説明

テトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体

本発明は、新規なテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体、この化合物を含む医薬組成物、ならびに治療におけるこの使用、特に下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、顔面紅潮、不安、抑うつ症、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、炎症性腸疾患、関節炎、子宮内膜症、および結腸癌の予防または治療のための医薬品の製造のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体、この化合物を含む医薬組成物、ならびに治療におけるこの使用、特に下部尿路症状、良性前立腺過形成、および前立腺癌の予防または治療のための医薬品の製造のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロゲン受容体(ER)は、核ホルモン受容体スーパーファミリーに属するリガンド活性化型転写因子である。エストロゲンは、女性および男性の両方において多数の生理学的プロセスの調節において重要な役割を担う。ヒトにおいて、2種の異なるERサブタイプ:ERαおよびERβが公知であり、それぞれ、別個の組織分布および異なる生物学的役割を有する。ERαは、子宮内膜、乳癌細胞、卵巣支質細胞および視床下部内に多く存在する。ERβタンパク質の発現は、肝臓、脳、骨、心臓、肺、腸粘膜、前立腺、膀胱、卵巣、精巣および内皮細胞内に見られる。従って、サブタイプ選択的リガンドは、これらの組織および器官における魅力的な治療用途を有し得る(総説について:J.W.Ullrich and C.P.Miller,Expert Opin.Ther.Patents,16(2006)559−572参照)。
【0003】
前立腺の非癌性腫大である良性前立腺過形成(BPH)は、高齢男性に一般的な障害である。病態は、前立腺組織の腫大進行を特徴とし、近位尿道の閉塞を生じさせ、尿流障害を惹起する。BPHは、閉塞性および刺激性排尿症状の両方を伴い、最も顕著な症状として膀胱出口部閉塞を伴う。閉塞性症状は、腹圧排尿、排尿遅延、尿線の勢いおよび太さの低下、尿線途絶、残尿感、および終末滴下を含む。刺激性症状は、頻尿、尿意切迫、および夜尿症を含む。前立腺の腫大の出現は多くの要因に関連すると考えられているが、前立腺内のアンドロゲンの存在が前提となっている。さらに、エストロゲンも、前立腺の増殖において重要な役割を担う。J.Cheng ら、in FEBS Lett.566(2004)169−172は、ERβ選択的アゴニストは、細胞増殖を阻害することにより良性前立腺過形成(BPH)および前立腺癌の治療に使用することができることを示唆している。加齢βERKO(ERβノックアウト)マウスは、前立腺過形成を発症し(O.Imamovら、PNAS 101(2004)9375−9380)、エストラジオール治療時にこれらのβERKOマウスは前立腺上皮内新生物(PIN)病変(前立腺癌の前駆体)を発症する。他方、αERKO(ERαノックアウト)マウスは、前立腺過形成およびエストラジオール治療時のPIN病変を発症しない(G.P.Risbridgerら、J.Molecular Endocrinology 39(2007)183−188)。この知見により、前立腺におけるERβの保護的役割が証明される。
【0004】
アロマターゼノックアウト(ARKO)マウスは、顕著な前立腺過形成を発症する。近年、ERβ選択的アゴニストによりARKOマウスを治療すると前立腺の過形成病変が低減することが示された(S.J.Ellem and G.P.Risbridger,Nature Rev.Cancer,7(2007)621−627参照)。著者は、前立腺癌におけるERβ選択的アゴニストについての保護的役割が考えられることも示唆している。実際、エストラジオールによりARKOマウスを治療するとPIN病変が増加した一方、ERβ選択的アゴニストにより治療するとPIN病変は生じなかった。前立腺癌についての前駆病変は、前立腺の辺縁領域の過形成の形態であるハイグレードPINである。従って、ERβ選択的アゴニストは、ハイグレードPIN患者のための治療として使用して前立腺癌の発生を予防し、または遅延させることもできる。さらに、別の研究により、ERβの存在は前臨床前立腺癌モデルにおいて前立腺癌を予防することが実証された(I.M.Colemanら、Neoplasia 8(2006)862−878)。ERβは、前立腺癌転移、特に骨転移において発現されることも記載されており、前立腺癌骨転移におけるERβの保護的役割を示唆している(I.Leavら、Am.J Pathol.159(2001)79−92)。
【0005】
前立腺癌は、男性において診断される最も一般的な癌である。前立腺癌腫は、前立腺の辺縁領域内から始まる。発癌のプロセスは上皮組織内で起こり、上皮細胞に対する遺伝的損傷後に開始される。性ステロイド、特に17β−エストラジオール/テストステロン(E2/T)比は、前立腺癌の進行において肝要な役割を担う。
【0006】
前立腺発癌のプロセスは、長い潜伏期を伴って起こる。前立腺癌の前駆体である前立腺上皮内新生物(PIN)は、若年男性において観察されている。PINからハイグレードPINへの進行は、さらに10年かかり得る。この後、転移癌が発症するのに数年かかり得る。ハイグレードPINは、主として前立腺の辺縁領域内で起こり、この領域で前立腺癌の70%が現れる。長い潜伏期は、侵襲性転移癌(骨癌は、一般的な前立腺癌転移である。)の発症を予防するための重要な機会を提供する。しかしながら、長い潜伏期に起因して、一部の男性は、前立腺癌について治療を受けていないことがあり、最終的に他の原因により死亡する。薬物療法は、アンドロゲン依存性腫瘍の成長を阻害し、ホルモン非依存性転移ステージへのこの進行を予防することを目的とする。アンドロゲン除去療法は、ホルモン応答性前立腺腫瘍(グレードIIIおよび転移性腫瘍)の患者において最も有益な効果を生むことが示されている。しかしながら、ホルモン療法は、治療から約3−5年後にホルモン不応性前立腺腫瘍を生じさせることが多い。
【0007】
従って、BPHおよび前立腺癌について利用可能な多数の治療が存在するが、代替的な化合物および治療についての必要性が残されている。
【0008】
他の治療適応症のためのERβ選択的リガンドの使用も示されている。顔面紅潮の調節におけるERβの特異的活性が記載されている(E.E.Opasら、Maturitas,53(2006)210−216;D.Gradyら、Menopause,16(2009)458−465)。
【0009】
ERβの特異的抗不安行動効果が記載されている(A.A.WaIf and C.A.Frye,Neuropsychopharmacology,30(2005)1598−1609)。さらに、抑うつ行動に対するERβの潜在的な有益な効果が観察された(A.A.WaIfら、Pharmacol.Biochem.Behav.,78(2004)523−529)。
【0010】
乳癌細胞株T47D内にERβを導入すると、血管新生を阻害することにより腫瘍成長を阻害することが示された(J.Hartmanら、Cancer Res.,66(2006)11207−11213)。
【0011】
ER陰性甲状腺髄様癌腫TT細胞にERβを感染させると、この細胞の成長が抑制された。さらに、アポトーシスがERβ感染細胞において検出された(M.A.Choら、Journal of Endocrinology,195(2007)255−263)。
【0012】
ろ胞形成におけるERβについての役割も記載されている。それというのも、ERβノックアウトマウスはこの野性型マウスよりも少ない黄体を示しているからである(H.A.Harris,Mol.Endocrinol.,21(2007)1−13)。
【0013】
卵巣癌において、ERβ発現の損失と悪性変換とが関係付けられた。ERβ発現は、ステージII−IV疾患と比較してステージI疾患において顕著に高い。より高いERβ発現は、より長い無病生存および全生存を顕著に伴うことが見出された(K.K.L.Chanら、Obstet.Gynecol.,111(2008)144−151)。さらに、卵巣癌細胞株内にERβを導入すると、増殖および侵襲が低減し、細胞のアポトーシスが増加した(G.Lazennec,Cancer Lett,231(2006),151−157)。
【0014】
ERβ選択的リガンドは、HLA−B27マウスにおいて慢性腸炎症を治療し、アジュバント誘導関節リウマチモデルにおいて関節腫張の低減に有効であることが示されており(H.A.Harrisら、Endocrinology,144(2003)4241−4249)、従って、炎症性腸疾患および/または関節炎における治療的潜在性を有する。
【0015】
ERβ選択的リガンドの抗炎症効果は、慢性炎症についての別のモデルにおいても実証されている。ERβ選択的化合物は、実験的に誘導させた子宮内膜症モデルにおいて子宮内膜病変を低減させる(H.A.Harrisら、Hum.Reprod.,20(2005)936−941)。
【0016】
結腸癌におけるERβの保護的役割は、O.Wada−Hiraikeら、in Biochem.Soc.Trans.,34(2006)1114−1116)により記載されている。
【0017】
選択的エストロゲン受容体β(ERβ)化合物は、従来技術において公知である。WO01/64665はクロマン誘導体を開示しており、この誘導体はERαに対するERβについての選択的アゴニストであることが示されている。これらの化合物は、エストロゲン受容体関連医学的治療、例えば避妊のための治療、または良性前立腺肥大症、心血管障害、更年期愁訴、骨粗鬆症、エストロゲン依存性腫瘍制御もしくは中枢神経系障害、例えば抑うつ症もしくはアルツハイマー病の治療もしくは予防において有用であると記載されている。これらの化合物は、特に、骨粗鬆症、心血管障害、前立腺障害および中枢神経系障害、例えば抑うつ症またはアルツハイマー病の治療に好適であるが、これらの治療適応症のいずれかに対する生物学的活性データは提供されていない。
【0018】
WO01/64665に開示のクロマン誘導体に類似の1−ベンジル−3−フェニル−テトラロン(またはテトラヒドロナフタレン)骨格を有する化合物がEP00200713.6に挙げられているが、このような化合物の具体例は該文献に実際開示されていない。
【0019】
WO03/044006は、選択的エストロゲン受容体βアゴニストとしての置換ベンゾピランを開示しており、このベンゾピランは前立腺癌、良性前立腺過形成、精巣癌、卵巣癌、肺癌、心血管疾患、神経変性障害、尿失禁、中枢神経系(CNS)障害、胃腸(GI)管障害、および骨粗鬆症の治療において有用であることが記載されている。ERαに対するERβについての前記ベンゾピランの選択性は低い。インビボデータは示されていない。
【0020】
WO2006/088716は、選択的エストロゲン受容体βアゴニストとしての置換テトラリンを開示しており、このテトラリンは、良性前立腺肥大症、肥満症、認知症、高血圧症、失禁、結腸癌、前立腺癌、不妊症、抑うつ症、白血病、炎症性腸疾患、および関節炎の治療において有用であることが記載されている。ERαに対するERβについての前記テトラリンの選択性についてのデータおよびインビボデータは示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第01/64665号
【特許文献2】国際公開第03/044006号
【特許文献3】国際公開第2006/088716号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】J.W.Ullrich and C.P.Miller,Expert Opin.Ther.Patents,16(2006)559−572
【非特許文献2】J.Chengら、in FEBS Lett.566(2004)169−172
【非特許文献3】O.Imamovら、PNAS 101(2004)9375−9380
【非特許文献4】G.P.Risbridgerら、J.Molecular Endocrinology 39(2007)183−188
【非特許文献5】S.J.Ellem and G.P.Risbridger,Nature Rev.Cancer,7(2007)621−627
【非特許文献6】I.M.Colemanら、Neoplasia 8(2006)862−878
【非特許文献7】I.Leavら、Am.J Pathol.159(2001)79−92
【非特許文献8】E.E.Opasら、Maturitas,53(2006)210−216
【非特許文献9】D.Gradyら、Menopause,16(2009)458−465
【非特許文献10】A.A.WaIf and C.A.Frye,Neuropsychopharmacology,30(2005)1598−1609
【非特許文献11】A.A.WaIfら、Pharmacol.Biochem.Behav.,78(2004)523−529
【非特許文献12】J.Hartmanら、Cancer Res.,66(2006)11207−11213
【非特許文献13】M.A.Choら、Journal of Endocrinology,195(2007)255−263
【非特許文献14】H.A.Harris,Mol.Endocrinol.,21(2007)1−13
【非特許文献15】K.K.L.Chanら、Obstet.Gynecol.,111(2008)144−151
【非特許文献16】G.Lazennec,Cancer Lett.,231(2006),151−157
【非特許文献17】H.A.Harrisら、Endocrinology,144(2003)4241−4249
【非特許文献18】H.A.Harrisら、Hum.Reprod.,20(2005)936−941
【非特許文献19】O.Wada−Hiraikeら、in Biochem.Soc.Trans.,34(2006)1114−1116)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、以下の式1の、選択的ERβアゴニストであり、とりわけLUTS、BPH、および前立腺癌の予防または治療に使用することができる一連のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体、さらに特定すると、6−(4−ヒドロキシフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体またはこのプロドラッグもしくは同位体標識誘導体
【0024】
【化1】

[式中、
R1は、1個以上のハロゲンにより独立して任意に置換される(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり、R1は、骨格の6位における環外フェニル基および8位におけるベンジル基の両方に関してシス配向を有し;
R2−R13は、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシである。]を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の化合物は、3つのキラリティ中心を含有し、テトラヒドロナフタレン−2−オール骨格のC6、C7およびC8における置換基のシス配向のため、実質的に等量の2種のエナンチオマーを含有するエナンチオマーのラセミ混合物、任意の比率のエナンチオマーの混合物または純粋なエナンチオマーとして存在することができる。本発明は、この範囲内の上記混合物およびラセミ混合物ならびに他のエナンチオマーを実質的に含まない個々の(+)および(−)エナンチオマー、即ち、5%未満、好ましくは2%未満、特に1%未満の他のエナンチオマーと会合しているエナンチオマーのそれぞれを含む。
【0026】
驚くべきことに、本発明の化合物は、特に、化合物の一部がWO01/64665に開示されている対応するクロマン化合物と比較した場合、ヒト肝細胞内で高い代謝安定性を示す。薬物は、生体内変化および/または胆汁もしくは尿中への排泄により体内から排除されることが最も多い。肝臓は、生体異物の生体内変換のための主要器官である。生体内変換は、肝臓内での2種の主要な酵素経路:構造改変(第I相代謝)または抱合(第II相代謝)を介して達成される。代謝速度の低減(即ち、より高い代謝安定性)により、薬物の血漿レベルがより高くなり、より持続する。
【0027】
本発明の化合物は、エストロゲン受容体α(ERα)に対して高い選択性を有するサブタイプ選択的エストロゲン受容体β(ERβ)アゴニストである。薬物中のERαアゴニスト活性の存在は、女性化などの不所望なERα媒介副作用の原因となる。薬物のERαに対するERβアゴニスト選択性が低減する場合、ERα媒介副作用がより低い用量において明らかになる。従って、ERαに対して最大のERβアゴニスト活性を有する薬物が好ましい。
【0028】
本発明の化合物の骨格は、3つのキラル中心を全てシス立体配置で含有する。このような化合物は、互いに3次元鏡像である2種の異なるエナンチオマーとして存在することができる。一方のエナンチオマーにおいて、3つのキラル中心は、足場の平面に関して全て上方に向けられており、他方のエナンチオマーにおいて、これらのキラル中心は全て下方に向けられている。生物学的標的に対して最大活性を有する単一エナンチオマーは、この標的に対するユートマー(eutomer)と定義され;最小活性を有するエナンチオマーは、この標的に対するジストマー(distomer)と定義される。ユートマー活性とジストマー活性との比は、ユージスム比(eudismic ratio)と呼ばれる。本発明者らは、本発明の化合物について、ERβに対するユートマーが比較的低いERαアゴニスト活性を有する一方、ERβに対するジストマーが比較的高いERαアゴニスト活性を有することを観察した。換言すると、本発明による化合物について、本発明者らは、意外にも、ERβに対するユージスム比がERαに対するユージスム比よりも(かなり)高いことを見出した。従って、意外にも、ユートマーはジストマーよりも高いERαに対するERβアゴニスト選択性を有する。
【0029】
従って、本発明のさらなる実施形態において、提示の絶対立体化学を有する以下の式2の一連のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体またはこのプロドラッグもしくは同位体標識誘導体
【0030】
【化2】

[式中、
R1は、1個以上のハロゲンにより独立して任意に置換される(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり、R1は、骨格の6位における環外フェニル基および8位におけるベンジル基の両方に関してシス配向を有し;
R2−R13は、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシである。]が提供される。
【0031】
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、直鎖または分枝鎖であってよい。好適な例としては、メチル、エチル、イソプロピル、第3級ブチル、エテニル、プロペン−2−イル、エチニルおよびプロピニルが挙げられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、特にフッ素および塩素を意味する。特に好適な、1個以上のハロゲンにより置換されている(C1−C4)アルキル基は、トリフルオロメチル基である。
【0032】
本発明の一実施形態において、R1は、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルである。
【0033】
プロドラッグは、レシピエントの体内で式1により定義される化合物に変換される化合物であると定義される。特に、式1の骨格の6−フェニル置換基または2位におけるヒドロキシル基は、例えば、アルキル、アルケニル、アシル、アロイル、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルファマート、アリールスルファマート、ホスファート基またはグリコシル基により置換されていてよく、そのため、炭素鎖長は厳格に範囲が定まるとはみなされない一方、アロイルおよびアリールは、一般に、フェニル、ピリジニルまたはピリミジニルを含み、これらの基は、当分野において慣用の置換基、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、および(モノ−、またはジアルキル)アミノ基を有することができる。炭素鎖長は、プロドラッグの所望の特性に応じて選択され、そのため、例えばラウリル鎖またはカプロイル鎖を有するより長鎖のプロドラッグは、一般に、徐放性およびデポー製剤により好適である。このような置換基が自然に加水分解し、または酵素的に加水分解されて化合物の骨格上で遊離ヒドロキシル置換基になることは公知である。このようなプロドラッグは、レシピエントの体内で変換される化合物と比較可能な生物学的活性を有する。プロドラッグが変換される活性化合物は、親化合物と呼ばれる。プロドラッグの作用の発生および作用の持続ならびに体内分布は、親化合物のこのような特性と異なってよい。また、プロドラッグ投与後に得られる親化合物の血漿濃度は、親化合物の直接投与後に得られる血漿濃度と異なってよい。他のタイプのプロドラッグについては、式1による化合物中のヒドロキシル基をレシピエントの代謝系により適位に配置することができることを理解されたい。ヒドロキシル基は、エストロゲン受容体についての親和性の重要な原因となる。従って、式1により定義されるが、1個または両方のヒドロキシル基を欠く化合物も、本発明による化合物として利用可能とされ、この化合物はプロドラッグと称される。
【0034】
一実施形態において、式1の骨格の6−フェニル置換基および/または2位におけるヒドロキシル基は、(C1−C8)アルキル、(C1−C18)アシル、グルコシルまたはグルクロニル基により置換されており、さらなる実施形態においては、(C1−C4)アルキル、(C1−C8)アシルまたはグルクロニル基により置換されている。このようなプロドラッグの代表例は、以下の表2および4に記載されている。
【0035】
式1のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体のプロドラッグは、この水溶解度を増加させて医薬製剤を促進し、および/または種々の投与経路後のバイオアベイラビリティ(例えば、経口投与後の腸吸収)を改善するために調製することができる。このような可溶化プロドラッグは、当業者に周知である。この手法の代表例は、V.J.Stella and W.N.−A.Kwame,Advanced Drug Delivery Reviews,59(2007)677−694に見出すことができる。
【0036】
本発明はまた、式1による化合物のいずれかの同位体標識誘導体を包含し、これらの誘導体は、1個以上の原子が、天然に通常見出される原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子により置き換えられている事実を除き、本明細書に引用のものと同一である。本発明の化合物中に取り込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体、例えば、それぞれ、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Clおよび123Iが挙げられる。
【0037】
式1の化合物のある同位体標識誘導体(例えば、Hおよび14Cにより標識されている誘導体)は、化合物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム(即ち、H)および炭素−14(即ち、14C)同位体は、これらの容易な調製および検出性のため特に好ましい。式1のある同位体標識化合物は、医用イメージング目的に有用であり得る。例えば、11Cまたは18Fなどの陽電子放出同位体により標識されている化合物は、陽電子放出断層撮影法(PET)における用途に有用であり得、123Iなどのガンマ線放出同位体により標識されている化合物は、単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)における用途に有用であり得る。さらに、より重い同位体、例えば重水素(即ち、H)により置換することによって、より大きい代謝安定性から生じるある治療的利点(例えば、インビボ半減期の増加または要求投与量の低減)を得ることがあり、従って、一部の状況において好まれることがある。式1の同位体標識化合物、特に、より長い半減期(T1/2>1日)を有する同位体を含有する化合物は、一般に、以下のスキームおよび/または実施例に開示の手順に類似の以下の手順により、適切な同位体標識試薬を非同位体標識試薬に代えて用いることにより調製することができる。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、式1のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体またはこのプロドラッグ
【0039】
【化3】

[式中、
R1は、1個以上のハロゲンにより独立して任意に置換される(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり、Rは、骨格の6位における環外フェニル基および8位におけるベンジル基の両方に関してシス配向を有し;
R2−R6は、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシであり、最大で2個がOH基であり;
R7−R13は、独立して、H、ハロゲン、CN、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシである。]を提供する。
【0040】
さらに別の実施形態において、本発明は、式1のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体またはこのプロドラッグ
【0041】
【化4】

[式中、
R1は、1個以上のハロゲンにより独立して任意に置換される(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり、Rは、骨格の6位における環外フェニル基および8位におけるベンジル基の両方に関してシス配向を有し;
R2−R13は、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシであり、最大で5個のR2−R13基がHでない]を提供する。
【0042】
本発明のさらなる実施形態において、0から3個のHでないR2−R13基、特に、1から3個のHでないR2−R13基が存在する。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、式1のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体
【0044】
【化5】

[式中、
R1は、メチル、エチルまたはプロピルであり;
R2は、H、塩素、フッ素、CN、メトキシまたはメチルであり;
R3−R7およびR10は、Hまたはフッ素であり;
R8、R9、R11およびR13は、Hであり;
R12は、H、フッ素またはメチルである。]を提供する。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、テトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、R1がメチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHであり;R1がエチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHであり;R1がメチルであり、R2およびR6がフッ素であり、ならびにR3−R5およびR7−R13がHであり;R1がメチルであり、R2がCNであり、およびR3−R13がHであり;R1がエチルであり、R2およびR12がフッ素であり、ならびにR3−R11およびR13がHであり;ならびにR1がエチルであり、R4がフッ素であり、ならびにR2−R3およびR5−R13がHである、式1による化合物からなる群から選択される。本発明のいっそうさらなる実施形態において、テトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、R1がメチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHである、式1の化合物(即ち、化合物9a)である。
【0046】
さらなる実施形態において、本発明は、提示の絶対立体化学を有する式2のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体
【0047】
【化6】

[式中、
R1は、メチル、エチルまたはプロピルであり;
R2は、H、塩素、フッ素、CN、メトキシまたはメチルであり;
R3−R7およびR10は、Hまたはフッ素であり;
R8、R9、R11およびR13は、Hであり;
R12は、H、フッ素またはメチルである。]を提供する。
【0048】
本発明のさらなる実施形態において、テトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、R1がメチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHであり;R1がエチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHであり;R1がメチルであり、R2およびR6がフッ素であり、ならびにR3−R5およびR7−R13がHであり;R1がメチルであり、R2がCNであり、およびR3−R13がHであり;R1がエチルであり、R2およびR12がフッ素であり、ならびにR3−R11およびR13がHであり;ならびにR1がエチルであり、R4がフッ素であり、ならびにR2−R3およびR5−R13がHである、式2による化合物からなる群から選択される。本発明のいっそうさらなる実施形態において、テトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、R1がメチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHである、式2の化合物(即ち、化合物11a)である。
【0049】
本発明の化合物は、有機化学の分野において公知の種々の方法により生成することができる。以下の実施例に記載の化合物を調製するために使用される一般的な合成手順を、以下の反応スキームに示す。これらのスキームに対する変更は、当業者が容易になすことができる。以下のスキームにおいて、PGは、任意の好適な保護基を指し、R基は、上記式1または2に定義の通りであり、必要であれば、合成の間、R基は好適な保護基によりキャッピングされる。
【0050】
スキーム1.デスオキシアニソイン誘導体の調製
【0051】
【化7】

【0052】
8−ベンジルテトラヒドロナフタレン−2−オールは、スキーム2に従って、適切に置換されている4,4’−ジメトキシベンジルフェニルケトン(デスオキシアニソイン誘導体としても公知である。)から出発してラセミ混合物として調製することができる。デスオキシアニソイン誘導体は、スキーム1に示す種々の手法において調製することができる。1つの方法においては、1,3−ジチアン誘導体12を脱プロトン化し、次いで臭化ベンジル誘導体14を添加し、化合物13の形成を生じさせる。過ヨウ素酸と反応させてから、1,3−ジチアン部分をカルボニル基に変換し、デスオキシアニソイン誘導体の形成を生じさせる。代替的手法においては、(非)置換メトキシベンゼン15を、Friedel−Crafts反応において酸塩化物誘導体16と反応させてデスオキシアニソイン誘導体を得る。
【0053】
デスオキシアニソイン誘導体は、Reformatsky反応においてアルキルブロモアセタートと反応させ、脱水素後に化合物を得ることができる(スキーム2参照)。続いて、カルボニルに対するアルファ位を、塩基およびアルキル化剤(X=ハロゲン、アルキルスルホナート、アリールスルホナート、または他の脱離基)による処理によりアルキル化することができる。スチルベンタイプ二重結合を還元した後、化合物を得る。
【0054】
スキーム2.8−ベンジル−テトラヒドロナフタレン−2−オールの調製
【0055】
【化8】

【0056】
または、化合物は、スキーム3に示す通り、化合物から、置換基R1を既に含有するα−ブロモ,α−アルキエステル17と反応させ、次いで水を排除し、スチルベンタイプ二重結合を還元することにより直接調製することができる。
【0057】
スキーム3.化合物の代替的調製
【0058】
【化9】

【0059】
酸性条件下で、化合物をテトラロン4に環化することができる(スキーム2参照)。テトラロンは、無水トリフルオロメタンスルホン酸との反応によりエノールトリフラートに変換することができる。エノールトリフラートは、有機金属試薬(M=Zn、Mg;X=ハロゲン)とのパラジウムまたはニッケル触媒カップリング反応により化合物に変換することができる。の非芳香族二重結合の還元は、Pd触媒水素化により達成して化合物8を得ることができる。化合物中の保護基は、適用される保護基の性質に応じて、有機化学の分野において公知の種々の方法により除去することができる。例えば、PG=メチルである場合、保護基の除去は、三臭化ホウ素との反応により達成してエナンチオマーのラセミ混合物としてのビスフェノール化合物を得ることができる。
【0060】
R1が(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルである化合物は、スキーム2に従って合成することができる、R1が2−フルオロエチルである、対応する化合物から調製することができる。続いて、有機化学分野において公知の種々の方法により、例えば、2−フルオロエチルを2−ブロモエチルに変換し、次いでHBrを排除することによりフルオロエチル基をアルケニルまたはアルキニル基に変換してR1がエテニルである化合物を得ることができる。または、2−ブロモエチル置換基を、有機金属試薬との置換反応に供してアルケニルまたはアルキニル基を導入することができる。または、アルケニル基は、酸化手順によりアルキニル基に変換することができる。
【0061】
フェノール性OH基を好適な保護基(PG)により保護しながら、スキーム1、2および3の反応を一般に実施する。例えば、メチルを保護基として使用することができる。PGは、化合物を導く最終工程において除去することができ(スキーム2の通り)、または合成シーケンスのより早期の段階において除去することができる。例えば、脱保護は、化合物の段階において実施することができる。PG=メチルである場合において、化合物の脱保護は、三臭化ホウ素との反応により達成して未保護ビスフェノール20を得ることができる(スキーム4参照)。化合物20は、スキーム2に示す手法と同一の手法において化合物(PG=H)に変換し、続いて化合物(PG=H)に変換することができる。
【0062】
スキーム4.化合物20の調製
【0063】
【化10】

【0064】
化合物のエナンチオマーは、スキーム5に示す通り、適切なキラルHPLCカラム、例えば、Chiralpak AD、ODまたはASカラムを使用するキラルHPLCによる慣用の手段において分離して単一エナンチオマー11および12を得ることができる。
【0065】
代替的手法においては、ラセミ化合物を最初にビス−アセチル化合物10に変換し、次いでこの化合物をキラルHPLCにより分離して単一エナンチオマー21および22を得る。化合物21および22のアセチル官能基を、例えば水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムとの反応により鹸化することにより、単一エナンチオマーとしてのビスフェノール11(ユートマー)および12(ジストマー)を得る(スキーム5参照)。
【0066】
スキーム5.エナンチオマーの分離
【0067】
【化11】

【0068】
スキーム2および5に示す、化合物から出発して化合物11および12を付与する反応工程のシーケンスを変えることもでき、この場合、化合物も最初に脱保護してビスフェノール化合物23を得て、次いでこの化合物をアセチル化して化合物24を得て、次いで水素化してラセミ体としての化合物10を得ることができる(スキーム6参照)。
【0069】
エステルプロドラッグは、親化合物から、例えば、ピリジン中での適切な酸無水物との反応による遊離ヒドロキシル基のエステル化により調製することができる。従って、化合物21および22は、ビスフェノール11および12のエステルプロドラッグである。
【0070】
本発明のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、選択的ERβアゴニストである(以下の表7参照)。ユートマー化合物11は、最大の受容体活性を示す。
【0071】
スキーム6.化合物10の代替的調製
【0072】
【化12】

【0073】
さらなる態様において、本発明のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体およびこのプロドラッグまたはこの同位体標識誘導体は、治療において有用である。従って、本発明のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、顔面紅潮、不安、抑うつ症、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、炎症性腸疾患、関節炎、子宮内膜症、および結腸癌の予防または治療のための医薬品の製造に有用である。一実施形態において、本発明のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、子宮内膜症、および結腸癌の予防または治療のための医薬品の製造に有用である。別の実施形態において、本発明のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体は、下部尿路症状、良性前立腺過形成、および前立腺癌の予防または治療のための、さらに特定すると、前立腺癌の予防または治療のための医薬品の製造に有用である。
【0074】
本発明はさらに、上記疾患または障害のいずれかを罹患し、または罹患しやすいヒトおよび動物を含む哺乳動物を治療するにあたり、治療を必要とする哺乳動物に本発明によるテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体またはこのプロドラッグもしくは同位体標識誘導体の治療有効量を投与することを含む方法を含む。有効量または治療有効量は、上記疾患を阻害し、こうして所望の治療、改善、阻害または予防効果を生むのに有効な本発明の化合物または組成物の量を意味する。
【0075】
本発明はまた、下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、顔面紅潮、不安、抑うつ症、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、炎症性腸疾患、関節炎、子宮内膜症、および結腸癌、特に、下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、子宮内膜症、および結腸癌、さらに特定すると、下部尿路症状、良性前立腺過形成、および前立腺癌、いっそうさらに特定すると、前立腺癌を予防または治療するにあたり、予防または治療を必要とする哺乳動物に本発明によるテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体の治療有効量を投与することを含む方法に関する。
【0076】
なおもさらなる態様において、本発明は、本発明によるテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体を医薬的に許容される賦形剤との混合物として含む医薬組成物に関する。医薬的に許容される賦形剤は、1種以上の医薬的に許容される賦形剤を意味する。
【0077】
本発明はまた、下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、顔面紅潮、不安、抑うつ症、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、炎症性腸疾患、関節炎、子宮内膜症、および結腸癌、特に、下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、子宮内膜症、および結腸癌、さらに特定すると、下部尿路症状、良性前立腺過形成、および前立腺癌、いっそうさらに特定すると、前立腺癌を予防または治療するにあたり、予防または治療を必要とする哺乳動物に本発明によるテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体を医薬的に許容される賦形剤との混合物として含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法を関する。
【0078】
好ましい実施形態において、本発明は、前立腺癌の予防または治療のための医薬品の製造のための、R1がメチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHである、式2のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体(即ち、化合物11a)の使用に関する。
【0079】
治療効果を達成するために要求される、本明細書において活性成分とも称される本発明のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体の量は、もちろん、特定の化合物、投与経路、レシピエントの年齢および病態ならびに治療中の特定の障害または疾患により変動する。
【0080】
活性成分、またはこの医薬組成物の正確な用量および投与の処方計画は、特定の化合物、投与経路、ならびに医薬品を投与すべき個々の対象の年齢および病態により変動し得る。
【0081】
一般に非経口投与には、より吸収に依存する他の投与方法よりも低い投与量が要求される。しかしながら、ヒトについての好適な投与量は、体重1キログラム当たり0.0001−5mg、さらに特定すると体重1キログラム当たり0.001−1mgであり得る。所望の用量は、1回用量として、または1日にわたり適切な間隔において投与される複数回の下位用量として、または適切な日数の間隔において投与すべき用量として提供することができる。所望の用量は、1週間に1回または1ヵ月に1回投与することもできる。投与量および投与の処方計画は、女性と男性のレシピエント間で異なってよい。
【0082】
活性成分を単独で投与することが可能である一方、活性成分を医薬組成物として提供することが好ましい。従って、本発明はまた、本発明によるテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体を1種以上の医薬的に許容される賦形剤、例えば、Gennaroら、Remmington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,Lippincott,Williams and Wilkins,2000;(特に、part 5:pharmaceutical manufacturing参照)に記載の賦形剤との混合物として含む医薬組成物を提供する。好適な賦形剤は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients,第2版;編集者 A.Wade and P.J.Weller,American Pharmaceutical Association,Washington,The Pharmaceutical Press,London,1994に記載されている。組成物は、経口投与、経鼻投与、経肺投与、局所投与(頬側投与、舌下投与および経皮投与を含む。)、非経口投与(皮下投与、静脈内投与および筋肉内投与を含む。)または直腸投与用の好適な組成物を含む。
【0083】
本発明に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体および1種以上の医薬的に許容される賦形剤の混合物は、固体投与単位、例えば錠剤中に圧縮することができ、またはカプセル剤もしくは坐剤に加工することができる。医薬的に好適な液体を介して、化合物を液剤、懸濁液剤、乳濁液剤の形態の注射製剤として、または噴霧剤、例えば経鼻もしくは頬側噴霧剤として適用することもできる。投与単位、例えば錠剤を作製するため、慣用の添加剤、例えば、充填剤、着色剤、ポリマー結合剤などの使用が企図される。一般に、医薬的に許容される任意の添加剤を使用することができる。本発明の化合物は、埋込剤、貼付剤、ゲル剤または速放および/もしくは徐放用の任意の他の製剤における使用にも好適である。
【0084】
医薬組成物を調製し、投与することができる好適な充填剤は、ラクトース、デンプン、セルロースおよびこれらの誘導体など、または好適な量で使用されるこれらの混合物を含む。非経口投与のため、医薬的に許容される分散剤および/または湿潤剤、例えばプロピレングリコールまたはブチレングリコールを含有する水性懸濁液剤、等張性生理食塩水溶液および滅菌注射液剤を使用することができる。
【0085】
本発明はさらに、上記医薬組成物を、前記組成物に好適な包装材料との組合せで含み、前記包装材料は、上記組成物の使用説明書を含む。
【0086】
本発明を以下の実施例において説明する。
【0087】
実施例
以下の実施例において、化合物の番号は上記詳細な説明のスキーム1から6に示す化合物の番号に従う。
【実施例1】
【0088】
2−(3−フルオロ−4−メトキシベンジル)−2−(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチアン(化合物13a)の調製の手順
一般的手順A(スキーム1、上枠参照)
市販の2−(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチアン12(3.94g、17.39mmol)をTHF(100ml)中で溶解させて透明な無色溶液を得た。この溶液を−78℃に冷却し、次いでヘキサン中1.6Nのn−ブチルリチウム(10.87ml、17.39mmol)を添加して黄色溶液を得た。混合物を−78℃において30分間撹拌し、次いでTHF(50ml)中で溶解させた3−フルオロ−4−メトキシベンジルブロミド(3.81g、17.39mmol)をゆっくり添加し、次いでテトラメチルエチレンジアミン(2.62ml、17.39mmol)を添加した。この混合物を2時間で室温に到達させた。次いで酢酸(20ml)を添加し、反応混合物を室温において1時間撹拌した。水(250ml)を添加し、混合物を酢酸エチル(2×250ml)により抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮した。粗生成物を低温ジイソプロピルエーテルにより粉砕して白色固体としての化合物13a(5.94g、94%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ1.85−1.98(m,2H)、2.60−2.73(m,4H)、3.17(s,1H)、3.83(s,3H)、3.84(s,3H)、6.38(dd,J1=12Hz,J2=2.4Hz,1H)、6.53(ddd,J1=9.6Hz,J2/J3=2.4Hz,1H)、6.13(dd,J1/J2=9.6Hz,1H)、7.22(AB,J1=312Hz,J2=9.6Hz,4H)。
【実施例2】
【0089】
2−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エタノン(化合物1a)の調製の手順
一般的手順B(スキーム1、上枠参照)
化合物13a(5.94g、16.30mmol)をジクロロメタン(20ml)中で溶解させて無色溶液を得た。過ヨウ素酸(1.857g、8.15mmol)の水/メタノール1:1混合物(100ml)中溶液を添加した。混合物を3時間撹拌し、次いで炭酸水素ナトリウム(1g)、チオ硫酸ナトリウム(1g)および水(200ml)を添加した。この混合物を酢酸エチル(2×200ml)により抽出し、合わせた有機相を塩水により洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル1:1(20ml)から再結晶し白色固体としての化合物1a(1.98g、44%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ3.87(s,3H)、3.88(s,3H)、4.16(s,2H)、6.88−7.02(m,3H)、7.46(AB,J1=412Hz,J2=9.6Hz,4H)。
【実施例3】
【0090】
1−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)エタノン(化合物1c)の調製の手順
一般的手順C(スキーム1、下枠参照)
1−フルオロ−3−メトキシベンゼン(2.243ml、19.63mmol)および4−メトキシフェニルアセチルクロリド(3.00ml、19.63mmol)をジクロロメタン(50ml)中で溶解させて褐色溶液を得た。塩化アルミニウム(3.14g、23.56mmol)を分けて添加し、反応混合物の還流を開始した。混合物を室温において2時間撹拌し、氷水(200ml)中に注ぎ、酢酸エチル(2×250ml)により抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル85:15)により精製して黄色油状物としての化合物1c(3.52g、65%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ3.77(s,3H)、3.84(s,3H)、4.17(d,J=3Hz,2H)、6.60(dd,J1=13Hz,J2=2Hz,1H)、6.73(dd,J1=10Hz,J2=2Hz,1H)、7.00(AB,J1=115Hz,J2=10Hz,4H)、7.87(dd,J1/J2=10Hz,1H)。
【0091】
一般的手順Cに従って、以下の化合物を合成した:
1−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)エタノン(化合物1d
48%の収率。H NMR(CDCl):δ3.78(s,3H)、3.94(s,3H)、4.16(s,2H)、6.97(dd,J1/J2=9Hz,1H)、7.02(AB,J1=113Hz,J2=9Hz,4H)、7.74(dd,J1=12Hz,J2=2Hz,1H)、7.79(ddd,J1=9Hz,J2/J3=2Hz,1H)。
【0092】
1−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)エタノン(化合物1e
68%の収率。H NMR(CDCl):δ2.23(s,3H)、3.77(s,3H)、3.87(s,3H)、4.16(s,2H)、6.83(d,J1=9Hz,1H)、7.02(AB,J1=121Hz,J2=9Hz,4H)、7.83(d,J=2Hz,1H)、7.87(dd,J1=9Hz,J2=2Hz,1H)。
【実施例4】
【0093】
(E)−3,4−ビス−(4−メトキシ−フェニル)−ブト−3−エン酸エチルエステル(化合物2a)の調製の手順
一般的手順D(スキーム2参照)
市販のデスオキシアニソイン(化合物1f、50.43g、197mmol)およびブロモ酢酸エチル(49.30g、295mmol)をTHF(100ml)中で溶解させた。混合物をわずかに加温して透明な無色溶液(溶液A)を得た。この溶液のうち10mlを亜鉛粉末(25.70g、394mmol)に添加した。この混合物を85℃に加熱し、次いでヨウ素(0.499g、1.968mmol)を慎重に添加し、次いで溶液Aの残部を60分間にわたり滴加した。混合物を3時間還流させて緑/灰色溶液を生じさせ、室温に冷却しておき、次いで低温塩化水素溶液(4N、500ml)中に慎重に注いだ。混合物を酢酸エチル(2×400ml)により抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮して粗橙色油状物66.80gを得た。
【0094】
粗生成物(66.80g、194mmol)をジオキサン(100ml)中で溶解させた。塩化水素(イソプロパノール中6N;3.23ml、19.40mmol)を添加して橙色溶液を得た。溶液を80℃において2時間撹拌した。水(500ml)を添加し、溶液を酢酸エチル(2×300ml)により抽出した。合わせた有機相を水(3×200ml)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル95:5)により精製して黄色油状物としての化合物2a(57.87g、91%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ1.17(t,J=7Hz,3H)、3.68(s,2H)、3.82(2×s,6H)、4.11(q,J=7Hz,2H)、6.91(s,1H)、7.12(AB,J1=167Hz,J2=9Hz,4H)、7.16(AB,J1=214Hz,J2=9Hz,4H)。
【0095】
一般的手順Dに従って、以下の化合物を合成した:
エチル3−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)ブト−3−エノアート(化合物2b
42%の収率。H NMR(CDCl):δ1.19(t,J=7Hz,3H)、3.65(s,2H)、4.13(q,J=7Hz,2H)、7.12(AB,J1=160Hz,J2=10Hz,4H)。
【0096】
エチル3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)ブト−3−エノアート(化合物2c
69%の収率。H NMR(CDCl):δ1.16(t,J=7Hz,3H)、3.67(s,2H)、3.78(s,3H)、3.80(s,3H)、4.07(q,J=7Hz,2H)。
【実施例5】
【0097】
エチル3,4−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチルブタノアート(化合物3a)の調製の手順
一般的手順E(スキーム2参照)
ジイソプロピルアミン(8.24g、81mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)中で溶解させた。溶液を−50℃に冷却し、ヘキサン中1.6Nのn−ブチルリチウム(50.9ml、81mmol)をゆっくり添加した。この混合物を30分間撹拌し、次いで−78℃に冷却した(溶液A)。化合物(26.59g、81mmol)を、テトラヒドロフラン(150ml)中で溶解させ、溶液Aに30分間にわたり滴加した。黄色反応混合物を−78℃において30分間撹拌した。ヨードメタン(57.8g、407mmol)を添加し、混合物を3時間以内に室温に到達させた。反応を完了させた(出発材料および生成物は同一のRfを有するので、NMRにより確認した)。水(200ml)および酢酸エチル(100ml)を反応混合物に添加し、分離された有機相を水(100ml)により洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して褐色油状物としての粗中間体(28.0g、101%)を得た。
【0098】
粗中間体を酢酸エチル(250ml)中で溶解させ、酢酸(0.494g、8.23mmol)およびパラジウム(活性炭素10%;0.974g、8.23mmol)を添加して黒色懸濁液を得た。水素を反応混合物に通して48時間バブリングした。混合物をデカライト(decalite)上で濾過した。濾液を濃縮して黄色油状物としての粗化合物(ジアステレオ異性体の混合物)(27.0g、79mmol、96%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ0.93(d,J=6.7Hz,3H)、1.03(t,J=7Hz,3H)、1.28(d,J=7Hz,6H)、3.75(4×s,6H)、3.90(q,J=7Hz,2H)。
【0099】
一般的手順Eに従って、以下の化合物を合成した:
エチル2−エチル−3,4−ビス(4−メトキシフェニル)−ブタノアート(化合物3b
97%の収率。H NMR(CDCl):δ1.67−1.88(m,2H)、3.70−3.78(4×s,6H)、6.62−6.95(m,8H)。
【0100】
エチル3,4−ビス(4−メトキシフェニル)−2−プロピルブタノアート(化合物3c
62%の収率。H NMR(CDCl):δ3.64−3.69(4×s,6H)、6.57−6.99(m,8H)。
【0101】
エチル2−エチル−3−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)ブタノアート(化合物3d)。
【0102】
38%の収率。H NMR(CDCl):δ1.79(m,2H)、2.58(m,1H)、2.74(dd,J1=10Hz,J2=13Hz,1H)、2.95(m,1H)、3.11(dd,J1=56Hz,J2=13Hz,1H)、3.88(m,3H)、4.12(q,J=7Hz,3H)、6.64−6.95(m,7H)。
【0103】
エチル2−エチル−3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)ブタノアート(化合物3e
69%の収率。H NMR(CDCl):δ1.78(m,2H)、2.7(m,2H)、6.42−6.70(m,7H)。
【実施例6】
【0104】
エチル4−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−2−メチルブタノアート(化合物3f)の調製の手順
一般的手順F(スキーム3参照)
市販の亜鉛(1.892g、28.9mmol)をTHF(25ml)中で懸濁させた。水素化ジイソブチルアルミニウム(0.598ml、0.723mmol)を添加し、懸濁液を15分間撹拌し、次いで化合物1a(1.984g、7.23mmol)を添加し、反応温度を60℃にした。エチル−2−ブロモプロピオナート(1.879ml、14.47mmol)を添加し、しばらくして反応は発熱性になり、還流するまで温度が増加した。この混合物を還流下で2時間撹拌し、次いで室温に冷却した。4NのHCl(100ml)を添加し、混合物を5分間撹拌し、次いで酢酸エチル(2×100ml)により抽出した。有機層を合わせ、4NのHCl(2×100ml)、水により洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮して黄色油状物(2.8g、103%の粗収率)を得た。
【0105】
この粗生成物(2.8g、7.44mmol)および塩化水素(イソプロパノール中6N;0.595ml、2.98mmol)を、ジオキサン(20ml)中で溶解させて橙色溶液を得た。溶液を90℃において4時間撹拌した。溶液を濃縮して赤色油状物としての粗中間体(2.08g、78%の収率)を得た。このスチルベン誘導体(2.08g、5.80mmol)を酢酸エチル(30ml)中で溶解させて橙色溶液を得た。この溶液を脱気し、次いでパラジウム活性炭素(0.069g、0.580mmol)および酢酸(0.033ml、0.580mmol)を添加して黒色懸濁液を得た。水素を反応混合物に通して3時間バブリングした。混合物をデカライト上で濾過した。濾液を濃縮して黄色油状物としての粗化合物(ジアステレオ異性体の混合物)(2.02g、97%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ1.04(t,J=7Hz,3H)、1.27(d,J=7Hz,3H)、2.75−3.10(m,4H)、3.75−3.81(4×s,6H)、4.19(q,J=7Hz,2H)、6.56−7.08(m,7H)。
【0106】
一般的手順Fに従って、以下の化合物を合成した:
エチル3−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−2−メチルブタノアート(化合物3g
71%の収率。H NMR(CDCl):δ1.05(t,J=7Hz,3H)、1.24(d,J=7Hz,3H)、2.65−3.10(m,4H)、3.72−3.78(4×s,6H)、4.17(q,J=7Hz,2H)、6.62−6.97(m,7H)。
【実施例7】
【0107】
7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4a)の調製の手順
一般的手順G(スキーム2参照)
化合物3a(27.0g、79mmol)をメタンスルホン酸(100ml)中で溶解させ、黒色懸濁液を得た。混合物を1時間加熱し(90℃)、次いで室温に到達させた。溶液を水(500ml)中に注ぎ、混合物を酢酸エチル(2×250ml)により抽出した。合わせた有機相を水(2×200ml)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル98:2)により精製して黄色油状物としての化合物4a(13.4g、57%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ1.06(d,J=7Hz,3H)、2.72−3.23(m,2H)、3.33(dd,J1=17Hz,J2=10Hz,1H)、3.57(m,1H)、3.79−3.86(s,6H)、6.83−6.92(m,2H)、7.06−7.22(m,4H)、7.54−7.57(m,1H)。
【0108】
一般的手順Gに従って、以下の化合物を合成した:
2−エチル−7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4b
59%の収率。H NMR(CDCl):δ0.78−0.92(m,3H)、1.34−1.55(m,2H)、1.90−2.00(m,1H)、2.62−3.65(m,3H)、3.78−3.86(m,6H)、6.81−6.90(m,2H)、7.05−7.21(m,4H)、7.54−7.57(m,1H)。
【0109】
7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロピル−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4c
89%の収率。H NMR(CDCl):δ0.73−0.87(m,3H)、1.14−1.78(m,5H)、2.72−3.65(m,3H)、3.78−3.87(m,6H)、6.81−6.90(m,2H)、7.05−7.22(m,4H)、7.54−7.57(m,1H)。
【0110】
2−エチル−3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4d
100%の収率。この化合物を、精製することなく次の合成工程において使用した。
【0111】
3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4e
100%の収率。H NMR(CDCl):δ0.78−0.92(m,3H)、2.83−3.50(m,3H)、3.78−3.85(m,6H)、6.59−6.73(m,2H)、7.00−7.21(m,3H)、7.50−7.59(m,1H)。
【0112】
2−エチル−3−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4f
53%の収率。H NMR(CDCl):δ0.80−0.91(m,3H)、1.35−1.70(m,2H)、2.63−3.35(m,3H)、3.81−3.92(m,6H)、6.83−7.26(m,6H)、7.54−7.57(m,1H)。
【0113】
7−メトキシ−3−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4g
53%の収率。H NMR(CDCl):δ1.02(d,J=8Hz,3H)、2.28(s,3H)、3.81−3.87(m,6H)、6.75−7.24(m,5H)、7.54−7.57(dd,J1=10Hz,J2=3Hz,1H)。
【0114】
8−フルオロ−7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(化合物4h
124%の粗収率。H NMR(CDCl):δ1.02(d,J=8Hz,3H)、2.70−3.60(m,4H)、3.78−3.94(m,6H)、6.73−7.18(m,6H)、7.66(dd,J1=J2=8Hz,1H)。
【実施例8】
【0115】
7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5a)の調製の手順
一般的手順H(スキーム2参照)
化合物4a(13,00g、43.9mmol)および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジン(20.98g、110mmol)ならびに無水トリフルオロメタンスルホン酸(24.75g、88mmol)をジクロロメタン(200ml)中で溶解させて褐色溶液を得た。反応物を室温においてN下で16時間撹拌し、TLCにより確認した。反応混合物をジクロロメタン(150ml)により希釈し、有機相を2NのHCl(200ml)、水(200ml)により2回洗浄し、濃縮した。粗褐色油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル9/1)により精製して黄色油状物としての化合物5a(15.04g、82%)を得た。H NMR(CDCl):δ1.87(s,3H)、2.84(dd,J1=15,J2=5Hz,1H)、3.29(dd,J1=15Hz,J2=7Hz,1H)、3.60(dd,J1=5Hz,J2=7Hz,1H)、3.75(s,3H)、3.82(s,3H)、6.73(dd,J1=9Hz,J2=2Hz,1H)、6.86(AB,J1=84Hz,J2=18Hz,4H)、6.93(d,J=9Hz,1H)。
【0116】
一般的手順Hに従って、以下の化合物を合成した:
7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−エチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5b
89%の収率。H NMR(CDCl):δ1.06(t,J=8Hz,3H)、2.05(m,1H)、2.55(m,1H)、2.82(dd,J1=15Hz,J2=3Hz,1H)、3.29(dd,J1=15Hz,J2=7Hz,1H)、3.73(s,3H)、3.82(s,3H)、6.69−7.00(Ar,7H)。
【0117】
7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロピル−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5c
81%の収率。H NMR(CDCl):δ0.78および0.90(2×t,3H)、3.73−3.85 (6×s,6H)、6.69−7.20(Ar,7H)。
【0118】
2−エチル−3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5d
64%の収率。H NMR(CDCl):δ1.01−1.17(m,3H)、2.04(m,1H)、2.55(m,1H)、2.82(m,1H)、3.21(m,1H)、3.73−3.87(m,6H)、6.36−7.00(Ar,6H)。
【0119】
3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5e
63%の収率。H NMR(CDCl):δ1.87(s,3H)、2.84(m,1H)、3.21(m,1H)、3.73−3.84(s,6H)、4.05(m,1H)、6.42−6.98(m,6H)。
【0120】
2−エチル−3−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5f
53%の収率。H NMR(CDCl):δ1.07(t,J=7Hz,3H)、2.07,2.54(m,1H)、2.80(dd,J1=15Hz,J2=3Hz,1H)、3.21(dd,J1=15Hz,J2=7Hz,1H)、3.73(dd,J1=3Hz,J2=7Hz,1H)、3.82(s,6H)、6.71−7.13(Ar,6H)。
【0121】
7−メトキシ−3−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5g
36%の収率。H NMR(CDCl):δ1.87(s,3H)、2.84(dd,J1=5Hz,J2=15Hz,1H)、3.27(dd,J1=7Hz,J2=15Hz,1H)、3.56(dd,J1=5Hz,J2=7Hz,1H)、3.76(s,3H)、3.83(s,3H)、4.05(m,1H)、6.64−7.01(m,6H)。
【0122】
8−フルオロ−7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物5h
42%の収率。H NMR(CDCl):δ1.87(s,3H)、2.80(dd,J1=5Hz,J2=15Hz,1H)、3.29(dd,J1=7Hz,J2=15Hz,1H)、3.58(dd,J1=5Hz,J2=7Hz,1H)、3.76(s,3H)、3.91(s,3H)、6.74−7.14(m,6H)。
【実施例9】
【0123】
7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イルトリフルオロメタンスルホナート(化合物20)の調製の手順(スキーム4参照)
化合物5a(0.315g、0.735mmol)をジクロロメタン(5ml)中に溶解させて透明な無色溶液を得た。この溶液を0℃に冷却し、次いで三臭化ホウ素(0.283ml、2.94mmol)を慎重に添加して褐色溶液を得た。混合物を室温において2時間撹拌し、次いで氷水(25ml)中に注ぎ、ジクロロメタン(2×10ml)により抽出した。有機相を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50ml)および水(50ml)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル90:10)により精製して黄色油状物としての化合物20(0.206g、70%の収率)を得た。H NMR(CDCl):δ1.86(s,3H)、2.80(dd,J1=5Hz,J2=16Hz,1H)、3.26(dd,J1=7Hz,J2=16Hz,1H)、3.57(dd,J1=5Hz,J2=7Hz,1H)、6.66(dd,J1=2Hz,J2=8Hz,1H)、6.79(AB,J1=10Hz,J2=90Hz,4H)。
【実施例10】
【0124】
4−(2−フルオロベンジル)−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−1,2−ジヒドロナフタレン(化合物7a)の調製の手順
一般的手順I(スキーム2参照)
化合物5a(35.00g、82mmol)をTHF(400ml)中で溶解させて透明な無色溶液を得た。この溶液を脱気し、次いで1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリドジクロロメタン(3.30g、4.08mmol)および2−フルオロベンジル塩化亜鉛(327ml、163mmol)を添加して褐色溶液を得た。混合物を一晩還流させ、室温に冷却しておき、次いで飽和塩化アンモニウム溶液(500ml)中に注いだ。混合物を酢酸エチル(2×300ml)により抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル8:2)により精製して黄色油状物としての化合物7a(29.6g、93%の収率)を得た。H NMR(CDCl):表参照。
【0125】
一般的手順Iに従って、表1の化合物を合成した:
【0126】
【表1】




【実施例11】
【0127】
1−(2−フルオロベンジル)−7−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(化合物8a)の調製の手順
一般的手順J(スキーム2参照)
パラジウム(活性炭素10% 4.85g、4.09mmol)を酢酸エチル(200ml)中に懸濁させ、Hガスを懸濁液に通して30分間導いた。化合物7a(15.90g、40.9mmol)および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジン(20.98g、110mmol)を100mlの酢酸エチル中で溶解させ、6回に分けて2時間にわたり添加した。反応混合物をHの継続的なバブリング条件下で16時間撹拌した。窒素を反応混合物に通して30分間導いた。反応混合物をデカライト上で濾過した。濾液を濃縮して無色油状物を得た。NMRは、72%の全シス生成物、21%のトランス生成物および7%のナフタレン生成物を示した。粗油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル9/1)により精製して無色油状物としての化合物8a(15.04g、52%)を得た。H NMR(CDCl):表2参照。
【0128】
一般的手順Jに従って、表2の化合物を合成した:
【0129】
【表2】




【実施例12】
【0130】
8−(2−フルオロベンジル)−6−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オール(化合物9a)の調製の手順
一般的手順K(スキーム2参照)
化合物8a(11.40g、29.20mmol)をジクロロメタン(250ml)中で溶解させて透明な無色溶液を得た。この溶液を0℃に冷却し、次いで三臭化ホウ素(25.3ml、263mmol)を慎重に添加して褐色溶液を得た。混合物を室温において2時間撹拌し、次いで氷水(250ml)中に注ぎ、ジクロロメタン(2×200ml)により抽出した。有機相を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(250ml)および水(250ml)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル95:5)により精製して黄色油状物としての化合物9a(7.80g、73%の収率)を得た。H NMR(CDCl):表3参照。
【0131】
一般的手順Kに従って(特に記載のない限り)、表3の化合物を合成した:
【0132】
【表3】





【実施例13】
【0133】
化合物のエナンチオマーを分離して単一エナンチオマー11および12を得る手順
一般的手順L(スキーム5参照)
化合物9jのエナンチオマーをキラルHPLCカラム(Chiralpak AS 5μ;ヘプタン中22%イソプロパノール)上で分離した。ラセミ体9jの90mgを分離することにより、単一エナンチオマー11j(18mg、化学純度95.1%)および12j(26mg、化学純度97.9%)を得た。エナンチオマーのエナンチオマー過剰率(e.e.)を分析キラルHPLCカラム(Chiralpak AS 5μ;ヘプタン中20%イソプロパノール)上で決定した:化合物11j:保持時間33.67分;e.e.97.8%;化合物12j:保持時間19.67分;e.e.100%。
【実施例14】
【0134】
化合物のエナンチオマーを、ビスアセチルアナログ10への変換を介して分離する手順
一般的手順M(スキーム5参照)
化合物9a(5.3g、14.62mmol)をピリジン(59ml)中で溶解させて無色溶液を得た。無水酢酸(41ml)を添加し、反応混合物を室温において16時間撹拌した。反応混合物を4N塩酸(250ml)中に注ぎ、酢酸エチル(3×50ml)により抽出した。中間体をエタノールから結晶化し(25ml、80℃に加熱し、撹拌しながらゆっくり冷却する。)、白色結晶としての化合物10a(4.68g、72%)を得た。H NMR(CDCl):δ0.66(d,J=7Hz,3H)、1.87(m,1H)、2.28(s,3H)、2.33(s,3H)、2.76(dd,J1=11Hz,J2=14Hz,1H)、2.94(dd,J1=3Hz,J2=14Hz,1H)、3.22(m,2H)、3.51(dd,J1=5Hz,J2=14Hz,1H)、3.60(m,1H)、6.91−7.31(m,11H)。
【0135】
ラセミ体のエナンチオマー10a(4.6g)をキラルHPLCカラム(Chiralpak OD 5μ;ヘプタン中5%イソプロパノール)上で分離して単一エナンチオマー21a(1.95g;化学純度98%)および22a(2.04g;化学純度95%)を得た。分離されたエナンチオマーのエナンチオマー過剰率(e.e.)を分析キラルHPLCカラム(Chiralpak OD 5μ、4%イソプロパノール/ヘプタン)上で決定した:化合物21a:保持時間11.80分;e.e.100%;化合物22a:保持時間22.59分;e.e.97.9%。
【0136】
化合物21a(1.95g)を、テトラヒドロフラン(60ml)中で溶解させた。水(2ml)中で溶解させた水酸化リチウム一水和物(1.10g、26.2mmol)を添加し、反応混合物を室温において窒素下で2時間撹拌した。水(100ml)を添加し、中間体を酢酸エチル(3×50ml)により抽出した。有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を分取HPLC(逆相アセトニトリル/水40−60)により精製し、凍結乾燥させて白色固体化合物としての11a(1.22g、3.36mmol、100%ee)を得た。化合物11aの絶対立体化学を振動円二色性(VCD)分光法により測定し、(6S,7S,8S)であった。
【実施例15】
【0137】
4−(6−アセトキシ−3−エチル−4−(2−フルオロベンジル)−1,2−ジヒドロナフタレン−2−イル)フェニルアセタート(化合物24
一般的手順Mに従って、化合物23から出発して調製した:62%の収率。H NMR(CDCl):δ1.03(t,J=9Hz,3H)、1.90(m,1H)、2.22(s,3H)、2.26(s,3H)、2.37(m,1H)、2.93(dd,J1=3Hz,J2=17Hz,1H)、3.34(dd,J1=9Hz,J2=17Hz,1H)、3.66(dd,J1=3Hz,J2=9Hz,1H)、3.93(AB,J1=17Hz,J2=42,2H)、6.77(dd,J1=3Hz,J2=9Hz,1H)、6.83(d,J=3Hz,1H)、6.98(AB,J1=9Hz,J2=82,4H)。
【0138】
一般的手順Mに従って(特に記載のない限り)、表4の化合物を調製した:
【0139】
【表4】

一般的手順LまたはMに従って、以下の化合物11および12を調製した:
【0140】
【表5】


【0141】
【表6】


【実施例16】
【0142】
化合物1011および12を、アゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらのエストロゲン受容体親和性について試験した。
【0143】
組換えCHO細胞からの細胞質ヒトエストロゲン受容体αまたはβへの競合的結合の測定を使用し、ヒトエストロゲン受容体α(hERα)またはβ受容体(hERβ)を安定的に形質移入させた組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のサイトゾル内に存在するエストロゲン受容体についての試験化合物の(相対)親和性をエストラジオール(E2)と比較して推定した。
【0144】
化合物のエストロゲンおよび抗エストロゲン活性は、ヒトエストロゲン受容体α(hERα)またはβ受容体(hERβ)、ラットオキシトシンプロモーター(RO)およびルシフェラーゼレポーター遺伝子(LUC)を安定的に形質移入させた組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いるインビトロバイオアッセイにおいて決定した。エストロゲン受容体hERαまたはhERβにより媒介される酵素ルシフェラーゼのトランス活性化を刺激する試験化合物のエストロゲン活性を、nMで表現する。アッセイは、De Gooyerら、Steroids 68(2003),21−30により記載の通り実施した。
【0145】
【表7】


【実施例17】
【0146】
選択化合物を去勢ラットの短期前立腺アポトーシスおよび増殖モデルにおいて試験した。
【0147】
インタクトな成熟雄Wistarラット(350−400g)を去勢し、1週間回復させておいた。去勢から7日後、去勢ラットにラッカセイ油中のテストステロンブシクラート(TB)(長時間作用性テストステロンエステル)(20mg/kg)を1ml/kgの容量で単回皮下注射し、続いてゼラチン/マンニトール中で溶解させた0から1000μg/kgの用量の試験物質により3日間にわたり1日1回経口処置し、1ml/kgの容量で投与した。
【0148】
実験終了時にラットを安楽死させ、前立腺を摘出し、秤量し、組織学検査用に加工した。
【0149】
腹側前立腺の腺房上皮のアポトーシスを、TUNEL(ターミナルアンスケジュールドニック末端標識(Terminal unscheduled nick end labeling))染色により測定した。アポトーシス細胞は、核DNA断片化を示し、TUNELアッセイは、酵素ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を使用してビオチン化dUTPを3’−OHのDNA末端に導入することにより断片化したDNAを末端標識する。陽性染色された細胞を腹側前立腺内の腺房(腺単位)ごとに計数する。腹側前立腺の腺房上皮の増殖を、Ki67用の抗体(クローンMib5)による免疫組織学的染色により測定した。陽性染色された細胞を腹側前立腺内の腺房(腺単位)ごとに計数する。統計的有意性を、一元配置ANOVAによりTB単独と比較して測定した。
【0150】
化合物11aについては、上皮細胞アポトーシスの統計的有意性(p<0.01)増加がこのアッセイにおいて観察され、最小有効量(MAD)は3μg/kgであった。この用量において、上皮細胞増殖の低下がTB単独処置ラットと比較して観察された。
【実施例18】
【0151】
若干数の化合物11および12を、ヒト肝細胞内での代謝安定性について試験した。肝細胞安定性を、対応するクロマン化合物2526または27と比較した(以下の構造参照)。
【0152】
試験化合物をインキュベーション媒体中で3μMに希釈した。次いで、3μMの試験化合物40μlを96ウェルマイクロタイタープレート(平底)中にピペット注入した。肝細胞(−140℃において貯蔵)を、37℃水浴中で解凍した。細胞を予備加温した解凍媒体中に再懸濁させ、室温において50gで5分間遠心分離した。上澄みを廃棄し、残りの細胞ペレットを加温インキュベーション媒体中で再懸濁させ、7.5E5細胞/mlに希釈した。次いで、細胞懸濁液80μlを、試験化合物を含有する96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。得られた混合物を37℃においてインキュベートし、t=0、5、30、60、および120分において試料採取した。試料をLC−MS/MSにより分析して未変化試験化合物の含有率を決定した。試験化合物の含有率の経時的な低減速度に基づき、半減期(T1/2)を計算した。肝細胞安定性を表8にまとめる。
【0153】
【化13】

【0154】
【表8】


注:(キ)クロマン2526および27の記号の1文字拡張子は、化合物の置換パターンを示す。化合物2526または27の置換パターンR1−R13は、同一の1文字拡張を有する対応するテトラヒドロナフタレン−2−オール11または12の置換パターンと同一である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1によるテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体またはこのプロドラッグもしくは同位体標識誘導体
【化1】

[式中、
R1は、1個以上のハロゲンにより独立して任意に置換される(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり、R1は、骨格の6位における環外フェニル基および8位におけるベンジル基の両方に関してシス配向を有し;
R2−R13は、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキル、または(C1−C2)アルキルオキシである。]。
【請求項2】
R1が、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルであることを特徴とする、請求項1に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体。
【請求項3】
請求項1に記載の式1のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体またはこのプロドラッグ
【化2】

[式中、
R1は、1個以上のハロゲンにより独立して任意に置換される(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり、R1は、骨格の6位における環外フェニル基および8位におけるベンジル基の両方に関してシス配向を有し;
R2−R6は、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシであり、最大で2個がOH基であり;
R7−R13は、独立して、H、ハロゲン、CN、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシである。]。
【請求項4】
請求項1に記載の式1のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体
【化3】

[式中、
R1は、1個以上のハロゲンにより独立して任意に置換される(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり、R1は、骨格の6位における環外フェニル基および8位におけるベンジル基の両方に関してシス配向を有し;
R2−R13は、独立して、H、ハロゲン、CN、OH、1個以上のハロゲンにより任意に置換される(C1−C4)アルキルまたは(C1−C2)アルコキシであり、最大で5個のR2−R13基がHでない]。
【請求項5】
請求項1に記載の式1のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体
【化4】

[式中、
R1は、メチル、エチルまたはプロピルであり;
R2は、H、塩素、フッ素、CN、メトキシまたはメチルであり;
R3−R7およびR10は、Hまたはフッ素であり;
R8、R9、R11およびR13は、Hであり;
R12は、H、フッ素またはメチルである。]。
【請求項6】
請求項1に記載の式2のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体
【化5】

[式中、
R1は、メチル、エチルまたはプロピルであり;
R2は、H、塩素、フッ素、CN、メトキシまたはメチルであり;
R3−R7およびR10は、Hまたはフッ素であり;
R8、R9、R11およびR13は、Hであり;
R12は、H、フッ素またはメチルである。]。
【請求項7】
R1がメチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHであり;R1がエチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHであり;R1がメチルであり、R2およびR6がフッ素であり、ならびにR3−R5およびR7−R13がHであり;R1がメチルであり、R2がCNであり、およびR3−R13がHであり;R1がエチルであり、R2およびR12がフッ素であり、ならびにR3−R11およびR13がHであり;ならびにR1がエチルであり、R4がフッ素であり、ならびにR2−R3およびR5−R13がHである、式2に記載の化合物からなる群から選択される、請求項6に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体。
【請求項8】
R1がメチルであり、R2がフッ素であり、およびR3−R13がHである、請求項7に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体および医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
治療における使用のための、請求項1から8のいずれか一項に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体。
【請求項11】
下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、顔面紅潮、不安、抑うつ症、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、炎症性腸疾患、関節炎、子宮内膜症、および結腸癌の予防または治療のための医薬品の製造のための、請求項1から8のいずれか一項に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体の使用。
【請求項12】
下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、子宮内膜症、および結腸癌の予防または治療のための医薬品の製造のための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
下部尿路症状、良性前立腺過形成、および前立腺癌の予防または治療のための医薬品の製造のための、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
下部尿路症状、良性前立腺過形成、前立腺癌、顔面紅潮、不安、抑うつ症、乳癌、甲状腺髄様癌腫、卵巣癌、炎症性腸疾患、関節炎、子宮内膜症、および結腸癌の予防または治療における使用のための、請求項1から8のいずれか一項に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体。
【請求項15】
下部尿路症状、良性前立腺過形成、および前立腺癌の予防または治療における使用のための、請求項1から8のいずれか一項に記載のテトラヒドロナフタレン−2−オール誘導体。

【公表番号】特表2012−520265(P2012−520265A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553464(P2011−553464)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053167
【国際公開番号】WO2010/103095
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(512059936)エム・エス・ディー・オス・ベー・フェー (24)
【Fターム(参考)】