説明

テラヘルツ放射の発生方法および装置

差周波数発生(DFG)による放射の発生方法および装置。例示的な一実現例においては、量子カスケードレーザー(QCL)は、QCLの活性領域に組み込まれる、有効な2次非線形感受率χ(2)を有する。QCLは、非線形感受率から生じる差周波数発生(DFG)に基づいて、第1の周波数ωにおいて第1の放射、第2の周波数ωにおいて第2の放射、および第3の周波数ω=ω−ωにおいて第3の放射を発生するように、構成される。1つの観点において、QCLは、室温においてかなりのTHz放射を発生するように構成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ放射の発生方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
政府援助研究
本明細書で開示する主題に関する研究の一部は、合衆国国立科学財団(United States National Science Foundation)第NSF−ECS−0547019およびNSF−OISE−0530220、ならびに合衆国空軍科学研究局(the United States Air Force Office of Scientific Research)授与番号FA9550−05−1−0435により支援されるものであり、合衆国政府は、開示される主題の一部について特定の権利を有する。
【0003】
背景
テラヘルツ(THz)スペクトル範囲(
【数1】

;一般的には遠赤外帯とマイクロ波帯の間)には、効率的で、狭帯域の同調可能な半導体光源、特に小型で、電気的に励起される室温半導体光源が長年、欠落していた。かなり長い間、pドープされたゲルマニウムレーザーが、THz領域において唯一利用可能な半導体光源であった。しかしながら、この光源は、液体窒素の温度より低い温度でのみ作動する(すなわち、極低温冷却を必要とする)。
【0004】
近年、半導体ベースの量子カスケードレーザー(QCLs:Quantum-Cascade Lasers)が、THzスペクトル領域用に開発され、最高動作温度はパルスモードにおいて178°K(約3THzの放出周波数)であると報告されている。しかしながら、これらのレーザーには固有の重大な制限がある。第1に、それらの同調性は、利得ペクトルが狭いために、本質的に制限されている。第2には、それらの動作温度は、低エネルギーTHz遷移を越えての反転分布が根本的に必要であるために、極低温に制約される可能性が高い。特に、THz放射の特徴である狭エネルギー帯遷移特性のゆえに、動作温度が上がると、電子緩和の別のチャネルが有効となり、それによって反転分布(population inversion)を妨害するために、高エネルギー状態の非放射性減損(non-radiative depletion)が発生しやすい。光導電性スイッチ類またはミキサー技術に基づく、代替光源は室温で動作可能であるが、効率が低く、大型で発光帯が広い。
【0005】
QCLに関わる他の研究活動において、QCLは、中赤外スペクトル帯域(例えば、約5〜10マイクロメートル)における複数の異なる波長において同時にレーザー発光するように実現されている。そのような一例では、単一の量子カスケード活性領域が、最大で3つの異なる波長を同時に発生しており、別の例においては、異なる波長における中赤外発生用に設計された2つの活性領域が、単一のQCL導波路構造に集積され、このQCL導波路構造から、数百ミリワットの電力レベルにおいて、2波長発生が達成されている。
【0006】
差周波数発生(DFG)は、非線形の光学過程であり、周波数ωおよびωの2本のビーム(「ポンプ」ビームと呼ばれることが多い)が2次非線形感受率(second-order nonlinear susceptibility)χ(2)を有する媒体内で反応して、周波数ω=ω−ωにおける放射を発生する。周波数ω=ω−ωにおける波動の強度は、次の式で与えられる:
【数2】

ここで、
【数3】

は、コヒーレンス長であり、W(ω)、n(ω)、および
【数4】

は、それぞれ、周波数ωにおける電力、屈折率およびビームの波ベクトルであり、αは、差周波数ωにおける損失を表わし、Seffは、反応の有効面積であり、媒体は両ポンプに対して透明であること、およびDFG過程におけるポンプ電力の減損は無視できることが仮定される。式(1)から、効率的なDFGのために、大きなχ(2)を有する材料を使用し、高強度のビームを入力し、低損失と位相整合、
【数5】

を達成する必要がある。
【0007】
DFGは、良好なレーザー光源が存在する、赤外(IR)または可視スペクトル範囲におけるポンプ周波数ωおよびωを使用することによって、THz放射を発生するのに利用することができる。様々な研究活動では、LiNbOまたはGaAsなどの非線形光学結晶を、2つの連続波(CW)またはパルスレーザーで外部的に励起することによる、室温における狭帯域THz発生を報告している。そのような活動の一つは、約1.5マイクロメートルの波長と、それぞれ約1Wの電力レベルで動作する、2つのレーザーダイオードの出力によって励起される、LiNbOにおけるDFGに基づくCWTHz発生を報告しており、この場合に、THz出力は、190から200マイクロメートル(1.5〜1.6THz)の間で同調することができる。検出されたTHz信号の出力電力は、サブナノワット(sub-nanowatt)レベルである。DFGを介してTHz放射を発生しようとする、これらの活動は、非線形媒体に関する低損失および位相整合に頼って、変換効率を高めるものである。特に、それらは高強度パルス固体レーザー(通常、約1GW/cm、非線形結晶の損傷閾値によって制限されることが多い)からの集束ビームを使用し、透明非線形結晶内の厳密な位相整合または擬似位相整合のいずれかによって、数十ミリメートルの大きいコヒーレンス長を達成する。この技法は、広いスペクトル同調性をもたらし、室温で機能する。しかしながら、これには、強力なレーザーポンプと、一般的に複雑な光学装置とが必要であり、最終的には、嵩張って重すぎるTHz源が得られる。
【0008】
式(1)によれば、DFGにおいて生成される信号の強度は、2次非線形感受率の2乗に比例し、DFGに基づく出力電力は、より高い2次非線形感受率を有する非線形材料が使用されると大幅に改善される可能性がある。これに関して、1980年代末期からの研究によって、サブバンド間遷移と呼ばれる同一帯域内の光学的遷移に対応して量子井戸構造に関連するそれぞれのエネルギーレベルを適応させることによって、中および遠赤外スペクトル領域において大きな光学的非線形性を有する、非対称の単一量子井戸構造または結合量子井戸構造を工作できるということが確立された。特に、1つの研究では、結合量子井戸構造において60マイクロメートル(5THz)において、FDGに対する10pm/Vの(すなわち、LiNbO、GaP、GaAsなどの従来の非線形結晶のそれより4桁大きい)2次非線形感受率χ(2)が計測された。
【0009】
前述の過程に対するメカニズムは、図1に示してあり、この場合に、(それぞれ、矢印102および104で表わされるエネルギー遷移に対応して)約10マイクロメートルで発出するCOレーザーからの2本の中赤外ビームが、(矢印106で表わされるエネルギー遷移に対応して)約62マイクロメートルの波長において、差周波数信号を発生する。原理的に、そのようなχ(2)は、相対的に低いポンプ強度および低いコヒーレンス長に対しても、効率的なTHz発生を可能にする。しかしながら、これらの構造における高い光学的非線形性は、すべての相互作用場がサブバンド間遷移と共鳴するという理由で、達成される。この結果として、ポンプビームならびにTHzDFGビームの強い吸収が発生し、このために、THzDFG効率が制限されることは避けられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、全体的には、差周波数発生(DFG)に基づきテラヘルツ(THz)放射を発生するための量子カスケードレーザー(QCL)に関する、新規な装置および方法を目的とする。
【0011】
本出願者らは、図1に示される過程によって例示される特に高い2次光学非線形性が、DFG過程を実現するための潜在的に魅力的な選択肢を与えることを認識、評価した。しかしながら、そのような過程を実際に利用するためには、重大な吸収問題を、実質的に軽減または克服する必要がある。しかしながら、出願者らは、これらの吸収問題に対する解決策も認識し、評価した。具体的には、高い2次非線形性のために工作された量子井戸構造において、エネルギーレベル1および2は大幅に減損するのに対して、ほとんどのキャリアが、より高いエネルギーレベル3(図1における最高レベル)において発見されるように、反転分布が達成されると、大量の吸収が効率的に緩和されることである。言い換えると、吸収問題は、結合量子井戸から生ずるエネルギー状態が、レーザー利得と大きな2次非線形感受率χ(2)の両方をもたらす活性非線形半導体デバイスを設計することによって対応することができる。
【0012】
一部の先行研究活動においては、QCL構造において共鳴2次非線形感受率と反転分布とを複合することによる、第2高調波発生(second-harmonic generation)が実証されている。しかしながら、この技法は、高いχ(2)と反転分布の統合の利点には、THzDFGに対しては特に厳しいレーザー設計問題が伴うので、従来はDFGに対して適用されていない。しかしながら、出願者らは、QCL構造内にDFGを効率的に実現できるように、そのような設計問題も克服した。
【0013】
したがって、本開示は、QCL内でのDFGに基づく、THz放射を提供する新規の方法および装置の様々な実施態様を対象とする。例えば、一態様においては、高い2次非線形感受率と反転分布が、2つの別個の中赤外周波数における発生を支援する、QCL中に組み込まれる。これらの態様におけるTHz放射の発生の基本的な物理的メカニズムは、図1に示す過程に類似する、結合量子井戸非線形領域における共鳴DFGである。しかしながら、そのような構造に基づく従来研究と異なり、本開示の新規な態様によれば、統合された非線形活性領域は、エネルギー状態3における反転分布を有する。中赤外線放射は、この過程に対してキャビティ間光学ポンプとして働くが、ポンプの共鳴吸収は、状態3における反転分布が理由で、抑制される。すなわち、そのような原理に基づくQCLキャビティの全長は、コヒーレント非線形光学的発生に寄与することができる。この結果として、DFGのためのポンプレーザーと非線形領域の両方を収容する、THz放射の小型の半導体光源が結果として得られる。様々な観点において、本明細書において開示する発明の概念によれば、(DFGに基づかない)THzQCLに対する従来設計と比較して、高い動作温度および広い同調可能なTHz放射が、可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
要約すると、本明細書で開示する1つの態様は、量子カスケードレーザー(QCL)の活性領域に組み込まれた有効な2次非線形感受率(χ(2))を有するQCLであって、第1の周波数ωにおける第1の放射、第2の周波数ωにおける第2の放射、および第3の周波数ω=ω−ωにおける第3の放射を、非線形感受率から生じる差周波数発生(DFG)に基づいて発生するように構成されている、前記QCLを含む、新規な装置を対象とする。
【0015】
別の態様は、非線形感受率から生じる差周波数発生(DFG)に基づく、第1の周波数ωにおける第1の放射、第2の周波数ωにおける第2の放射、および第3の周波数ω=ω−ωにおける第3の放射の発生を容易化するように、量子カスケードレーザー(QCL)の活性領域内に、有効な2次非線形感受率(χ(2))を組み込むことを含む、新規の方法を対象とする。
【0016】
前述の概念と、以下により詳細に考察する追加の概念とのすべての組合せは(そのような概念が互いに排他的でない限り)、本明細書で開示する発明の主題の一部であると意図されることを理解すべきである。特に、本開示の最後にある、請求された主題のすべての組合せは、本明細書で開示する発明の主題の一部であると意図するものである。また、参照により組み込まれたいずれかの開示において表れることのある、本明細書において明示的に使用される用語は、本明細書において開示される特定の概念と最も整合性のある意味が与えられるべきであると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】大きな光学的非線形性を含む、非対称の単一量子井戸構造または結合量子井戸構造における差周波数発生(DFG)の概念を概念的に示す、エネルギー準位図である。
【図2】本開示の発明の一態様による、QCLの活性領域を形成する、2つの統合量子カスケード構造を含む、量子カスケードレーザー(QCL)における差周波数発生(DFG)を概念的に示す、エネルギー準位図である。
【図3】本開示の発明の一態様による、活性領域におけるDFGに基づきTHz放射を発生するように構成された例示的QCLの、全体レイアウトおよび規模を示す図である。
【図4a】本開示の発明の一態様による、図3に示すQCLの導波路構造のさらなる詳細を示す図である。
【図4b】本開示の発明の一態様による、図3に示すQCLの屈折係数プロファイルおよび導波路モードのさらなる詳細を示す図である。
【図4c】本開示の発明の一態様による、図3に示すQCLの屈折係数プロファイルおよび導波路モードのさらなる詳細を示す図である。
【図4d】本開示の発明の一態様による、図3に示すQCLの屈折係数プロファイルおよび導波路モードのさらなる詳細を示す図である。
【図5a】本開示の発明の一態様による、図3および図4(a)に示すQCLの活性領域の第2のQC構造(a)の一周期に対する計算された伝導帯図である。
【図5b】本開示の発明の一態様による、図3および図4(a)に示すQCLの活性領域の第1のQC構造(b)の一周期に対する計算された伝導帯図である。
【図5c】本開示の発明の一態様による、図5(a)および図5(b)に示された伝導帯図に基づくTHz共鳴DFG過程を示す、エネルギー準位図である。
【図6】本開示の発明の一態様による、図3および図4(a)に示すものと類似の例示的QCLからの典型的な中赤外発光スペクトル、ならびにそのようなQCLの典型的な電流‐電圧(I‐V)特性および光出力対電流(L‐I)特性を示すグラフである。
【図7a】本開示の発明の一態様による、図3および図4(a)に示されたものと類似の例示的リッジ導波路QCLから、異なる温度で収集されたTHzスペクトルを示すグラフである。
【図7b】本開示の発明の一態様による、ピークTHzDFG電力と、合計中赤外発光電力の、注入電流への依存性、ならびに、図3および図4(a)に示すものと類似の例示的リッジ導波路QCLに対する、THzDFG電力対2つの中赤外ポンプの電力の積を示す、グラフである。
【図8a】本開示の発明の別の態様によるQCLに対する、中赤外レーザーモードおよびTHzモードの強度分布を示す図である。
【図8b】本開示の別の新規な態様によるQCLに対する、導波路構造を示す図である。
【図9】ポンプ周波数およびDFG周波数の両方を発生するための高い非線形感受率を組み込まれた単一量子カスケード構造を含む、本開示の発明のさらに別の態様による、DFGに基づくQCLに対する、エネルギー図である。
【図10】ポンプ周波数およびDFG周波数の両方を発生するための高い非線形感受率を組み込まれた単一量子カスケード構造を含む、本開示の発明のさらに別の態様による、DFGに基づくQCLのための、伝導帯図である。
【図11】本開示の発明の別の態様による、QCLのための導波路構造の横断面図である。
【図12】本開示の発明の一態様による、図11の導波路構造の上面図である。
【図13】図11に示すQCLのbound-to-continuumQC構造の一周期に対する、計算された伝導帯図である。
【図14】図11に示すQCLに対する、導波路屈折率プロファイルと共に、中赤外(IR)およびTHz波に対する、計算された導波路モードを示す図である。
【図15a】図11に示す導波路構造によって設計された例示的QCLの様々な動作特徴を示す図である。
【図15b】図11に示す導波路構造によって設計された例示的QCLの様々な動作特徴を示す図である。
【図15c】図11に示す導波路構造によって設計された例示的QCLの様々な動作特徴を示す図である。
【図15d】図11に示す導波路構造によって設計された例示的QCLの様々な動作特徴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は、テラヘルツ放射を発生するための、本開示による発明の方法および装置に関する様々な概念、およびその態様についてのより詳細な説明である。開示される概念は、実現のいかなる特定の方法にも限定されないので、上記で導入されて、以下でさらに詳細に考察される様々な概念は、多数の方法のいずれによっても実現することができることを理解すべきである。具体的な実現形態および応用形態の例は、主として実証目的で提供されるものである。
【0019】
本開示による方法および装置の様々な態様において、2つの中赤外(IR)「ポンプ」光源に基づく量子カスケードレーザー(QCL)におけるテラヘルツ(THz)放射を提供する差周波数発生(DFG)のための例示的基準としては、1)QCLの活性領域中に、有効な第2次非線形感受率χ(2)と反転分布を複合させる;2)中赤外(IR)ポンプ光源およびDFGの結果として生じるTHz放射の両方に対して好適に低損失である、導波路を設計すること、および3)DFGに対する位相整合をもたらすことが挙げられる。これらの基準のそれぞれについて以下で考察する。
【0020】
一態様によれば、QCL内のDFGは、QCLの活性領域を形成するために、互いに統合された2つの量子カスケード構造を利用して実現され、一方のQC構造は2つの中赤外ポンプ光源の一方の共鳴を支援するように構成され、他方のQC構造は、2つの中赤外ポンプ光源の他方の共鳴を支援するように構成され、QC構造の一方または両方が、DFGに基づくTHz放射を支援するように有効な2次非線形感受率を有するように構成される。図2は、それぞれのQC構造に対するエネルギー準位図を介して、そのような実現形態の一例を概念的に図示している。図2に示す過程において、第1QC構造は、(エネルギー遷移510に対応する)ポンプ周波数ωにおけるレーザー発光を支援するように構成されるのに対して、第2のQC構造は、(エネルギー遷移512に対応する)ポンプ周波数ωにおけるレーザー発光を支援するように構成される。この態様の一観点において、第2のQC構造はまた、高い非線形感受率χ(2)を有するように構成され、そのために、第2のQC構造は、同時に反転分布および(エネルギー遷移514に対応する)DFGを支援する領域となる。図2における点線の矢印は、デバイス中の電流(キャリア経路)を概略的に図示している。
【0021】
一態様において、図2におけるエネルギー準位図を介して概念的に図示されるQC構造は、ポンプ周波数ωのための第1QC構造として“3量子井戸”構造または「2−フォノン共鳴(two-phonon resonance)」構造を利用し、統合非線形性を有するポンプ周波数ωのための第2QC構造として「bound−to−continuum(連続体に結合した)」構造を利用して実現してもよい。個別には、それぞれの設計は、室温で動作することが知られている。2フォノンQC設計または3量子井戸QC設計では、DFGに対する高い非線形性感受率が得られず、本願出願人らは、QC設計は、DFGに対する著しく高い2次非線形感受率を支援できること、およびbound−to−continuum設計は、ある数の異なる場合(例えば、異なるポンプ周波数およびその結果として得られるDFG)に対して最適化することができることを認識、理解した。
【0022】
前述のことから、DFGに基づいてTHz放射を発生するように構成されたQCLの一態様は、2つのQC構造または「サブスタック(sub-stacks)」を有する活性領域を含む。この態様の様々な観点において、第1QC構造は、第1のポンプ周波数ωに対応する第1のレーザー発光波長を支援する、多段階の「2−フォノン共鳴」構造を含み、第2QC構造は、第2のポンプ周波数ωに対応する第2のレーザー発光波長を支援し、同時にTHzDFGのための有効な2次非線形感受率χ(2)を有する、多段階のbound−to−continuum構造を含む。この態様に基づく一例示実現形態において、第1QC構造は、第1のポンプ周波数ωに対して約7.6マイクロメートルのレーザー発光波長を支援する(とともに、DFGに対して比較的小さなχ(2)を有する)、20段の2−フォノン共鳴構造を含んでもよく、また第2QC構造は、第2のポンプ周波数ωに対応する約8.7マイクロメートルのレーザー発光波長を支援する30段のbound−to−continuum構造を含んでもよい。さらに、第2QC構造は、(例えば、約60マイクロメートルにおける)THzDFGに対して非常に大きいχ(2)を有するように構成される。
【0023】
図3は、活性領域103においてDFGに基づくTHz放射を発生するように構成された、例示的QCL100の全体レイアウトおよび規模を示し、図4(a)、(b)、(c)および(d)は、図2(QCLの活性領域内の2つのQC構造)と関連して上述した設計考察に基づく本開示の一態様による、中赤外波長およびテラヘルツ波長に対する、導波路構造、屈折率プロファイル、および導波路モードを含む、QCL製作、構造および動作特性のさらなる詳細を示す。一実現形態において、そのようなQCLは、分子線エピタキシー(MBE)により成長し、InP基板に格子整合された、InGaAs/AlInAsヘテロ構造を基礎としてもよい。
【0024】
より具体的には、図4(a)を参照すると、一態様においてはMBE成長が、n=1.3〜1.8×1017cm−3までnドープされたInP基板122上で始まり、n=5×1016cm−3までnドープされた1.6μm厚GaInAs層116(第1の低ドープバッファ層)が下部導波路コアとして作用する。この下部導波路コア116の上に、20段階の「2−フォノン共鳴」構造112と30段階の「bound−to−continuum」構造114が成長し、QCLの活性領域103として作用し、この2つのQC構造112および114は、n=5×1016cm−3までnドープされた200nm厚のGaInAsスペーサ(図4(a)では図示せず)によって隔てられている。Al0.48In0.52AsおよびIn0.53Ga0.47Asは、2つのQC構造用として本態様において使用される材料であり、2つの構造の層配列は、(注入障壁から始まり、図5(a)および(b)を参照)ナノメートル単位で、それぞれ40、20、7、60、9、59、10、52、12、38、12、32、12、32、16、31、19、31、22、30、22、29、および40、18、9、54、11、53、11、48、22、34、14、33、13、32、15、31、19、30、23、29、25、29である。これらの障壁は、太字で示してあり、下線を施した層は、n=4×1017cmまでドープされている。
【0025】
成長は、上部導波路コアとして作用する、n=5×1016cm−3までnドープされた1.5μm厚のGaInAs層118(第2の低ドープバッファ層)で終わる。次いで、ウエハがMOCVD室に移送されて、n=1017cm−3までnドープされた10μm厚InP層120が、過成長して中赤外モードおよびTHzモードの両方のための上部導波路クラッドとなる。図3において示すように、この材料は、ディープエッチングされたリッジ導波路に加工してもよく、このリッジ導波路は、長さが約2mm、幅が約15〜25μmであり、リッジの横壁上の400nm厚さのSi絶縁層110と、Ti/Au(20nm/400nm)上部接点108とを備える。非合金Ge/Au接点124が、基板122の背面に付着される。Al(200nm/50nm)層(図4(a)には示さず)を含む、高反射率コーティングが、 デバイスの後端ファセット上に蒸着される。さらに、回折格子105を、任意選択で導波路構造の表面上に配置して、導波路の長さに沿ってDFG放射を抽出するように構成してもよい。
【0026】
図4(b)、(c)および(d)は、λ=7.6マイクロメートル(b)、8.7マイクロメートル(c)および60マイクロメートル(d)におけるモードに対する、TM00導波路モードにおける磁場強度を示す。Hの値は、∫(Hdz[μm単位]=1となるように正規化されている。他に示されているのは屈折率プロファイルであり、有効な非線形感受率を有する領域がシェーディングされている。Al0.48In0.52As化合物およびIn0.53Ga0.47As化合物は、二元化合物に対するデータ間での線形内挿と、自由キャリア寄与を説明するために緩和時間定数τ=10−13を有するドルーデ(Drude)モデルとを用いて得てもよい。この技法は、中赤外において有効であることが知られている。しかしながら、Reststrahlenbandに近接すること、および光学フォノンエネルギーが材料成分に強く依存することから、60μmの波長に対しては非常に正確ではないことに留意すべきである。20μm幅リッジの導波路におけるTM00モードに対して、それぞれ7.6μm、8.7μmおよび60μmの波長において、3.266+i×0.00057、3.248+i×0.00080、および2.981+i×0.161の有効屈折率neffが得られる。このデータから、約(420+170i)cm−1の位相ずれk−(k−k)が推定され、これが約22μmのコヒーレンス長lcoh=1/|k−(k−k)|に対応する。
【0027】
図5(a)は、図3および図4(a)に示すQCL100の活性領域103の形成部分として示される、統合された2次光学非線形性を有する、「bound−to−continuum」第2QC構造114の30段スタックの1周期520の、計算された伝導帯図を示す。同様に、図5(b)は、QCL100の活性領域103の「2−フォノン共鳴」QC構造112構成部分の20段スタックの1周期522の計算された伝導帯図を示す。これらの図において、波状の曲線は、関連する量子状態の波動関数の2乗の係数を表わす。DFGに対して重要な「bound−to−continuum」区間における、電子状態は、図5(a)において太字で、1〜5を符して示してある。両構造に対する注入障壁525(すなわち、電子がトンネル効果でそこを通過して構造に達する必要がある障壁)は、図面における最左端障壁として示されている。
【0028】
図5(a)および5(b)に示す伝導帯図に基づく、図3および図4(a)に示されたQCL100の活性領域103におけるTHz共鳴DFG過程の概略が、図5(c)のエネルギー準位図に示されており、図5(a)からの該当するエネルギーレベルが図5(c)において太字、かつ符号をつけて示されている。特に、図5(c)は、QCL100が、非線形感受率から生じる差周波数発生(DFG)に基づき、第1の周波数ω(524)において第1の放射を、第2の周波数ω(526)において第2の放射を、そして第3の周波数ω=ω−ω(528)において第3の放射を発生するように構成されている。このDFG過程において、2次非線形感受率の式は次のようになる:
【数6】

ここで、Nは、上部レーザーレベル1における電子濃度であり、nおよびn’は、高密度の状態の多様体(図3a)におけるレベルであり、ezij、ωijおよびΓijが、状態iおよびjの間の遷移のダイポールマトリックス要素、周波数、およびの広幅化(broadening)である。ここで、電子集団のほとんどは、上部レーザーレベル1にあり、下部レーザーレベルにおける分布は無視される。
【0029】
この特定の例示的実現において、χ(2)への最大の寄与は、図5(a)および(c)における、状態1、3および4から生じる。計算されたダイポールマトリックス要素およびエネルギー間隔を式(2)に挿入し、広幅化
【数7】

、および電子のほとんどが上部レーザー状態にあると仮定して、それぞれ7.6および8.7マイクロメートル波長における、2つのレーザーポンプ間のDFG過程に対して、2次非線形感受率
【数8】

が推定される。実際的に、所与の実現形態に対するχ(2)の実際値は、レーザー状態において電子集団分布がより均一であることから、より小さくなることがあり、さらに、サブバンド間遷移エネルギーおよび線幅の値における不確実さは、χ(2)の実際値が小さいことの理由を説明することもある。図11および段落[0048]と関係して以下にさらに考察するように、χ(2)をより正確に推定するためのより改良された数学形式は、レーザーの「利得=損失」状態を考慮に入れてもよい。
【0030】
図3および図4(a)と関係して上述した過程により製作された、例示的QCLについて様々な計測が行われた。中赤外とTHz発光の両方のスペクトル計測に対して、フーリエ変換赤外分光計が使用された。中赤外およびTHzスペクトルの計測に、水銀カドミウムテルル検出器およびヘリウム冷却シリコンボロメータ(silicon bolometer)を、それぞれ使用した。中赤外発光およびTHz発光に対して、それぞれ、較正されたサーモパイル検出器(thermopile detector)および較正されたボロメータを用いて電力計測を行った。電力収集効率は、中赤外計測に対しては約70%、THz計測に対しては10%未満であると推定された。以下においてさらに考察する、様々な図において提示されるデータは、収集効率に対して補正されていない。中赤外ポンプとTHzDFGの両方を区別するために、光学フィルタを使用した。
【0031】
図3および図4(a)と関係して上述した例示的なリッジ導波路デバイスからの典型的な中赤外発光スペクトルが、図6の挿入図に示されている。ポンプ発光波長は
【数9】

である。デバイスは、最高約250°Kまで二波長モードで動作し、室温において単一波長発光
【数10】

をもたらす。図6はまた、後端ファセット高反射コーティングを有する幅20μm、長さ2mmのリッジデバイスを用いて、パルスモード(200kHzにおいて60nsパルス)において10°Kで得られた、デバイスの典型的な電流‐電圧(I‐V)特性および光出力対電流(L‐I)特性を図示している。7.6μmおよび8.7μmのポンプレーザーのピーク電力を、それぞれ、下方の2つの曲線にプロットした。データは、推定70%の電力収集効率に対して、補正されていない。
【0032】
異なる温度で収集された、代表的なリッジ導波路QCLからのTHzスペクトルが図7aに示されている。これらのスペクトルは、後端ファセット高反射コーティングを有する幅20μm、長さ2mmのリッジデバイスから得られた。ここでも、このデバイスは、500kHzにおける60ナノセカンドパルスにおいて3.6アンペアのピーク電流の、パルスモードで動作した。THz信号のスペクトル位置は、中赤外ポンプの周波数の差と一致する。10°Kおよび80°Kにおける最大DFG出力電力は同等であり、この特定の例示デバイスにおいてDFGが観察された最高温度である150°Kにおいては、約5分の1であった。DFG信号の温度による低下は、中赤外ポンプ強度の温度による低下によるものと考えることができる。特に、10°Kと80°Kにおける2つの中赤外ポンプのピーク電力の積は同様であり、150°Kにおけるそれは、約4分の1に低下した。
【0033】
典型的なデバイスに対する、ピークTHzDFG電力、および合計中赤外発光電力の、10°Kにおける注入電流への依存性が、図7bに示されている。THzDFG電力に対する、2つの中赤外ポンプの電力の積が図7bの挿入図にプロットされている。式(1)から期待される線形依存性は、11nW/Wのスロープ効率について、明らかに観察することができる。中赤外計測およびTHz計測に対して、それぞれ、推定70%および10%電力収集効率に対して、データは補正されていない。
QCLにおける、THzDFG変換効率を評価するために、QCL導波路全体にわたるχ(2)の変動と、導波路内の不均一電場強度分布を考慮しなくてはならない。以下の解析において、ポンプ波動の電力は、DFG発光のそれよりもはるかに大きく、結合されたTM偏光導波路モードの場合には、一般の教科書技法に従って、DFG変換効率に対する式を導出した。
【0034】
周波数ωおよびωにおける2つの中赤外ポンプによる、周波数ω=ω−ωにおいて誘起される非線形偏光P(2)は、周波数ωにおける波動の放射源として作用する。結合量子井戸システムに対して、P(2)は、導波路層に直角に偏光されており、そのために、TM偏光導波路モードだけに寄与する。導波路内での周波数ωにおけるモードの磁場振幅は、以下のように表現できる:
【数11】

ここで、座標系は図4(a)に示されており、Hω(x,z)×ei(ωt−ky)は、受動導波路内でのモード(すなわち、P(2)なし)であり、h(y)は、P(2)と共に導波路内を伝播するときに、モード強度の増大の原因となる、緩やか変化する振幅である。H(x,y,z,t)に対する数式を波動方程式に挿入し、h(y)の2階微分を無視すると(緩やかな変化の振幅近似(slow-varying amplitude approximation)を使用して)、次式を得る:
【数12】

【0035】
ここで、Hω(x,z)×ei(ωt−ky)は、受動導波路に対する波動方程式の解であることを利用した。異なる次数の導波路モードの直交性を利用して、h(y)に対して次式を得る:
【数13】

非線形偏光は、中赤外ポンプモードの電界によって誘起され、
【数14】

ここで、
【数15】

は、周波数ωにおけるモードの電界振幅のz成分である。
【0036】
TM偏光モードにおける電界と磁界の間の関係を使用して、次式を得る:
【数16】

ここで、
【数17】

およびkは、周波数ωにおけるモードの、有効屈折率と波動ベクトルである。式(S4)および(S5)を式(S3)に挿入し、yについて積分すると、次式を得る:
【数18】

ここでは、ω=ω−ωであることを利用し、
【数19】

であると仮定した。
【0037】
DFG発光の電力を計算するために、周波数ωにおけるモードの時間平均されたポインティングベクトル(Poynting vector)を積分して、次式を得る:
【数20】

ここで、〈...〉は時間平均であり、実際の電場強度は、
【数21】

で表わされる。式(S6)からのh(y)に対する数式を、式(S7)に挿入し、この数式をポンプ波動の2つの強度で正規化すると、DFG波動の電力に対する数式が得られ、一部簡略化すると次式となる:
【数22】

【0038】
ここで、Wは、周波数ωにおけるモードの電力であり、lcoh=1/|k−(k−k)|である。この数式は、さらに
【数23】

と仮定することによって、さらに簡略化することができる。次いで、次式が得られる:
【数24】

ここで、χ(2)は、QCL導波路内の非線形感受率のピーク値であり、相互作用の有効面積Seffは、次式で与えられる:
【数25】

ここで、平面波に対して、ビーム強度はI=W/Sであり、一定χ(2)とすると、平面波近似において与えられるDFG強度式を回復する。
【0039】
QCL導波路内でのTHzDFG変換効率を評価するために、図4(b)、(c)および(d)に示すモードプロファイルを使用するとともに、x方向(図4(a)を参照)における場強度の依存性を無視して、式(S10)における積分を評価する。中赤外ポンプはTM00モードであると仮定し、TM00モードに対してDFGが最も効率的であると検証して、幅20μmリッジデバイスに対して、
【数26】

を得る。lcoh=22μmとすると、この結果として、約700μW/Wの内部変換効率ηint=W/(W)となり、ここで電力Wは、QCL導波路の内側で計測される。電力WはQCL導波路外部で計測される場合に、外部変換効率ηext=W/(W)を評価するために、フレネル方程式(Fresnel formulas)および計算されたneffを使用して、レーザー前端ファセット透過率を推定してもよい。すべての3つの波長に対して約0.7の電力透過係数が得られ、ηext、約1mW/Wが得られる。ここで、λ=60μmおよびリッジ導波路横断面積約15×20μmに対して、実際の前端ファセット透過係数は、フレネル方程式によって得られるものより大幅に小さいことに留意されたい。この結果として、より小さなηextが得られる。
【0040】
要約すると、図4(a)の態様と関係して考察した上記の例においては、位相整合を達成しようとする試みはなく、コヒーレンス長は最大化されなかった。TM00ポンプとTHzDFGモードの間の位相不整合、k−(k−k)は、約420cm−1と推定され、THzDFGに対する損失αは約340cm−1と推定され、これは約22μmのコヒーレンス長ということになる(式(1)を参照)。
【数27】

を使用し、中赤外はTM00モードでだけでレーザー発生と仮定する、理論的推定値によると、DFG変換効率は、導波路幾何学形状において1mW/Wのオーダーであると予測される。中赤外およびTHzDFGの信号収集効率に対して補正のされた、変換効率の計測値は、約50nW/Wである。この食い違いは、多くの高次横モードにおける中赤外レーザー発生、χ(2)の実際値が大幅に小さいこと、THz波取出し(out-coupling)の低効率などを含む、ある数の要因から生じている可能性がある。
【0041】
中赤外モードおよびTHzモードのための誘電体モード閉じ込めをもたらすために、金属・有機化学気相成長(MOCVD)によって成長した10μm厚のInP上部導波路クラッド120が、図4(a)の態様において利用されるのに対して、別の態様によれば、結合誘電体/金属表面プラズモン導波路構造を利用してもよく、この場合には、中赤外ポンプは、誘電体導波路コアに閉じ込められ、THzモードは、先に研究されたTHzQCL(DFGに基づかない)のそれと同様に、金属層(複数を含む)/壁(複数を含む)によって誘導される。金属層はTHzモードに対してはよいが、中赤外場に対して高い損失を導入する。したがって、中赤外モードは、金属処理壁(metallized walls)との重複を少なくする必要がある。これは、中赤外モードが厚いTHz導波路の中心に位置して、壁に向かって自然に消滅し、その結果、金属との重複が非常に少なくなる設計において達成することができる。
【0042】
図8(b)は、本開示の発明の別の態様による、表面プラズモン導波路構造180を含む、そのようなQCL100Aの例を示し、これに対して図8(a)は、QCL100Aに対する、中赤外レーザーモード(中央の幅の狭い方のプロット)およびTHzモード(幅の広い方のプロット)の強度分布を示す。特に、図8(a)に示す強度分布は、同時に電流注入のための接点となる2つの金属壁170および172によって形成される約10.5μm厚さの例示的導波路において、中赤外レーザーモードおよびTHzモードに対して成長方向(導波路の上部から数えた距離)に示されている。図8(b)に示すように、集積された活性領域103は、導波路の中央領域(例えば、4〜5μm)を占有する。導波路の残りの部分は、低ドープのバッファ材料(例えば、図4(a)に示すものと類似の層116および118)を含む。一観点において、中赤外ポンプモードのプロファイルの幅が狭いために、実現形態によっては、THzQCレーザーにおいて行われるように、導波路全体を活性領域で充填する必要がない。別の観点においては、任意選択で、格子182を表面プラズモン導波路構造180の表面上に配置して、導波路の長さに沿ってDFG放射を抽出するように構成してもよい。
【0043】
さらに別の態様によれば、DFGに基づくQCLは、高い非線形感受率を組み込まれた単一の量子カスケード構造を含み、ポンプ周波数とDFG周波数の両方を発生してもよい。図9および図10は、それぞれ、そのようなデバイスに対する、エネルギー準位図および伝導帯図を示す。この設計は、2−フォノン共鳴構造の修正形態に基づいている。図9および図10において、レーザー作用の原因となるエネルギーレベルと、高い2次非線形性が太字の符号1、2、3で示されている。1から3および2から3へのレーザー遷移は、同一の発振強度を有するように設計され、周波数差が60μmにおけるTHz放射に対応する。平均ドーピングを約5×1016cm−3にとり、状態1および2で均一に共有される電子集団を仮定すると、60μmにおけるDFGに対する非線形感受率は、8×10pm/Vの大きさでもよい。
【0044】
THz放射を発生するための本開示による、QCLの様々な態様において、QCLは、連続波(CW)またはパルス放射を発生するように動作させてもよく、また、動作温度の制御された変動に基づいて、第1、第2および第3の周波数を可変に同調するように構成してもよい。この目的で、様々な態様による装置には、(一定点で安定化させるか、または変動させる)QCL(例えば、図4(a)および図8(b)を参照)に結合された熱電(TE)冷却器190を含めて、QCLの動作温度を制御してもよい。一観点において、TE冷却器は、単一冷却器または多段階冷却器として、約195°〜295°Kの範囲でQCL動作温度をもたらすように構成してもよい。
【0045】
上記で考察した発明の概念に従う、さらに別の例示実現形態において、異なる動作波長および/または動作性能尺度に対して適応させることのできる、THzQCLを実現するために、図4(a)に示す全般導波路構造に対して、様々な変形形態が考えられる。図11は、本開示の発明の別の態様による、図4(a)に示すもの全体的に類似するが、いくつかの変更を加えた、QCLのための導波路構造のそのような一例を示している。図11に示す導波路構造に基づく例示的な一実現形態においては、上記で考察した概念によるDFGに基づくTHzQCLは、波長λ=8.9μmとλ=10.5μmの中赤外で動作して、
【数28】

において、80°Kで7μW出力電力、250°Kで約1μWの出力電力、および300°K(すなわち、約室温以上)で約300nW出力電圧で、テラヘルツ出力を生成するように設計できる。
【0046】
より具体的には、図11に示されるQCL100Bは、分子線エピタキシ(MBE)成長によるIn0.53Ga0.47As/In0.52Al0.48Asへテロ構造に基づいている。特に、MBE成長は、9×1016cm−3までnドープされ、30段の2−フォノン共鳴QC構造112Bを有し、10.5μmで発光するように設計されたInP基板122B上で始まり、3×1016cm−3までnドープされた、100nm厚さのGaInAsスペーサ(図11では図示せず)、および8.9μmで発光するように設計された30段のbound−to−continuumQC構造114Bが、それに続く。この例示的装置に対して、bound−to−continuumQC構造114Bの一周期に対する層配列は(Å単位で)、注入障壁から始まり、40/24/7/65/8/64/8/58/22/40/13/38/14/37/15/36/19/36/25/36/25/35であり、これに対して、2−フォノン共鳴構造112Bの一周期に対する層配列は、40/20/7/60/9/59/10/52/14/38/12/32/12/32/16/31/19/31/22/30/22/29である。障壁は、太字で示されており、下線が施された層は、n=3×1017cm−3までドープされている。37kV/cmの印加バイアスにおける、bound−to−continuum構造の一周期の計算された伝導帯図が、図13に示されている。以上のように、波状曲線が、波動関数の二乗モジュラス(moduli squared)を表わす。DFGに対して重要な電子状態が、太字で符号1〜3で示されている。
【0047】
図11のQCL構造100Bにおいて、MBE成長は、3×1016cm−3までnドープされた、50nm厚のGaInAs層(図11には図示せず)で終端する。次いで、それぞれ、5×1016cm−3と5×1018cm−3までnドープされた、3.5μm厚の層120Bと0.2μm厚InP層120Bを含む、上部導波路クラッドが、MOCVDによって過成長される。図4(a)に示されたQCLと同様に、実施例によっては、この材料を、リッジの横壁上の400nm厚Si絶縁層110BとTi/Au(20nm/400nm)上部接点108Bを備える、長さ2mmで幅が15〜25μmのディープエッチングされたリッジ導波路に加工してもよい(例えば、図3を参照)。非合金Ge/Au接点124Bは、基板122Bの背面に堆積させてもよい。また、高反射率コーティング(例えば、Al/Au(200nm/50nm)層を含む)をデバイスの後端ファセットに蒸着させてもよい。さらに、格子105Bを、任意選択で導波路構造の表面に配置し、導波路の長さに沿ったDFG放射を抽出するように構成してもよい。
【0048】
式(2)に関係する上記の考察を再び参照すると、図11のQCL100Bにおいて、bound−to−continuum構造114Bは、DFGに対する相当なχ(2)を有する。上部レーザー状態における電子密度は、「利得=損失」条件から求めることができる。反転分布を有する媒体におけるレーザー利得は、次式で与えられる:
【数29】

ここで、neff(ω)は、レーザーモードの有効屈折率であり、nは下部レーザーレベルを指す。QCLに対する「利得=損失」条件は、次式で与えられる:
【数30】

ここで、gmaxは、式(3)におけるレーザー利得の極大値であり、Γは活性領域とのモード重複因子であり、αwgおよびαは、それぞれ導波路損失およびミラー損失である。QCL100Bに対して、

【数31】

のパラメータをとると、
【数32】

が得られる。
【数33】

をとると、式(2)、(3)および(4)から、発明者らのデバイスにおいてはDFG過程に対して、
【数34】

であることがわかる。
【0049】
図4(a)と関係して上記で考察した導波路構造について、図4(a)と図11の構造におけるいくらかの差について注記する。第1に、活性領域および導波路層におけるドーピングは低減され、この結果として、THz波に対する損失が小さくなる。第2に、導波路は、ここでは位相整合、k=k−kのために設計されている。中赤外ポンプおよびTHz波のTM00モードに対して計算された有効屈折率、ならびにTHzモード損失を使用して、図11のQCLに対するコヒーレンス長(図1を参照)は、幅25〜60μmのリッジにおいて約50〜80μmであり、図4(a)のQCLに対するよりも約3倍大きい。lcohに対する限定要因は、THzにおける導波路損失であり、これは
【数35】

と計算される。ここで、αは、基板、導波路層、および活性領域におけるドーピングをさらに低減することによって、100cm−1未満に低減することが可能であることを理解すべきである。
【0050】
図12は、図11の導波路の一実施例の上面図を示す。上記のように、導波路は、前端ファセット370に向かって約60μmまで拡幅しているテーパー区間360を含む、長さ2mmで幅25μmのディープエッチングされたリッジ導波路を形成するように加工してもよい。ここでも、Al/Au(200nm/50nm)層を含む、高反射率コーティングを後端ファセット380に蒸着させてもよい。一観点において、テーパー区間360は、導波路からのTHz放射の取出し効率を向上させる。中赤外(IR)波およびTHz波に対して計算された導波路モードが、導波路屈折率プロファイルとともに、図14に示されている。図14においては、波長λ=8.9μm(細い黒線)および60μm(太い灰色線)に対して、TM00導波路モードにおける磁場強度は右軸に示されており、屈折率プロファイルは左軸に示されている。活性領域の2つの区域も灰色で示されている。
【0051】
計測のために、図11に示される導波路構造による例示的QCLは、反復速度250kHzで60nsパルスのパルスモードで動作させた。放射は、2つの2インチ直径放物形鏡を使用して収集した。一方は、5cm焦点長であって、デバイスからの光を収集し、他方は、15cmの焦点長であって、光を中赤外(IR)計測のための熱電対または水銀カドミウムテルル(MCT)検出器に、またはTHz計測用のHe冷却較正シリコンボロメータに、焦点を合わせなおす。中赤外(IR)電力は、本明細書の設定の70%収集効率に対して補正した。スペクトルは、フーリエ変換赤外分光計で採取した。THz計測に対して、中赤外(IR)放射を光学フィルタを使用して阻止した。これらの例示的QCLは、室温まで二波長で動作した。電流‐電圧特性、2つの中赤外(IR)ポンプ電力の積、W(ω)×W(ω)の、電流に対する依存性、および代表的なデバイスに対する代表的な発光スペクトルが、図15(a)に示されている。同デバイスの80°KにおけるTHz発光スペクトルが図15(b)に示されている。比較のために、図15(a)における中赤外(IR)スペクトルを使用してシミュレーションされた、THzDFGスペクトルも図15(b)に示されている。
【0052】
導波路内へサブ波長THzモードを閉じ込めることが理由で、一観点において、QCLから出力されたTHzDFGは著しく発散しており、THz取出し効率が低いことがある。したがって、さらに別の態様においては、図12に示すように、シリコン長半球形レンズ(silicon hyperhemispherical lens)390を、任意選択で出力ファセット370に取り付けるか、またはそれと光学的に連通(例えば、適当に近接)させてもよい。例示的な一実施例においては、レンズ390は、出力ファセット370の5μm範囲に位置する、直径2mm、高さ1.19mmの高抵抗率シリコン長半球レンズとしてもよい。レンズ位置合せのために、QCLからの中赤外(IR)出力を、MCT検出器を用いて撮像してもよい。実施例によっては、レンズを備えるQCLは、レンズなしのデバイスと比較して、収集されたTHzDFG電力出力において25倍の増加を実証した。様々な観点において、この増加は、(推定値<10%から約100%へ)向上した収集効率と、THz取出し効率の向上とに由来している。異なる温度で収集された、レンズ付きのデバイスの代表的なTHzDFGスペクトルが、図15(c)に示されている。THz出力は、室温まで観察され、収集効率に対して補正されたTHz電力は、80°Kにおいて約7μWから、250°Kにおいて約1μW、室温において300nWへと減少する。この傾向は、図15(d)に実証されており、この図では、異なる温度における中赤外(IR)ポンプ電力の積がプロットされている。図15(d)におけるデータは、THz電力出力の低下は、ほとんど中赤外(IR)ポンプ電力の低下に由来する(式(1)を参照)のに対して、THzDFG変換効率は、約5μW/W一定のままである。(d)における計測およびすべてのスペクトル計測は、250kHzの反復速度で、60ns、3.5A電流パルスを用いて動作させるデバイスを用いて行った。
【0053】
要約すると、様々な態様によれば、3つの赤外波長で狭帯域放射を同時に発生し、それによって中赤外から遠赤外の全領域にまたがるように構成された、QCLデバイスが開示される。そのような光源は、例えば、様々な材料の分光器、リモートセンシング(爆発物の検出を含む)、および電波天文学用のヘテロダイン受信機における局所発信器への応用が可能である。
【0054】
本発明の様々な態様について、本明細書において説明し図示したが、当業者であれば、実行するための構造および/または結果、および/または1つまたは2つ以上の利点を取得するための様々な他の手段および/または機能を容易に思い描き、そのような変更形態および/または修正形態のそれぞれは、本明細書に記載される本発明の態様の範囲内に含まれると考えるものである。より一般的には、当業者であれば、本明細書にて記述したすべてのパラメータ類、寸法、材料、および構成は、例示を意味するものであり、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、特定の応用、または本発明の教示がそれに対して使用される応用に依存することを、容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の態様に対する多数の等価物を認識するか、または常用の実験のみを使用してそれらを確認することができる。したがって、前述の態様は例としてのみ提示されるものであり、添付の請求の範囲とその等価物の範囲内で、本発明の態様は、具体的に記述および請求されている以外の方法で実施されてもよいことを理解すべきである。本開示の発明の態様は、本明細書に記載される、個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とするものである。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾していなければ、本開示の発明の範囲に含まれる。
【0055】
本願において定義され、使用されるすべての定義は、辞書による定義、参照により組み入れられる文書における定義、および/または定義された用語の通常の意味、に対して優先するものと理解すべきである。
本願の明細書および請求の範囲において使用される場合の、不定冠詞「a」および「an」は、そうでないことを明示しない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解すべきである。
【0056】
本願の明細書および請求の範囲において使用される場合の、「および/または」という語句は、そのように連結された要素の「いずれか一方または両方」、すなわち、ある場合には連結されて存在し、その他の場合には非連結で存在する要素を意味するものと理解すべきである。「および/または」付きで列挙される複数の要素は、同様に、すなわち、そのように連結された要素の「1つまたは2つ以上」、と解釈すべきである。「および/または」の語句によって具体的に識別される要素以外に、具体的に識別されたそれらの要素に関係していようとも、いなくとも、その他の要素が任意選択で存在してもよい。すなわち、非限定の例として、「Aおよび/またはB」という言及は、「comrising」などのオープンエンド用語と連結して使用される場合には、一態様においては、Aのみ(任意選択で、B以外の要素を含む)、別の態様においては、Bのみ(任意選択でA以外の要素を含む)、さらに別の態様においては、AおよびBの両方(任意選択で、その他の要素を含む)、その他を意味することができる。
【0057】
本願の明細書および請求の範囲において使用される場合には、「または(or)」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リストにおいてアイテムを分離するときに、「または」または「および/または」は内包的、すなわち、少なくとも1つを含むが、また2つ以上、ある数の、またはあるリストの要素、および任意選択で、リストにない追加のアイテム、を含むものと解釈される。「そのうちの1つだけ」または「そのうちの厳密に1つ」、または請求の範囲において使用されるときに、「からなる(consisting of)」などの、そうでないことが明示される用語だけが、ある数の、またはあるリストの要素のうちの厳密に1つの要素の包含を意味する。一般に、本願において使用される場合には、用語「または」は、「いずれか(either)」、「うちの1つ」、「うちの1つだけ」または「うちの厳密に1つ」など、排他性の用語が先行する場合にのみ、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すものと解釈すべきである。「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」は、請求の範囲において使用される場合に、特許法の分野で使用される通常の意味を持つことになる。
【0058】
本願の明細書および請求の範囲において使用される場合には、1つまたは2つ以上の要素のリストを参照する、「少なくとも」という語句は、その要素のリストにおける、任意の1つまたは2つ以上の要素から選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、その要素のリスト内に具体的にリストされた、それぞれのすべての要素を必ずしも含まないとともに、その要素のリスト内の要素の任意の組合せを排除するものではないと理解すべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外に、具体的に特定されたそれらの要素に関係しようとも、関係しなくとも、要素が随意に存在することを許容するものである。すなわち、非限定の一例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、これと等価に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または、これと等価に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様においては、Bの存在なしで(かつ任意選択でB以外の要素を含み)、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上の、A、を意味し;別の態様においては、Aの存在なしで(かつ任意選択でA以外の要素を含み)、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上の、B、を意味し;さらに別の態様においては、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上を含む、A,および少なくとも1つの、任意選択で2つ以上の、B、(かつ任意選択でその他の要素を含む)などを意味することができる。
【0059】
ここで、そうでないことを明示しない限り、2つ以上のステップまたは行為を含む、本明細書において請求される任意の方法において、ステップまたは行為の順序は、その方法のステップまたは行為が記載されている順序に必ずしも限定されないことを理解すべきである。
請求の範囲においては、上記の明細書におけるのと同様に、「comprising」、「carrying」、「having」、「containing」、「involving」、「holding」、「composed of」、その他などの、すべての移行句はオープンエンドである、すなわち〜を含むが限定されない、と理解すべきである。移行句「consisting of」および「consisting essentially of」だけが、それぞれ、米国特許局特許審査便覧(the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)のセクション2111.03に記載されるように、クローズドまたはセミクローズドの移行句である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子カスケードレーザーの活性領域に組み込まれる有効な2次非線形感受率(χ(2))を有する量子カスケードレーザー(QCL)であって、第1の周波数ωにおける第1の放射、第2の周波数ωにおける第2の放射、および第3の周波数ω=ω−ωにおける第3の放射を、非線形感受率から生じる差周波数発生(DFG)に基づいて発生するように構成されている前記QCLを含む、装置。
【請求項2】
QCLが、
第1の放射を発生するように構成された第1の量子カスケード(QC)構造、および
第2の放射を発生するように構成された第2のQC構造を含み、
非線形感受率が、前記第1のQC構造と前記第2のQC構造の少なくとも一方に組み込まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
非線形感受率が、第1のQC構造と第2のQC構造の両方に組み込まれている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
非線形感受率が、第1のQC構造と第2のQC構造の一方だけに組み込まれている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
非線形感受率が、第1のQC構造ではなく、第2のQC構造に組み込まれている、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
第1のQC構造が、少なくとも1つの2フォノン構造を含み、
第2のQC構造が、少なくとも1つのbound−to−continuum構造を含む、請求項2〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
第1のQC構造が、約20〜30の2フォノン構造を含み、
第2のQC構造が、約30のbound−to−continuum構造を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
QCLは、第1、第2および第3の放射を発生する、単一量子カスケード(QC)構造を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
単一QC構造が、少なくとも1つの改変2フォノン構造を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
第1の放射および第2の放射が、それぞれ、電磁スペクトルの中赤外帯内の第1および第2の波長を有し、第3の放射が、電磁スペクトルのテラヘルツ(THz)帯内の波長を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
第1および第2の波長は、約5〜10マイクロメートルの範囲であり、
第3の波長が、約30〜300マイクロメートルの範囲である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
装置が、室温で動作するように構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
装置が、約250°K以下の温度で動作するように構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
装置が、約150°K以下の温度で動作するように構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
装置が、約80°K以下の温度で動作するように構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
装置が、動作温度の制御された変動に基づいて、第1、第2および第3の周波数を可変に同調するように構成されている、請求項1〜15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
QCLの動作温度を制御するために、前記QCLに結合された熱電冷却器をさらに含む、請求項1〜16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
熱電冷却器が、約195〜295°Kの範囲にわたる動作温度を提供するように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
装置が、連続波(CW)モードで動作するように構成されている、請求項1〜18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
装置が、パルスモードで動作するように構成されている、請求項1〜18のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
QCLが、表面プラズモン導波路構造を含む、請求項1〜20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
表面プラズモン導波路構造が、第3の放射を実質的に閉じ込める、少なくとも1つの導電面を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
第1および第2の放射が、少なくとも1つの導電面と大きく重畳しないように、表面プラズモン導波路構造が構成されている、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
表面プラズモン導波路構造が、
活性領域がその間に配置されている、第1および第2の導電面、および
第1および第2の導電面の間に活性領域が配置された、低ドープバッファー材料を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
第1および第2の導電面が、装置への電流の印加を容易化するための金属接点を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
表面プラズモン導波路構造上に配置されたグレーティングをさらに含み、表面プラズモン導波路構造の長さに沿って第3の放射を抽出するように構成されている、請求項21〜25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
QCLが、第3の放射の少なくとも一部分がそこから発出する、後端ファセットおよび前端ファセットを含む、導波路構造を有する、請求項1〜26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
導波路構造が、前端ファセットに近接するテーパー区間を含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前端ファセットと光学連通するレンズをさらに含む、請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
A)非線形感受率から生じる差周波数発生(DFG)に基づく、第1の周波数ωにおける第1の放射、第2の周波数ωにおける第2の放射、および第3の周波数ω=ω−ωにおける第3の放射の発生を容易化するように、量子カスケードレーザー(QCL)の活性領域に、有効な2次非線形感受率(χ(2))を組み込むことを含む、方法。
【請求項31】
QCLが、第1の放射を発生するように構成された第1の量子カスケード(QC)構造、および第2の放射を発生するように構成された第2のQC構造を含み、
A)が、前記第1のQC構造と前記第2のQC構造の少なくとも一方に非線形感受率を組み込むことを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
A)が、第1のQC構造と第2のQC構造の両方に非線形感受率を組み込むことを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
A)が、第1のQC構造と第2のQC構造の一方だけに非線形感受率を組み込むことを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
A)が、第1のQC構造ではなく、第2のQC構造に非線形感受率を組み込むことを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
第1のQC構造が、少なくとも1つの2フォノン構造を含み、
第2のQC構造が、少なくとも1つのbound−to−continuum構造を含む、請求項31〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
第1のQC構造が、約20の2フォノン構造を含み、
第2のQC構造が、約30のbound−to−continuum構造を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
QCLは、第1、第2および第3の放射を発生する、単一量子カスケード(QC)構造を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
単一QC構造が、少なくとも1つの改変2フォノン構造を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
第1の放射および第2の放射が、それぞれ、電磁スペクトルの中赤外帯内の第1および第2の波長を有し、第3の放射が、電磁スペクトルのテラヘルツ(THz)帯内の波長を有する、請求項30〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
第1および第2の波長は、約5〜10マイクロメートルの範囲であり、
第3の波長が、約30〜300マイクロメートルの範囲である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
QCLを室温で動作させることをさらに含む、請求項30〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
QCLを約250°K以下の温度で動作させることをさらに含む、請求項30〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
QCLを約150°K以下の温度で動作させることをさらに含む、請求項30から40のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
QCLを約80°K以下の温度で動作させることをさらに含む、請求項30〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
第1、第2および第3の周波数を可変に同調するように、QCLの動作温度を制御可能に変動させることをさらに含む、請求項30〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
動作温度を制御可能に変動させることが、約195〜295°Kの範囲にわたり動作温度を制御可能に変動させることをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
QCLを連続波(CW)モードで動作させるように、連続電流をQCLに印加することをさらに含む、請求項30〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
QCLをパルスモードで動作させるように、前記QCLにパルス電流を印加することをさらに含む、請求項30〜46のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図15d】
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【公表番号】特表2010−521815(P2010−521815A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553644(P2009−553644)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/003431
【国際公開番号】WO2008/143737
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507403735)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (15)
【Fターム(参考)】