説明

ディスプレイ用光学フィルター

【課題】 優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながら安価に製造することのできる光学フィルターを提供する。
【解決手段】 ディスプレイの前面Pに設けられるディスプレイ用光学フィルター10において、該フィルターの構成層中に、電磁波シールド層15と、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層からなる選択反射層17と、近赤外線吸収色素が分散された透明樹脂層からなる近赤外線吸収層16とを有する。これにより、優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながら、近赤外線吸収色素の使用量を減らして安価に製造することのできる光学フィルターを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)などの各種ディスプレイに使用される光学フィルターに関するものであり、特に優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながら安価に製造することのできる光学フィルターに関する。
なお、本発明において「近赤外線」とは、波長800〜1100nmの光をいう。
【背景技術】
【0002】
近年、PDP(プラズマディスプレイパネル)などのディスプレイにおいては、ディスプレイ前面から発生する電磁波が人体に悪影響を与えたり、周囲の電子機器を誤動作させることが問題とされるようになり、ディスプレイの画像の鮮明さと共に、ディスプレイが周囲へ与える影響への対策が益々重要視されつつある。
【0003】
特に、大型の薄型ディスプレイとして需要の増大しているPDPにおいては、電磁波シールドフィルム以外に、近赤外線の波長領域を使用している各種のリモコンスイッチの誤作動を防ぐための近赤外線吸収フィルム、その近赤外線吸収フィルムに使用されている近赤外線吸収剤の経時劣化を防ぐための紫外線吸収フィルム、さらには可視光領域の色調調整のためのネオン光カットフィルム、光学フィルターの表面に外光が映り込むのを防ぐための反射防止フィルム等が、必要とされる機能に応じて組み合わせて構成されている。
これらのフィルムをディスプレイ用光学フィルターとして用いることにより画像の映り具合の改善を図ると共に、周囲へ与える影響を低減する対策が採られている。
【0004】
ディスプレイから発生する電磁波が外部に漏洩して人体に与える悪影響を防ぐという要求に対しては、従来から、種々の透明導電性フィルムおよび電磁波シールドフィルムが開発されている。公知の電磁波シールド材は、大きく分けると、透明導電膜による電磁波シールド材と、導電性の金属メッシュによる電磁波シールド材の2つに区分される。このうち、透明導電膜による電磁波シールド材は、金属メッシュによる電磁波シールド材に比べて透明性に優れる反面、表面抵抗率が大きく、電磁波シールド性能に劣る。このため、PDP等の強い電磁波を発生させる機器からの電磁波をシールドする用途では、金属メッシュによる電磁波シールド材が好ましい。
【0005】
さらに、導電性の金属メッシュによる電磁波シールド材の作製方法としては、(1)透明基材に金属箔を貼り合わせ、または透明基材に金属の薄膜を蒸着した後、フォトリソグラフ法により導電性金属パターンを形成するエッチング法(例えば、特許文献1参照)や、(2)細線パターンを写真製法により生成された現像銀で形成した後、この現像銀の薄膜の上にメッキすることにより導電性金属パターンを形成する写真銀−メッキ法(例えば、特許文献2参照)などが挙げられる。
【0006】
一方、近赤外線吸収フィルムとしては、透明基材の片面にジチオールニッケル化合物および/またはジインモニウム化合物からなる近赤外線吸収組成物からなる近赤外線吸収層が形成された近赤外線吸収フィルターが開示されている(特許文献3参照)。
また、それぞれ波長800〜1100nmの間の近赤外領域に吸収を示す少なくとも2層の近赤外線吸収層を有し、基材を含めて少なくとも3層から構成された近赤外線吸収フィルムが開示されている(特許文献4参照)。
さらには、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂に分散した組成物を基材上に積層して形成された近赤外線吸収フィルターが開示されている(特許文献5参照)。
【0007】
また、光学フィルターの全体については、例えば、特許文献6に、色補正のためのネオン光カット層(吸収波長580〜620nm)と、外部光の反射を防止する反射防止フィルムと、外部光によるネオン光カット色素の劣化を防ぐための紫外線吸収剤を含有する粘着剤層と、電磁波遮蔽能を有するスパッタガラスとを有するプラズマディスプレイ用フィルターが開示されている。
特許文献7には、金属薄膜層と高屈折率透明薄膜層とを交互に積層した構造の透明導電膜により、電磁波シールド性と近赤外線カット性とを有する光学フィルターが開示されている。
特許文献8には、電磁波遮蔽性を有する金属メッシュと、赤外線吸収能を有する赤外線吸収剤含有接着層と、反射防止層と、ネオン光吸収層とを積層したプラズマディスプレイ用光学フィルターが開示されている。
特許文献9には、近赤外線吸収色素のコストを下げるために、屈折率の異なる複数の誘電体を積層した近赤外線を選択的に反射させる多層膜と、近赤外線を選択的に吸収する色素層とを重ね合せたディスプレイ用光学フィルターが開示されている。
また、複数のコレステリック液晶高分子固化層を用いて近赤外線を反射して遮蔽する光学フィルターが開示されている(特許文献10参照)。
【特許文献1】特開平10−075087号公報
【特許文献2】国際公開第2004/007810号パンフレット
【特許文献3】特開2005−054031号公報
【特許文献4】特開2002−156521号公報
【特許文献5】特開2000−227515号公報
【特許文献6】特開2004−325532号公報
【特許文献7】特開平10−217380号公報
【特許文献8】特開2004−333743号公報
【特許文献9】特開2006−098749号公報
【特許文献10】特開2000−056115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術においては、PDP(プラズマディスプレイパネル)の画面の大型化による価格の上昇と重量の増大を避け、より軽量化とコストダウンを図った光学フィルターが求められている。また、優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながらコストダウンを図ることが課題となっている。
【0009】
特許文献3〜5に記載の光学フィルターに組み込まれる近赤外線吸収フィルムは、いずれも、透明基材の片面に近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層を積層したものである。しかし、これらの光学フィルターにおける近赤外線遮蔽効果は、近赤外線吸収色素の含有量に依存し、高価な近赤外線吸収色素を使用しているため、近赤外線遮蔽効果を維持しながらコストダウンを図ることができないという問題があった。
【0010】
特許文献9に記載の光学フィルターは、近赤外線を選択的に反射させて減衰させる、屈折率の異なる複数の誘電体を積層した多層膜を用いることで、併用している近赤外線吸収色素の使用量を減らし低価格を実現するものである。しかし、多層膜の性能は、層数を増やすことによって高まるが、層数が増えるにつれて光学フィルターの製造コスト、層の厚み、および重量が増加するという問題があった。
【0011】
また、特許文献10に記載の光学フィルターに組み込まれる複数のコレステリック液晶構造を有する高分子固化層を用いた選択反射層は、少なくとも近赤外線帯域の光の左円偏光成分を反射するための選択反射層と、光の右円偏光成分を反射するための選択反射層とを備える必要がある。また、特定波長帯域の近赤外線反射率を90%以上と高くするには、左右の偏光成分を反射するための2つの選択反射層の光軸(コレステリック周期構造の螺旋軸)の方向を完全に一致させた精緻な構造が必要となるという問題があった。
【0012】
このように、従来技術においては、コレステリック液晶構造を有する高分子固化層を用いた選択反射層Aと近赤外線吸収色素Bとを併用して、優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながら安価に製造することのできる光学フィルターは提供されていなかった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コレステリック液晶構造を有する高分子固化層を用いた選択反射層Aと近赤外線吸収色素Bとを併用することにより、優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながら安価に製造することのできる光学フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、ディスプレイの前面に設けられるディスプレイ用光学フィルターにおいて、該光学フィルターの構成層中に、可視光を透過させ、かつ特定波長域の近赤外線を選択的に反射させる、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層からなる選択反射層Aと、近赤外線吸収色素が分散された透明樹脂層からなる近赤外線吸収層Bと、を有することを特徴とするディスプレイ用光学フィルターを提供する。
【0015】
前記選択反射層Aは、透明基材の一方の面に、それぞれ異なる螺旋ピッチの複数のコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層してなることが好ましい。
また、前記選択反射層Aは、透明基材の一方の面に、層の厚み方向に螺旋ピッチが連続的に変化した1層のコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層してなることが好ましい。
前記コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層は、近赤外線帯域の左円偏光成分、または右円偏光成分のいずれかを選択反射するものであることが好ましい。
【0016】
前記近赤外線吸収色素(B)は、800nm〜1100nmの吸収波長帯において、それぞれ異なる波長帯域に吸収能の極大値を有する長波長用の吸収色素と短波長用の吸収色素との2種類からなり、前記長波長用の近赤外線吸収色素がジインモニウム塩系化合物の中から選択された1種であり、かつ、前記短波長用の近赤外線吸収色素がフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物の中から選択された1種または2種類以上の色素であることが好ましい。
【0017】
前記選択反射層Aと近赤外線吸収層Bとの両方による、波長850nm〜1100nmの近赤外線に対する透過率が20%以下であることが好ましい。
前記電磁波シールド層は、導電性の金属メッシュからなることが好ましい。
また、前記電磁波シールド層は、物理現像された金属銀を触媒核として金属を無電解メッキおよび/または電解メッキすることにより細線パターンを形成した導電性の金属メッシュであることが好ましい。
【0018】
前記光学フィルターが、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、反射防止層もしくは防眩層のうち、1つ以上の層を有することが好ましい。
前記ディスプレイは、プラズマディスプレイであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のディスプレイ用光学フィルターによれば、ディスプレイからの画像光は、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層からなる選択反射層Aにより、可視光は透過されるが、特定波長域の近赤外線のうち、高分子固化体層の螺旋ねじれ方向と一致する円偏光のみを反射して減衰される。必然的に選択反射層Aによる近赤外線の反射率は最大でも50%となることから、選択反射層Aの反射率は30〜50%程度にされる。
【0020】
次に、減衰した近赤外領域の光が、近赤外線吸収色素の分散された透明樹脂層からなる近赤外線吸収層Bにて吸収され、高価な近赤外線吸収色素の使用量を減らすことができるので、安価に光学フィルターを製造することができる。
【0021】
このように、本発明においては、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層からなる選択反射層Aと、近赤外線吸収色素が分散された透明樹脂層からなる近赤外線吸収層Bとを併用することで、優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながら安価に製造することのできる光学フィルターを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、最良の形態に基づいて本発明のディスプレイ用光学フィルター(以下、単に「光学フィルター」という場合がある。)について詳しく説明する。
図1は、本発明の光学フィルターの層構成の一例を示す模式的断面図である。また、図2は、本発明の光学フィルターの層構成の他の例を示す模式的断面図である。これらの光学フィルターは、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイの前面パネルPに直貼りで取り付けて使用することができる。なお、図1及び図2において眼Eは視覚側を表す。
【0023】
図1に示す光学フィルター10は、視覚側から順に、反射防止層11、透明基材12、粘着剤層13、透明基材14、電磁波シールド層15、近赤外線吸収色素が分散された透粘着剤層からなる近赤外線吸収層(粘着剤層)16、選択反射層17、透明基材18、粘着剤層19が積層されてなるものである。
図2に示す光学フィルター20は、視覚側から順に、反射防止層21、透明基材22、粘着剤層23、透明基材24、電磁波シールド層25、粘着剤層26、近赤外線吸収色素が添加された透明樹脂層からなる近赤外線吸収層28、粘着剤層29、選択反射層27、透明基材30、粘着剤層31が積層されてなるものである。
【0024】
図1及び図2に示す光学フィルター10、20の場合、選択反射層と近赤外線吸収層の両方が近赤外線遮蔽層として機能する。
なお、図1おいては、電磁波シールド層15に接する粘着剤層16に近赤外線吸収色素を添加して近赤外線吸収層となした例を示し、図2においては、電磁波シールド層25に接する粘着剤層26を介して透明樹脂層28に近赤外線吸収色素Bを添加して近赤外線吸収層となした例を示しているが、本発明は、この例示に限定されるものではない。
また、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、反射防止層のうち光学フィルターに採用する層の組み合わせは、上記の例示に限定されるものではない。ネオン光吸収層(図示せず)は、例えばネオン光吸収剤を添加した粘着剤層によって実現することができる。
【0025】
(反射防止層)
ここで、反射防止層11,21は、光学フィルター10,20の外側からの可視光線の反射を防ぐためのものであって、単層の場合は、透明基材12,22に比べて屈折率の低い物質、例えばポリシロキサン構造を有するフッ素含有有機化合物等の薄膜を形成する。また多層からなる場合は、透明基材12,22に比べて高屈折率の物質、例えば酸化チタンの蒸着薄膜と、透明基材に比べて低屈折率の物質、例えば酸化ケイ素の薄膜を交互に積層する。このような金属酸化物薄膜の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、湿式塗布法により、酸化ジルコニウム、ITO、酸化ケイ素等の薄膜を形成することができる。
しかしながら、ディスプレイ用の光学フィルターの場合、複数のフィルムを積層していることから、その積層しているフィルム界面で反射が発生してしまう。そのため、光学フィルター全体では反射率が上昇してしまうことから、最外層の反射防止層11,21のみでは、外部光の反射による画像の白色化および白黒のコントラストの低下を防止して画像を鮮明にするという課題を十分に解決することができていないのが現状である。
【0026】
そこで、反射防止層11,21を通過してきた外部光を吸収する光吸収材を粘着剤層13,23または透明基材12,22に分散し、光学フィルター10,20内部への外部光の入射と、光学フィルター10,20内部に入射した外部光に由来する散乱光が再度フィルターの外側に出射したり、迷光となってディスプレイの画像と干渉して画像が白化することを低減する。外部光の入射と迷光により、ディスプレイの画像が白色化するのを防ぎ、白黒のコントラストを高めることができる。なお、迷光による白化を抑える観点からは、光吸収材を分散させる層はなるべく外側(視覚側)に位置することが好ましい。
【0027】
本発明に使用する光吸収材としては、カーボンブラック、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガンなどの黒色顔料の粒子を使用することができる。これらの黒色顔料は、1種類、または2種類以上複合して用いることができる。前記黒色顔料のうち、特に、カーボンブラックが好適に使用される。前記黒色顔料(光吸収材)の好ましい粒子径の分布範囲は0.01〜0.5μmの範囲であり、より好ましくは0.05〜0.3μmの範囲である。なお、光学フィルター全体としての色調を、無彩色もしくは好ましい色調に調整するために、必要に応じて複数種の他の色材を使用しても良い。
白黒のコントラストを高めるために黒色顔料(光吸収材)の添加量を増やせば全光線透過率が低下して画像が暗くなるという現象が起こるので、黒色顔料(光吸収材)の添加量を無制限に増やすことはできないが、許容される全光線透過率に応じて黒色顔料(光吸収材)の添加条件を調整することにより充分に満足の得られる白黒コントラストが達成される。
【0028】
(透明基材)
各透明基材12,14,17,18,22,24,27,28,30を構成する透明材料としては、可視領域で透明であり、またフレキシブル性を有し、好ましくは耐熱性の良好な樹脂からなるプラスチックフィルムである。そのようなフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等からなる厚さが10〜600μmの単層または複合フィルムが挙げられる。それぞれの透明基材は、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層などの機能層が塗布され、また、近赤外線反射剤および/または近赤外線吸収色素が混ぜ込まれ、そのまま積層されるためにフィルターの構成中に存在する。全光線透過率の低下を抑える観点からは、極力、兼用して透明基材層の数を少なくすることが好ましい。そのような兼用の方法としては、1枚の透明基材の上に複数の機能層を順次形成したり、剥離紙の上に形成した機能層を転写する方法を挙げることができる。
【0029】
(粘着剤層)
各粘着剤層13,16,19,23,26,29,31を構成する粘着剤としては、可視領域で透明であれば(すなわち、十分な透過率を有すれば)特に限定されず、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等いずれのものでもよいが、中でもアクリル系粘着剤が特に好ましい。これにより、透明性に優れ、粘着剤層13,16,19,23,26,29,31の耐候性を良好に維持することができる。
このような粘着剤成分の1つとして挙げられるアクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー(モノエチレン性不飽和モノマー)等から成るものが用いられる。
主モノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらのものを1種または2種以上を混合して用いることができる。
コモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル基含有化合物が挙げられる。
官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等のN−置換アミド基含有モノマー、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマーが挙げられる。
【0030】
このような材料を用いることにより、粘着性や凝集性、耐久性に優れ、また、モノマーの種類や組合せの選択により用途に応じた任意の品質、特性を得ることができる。
粘着剤成分の重量平均分子量は、30万〜300万が好ましく、50万〜200万がより好ましい。粘着剤成分の分子量が小さ過ぎると、粘着剤の粘着力や凝集力が劣り、耐ブリスター性が十分に得られず、分子量が大き過ぎると粘着剤が硬くなり、粘着性が不十分となって貼着の作業性が悪くなる。
また、粘着剤成分のガラス転移点(Tg)は、−20℃以下であるのが好ましい。ガラス転移点が−20℃を超える場合、使用温度によっては粘着剤が硬くなり、粘着性を維持できなくなることがある。
以上のような粘着剤は、架橋型、非架橋型のいずれのものも使用できる。架橋型の場合、エポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等の各種架橋剤を用いる方法等が挙げられ、これらは、それぞれの有する官能基により適宜選択される。
粘着剤層13,16,19,23,26,29,31に含まれる硬化性成分は、特に限定されないがエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性を有するもの、または後述する放射線硬化性を有するもの等が挙げられるが、特に放射線硬化性を有するものが好ましい。これにより、硬化性成分を常温や低温下で、かつ非常に短時間で硬化を進行させることができ取扱性に優れる。
ここでいう、放射線硬化性とは、例えば、紫外線、レーザー光線、α線、β線、γ線、X線、電子線の照射により分子鎖の成長や架橋反応が誘起され、硬化性成分が硬化する性質のことを意味する。
このような放射線硬化性成分としては、特に限定されないが、例えばアクリル系モノマーまたはオリゴマーを有するものが好ましい。これにより耐候性の優れた粘着剤層を形成することができる。
このような放射線硬化性のアクリル系モノマーまたは/およびオリゴマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
さらに、上記アクリル系モノマーまたはオリゴマーは、アクリロイル基を有する反応性モノマーまたはオリゴマーを含むものが好ましく、アクリロイル基を2以上有するものがより好ましい。アクリロイル基を2以上含むことにより、網目構造の形成が十分に行われ、粘着剤の凝集性がさらに向上し、良好な粘着剤層が得られる。
上記放射線硬化性成分等の硬化性成分の含有量は、前記粘着剤成分100重量部に対し、0.05〜50重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましい。硬化性成分の量が少な過ぎると粘着剤の凝集力との関係で、発生したガスによる発泡や膨れの抑制効果が十分に得られない場合がある。一方、硬化性成分の量が多すぎると、粘着剤層13,16,19,23,26,29,31が硬くなり過ぎて粘着力が低下するおそれが生じる。
硬化性成分は粘着剤成分とブレンドする場合、粘着剤成分との相溶性が良いものが好ましい。その他、硬化性成分を粘着剤成分の主ポリマーとの共重合体として用いることも可能である。
放射線硬化性成分を紫外線照射等により硬化させる場合、粘着剤層13,16,19,23,26,29,31は光透過性を有するものが好ましく、例えば、実質的に透明または半透明(無色または有色)であるものがよく、これにより、粘着剤層13,16,19,23,26,29,31の硬化を容易に行うことができる。
また、放射線硬化性成分を紫外線照射等により硬化させる場合、重合開始剤を添加してもよく、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ジメチルベンジルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステル等が挙げられる。
このような重合開始剤の添加量は、上記放射線硬化性成分100重量部に対し、0.5〜30重量部程度とするのが好ましく、1〜20重量部程度とするのがより好ましい。
一方、上記放射線硬化性成分を電子線照射により硬化させる場合には、前記重合開始剤の添加は不要であるが、この場合、酸素の存在により硬化反応が著しく阻害されるため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行う必要がある。あるいは、透明樹脂からなる剥離フィルムを貼着した状態で行うのが好ましい。
また、上記重合開始剤ともに、重合促進剤を用いることもでき、このような重合促進剤としては、例えば、4,4’−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルエタノールアミン、グリシン等が挙げられる。
なお、以上のような重合開始剤および重合促進剤は、保存時の安定性を向上するために、マイクロカプセル化して添加することもできる。
さらに、必要に応じて他の添加剤として、例えば、粘着付与剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、老化防止剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を添加することができる。
粘着付与剤としては、例えば、ロジンおよびその誘導体、ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
軟化剤としては、例えば、液状ポリエーテル、グリコールエステル、液状ポリテルペン、液状ポリアクリレート、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。
以上のような粘着剤成分および硬化性成分を主成分とする粘着剤層13,16,19,23,26,29,31の形成方法としては、例えば、ダイまたはコンマコーター等による塗工が挙げられる。塗布の方法としては、例えば、フローコーター、ナイフコータ、ロールコーター、ディッピング等が挙げられる。
粘着剤層13,16,19,23,26,29,31の厚さ(乾燥膜厚さ)は、特に限定されないが、5〜100μm程度、特に10〜60μm程度とするのが好ましい。
【0032】
(選択反射層)
選択反射層Aは、透明基材の一方の面に、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層したものである。
特定波長帯域の近赤外線反射率を90%以上と高くするには、左右の偏光成分を反射するための2つの選択反射層の光軸(コレステリック周期構造の螺旋軸)の方向を完全に一致させた精緻な構造が必要となるという問題がある。
このため、本発明では、前記コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層は、近赤外線波長帯域の光の左円偏光成分、または光の右円偏光成分のいずれかを選択反射するものであって、必然的に選択反射層Aによる近赤外線の反射率は最大でも50%となることから、選択反射層Aの反射率を30〜50%にするのが好ましい。
【0033】
前記選択反射層Aが、透明基材の一方の面に、それぞれ異なる螺旋ピッチの複数のコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層してなる場合には、各高分子固化体層の螺旋ピッチ長さをPnmとし、屈折率をNとしたときに、螺旋ピッチ長さに屈折率を乗じた値NPに相当する波長の光のうち、各高分子固化体層の螺旋ねじれ方向と一致する円偏光のみを反射する。選択反射層Aでの反射率は、螺旋ピッチの巻数に依存するので、各高分子固化体層の層厚みを螺旋ピッチが3〜6となるようにするのが好ましい。
また、前記選択反射層Aが、透明基材の一方の面に、層の厚み方向に螺旋ピッチが連続的に変化した1層のコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層してなる構成でも良い。
【0034】
本発明の近赤外線遮蔽用の両面粘着フィルムは、最終的には、選択反射層Aと、近赤外線吸収色素Bを併用することで、波長領域850〜1100nmの近赤外線透過率を20%以下、より好ましくは10%以下に低下させるものである。
コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層は、上記の特許文献6などに開示されているような公知の方法にて作成し、反射波長帯域が800〜1100nmのコレステリック液晶を得ることができる。
透明基材の上に、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層して選択反射層を得る。
透明基材として使用されるのは、可視領域で透明であり、またフレキシブル性を有し、好ましくは耐熱性の良好な樹脂からなるプラスチックフィルムである。
そのようなプラスチックフィルムとしては、例えば、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸セルロース系樹脂等からなる厚さが10〜300μmの単層または複合フィルムが挙げられる。
【0035】
なお、選択反射層において、液晶の配向規則性が良好となるように、延伸処理またはラビング処理等が施されたプラスチックフィルムが好適に用いられる。
また、本発明に用いられる透明基材は、透明基材の上に積層されるコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層との密着性を向上させるために、例えばコロナ処理、プラズマ処理、UV等により表面処理を施したものであっても良い。
コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を形成する材料組成を有機溶媒に溶解させた塗布液を公知の方法にて塗布する。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法などにより塗布することができる。
【0036】
透明基材に塗布液を塗布した後、コレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持し、溶媒を乾燥させながら液晶を一定の向きに配向させて、螺旋構造のコレステリック液晶構造を形成させる。
このようなコレステリック液晶構造は、加熱または電離放射線のエネルギーを用いて液晶材料組成物の液晶分子を重合させることにより固定され、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層となる。
以上の操作により、透明基材の少なくとも一方の面に、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層した選択反射層Aを得ることができる。
近赤外線遮蔽用の両面粘着フィルムにおける近赤外線反射率の調整は、選択反射層のコレステック液晶高分子の螺旋ピッチ数に影響されるが、螺旋ピッチ数は特に限定されるものではなく、求められている近赤外線透過率に適合するように近赤外線吸収色素の添加量との兼ね合いで適宜選択すればよい。
【0037】
(近赤外線吸収層)
近赤外線吸収色素が分散された近赤外線吸収層の機能としては、波長領域850〜1100nmの近赤外線透過率が、選択反射層にて前もって30〜50%に低下させられたものを、さらに20%以下、より好ましくは10%以下に低下させるものである。
近赤外線吸収色素の具体例としては、インモニウム塩系化合物、ジインモニウム塩系化合物、アミニウム塩系化合物、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、アミノチオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、トリアリールメタン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、カーボンブラック、酸化アンチモン、酸化インジウムをドープした酸化錫、周期表の4族、5族または6族に属する金属の酸化物若しくは炭化物若しくはホウ化物等が挙げられる。
これらの近赤外線吸収色素(B)は、1種類、または2種類以上複合して用いることができる。NIR吸収色素分散層を設けることにより、ディスプレイが発する近赤外線を吸収して遮蔽することができる。
【0038】
本発明の近赤外線吸収色素は、800nm〜1100nmの吸収波長帯において、それぞれ異なる波長帯域に吸収能の極大値を有する長波長用の近赤外線吸収色素と短波長用の近赤外線吸収色素との2種類以上の色素からなることが好ましい。
前記長波長用の近赤外線吸収色素がジインモニウム塩系化合物の中から選択された1種であり、かつ、前記短波長用の近赤外線吸収色素がフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物の中から選択された1種または2種類以上の色素であることが好ましい。
近赤外線吸収色素が分散された近赤外線吸収層は、透明樹脂からなるバインダーまたは粘着剤に近赤外線吸収色素を分散して形成することができる。
【0039】
上記バインダーとなる樹脂の種類としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂や、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。また、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴム又は天然ゴム等の有機系バインダー樹脂;シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシドやそれらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等の無機系結着剤等の従来公知のバインダー樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、比較的低温で乾燥して近赤外線吸収性塗膜を形成することができる点で、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂であることが好ましい。なお、アクリル系樹脂とメタクリル系樹脂をアクリル系樹脂ともいう。
粘着剤に分散する場合は粘着剤13,16,19,23,26,29,31と同様の粘着剤が用いられる。
【0040】
近赤外線吸収色素が分散された近赤外線吸収層を形成する際に、上述した以外の配合物として、例えば、溶剤や添加剤等を1種又は2種以上含んでいてもよい。このような溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等の1種又は2種以上の有機溶剤が挙げられる。
また、添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に一般に使用される従来公知の添加剤等を用いることができ、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾル等の無機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、シランカップリング剤、粘性改質剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、可塑剤、潤滑剤、防錆剤、有機及び無機系紫外線吸収剤、無機系熱線吸収剤、有機・無機防炎剤、静電防止剤等が挙げられる。
色素の耐久性を向上するためにクエンチャーや酸化防止剤を配合することもできる。
このようなクエンチャーとしては、金属錯体系の材料が挙げられ、例えば、みどり化学社製の商品名「MIR101」、住友精化社製の商品名「EST5」等が挙げられる。
酸化防止剤の代表的なものとしては、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物等があり、これらを1種類、または2種類以上複合して用いることができる。
【0041】
近赤外線吸収色素が分散された近赤外線吸収層を塗布する方法としては、例えば、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコート、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、ブレードコート、バーコート、リバースコート、ダイコート、スプレーコート、静電塗装等の方法が挙げられる。これらの場合には、近赤外線吸収層の樹脂組成物に上述した有機溶剤を適宜混合させて塗布することができる。
上記近赤外線吸収層の厚さとしては、使用用途等により適宜設定すればよく特に限定されるものではない。例えば、乾燥時の厚さを1〜50μm、好ましくは、1〜20μmとすればよい。
【0042】
(紫外線吸収層)
紫外線吸収層は、必要に応じて光学フィルターの適切な位置に一層または複数層設けることができる。紫外線吸収層を形成する方法としては、透明基材や透明樹脂層、粘着剤層の中に紫外線吸収剤を混入させる方法、紫外線吸収剤を含有する塗工液を透明基材上に直接または他の層を介して塗布する方法などが挙げられる。紫外線吸収層は、外部光による近赤外線吸収層の劣化を防ぐため、近赤外線吸収層よりも視覚側に設けられる。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤のいずれも使用可能であるが、50%透過率での波長が350〜420nmが好ましく、より好ましくは360nm〜400nmであり、350nmより低波長では、紫外線遮断能が弱く、420nmより高波長では着色が強くなり好ましくない。
【0043】
有機系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、フェニルサリチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾエート系化合物等が挙げられる。無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種類、または2種類以上複合して用いることができる。
【0044】
(ネオン光吸収層)
ネオン光吸収層は、必要に応じて光学フィルターの適切な位置に一層または複数層設けることができる。ネオン光吸収層は、PDPの発光するネオン光(吸収波長580〜620nm)を、ネオン光吸収剤を用いて除去することにより画像の赤色をより鮮明にするためのものである。ネオン光吸収層を形成する方法としては、透明基材や透明樹脂層、粘着剤層の中にネオン光吸収剤を混入させる方法、ネオン光吸収剤を含有する塗工液を透明基材上に直接または他の層を介して塗布する方法などが挙げられる。前記ネオン光吸収剤としては、例えば、シアニン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系、アゾ系等の色素のうち、波長580〜620nmの範囲に極大吸収波長を有する適当な色素が挙げられる。これらのネオン光吸収剤は、1種類、または2種類以上複合して用いることができる。
【0045】
(電磁波シールド層)
従来、ディスプレイから発生する電磁波が外部に漏洩して人体への悪影響を防ぐという要求に対して、種々の透明導電性フィルムおよび電磁波シールドフィルムが開発されている。公知の電磁波シールド層は、大きくは、透明導電膜による電磁波シールド層と、導電性の金属メッシュによる電磁波シールド層の2つに区分される。透明導電膜による電磁波シールド層は金属メッシュによる電磁波シールド層に比べて、透明性に優れる反面、表面抵抗率が大きく、電磁波シールド性能に劣る。プラズマディスプレイは強い電磁波を発生させるので、金属メッシュによる電磁波シールド層が好ましい。
さらに、導電性の金属メッシュの作製方法としては、下記の(1)〜(3)に示す方法が挙げられる。
(1)透明基材に金属箔を貼り合わせ、または透明基材に金属の薄膜を蒸着した後、フォトリソグラフ法により導電性金属パターンを形成するエッチング方法。
(2)透明基材の上に導電性の金属ペーストをメッシュパターンに印刷した後にメッキして導電性金属パターンを形成する印刷−メッキ法。
(3)細線パターンを露光現像された金属銀で形成した後、この金属銀を物理現像および/またはメッキすることにより導電性金属パターンを形成する露光現像法。
そして、露光現像法には、特開2004−221564号公報に記載された方法、すなわち、支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成する方法と、WO2004/007810に記載された方法(ここでは、DTR−メッキ法と称する)とがある。
【0046】
本発明に適用できる電磁波シールド層の構成および作製方法は特に限定されないが、導電性の金属メッシュにより作製する方法が好適である。特に、(3)露光現像法、なかんずく、DTR−メッキ法は、高い電磁波シールド効果と高い透明性(高い全光線透過率)とを両立させ得る点で優れており、他の方法による電磁波シールド層と比べて、より高い透明性(高い全光線透過率)が得られるので、黒色顔料(光吸収材)の添加濃度をより高濃度とすることが可能となり、白黒コントラストをより高めることができる。
【0047】
(DTR−メッキ法)
以下、上述のDTR−メッキ法による電磁波シールド層の作製方法について説明する。
電磁波シールド層15,25が形成される透明基材(図1及び図2では透明基材14,24)には、予め物理現像核層が設けられていることが好ましい。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法等によって透明基材上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0048】
透明基材は、塩化ビニリデンやポリウレタン等のポリマーラテックス層の接着層を設けることができ、また接着層と物理現像核層との間にはゼラチン等の親水性バインダーからなる中間層を設けることもできる。
【0049】
物理現像核層には、親水性バインダーを含有するのが好ましい。親水性バインダー量は物理現像核に対して10〜300質量%程度が好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。物理現像核層には親水性バインダーの架橋剤を含有することもできる。
【0050】
物理現像核層や前記中間層等の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。本発明において物理現像核層は、上記したコーティング法によって、通常連続した均一な層として設けることが好ましい。
【0051】
物理現像核層に金属銀を析出させるためのハロゲン化銀の供給は、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に一体的に設ける方法、あるいは別の紙やプラスチック樹脂フィルム等の基材上に設けられたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する方法がある。コスト及び生産効率の面からは前者の物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を一体的に設けるのが好ましい。
【0052】
前記ハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀写真感光材料の一般的なハロゲン化銀乳剤の製造方法に従って製造することができる。ハロゲン化銀乳剤は、通常、硝酸銀水溶液、塩化ナトリウムや臭化ナトリウムのハロゲン水溶液をゼラチンの存在下で混合熟成することによって作られる。
前記ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀組成は、塩化銀を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化銀であることが好ましい。塩化銀含有率を高くすることによって形成された物理現像銀の導電性が向上する。
【0053】
前記ハロゲン化銀乳剤層は、各種の光源に対して感光性を有している。電磁波シールド材を作製するための1つの方法として、例えば網目状などの細線パターンの物理現像銀の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は細線パターン状に露光されるが、露光方法として、細線パターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して紫外光で露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。前者の紫外光を用いた密着露光は、ハロゲン化銀の感光性は比較的低くても可能であるが、レーザー光を用いた走査露光の場合は比較的高い感光性が要求される。従って、後者の露光方法を用いる場合は、ハロゲン化銀の感光性を高めるために、ハロゲン化銀は化学増感あるいは増感色素による分光増感を施してもよい。化学増感としては、金化合物や銀化合物を用いた金属増感、硫黄化合物を用いた硫黄増感、あるいはこれらの併用が挙げられる。好ましくは、金化合物と硫黄化合物を併用した金−硫黄増感である。上記したレーザー光で露光する方法においては、450nm以下の発振波長の持つレーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることによって、明室下(明るいイエロー蛍光灯下)でも取り扱いが可能となる。
【0054】
物理現像核層が設けられる透明基材上の任意の位置、たとえば接着層、中間層、物理現像核層あるいはハロゲン化銀乳剤層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層にハレーションないしイラジエーション防止用の染料もしくは顔料を含有させてもよい。
【0055】
物理現像核層の上に直接にあるいは中間層を介してハロゲン化銀乳剤層が塗設された感光材料を用いて電磁波シールド材を作製する場合は、網目状パターンのような任意の細線パターンの透過原稿と上記感光材料を密着して露光、あるいは、任意の細線パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記感光材料に走査露光した後、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で処理することにより銀錯塩拡散転写現像(DTR現像)が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して細線パターンの物理現像銀薄膜を得ることができる。露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、ハロゲン化銀乳剤層及び中間層、あるいは必要に応じて設けられた保護層は水洗除去されて、細線パターンの物理現像銀薄膜が表面に露出する。
【0056】
DTR現像後、物理現像核層の上に設けられたハロゲン化銀乳剤層等の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。
【0057】
一方、物理現像核層が塗布された透明基材とは別の基材上に設けたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する場合、前述と同様にハロゲン化銀乳剤層に露光を与えた後、物理現像核層が塗布された透明基材と、ハロゲン化銀乳剤層が塗布された別の感光材料とを、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で重ね合わせて密着し、アルカリ液中から取り出した後、数十秒〜数分間経過した後に、両者を剥がすことによって、物理現像核上に析出した細線パターンの物理現像銀薄膜が得られる。
【0058】
次に、銀錯塩拡散転写現像のために必要な可溶性銀錯塩形成剤、還元剤、及びアルカリ液について説明する。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物であり、これらの作用はアルカリ液中で行われる。
【0059】
本発明に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、アルカノールアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物等が挙げられる。
【0060】
前記還元剤としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0061】
上記した可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤は、物理現像核層と一緒に透明基材に塗布してもよいし、ハロゲン化銀乳剤層中に添加してもよいし、またはアルカリ液中に含有させてもよく、更に複数の位置に含有してもよいが、少なくともアルカリ液中に含有させるのが好ましい。
【0062】
アルカリ液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。
【0063】
アルカリ液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14の範囲が好ましい。銀錯塩拡散転写現像を行うためのアルカリ液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流されたアルカリ液中に、物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層が設けられた透明基材を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上にアルカリ液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0064】
前述したように、細線パターンとしては、たとえば線幅10〜100μm程度の細線を縦横に格子状に設けられたものがあるが、細線幅を小さくして格子の間隔を大きくすると透光性は上がるが導電性は低下し、逆に細線幅を大きくして格子の間隔を小さくすると透光性は低下して導電性は高くなる。本発明にかかる透明基材上に形成された任意の細線パターンの物理現像銀は、全光線透過率50%以上の透光性と表面抵抗率10オーム/□以下の導電性とを同時に満足させることは困難である。具体的にはこの物理現像銀は、表面抵抗率50オーム/□以下、好ましくは20オーム/□以下の導電性を有しているが、細線幅50μm以下、たとえば細線幅20μmのパターンで、全光線透過率50%以上とした場合には、表面抵抗率は数百オーム/□〜千オーム/□以上にもなってしまう。しかしながら、この物理現像銀自身は、しっかりした銀画像が形成されて通電性を有しているため、銅やニッケルなどの金属による鍍金(メッキ)、特に電解メッキを施すことにより、細線パターンが0.5〜15μmの厚み及び10〜50μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、好ましくは60%以上の透光性の細線パターンであっても、表面抵抗率10オーム/□以下、好ましくは7オーム/□以下の導電性を保持することができる。
金属メッシュの全光線透過率を向上させるためには、細線が設けられた領域の面積に対して、細線間の光透過部の面積を十分に広くする必要がある。このため、細線の間隔は、100〜900μmであることが好ましく、より好ましくは150〜700μmである。
【0065】
金属メッキした細線パターンの厚みは所望とする特性により任意に変えることができるが、0.5〜15μm、好ましくは2〜12μmの範囲である。また上述の方法によって作製された電磁波シールド材は、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を得ることができる。
【0066】
細線パターンの物理現像銀のメッキは、無電解メッキ法、電解メッキ法あるいは両者を組み合わせたメッキ法のいずれでも可能であるが、透明基材上に電磁波シールド層を作製するにあたり、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を設けたロール状の長尺ウェブに、少なくとも細線パターンの露光、現像処理およびメッキ処理という一連の処理を施すことができる観点からも、電解メッキあるいはそれに無電解メッキを組み合わせた方法が好ましい。
【0067】
本発明において、金属メッキ法は公知の方法で行うことが出来るが、たとえば電解メッキ法は、銅、ニッケル、銀、金、半田、あるいは銅/ニッケルの多層あるいは複合系などの従来公知の方法を使用でき、これらについては、「表面処理技術総覧;(株)技術資料センター、1987年12月21日初版、281〜422頁」等の文献を参照することができる。
【0068】
メッキが容易で、かつ導電性に優れ、さらに厚膜にメッキでき、低コスト等の理由により、銅および/またはニッケルを用いることが好ましい。電解メッキの一例を挙げると、硫酸銅、硫酸等を主成分とする浴中に前述した物理現像銀が形成された透明基材を浸漬し、10〜40℃で、電流密度1〜20アンペア/dm2で通電することによりメッキすることができる。
【0069】
上記方法によって得られる電磁波シールド層は、細線パターンが0.5〜15μmの厚み及び10〜50μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、かつ表面抵抗率が10オーム/□以下という優れた透光性能と導電性能を持ち、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を発揮することができる。
【0070】
なお、上述のDTR−メッキ法の場合、透明基材の全面に物理現像核が残存することになる。これにより、DTR−メッキ法は透明性や導電性の点で不充分との説もあるが、現像後に残存する物理現像核はわずかであって電磁波シールド層の透明性に与える影響はごく少なく、それよりも触媒核に対して効率よく導電性の高い金属銀を物理現像することができるので、その金属銀に良好な無電解メッキおよび/または電解メッキを実施することが可能であり、充分な透明性と導電性を得ることができるのである。
【0071】
(光学フィルターの製造方法)
図1及び図2に示す光学フィルター10,20の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下に示す方法を用いることができる。なお、製造工程中または工程後、粘着剤層を保護するため、任意に剥離紙を積層してもよい。
【0072】
(1)図1に示す光学フィルター10の場合、
第1の積層体Aは、第1の透明基材12の片面に反射防止層11を設けることにより作製する。
第2の積層体B(電磁波シールドフィルム)は、第2の透明基材14の片面に電磁波シールド層15をDTR−メッキ法などにより形成し、さらに、電磁波シールド層15上に近近赤外線吸収色素が添加された粘着剤層16を形成するとともに、第2の透明基材14の電磁波シールド層15とは反対側の面に黒色顔料が分散された粘着剤層13を形成することにより作製する。
第3の積層体Cは、透明基材18の一方の面にコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層して選択反射層17となし、他方の面に粘着剤層19を積層して作製する。
第1の積層体Aと第2の積層体Bと第3の積層体Cを任意の順序で(もしくは同時に)粘着剤層13、16を介して積層して光学フィルター10を得る。すなわち、積層体A、B、Cをこの順序で、粘着剤層13、16を介して積層する。
【0073】
(2)図2に示す光学フィルター20の場合、
第1の積層体Aは、第1の透明基材22の片面に反射防止層21を設けることにより作製する。
第2の積層体B(電磁波シールドフィルム)は、第2の透明基材24の片面に電磁波シールド層25をDTR−メッキ法などにより形成し、さらに、電磁波シールド層25上に紫外線吸収剤が添加された粘着剤層26を形成するとともに、第2の透明基材24の電磁波シールド層25とは反対側の面に黒色顔料が分散された粘着剤層23を形成することにより作製する。
第3の積層体Cは、第3の透明基材28の中に、近赤外線吸収色素を添加して作製した透明樹脂層からなる近赤外線吸収層と、透明基材30の一方の面にコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層して選択反射層27となし、他方の面に粘着剤層31を積層した積層体を、粘着剤層29を用いて貼り合わせることにより作製する。
第1の積層体Aと第2の積層体Bと第3の積層体Cを任意の順序で(もしくは同時に)粘着剤層23、26を介して積層して光学フィルター20を得る。すなわち、積層体A、B、Cをこの順序で、粘着剤層23、26を介して積層する。
【0074】
本形態例の光学フィルター10,20は、最も内側に設けられた粘着剤層19,31によってディスプレイの前面パネルP等に貼着して用いることができる。
【0075】
本形態例のディスプレイ用光学フィルターによれば、電磁波シールド層と、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層からなる選択反射層Aと、近赤外線吸収色素が分散された透明樹脂層からなる近赤外線吸収層Bとを併用することで、優れた電磁波シールド効果と近赤外線遮蔽効果とを維持しながら安価に製造することのできる光学フィルターを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)などの各種ディスプレイに使用される光学フィルターに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の光学フィルターの層構成の一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の光学フィルターの層構成の他の例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0078】
P…ディスプレイの前面パネル、10,20…ディスプレイ用光学フィルター、11,21…反射防止層、12,14,18,22,24,30…透明基材、13,19,23,26,29,31…粘着剤層、15,25…電磁波シールド層、16…近赤外線吸収色素が分散された近赤外線吸収層(粘着材層)、17,27…選択反射層、28…近赤外線吸収色素が分散された近赤外線吸収層(透明樹脂層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイの前面に設けられるディスプレイ用光学フィルターにおいて、該光学フィルターの構成層中に、可視光を透過させ、かつ特定波長域の近赤外線を選択的に反射させる、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層からなる選択反射層Aと、近赤外線吸収色素が分散された透明樹脂層からなる近赤外線吸収層Bと、を有することを特徴とするディスプレイ用光学フィルター。
【請求項2】
前記選択反射層Aは、透明基材の一方の面に、それぞれ異なる螺旋ピッチの複数のコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層してなることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項3】
前記選択反射層Aは、透明基材の一方の面に、層の厚み方向に螺旋ピッチが連続的に変化した1層のコレステリック液晶構造を有する高分子固化体層を積層してなることを特徴とする請求項1または2に記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項4】
前記コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層は、近赤外線帯域の左円偏光成分、または右円偏光成分のいずれかを選択反射するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項5】
前記近赤外線吸収色素は、800nm〜1100nmの吸収波長帯において、それぞれ異なる波長帯域に吸収能の極大値を有する長波長用の吸収色素と短波長用の吸収色素との2種類からなり、前記長波長用の近赤外線吸収色素がジインモニウム塩系化合物の中から選択された1種であり、かつ、前記短波長用の近赤外線吸収色素がフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物の中から選択された1種または2種類以上の色素であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項6】
前記選択反射層Aと近赤外線吸収層Bとの両方による、波長850nm〜1100nmの近赤外線に対する透過率が20%以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項7】
前記電磁波シールド層は、導電性の金属メッシュからなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項8】
前記電磁波シールド層は、物理現像された金属銀を触媒核として金属を無電解メッキおよび/または電解メッキすることにより細線パターンを形成した導電性の金属メッシュであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項9】
前記光学フィルターが、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、反射防止層もしくは防眩層のうち、1つ以上の層を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のディスプレイ用光学フィルター。
【請求項10】
前記ディスプレイは、プラズマディスプレイであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のディスプレイ用光学フィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−209575(P2008−209575A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45201(P2007−45201)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】