフィルタ装置101は、正面視四角枠状のケーシング102と、ケーシング102の中央開口部に組み付けられる濾材103と、ケーシング102の左右両側部に配される図示されない昇降ガイドレールに沿って案内される横梁部材104と、横梁部材104を昇降駆動する昇降駆動装置105と、濾材103に吸込み口を臨ませた状態で左右方向に移動自在に横梁部材104に装着される吸引ノズル106と、横梁部材104に内設され、吸引ノズル106を左右方向に往復駆動する左右往復駆動装置107とを備えて構成されている。
この濾材再生式エアフィルタ装置101においては、吸引ノズル106がフレキシブルホースや配管継手等(いずれも図示省略)を介して図示されない吸引装置に接続されており、この吸引装置を作動させながら昇降駆動装置105及び左右往復駆動装置107の協働にて吸引ノズル106を上下左右に移動させることにより、濾材103に付着した塵埃を濾材全面に亘って吸引・除去することができるようになっている。
【0004】
昇降駆動装置105は、電動機と減速機とが一体的に組み合わされてなる駆動源としてのギヤドモータ108と、ケーシング102の上部に設けられる上側チェーン伝動機構109と、ケーシング102の左側部に設けられる左側チェーン伝動機構110と、ケーシング102の右側部に設けられる右側チェーン伝動機構111とを備えて構成されている。
【0005】
図4(a)に示すように、上側チェーン伝動機構109は、ギヤドモータ108により回転駆動される駆動スプロケット112と、この駆動スプロケット112に対し所定の軸間距離を隔てて左側に配置される従動スプロケット113と、これらスプロケット112,113に無端状に巻き掛けられる伝動用ローラチェーン114とにより構成されている。
左側チェーン伝動機構110は、上側チェーン伝動機構109における従動スプロケット113と同軸上に配される原動スプロケット115と、この原動スプロケット115に対し所定の軸間距離を隔てて下側に配置される従動スプロケット116と、これらスプロケット115,116に無端状に巻き掛けられる左昇降用ローラチェーン117とにより構成されている。
右側チェーン伝動機構111は、上側チェーン伝動機構109における駆動スプロケット112と同軸上に配される原動スプロケット118と、この原動スプロケット118に対し所定の軸間距離を隔てて下側に配置される従動スプロケット119と、これらスプロケット118,119に無端状に巻き掛けられる右昇降用ローラチェーン120とにより構成されている。
【0006】
横梁部材104の左側部及び右側部には、左右方向に所要長さの長孔が形成されてなるガイド部材121,121′がそれぞれ固着されている。
横梁部材104の左側部は、ガイド部材121の長孔に係合する滑車122、この滑車122を回転自在に支承する支承ピン123及びアダプタ(図示省略)を介して左昇降用ローラチェーン117の1リンクに連結されている。
一方、横梁部材104の右側部も同様に、ガイド部材121′の長孔に係合する滑車122′、この滑車122′を回転自在に支承する支承ピン123′及びアダプタ(図示省略)を介して右昇降用ローラチェーン120の1リンクに連結されている。
【0007】
昇降駆動装置105においては、駆動スプロケット112がギヤドモータ108により一方向(例えば、図4(a)中記号R矢印方向)に回転駆動され、これにより各原動スプロケット115,118が一方向に回転駆動されて各昇降用ローラチェーン117,120が一方向に周回運動される。
各昇降用ローラチェーン117,120の周回運動において、各支承ピン123,123′が各原動スプロケット115,118又は各従動スプロケット116,119を通過する際には、滑車122,122′がガイド部材121,121′に沿ってスライドして各支承ピン123,123′の進行方向が反転される。
このように、ガイド部材121,121′及び滑車122,122′は、各支承ピン123,123′が各原動スプロケット115,118又は各従動スプロケット116,119を通過する際に各支承ピン123,123′の進行方向を反転させる反転機構としての役目をする。
なお、この種の反転機構と同様の反転機構を具備する濾材再生式エアフィルタ装置が、例えば、特許文献1にて知られている。
【0008】
【特許文献1】登録実用新案第3026240号公報
【0009】
上側チェーン伝動機構109には、駆動スプロケット112と従動スプロケット113との間の中間に位置して伝動用ローラチェーン114の張りを調整するチェーンテンショナ130が付設されている。
図5に示すように、このチェーンテンショナ130は、伝動用ローラチェーン114の上側チェーン部分114aに上方側から噛合して転動する転動スプロケット131を備えている。
この転動スプロケット131はピン132により軸支されており、このピン132はケーシング102の天板102aから垂設される支持板133に上下方向に移動可能に締着されている。
このチェーンテンショナ130においては、ピン132の上方に位置するように押しボルトブラケット134が支持板133に固定され、この押しボルトブラケット134に螺着される押しボルト135がピン132に接当され、ピン132を支持板133に固定するためのナット(図示省略)を弛めた状態で押しボルト135の締め込みにより、転動スプロケット131を上側チェーン部分114aに押し付けるように移動させることができるようになっている。
【0010】
さらに、このチェーンテンショナ130は、上側チェーン部分114aに下方側から噛合してその上側チェーン部分114aを支持・案内する一対の遊動スプロケット136,136を備えている。
これら遊動スプロケット136,136は、転動スプロケット131を挟むような位置関係で左右に所定間隔を存して配され、各遊動スプロケット136は、支持板133に締着されるピン137により軸支されている。
【0011】
以上に述べたような構成の濾材再生式エアフィルタ装置101において、運転開始段階では、伝動用ローラチェーン114のテンションを押しボルト135の操作による転動スプロケット131の上下方向位置調整により、伝動用ローラチェーン114が適度な張り具合とされている。
しかし、かかる上下方向位置調整の完了後は転動スプロケット131の上下方向位置が固定されるから、運転時間の増加に伴い伝動用ローラチェーン114が伸びると、横梁部材104が降り動作状態にあるときには、図4(a)に示されるように、伝動用ローラチェーン114の下側チェーン部分114bが図中記号Aの破線で示すように弛み、これとは逆に、横梁部材104が昇り動作状態にあるときには、図4(b)に示されるように、伝動用ローラチェーン114の上側チェーン部分114aが図中記号Bの破線で示すように弛み、伝動用ローラチェーン114が弛み状態のままで濾材再生式エアフィルタ装置101の運転が行われることになる。
【0012】
図4(a)に示されるように、横梁部材104が降り動作状態にあるときには、左昇降用ローラチェーン117において左側を走る左側チェーン部分117a上に支承ピン123が位置してその左側チェーン部分117aに下向きの荷重が作用するから、この荷重作用に伴って伝動用ローラチェーン114の上側チェーン部分114aに負荷がかかり、その上側チェーン部分114aが張り勝手になる一方で、下側チェーン部分114bが弛み勝手となる。
これとは逆に、図4(b)に示されるように、横梁部材104が昇り動作状態にあるときには、左昇降用ローラチェーン117において右側を走る右側チェーン部分117b上に支承ピン123が位置してその右側チェーン部分117bに下向きの荷重が作用するから、この荷重作用に伴って伝動用ローラチェーン114の下側チェーン部分114bに負荷がかかり、その下側チェーン部分114bが張り勝手になる一方で、上側チェーン部分114aが弛み勝手となる。
【0013】
このため、支承ピン123が降り動作から昇り動作に変わり、進行方向が反転したときには、つまり図4(a)に示される状態から同図(b)に示される状態に変化したときには、それまで弛み状態にあった伝動用ローラチェーン114の下側チェーン部分114bが張り状態となり、図4(a)中記号Aの破線で示す弛みが無くなるまで、支承ピン123の昇り動作が滞ることになる。
このとき、支承ピン123の周回運動と同時進行で周回運動される支承ピン123′は、駆動スプロケット112に直接的に巻き掛けられる右昇降用ローラチェーン120に連結されているから、伝動用ローラチェーン114の弛み状態の有無に関わりなく、昇り動作がスムーズに行われることになる。
したがって、この場合、横梁部材104の左側部が右側部と比べて昇り動作が遅れることになり、横梁部材104の左右のバランスが崩れて横梁部材104の昇り動作が全体としてスムーズに行われないという不具合が生じてしまう。
【0014】
一方、支承ピン123が昇り動作から降り動作に変わり、進行方向が反転したときには、つまり図4(b)に示される状態から同図(a)に示される状態に変化したときには、それまで弛み状態にあった伝動用ローラチェーン114の上側チェーン部分114aが張り状態となり、図4(b)中記号Bの破線で示す弛みが無くなるまで、支承ピン123の降り動作が急激に進むことになる。
このとき、支承ピン123の周回運動と同時進行で周回運動される支承ピン123′は、駆動スプロケット112に直接的に巻き掛けられる右昇降用ローラチェーン120に連結されているから、伝動用ローラチェーン114の弛み状態の有無に関わりなく、降り動作がスムーズに行われることになる。
したがって、この場合、横梁部材104の左側部が右側部と比べて降り動作が一瞬速まることになり、横梁部材104の左右のバランスが崩れて横梁部材104の降り動作が全体としてスムーズに行われないという不具合が生じてしまう。
【0015】
要するに、上側チェーン伝動機構109に付設される従来のチェーンテンショナ130では、駆動スプロケット112と従動スプロケット113とに巻き掛けられる伝動用ローラチェーン114の上側チェーン部分114aと下側チェーン部分114bの両方に対しテンションを常に作用させることができないため、負荷が上側チェーン部分114aと下側チェーン部分114bに交互に繰り返し作用したときに、動力伝達経路上、従動スプロケット113の下流側に位置する被駆動体としての横梁部材104の昇降動作がスムーズに行われないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来のチェーンテンショナの有する問題点に鑑み、駆動スプロケットと従動スプロケットとに巻き掛けられるチェーンの一方側を走る一方側チェーン部分と他方側を走る他方側チェーン部分の両方に対しテンションを常に作用させることのできるチェーンテンショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のチェーンテンショナは、所定の軸間距離を隔てて配される駆動スプロケットと従動スプロケットとに無端状に巻き掛けられるチェーンの張りを調整するチェーンテンショナであって、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間において一方側を走る一方側チェーン部分に接触して転動する一側の転動輪と、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間において他方側を走る他方側チェーン部分に接触して転動する他側の転動輪と、これら一側の転動輪及び他側の転動輪を共に対応するチェーン部分に押し付け付勢する付勢手段とを備えるものとしたことを特徴とする。
【0018】
この場合において、一側の転動輪及び他側の転動輪のうち少なくとも一方の転動輪は対応するチェーン部分に対して進退可能に設けられ、該転動輪の進退位置を調整する進退位置調整手段を備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のチェーンテンショナによれば、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間において一方側を走る一方側チェーン部分に接触して転動する一側の転動輪と、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間において他方側を走る他方側チェーン部分に接触して転動する他側の転動輪とが設けられるとともに、これら一側の転動輪及び他側の転動輪を共に対応するチェーン部分に押し付け付勢する付勢手段が設けられるので、チェーンが多少伸びたとしても、一方側チェーン部分と他方側チェーン部分の両方に対しテンションを常に作用させることができ、負荷が一方側チェーン部分と他方側チェーン部分に交互に繰り返し作用するようなチェーン伝動機構に適用された場合であっても、動力伝達経路上、従動スプロケットの下流側に位置する被駆動体のスムーズな動作を長期に亘って安定的に保つことができる。
【0020】
また、一側の転動輪及び他側の転動輪のうち少なくとも一方の転動輪は対応するチェーン部分に対して進退可能に設けられ、該転動輪の進退位置を調整する進退位置調整手段を備えるものとすることにより、付勢手段にても吸収しきれないチェーンの伸びを進退位置調整手段による進退位置調整により吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のチェーンテンショナの実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施例は、濾材再生式エアフィルタ装置の駆動部における動力伝達手段として用いられているチェーン伝動機構に付設されるチェーンテンショナに本発明が適用された例である。
【実施例】
【0022】
図1〜図3に、本発明のチェーンテンショナの一実施例を示す。
図1(a)に示す濾材再生式エアフィルタ装置1は、正面視四角枠状のケーシング2と、ケーシング2の中央開口部に組み付けられる濾材3と、ケーシング2の左右両側部に配される図示されない昇降ガイドレールに沿って案内される横梁部材4と、横梁部材4を昇降駆動する昇降駆動装置5と、濾材3に吸込み口を臨ませた状態で左右方向に移動自在に横梁部材4に装着される吸引ノズル6と、横梁部材4に内設され、吸引ノズル6を左右方向に往復駆動する左右往復駆動装置7とを備えて構成されている。
この濾材再生式エアフィルタ装置1においては、吸引ノズル6がフレキシブルホースや配管継手等(いずれも図示省略)を介して図示されない吸引装置に接続されており、この吸引装置を作動させながら昇降駆動装置5及び左右往復駆動装置7の協働にて吸引ノズル6を上下左右に移動させることにより、濾材3に付着した塵埃を濾材全面に亘って吸引・除去することができるようになっている。
【0023】
昇降駆動装置5は、電動機と減速機とが一体的に組み合わされてなる駆動源としてのギヤドモータ8と、ケーシング2の上部に設けられる上側チェーン伝動機構9と、ケーシング2の左側部に設けられる左側チェーン伝動機構10と、ケーシング2の右側部に設けられる右側チェーン伝動機構11とを備えて構成されている。
【0024】
図1(a)に示すように、上側チェーン伝動機構9は、ギヤドモータ8により回転駆動される駆動スプロケット12と、この駆動スプロケット12に対し所定の軸間距離を隔てて左側に配置される従動スプロケット13と、これらスプロケット12,13に無端状に巻き掛けられる伝動用ローラチェーン14とにより構成されている。
左側チェーン伝動機構10は、上側チェーン伝動機構9における従動スプロケット13と同軸上に配される原動スプロケット15と、この原動スプロケット15に対し所定の軸間距離を隔てて下側に配置される従動スプロケット16と、これらスプロケット15、16に無端状に巻き掛けられる左昇降用ローラチェーン17とにより構成されている。
右側チェーン伝動機構11は、上側チェーン伝動機構9における駆動スプロケット12と同軸上に配される原動スプロケット18と、この原動スプロケット18に対し所定の軸間距離を隔てて下側に配置される従動スプロケット19と、これらスプロケット18,19に無端状に巻き掛けられる右昇降用ローラチェーン20とにより構成されている。
【0025】
横梁部材4の左側部及び右側部には、左右方向に所要長さの長孔が形成されてなるガイド部材21,21′がそれぞれ固着されている。
横梁部材4の左側部は、ガイド部材21の長孔に係合する滑車22、この滑車22を回転自在に支承する支承ピン23及びアダプタ(図示省略)を介して左昇降用ローラチェーン17の1リンクに連結されている。
一方、横梁部材4の右側部も同様に、ガイド部材21′の長孔に係合する滑車22′、この滑車22′を回転自在に支承する支承ピン23′及びアダプタ(図示省略)を介して右昇降用ローラチェーン20の1リンクに連結されている。
【0026】
昇降駆動装置5においては、駆動スプロケット12がギヤドモータ8により一方向(例えば、図1(a)中記号R矢印方向)に回転駆動され、これにより各原動スプロケット15,18が一方向に回転駆動されて各昇降用ローラチェーン17,20が一方向に周回運動される。
各昇降用ローラチェーン17,20の周回運動において、各支承ピン23,23′が各原動スプロケット15,18又は各従動スプロケット16,19を通過する際には、滑車22,22′がガイド部材21,21′に沿ってスライドして各支承ピン23,23′の進行方向が反転される。
このように、ガイド部材21,21′及び滑車22,22′は、各支承ピン23,23′が各原動スプロケット15,18又は各従動スプロケット16,19を通過する際に各支承ピン23,23′の進行方向を反転させる反転機構としての役目をする。
【0027】
上側チェーン伝動機構9には、駆動スプロケット12と従動スプロケット13との間の中間に位置して伝動用ローラチェーン14の張りを調整するチェーンテンショナ30が付設されている。
図2に示すように、このチェーンテンショナ30は、伝動用ローラチェーン14の上側チェーン部分14aに上方側から接触して転動する上側転動ローラ31(本発明の「一側の転動輪」に相当する。)と、伝動用ローラチェーン14の下側チェーン部分14bに上方側から接触して転動する下側転動ローラ32(本発明の「他側の転動輪」に相当する。)と、これら上側転動ローラ31及び下側転動ローラ32を共に対応するチェーン部分14a,14bに押し付け付勢する付勢手段33とを備えて構成されている。
【0028】
付勢手段33は、主に、ケーシング2の天板2aから垂設される支持板34に上下方向に移動自在に支持されるスライド板35と、このスライド板35に付勢力を付与する所要個数(本例では2個)の圧縮コイルばね36とにより構成されている。
支持板34には、上下方向に延びる一対のガイド部材37,37が互いに平行で左右に所定間隔を存して固定され、これらガイド部材37,37にスライド板35が保持されることにより、スライド板35が上下方向に移動自在とされている。
図3に示すように、スライド板35の上部には、ばね支持板38が固着される一方、支持板34の上端部には、ばね支持板38と対向するようにばね反力受け板39が固着され、これらばね支持板38とばね反力受け板39との間に圧縮コイルばね36が組み込まれている。
また、ばね支持板38の上面に圧縮コイルばね36の略下半分を包み込む円筒状のばねホルダ40が固着される一方、圧縮コイルばね36とばね反力受け板39との間に圧縮コイルばね36の上端部を保持するばね受け座金41が介挿され、更にばね受け座金41の横方向の移動を規制する位置決めボルト42がばね反力受け板39に螺着され、ばねホルダ40及びばね受け座金41により、圧縮コイルばね36がばね支持板38とばね反力受け板39との間で安定的に保持されるようになっている。
【0029】
上側転動ローラ31は第1ピン45により軸支される一方、下側転動ローラ32は第2ピン46により軸支されている。
第1ピン45は、上側転動ローラ31が装着されるピン本体部分45aと、このピン本体部分45aに一体的に設けられる軸頸部分45bとよりなり、スライド板35に形成された丸孔に軸頸部分45bが挿入された状態でその軸頸部分45bに形成された雄ねじに螺合するナット47の締め付けにてスライド板35に固定されている。
一方、第2ピン46は、下側転動ローラ32が装着されるピン本体部分46aと、このピン本体部分46aに一体的に設けられる軸頸部分46bとよりなり、スライド板35に上下方向に延びるように形成された長孔35aに軸頸部分46bが挿入された状態でその軸頸部分46bに形成された雄ねじに螺合するナット48の締め付けにてスライド板35に固定されている。
ここで、ナット48を弛めた状態では、第2ピン46が長孔35aに沿って上下方向に移動可能な状態となり、第2ピン46の下方への移動にて下側転動ローラ32を下側チェーン部分14bに押し込むように進めたり、第2ピン46の上方への移動にて下側転動ローラ32を下側チェーン部分14bから引き離す方向に後退させたりすることができる。
【0030】
スライド板35の下端部には第2ピン46のピン本体部分46aの下方に位置するようにボルトブラケット49が固着され、このボルトブラケット49にはボルト50(本発明の「進退位置調整手段」に相当する。)が貫通・装着され、このボルト50は第2ピン46のピン本体部分46aに上下方向に貫通するように形成されたねじ孔に螺合されている。
したがって、ナット48を弛めた状態において、ボルト50を締め込むように操作すると、第2ピン46が下方へ移動し、ボルト50の操作にて下側転動ローラ32の上下方向位置を調整することができる。
【0031】
さらに、図2に示されるように、このチェーンテンショナ30は、上側チェーン部分14aに下方側から接触してその上側チェーン部分14aを支持・案内する一対の上側遊動ローラ51,51と、下側チェーン部分14bに下方側から接触してその下側チェーン部分14bを支持・案内する一対の下側遊動ローラ52,52とを備えている。
一対の上側遊動ローラ51,51は上側転動ローラ31を挟むような位置関係で左右に所定間隔を存して配されるとともに、一対の下側遊動ローラ52,52は下側転動ローラ32を挟むような位置関係で左右に所定間隔を存して配され、各遊動ローラ51,52は支持板34に締着されるピン53により軸支されている。
【0032】
なお、本実施例において、上側転動ローラ31、下側転動ローラ32、上側遊動ローラ51及び下側遊動ローラ52はいずれも、伝動用ローラチェーン14を構成するリンク部材と係合するリング状凸部がその外周面に形成されてなるものであるが、このような構造のローラに代えて、リンク部材と噛合する歯がその外周部に形成されてなるスプロケットを採用してもよい。
【0033】
以上に述べたような構成のチェーンテンショナ30によれば、圧縮コイルばね36の弾発力がスライド板35及び第1ピン45を介して上側転動ローラ31に、また同弾発力がスライド板35及び第2ピン46を介して下側転動ローラ32にそれぞれ伝達され、これら上側転動ローラ31及び下側転動ローラ32が共に対応するチェーン部分14a,14bに押し付け付勢されるので、伝動用ローラチェーン14が多少伸びたとしても、上側チェーン部分14aと下側チェーン部分14bの両方に対しテンションを常に作用させることができる。
したがって、図1(a)に示されるように、左昇降用ローラチェーン17において左側を走る左側チェーン部分17a上に支承ピン23が位置してその左側チェーン部分17aに下向きの荷重が作用し、この荷重作用に伴って伝動用ローラチェーン14の上側チェーン部分14aに負荷がかかるような負荷状態と、これとは逆に、図1(b)に示されるように、左昇降用ローラチェーン17において右側を走る右側チェーン部分17b上に支承ピン23が位置してその右側チェーン部分17bに下向きの荷重が作用し、この荷重作用に伴って伝動用ローラチェーン14の下側チェーン部分14bに負荷がかかるような負荷状態とが交互に繰り返されるような場合であっても、動力伝達経路上、従動スプロケット13の下流側に位置する被駆動体としての横梁部材4のスムーズな昇降動作を長期に亘って安定的に保つことができる。
【0034】
なお、付勢手段33にても吸収しきれない程、伝動用ローラチェーン14が伸びた場合には、以下のような調整動作が行われる。
まず、第2ピン46の軸頸部分46bに螺合されているナット48を弛めた後、ボルト50の締め込み操作にて第2ピン46を下方に移動させていき、下側転動ローラ32を下側チェーン部分14bに押し込んでいく。
そして、伝動用ローラチェーン14が適度に張ったところで、ボルト50の締め込み操作を止め、その後、ナット48を締め付けて第2ピン46のスライド板35に対する上下方向位置を固定する。
こうして、付勢手段33にても吸収しきれない伝動用ローラチェーン14の伸びをボルト50による下側転動ローラ32の上下方向位置調整により吸収することができる。
【0035】
以上、本発明のチェーンテンショナについて、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のチェーンテンショナは、駆動スプロケットと従動スプロケットとに巻き掛けられるチェーンの一方側を走る一方側チェーン部分と他方側を走る他方側チェーン部分の両方に対しテンションを常に作用させることができるという特性を有していることから、負荷が一方側チェーン部分と他方側チェーン部分に交互に繰り返し作用するようなチェーン伝動機構のチェーンテンション調整の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のチェーンテンショナを具備する濾材再生式エアフィルタ装置を模式的に示す正面図で、横梁部材降り動作状態図(a)及び横梁部材昇り動作状態図(b)である。
【図2】本発明のチェーンテンショナの一実施例を示す正面図である。
【図3】図2のX−X線要部断面図である。
【図4】従来のチェーンテンショナを具備する濾材再生式エアフィルタ装置を模式的に示す正面図で、横梁部材降り動作状態図(a)及び横梁部材昇り動作状態図(b)である。
【図5】従来のチェーンテンショナを示す正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 濾材再生式エアフィルタ装置
12 駆動スプロケット
13 従動スプロケット
14 伝動用ローラチェーン
14a 上側チェーン部分
14b 下側チェーン部分
30 チェーンテンショナ
31 上側転動ローラ
32 下側転動ローラ
33 付勢手段
35 スライド板
36 圧縮コイルばね
50 ボルト(進退位置調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸間距離を隔てて配される駆動スプロケットと従動スプロケットとに無端状に巻き掛けられるチェーンの張りを調整するチェーンテンショナであって、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間において一方側を走る一方側チェーン部分に接触して転動する一側の転動輪と、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間において他方側を走る他方側チェーン部分に接触して転動する他側の転動輪と、これら一側の転動輪及び他側の転動輪を共に対応するチェーン部分に押し付け付勢する付勢手段とを備えるものとしたことを特徴とするチェーンテンショナ。
【請求項2】
一側の転動輪及び他側の転動輪のうち少なくとも一方の転動輪は対応するチェーン部分に対して進退可能に設けられ、該転動輪の進退位置を調整する進退位置調整手段を備えるものとしたことを特徴とする請求項1記載のチェーンテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−261455(P2008−261455A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105907(P2007−105907)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】