説明

テトラフルオロフ゜ロヘ゜ンとトリフルオロヨート゛メタンとの共沸性組成物

テトラフルオロフ゜ロヘ゜ンとトリフルオロヨート゛メタンとを含んでなる共沸性組成物、および、その使用が提供される。それには、冷媒組成物、冷媒システム、発泡剤組成物、および、噴霧可能な組成物(エアゾール噴霧剤を含む)が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、1,1,1,2-テトラフルオロフ゜ロヘ゜ンとトリフルオロヨート゛メタンとの共沸性組成物、並びにその使用を提供する。
【0002】
背景
フルオロカーボンを主とする流体は、冷媒、エアゾール噴射剤、発泡剤、熱伝達媒体、及びガス状誘電体を始めとする多くの応用例において工業的に広範囲な用途が見出されている。これらの流体のいくつかの使用に関して疑われている環境問題(これらの流体が有する比較的高い地球温暖化係数を含む)のために、ハイドロフルオロカーボン(「HFC」)のようなオゾン破壊係数が低い又はむしろゼロである流体を使用することが好ましい。したがって、クロロフルオロカーボン類(「CFC」)又はハイドロクロロフルオロカーボン類(「HCFC」)を含有しない流体の使用が好ましい。さらに、いくつかのHFC流体はそれに関して比較的高い地球温暖化係数を有することがあり、使用特性における好適なパフォーマンスを維持しつつ、できるだけ地球温暖化係数の低いハイドロフルオロカーボン或いは他のフッ化流体を用いることが好ましい。さらに、沸騰及び蒸発によって実質的に分留しない単一成分流体又は共沸性混合物の使用が好ましい。しかしながら、共沸混合物の形成が容易に予想できないという事実のために、環境に安全な分留されない新規混合物を見出すことは難しい。
【0003】
工業界は、CFC類及びHCFC類に対する代替物を提供し、環境的により安全な置換物と考えられる新しいフルオロカーボンベースの混合物を探求し続けている。特に興味あるものは、ハイドロフルオロカーボンと他のフッ化化合物との両方を含有する混合物であり、両方ともオゾン破壊係数が低いかゼロであり、地球温暖化係数が低い。このような混合物及びその使用が、本発明の主題である。
【0004】
好ましい態様の説明
本発明者らは、CFC類及びHCFC類の代替物に対する長年のニーズを満足させることを助けるいくつかの組成物を開発した。ある態様によれば、本発明は、1,1,1,2-テトラフルオロフ゜ロヘ゜ン(「HFO-1234yf」)とトリフルオロヨート゛メタン(「CF3I」)とを含んでなる共沸性組成物を提供する。
【0005】
本発明の好ましい組成物は、不燃性であり、比較的低い地球温暖化係数(「GWP」)(好ましくは約1000より少ない、より好ましくは約500より少ない、さらに好ましくは約150より少ない)を示す傾向がある。したがって、出願人は、このような組成物を、冷媒、エアゾール及び他の用途におけるCFC類(例えば、シ゛クロロシ゛フルオロメタン(CFC-12))、HCFC類(例えば、クロロシ゛フルオロメタン(HCFC-22))、HFC類(例えば、テトラフルオロエタン(HFC-134a))、並びに、HFC類とCFC類との組合わせ(例えば、CFC-12と1,1-シ゛フルオロエタン(HFC-152a)との組合わせ)(CFC-12:HFC-152aの73.8:26.2の質量比の組合わせは、R-500として知られる)に対する置換物を含む多くの用途において大きな利益をもって使用することができることを見出した。さらに、出願人は、驚くべきことに、HFO-1234yfとCF3Iとの共沸性組成物が形成し得ることを認識した。したがって、他の態様において、本発明は、共沸性組成物を製造するために有効量のHFO-1234yfとCF3Iとを組合わせることを含んでなる、共沸性組成物の製造方法を提供する。
【0006】
「HFO-1234」という用語は、本明細書において、全てのテトラフルオロフ゜ロヘ゜ン類を示すために使用される。テトラフルオロフ゜ロヘ゜ン類にはHFO-1234yf並びにそのあらゆるそしてすべての立体異性体あるいは幾何異性体が含まれる。「HFO-1234yf」と「HFO-1234ze」という用語は、本明細書において、1,1,1,2-テトラフルオロフ゜ロヘ゜ンおよび1,l,1,3-テトラフルオロフ゜ロヘ゜ンをその立体異性とは独立にそれぞれ示す。
【0007】
HFO-1234yfとHFO-1234zeの特性は少なくともいくつかの点で異なっているが、本発明の共沸性組成物はHFO-1234yfを主成分とするものの、ある態様において、本発明の共沸性組成物の本質的な性質を損なわない量でHFO-1234zeが存在してもよいことを意図している。
【0008】
HFO-1234化合物は既知の物質であり、ケミカルアブストラクトのデータベースに列挙されている。各種の飽和及び不飽和のハロゲン含有C化合物の触媒的気相フッ素化によるフルオロプロペン類(CFCH=CHなど)の製造は、米国特許第2,889,379号;4,798,818号及び第4,465,786号に記載され、これらのそれぞれを、参照により本明細書に記載されたものとする。さらに、参照により本明細書に記載されたものとするEP974,571は、1,1,1,3,3-ヘ゜ンタフルオロフ゜ロハ゜ン(HFC-245fa)を、気相中でクロムベースの触媒と高温で、或いは液相中でKOH、NaOH、Ca(OH)又はMg(OH)のアルコール性溶液と接触させることによる、1,1,1,3-テトラフルオロフ゜ロヘ゜ンの調製を開示している。さらに、本発明の化合物を製造するための方法は、「Process for Producing Fluoropropenes」(代理人文書番号H0003789(26267))という表題の係属中の米国特許出願に一般的に記載されており、これを参照により本明細書に記載されたものとする。
【0009】
さらに、本発明の共沸性組成物が、熱伝達組成物(自動車用空調システム及びヒートポンプシステム、並びに固定式空調、ヒートポンプ、冷媒を含む)、発泡剤、噴射剤及び殺菌剤を含む多くの用途における使用について、それらを好適なものとする特性を示すことを、本出願人らは見出した。したがって、なお他の態様において、本発明は、これらの使用及び他の使用に伴う組成物及び方法を提供する。
【0010】
共沸性組成物
本明細書において使用される場合、「共沸性」という用語は、その広い意味におけるものであり、厳密に共沸である組成物と共沸混合物のように挙動する組成物の両方を含むことを意図している。基本法則によれば、流体の熱力学的状態は、圧力、温度、液体の組成、及び蒸気の組成によって定まる。共沸混合物は、ある圧力と温度において液体の組成と蒸気の組成とが等しい2以上の成分の系である。実際上、これは、共沸混合物の成分が定沸点であり、相変化中に分離することができないことを意味する。
【0011】
本発明の共沸性組成物は、新しい共沸性系を形成しない更なる成分、又は第1の蒸留留分中には存在しない更なる成分を含むことができる。第1の蒸留留分は、蒸留塔が全還流条件下で安定状態の操作を示した後で採取される第1の留分である。本発明に含まれないように、ある成分の添加が新しい共沸性系を形成するか否かを決定するための一つの方法は、非共沸混合物がその個々の成分に分離することが予測される条件下において、その成分を含む組成物の試料を蒸留することである。付加的な成分を含有する混合物が非共沸性である場合、付加的成分は、共沸性成分から分留されるものである。混合物が共沸性である場合、ある無限の量の、定沸点であるか又は単一の成分のように挙動する混合物の成分のすべてを含有する第1の留分が得られるものである。
【0012】
共沸性組成物のもう一つの特徴は、共沸性又は定沸点である比率における、同一成分を含有する組成物の範囲が存在することである。全てのこのような組成物は、「共沸性」及び「定沸点」という用語に包含されることが意図されている。例えば、異なった圧力においては、組成物の沸点がそうであるように、所定の共沸混合物の組成が少なくとも僅かに変化することは公知である。したがって、AとBとの共沸混合物は、特有の関係を示すものの、温度及び/又は圧力に応じて組成が変化する。共沸性組成物については、共沸性である様々な比率において、同一成分を含有する組成の範囲が存在する。全てのこのような組成物は、本明細書において使用される共沸性という用語に包含されるものと考えられる。
【0013】
共沸混合物の形成を予測することが不可能であることは、当技術分野において広く知られている(例えば、米国特許第5,648,017号(第3欄、64-65行目)及び米国特許第5,182,040号(第3欄、62-63行目)を参照されたい。その両方は参照により本明細書に記載されたものとする。)。出願人は、HFO-1234yfとCF3Iとが共沸性組成物を形成することを予期せずに発見した。
【0014】
ある好ましい態様によれば、本発明の共沸性組成物は、共沸性に有効量のHFO-1234yfとCF3Iとを含んでなり、、好ましくは、これらから本質的になる。「共沸性に有効な量」という用語は、本明細書において使用される場合、他の成分と組み合されたとき、本発明の共沸性組成物を形成する個々のの成分の量を指す。好ましくは、本発明の共沸性組成物は、約25から100重量%より少ないHFO-1234yfと、ゼロより多く約75重量%までのCF3Iとを含んでなり、好ましくは、これらから本質的になる。より好ましくは、共沸性組成物は、約30〜約85重量%のHFO-1234yfと約15〜約70重量%のCF3Iとを含んでなり、好ましくは、これらから本質的になる。さらに好ましくは、本発明の共沸性組成物は、約35〜70重量%のHFO-1234yfと約30〜約65重量%のCF3Iとを含んでなり、好ましくは、これらから本質的になる。さらに好ましくは、本発明の共沸性組成物は、約45〜約70重量%のHFO-1234yfと約30〜約55重量%のCF3Iとを含んでなり、そして好ましくは、これらから本質的になる。さらに好ましくは、本発明の共沸性組成物は、約50〜約60重量%のHFO-1234yfと約40〜約50重量%のCF3Iとを含んでなり、そして好ましくは、これらから本質的になる。他に示さない限り、本明細書において開示される重量%は、組成物中のCF3IとHFO-1234yfとの全重量に基づく。
【0015】
本明細書中に記載される共沸性組成物は、好ましくは約14.26 psiaの圧力において約-28℃〜約-31℃の沸点を有する。より好ましいある態様において、本発明の共沸性組成物は、約14.26 psiaの圧力において約-29℃〜約-31℃を有し、さらに好ましい態様において、約14.26 psiaの圧力において約-30℃〜約-31℃の沸点を有する。
【0016】
本発明の共沸性組成物は、共沸性的に有効量のHFO-1234yfとCF3Iとを組合わせることによって製造することができる。組成物を形成するために2以上の成分を混合するために当技術において既知である様々な方法のいずれをも、共沸性組成物を製造するための本発明の方法に使用するために用いることができる。例えば、HFO-1234yfとCF3Iとを、手及び/又は機械によって、バッチ、又は連続した反応及び/又は過程の一部として、或いは2以上のこのような工程の組合わせによって、混合、配合、又は他の方法で合わせることができる。本明細書中の開示に照らして、当業者は、過度の実験を行うことなく、本発明による共沸性組成物を容易に調製することが可能であろう。
【0017】
組成物の添加剤
本発明の共沸性組成物は、潤滑剤、安定剤、金属不動態化剤、腐食防止剤、可燃性抑制剤、等を始めとする各種の付加的な添加剤のいずれをさらに含んでもよい。
【0018】
ある態様によれば、本発明の共沸性組成物は、安定剤をさらに含んでなる。本発明の共沸性組成物を安定化するために適した各種化合物のいずれをも使用することができる。ある種の好ましい安定剤としては、例えば、安定化するジエンベースの化合物、及び/又はフェノール化合物、及び/又はエポキシド類(芳香族エポキシド、アルキルエポキシド、アルケニルエポキシド、及び2以上のこれらの組合わせからなる群より選択される)が挙げられる。
【0019】
本明細書において使用されるように、「ジエンベース(diene-based)の化合物」との用語は、C3-C5ジエン、及び、いずれもの2以上のC3-C5ジエンの反応によって形成される化合物を指す。C3-C5ジエンの組合わせによって形成されるジエンベースの化合物の場合、組み合される分子は、同じでも異なっていてもよい。好ましいある組成物は、分解に対してヨードカーボンを安定化するために使用条件下において有効な量で、少なくとも一つのジエンベースの化合物を含んでなる。使用するジエンベースの化合物(類)の種類及び性質は、少なくともある程度、組成物中に使用される特別なヨードカーボン化合物(類)、予測される組成物の使用条件、及び関連する因子に依存しうる。
【0020】
本発明の組成物中に使用されるジエンベースの安定剤の量が、因子(例えば、他の因子の中でも、組成物中のヨードカーボンの種類、組成物が使用される条件)に応じて、広く変化し得ることが一般に知られている。一般に、使用されるヨードカーボンに対して有効量のジエンベースの安定化剤を使用することが好ましい。本明細書において用いるように、「有効量」という用語は、関連するヨードカーボン化合物(例えば、トリフルオロヨート゛メタン)を含んでなる組成物に加えた場合、安定化された化合物(ジエンベースの化合物がないこと以外は同じ組成物に対して、同じ条件下で、ヨードカーボンが、よりゆっくり及び/又はより少ない程度に分解される)となるジエンベースの化合物(類)の量を指す。トリフルオロヨート゛メタンの具体的な例において、ある過酷な条件下における重要な潜在的分解生成物の一つは、CF3I分子中のヨウ素に対する水素の置換によって形成されるトリフルオロメタンである。同様に水素は、他のヨードカーボン中のヨウ素を置換することができ、これによって、150より大きいGWP値を有することができる化合物が形成される。これらの分解生成物は、ヨードカーボンを使用する冷媒配合物のGWPを上昇させる効果を有する。したがって、地球温暖化係数を低くするという目的が損なわれてしまう。有効量の安定剤は、ヨードカーボンの分解量を減少させ、冷媒組成物のGWPを150より低くする。GWP値を考慮しないとしても、冷媒組成物の成分の分解は好ましくない。したがって、上述の分解生成物の量は、全冷媒組成物の1.0重量%より少ないことが好ましい。ある好ましい態様において、ジエンベースの化合物(類)の量は、安定化された組成物を生じるのに十分であり、組成物中のヨードカーボン化合物(類)の少なくとも一つが、ジエンベースの化合物が存在しないこと以外は同じ組成物に対して、SAE J1662(1993年6月に発布)及び/又はASHRAE 97-1983R標準試験によって試験した場合、よりゆっくりと及び/又はより少ない程度に分解する。例えば、好ましいある態様において、分解生成物(例えばヨードカーボン中のヨウ素に対する水素の置換によって形成された生成物)の量は、組成物を約300°Fで約2週間維持した後、約0.9重量%未満である。
【0021】
ある好ましい態様において、ジエンベースの化合物が、組成物中に、組成物の全重量に基づいて約0.001%〜約10重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約5重量%、さらに好ましくは0.3重量%〜約4重量%の量で存在する。
【0022】
好ましい態様において、ジエンベースの化合物は、アリルエーテル、プロパジエン、ブタジエン、イソプレン、ミルセンのようなテルペン、テルペン誘導体及び2以上のこれらのいずれもの組合わせからなる群より選択される。本明細書において使用される場合、上に列挙したそれぞれの化合物は、上述の化合物の置換及び未置換の形態の両方を含むことを意図している。ある好ましい態様において、ジエンベースの化合物は、プロパジエンを過半数含み、さらに好ましくは、プロパジエンから本質的になる。
【0023】
ある他の好ましい態様において、ジエンベースの化合物は、テルペン類、テルペン誘導体又はこれらの組合わせを過半数含み、さらに好ましくは、テルペン類、テルペン誘導体又はこれらの組合わせから本質的になる。本明細書において使用される場合、「テルペン」との用語は、少なくとも10個の炭素原子から構成され、少なくとも一つ(好ましくは少なくとも2つ)のイソプレン部分を含有する化合物を意味する。多くの好ましい態様において、本発明のテルペン化合物は、少なくとも二つのイソプレンC5単位(CH=C(CH)−CH=CH)(それぞれの単位は、置換されているか又は未置換である)の反応から形成されるため、本発明のテルペン化合物の多くは、好ましくは少なくとも10個の炭素原子を有し、そして少なくとも一つのイソプレン部分を含む。本明細書において使用される場合、「イソプレン部分」という用語は、置換又は未置換のイソプレンから形成することができる基を始めとする分子のいずれもの部分を指す。ある好ましい態様において、置換されていないテルペンが好ましい。
【0024】
多くの好ましい態様において、本発明のテルペン化合物は、少なくとも一つの、修飾又は未修飾のイソプレン分子の頭−尾結合縮合生成物を含んでなる。あらゆる1以上のテルペン化合物が、本発明による使用のために適合し、そして当業者は、本明細書中に含有される教示の観点から、いずれもの特別な用途のためのテルペン化合物(類)の数及び種類を、過度の実験を行わずに選択することが可能である、と考えられる。本発明の好ましいテルペンは、分子式(Cを有する、環式又は非環式の、飽和又は不飽和の、置換又は未置換の構造の、nが好ましくは2〜約6(より好ましくは2〜4)である炭化水素である。式C1016(置換された形態を含む)を有する本発明のテルペンは、本明細書において時にモノテルペンと呼ばれ、一方、式C1524(置換された形態を含む)を有するテルペンは、本明細書において時にセスキテルペンと呼ばれる。式C2032(置換された形態を含む)を有する本発明によるテルペンは、本明細書において時にジテルペンと呼ばれ、一方、式C3048(置換された形態を含む)を有するテルペンは、時にトリテルペンと呼ばれる、等である。30個又はそれより多い炭素を含有するテルペンは、通常二つのテルペン前駆体を規則的なパターンで縮合することによって形成される。全てのこのようなテルペンが本発明による使用に好適であると考えられるが、モノテルペンの使用が一般的に好ましい。
【0025】
ある好ましい態様において、本発明の組成物のテルペン化合物(類)は、1以上の非環式テルペン化合物を含んでなり、好ましくは、1以上の非環式テルペン化合物を過半数含み、さらに好ましくは、1以上の非環式テルペン化合物から本質的になる。非環式テルペンの中でも、このような化合物が、頭−尾連結イソプレノイドとして定義される化合物群、又は、この様式で結合していない化合物群に包含されることがあると考えられる。本発明のある側面における使用に好適な非環式テルペンとしては、ミルセン(2−メチル−6−メチレンオクタ−1,7−ジエン)、アロ−シメン(allo−cimene)、ベータ−オシメンが挙げられる。
【0026】
ある態様において、本発明のテルペン化合物は、環式テルペン化合物を含むことがある。環式テルペンの中でも、種々の程度の不飽和度を有する一環式、二環式、三環式、又は四環式化合物が本発明による使用のために考えられる。
【0027】
本発明の種々の側面における使用のために適合可能なテルペン化合物の例として、テレベン、ミルセン、リモネン、レチナール、ピネン、メントール、ゲラニオール、ファルネソール、フィトール、ビタミンA、テルピネン、デルタ−3カレン、テルピノレン、フェランドレン、フェンケン、等、並びにこれらの配合物(これらの全ての異性体を含む)が挙げられる。
【0028】
本発明によるテルペン誘導体の例としては、テルペンの酸素含有誘導体や水素化誘導体(例えば、ヒドロキシル基又はカルボニル基を含有するアルコール、アルデヒド又はケトンなど)が挙げられる。テルペンの酸素含有誘導体は、本明細書において時にテルペノイドと呼ばれる。ある態様において、本発明のジエンベースの化合物は、テルペノイドのカルノシン酸を含んでなる。カルノシン酸は、実験式C2028O4に対応するフェノール系ジテルペンである。これは、シソ科の植物中に天然に存在する。例えば、カルノシン酸は、Salvia officinalis(セージ)及びRosmarinus officinalis(ローズマリー)種の成分であり、これは、主として葉に見出される。カルノシン酸は、タイム及びマヨラナ中にも見出される。これは、LindeによってSalvia officinalis中で発見され[Helv.Chim Acta 47,1234(1962)]、WenkertらによってRosmarinus officinalis中で発見された[J.Org.Chem.30,2931(1965)]。次いで、これは、例えばSalvia canariensis[Savona and Bruno, J.Nat.Prod. 46,594(1983)]又はSalvia willeana[de la Torre et al., Phytochemistry 29,668(1990)]のような他のセージの種中で存在が確認された。これは、Salvia triloba及びSalvia sclarea中にも存在する。
【0029】
いずれもの適した相対量の少なくとも一つのジエンベースの化合物及び補助的な所望による安定剤化合物(類)を使用することができる。例えば、ある好ましい態様において、ジエンベースの化合物(類)と他の安定剤化合物(類)との重量比は、約1:99〜約100:0の範囲である。より好ましい態様において、ジエンベースの化合物(類)と所望による安定剤との重量比は、約10:1〜約1:1、さらに好ましくは、約2:1〜約1:1、よりさらに好ましくは約1:1である。
【0030】
好ましいテルペン安定剤は、2004年12月12日に出願された米国特許仮出願番号60/638,003中に開示され、これは、本明細書中に参考文献として援用する。
【0031】
さらに、各種のフェノール化合物及び/又はエポキシドのいずれも、本発明の組成物中の安定剤として使用するために適している。出願人は、作用理論によって又はそれに対して束縛されることを望むものではないが、本発明のフェノールはCF3I組成物中のラジカル除去剤として作用し、それによってこのような組成物の安定性を増加する傾向があると信じられる。本明細書において使用される場合、「フェノール化合物」との用語は、一般的にいずれもの置換又は未置換のフェノールを指す。好適なフェノール化合物の例として、未置換又は一つ又はそれより多く置換された環式、直鎖又は分枝鎖の脂肪族置換基を含む、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール;トコフェロール;等を含むアルキル化モノフェノール、t−ブチルヒドロキノン;ヒドロキノンの他の誘導体;等を含むヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);等を含むヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2,2−又は4,4−ビフェニルジオールの誘導体;2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tertブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4,−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4,−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)を含むアルキリデン−ビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tertブチルフェノール)を含む2,2−又は4,4−ビフェニルジオール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−tert−アルファ−ジメチルアミノ−p−クレゾール;4,4−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール);等を含む異種原子を含んでなるビスフェノール;アクリルアミノフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)のようなフェノール;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド;等を含むスルフィド;並びにフェノール系UV吸収及び光安定剤を含む。ある種の好ましいフェノールとしては、トコフェロール、BHT、ヒドロキノン等のようなアルキル化モノフェノールが挙げられる。ある種の特に好ましいフェノールは、トコフェロール等を含む。大部分のフェノールは、商業的に入手可能である。単一のフェノール化合物及び/又は2以上のフェノールの混合物を、本発明の組成物中で使用することができる。各種のエポキシドのいずれもは、本発明の組成物中で使用するために適している。出願人は、いかなる作用理論によって又はそれに対して束縛されることを望むものではないが、本発明のエポキシドが、特にCF3Iのようなヨードカーボン化合物を含有する組成物中で酸除去剤として作用し、そしてこれによってこのような組成物の安定性を増加する傾向があると信じられる。単一の芳香族エポキシド及び/又は2以上の芳香族エポキシドの混合物を、本発明の組成物中で使用することができる。
【0032】
適した芳香族エポキシドの例として、以下の式Iによって定義されるものが挙げられる:
【0033】
【化1】

【0034】
[式中:
Rは、水素、ヒドロキシル、アルキル、フルオロアルキル、アリール、フルオロアリール、又は以下の式:
【0035】
【化2】

【0036】
であり;
Arは、置換又は未置換のフェニレン或いはナフチレン部分である。ある種の好ましい式Iの芳香族エポキシドは、Arが、フェニレン、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、異種原子部分等を含む1以上の置換基で置換されたフェニレンであるものを含む。Arが、置換又は未置換のフェニレンである式Iの適した化合物の例は、ブチルフェニルグリシジルエーテル;ペンチルフェニルグリシジルエーテル;ヘキシルフェニルグリシジルエーテル;ヘプチルフェニルグリシジルエーテル;オクチルフェニルグリシジルエーテル;ノニルフェニルグリシジルエーテル;デシルフェニルグリシジルエーテル;グリシジルメチルフェニルエーテル;1,4−ジグリシジルフェニルジエーテル;4−メトキシフェニルグリシジルエーテル;これらの誘導体;等を含む。
【0037】
ある種の他の好ましい式Iの芳香族エポキシドは、Arが、ナフチレンであるか、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、異種原子部分、等を含む1以上の置換基で置換されたナフチレンであるものを含む。Arが置換又は未置換のナフチレンである式Iの適した化合物の例は、ナフチルグリシジルエーテル;1,4−ジグリシジルナフチルジエーテル;これらの誘導体;等を含む。
【0038】
他の適した芳香族エポキシドの例は、2,2’[[[5−ヘプタデカフルオロオクチル]1,3フェニレン]ビス[[2,2,2トリフルオロメチル]エチリデン]オキシメチレン]ビスオキシラン;等のようなビスオキシランを含む。
【0039】
ある好ましい態様において、本発明において使用するための芳香族エポキシドは、式Iのエポキシド[式中、Arが、フェニレン、置換フェニレン、ナフチレン、又は置換ナフチレンである]を含んでなる。さらに好ましくは、芳香族エポキシドは、Arがフェニレン又は置換フェニレンである式Iのエポキシドを含んでなる。ある種のさらに好ましい芳香族エポキシドの例は、ブチルフェニルグリシジルエーテル等を含む。
【0040】
各種のアルキル及び/又はアルケニルエポキシドのいずれもは、本発明の組成物における使用のために適している。適したアルキル及びアルケニルエポキシドの例は、以下の式II:
【0041】
【化3】

【0042】
[式中、Ralkは、置換又は未置換のアルキル又はアルケニル基である]のものを含む。式IIのある種の好ましいエポキシドは、Ralkが約1〜約10個の炭素原子(より好ましくは約1〜約6個の炭素原子)を有するアルキル基である、アルキルエポキシド化合物を含んでなり、そしてここにおいてアルキルは、置換されていないか、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、異種原子部分、等を含む1以上の置換基でさらに置換されていてもよい。式IIのこのような好ましいアルキルエポキシドの例は、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールグリシジルエーテル、等、並びにフッ素化及び過フッ素化されたアルキルエポキシド、等を含む。ある種のさらに好ましいアルキルエポキシドは、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、等を含む。
【0043】
式IIのある種の他の好ましいエポキシドは、Ralkが、約1〜約10個の炭素原子(より好ましくは約1〜約6個の炭素原子)を有するアルケニル基であり、そしてここにおいてアルケニルが、置換されていないか、或いはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリールアルキル、ヒドロキシル、異種原子部分、等を含む1以上の置換基でさらに置換されていてもよいアルケニルエポキシド化合物を含んでなる。このような好ましい式IIのアルケニルエポキシドの例は、アリルグリシジルエーテル、フッ素化及び過フッ素化されたアルケニルエポキシド、等を含む。さらに好ましいアルケニルエポキシドは、アリルグリシジルエーテル、等を含む。単一のアルキルエポキシド又はアルケニルエポキシド及び/又は2以上のこれらの組合わせを、本発明の組成物中で使用することができる。
【0044】
ある他の好ましい態様において、本発明の組成物中の酸除去剤として使用するためのアルキルエポキシドは、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを含んでなる。本発明において使用するために適したポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの例は、SACHEM, Europeから市販のエーテルを含む。
【0045】
さらに、ある態様において、本発明において使用するためのエポキシドは、2以上の芳香族、アルキル、及び/又はアルケニル置換基の組合わせを含んでなる。このようなエポキシドは、一般的に「多置換エポキシド」と呼ばれる。
【0046】
ある好ましい態様によれば、本発明において使用するための安定剤は、1以上のジエンベースの化合物、好ましくはテルペン及び/又はテルペン基剤化合物を含む。ある態様において、安定剤は、このようなジエンベースの化合物(類)を、少なくとも一つの亜リン酸化合物、及び/又は少なくとも一つのフェノール化合物、及び/又は少なくとも一つの芳香族、アルキル、又はアルケニルエポキシドとの組合わせで含んでなる。フェノール及びエポキシドの適した組合わせの例は:トコフェロール及びアリルグリシジルエーテル、BHT及びグリシジルブチルエーテル、等を含んでなる安定剤を含む。ある特別に好ましい組合わせは:トコフェロール及びアリルグリシジルエーテル、等を含んでなる安定剤を含む。ある態様において、好ましい安定剤は、少なくとも一つのジエンベースの化合物を、少なくとも一つの亜リン酸化合物との組合わせで含んでなる。
【0047】
いずれもの適した相対量の少なくとも一つのフェノール化合物及び少なくとも一つの芳香族、アルキル、又はアルケニルエポキシドを、好ましい安定剤中で使用することができる。例えば、フェノール化合物(類)と芳香族又はフッ素化されたアルキルエポキシド(類)の重量比は、約1:99〜約99:1で変化することができる。ある好ましい態様において、フェノール化合物(類)と芳香族、アルキル、アルケニル、多置換又はフッ素化アルキルエポキシド(類)の重量比は、約30〜約1、より好ましくは約7〜約1、さらに好ましくは約2〜約1、よりさらに好ましくは約1:1である。
【0048】
いずれもの適した有効な量の安定剤を、本発明の組成物中に使用することができる。本明細書において使用される場合、「安定化に有効な量」という用語は、トリフルオロヨート゛メタンを含んでなる組成物に加えられた場合、その中のトリフルオロヨート゛メタンが、同一又は同様な条件下で、本来の組成物に対してよりゆっくりした及び/又はより少ない程度に分解する、安定化された組成物となる本発明の安定剤の量を指す。ある好ましい態様において、安定剤の「安定化に有効な量」は、ヨードカーボンであるトリフルオロヨート゛メタンのような分解性の化合物を含んでなる組成物に加えられた場合、分解性化合物が、SAE J1662(1993年6月に発布)及び/又はASHRAE 97-1983Rの標準的試験の少なくとも一つ、又は両方の条件下で、本来の組成物に対してよりゆっくりと及び/又はより少ない程度に分解する、安定化された組成物となる量を含んでなる。さらに好ましいある態様において、安定剤の「安定化に有効な量」は、トリフルオロヨート゛メタンを含んでなる組成物に加えられた場合、SAE J1662(1993年6月に発布)及び/又はASHRAE 97-1983Rの少なくとも一つの標準的試験下で、鉱油中のシ゛クロロシ゛フルオロメタン(R-12)を含んでなる匹敵する組成物の安定性より良好でない場合でも、少なくとも同程度に良好な安定性を有する組成物となる量を含んでなる。本発明において使用するためのある好ましい有効な量の安定剤は、本発明の組成物中のトリフルオロヨート゛メタンの全重量に基づいて、約0.001〜約10、より好ましくは約0.01〜約5、さらに好ましくは約0.3〜約4重量%、さらにより好ましくは約0.3〜約1重量%を含んでなる。
【0049】
ある好ましい態様において、本発明の組成物は、潤滑剤をさらに含んでなる。各種の慣用的な及び慣用的ではない潤滑剤のいずれをも本発明の組成物中で使用することができる。潤滑剤に対する重要な要求事項は、冷媒システムで使用する場合、圧縮機が潤滑されるように、システムの圧縮機への十分な潤滑剤の戻りがなければならない。したがって、いずれもの与えられたシステムのための潤滑剤の安定性は、冷媒/潤滑剤の特質によって部分的に決定され、使用することが意図されたシステムの特長によって部分的に決定される。一般的にハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒、クロロフルオロカーボン冷媒及びハイドロクロロフルオロカーボン冷媒を使用する又は使用するように設計された通常の冷蔵機中で使用されるために適した潤滑剤の例は、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン(時にPABと呼ばれる)、ポリオールエステル(時にPOEと呼ばれる)、ポリアルキレングリコール(時にPAGと呼ばれる)、ポリアルキレングリコールエステル(時にPAGエステルと呼ばれる)、ポリビニルエーテル(時にPVEと呼ばれる)、ポリ(アルファ−オレフィン)(時にPAOと呼ばれる)、及びハロカーボン油、特にポリ(クロロトリフルオロエチレン)等を含む。パラフィン系油又はナフテン系油を含む鉱油は、商業的に入手可能である。市販の鉱油としては、WitcoのWitco LP250(登録商標)、Shrieve ChemicalのZerol 300(登録商標)、WitcoのSunisco 3GS、及びCalumetのCalumet R015が挙げられる。市販のポリアルキルベンゼン潤滑剤としては、Zerol 150(登録商標)が挙げられる。市販のエステルとしては、Emery 2917(登録商標)及びHatcol 2370(登録商標)として入手可能なジペラルゴン酸ネオペンチルグリコールが挙げられる。市販のPAGとしては、Rordから入手可能な自動車用PAG冷媒圧縮機油が挙げられ、同様な製品はDOWから入手可能である。市販のPAOとしては、CPI EngineeringのCP-4600が挙げられる。市販のPVEとしては、Idemitsu Kosanから入手可能である。市販のPAGエステルとしては、Chryslerから入手可能である。他の有用なエステルは、リン酸エステル、二塩基性酸エステル、及びフルオロエステルが挙げられる。
【0050】
HFCを使用するか使用するために設計された冷蔵システム、特に圧縮式冷蔵、空調(特に自動車用空調に対して)及びヒートポンプを含んでなるシステムに対して、PAG、PAGエステル、PVE、及びPOEを潤滑剤として使用することが一般的に好ましい。CFC又はHCFCを使用する或いは使用するために設計された冷蔵システムに対して、潤滑剤として鉱油又はPABを使用することが一般的に好ましい。ある好ましい態様において、本発明の潤滑剤は、一定の酸素と炭素の比を持つ炭素、水素及び酸素から構成される有機化合物であり、そして使用される量との組合わせで、冷媒との有効な溶解性及び/又は混和性を与えて、圧縮機への潤滑剤の十分な戻りを確保するために含まれる。この溶解性又は混和性は、好ましくは約-30℃〜70℃の少なくとも一つの温度で存在する。
【0051】
PAG及びPAGエステルは、これらが現時点で自動車用空調システムの純正器機のような特別の適用において使用されているために、ある態様において非常に好ましい。ポリオールエステルは、これらが、現時点で住宅用、商業用、及び工業用の空調及び冷蔵のような特別の非自動車用適用において使用されているために、他のある態様において非常に好ましい。もちろん異なった種類の潤滑剤の異なった混合物を使用することができる。
【0052】
組成物の使用
本発明の組成物は、広い範囲の用途に有用性を有する。例えば、本発明の1つの態様は、熱伝達組成物(例えば、冷媒組成物)に関し、それは本発明の共沸性組成物を含んでなる。
【0053】
本発明の熱伝達組成物は、熱伝達用途への使用(つまり、加熱媒体および/または冷却媒体として)に広く適用可能である。本発明の組成物が本発明の共沸性組成物を1以上の他の化合物との組合わせで、又は広い範囲の量の化合物の組合わせで含むことができることを意図しているが、冷媒組成物を含む本発明の熱伝達組成物が本発明の共沸性組成物から本質的になり、いくつかの態様においては、これらからなることが一般的に好ましい。
【0054】
本発明の熱伝達組成物は、空調(固定式及び移動式の両方の空調システムを含む)、冷蔵、ヒートポンプシステム等を始めとする広い範囲の冷蔵システムのいずれにおいても使用することができる。ある好ましい態様において、本発明の組成物は、例えばHFC-134aのようなHFC冷媒、又は例えばHCFC-22のようなHCFC冷媒で使用するために本来設計された冷蔵システム中で使用される。本発明の好ましい組成物は、慣用的なHFC冷媒のように低いか又はそれより低いGWP、及びそのような冷媒のように高いか又はそれより高い能力、並びにそのような冷媒と実質的に同様であるか、又は実質的に一致する、そして好ましくはそのように高いか又はそれより高い能力を含む、HFC-134a及び他のHFC冷媒の好ましい特質の多くを示す傾向がある。さらに、本発明の組成物の比較的定沸点という特性のために、多くの適用において冷媒として使用するためのある種の慣用的なHFCよりも、本発明の組成物は好ましいものとなる。本発明の熱伝達組成物は、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HFC-22、R-12、R-500の代替物として特に好ましい。また、本発明の組成物は、他の用途(例えば、エアロゾル、発泡剤等)においても、上記の組成物に対する代替物として好適であると考えられる。
【0055】
他の好ましいある態様において、本発明の組成物は、一般に、CFC冷媒とともに使用されるよう設計された熱伝達システム(具体的には冷蔵システム)において使用される。本発明の好ましい冷媒組成物は、CFC冷媒とともに従来使用されてきた潤滑剤(例えば、鉱物油、ポリアルキルベンゼン、ポリアルキレングリコール等)を含有する冷媒システムにおいて使用することができ、また、HFC冷媒とともに伝統的に使用されてきた他の潤滑剤とともに使用することができる。本明細書において使用するように、「冷蔵システム」との用語は、一般的に冷却を得るために冷媒を使用するいずれものシステム又は装置、或いはこのようなシステム又は装置のいずれもの部分若しくは一部を指す。このような冷蔵システムには、例えば、空調機、電気冷蔵庫、チラー(遠心圧縮機を使用するチラーを含む)、運送用冷蔵システム、商業的冷蔵システム等が挙げられる。
【0056】
既存の多くの冷蔵システムは、現時点で既存の冷媒について使用するようにされているが、本発明の組成物は、多くのこのようなシステムにおける使用のために、システムの変更を伴うか又は伴わないかのいずれかで応用可能であると信じられる。多くの用途において、本発明の組成物は、現時点である種の冷媒に基づく小規模システムにおける代替物質として、例えば小さい冷却能力を必要とする利益を与え、これによって比較的小さい圧縮機の排出量に対する必要性を決定することができる。さらに、例えば効率上の理由から、より高い能力の冷媒を置換するために、本発明のより低い能力の冷媒組成物を使用することが好ましい態様において、本発明のこのような態様は潜在的な利益を与える。したがって、ある態様において、本発明の組成物(特に、本発明の共沸性組成物を実質的な比率で含んでなる組成物であり、いくつかの態様においては、本発明の共沸性組成物から本質的になる組成物を、以下に示すような既存の冷媒の代替物として使用することが好ましい:HFC-134a、HCFC-12、HCFC-22、HFC-152a;ヘンタフルオロエタン(HFC-125)、トリフルオロエタン(HFC-143a)とテトラフルオロエタン(HFC-134a)との組合わせ(HFC-125:HFC-143a:HFC-134aの約44:52:4の重量比の組合わせはR-404Aと呼ばれる);HFC-32とHFC-125とHFC-134aとの組合わせ(HFC-32:HFC-125:HFC-134aの約23:25:52の重量比の組合わせはR-407Cと呼ばれる);フッ化メチレン(HFC-32)とヘンタフルオロエタン(HFC-125)との組合わせ(HFC-32:HFC-125の約50:50の重量比の組合わせはR-410Aと呼ばれる);CFC-12と1,1-シ゛フルオロエタン(HFC-152a)との組合わせ(CFC-12:HFC-152aの73.8:26.2の重量比の組合わせはR-500と呼ばれる);並びにHFC-125とHFC-143aとの組合わせ(HFC-125:HFC-143aの約50:50の重量比の組合わせはR-507Aと呼ばれる)。ある態様において、本発明の組成物を、HFC-32:HFC-125:HFC-134aの約20:40:40の重量比の組み合わせ(R-407Aと呼ばれる)、又は約15:15:70の重量比の組み合わせ(R-407Dと呼ばれる)から形成される冷媒の代替物質に関連して使用することも利益があることがある。本発明の組成物は、さらにエアゾール、発泡剤等のような他の適用においても、上述の組成物に対する代替物質として適していると信じられる。
【0057】
ある用途において、本発明の冷媒は、より大きい排出量の圧縮機の利益のある使用を潜在的に可能にし、これによって他の冷媒(HFC-134aなど)より良好なエネルギー効率を生じる。したがって、本発明の冷媒組成物は、エネルギーベースにおいて、冷媒の置換の適用について競合的利益を達成する可能性を与える。
【0058】
本発明の組成物が、さらに商業的な空調及び冷蔵システムに関連して典型的に使用されるチラーにおいても有利であると考えられる(本来のシステム又はCFC-12、HCFC-22、HFC-134a、HFC-152a、R-500及びR-507Aのような冷媒に対する代替物質として使用された場合のいずれかにおいて)。このようなある態様において、補助的な可燃性抑制剤の重量に基づいて約0.5〜約30%(ある場合には、より好ましくは0.5%〜約15重量%、さらにより好ましくは約0.5〜約10重量%)の本発明の組成物を含めることが好ましい。これに関連して、本発明の組成物のHFO-1234及び/又はCF3Iが、ある態様において、組成物中の他の成分に対して可燃性抑制剤として作用し得ることは注目される。例えば、CF3Iは、HFO-1234yfの可燃性を抑制する機能があると考えられている。HFO-1234yfよりも可燃性の他の成分が組成物に含まれている場合、HFO-1234yfとCF3Iはそれぞれ、そのような他の成分の可燃性を抑制するように機能する。したがって、HFO-1234及びHFO-1225以外の組成物中の可燃性抑制剤機能を有する成分は、本明細書において時に補助的可燃性抑制剤と呼ばれるものである。同様に、出願人は、本発明の組成物のCF3I成分はある態様において潤滑剤として働き、それゆえ、潤滑機能を有するCF3I以外の成分は、本明細書において、補助潤滑剤と呼ぶことがある。
【0059】
本発明の方法、システム、および組成物は、したがって、自動車の空調システムおよび装置について使用するのに適する。本発明の方法、システム、および組成物は、商業的な冷却システムおよび装置、チラー、遠心圧縮器を利用するシステムを含む、住宅用冷蔵庫、住宅用冷凍庫、一般用空調システム、ヒートポンプ等について使用するのに適する。
【0060】
上述のように、本発明の組成物は、組成物のある機能を向上あるいは提供するために、また、他の場合には、組成物のコストを削減するために、他の成分を含有してもよい。例えば、本発明の冷媒組成物(特に、蒸気圧縮システムにおいて使用するもの)は、補助潤滑剤を一般に組成物の約5〜約50重量%の量で含む。さらに、本発明の組成物は、相溶化剤(例えば、プロパン)を潤滑剤の相溶性および/または溶解性を補助するために含んでもよい。好ましくは、プロパン、ブタン、ペンタンを始めとするこのような相溶化剤が組成物の約0.5〜約5重量%の量で存在する。米国特許第6516837号(その開示を参照により本明細書に組み込む)に開示されているように、界面活性剤と可溶化剤との組み合わせを本発明の組成物に添加して、油溶性を補助してもよい。
【0061】
ある態様において、例えばHFC、HCFC及びCFCを始めとする共溶媒を、本発明の熱伝達組成物中に含ませることができ、それには、1以上の以下の化合物、そのいずれもの及び全ての異性体が含まれる:
トリクロロフルオロメタン(CFC-11)
シ゛クロロシ゛フルオロメタン(CFC-12)
シ゛フルオロメタン(HFC-32)
ヘンタフルオロエタン(HFC-125)
1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)
シ゛フルオロエタン(HFC-152a)
1,1,1,2,3,3,3-ヘフ゜タフルオロフ゜ロハ゜ン(HFC-227ea)
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロフ゜ロハ゜ン(HFC-236fa)
1,1,1,3,3-ヘ゜ンタフルオロフ゜ロハ゜ン(HFC-245fa)
1,1,1,3,3-ヘ゜ンタフルオロフ゛タン(HFC-365mfc)

CO
【0062】
上記に記述した成分のいずれも、並びに本発明の組成物中に含むことができるいずれもの付加的な成分の相対量は、組成物に対する具体的な用途に応じた量において本発明の組成物中に組込むことができ、そして全てのこのような相対量は、好ましくはこのような成分が、本明細書中に記載されるHFO-1234とCF3Iとの共沸性の性質を無くさないことを条件として、本明細書の範囲内と考えられる。
【0063】
本発明の冷媒組成物を冷蔵システムに導入するための広い範囲の方法のいずれもを本発明において使用することができる。例えば、一つの方法は、冷媒容器を冷蔵システムの低圧側に接続し、そして冷蔵システムの圧縮機のスイッチを入れて、冷媒をシステム内に吸込むことを含んでなる。このような態様において、冷媒容器を、システム内に入った冷媒組成物の量をモニターすることができるように、秤の上に置くことができる。所望する量の冷媒組成物がシステム内に導入されたとき、給送を停止する。別の方法として、当業者にとって既知の広い範囲の給送道具が商業的に入手可能である。したがって、上記の開示に照らして、当業者は、本発明の冷媒組成物を、本発明による冷蔵システムに過度の実験を行わずに容易に導入することが可能である。
【0064】
ある他の態様によれば、本発明は、本発明の冷媒を含んでなる冷蔵システム及び本発明の組成物を凝縮及び/又は蒸発することにより、加熱又は冷却を生じる方法を提供する。ある好ましい態様において、直接又は間接的のいずれかで他の流体を、或いは物体を直接又は間接的に冷却することを含む冷却するための方法は、本発明の共沸性組成物を含んでなる冷媒組成物を凝縮させ、そしてその後、前記の溶媒組成物を冷却される物品の近辺で蒸発させることを含んでなる。本明細書において使用される場合、用語「物体」は、無生物の対象だけでなく、さらに一般的に動物の組織、そして特にヒトの組織を含む生きた組織をも指すことを意図している。例えば、本発明のある側面は、鎮痛技術、予備麻酔、又は治療される物体の温度を減少することを含む治療の一部としてのような1以上の治療の目的のためのヒトの組織への本発明の組成物の適用を含む。ある態様において、物体に対する適用は、好ましくは本発明の組成物を一方向排出弁及び/又はノズルを有する加圧容器中の液体の形態の圧力下で用意し、そして液体を加圧容器から噴霧又は他の方法によって放出し、物体に組成物を適用することを含んでなる。液体が噴霧された表面から蒸発するときに、表面は冷却される。
【0065】
流体又は物体を加熱するためのある好ましい方法は、本発明の共沸性組成物を含んでなる冷媒組成物を、加熱される流体又は物体の近辺で凝縮させ、そしてその後、前記の冷媒組成物を蒸発させることを含んでなる。本明細書中の開示に照らして、当業者は、過度の実験を行わずに本発明により物品を加熱及び冷却することが容易に可能となるものである。
【0066】
他の態様において、本発明の共沸性組成物は、単独で又は既知の噴射剤との組合わせのいずれかで、噴霧可能な組成物の噴射剤として使用することができる。噴射剤組成物は、本発明の共沸性組成物を含んでなり、より好ましくは、本発明の共沸性組成物から本質的になり、さらに好ましくは、本発明の共沸性組成物からなる。不活性成分、溶媒、及び他の物質といっしょに噴霧される活性成分も、さらに噴霧可能な混合物中に存在することができる。好ましくは、噴射可能な組成物はエアゾールである。噴霧されるのに適した活性物質としては、これに限定されるものではないが、デオドラント、香水、ヘアスプレー、クリーニング溶媒、潤滑剤、抗喘息薬物のような医薬物質およびその他の薬品を含む。「医薬物質」という語は、治療、診断、鎮痛、及び同様な治療に関して有効である(又は少なくとも有効であると信じられる)いずれものおよび全ての物質を含むためにその最も広い意味で本明細書において使用され、そしてこのようなものとして、例えば薬物や生物学的に活性な物質が挙げられる。
【0067】
さらに他の本発明の態様は、1以上の本発明の共沸性組成物を含んでなる発泡剤に関する。一般的に、発泡剤は、本発明の共沸性組成物を、広い範囲の量で含むことができる。しかしながら、発泡剤が、本発明の共沸性組成物を、発泡剤の少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%の量で含んでなることが一般的に好ましい。ある好ましい態様において、発泡剤は、少なくとも約50重量%の本発明の共沸性組成物を含んでなり、ある態様において、発泡剤は、本発明の共沸性組成物から本質的になるか、本発明の共沸性組成物からなる。ある好ましい態様において、発泡剤は、本発明の組成物に加えて、1以上の共発泡剤、充填剤、蒸気圧改質剤、難燃剤、安定剤及び同様なアジュバントを含む。
【0068】
他の態様において、本発明は、発泡性組成物を提供する。本発明の発泡性組成物は、一般的に気泡構造を有するフォームを形成することが可能な一般的に1以上の成分及び本発明による発泡剤を含む。ある態様において、1以上の成分は、フォーム及び/又は発泡性組成物を形成することが可能な熱硬化性組成物を含んでなる。熱硬化性組成物の例は、ポリウレタン及びポリイソシアヌラートフォーム組成物、さらにフェノール系フォーム組成物を含む。このような熱硬化性フォームの態様において、1以上の本発明の組成物は、発泡剤又はその一部として含まれ、又は、2以上の部分の発泡性組成物として含まれ、これれらは、好ましくは適当な条件下で反応及び/又は発泡してフォーム又は気泡構造を形成することが可能な1以上の成分を含む。ある他の態様において、1以上の成分は、熱可塑性物質、特に熱可塑性ポリマー及び/又は樹脂を含んでなる。熱可塑性フォーム成分の例としては、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリオレフィン、並びにこれらから形成されるフォーム、好ましくは低密度フォームが挙げられる。ある態様において、熱可塑性発泡性組成物は、押出成型可能な組成物である。
【0069】
特に本明細書中に含まれる開示の観点から、本発明の発泡剤が形成され及び/又は発泡性組成物に加えられる順序及び方法が、一般的に本発明の操作性に影響しないことは当業者によって認識されるものである。例えば、押出し可能なフォームの場合、発泡剤の各種の成分、本発明の組成物の成分でさえも、押出器機への導入前に混合しないか、又は成分が押出機器中の同一位置に加えないことも可能である。したがって、ある態様において、発泡剤の1以上の成分を、発泡剤の1以上の他の成分の添加場所の上流である押出機の第1の位置で導入することが、成分が押出機中でいっしょになり、及び/又はこの方法でさらに効果的に操作されると予想されるため、好ましいことでありうる。しかしながら、ある態様において、発泡剤の2以上の成分は、前もって混合され、直接又はプレミックス(これは、発泡性組成物の他の部分に加えられる)の一部として、発泡性組成物に一緒に導入される。
【0070】
また、本発明は、(好ましくは発泡剤の一部として)本発明の組成物を含有するポリマーフォーム処方から調製されたフォーム(好ましくは独立気泡フォーム)に関する。
【0071】
ある好ましい態様において、分散剤、泡安定剤、界面活性剤及び他の添加剤も、本発明の発泡剤組成物中に組込むことができる。界面活性剤は、所望により、しかし好ましくは泡安定剤として働くために加えられる。いくつかの代表的な物質は、DC-193、B-8404、及びL-5340の名称で市販され、これらは、一般的に、米国特許第2,834,748号、2,917,480号、及び第2,846,458号中に開示されているもののようなポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコ−ポリマーであり、これらのそれぞれは、参照により本明細書に記載されたものとする。発泡剤混合物に対する他の所望による添加剤としては、リン酸トリ(2−クロロエチル)、リン酸トリ(2−クロロプロピル)、リン酸トリ(2,3−ジブロモプロピル)、リン酸トリ(1,3−ジクロロプロピル)、リン酸ジアンモニウム、各種のハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、三水素化アルミニウム、ポリ塩化ビニル、等のような燃焼防止剤又は抑制剤が挙げられる。
【0072】
参照により本明細書に組み込まれる「Polyurethanes Chemistry and Technology」(Volume I and II, Saunders and Frish, 1962, John Wiley and Sons, New York, NY)中に記載されているもののような当技術において公知の方法のいずれをも、本発明のフォームの態様に使用するか、又は使用するために適合することができる。
【0073】
本発明の共沸性組成物の他の使用は、溶媒、洗浄剤等としての使用を含む。当業者は、本発明の組成物を、過度の実験を行うことなく、容易にこのような使用のために応用することが可能であろう。
【0074】
実施例
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これは、説明のためのものであり、どのような方法においても発明を限定するものではない。
【0075】
実施例1
石英温度計K96S4771を備えた凝縮器を頂部に備える、真空ジャケットされた管からなる沸点測定器を使用する。約18 gのHFO-1234yfを沸点測定器に入れ、次いで、CF3Iを少量の測定された増分にて加える。CF3IをHFO-1234yfに加えると温度降下が観察され、これは、二成分の最小沸点共沸混合物が形成されたことを示すものである。約0より大きく約75重量%までのCF3Iにおいて、組成物の沸点は約2℃又はそれより少なく変化した。表1に示した二成分混合物が研究され、組成物の沸点は約2℃又はそれより少なく変化した。組成物は、この範囲において共沸混合物及び/又は共沸性の特性を示す。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例2
性能係数(COP)は、冷媒の性能について一般的に受け入れられている測定であって、冷媒の蒸発又は凝縮に関する特定の加熱サイクル又は冷却サイクルにおける冷媒の相対熱量効率を表すのに特に有用である。冷凍技術において、この用語は、蒸気を圧縮する圧縮器によって与えられたエネルギーに対する有効な冷媒の比率を示す。冷媒の容量(capacity:能力)は、それが提供する冷却或いは加熱の量を表し、所定の冷媒流速において圧縮器が熱量をくみ上げる能力に関するいくつかの測定値を提供する。つまり、所定の圧縮器において、高容量の冷媒は、より大きな冷却あるいは加熱する能力を提供する。所定の操作条件における冷媒のCOPを見積もるための1つの方法は、標準冷却サイクル分析法(例えば、R.C.Downing、「Fluorocarbon Refrigerants Handbook」第3章、Prentice-Hall、1988を参照)を用いる冷媒の熱力学的特性に基づくものである。
【0078】
冷却/空調サイクルシステムが、所定の凝縮器インレット温度とともにみかけ等エントロピー圧縮下にて、所定の凝縮器温度(CT)と蒸発器(ET)とともに提供される。75重量%のHFO-1234yfと25重量%のCF3Iとを含んでなる本発明の組成物に対して、以下の表2に報告されるように種々の凝縮器温度と蒸発器温度にわたって、1.00のCOP値、1.00の容量値、175F(華氏)の吐出温度のHFC-134aに基づいて、COPを測定する。
【0079】
本実施例では、冷媒システムの4つのカテゴリーにおける、本発明の組成物のHFC-134aの代替物としての素晴らしい性能を説明する。第1のシステムは、蒸発器温度(ET)が約20Fであり、凝縮器温度(CT)が約130Fであるものである(実施例2A)。簡潔にするため、このような熱伝達システム、つまり、約0F〜約35FのETと約80F〜約130FのCTとを有するシステムを、本明細書においては、「中間温度」システムという。第2のシステムは、約-10FのETと約110FのCTとを有するものである(実施例2B)。簡潔にするため、このような熱伝達システム、つまり、約-20F〜約20FのETと約80F〜約130FのCTとを有するシステムを、本明細書においては、「冷却/冷凍」システムという。第3のシステムは、約35FのETと約150FのCTとを有するものである(実施例2C)。簡潔にするため、このような熱伝達システム、つまり、約30F〜約60FのETと約90F〜約200FのCTとを有するシステムを、本明細書においては、「自動車AC」システムという。第4のシステムは、約40FのETと約95FのCTとを有するものである(実施例2D)。簡潔にするため、このような熱伝達システム、つまり、約35F〜約50FのETと約80F〜約120FのCTとを有するシステムを、本明細書においては、「冷媒」ACシステムという。R-134a及び75重量%のHFO-1234yfと25重量%のCF3Iとを含んでなる本発明の組成物を使用するこれらのそれぞれのシステムの操作を、以下の表2A〜表2Dに報告する。
【0080】
【表2A】

【0081】
【表2B】

【0082】
【表2C】

【0083】
【表2D】

【0084】
上の表から理解できるように、重要な冷却システムの性能パラメータの多くは、R-134aに対するパラメータと比較的近い。既存の多くの冷却システムが、R-134aまたはR-134aと似た性質を有する他の冷媒に対して設計されてきたことから、GWPが低く、及び/又は、オゾン破壊能が低い冷媒(これは、R-134aまたはそれに似た冷媒の代替物としてシステムに比較的小さな変化しか与えずに使用することができる)の大きな利点を、当業者は理解するであろう。ある態様において、本発明が、既存のシステム中の冷媒を本発明の組成物に置換することを含む修復方法を提供することが意図される。好ましいある態様において、置換工程は、システムの実質的な設計変更が必要なく、本発明の冷媒を受け入れるために装置の主要部品を取り替える必要もないことから、簡単な置き換え(drop-in replacement)である。好ましいある態様において、本発明の方法は、システムの能力が、置換前のシステム能力の少なくとも70%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも90%である簡単な置き換えを含む。好ましいある態様において、本発明の方法は、吸入圧及び/又は吐出圧が、置換前のシステム能力の少なくとも約70%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%である簡単な置き換えを含み、好適には、吸入圧と吐出圧の両方が、置換前のシステム能力の少なくとも約70%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%である簡単な置き換えを含む。好ましいある態様においては、本発明の方法は、システムの質量流量(mass flow)が、置換前のシステム能力の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%である簡単な置き換えを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のHFO-1234yfとCF3Iとを含んでなる共沸性組成物。
【請求項2】
約25から100重量%未満のHFO-1234yfと、
0より多く約75重量%までのCF3Iと
から本質的になる、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項3】
約30〜約85重量%までのHFO-1234yfと
約15〜約70重量%までのCF3Iと
から本質的になる、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項4】
約35〜約70重量%までのHFO-1234yfと
約30〜約65重量%までのCF3Iと
から本質的になる、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項5】
約45〜約70重量%までのHFO-1234yfと
約30〜約55重量%までのCF3Iと
から本質的になる、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項6】
約50〜約60重量%までのHFO-1234yfと
約40〜約50重量%までのCF3Iと
から本質的になる、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項7】
約14.26 psiaの圧力において約-28℃〜約-31℃の沸点を有する、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項8】
約14.26 psiaの圧力において約-29℃〜約-31℃の沸点を有する、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項9】
約14.26 psiaの圧力において約-30℃〜約-31℃の沸点を有する、請求項1に記載の共沸性組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物と、
補助潤滑剤、相溶化剤、界面活性剤、補助燃焼抑制剤、可溶化剤、分散剤、泡安定剤、化粧剤、研磨剤、医薬、洗浄剤、燃焼防止剤、着色剤、化学的殺菌剤、安定剤、ポリオール、ポリオールプレミックス成分及びこれらの2以上の組合わせからなる群より選択される少なくとも一つのアジュバントと
を含んでなる組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物を含んでなり、前記アジュバントが少なくとも一つの潤滑剤を含んでなる、熱伝達組成物。
【請求項12】
前記補助潤滑剤が、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン(PAB)、ポリオールエステル(POE)、ポロアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル(PAGエステル)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリ(α−オレフィン)(PAO)、及びこれらの組合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の熱伝達組成物。
【請求項13】
前記アジュバントが、少なくとも一つの相溶化剤をさらに含む、請求項12に記載の熱伝達組成物。
【請求項14】
約0.5〜約5重量%の前記少なくとも一つの相溶化剤を含んでなる、請求項13に記載の熱伝達組成物。
【請求項15】
加えられる前記補助潤滑剤(又は複数)が、熱伝達組成物の約5〜約50重量%の量で存在する、請求項12に記載の熱伝達組成物。
【請求項16】
1又はそれより多い補助燃焼抑制剤を含んでなる、請求項11に記載の熱伝達組成物。
【請求項17】
加えられる前記1又はそれより多い燃焼抑制剤(又は複数)が、熱伝達組成物の約0.5%〜約30重量%の量で存在する、請求項16に記載の熱伝達組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の共沸性組成物を含んでなる、熱伝達組成物。
【請求項19】
少なくとも約50重量%の請求項1に記載の共沸性組成物を含んでなる、熱伝達組成物。
【請求項20】
請求項18に記載の熱伝達組成物を含んでなる冷媒。
【請求項21】
請求項20の熱伝達組成物を含んでなる冷蔵システム。
【請求項22】
自動車用空調システム、住宅用空調システム、商業用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、商業用冷蔵庫システム、商業用冷凍庫システム、チラー空調システム、チラー冷蔵庫システム、ヒートポンプシステム、及び2以上のこれらの組合わせからなる群より選択される、請求項21に記載の冷蔵システム。
【請求項23】
請求項1に記載の共沸性組成物を含んでなる発泡剤。
【請求項24】
少なくとも約5重量%の請求項1に記載の共沸性組成物を含んでなる発泡剤。
【請求項25】
フォームを形成することが可能な1以上の成分と、請求項1に記載の共沸性組成物とを含んでなる発泡性組成物。
【請求項26】
前記フォームを形成することが可能な1以上の成分が、熱可塑性フォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、低密度ポリエチレンフォーム、押出成型熱可塑性フォーム、ポリウレタンフォーム、及びポリイソシアヌレートフォームからなる群より選択されるフォームを形成することが可能な1以上の成分を含んでなる、請求項25に記載の発泡性組成物。
【請求項27】
分散剤、泡安定剤、界面活性剤、燃焼防止剤及び2以上のこれらの組合わせからなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含んでなる、請求項26に記載の発泡性組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の発泡性組成物から形成されるフォーム。
【請求項29】
請求項28に記載のフォームを含んでなる独立気泡フォーム。
【請求項30】
冷媒システムに含まれる既存の冷媒を置換する方法であって、
前記既存の冷媒の少なくとも一部を前記システムから除去し、
請求項1に記載の共沸性組成物を含んでなる冷媒組成物を前記システムに導入することによって、前記既存の冷媒の少なくとも一部を置換すること
を含んでなる、上記方法。
【請求項31】
前記既存の冷媒が、HFC-134a、R-12、HFC-143a、HFC-125、HFC-32、R-500、HFC-152a、及びHFC-22並びにこれらの組合わせからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記既存の冷媒が、HFC-134a、HFC-143a、HFC-125、HFC-32及びこれらの組合わせからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記既存の冷媒が、HFC-143a、HFC-125、HFC-32及びこれらの組合わせからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記既存の冷媒システムが、少なくとも1つの、第1の排出量を有する第1の圧縮機を含み、
該第1の圧縮機を該システムから除去する工程と
該第1の圧縮機よりも大きな排出量を有する少なくとも1つの第2の圧縮機を該システムに挿入する工程と
をさらに含んでなる、請求30に記載の方法。
【請求項35】
前記既存の冷媒システムが、自動車用空調システム、住宅用空調システム、商業用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、商業用冷蔵庫システム、商業用冷凍庫システム、チラー空調システム、チラー冷蔵システム、ヒートポンプシステム、及び2以上のこれらの組合わせからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記置換工程後の前記システムの能力が、少なくとも前記除去工程前のシステムの能力の少なくとも約90%である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記置換工程後の前記システムの質量流量が、少なくとも前記除去工程前のシステムの質量流量の少なくとも約90%である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
請求項10に記載の前記冷媒が、約1000より大きくない地球温暖化係数(GWP)を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
噴霧される物質と請求項1に記載の共沸性組成物を含んでなる噴射剤とを含んでなる噴霧可能な組成物。
【請求項40】
エアゾールの形態の、請求項39に記載の噴霧可能な組成物。
【請求項41】
前記噴霧される物質が、化粧剤、洗浄溶媒、潤滑剤および医薬用物質からなる群より選択される、請求項40に記載の噴霧可能な組成物。
【請求項42】
医薬用物質を含む請求項41に記載の噴霧可能な組成物であって、
該医薬用物質が薬または生物学的に活性な物質である、上記組成物。
【請求項43】
請求項1に記載の組成物を含んでなる組成物に物品を接触させることを含んでなる、物品の滅菌方法。
【請求項44】
請求項10の組成物を凝縮し、
その後、冷却する物品の近くで該組成物を蒸発させること
を含んでなる、物品の冷却方法。
【請求項45】
加熱する物品の近くで請求項10の組成物を凝縮し、
その後、該冷媒組成物を蒸発させること
を含んでなる、物品の加熱方法。
【請求項46】
安定化に有効な量の安定化剤をさらに含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項47】
前記安定化剤が、ジエンベースの化合物、フォスフェート、フェノール化合物、及びエポキシド、並びにこれらの2以上の組み合わせからなる群より選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記安定化剤が、組成物中の安定化剤とヨードカーボンの全量に対して約0.001〜約10重量%の量で存在する、請求項47に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−506793(P2008−506793A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508634(P2007−508634)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/013185
【国際公開番号】WO2005/103190
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】