テンプレートの表面処理方法及び装置並びにパターン形成方法
【課題】均一性の高い離型層をテンプレート表面に形成する。
【解決手段】本実施形態によれば、テンプレートの表面処理方法は、凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面を水酸化するか又は前記表面に水を吸着させて、前記表面にOH基を分布させる工程と、前記OH基が分布したテンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程と、を備える。これらの処理は、アミンが所定濃度以下に管理された環境で行われる。
【解決手段】本実施形態によれば、テンプレートの表面処理方法は、凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面を水酸化するか又は前記表面に水を吸着させて、前記表面にOH基を分布させる工程と、前記OH基が分布したテンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程と、を備える。これらの処理は、アミンが所定濃度以下に管理された環境で行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テンプレートの表面処理方法及び装置並びにパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微細パターンを形成する手法として、ナノインプリント法が注目されている。ナノインプリント法では、凹凸パターンが形成されたインプリント用テンプレートを被処理基板上に塗布したレジストに接触させ、レジストを硬化させた後、テンプレートをレジストから離型することによりレジストパターンを形成する。
【0003】
テンプレートをレジストから容易に離型するために、テンプレート表面に離型層を形成する手法が提案されている。離型層は、例えば、テンプレートを離型剤溶液に浸漬し、表面に付着した溶液を高温高湿下で保持した後、リンス、乾燥を行うことにより形成されていた。
【0004】
しかし、このような処理では、処理前テンプレートの表面、処理雰囲気中、離型剤溶液中などに存在するアミン、水分、有機物、パーティクル等がテンプレート表面に吸着し、形成される離型層の均一性が低下していた。この均一性の低い離型層を有するテンプレートを用いてレジストパターンを形成すると、レジストパターンに欠陥が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Zhang et al, “Vapor Deposited Release Layers for Nanoimprint Lithography”, Proc. Of SPIE, Vol.6151, 117, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、均一性の高い離型層をテンプレート表面に形成できるテンプレートの表面処理方法及び装置と、このようなテンプレートを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、テンプレートの表面処理方法は、凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面を水酸化するか又は前記表面に水を吸着させて、前記表面にOH基を分布させる工程と、前記OH基が分布したテンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程と、を備える。これらの処理は、アミンが所定濃度以下に管理された環境で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成図である。
【図2】同第1の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図3】同第1の実施形態に係るテンプレートに対する表面処理の各工程の模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成図である。
【図5】パーティクル除去の模式図である。
【図6】同第2の実施形態に係るテンプレートに対する表面処理の各工程の模式図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成図である。
【図8】同第3の実施形態に係る表面処理装置の第1チャンバの構成の一例を示す図である。
【図9】同第3の実施形態に係る表面処理装置の第2チャンバの構成の一例を示す図である。
【図10】同第3の実施形態に係る表面処理装置の保管部の構成の一例を示す図である。
【図11】同第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置100は、第1チャンバ110、第2チャンバ120、テンプレートを搬送経路130に沿って搬送する搬送アーム131、処理前のテンプレートをセットするローダ部140、処理後のテンプレートを搬出するアンローダ部150を備える。ローダ部140と第1チャンバ110との間、第1チャンバ110と第2チャンバ120との間、及び第2チャンバ120とアンローダ部150との間には隔壁が設けられている。
【0011】
なお、第1チャンバ110、第2チャンバ120の側面に、開閉可能なシャッター(図示せず)を設けることができる。図1では、便宜上、搬送アーム131をチャンバの下方に示しているが、実際には、搬送アーム131はチャンバと同程度の高さに設けられており、シャッターを介してテンプレートをチャンバへ搬入したり、チャンバから搬出したりできるようになっている。
【0012】
また、表面処理装置100の上部には第1フィルタ160及び第2フィルタ170が設けられている。第1フィルタ160は、パーティクルを除去するヘパフィルタである。第2フィルタ170は、アンモニア等のアミンを除去するケミカルフィルタである。第1フィルタ160及び第2フィルタ170により、表面処理装置100内はパーティクル、アミンが極めて少ない環境となる。例えばアミンは数ppbレベルに管理されている。
【0013】
第1チャンバ110は、テンプレートの表面にOHラジカルを反応させるチャンバであり、保持部111、第1気体供給部112、及び光照射部113を有する。
【0014】
保持部111は、ローダ部140によりセットされ、搬送アーム131により搬送されたテンプレート101を保持する。テンプレート101は、例えば、一般のフォトマスクに用いる全透明な石英基板にプラズマエッチングで凹凸のパターンを形成したものである。
【0015】
第1気体供給部112は、H2O/O2/N2の混合気体を第1チャンバ110内に供給する。第1気体供給部112は、混合気体の混合比や流量を制御して、第1チャンバ110内の湿度を調整できる。
【0016】
光照射部113は、テンプレート101の凹凸を有するパターン面に光を照射する。光照射部113は、光源としてXeエキシマランプを有し、波長172nmの光を発する。
【0017】
光照射部113は、テンプレート101表面に一括して光を照射するものでもよいし、テンプレート101の一部分を照射するものでもよい。光照射部113又は保持部111を、平面方向又は垂直方向に駆動可能に設け、光照射部113に対してテンプレート101を相対的に移動可能とすることが好適である。また、テンプレート101表面に対する光の照射角度を調節できるようにしてもよい。
【0018】
なお、光照射部113とテンプレート101表面との間に介在する気体は、光照射部113が発する光を減衰させる。従って、光照射部113から発せられる光がテンプレート101表面に到達するように、第1チャンバ113内の湿度、酸素濃度、光照射部113から発せられる光の強度、光照射部113とテンプレート101表面との間の距離が調整される。
【0019】
また、光照射部113はクオーツQzで覆われており、これにより光照射部113からテンプレート101へのコンタミネーションを防止できるようになっている。
【0020】
第2チャンバ120は、テンプレートの加熱を行いながらカップリング剤を供給してカップリング反応を生じさせるチャンバであり、保持部121、加熱部122、第2気体供給部123、及び冷却部(図示せず)を有する。
【0021】
保持部121は、第1チャンバ110から搬送アーム131により搬送されたテンプレート101を保持する。
【0022】
加熱部122は、例えばヒータであり、保持部121に保持されているテンプレート101の加熱を行う。加熱部122は、テンプレート101の表面温度を調節できる。
【0023】
第2気体供給部123は、シランカップリング剤とN2の混合気体を第2チャンバ120内に供給する。シランカップリング剤は、例えばSiを含有し、端部にアルコキシ基(RO−)又はNHx(x=1、2)基を有する炭化水素又はフロロカーボンである。
【0024】
冷却部は、テンプレート101の冷却を行う。冷却部は例えばクールプレートに近接してテンプレート101を保持することによりテンプレート101を冷却する。また、第2気体供給部123が低温のドライエアを供給してテンプレートの冷却を行ってもよい。
【0025】
次に、このような表面処理装置100を用いてテンプレートの表面処理を行う方法を図1〜図3を用いて説明する。図2は、表面処理方法を説明するフローチャートである。また、図3は、テンプレートに対する表面処理の各工程の模式図である。
【0026】
(ステップS101)凹凸を有するパターン面を備えたテンプレート101が表面処理装置100のローダ部140にセットされる。表面処理装置100の内部には、フィルタ160、170を通過した雰囲気が供給されるため、アミンが数ppbレベルに管理され、また、パーティクルが極めて少ない。搬送アーム131がテンプレート101をローダ部140から第1チャンバ110へ搬送する。搬送されたテンプレート101は、保持部111に保持される。
【0027】
(ステップS102)第1気体供給部112がH2O/O2/N2の混合気体を第1チャンバ110内に供給する。これにより、第1チャンバ110内が高湿度雰囲気となる。
【0028】
(ステップS103)光照射部113が、波長172nmの光をテンプレート101表面に照射する。これにより、雰囲気中の酸素に作用してオゾンを生成し、更に酸化力の強い酸素ラジカルを生成する。その結果、図3(a)に示すように、有機物が除去される。
【0029】
また、光照射により、清浄化された石英テンプレート101表面のシロキサン結合(Si−O−Si)は、OHラジカルによりOH化(水酸化)され、図3(b)に示すように、シラノール基(Si−OH)が均一かつ緻密に分布する。この時、さらにシラノール基上に水分が過剰に吸着する。
【0030】
(ステップS104)光照射部113が光の照射を停止し、第1気体供給部112が混合気体の供給を停止する。そして、搬送アーム131によりテンプレート101が第2チャンバ120へ移送される。第2チャンバ120へ移送されたテンプレート101は保持部121に保持される。
【0031】
(ステップS105)加熱部122がテンプレート101を180℃の温度で加熱する。これにより、テンプレート101表面のOH化されたサイトに過剰に吸着していた水分が除去される。加熱は、過剰な吸着水を除去し、かつテンプレート101表面に分布するOH基が脱離しない100℃以上200℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0032】
第2チャンバ120に吸気減圧機構を設け、加熱と共に、第2チャンバ120内を減圧してもよい。例えば、第2チャンバ120内を10−5Pa以下に減圧することが好適である。
【0033】
(ステップS106)加熱部122は加熱を続ける。第2チャンバ120内の雰囲気の水分を図示しないセンサで計測し、水分がppbオーダーまで減少した後に、第2気体供給部123がシランカップリング剤とドライN2の混合気体を第2チャンバ120内に供給する。図3(c)に示すように、シランカップリング剤の加水分解基(例えばメトキシ基)雰囲気中に残存する微量の水分と加水分解反応し、シラノール基を生じ、更に石英テンプレート101表面のシラノール基と脱水縮合反応することにより、カップリング反応が生じる。
【0034】
(ステップS107)加熱部122が加熱を停止し、冷却部がテンプレート101を冷却する。
【0035】
(ステップS108)テンプレートがアンローダ部150から搬出される。
【0036】
ステップS103で水酸化処理されたテンプレート101表面は、アンモニアやアミンを吸着し易い。また、アンモニアやアミン、水分、アルコール等はカップリング反応の副生成物であるため、これらの物質が反応サイトに存在していると、カップリング反応が抑制される。しかし、本実施形態では、ケミカルフィルタ170により、アミンが極めて低濃度に抑制された処理環境となっている。また、減圧や加熱により、カップリング反応に不要な反応生成を除去することも可能である。これにより、カップリング反応を効果的に進めることができる。
【0037】
また、カップリング反応時の雰囲気中に余剰な水分が存在すると、雰囲気中でカップリング反応が生じ、カップリング剤が互いに凝集してパーティクルが生じてしまう。このため、反応種が減少し、かつ反応で生じたアミン等の副生成物やパーティクルが反応サイトのテンプレート101表面に付着してカップリング反応が抑制される。しかし、本実施形態では、ドライ窒素を供給すると共に、加熱を行うため、第2チャンバ120内を極めて低湿度に保つことができる。さらに、カップリング反応中に反応で生じたアミン等の副生成物の濃度を低濃度に抑制する構成としても構わない。例えば、シランカップリング剤を蒸気で供給する場合には、カップリング反応中に第2チャンバ120と第2気体供給部123との間で反応雰囲気を循環させて反応副生成物の除去を行う。この場合、循環経路にケミカルフィルタを設けておくことが望ましい。
【0038】
また、本実施形態では、カップリング反応を行っている間も加熱しているため、カップリング反応で生じる副生成物のアミンを反応サイトから速やかに除去でき、テンプレート101表面において均一かつ緻密にカップリング反応を行うことができ、図3(d)に示すように、テンプレート101表面に均一で強固な離型層10を形成することができる。
【0039】
このような処理により離型層が形成されたテンプレート101は、以下のようなインプリント法によるパターン形成に用いられる。まず、被処理基板上にインプリント材料を塗布し、その後、上述した表面処理を施したテンプレート101をインプリント材料に接触させ、この状態でインプリント材料を硬化する。そして、テンプレートをインプリント材料から離型することで、被処理基板上にパターンが形成される。本実施形態による表面処理が施されたテンプレート101を用いて形成されたパターンは、欠陥密度が0.1個/cm2以下に抑制される。また、テンプレート101の寿命を長くすることができる。
【0040】
このように、本実施形態による表面処理が施されたテンプレート101を用いることで、インプリント品質を向上でき、インプリントを用いて作製したストレージデバイスやLED等の生産性を高めることができる。
【0041】
上記第1の実施形態では、カップリング反応を生じさせる際に(ステップS106において)、気化したシランカップリング剤が用いられていたが、液状のカップリング剤(溶剤にカップリング剤が溶解した液体)をテンプレート101表面にスピン塗布又はスプレー塗布又はロール塗布してもよい。また、化学気相成長法又は物理気相成長法又は結晶成長法又は蒸着法を用いて、シランカップリング剤をテンプレート101表面に成膜してもよい。また、シランカップリング剤にシラノール触媒などの触媒をあわせてテンプレート101表面に供給してもよい。なお、シランカップリング剤を液体で供給する場合には、カップリング反応中に第2チャンバ120とシランカップリング剤供給部(図示せず)との間でシランカップリング剤を循環させて反応副生成物の除去を行うこともできる。この場合、循環経路に副生成物を除去するフィルタを設けてリおくことが望ましい。
【0042】
また、上記第1の実施形態では、テンプレート表面をOHラジカルと反応させていたが、OHラジカルと直接反応させない手法もある。まず、第1チャンバ110において、光照射部113が、波長252nmの光を照射し、テンプレート101表面を親水化する。この時、テンプレート101表面にオゾンを作用させてもよい。
【0043】
続いて、第1気体供給部112がH2O/O2/N2の混合気体を第1チャンバ110内に供給し、高湿度雰囲気をテンプレート101表面に作用させる。これにより、テンプレート101表面に水が吸着される。
【0044】
このテンプレート101が第2チャンバ120に移送され、減圧下で加熱部122により180℃程度で加熱される。これにより、テンプレート101表面に過剰に吸着していた水分が除去され、テンプレート101表面にモノレイヤの吸着水層が形成される。
【0045】
そして、第2気体供給部123がシランカップリング剤とドライN2の混合気体を供給し、吸着水層にシランカップリング剤を作用させ、カップリング反応を生じさせる。加熱により過剰な吸着水を除去しているため、カップリング反応を効果的に進めることができる。
【0046】
このような手法によっても、上記第1の実施形態と同様に、図3(d)に示すような、テンプレート101表面に均一で強固な離型層10を形成することができる。
【0047】
(第2の実施形態)図4に、本発明の第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置200は、図1に示す上記第1の実施形態に係る表面処理装置100のローダ部140と第1チャンバ110との間にチャンバ210〜240をさらに備えた構成となっている。
【0048】
搬送アーム131はチャンバ間でのテンプレート101の移送を行う。表面処理装置200の上部には、第1フィルタ160及び第2フィルタ170が設けられているため、装置内部は、パーティクルやアミンが極めて少ない環境に保たれる。
【0049】
図4において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
チャンバ210は、テンプレート101表面に付着している金属やSi等の無機物パーティクルを除去する。図5にチャンバ210の模式図を示す。チャンバ210は、加圧ロール211、リール212、213、粘着シート214、及び搬送ステージ215を有する。
【0051】
粘着シート214は、ポリ塩化ビニル(PVC)の基材にアクリル系粘着層が形成されたシートである。
【0052】
リール212は、ロール状の粘着シート214を巻き戻す方向(図中時計回り方向)に回転し、粘着シート214を繰り出す。
【0053】
リール213は、粘着シート214を巻き取る方向(図中時計回り方向)に回転し、粘着シート214をロール状に巻き取る。
【0054】
搬送ステージ215は、加圧ロール211の下方を通過するように、テンプレート101を(図中右方向へ)搬送する。
【0055】
加圧ロール211は、粘着シート214を送る方向(図中反時計回り方向)に回転しながら、搬送ステージ215により搬送されているテンプレート101の表面に対して、粘着シート214を圧接、剥離する。これにより、テンプレート101表面から無機物パーティクルが除去される。
【0056】
図4では、チャンバ210にテンプレート101を保持する保持部216が示されているが、搬送ステージ215が搬送アーム131との間でテンプレート101の搬入、搬出を直接行う場合は、保持部216を省略できる。
【0057】
図4に示すチャンバ230は、テンプレート101表面に吸着した水やアミン等の分子を除去するチャンバであり、保持部231、加熱部232、及び吸気口233を有する。
【0058】
保持部231は、チャンバ210において無機物パーティクルが除去されたテンプレート101を保持する。
【0059】
加熱部232は、例えばヒータであり、保持部231に保持されているテンプレート101の加熱を行う。加熱部232は、150℃〜200℃程度の温度で加熱を行うことが好適である。
【0060】
吸気口233は、図示しない吸気機構に連結されており、吸気口233を介してチャンバ230内の気体が排出され、チャンバ内が減圧される。
【0061】
加熱及び減圧により、図6(a)に示すように、テンプレート101表面から吸着分子が除去される。テンプレート101表面に残存している有機物は、第1チャンバ110において、図6(b)(図3(a)と同じ図である)に示すように、波長172nmの光が照射されて、除去される。
【0062】
チャンバ230内は減圧状態にあり、前後の処理が行われるチャンバ210、第1チャンバ110とは環境(内部圧力)が異なる。そのため、チャンバ210とチャンバ230との間、チャンバ230と第1チャンバ110との間にはそれぞれロードロック室を構成するチャンバ(ロードロックチャンバ)220、240が設けられる。
【0063】
ロードロックチャンバ220は、保持部221、気体供給口222、及び吸気口223を有する。保持部221は、チャンバ210における処理が施されたテンプレート101を保持する。吸気口223は図示しない吸気機構に連結されており、チャンバ内を減圧できる。ロードロックチャンバ220内に、気体供給口222を介して、図示しない気体供給部から窒素ガス(不活性ガス)を供給することで、チャンバ内を窒素ガス雰囲気にすることができる。
【0064】
ロードロックチャンバ240は、保持部241、気体供給口242、及び吸気口243を有する。保持部241は、チャンバ230における処理が施されたテンプレート101を保持する。吸気口243は図示しない吸気機構に連結されており、チャンバ内を減圧できる。ロードロックチャンバ240内に、気体供給口242を介して、図示しない気体供給部から窒素ガス(不活性ガス)を供給することで、チャンバ内を窒素ガス雰囲気にすることができる。
【0065】
ロードロックチャンバ220、240と、チャンバ230との間はゲートバルブ252、253によって仕切られている。例えば、ロードロックチャンバ220からチャンバ230へテンプレート101を搬送する場合、ロードロックチャンバ220内が減圧されてからゲートバルブ252が開く。また、例えば、チャンバ230からロードロックチャンバ240へテンプレート101を搬送する場合、ロードロックチャンバ240内が減圧されてから、ゲートバルブ253が開く。
【0066】
チャンバ210とロードロックチャンバ220との間には隔壁251が設けられ、ロードロックチャンバ240と第1チャンバ110との間には隔壁254が設けられる。
【0067】
なお、チャンバ210やロードロックチャンバ220、240の側面には第1チャンバ110、第2チャンバ120と同様に搬送経路130とテンプレート101の搬送を行うことが可能なシャッター(図示せず)を設けることができる。さらに、ロードロックチャンバ220とチャンバ230との間及びチャンバ230とロードロックチャンバ240との間に図示しない搬送機構を別途設けても構わない。
【0068】
このような表面処理装置200は、上記第1の実施形態におけるテンプレートの表面処理を行う前に、テンプレート表面の無機物パーティクルや吸着分子を除去するため、テンプレート表面にさらに均一で強固な離型層を形成することができる。また、離型層を形成する前にチャンバ210及びチャンバ230でテンプレート表面を清浄化しているため、部分的に欠損した離型層を一旦除去し、再度均一な離型層を形成することができる。
(第3の実施形態)図7に本発明の第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置300は、第1チャンバ310、第2チャンバ320、テンプレートを搬送経路330に沿って搬送する搬送アーム331、処理前のテンプレートをセットするローダ部340、処理後のテンプレートを保管する保管部380、保管部380に保管されているテンプレートを搬出するアンローダ部350を備える。
【0069】
ローダ部340と第1チャンバ310との間、第1チャンバ310と第2チャンバ320との間、第2チャンバ320と保管部380との間、及び保管部380とアンローダ部350との間には隔壁が設けられている。
【0070】
なお、第1チャンバ310、第2チャンバ320、保管部380の側面に、開閉可能なシャッター(図示せず)を設けることができる。図7では、便宜上、搬送アーム331をチャンバの下方に示しているが、実際には、搬送アーム331はチャンバと同程度の高さに設けられており、シャッターを介してテンプレートをチャンバへ搬入したり、チャンバから搬出したりできるようになっている。
【0071】
また、表面処理装置300の上部には第1フィルタ360及び第2フィルタ370が設けられている。第1フィルタ360は、パーティクルを除去するヘパフィルタである。第2フィルタ370は、アンモニア等のアミンを除去するケミカルフィルタである。第1フィルタ360及び第2フィルタ370により、表面処理装置300内はパーティクル、アミンが極めて少ない環境となる。例えばアミンは数ppbレベルに管理されている。
【0072】
第1チャンバ310は、テンプレート表面に残存しているレジスト残渣等の有機物を除去するチャンバであり、プラズマアッシングにより有機物を灰化して除去する。第1チャンバ310の構成の一例を図8に示す。
【0073】
第2チャンバ320は、テンプレート表面に薬液を供給し、テンプレート表面に残存している無機物パーティクルを除去するチャンバである。また、第2チャンバ320においてカップリング反応が生じ、テンプレート表面に離型層が形成される。第2チャンバ320では、テンプレート表面を乾かすことなく、均一な離型層が形成される。テンプレート表面を乾かすことによって乾燥痕(ウォーターマーク)等の欠陥が生じ、しいてはインプリント欠陥を引き起こす問題がある。したがってテンプレート洗浄中にテンプレート表面を乾かすことなくカップリング反応を実施することで、離型層を形成する前のテンプレート表面の汚染を防ぐことができ、かつ均一で強固な離型層を形成することでき、インプリント時の欠陥を低減することができる。
【0074】
具体的には、第2チャンバ320は、図9に示すように、テンプレート301を保持して回転させる保持回転部400と、薬液供給部410とを備える。
【0075】
保持回転部400は、スピンカップ401、回転軸402、スピンベース403、及びチャックピン404を有する。回転軸402は略鉛直方向に延び、回転軸402の上端に円盤状のスピンベース403が取り付けられている。回転軸402及びスピンベース403は、図示しないモータにより回転させることができる。
【0076】
チャックピン404はスピンベース403の周縁部に設けられている。チャックピン404がテンプレート301を狭持することで、保持回転部400はテンプレート301をほぼ水平に保持して回転させることができる。
【0077】
テンプレート301の表面の回転中心付近に、薬液供給部410から薬液が供給されると、薬液はテンプレート301の外周方向へ広がる。また、保持回転部400は、テンプレート301のスピン乾燥を行うことができる。テンプレート301の外周方向に飛散した余分な薬液は、スピンカップ401に捕らえられ、廃液管405を介して排出される。
【0078】
薬液供給部410は、テンプレート301表面に、洗浄液、アルコール、シンナー、及びシランカップリング剤を供給することができる。洗浄液は、供給ライン411を介して供給され、ノズル412から吐出される。洗浄液には、例えば、硫酸、フッ酸、塩酸、過酸化水素等を用いることができる。
【0079】
同様に、アルコールは、供給ライン413を介して供給され、ノズル414から吐出される。アルコールには、例えば、イソプロピルアルコールやエタノール等を用いることができる。
【0080】
また、シンナーは、供給ライン415を介して供給され、ノズル416から吐出される。シンナーには、例えば、ヘキサン、PGME、PGMEA、γ−ブチルラクトン等を用いることができる。
【0081】
また、シランカップリング剤は、供給ライン417を介して供給され、ノズル418から吐出される。シランカップリング剤は、例えばSiを含有し、端部にアルコキシ基(RO−)又はNHx(x=1、2)基を有する炭化水素又はフロロカーボンである。
【0082】
次に、図10を用いて保管部380について説明する。保管部380は、第2チャンバ320において離型層が形成されたテンプレート301を保管する。
【0083】
図10に示すように、保管部380の上部には、パーティクルを除去するヘパフィルタ381、及びアンモニア等のアミンを除去するケミカルフィルタ382が設けられている。そのため、保管部380の内部は、第1チャンバ310及び第2チャンバ320よりもパーティクル、アミンが少ない環境となっており、アミン濃度、パーティクル数が所定値以下となるように管理されている。また、保管部380には窒素ガス(不活性ガス)が供給さており、保管部380の内部は窒素ガス雰囲気になっている。
【0084】
レジストパターン形成の直前まで、テンプレート301をこのような保管部380で保管しておくことで、保管中に離型層が汚染されることを防止することができる。
【0085】
次に、このような表面処理装置300を用いてテンプレート301の表面処理を行う方法を図11に示すフローチャートを用いて説明する。ここで、テンプレート301は、例えば一般のフォトマスクに用いる全透明な石英基板にプラズマエッチングで凹凸のパターンを形成したものである。
【0086】
(ステップS301)凹凸を有するパターン面を備えたテンプレート301が表面処理装置300のローダ部340にセットされる。表面処理装置300の内部には、フィルタ360、370を通過した雰囲気が供給されるため、アミンが数ppbレベルに管理され、また、パーティクルが極めて少ない。搬送アーム331がテンプレート301をローダ部340から第1チャンバ310へ搬送する。
【0087】
(ステップS302)第1チャンバ310においてプラズマアッシングが行われ、テンプレート301表面に残存しているレジスト残渣等の有機物が除去される。
【0088】
(ステップS303)搬送アーム331が、テンプレート301を、第1チャンバ310から第2チャンバ320へ搬送する。搬送されたテンプレート301は、図9に示すチャックピン404に狭持される。
【0089】
(ステップS304)テンプレート301を所定の回転速度で回転させ、薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近に洗浄液を供給する。洗浄液がテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡り、テンプレート301の洗浄処理が行われる。これにより、テンプレート301の表面に残存していた無機物パーティクルが除去される。
【0090】
(ステップS305)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にアルコールを供給する。アルコールがテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。これにより、テンプレート301の表面に残留していた洗浄液がアルコールに置換される。
【0091】
(ステップS306)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にシンナーを供給する。シンナーがテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。これにより、テンプレート301の表面に残留していたアルコールがシンナーに置換される。
【0092】
(ステップS307)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にシランカップリング剤を供給する。シランカップリング剤がテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。シランカップリング剤の加水分解基(例えばメトキシ基)が、雰囲気中やテンプレート301上に残存する微量の水分と加水分解反応し、シラノール基を生じ、更に、テンプレート301表面のシラノール基と脱水縮合反応することにより、カップリング反応が生じる。これにより、テンプレート301の表面に均一な離型層が形成される。
【0093】
(ステップS308)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にシンナーを供給する。シンナーがテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。これにより、テンプレート301の表面に残留していたシランカップリング剤がシンナーに置換される。
【0094】
(ステップS309)テンプレート301の乾燥処理を行う。例えばテンプレート301の回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、テンプレート301の表面に残っているシンナーを振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0095】
(ステップS310)テンプレート301が第2チャンバ320から搬出され、保管部380に搬入される。テンプレート301は、レジストパターン形成の直前まで、保管部380において保管される。
【0096】
このように本実施形態では、第2チャンバ320において、ステップS304のウェット洗浄処理から、ステップS307の離型層形成までの間、テンプレート301を乾かさず濡れた状態のままにしている。テンプレート301が雰囲気中に曝されず、テンプレート301表面に有機物等が付着することを防止できるので、均一で強固な離型層を形成することができる。
【0097】
また、本実施形態による表面処理が施されたテンプレート301を用いることで、インプリント品質を向上でき、インプリントを用いて作製したストレージデバイスやLED等の生産性を高めることができる。
【0098】
上記第3の実施形態では、プラズマアッシングによりテンプレート301上の有機物を除去していたが、紫外線を照射して有機物を分解して除去してもよいし、発煙硝酸、オゾン水、高濃度オゾン水等の酸化性液体を用いて有機物を酸化分解して除去してもよい。また、有機溶剤を用いて有機物を除去してもよい。
【0099】
また、表面処理装置300の保管部380を、表面処理装置100、200に設けてもよい。
【0100】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0101】
100 表面処理装置
101 テンプレート
110 第1チャンバ
112 第1気体供給部
113 光照射部
120 第2チャンバ
122 加熱部
123 第2気体供給部
131 搬送アーム
160 ヘパフィルタ
170 ケミカルフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テンプレートの表面処理方法及び装置並びにパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微細パターンを形成する手法として、ナノインプリント法が注目されている。ナノインプリント法では、凹凸パターンが形成されたインプリント用テンプレートを被処理基板上に塗布したレジストに接触させ、レジストを硬化させた後、テンプレートをレジストから離型することによりレジストパターンを形成する。
【0003】
テンプレートをレジストから容易に離型するために、テンプレート表面に離型層を形成する手法が提案されている。離型層は、例えば、テンプレートを離型剤溶液に浸漬し、表面に付着した溶液を高温高湿下で保持した後、リンス、乾燥を行うことにより形成されていた。
【0004】
しかし、このような処理では、処理前テンプレートの表面、処理雰囲気中、離型剤溶液中などに存在するアミン、水分、有機物、パーティクル等がテンプレート表面に吸着し、形成される離型層の均一性が低下していた。この均一性の低い離型層を有するテンプレートを用いてレジストパターンを形成すると、レジストパターンに欠陥が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Zhang et al, “Vapor Deposited Release Layers for Nanoimprint Lithography”, Proc. Of SPIE, Vol.6151, 117, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、均一性の高い離型層をテンプレート表面に形成できるテンプレートの表面処理方法及び装置と、このようなテンプレートを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、テンプレートの表面処理方法は、凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面を水酸化するか又は前記表面に水を吸着させて、前記表面にOH基を分布させる工程と、前記OH基が分布したテンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程と、を備える。これらの処理は、アミンが所定濃度以下に管理された環境で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成図である。
【図2】同第1の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図3】同第1の実施形態に係るテンプレートに対する表面処理の各工程の模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成図である。
【図5】パーティクル除去の模式図である。
【図6】同第2の実施形態に係るテンプレートに対する表面処理の各工程の模式図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成図である。
【図8】同第3の実施形態に係る表面処理装置の第1チャンバの構成の一例を示す図である。
【図9】同第3の実施形態に係る表面処理装置の第2チャンバの構成の一例を示す図である。
【図10】同第3の実施形態に係る表面処理装置の保管部の構成の一例を示す図である。
【図11】同第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置100は、第1チャンバ110、第2チャンバ120、テンプレートを搬送経路130に沿って搬送する搬送アーム131、処理前のテンプレートをセットするローダ部140、処理後のテンプレートを搬出するアンローダ部150を備える。ローダ部140と第1チャンバ110との間、第1チャンバ110と第2チャンバ120との間、及び第2チャンバ120とアンローダ部150との間には隔壁が設けられている。
【0011】
なお、第1チャンバ110、第2チャンバ120の側面に、開閉可能なシャッター(図示せず)を設けることができる。図1では、便宜上、搬送アーム131をチャンバの下方に示しているが、実際には、搬送アーム131はチャンバと同程度の高さに設けられており、シャッターを介してテンプレートをチャンバへ搬入したり、チャンバから搬出したりできるようになっている。
【0012】
また、表面処理装置100の上部には第1フィルタ160及び第2フィルタ170が設けられている。第1フィルタ160は、パーティクルを除去するヘパフィルタである。第2フィルタ170は、アンモニア等のアミンを除去するケミカルフィルタである。第1フィルタ160及び第2フィルタ170により、表面処理装置100内はパーティクル、アミンが極めて少ない環境となる。例えばアミンは数ppbレベルに管理されている。
【0013】
第1チャンバ110は、テンプレートの表面にOHラジカルを反応させるチャンバであり、保持部111、第1気体供給部112、及び光照射部113を有する。
【0014】
保持部111は、ローダ部140によりセットされ、搬送アーム131により搬送されたテンプレート101を保持する。テンプレート101は、例えば、一般のフォトマスクに用いる全透明な石英基板にプラズマエッチングで凹凸のパターンを形成したものである。
【0015】
第1気体供給部112は、H2O/O2/N2の混合気体を第1チャンバ110内に供給する。第1気体供給部112は、混合気体の混合比や流量を制御して、第1チャンバ110内の湿度を調整できる。
【0016】
光照射部113は、テンプレート101の凹凸を有するパターン面に光を照射する。光照射部113は、光源としてXeエキシマランプを有し、波長172nmの光を発する。
【0017】
光照射部113は、テンプレート101表面に一括して光を照射するものでもよいし、テンプレート101の一部分を照射するものでもよい。光照射部113又は保持部111を、平面方向又は垂直方向に駆動可能に設け、光照射部113に対してテンプレート101を相対的に移動可能とすることが好適である。また、テンプレート101表面に対する光の照射角度を調節できるようにしてもよい。
【0018】
なお、光照射部113とテンプレート101表面との間に介在する気体は、光照射部113が発する光を減衰させる。従って、光照射部113から発せられる光がテンプレート101表面に到達するように、第1チャンバ113内の湿度、酸素濃度、光照射部113から発せられる光の強度、光照射部113とテンプレート101表面との間の距離が調整される。
【0019】
また、光照射部113はクオーツQzで覆われており、これにより光照射部113からテンプレート101へのコンタミネーションを防止できるようになっている。
【0020】
第2チャンバ120は、テンプレートの加熱を行いながらカップリング剤を供給してカップリング反応を生じさせるチャンバであり、保持部121、加熱部122、第2気体供給部123、及び冷却部(図示せず)を有する。
【0021】
保持部121は、第1チャンバ110から搬送アーム131により搬送されたテンプレート101を保持する。
【0022】
加熱部122は、例えばヒータであり、保持部121に保持されているテンプレート101の加熱を行う。加熱部122は、テンプレート101の表面温度を調節できる。
【0023】
第2気体供給部123は、シランカップリング剤とN2の混合気体を第2チャンバ120内に供給する。シランカップリング剤は、例えばSiを含有し、端部にアルコキシ基(RO−)又はNHx(x=1、2)基を有する炭化水素又はフロロカーボンである。
【0024】
冷却部は、テンプレート101の冷却を行う。冷却部は例えばクールプレートに近接してテンプレート101を保持することによりテンプレート101を冷却する。また、第2気体供給部123が低温のドライエアを供給してテンプレートの冷却を行ってもよい。
【0025】
次に、このような表面処理装置100を用いてテンプレートの表面処理を行う方法を図1〜図3を用いて説明する。図2は、表面処理方法を説明するフローチャートである。また、図3は、テンプレートに対する表面処理の各工程の模式図である。
【0026】
(ステップS101)凹凸を有するパターン面を備えたテンプレート101が表面処理装置100のローダ部140にセットされる。表面処理装置100の内部には、フィルタ160、170を通過した雰囲気が供給されるため、アミンが数ppbレベルに管理され、また、パーティクルが極めて少ない。搬送アーム131がテンプレート101をローダ部140から第1チャンバ110へ搬送する。搬送されたテンプレート101は、保持部111に保持される。
【0027】
(ステップS102)第1気体供給部112がH2O/O2/N2の混合気体を第1チャンバ110内に供給する。これにより、第1チャンバ110内が高湿度雰囲気となる。
【0028】
(ステップS103)光照射部113が、波長172nmの光をテンプレート101表面に照射する。これにより、雰囲気中の酸素に作用してオゾンを生成し、更に酸化力の強い酸素ラジカルを生成する。その結果、図3(a)に示すように、有機物が除去される。
【0029】
また、光照射により、清浄化された石英テンプレート101表面のシロキサン結合(Si−O−Si)は、OHラジカルによりOH化(水酸化)され、図3(b)に示すように、シラノール基(Si−OH)が均一かつ緻密に分布する。この時、さらにシラノール基上に水分が過剰に吸着する。
【0030】
(ステップS104)光照射部113が光の照射を停止し、第1気体供給部112が混合気体の供給を停止する。そして、搬送アーム131によりテンプレート101が第2チャンバ120へ移送される。第2チャンバ120へ移送されたテンプレート101は保持部121に保持される。
【0031】
(ステップS105)加熱部122がテンプレート101を180℃の温度で加熱する。これにより、テンプレート101表面のOH化されたサイトに過剰に吸着していた水分が除去される。加熱は、過剰な吸着水を除去し、かつテンプレート101表面に分布するOH基が脱離しない100℃以上200℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0032】
第2チャンバ120に吸気減圧機構を設け、加熱と共に、第2チャンバ120内を減圧してもよい。例えば、第2チャンバ120内を10−5Pa以下に減圧することが好適である。
【0033】
(ステップS106)加熱部122は加熱を続ける。第2チャンバ120内の雰囲気の水分を図示しないセンサで計測し、水分がppbオーダーまで減少した後に、第2気体供給部123がシランカップリング剤とドライN2の混合気体を第2チャンバ120内に供給する。図3(c)に示すように、シランカップリング剤の加水分解基(例えばメトキシ基)雰囲気中に残存する微量の水分と加水分解反応し、シラノール基を生じ、更に石英テンプレート101表面のシラノール基と脱水縮合反応することにより、カップリング反応が生じる。
【0034】
(ステップS107)加熱部122が加熱を停止し、冷却部がテンプレート101を冷却する。
【0035】
(ステップS108)テンプレートがアンローダ部150から搬出される。
【0036】
ステップS103で水酸化処理されたテンプレート101表面は、アンモニアやアミンを吸着し易い。また、アンモニアやアミン、水分、アルコール等はカップリング反応の副生成物であるため、これらの物質が反応サイトに存在していると、カップリング反応が抑制される。しかし、本実施形態では、ケミカルフィルタ170により、アミンが極めて低濃度に抑制された処理環境となっている。また、減圧や加熱により、カップリング反応に不要な反応生成を除去することも可能である。これにより、カップリング反応を効果的に進めることができる。
【0037】
また、カップリング反応時の雰囲気中に余剰な水分が存在すると、雰囲気中でカップリング反応が生じ、カップリング剤が互いに凝集してパーティクルが生じてしまう。このため、反応種が減少し、かつ反応で生じたアミン等の副生成物やパーティクルが反応サイトのテンプレート101表面に付着してカップリング反応が抑制される。しかし、本実施形態では、ドライ窒素を供給すると共に、加熱を行うため、第2チャンバ120内を極めて低湿度に保つことができる。さらに、カップリング反応中に反応で生じたアミン等の副生成物の濃度を低濃度に抑制する構成としても構わない。例えば、シランカップリング剤を蒸気で供給する場合には、カップリング反応中に第2チャンバ120と第2気体供給部123との間で反応雰囲気を循環させて反応副生成物の除去を行う。この場合、循環経路にケミカルフィルタを設けておくことが望ましい。
【0038】
また、本実施形態では、カップリング反応を行っている間も加熱しているため、カップリング反応で生じる副生成物のアミンを反応サイトから速やかに除去でき、テンプレート101表面において均一かつ緻密にカップリング反応を行うことができ、図3(d)に示すように、テンプレート101表面に均一で強固な離型層10を形成することができる。
【0039】
このような処理により離型層が形成されたテンプレート101は、以下のようなインプリント法によるパターン形成に用いられる。まず、被処理基板上にインプリント材料を塗布し、その後、上述した表面処理を施したテンプレート101をインプリント材料に接触させ、この状態でインプリント材料を硬化する。そして、テンプレートをインプリント材料から離型することで、被処理基板上にパターンが形成される。本実施形態による表面処理が施されたテンプレート101を用いて形成されたパターンは、欠陥密度が0.1個/cm2以下に抑制される。また、テンプレート101の寿命を長くすることができる。
【0040】
このように、本実施形態による表面処理が施されたテンプレート101を用いることで、インプリント品質を向上でき、インプリントを用いて作製したストレージデバイスやLED等の生産性を高めることができる。
【0041】
上記第1の実施形態では、カップリング反応を生じさせる際に(ステップS106において)、気化したシランカップリング剤が用いられていたが、液状のカップリング剤(溶剤にカップリング剤が溶解した液体)をテンプレート101表面にスピン塗布又はスプレー塗布又はロール塗布してもよい。また、化学気相成長法又は物理気相成長法又は結晶成長法又は蒸着法を用いて、シランカップリング剤をテンプレート101表面に成膜してもよい。また、シランカップリング剤にシラノール触媒などの触媒をあわせてテンプレート101表面に供給してもよい。なお、シランカップリング剤を液体で供給する場合には、カップリング反応中に第2チャンバ120とシランカップリング剤供給部(図示せず)との間でシランカップリング剤を循環させて反応副生成物の除去を行うこともできる。この場合、循環経路に副生成物を除去するフィルタを設けてリおくことが望ましい。
【0042】
また、上記第1の実施形態では、テンプレート表面をOHラジカルと反応させていたが、OHラジカルと直接反応させない手法もある。まず、第1チャンバ110において、光照射部113が、波長252nmの光を照射し、テンプレート101表面を親水化する。この時、テンプレート101表面にオゾンを作用させてもよい。
【0043】
続いて、第1気体供給部112がH2O/O2/N2の混合気体を第1チャンバ110内に供給し、高湿度雰囲気をテンプレート101表面に作用させる。これにより、テンプレート101表面に水が吸着される。
【0044】
このテンプレート101が第2チャンバ120に移送され、減圧下で加熱部122により180℃程度で加熱される。これにより、テンプレート101表面に過剰に吸着していた水分が除去され、テンプレート101表面にモノレイヤの吸着水層が形成される。
【0045】
そして、第2気体供給部123がシランカップリング剤とドライN2の混合気体を供給し、吸着水層にシランカップリング剤を作用させ、カップリング反応を生じさせる。加熱により過剰な吸着水を除去しているため、カップリング反応を効果的に進めることができる。
【0046】
このような手法によっても、上記第1の実施形態と同様に、図3(d)に示すような、テンプレート101表面に均一で強固な離型層10を形成することができる。
【0047】
(第2の実施形態)図4に、本発明の第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置200は、図1に示す上記第1の実施形態に係る表面処理装置100のローダ部140と第1チャンバ110との間にチャンバ210〜240をさらに備えた構成となっている。
【0048】
搬送アーム131はチャンバ間でのテンプレート101の移送を行う。表面処理装置200の上部には、第1フィルタ160及び第2フィルタ170が設けられているため、装置内部は、パーティクルやアミンが極めて少ない環境に保たれる。
【0049】
図4において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
チャンバ210は、テンプレート101表面に付着している金属やSi等の無機物パーティクルを除去する。図5にチャンバ210の模式図を示す。チャンバ210は、加圧ロール211、リール212、213、粘着シート214、及び搬送ステージ215を有する。
【0051】
粘着シート214は、ポリ塩化ビニル(PVC)の基材にアクリル系粘着層が形成されたシートである。
【0052】
リール212は、ロール状の粘着シート214を巻き戻す方向(図中時計回り方向)に回転し、粘着シート214を繰り出す。
【0053】
リール213は、粘着シート214を巻き取る方向(図中時計回り方向)に回転し、粘着シート214をロール状に巻き取る。
【0054】
搬送ステージ215は、加圧ロール211の下方を通過するように、テンプレート101を(図中右方向へ)搬送する。
【0055】
加圧ロール211は、粘着シート214を送る方向(図中反時計回り方向)に回転しながら、搬送ステージ215により搬送されているテンプレート101の表面に対して、粘着シート214を圧接、剥離する。これにより、テンプレート101表面から無機物パーティクルが除去される。
【0056】
図4では、チャンバ210にテンプレート101を保持する保持部216が示されているが、搬送ステージ215が搬送アーム131との間でテンプレート101の搬入、搬出を直接行う場合は、保持部216を省略できる。
【0057】
図4に示すチャンバ230は、テンプレート101表面に吸着した水やアミン等の分子を除去するチャンバであり、保持部231、加熱部232、及び吸気口233を有する。
【0058】
保持部231は、チャンバ210において無機物パーティクルが除去されたテンプレート101を保持する。
【0059】
加熱部232は、例えばヒータであり、保持部231に保持されているテンプレート101の加熱を行う。加熱部232は、150℃〜200℃程度の温度で加熱を行うことが好適である。
【0060】
吸気口233は、図示しない吸気機構に連結されており、吸気口233を介してチャンバ230内の気体が排出され、チャンバ内が減圧される。
【0061】
加熱及び減圧により、図6(a)に示すように、テンプレート101表面から吸着分子が除去される。テンプレート101表面に残存している有機物は、第1チャンバ110において、図6(b)(図3(a)と同じ図である)に示すように、波長172nmの光が照射されて、除去される。
【0062】
チャンバ230内は減圧状態にあり、前後の処理が行われるチャンバ210、第1チャンバ110とは環境(内部圧力)が異なる。そのため、チャンバ210とチャンバ230との間、チャンバ230と第1チャンバ110との間にはそれぞれロードロック室を構成するチャンバ(ロードロックチャンバ)220、240が設けられる。
【0063】
ロードロックチャンバ220は、保持部221、気体供給口222、及び吸気口223を有する。保持部221は、チャンバ210における処理が施されたテンプレート101を保持する。吸気口223は図示しない吸気機構に連結されており、チャンバ内を減圧できる。ロードロックチャンバ220内に、気体供給口222を介して、図示しない気体供給部から窒素ガス(不活性ガス)を供給することで、チャンバ内を窒素ガス雰囲気にすることができる。
【0064】
ロードロックチャンバ240は、保持部241、気体供給口242、及び吸気口243を有する。保持部241は、チャンバ230における処理が施されたテンプレート101を保持する。吸気口243は図示しない吸気機構に連結されており、チャンバ内を減圧できる。ロードロックチャンバ240内に、気体供給口242を介して、図示しない気体供給部から窒素ガス(不活性ガス)を供給することで、チャンバ内を窒素ガス雰囲気にすることができる。
【0065】
ロードロックチャンバ220、240と、チャンバ230との間はゲートバルブ252、253によって仕切られている。例えば、ロードロックチャンバ220からチャンバ230へテンプレート101を搬送する場合、ロードロックチャンバ220内が減圧されてからゲートバルブ252が開く。また、例えば、チャンバ230からロードロックチャンバ240へテンプレート101を搬送する場合、ロードロックチャンバ240内が減圧されてから、ゲートバルブ253が開く。
【0066】
チャンバ210とロードロックチャンバ220との間には隔壁251が設けられ、ロードロックチャンバ240と第1チャンバ110との間には隔壁254が設けられる。
【0067】
なお、チャンバ210やロードロックチャンバ220、240の側面には第1チャンバ110、第2チャンバ120と同様に搬送経路130とテンプレート101の搬送を行うことが可能なシャッター(図示せず)を設けることができる。さらに、ロードロックチャンバ220とチャンバ230との間及びチャンバ230とロードロックチャンバ240との間に図示しない搬送機構を別途設けても構わない。
【0068】
このような表面処理装置200は、上記第1の実施形態におけるテンプレートの表面処理を行う前に、テンプレート表面の無機物パーティクルや吸着分子を除去するため、テンプレート表面にさらに均一で強固な離型層を形成することができる。また、離型層を形成する前にチャンバ210及びチャンバ230でテンプレート表面を清浄化しているため、部分的に欠損した離型層を一旦除去し、再度均一な離型層を形成することができる。
(第3の実施形態)図7に本発明の第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置の概略構成を示す。表面処理装置300は、第1チャンバ310、第2チャンバ320、テンプレートを搬送経路330に沿って搬送する搬送アーム331、処理前のテンプレートをセットするローダ部340、処理後のテンプレートを保管する保管部380、保管部380に保管されているテンプレートを搬出するアンローダ部350を備える。
【0069】
ローダ部340と第1チャンバ310との間、第1チャンバ310と第2チャンバ320との間、第2チャンバ320と保管部380との間、及び保管部380とアンローダ部350との間には隔壁が設けられている。
【0070】
なお、第1チャンバ310、第2チャンバ320、保管部380の側面に、開閉可能なシャッター(図示せず)を設けることができる。図7では、便宜上、搬送アーム331をチャンバの下方に示しているが、実際には、搬送アーム331はチャンバと同程度の高さに設けられており、シャッターを介してテンプレートをチャンバへ搬入したり、チャンバから搬出したりできるようになっている。
【0071】
また、表面処理装置300の上部には第1フィルタ360及び第2フィルタ370が設けられている。第1フィルタ360は、パーティクルを除去するヘパフィルタである。第2フィルタ370は、アンモニア等のアミンを除去するケミカルフィルタである。第1フィルタ360及び第2フィルタ370により、表面処理装置300内はパーティクル、アミンが極めて少ない環境となる。例えばアミンは数ppbレベルに管理されている。
【0072】
第1チャンバ310は、テンプレート表面に残存しているレジスト残渣等の有機物を除去するチャンバであり、プラズマアッシングにより有機物を灰化して除去する。第1チャンバ310の構成の一例を図8に示す。
【0073】
第2チャンバ320は、テンプレート表面に薬液を供給し、テンプレート表面に残存している無機物パーティクルを除去するチャンバである。また、第2チャンバ320においてカップリング反応が生じ、テンプレート表面に離型層が形成される。第2チャンバ320では、テンプレート表面を乾かすことなく、均一な離型層が形成される。テンプレート表面を乾かすことによって乾燥痕(ウォーターマーク)等の欠陥が生じ、しいてはインプリント欠陥を引き起こす問題がある。したがってテンプレート洗浄中にテンプレート表面を乾かすことなくカップリング反応を実施することで、離型層を形成する前のテンプレート表面の汚染を防ぐことができ、かつ均一で強固な離型層を形成することでき、インプリント時の欠陥を低減することができる。
【0074】
具体的には、第2チャンバ320は、図9に示すように、テンプレート301を保持して回転させる保持回転部400と、薬液供給部410とを備える。
【0075】
保持回転部400は、スピンカップ401、回転軸402、スピンベース403、及びチャックピン404を有する。回転軸402は略鉛直方向に延び、回転軸402の上端に円盤状のスピンベース403が取り付けられている。回転軸402及びスピンベース403は、図示しないモータにより回転させることができる。
【0076】
チャックピン404はスピンベース403の周縁部に設けられている。チャックピン404がテンプレート301を狭持することで、保持回転部400はテンプレート301をほぼ水平に保持して回転させることができる。
【0077】
テンプレート301の表面の回転中心付近に、薬液供給部410から薬液が供給されると、薬液はテンプレート301の外周方向へ広がる。また、保持回転部400は、テンプレート301のスピン乾燥を行うことができる。テンプレート301の外周方向に飛散した余分な薬液は、スピンカップ401に捕らえられ、廃液管405を介して排出される。
【0078】
薬液供給部410は、テンプレート301表面に、洗浄液、アルコール、シンナー、及びシランカップリング剤を供給することができる。洗浄液は、供給ライン411を介して供給され、ノズル412から吐出される。洗浄液には、例えば、硫酸、フッ酸、塩酸、過酸化水素等を用いることができる。
【0079】
同様に、アルコールは、供給ライン413を介して供給され、ノズル414から吐出される。アルコールには、例えば、イソプロピルアルコールやエタノール等を用いることができる。
【0080】
また、シンナーは、供給ライン415を介して供給され、ノズル416から吐出される。シンナーには、例えば、ヘキサン、PGME、PGMEA、γ−ブチルラクトン等を用いることができる。
【0081】
また、シランカップリング剤は、供給ライン417を介して供給され、ノズル418から吐出される。シランカップリング剤は、例えばSiを含有し、端部にアルコキシ基(RO−)又はNHx(x=1、2)基を有する炭化水素又はフロロカーボンである。
【0082】
次に、図10を用いて保管部380について説明する。保管部380は、第2チャンバ320において離型層が形成されたテンプレート301を保管する。
【0083】
図10に示すように、保管部380の上部には、パーティクルを除去するヘパフィルタ381、及びアンモニア等のアミンを除去するケミカルフィルタ382が設けられている。そのため、保管部380の内部は、第1チャンバ310及び第2チャンバ320よりもパーティクル、アミンが少ない環境となっており、アミン濃度、パーティクル数が所定値以下となるように管理されている。また、保管部380には窒素ガス(不活性ガス)が供給さており、保管部380の内部は窒素ガス雰囲気になっている。
【0084】
レジストパターン形成の直前まで、テンプレート301をこのような保管部380で保管しておくことで、保管中に離型層が汚染されることを防止することができる。
【0085】
次に、このような表面処理装置300を用いてテンプレート301の表面処理を行う方法を図11に示すフローチャートを用いて説明する。ここで、テンプレート301は、例えば一般のフォトマスクに用いる全透明な石英基板にプラズマエッチングで凹凸のパターンを形成したものである。
【0086】
(ステップS301)凹凸を有するパターン面を備えたテンプレート301が表面処理装置300のローダ部340にセットされる。表面処理装置300の内部には、フィルタ360、370を通過した雰囲気が供給されるため、アミンが数ppbレベルに管理され、また、パーティクルが極めて少ない。搬送アーム331がテンプレート301をローダ部340から第1チャンバ310へ搬送する。
【0087】
(ステップS302)第1チャンバ310においてプラズマアッシングが行われ、テンプレート301表面に残存しているレジスト残渣等の有機物が除去される。
【0088】
(ステップS303)搬送アーム331が、テンプレート301を、第1チャンバ310から第2チャンバ320へ搬送する。搬送されたテンプレート301は、図9に示すチャックピン404に狭持される。
【0089】
(ステップS304)テンプレート301を所定の回転速度で回転させ、薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近に洗浄液を供給する。洗浄液がテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡り、テンプレート301の洗浄処理が行われる。これにより、テンプレート301の表面に残存していた無機物パーティクルが除去される。
【0090】
(ステップS305)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にアルコールを供給する。アルコールがテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。これにより、テンプレート301の表面に残留していた洗浄液がアルコールに置換される。
【0091】
(ステップS306)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にシンナーを供給する。シンナーがテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。これにより、テンプレート301の表面に残留していたアルコールがシンナーに置換される。
【0092】
(ステップS307)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にシランカップリング剤を供給する。シランカップリング剤がテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。シランカップリング剤の加水分解基(例えばメトキシ基)が、雰囲気中やテンプレート301上に残存する微量の水分と加水分解反応し、シラノール基を生じ、更に、テンプレート301表面のシラノール基と脱水縮合反応することにより、カップリング反応が生じる。これにより、テンプレート301の表面に均一な離型層が形成される。
【0093】
(ステップS308)薬液供給部410からテンプレート301の表面の回転中心付近にシンナーを供給する。シンナーがテンプレート301の回転による遠心力を受けて、テンプレート301表面全域に行き渡る。これにより、テンプレート301の表面に残留していたシランカップリング剤がシンナーに置換される。
【0094】
(ステップS309)テンプレート301の乾燥処理を行う。例えばテンプレート301の回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、テンプレート301の表面に残っているシンナーを振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0095】
(ステップS310)テンプレート301が第2チャンバ320から搬出され、保管部380に搬入される。テンプレート301は、レジストパターン形成の直前まで、保管部380において保管される。
【0096】
このように本実施形態では、第2チャンバ320において、ステップS304のウェット洗浄処理から、ステップS307の離型層形成までの間、テンプレート301を乾かさず濡れた状態のままにしている。テンプレート301が雰囲気中に曝されず、テンプレート301表面に有機物等が付着することを防止できるので、均一で強固な離型層を形成することができる。
【0097】
また、本実施形態による表面処理が施されたテンプレート301を用いることで、インプリント品質を向上でき、インプリントを用いて作製したストレージデバイスやLED等の生産性を高めることができる。
【0098】
上記第3の実施形態では、プラズマアッシングによりテンプレート301上の有機物を除去していたが、紫外線を照射して有機物を分解して除去してもよいし、発煙硝酸、オゾン水、高濃度オゾン水等の酸化性液体を用いて有機物を酸化分解して除去してもよい。また、有機溶剤を用いて有機物を除去してもよい。
【0099】
また、表面処理装置300の保管部380を、表面処理装置100、200に設けてもよい。
【0100】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0101】
100 表面処理装置
101 テンプレート
110 第1チャンバ
112 第1気体供給部
113 光照射部
120 第2チャンバ
122 加熱部
123 第2気体供給部
131 搬送アーム
160 ヘパフィルタ
170 ケミカルフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンが所定濃度以下に管理された環境で、凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面を処理する表面処理方法であって、
前記テンプレートの表面を水酸化するか又は前記表面に水を吸着させて、前記表面にOH基を分布させる工程と、
前記OH基が分布したテンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程と、
を備える表面処理方法。
【請求項2】
前記表面にOH基を分布させる工程と、前記テンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程との間に、前記テンプレート表面の水分の一部を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項3】
前記テンプレート表面を100℃以上200℃以下で加熱して、前記テンプレートの表面の水分の一部を除去することを特徴とする請求項2に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項4】
前記カップリング剤を結合させる工程で、カップリング反応中に反応副生成物の除去を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項5】
前記カップリング剤は気体で供給され、カップリング反応中に反応雰囲気を循環させて反応副生成物の除去を行うことを特徴とする請求項4に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項6】
前記テンプレートの表面にOH基を分布させる前に、前記表面から無機物パーティクル及び有機物を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項7】
プラズマアッシングにより前記表面から有機物を除去することを特徴とする請求項6に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項8】
テンプレート表面に洗浄液を供給して無機物パーティクルを除去し、
テンプレート表面の前記洗浄液をアルコールに置換し、
テンプレート表面の前記アルコールをシンナーに置換し、
テンプレート表面の前記シンナーを前記カップリング剤に置換して、テンプレート表面に前記カップリング剤を結合させ、
前記カップリング剤の結合後に、テンプレート表面を乾燥させることを特徴とする請求項6又は7に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項9】
テンプレート表面に前記カップリング剤を結合させた後に、前記テンプレートを、アミンが所定濃度以下、パーティクル数が所定値以下で管理され、不活性ガス雰囲気となっている保管部で保管する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項10】
前記カップリング剤は、シリコンを含有し、端部にアルコキシ基(RO−)又はNHx(x=1、2)基を有する炭化水素又はフロロカーボンであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項11】
被処理基板上にインプリント材料を塗布する工程と、
請求項1乃至10のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法により表面処理されたテンプレートのパターン面を前記インプリント材料に接触させる工程と、
前記テンプレートを前記インプリント材料に接触させた状態で前記インプリント材料を硬化する工程と、
前記インプリント材料から前記テンプレートを離型する工程と、
を備えるパターン形成方法。
【請求項12】
凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面に光を照射する光照射部及びH2O/O2/N2の混合ガスを供給する第1供給部が設けられた第1チャンバと、
前記テンプレートを加熱する加熱部及び前記テンプレートの表面にカップリング剤を供給する第2供給部が設けられた第2チャンバと、
アミンを除去し、自装置内の気体のアミン濃度を所定値以下に保つフィルタと、
を備えるテンプレートの表面処理装置。
【請求項13】
前記第2供給部は窒素とシランカップリング剤の混合ガスを供給することを特徴とする請求項12に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項14】
前記テンプレートの表面から無機物パーティクルを吸着除去する除去部が設けられた第3チャンバをさらに備えることを特徴とする請求項12又は13に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項15】
前記除去部は、加圧ロールによって粘着シートを前記テンプレートの表面に圧接及び剥離して、前記無機物パーティクルを吸着除去することを特徴とする請求項14に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項16】
凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面から有機物を除去する除去部が設けられた第1チャンバと、
前記テンプレートの表面に、洗浄液、アルコール、シンナー、カップリング剤を順に供給する薬液供給部が設けられた第2チャンバと、
アミンを除去し、自装置内の気体のアミン濃度を所定値以下に保つフィルタと、
を備えるテンプレートの表面処理装置。
【請求項17】
前記第2チャンバには、前記テンプレートの乾燥を行うことができる乾燥処理部が設けられていることを特徴とする請求項16に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項18】
前記薬液供給部は、前記テンプレートの表面にカップリング剤を供給した後にシンナーを供給し、
前記乾燥処理部は、スピンドライ処理により、表面がシンナーで濡れた前記テンプレートを乾燥させることを特徴とする請求項17に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項19】
前記除去部はプラズマアッシングを行うことを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項20】
前記第2チャンバから搬出された前記テンプレートを保管する保管部をさらに備え、
前記保管部は、アミンが所定濃度以下、パーティクル数が所定値以下で管理され、不活性ガス雰囲気となっていることを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項1】
アミンが所定濃度以下に管理された環境で、凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面を処理する表面処理方法であって、
前記テンプレートの表面を水酸化するか又は前記表面に水を吸着させて、前記表面にOH基を分布させる工程と、
前記OH基が分布したテンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程と、
を備える表面処理方法。
【請求項2】
前記表面にOH基を分布させる工程と、前記テンプレート表面にカップリング剤を結合させる工程との間に、前記テンプレート表面の水分の一部を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項3】
前記テンプレート表面を100℃以上200℃以下で加熱して、前記テンプレートの表面の水分の一部を除去することを特徴とする請求項2に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項4】
前記カップリング剤を結合させる工程で、カップリング反応中に反応副生成物の除去を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項5】
前記カップリング剤は気体で供給され、カップリング反応中に反応雰囲気を循環させて反応副生成物の除去を行うことを特徴とする請求項4に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項6】
前記テンプレートの表面にOH基を分布させる前に、前記表面から無機物パーティクル及び有機物を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項7】
プラズマアッシングにより前記表面から有機物を除去することを特徴とする請求項6に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項8】
テンプレート表面に洗浄液を供給して無機物パーティクルを除去し、
テンプレート表面の前記洗浄液をアルコールに置換し、
テンプレート表面の前記アルコールをシンナーに置換し、
テンプレート表面の前記シンナーを前記カップリング剤に置換して、テンプレート表面に前記カップリング剤を結合させ、
前記カップリング剤の結合後に、テンプレート表面を乾燥させることを特徴とする請求項6又は7に記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項9】
テンプレート表面に前記カップリング剤を結合させた後に、前記テンプレートを、アミンが所定濃度以下、パーティクル数が所定値以下で管理され、不活性ガス雰囲気となっている保管部で保管する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項10】
前記カップリング剤は、シリコンを含有し、端部にアルコキシ基(RO−)又はNHx(x=1、2)基を有する炭化水素又はフロロカーボンであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項11】
被処理基板上にインプリント材料を塗布する工程と、
請求項1乃至10のいずれかに記載のテンプレートの表面処理方法により表面処理されたテンプレートのパターン面を前記インプリント材料に接触させる工程と、
前記テンプレートを前記インプリント材料に接触させた状態で前記インプリント材料を硬化する工程と、
前記インプリント材料から前記テンプレートを離型する工程と、
を備えるパターン形成方法。
【請求項12】
凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面に光を照射する光照射部及びH2O/O2/N2の混合ガスを供給する第1供給部が設けられた第1チャンバと、
前記テンプレートを加熱する加熱部及び前記テンプレートの表面にカップリング剤を供給する第2供給部が設けられた第2チャンバと、
アミンを除去し、自装置内の気体のアミン濃度を所定値以下に保つフィルタと、
を備えるテンプレートの表面処理装置。
【請求項13】
前記第2供給部は窒素とシランカップリング剤の混合ガスを供給することを特徴とする請求項12に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項14】
前記テンプレートの表面から無機物パーティクルを吸着除去する除去部が設けられた第3チャンバをさらに備えることを特徴とする請求項12又は13に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項15】
前記除去部は、加圧ロールによって粘着シートを前記テンプレートの表面に圧接及び剥離して、前記無機物パーティクルを吸着除去することを特徴とする請求項14に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項16】
凹凸を有するパターン面を備えたテンプレートの表面から有機物を除去する除去部が設けられた第1チャンバと、
前記テンプレートの表面に、洗浄液、アルコール、シンナー、カップリング剤を順に供給する薬液供給部が設けられた第2チャンバと、
アミンを除去し、自装置内の気体のアミン濃度を所定値以下に保つフィルタと、
を備えるテンプレートの表面処理装置。
【請求項17】
前記第2チャンバには、前記テンプレートの乾燥を行うことができる乾燥処理部が設けられていることを特徴とする請求項16に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項18】
前記薬液供給部は、前記テンプレートの表面にカップリング剤を供給した後にシンナーを供給し、
前記乾燥処理部は、スピンドライ処理により、表面がシンナーで濡れた前記テンプレートを乾燥させることを特徴とする請求項17に記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項19】
前記除去部はプラズマアッシングを行うことを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載のテンプレートの表面処理装置。
【請求項20】
前記第2チャンバから搬出された前記テンプレートを保管する保管部をさらに備え、
前記保管部は、アミンが所定濃度以下、パーティクル数が所定値以下で管理され、不活性ガス雰囲気となっていることを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載のテンプレートの表面処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−224965(P2011−224965A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280514(P2010−280514)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]