説明

ディスク基板の製造方法およびディスク基板の取り出し装置

【課題】 ディスク基板の光学特性および機械特性を劣化させることなく成形用型体から確実に取り出す。
【解決手段】 成形用金型5でディスク基板3を射出成形する成形工程と、ディスク基板3を成形用金型5から離型する離型工程と、温度調節された真空吸着パッド22およびメカクランプ部23によってディスク基板3を保持して成型用金型5から取り出す取り出し工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ディスクや光磁気ディスク等のディスク基板を射出成形して製造するためのディスク基板の製造方法およびディスク基板の取り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ディスク基板の射出成形法について、図7および図8を参照して説明する。図7は射出成形機を示す断面図であり、図8はディスク基板の取り出し装置を図7における可動側金型から示す平面図である。
【0003】
一般的に、従来のディスク基板の射出成形法では、図7に示すように、成形用金型のキャビティに、所望の凸凹パターンをディスク基板103に転写形成するためのスタンパ113が取り付けられ、このキャビティ内に、溶融した樹脂材料等のディスク基板103の材料をノズル108よって射出・充填・圧縮することで、ディスク基板103を成形する方法である。
【0004】
固定側金型111に対して可動側金型112を離間させた型開き後に、図8に示すように、モータ132によって搬送アーム131を回転させることで、取り出し装置107を成形用金型内に進入させ、エジェクタ119によって可動側金型112から離型されたスプルー104およびディスク基板103を、取り出し装置107が有するスプルーチャック121でスプルー104を挟んで保持し、真空吸着パッド122でディスク基板103を吸着することによって、成形されたディスク基板103を保持して、モータ132によって搬送アーム131を回転させることで、成形用金型内から取り出している。
【0005】
しかしながら、この方法では、室温にほぼ近い温度の真空吸着パッド122が、高温の成形品であるディスク基板103に接触することになる。このため、ディスク基板103よりも温度が低い真空吸着パッド122が接触することで、成形されたディスク基板103に局所的な熱収縮が起こり、ディスク基板103の複屈折のムラや反り、歪等の原因になりうる。また、真空吸着パッド122の劣化や使用条件によって、ディスク基板103を保持することに失敗する場合があり、保持動作の信頼性に乏しいという問題がある。
【0006】
また、このような真空吸着パッドを備える従来のディスク基板の成形装置としては、ディスク基板の内周側と外周側にそれぞれ当接する内周側突出部および外周側突出部がそれぞれ形成された真空吸着パッドを備え、成形用金型からディスク基板を取り出す際に、ディスク基板に反り等の変形が生じることを防止する構成が開示されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−230851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のディスク基板の製造方法では、離型されたディスク基板を真空吸着パッドで保持する際に、真空吸着パッドによってディスク基板を確実に保持することが困難であり、誤って落下させてしまう問題が発生することがある。
【0008】
また、真空吸着パッドによってディスク基板を保持する際に、室温の真空吸着パッドと、成形後間もない高温のディスク基板とが接触することで、成形されたディスク基板に熱収縮が発生して、複屈折のムラ、反り、歪等の重大な欠陥になるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、ディスク基板の光学特性および機械特性を劣化させることなく成形用型体から確実に取り出すことができるディスク基板の製造方法、およびディスク基板の取り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明に係るディスク基板の製造方法は、成形用型体でディスク基板を射出成形する成形工程と、ディスク基板を成形用型体から離型する離型工程と、温度が制御された保持手段によってディスク基板を保持して成型用型体から取り出す取り出し工程とを有する。
【0011】
上述した本発明に係るディスク基板の製造方法によれば、温度が制御された保持手段によってディスク基板が保持されることで、ディスク基板に局所的な熱収縮を発生させて光学特性および機械特性を劣化させることなく、ディスク基板を成形用型体から取り出すことが可能になる。
【0012】
また、本発明に係るディスク基板の製造方法が有する取り出し工程では、保持手段によってディスク基板を機械的に保持することが好ましい。これによって、保持手段によるディスク基板の保持動作の信頼性が向上されるので、ディスク基板を落下させることなく、ディスク基板を成形用型体から確実に取り出すことが可能になる。
【0013】
また、本発明に係るディスク基板の製造方法が有する取り出し工程では、ディスク基板を負圧力によって保持する他の保持手段を更に用いてもよい。これによって、ディスク基板を更に確実に保持し、成形用型体から取り出すことが可能になる。
【0014】
また、本発明に係るディスク基板の取り出し装置は、成形用型体で成形されたディスク基板を保持する保持手段と、この保持手段を成型用型体に対して移動させる駆動手段と、保持手段の温度を制御する温度制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明によれば、温度が制御された保持手段によって、ディスク基板を保持して取り出すことによって、ディスク基板の光学特性および機械特性を劣化させることなく、成形用型体からディスク基板を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のディスク基板の取り出し装置について、図1および図2を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の射出成形機全体を模式的に示す断面図である。図2は、射出成形機が備えるディスク基板の取り出し装置において、温度調節されたメカクランプ部を模式的に示す斜視図である。
【0019】
本実施形態の射出成形機は、例えば光ディスクや光磁気ディスク等のディスク基板を成形するための射出成形機である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る射出成形機は、ディスク基板3を成形するための成型用金型5と、この成形用金型5内に樹脂材料を射出、充填するためのノズル8を有する射出装置6と、成形されたディスク基板3を成形用金型5から取り出すための取り出し装置7とを備えている。
【0021】
成型用金型5は、ディスク基板3を成形するキャビティ(不図示)を構成する一組の固定側金型11および可動側金型12と、固定側金型11に設けられて所望の凸凹パターンをディスク基板3に転写形成するためのスタンパ13と、固定側金型11および可動側金型12を支持するプラテン15,16とを有している。また、可動側金型12には、ディスク基板3の中心孔のゲートカットを行うためのカットパンチ17と、成形されたディスク基板3をキャビティから離型させるためのエジェクタピン18およびエジェクタ19が設けられている。
【0022】
図1に示すように、取り出し装置7は、固定側金型11を支持するプラテン15に固定されて配置されており、成形されたディスク基板3のスプルー4を保持するスプルーチャック21と、ディスク基板3を吸着して保持する真空吸着パッド22と、ディスク基板3を機械的に保持するメカクランプ部23と、これらスプルーチャック21、真空吸着パッド22、メカクランプ部23を成型用金型5に対して移動させるための駆動部24と、真空吸着パッド22およびメカクランプ部23の温度をそれぞれ制御するための温度制御部(不図示)とを備えている。
【0023】
スプルーチャック21は、真空吸着パッド22の中央に配置されており、搬送アーム31の第2のハンド31bに支持されている。
【0024】
真空吸着パッド22は、図示しないが、吸引管を介してコンプレッサに連通された複数の吸引孔を有しており、これら吸引孔に負圧を発生させることでディスク基板3の中心孔の周囲近傍を吸着して保持する。また、真空吸着パッド22の近傍には、図示しないが、温度制御部に電気的に接続されたヒータが設けられており、温度制御部によってヒータが制御されることで、真空吸着パッド22の温度が、ディスク基板3を保持する際のディスク基板3の温度とほぼ等しい温度に加熱されて保温されている。
【0025】
メカクランプ部23は、ディスク基板3の外周部を保持する一対のクランプ部材27と、これらクランプ部材27を加熱して保温するためのヒータ26とを有している。ヒータ26は、温度制御部に電気的に接続されており、温度制御部によって制御されることで、クランプ部材27が、ディスク基板3を保持する際のディスク基板3の温度とほぼ等しい温度に加熱されて保温されている。
【0026】
駆動部24は、スプルーチャック21、真空吸着パッド22、メカクランプ部23を搬送する搬送アーム31と、この搬送アーム31を図1中矢印a方向に回動させるためのモータ32を有している。
【0027】
搬送アーム31は、基端部に、モータ32に連結された回転軸が設けられており、この回転軸を介して矢印a方向に回動可能に支持されている。搬送アーム31は、先端部に、メカクランプ部23を支持する第1のハンド31aと、スプルーチャック21および真空吸着パッド22を支持する第2のハンド31bとを有している。
【0028】
以上のように構成された射出成形機について、取り出し装置7がディスク基板3を成型用金型5から取り出す動作を説明する。
【0029】
図1に示すように、計量・溶融・混練された樹脂材料がノズル8から成形用金型5のキャビティ内に射出、充填された後、カットパンチ17によってゲートカットを行い、保圧および圧縮圧力を加えて、冷却され、固定側金型11に対して可動側金型12が離間されて型開きされる。型開き後、可動側金型12では、エジェクタピン18によってスプルー4を突き出させるのと同時に、エジェクタ19によってディスク基板3を可動側金型12のキャビティから突き出させることで、ディスク基板3が離型される。
【0030】
図8に示した従来の取り出し装置107の動作と同様に、成型用金型5の型開き時、モータ32によって搬送アーム31が回転されて、固定側金型11と可動側金型12との間に取り出し装置7が挿入されることで、可動側金型12から突き出されたスプルー4をスプルーチャック21によって受け取って保持するとともに、可動側金型12から突き出されたディスク基板3の外周部をクランプ部材27によって受け取って保持する。
【0031】
図2に、ディスク基板の外周部がクランプ部材によって保持された状態を示す。温度調節されたクランプ部材27が、ディスク基板3を間に挟み込むように駆動され、ディスク基板3の外周部を保持する。ディスク基板3を保持する際、クランプ部材27と同様に一定の温度に調節された真空吸着パッド22が併用される。
【0032】
温度調節されてディスク基板3を機械的に保持するためのメカクランプ部23は、上述した構成に限定されるものではない。また、温度調節されたクランプ部材27は、その温度、および成形後にディスク基板3を保持するタイミング、保持する際のクランプ部材27の移動速度、保持力等を任意に調節される。また、メカクランプ部23がディスク基板3の外周部を保持する際にディスク基板3にかかる保持力は可能な限り小さく設定されることが望ましい。
【0033】
以上のように構成された第1の実施形態の射出成形機を用いて、厚さ0.6mm、外径86mm程度のディスク基板3を成形するための射出成形を行った。ディスク基板3の材料としては、ポリカーボネート樹脂を用いた。図1に示すように、計量・溶融・混練された樹脂材料がノズル8から成形用金型5のキャビティ内に射出充填された後、カットパンチ17でゲートカットを行い、保圧および圧縮圧力を加えて、冷却し、固定側金型11に対して可動側金型12を離間させて型開きを行った。
【0034】
型開き後、可動側金型12で、エジェクタピン18によってスプルー4を突き出すのと同時にエジェクタ19によってディスク基板3を突き出して離型させ、図8に示した従来の取り出し装置107の動作と同様に、型開き時に固定側金型11と可動側金型12との間に搬送アーム31を挿入した。続いて、スプルーチャック21によってスプルー4を受け取って保持し、ヒータ26によってディスク基板3の温度とほぼ等しい80℃程度の一定温度に温度調節されたクランプ部材27でディスク基板3の外周部をそれぞれ受け取って保持した。このとき、真空吸着パッド22によってもディスク基板3の中心孔の周囲を吸着保持した。
【0035】
このように、メカクランプ部23および真空吸着パッド22を用いて、図2に示すように、温度調節されたクランプ部材27でディスク基板3の外周部を挟み込んで保持させて、離型されたディスク基板3を保持する保持動作試験を50回程度行ったところ、成形されたディスク基板3の取り出し成功率が100%であった。
【0036】
また、80℃程度の一定温度に温度調節されたクランプ部材27を用いることで、ディスク基板3の保持時に、ディスク基板3に局所的な熱収縮が発生することを防止できた。得られたディスク基板3は、円周方向に対して複屈折の位相差のムラが10nm以下であり、かつ面振れの最大値および振れ量が50μm以下であった。
【0037】
なお、ディスク基板3の複屈折については、複屈折自動測定装置(TORYO.AT社製:B−6H)を用いてダブルパスで測定した。また、機械特性に関しては、光ディスク機械特性測定装置(小野測器社製:LM1200)を用いて測定した。また、ディスク基板3を形成する樹脂材や、使用するスタンパ、成形機等は自由に選択されてよい。
【0038】
上述したように、取り出し装置7によれば、保持するディスク基板3の温度とほぼ等しい温度に制御されたメカクランプ部23および真空吸着パッドを備えることによって、成形されたディスク基板3の光学特性および機械特性を劣化させることなく成形用金型5から確実に取り出すことができる。
【0039】
また、この取り出し装置7によれば、メカクランプ部23によってディスク基板3の外周部を機械的に保持することで、ディスク基板3の保持動作の信頼性を向上することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
つぎに、第2の実施形態の射出成形機が備える他の取り出し装置について、図3から図6を参照して説明する。なお、他の取り出し装置は、メカクランプ部を除いて、上述した第1の実施形態の射出成形機が備える取り出し装置と構成が同一であるため、同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
図3は、ディスク基板の中心孔にスプルーチャックが位置された状態を示す断面図である。一方、図4は、ディスク基板の中心孔に対応する位置にクランプ部材が移動された状態を示す断面図である。また、図5は、搬送アームの先端部に設けられたメカクランプ部、真空吸着パッドとスプルーチャックを示す平面図である。さらに、図6は、メカクランプ部のクランプ部材を示す斜視図である。
【0042】
図3に示すように、本実施形態に係る取り出し装置35は、ディスク基板3の中心孔の周囲近傍を吸着保持するための真空吸着パッド36と、ディスク基板3の中心孔内に挿入されてディスク基板3の内周部を機械的に保持するためのメカクランプ部37とを備えている。
【0043】
真空吸着パッド36は、図3および図5に示すように、円環状に形成されており、搬送アーム31の第1のハンド31aの先端部に支持されている。また、搬送アーム31には、第2のハンド31bにスプルーチャック21が支持されている。
【0044】
真空吸着パッド36の近傍には、図示しないが、この真空吸着パッド36を加熱するためのヒータが設けられており、温度制御部によってヒータが制御されることで、真空吸着パッド36の温度が、ディスク基板3の温度とほぼ等しい温度に保温されている。
【0045】
メカクランプ部37は、搬送アーム31の第1のハンド31aの先端部に、真空吸着パッドの中央に位置して支持されている。メカクランプ部37は、図6(a)および図6(b)に示すように、4分割された、いわゆる割りピン状の保持爪からなるクランプ部材38を有している。このクランプ部材38は、図6(a)に示すように、閉じた状態でディスク基板3の中心孔に挿入され、挿入後、図6(b)に示すように、開いた状態でディスク基板3の中心孔に係合されて、ディスク基板3の内周部を機械的に保持する。
【0046】
メカクランプ部37には、図4に示すように、クランプ部材38を加熱するためのヒータ26が設けられており、温度制御部によってヒータ26が制御されることで、クランプ部材38の温度が、ディスク基板3の温度とほぼ等しい温度に保温されている。
【0047】
本実施形態に係る取り出し装置35によれば、温度調節される真空吸着パッド36とメカクランプ部37とが近接させて配置される構成であるので、真空吸着パッド36およびメカクランプ部37が共通のヒータによって温度を制御するように構成されてもよく、構成の簡素化を図ることも可能になる。
【0048】
以上のように構成された射出成形機について、取り出し装置35がディスク基板3を成型用金型5から取り出す動作を簡単に説明する。
【0049】
型開き後に、図5に示した取り出し装置35の搬送アーム31が、図8に示した従来の取り出し装置107と同様に固定側金型11と可動側金型12との間に挿入される。
【0050】
まず、図3に示すように、エジェクタピン18によってスプルー4だけをキャビティ側に突き出し、このスプルー4をスプルーチャック21で受け取って保持し、モータ32によって搬送アーム31がディスク基板3の主面と平行に矢印a方向に回動されて、スプルーチャック21を成形用金型5に干渉しない位置まで移動させる。
【0051】
次に、モータ32によって搬送アーム31が回動されて、ヒータ26によって温度調節されたクランプ部材38がディスク基板3の中心孔に対応する位置に移動されて、図4に示すように、ディスク基板3の中心孔内に温度調節されたクランプ部材27を挿入し、エアブローおよびエジェクタ19と共に離型するのと同時に、クランプ部材38によってディスク基板3の中心孔を保持する。
【0052】
例えば、ディスク基板3の中心孔内に挿入されたクランプ部材38は、図6に示すように、挿入時に閉じられていた保持爪を、離型後の取り出し時に広げて、ディスク基板3の中心孔に係合させることによって、ディスク基板3を保持する。
【0053】
なお、温度調節されるクランプ部材38は、上述した構成に限定されるものではない。また、温度調節されたクランプ部材38は、その温度、および成形後にディスク基板3を保持するタイミング、保持する際のクランプ部材38の移動速度、保持力等を任意に調節される。メカクランプ部37がディスク基板3を保持する際にディスク基板3に負荷される保持力は可能な限り小さい方が望ましい。
【0054】
以上のように構成された第2の実施形態の射出成形機を用いて、厚さ0.6mm、外径86mm程度のディスク基板3を成形する射出成形を行った。ディスク基板3の材料としては、ポリカーボネート樹脂を用いた。図3に示すように、計量・溶融・混練された樹脂材がノズル8から成形用金型5のキャビティ内に射出充填された後、カットパンチ17によってゲートカットを行い、保圧および圧縮圧力を加えて、冷却し、型開きした。
【0055】
型開き後に、図5に示した取り出し装置7を、図8に示した従来の取り出し装置107の動作と同様に、固定側金型11と可動側金型12との間に挿入する。図3に示したように、エジェクタピン18によってディスク基板3の中心孔からスプルー4だけを突き出し、このスプルー4を図5に示すスプルーチャック21で受け取って保持し、モータ32によって搬送アーム31をディスク基板3の主面と平行に矢印a方向に回動させて、スプルーチャック21を成形用金型5に干渉しない位置まで移動させた。
【0056】
次に、ヒータ26によって90℃程度の一定温度に温度調節された図6に示すクランプ部材38を所定の位置に移動させ、図4に示すように、ディスク基板3の中心孔にクランプ部材38を挿入して、エアブローおよびエジェクタ19と共に離型させて、ディスク基板3の内周部を保持した。なお、このような保持動作試験を50回程度行ったところ、成形されたディスク基板3の取り出し成功率は100%であった。
【0057】
また、90℃程度の一定温度に温度調節されたクランプ部材38を用いたことで、クランプ部材38でディスク基板3を保持したときに、ディスク基板3に局所的な熱収縮の発生を防止することができた。得られたディスク基板3は、円周方向に対して複屈折の位相差のムラが10nm以下であり、かつ面振れの最大値および振れ量が40μm以下であった。
【0058】
なお、ディスク基板3の複屈折については、複屈折自動測定装置(TORYO.AT社製:B−6H)を用いてダブルパスで測定した。また、機械特性に関しては、光ディスク機械特性測定装置(小野測器社製:LM1200)を用いて測定した。
【0059】
上述した各実施形態の取り出し装置7,35では、ディスク基板3を機械的に保持するメカクランプ部23,37と、ディスク基板3を負圧力で保持する真空吸着パッド22,36とを併用する構成にされ、これによってディスク基板3の保持動作の信頼性が向上されたが、必要に応じて、メカクランプ部23,37のみによってディスク基板3を保持するように構成されてもよいことは勿論である。
【0060】
また、図示しないが、本発明に係る取り出し装置は、ディスク基板3の外周部を保持するメカクランプ部23と、ディスク基板3の中心孔内に挿入されて内周部を保持するメカクランプ部37とを併用するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態の取り出し装置を模式的に示す断面図である。
【図2】前記取り出し装置が備えるメカクランプ部を模式的に示す斜視図である。
【図3】第2の実施形態の取り出し装置を模式的に示す断面図である。
【図4】前記取り出し装置がメカクランプ部によってディスク基板の内周部を保持する状態を模式的に示す断面図である。
【図5】前記メカクランプ部およびスプルーチャックを示す平面図である。
【図6】クランプ部材を拡大して示す斜視図である。
【図7】従来のディスク基板の取り出し装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】従来の取り出し装置の搬送アームが成型用金型に対して回動される状態を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
3 ディスク基板
4 スプルー
5 成型用金型
6 射出装置
7 取り出し装置
8 ノズル
11 固定側金型
12 可動側金型
13 スタンパ
15,16 プラテン
17 カットパンチ
18 エジェクタピン
19 エジェクタ
21 スプルーチャック
22 真空吸着パッド
23 メカクランプ部
24 駆動部
26 ヒータ
27 クランプ部材
31 搬送アーム
31a 第1のハンド
31b 第2のハンド
32 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用型体でディスク基板を射出成形する成形工程と、
前記ディスク基板を前記成形用型体から離型する離型工程と、
温度が制御された保持手段によって前記ディスク基板を保持して前記成型用型体から取り出す取り出し工程と
を有するディスク基板の製造方法。
【請求項2】
前記取り出し工程では、前記保持手段によって前記ディスク基板を機械的に保持する請求項1に記載のディスク基板の製造方法。
【請求項3】
前記取り出し工程では、前記保持手段によって、前記ディスク基板の外周部および中心孔の少なくとも一方を保持する請求項2に記載のディスク基板の製造方法。
【請求項4】
前記取り出し工程では、前記ディスク基板の温度に応じて、前記保持手段が一定の温度に制御されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のディスク基板の製造方法。
【請求項5】
前記取り出し工程では、前記ディスク基板を負圧力によって保持する他の保持手段を更に用いる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のディスク基板の製造方法。
【請求項6】
成形用型体で成形されたディスク基板を保持する保持手段と、
前記保持手段を前記成型用型体に対して移動させる駆動手段と、
前記保持手段の温度を制御する温度制御手段と
を備えるディスク基板の取り出し装置。
【請求項7】
前記保持手段は、前記ディスク基板を機械的に保持する請求項6に記載のディスク基板の取り出し装置。
【請求項8】
前記保持手段は、前記ディスク基板の外周部および中心孔の少なくとも一方を保持する請求項7に記載のディスク基板の取り出し装置。
【請求項9】
前記保持手段は、前記ディスク基板の温度に応じて、一定の温度に制御されている請求項6ないし8のいずれか1項に記載のディスク基板の取り出し装置。
【請求項10】
前記ディスク基板を負圧力によって保持する他の保持手段を備える請求項6ないし9のいずれか1項に記載のディスク基板の取り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−24260(P2006−24260A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200330(P2004−200330)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】